JP2013051257A - 光電変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光電変換層に入射する光の量の増加によって変換効率が向上し得る光電変換装置を提供する。
【解決手段】光電変換装置20は、基板1と、互いに間隙を置いて基板1上に設けられた複数の電極とを備える。さらに、光電変換装置20は、前記電極および前記間隙を覆うように設けられた光電変換層3と、前記間隙に対応する基板1上に、前記電極から絶縁されて設けられた反射部材6とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、光電変換装置に関する。
太陽光発電等に使用される光電変換装置として、1つの基板上に複数の光電変換体に相当するセルが設けられたものがある。このセルには、例えば、下部電極と化合物半導体を含む半導体膜と上部電極とがこの順に積層されている。そして、隣り合うセルが電気的に直列に接続されることで光電変換装置から出力される電圧が高められ得る。そして、この光電変換装置では、隣り合う下部電極の間に半導体膜が入り込んでいる(例えば、特許文献1)。
特開2000−252490号公報
ところで、上記光電変換装置に対しては、変換効率のさらなる向上が求められている。変換効率を向上させる方法としては、上記半導体膜に相当する光電変換層に入射する光の量を増加させる方法が考えられる。特許文献1で開示された光電変換装置では、半導体膜に向かって入射された光が、隣り合う下部電極の間に位置する間隙から基板を介して外部に放出され得る。これにより、光電変換層に入射される光の量が低下する場合があった。
本発明の一つの目的は、光電変換層に入射する光の量の増加によって変換効率が向上し得る光電変換装置を提供することである。
本発明の一の実施形態に係る光電変換装置は、基板と、互いに間隙を置いて前記基板上に設けられた複数の電極とを備える。また、本実施形態では、前記電極および前記間隙を覆うように設けられた光電変換層と、前記間隙に対応する前記基板上に、前記電極から絶縁されて設けられた反射部材とを備える。
本発明の一の実施形態に係る光電変換装置によれば、隣り合う電極の間に位置する間隙に対応する基板上に、電極から絶縁されるように反射部材が設けられているため、前記間隙に入射された光を前記反射部材によって光電変換層に再入射させやすくなる。これにより、光電変換層に入射される光の量が増加するため、変換効率が向上する。
本発明の一実施形態に係る光電変換装置の構成を模式的に示す上面図である。 図1にて一点鎖線II−IIで示した位置における断面図である。 本発明の一実施形態に係る光電変換装置の下部電極および反射部材の構成を模式的に示す上面図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が
省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。なお、図1から図3には、光電変換セル10の配列方向(図1の図面視左右方向)をX軸方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。
<(1)光電変換装置の概略構成>
<(1−1)光電変換装置の概略構成>
光電変換装置20は、図1または図2に示すように、基板1と、該基板1の一主面上に平面的に並べられた複数の光電変換セル10とを備えている。隣り合う光電変換セル10は溝部P3によって分離されている。すなわち、光電変換装置20では、所定の配列方向(本実施形態では+X方向)に沿って、溝部P3を介して複数の光電変換セル10が基板1の一主面上に配列されている。図1では、図示の都合上、溝部P1が上面透視されており、点線で示されている。また、図1では、3つの光電変換セル10の一部のみが示されている。但し、光電変換装置20には、図面の左右方向に、多数(例えば、8個)の光電変換セル10が平面的に(二次元的に)配列されていても良い。そして、例えば、光電変換装置20のX軸方向の両端部に、発電による電圧および電流を得るための電極が設けられ得る。なお、光電変換装置20には、例えば、多数の光電変換セル10がマトリックス状に配置されていても良い。
