(実施形態1)
以下では、本実施形態の熱電変換デバイスについて図1を参照しながら説明する。なお、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面に対応する概略断面図であるが、図1(a)では、図1(b)中に示してある後述の層間絶縁膜50において熱電変換部40に重なる部分およびパッシベーション膜60の図示を省略してある。また、本実施形態の熱電変換デバイスは、熱型の赤外線センサである。
熱電変換デバイスは、支持基板10と、支持基板10の一表面に形成された凹所11の内面から離れて配置された薄膜構造部20と、支持基板10と薄膜構造部20とを連結している梁部30と、熱エネルギを電気エネルギに変換する熱電変換部40とを備えている。ここにおいて、熱電変換デバイスは、薄膜構造部20が、複数(図1(a)の例では、8×4=32個)の梁部30を介して支持基板10に支持されている。なお、梁部30の数は特に限定するものではない。
支持基板10は、シリコン基板10aとシリコン基板10aの主表面上の絶縁層10bとを有しており、絶縁層10bの表面が上記一表面を構成している。
複数の梁部30は、薄膜構造部20の厚み方向に沿った薄膜構造部20の中心線に対して回転対称となるに配置されている。
梁部30では、熱電変換部40の熱電材料により形成された部分が露出しており、熱電材料が、SiGeもしくはGeである。
以下、熱電変換デバイスの各構成要素について詳細に説明する。
支持基板10は、矩形板状に形成されている。また、凹所11は、矩形状に開口され四角錐状の形状となっている。ここにおいて、支持基板10は、シリコン基板10aとして、主表面が(100)面の単結晶のn形シリコン基板を採用している。また、支持基板10は、凹所11の内面のうちシリコン基板10aにより構成される部位が、シリコン基板10aの(111)面となっている。シリコン基板10aの導電形は、n形であるが、これに限らず、p形でもよい。
絶縁層10bは、シリコン窒化膜により構成してある。
支持基板10は、絶縁層10bが、シリコン基板10aの主表面において凹所11以外の部位に形成されている。
また、熱電変換デバイスは、支持基板10と薄膜構造部20との間において梁部30が存在する領域以外に、凹所11