また、例えば、各光電変換セル10の上面の形状が概ね長方形であり、光電変換装置20の上面の形状が概ね正方形である態様が採用され得る。なお、各光電変換セル10の上面の形状は概ね長方形である必要はなく、その他の形状であっても良い。また、光電変換装置20の上面の形状は概ね正方形である必要はなく、その他の形状であっても良い。但し、光電変換装置20では、多数の光電変換セル10が高密度に平面的に配置されていれば、変換効率が向上する。
変換効率は、光電変換装置20において太陽光のエネルギーが電気エネルギーに変換される割合を示す。例えば、変換効率は、光電変換装置20から出力される電気エネルギーの値が、光電変換装置20に入射される太陽光のエネルギーの値で除されて、100が乗じられることで導出され得る。
<(1−2)光電変換セルの基本的な構成>
各光電変換セル10は、電極(以下、下部電極2とする)、光電変換層3および上部電極45を備えている。また、各光電変換セル10には、溝部P1および溝部P2が設けられている。そして、光電変換装置20では、上部電極45が設けられた側の主面が受光面となっている。
基板1は、複数の光電変換セル10を支持するものである。基板1に含まれる主な材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、および金属等が挙げられる。ここでは、基板1が、1〜3mm以下程度の厚さを有する青板ガラス(ソーダライムガラス)であるものとする。また、ガラスには、カリウムおよびナトリウムのいずれか一方を含有させてもよい。これにより、光吸収層31を後述するI−III−VI族化合物半導体で構成した場合、光電変換層3のキャリア濃度を増加させることができるため、光電変換層3の変換効率が高められ得る。
下部電極2は、基板1の+Z側の一主面の上に設けられた導電層である。下部電極2は、図2に示すように、互いに間隙(溝部P1)を置いて基板1の+Z側の一主面の上に配列されている。下部電極2に含まれる主な材料には、例えば、モリブデン、アルミニウム、チタン、タンタル、および金等の導電性を有する各種金属等が採用され得る。また、下部電極2の厚さは、例えば、0.2〜1μm以下程度である。下部電極2は、例えば、ス
パッタリング法または蒸着法等の公知の薄膜形成方法によって形成され得る。
光電変換層3は、下部電極2の上に設けられており、順に積層された光吸収層31とバッファ層32とを有している。光吸収層31およびバッファ層32は、主に半導体を含む層であるため、光電変換層3は、主に半導体を含む層(半導体層とも言う)である。
光吸収層31は、下部電極2の+Z側の主面(一主面とも言う)の上に設けられており、第1導電型(ここではp型の導電型)を有する半導体を主に含む。光吸収層31の厚さは、例えば、1〜3μm以下程度である。また、光吸収層31は、例えば、I−III−VI族化合物半導体を主として含む。これにより、光吸収層31の薄層化が可能となり、少ない材料で安価に変換効率が高められ得る。I−III−VI族化合物半導体は、I−III−VI族化合物を主に含む半導体である。
ここで、I−III−VI族化合物としては、I−B族元素(11族元素とも言う)とIII−B族元素(13族元素とも言う)とVI−B族元素(16族元素とも言う)とを主に含む化合物である。I−III−VI族化合物としては、例えば、CuInSe(二セレン化銅インジウム、CISとも言う)、Cu(In,Ga)Se(二セレン化銅インジウム・ガリウム、CIGSとも言う)、およびCu(In,Ga)(Se,S)(二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム、CIGSSとも言う)等の材料が採用され得る。ここでは、光吸収層31が、CIGSを主に含むものとする。
なお、光吸収層31は、例えば、二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウムを主に含む薄膜を表面層として有する二セレン化銅インジウム・ガリウム等の多元化合物半導体の薄膜であっても良い。また、光吸収層31は、例えば、II−VI族化合物半導体を主に含んでいても良い。II−VI族化合物半導体は、II−VI族化合物を主に含む半導体である。II−VI族化合物は、II−B族(12族元素ともいう)とVI−B族元素とを主に含む化合物である。但し、光吸収層31が、I−III−VI化合物半導体を主に含んでいれば、光電変換層3における光電変換の効率(光電変換効率とも言う)が高められ得る。また、光吸収層31は、例えば、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)および硫黄(S)を含む、CZTS系のものであってもよい。このようなCZTS系化合物半導体は、例えば、CuZnSnSが挙げられる。CZTS系化合物半導体は、I-III-VI化合物半導体のようにレアメタルを使用していないため、材料を確保しやすい。
光吸収層31は、スパッタリング法または蒸着法等といった真空プロセスによって形成され得る。また、光吸収層31は、塗布法あるいは印刷法と称されるプロセスによっても形成され得る。塗布法あるいは印刷法では、例えば、光吸収層31に主として含まれる元素の錯体溶液が下部電極2の上に塗布され、その後、乾燥および熱処理が行われる。この塗布法あるいは印刷法と称されるプロセスが用いられることで、光電変換装置20の製造にかかるコストが低減され得る。
バッファ層32は、光吸収層31の+Z側の主面(一主面とも言う)の上に設けられており、光吸収層31の第1導電型とは異なる第2導電型(ここではn型の導電型)を有する半導体を主に含む。なお、導電型が異なる半導体とは、伝導担体(キャリア)が異なる半導体である。また、光吸収層31の導電型がn型であり、バッファ層32の導電型がp型であっても良い。ここでは、光吸収層31とバッファ層32との間にヘテロ接合領域が形成されている。このため、光電変換セル10では、ヘテロ接合領域を形成する光吸収層31とバッファ層32とにおいて光電変換が生じ得る。
バッファ層32は、化合物半導体を主に含む。バッファ層32に含まれる化合物半導体としては、例えば、硫化カドミウム(CdS)、硫化インジウム(In)、硫化亜
鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化インジウム(InSe)、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が採用され得る。そして、バッファ層32が1Ω・cm以上の抵抗率を有していれば、リーク電流の発生が抑制され得る。なお、バッファ層32は、例えば、ケミカルバスデポジション(CBD)法等によって形成され得る。
また、バッファ層32は、光吸収層31の一主面の法線方向に厚さを有する。この厚さは、例えば、10〜200nm以下に設定される。バッファ層32の厚さが100〜200nm以下であれば、バッファ層32の上に透光性導電層4がスパッタリング法等で形成される際に、バッファ層32においてダメージが生じ難くなる。
上部電極45は、バッファ層32の+Z側の主面(一主面とも言う)の上に設けられている。この上部電極45は、透光性導電層4とグリッド電極部5とを備えている。
透光性導電層4は、バッファ層32の一主面の上に設けられており、例えば、n型の導電型を有する透明の導電層(透明導電層とも言う)である。この透光性導電層4は、光電変換層3において生じた電荷を取り出す電極(取出電極とも言う)となる。透光性導電層4は、バッファ層32よりも低い抵抗率を有する材料を主に含む。透光性導電層4には、いわゆる窓層と呼ばれるものが含まれても良いし、窓層と透明導電層とが含まれても良い。
透光性導電層4は、禁制帯幅が広く且つ透明で低抵抗の材料を主に含んでいる。このような材料としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛の化合物、錫が含まれた酸化インジウム(ITO)、および酸化錫(SnO)等の金属酸化物半導体等が採用され得る。酸化亜鉛の化合物は、アルミニウム、ボロン、ガリウム、インジウムおよびフッ素のうちの何れか1つの元素等が含まれたものであれば良い。
透光性導電層4は、スパッタリング法、蒸着法、または化学的気相成長(CVD)法等によって形成され得る。透光性導電層4の厚さは、例えば、0.05〜3μm以下であれば良い。ここで、透光性導電層4が、1Ω・cm未満の抵抗率と、50Ω/□以下のシート抵抗とを有していれば、透光性導電層4を介して光電変換層3から電荷が良好に取り出され得る。
バッファ層32および透光性導電層4が、光吸収層31が吸収し得る光の波長帯域に対して、光を透過させ易い性質(光透過性とも言う)を有していれば、光吸収層31における光の吸収効率の低下が抑制され得る。また、透光性導電層4の厚さが0.05〜0.5μm以下であれば、透光性導電層4における光透過性が高められると同時に、光電変換によって生じた電流が良好に伝送され得る。さらに、透光性導電層4の絶対屈折率とバッファ層32の絶対屈折率とが略同一であれば、透光性導電層4とバッファ層32との界面で光が反射することで生じる入射光のロスが低減され得る。
グリッド電極部5は、透光性導電層4の+Z側の主面(一主面とも言う)の上に設けられている線状の電極部(線状電極部とも言う)である。グリッド電極部5は、複数の集電部5aと連結部5bと垂下部5cとを備えている。複数の集電部5aは、Y軸方向に離間しており、各集電部5aがX軸方向に延在している。連結部5bは、Y軸方向に設けられており、各集電部5aが接続されている。垂下部5cは、連結部5bの下部に接続され、溝部P2を通って隣の光電変換セル10から延伸されている下部電極2に接続する。
集電部5aは、光電変換層3において発生して透光性導電層4において取り出された電荷を集電する役割を担う。集電部5aが設けられることで、透光性導電層4における導電
性が補われるため、透光性導電層4の薄層化が可能となる。その結果、電荷の取り出し効率の確保と、透光性導電層4における光透過性の向上とが両立し得る。なお、グリッド電極部5が、例えば、銀等の導電性が優れた金属を主に含んでいれば、光電変換装置20における変換効率が向上し得る。また、グリッド電極部5に含まれる金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル等であっても良い。
透光性導電層4および複数の集電部5aによって集電された電荷は、連結部5bと垂下部5cとを通じて、隣の光電変換セル10に伝達される。これにより、光電変換装置20においては、隣り合う光電変換セル10が電気的に直列に接続されている。具体的には、一方の光電変換セル10の上部電極45の集電部5aと電気的に接続された垂下部5cと、他方の光電変換セル10の下部電極2とが電気的に接続されることで直列に接続されている。
また、集電部5aの幅が50〜400μm以下であれば、隣接する光電変換セル10の間における良好な導電が確保されつつ、光吸収層31への光の入射量の低下が抑制され得る。1つの光電変換セル10に設けられる複数の集電部5aの間隔は、例えば、2.5mm程度であれば良い。
<(1−3)溝部の配置とその役割>
溝部P1は、Y軸方向に直線状に延在している。1以上の該溝部P1が配されていることで、複数の下部電極層2がX軸方向に分離されている。すなわち、溝部P1は、隣り合う下部電極間に設けられた間隙に相当する。図2では、2つの下部電極層2が示されている。溝部P1には、直上に配された光吸収層31の延在部分が埋入している。すなわち、光吸収層31は、下部電極間に位置する間隙(溝部P1)を覆うように配置されている。これにより、隣り合う光電変換セル10において、一方の光電変換セル10の下部電極層2と、他方の光電変換セル10の下部電極層2とが電気的に分離されている。溝部P1の幅は、例えば、40〜400μm以下程度であれば良い。
溝部P2は、透光性導電層4の一主面から下部電極2の上面に至るまで設けられており、Y軸方向に直線状に延在している。このため、溝部P2は、光電変換層3と透光性導電層4とが積層された積層部をX軸方向に分離している。すなわち、溝部P2は、光電変換層3を基板1の一主面に垂直な方向に貫通するように設けられる。
溝部P3は、光電変換セル10の上面から下部電極2の上面に至るまで設けられており、Y軸方向に延在している。溝部P3の幅は、例えば、40〜1000μm以下程度であれば良い。
受光面の上方(ここでは+Z側)から光電変換装置20を平面透視した場合、溝部P1と溝部P3との間に溝部P2が設けられている。換言すれば、+X方向に、溝部P1と溝部P2と溝部P3とがこの順に設けられている。また、各光電変換セル10では、下部電極2の上から溝部P1を越えて、隣の下部電極2の上に至るまで光電変換層3が設けられている。ここで、隣の下部電極2は、隣の光電変換セル10から延伸している下部電極2である。
そして、受光面の上方(ここでは+Z側)から光電変換装置20を平面透視した場合、光電変換装置20には、溝部P1および溝部P2を包含して、溝部P1と溝部P2とに挟まれた領域(接続用領域とも言う)と、溝部P2と溝部P3とに挟まれた領域と、残余の領域とがある。そして、この残余の領域が、発電に寄与する領域(発電寄与領域とも言う)となる。
<(1−4)反射部材の配置とその役割>
光電変換装置20では、図2に示すように、隣り合う下部電極2の間隙に対応する基板1上に、反射部材6が設けられている。すなわち、反射部材6は、溝部P1が設けられることによって露出した基板1上に設けられている。反射部材6は、上部電極45側から入射されて光電変換層3を介して溝部P1に到達する光を反射させることができる。そのため、溝部P1から基板1を介して外部に放出される光が低減され得る。これに加えて、溝部P1に到達する光が反射部材6によって光電変換層3に再入射され得る。これにより、再入射された光は、光電変換に寄与させることができる。その結果、光電変換装置20の変換効率が向上する。
反射部材6は、下部電極2と絶縁するように設けられている。これにより、隣り合う下部電極2が、反射部材6を介して導通することによって生じ得る短絡の発生を低減できる。下部電極2と絶縁された反射部材6は、例えば、下部電極2と離間するように配置すればよい。また、他の方法としては、反射部材6自体を絶縁性の物質で形成すればよい。
反射部材6は、溝部P1における基板1上において光を反射させればよく、形状、個数等は特に限定されない。そのため、図2に示すように、反射部材6のXZ面における断面形状が、例えば、三角形状、四角形状、円形状であってもよい。このとき、断面形状が円形状であれば、光を乱反射させやすいため、発電寄与領域に入射される光の量を増加させることができる。また、反射部材6は、上面視した場合、図3に示すように、四角形状、円形状または枝状等であってもよい、このとき、平面形状が円形状であれば、光吸収層31内を進行するクラックの起点の発生を低減できる。これにより、光吸収層31に生じ得るクラックを低減できるため、光電変換装置20の信頼性が高まる。また、反射部材6は、図3に示すように、島状に配置されていてもよい。ここで、島状とは、複数の反射部材6が互いに独立して、間隙に対応する基板1上に分布するように配置されていることを指す。すなわち、複数の反射部材6は、基板1上において、平面的に分散している。例えば、溝部P1のX方向における幅が40μmの場合、最も近接する反射部材6同士の最短距離が、5〜10μm程度である。また、溝部P1を上面視して、溝部P1の面積に対する反射部材6の面積の割合は、0.01〜10%程度である。また、+Z方向における反射部材6の高さ(厚み)は、例えば、0.1〜0.4μmであればよい。反射部材6の高さは、+Z方向における下部電極2の高さ(厚み)と同等もしくは下部電極2の高さよりも小さくてもよい。このとき、反射部材6の高さを下部電極2の高さよりも小さくすれば、反射部材6が光吸収層31内に入り込む体積を小さくすることができる。これにより、光電変換に寄与する光吸収層31の量が過度に減少しにくくなるため、所望の変換効率を維持しやすい。
反射部材6は、例えば、銀、アルミニウム、モリブデン等を含む金属層で形成され得る。このような金属層は、蒸着法またはスパッタリング法で形成され得る。上述した銀およびアルミニウムは、光の反射率が高いため、反射部材6の反射効果をより高めることができる。一方で、下部電極2と反射部材6とを同じ材質、例えば、モリブデンで構成する場合、反射部材6となり得るモリブデンを残存させるように、溝部P1をレーザーまたはエッチング等で形成することができる。これにより、製造工程がより簡易になる。また、反射部材6は、例えば、光を反射しやすい金属粒子を分散させたガラスで形成してもよい。これにより、反射部材6が絶縁性の物質となる。このような反射部材2は、例えば、溝部P1を形成した後、銀またはアルミニウム等の金属粒子が分散されたシリカ等のガラスペーストを所望の位置に塗布し、焼成することによって形成できる。また、基板1にカリウムおよびナトリウムのいずれか一方を含む場合、反射部材6は酸化モリブデンで形成されてもよい。酸化モリブデンは、モリブデン等の金属に比べて、カリウムおよびナトリウムを透過しやすい。そのため、酸化モリブデンからなる反射部材6であれば、カリウムおよびナトリウムが光電変換層3に拡散されやすくなる。これにより、光電変換層3内におけ
るカリウムおよびナトリウムの含有量が増加するため、キャリア濃度を増加させ得る。その結果、変換効率がより向上する。
<(2)光電変換装置の製造プロセス>
ここで、上記構成を有する光電変換装置20の製造プロセスの一例について説明する。以下では、I−III−VI族化合物半導体を主に含む光吸収層31が塗布法あるいは印刷法が用いられて形成され、さらにバッファ層32が形成される場合を例として説明する。
<(2−1)下部電極2の形成>
まず、洗浄された基板1の一主面の略全面に、スパッタリング法が用いられて、モリブデンを主に含む下部電極2が形成される。このとき、スパッタリング法による圧力は、3〜4Paである。また、下部電極2の厚みは、0.2〜0.3μmである。
<(2−2)溝部P1および反射部材6の形成>
次に、下部電極2の上面のうちの所定の形成対象位置からその直下の基板1の上面にかけて、反射部材6および直線状の溝部P1が形成される。溝部P1は、例えば、YAGレーザーが走査されつつ所定の形成対象位置に照射されることで形成され得る。このとき、YAGレーザーが走査された範囲において、部分的にモリブデンが残存させることによって、反射部材6を形成する。具体的には、溝部P1の形成対象位置となる下部電極2の表面に焦点を合わせてYAGレーザーを照射するときに、レーザーの出力、パルス幅およびピッチを適宜調整することによって、島状になるように反射部材6となるモリブデンを残存させることができる。これにより、溝部P1および反射部材6を形成できる。
また、溝部P1および反射部材6は、エッチングでも形成できる。具体的に、まず、溝部P1の形成対象位置を除く部位にマスクを設ける。このとき、マスクは、反射部材6の形成対象位置にも設けるようにする。次いで、CF、SF等を含むガスでもってドライエッチングをすることによって、溝部P1および反射部材6を形成できる。
なお、反射部材6を酸化モリブデンで形成する場合は、上記した方法でモリブデンからなる反射部材6を形成した後、酸素雰囲気下で200〜400℃で焼成すればよい。
<(2−3)光電変換層3の形成>
次に、下部電極2の上に、光吸収層31とバッファ層32とが順次に形成されることで、光電変換層3が形成される。
ここで、光吸収層31は、所定の溶液が、下部電極2の表面に塗布された後に、乾燥および熱処理が順に施されることで形成され得る。所定の溶液は、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物と塩基性有機溶剤とを含む溶媒(混合溶媒とも言う)に、I−B族金属とIII−B族金属とが直接溶かされることで作製され得る。所定の溶液では、例えば、I−B族金属とIII−B族金属との合計濃度が10wt%以上となり得る。所定の溶液を塗布する方法としては、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレーおよびダイコータ等の種々の手法が採用され得る。
なお、カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物である。カルコゲン元素は、VI−B族元素のうちの硫黄、セレン、テルルである。カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニドおよびジセレニド等が採用され得る。
ここでは、例えば、光吸収層31の一形成方法として、主に下記工程(i)〜(iii)が順に行われる形成方法が採用され得る。(i)ベンゼンセレノールが、ピリジンに対し100
mol%となるように溶解させられて混合溶媒が作製される。(ii)この混合溶媒に、地金の銅、地金のインジウム、地金のガリウム、および地金のセレンが直接溶解させられて溶液が作製される。(iii)この溶液が、下部電極2の表面にブレード法によって塗布された後に、乾燥されて皮膜が形成され、この皮膜に対して水素ガスの雰囲気下で熱処理が施される。
なお、金属が混合溶媒に直接溶解させられる処理は、単体金属または合金の地金が、直接、混合溶媒に混入され、溶解させられる処理のことである。乾燥は、例えば、還元雰囲気下で行われれば良い。乾燥温度は、例えば、50〜300℃以下であれば良い。熱処理が還元雰囲気で行われれば、皮膜の酸化が低減されて良好なI−III−VI族化合物半導体が得られる。還元雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、水素雰囲気および水素と窒素またはアルゴンの混合気体の雰囲気のうち何れかであれば良い。熱処理温度は、例えば、400〜600℃以下であれば良い。
バッファ層32は、ケミカルバスデポジション法(CBD法)によって形成される。例えば、酢酸カドミウムとチオ尿素とがアンモニアに溶解させられることで作製された溶液に光吸収層31の形成までが行われた基板1が浸漬されることで、CdSを主に含むバッファ層32が形成され得る。
<(2−4)透光性導電層4の形成>
次に、光電変換層3の上に透光性導電層4が形成される。透光性導電層4は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成され得る。例えば、バッファ層32の上に、アルミニウムが添加された酸化亜鉛を主に含む透明な透光性導電層4が形成される。
<(2−5)溝部P2の形成>
次に、透光性導電層4の上面のうちの所定の形成対象位置から下部電極2の上面に至る領域に、溝部P2が形成される。溝部P2は、スクライブ針が用いられたメカニカルスクライビングによって形成され得る。なお、溝部P2は、溝部P1と同様に、レーザー光によって形成されても良い。
<(2−6)グリッド電極部5の形成>
次に、溝部P2が形成された透光性導電層4の上面のうちの所定の形成対象位置から溝部P2の内部にかけてグリッド電極部5が形成される。
グリッド電極部5は、例えば、銀等の金属粉が樹脂製のバインダー等に分散させられた金属ペーストが集電部5aおよび連結部5bを有するように印刷され、印刷後の金属ペーストが乾燥によって固化されることで形成され得る。このとき、溝部P2にも金属ペーストが入り込み、乾燥によって固化されることでグリッド電極部5の垂下部5cが形成される。ここで言う固化には、金属ペーストに含まれるバインダーが熱可塑性樹脂である場合における熔融後の固化と、バインダーが熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂等の硬化性樹脂である場合における硬化による固化とが含まれる。
金属ペーストとしては、銀の含有率が85〜98wt%以下であり、樹脂成分の含有率が2〜15wt%以下であるものが採用され得る。例えば、金属ペーストにおける銀の含有率が88〜92wt%以下であれば、印刷に適した粘性と良好な導電性とが得られる。
<(2−7)溝部P3の形成>
グリッド電極部5が形成された後、透光性導電層4の上面のうちの所定の形成対象位置から下部電極2の上面に至る領域に、溝部P3が形成される。これにより、図1および図
2で示された光電変換装置20が得られる。溝部P3は、溝部P2と同様に、スクライブ針が用いられたメカニカルスクライビングによって形成され得る。このとき、グリッド電極部5の端部が若干削られても良い。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
1:基板
2:下部電極(電極)
3:光電変換層
31:光吸収層
32:バッファ層
4:透光性導電層
5:グリッド電極部
5a:集電部
5b:連結部
5c:垂下部
6:反射部材
10:光電変換セル
20:光電変換装置
45:上部電極
P1、P2、P3:溝部

Claims (5)

  1. 基板と、
    互いに間隙を置いて前記基板上に設けられた複数の電極と、
    該電極および前記間隙を覆うように設けられた光電変換層と、
    前記間隙に対応する前記基板上に、前記電極から絶縁されて設けられた反射部材とを備えた光電変換装置。
  2. 前記反射部材の高さが、前記電極の高さよりも低い、請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 前記反射部材は、上面視したときに、前記間隙に対応する前記基板上において島状に設けられている、請求項1または請求項2に記載の光電変換装置。
  4. 前記基板は、カリウムおよびナトリウムのいずれか一方を含み、
    前記反射部材は、酸化モリブデンからなる、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光電変換装置。
  5. 前記反射部材は、モリブデンからなる、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光電変換装置。
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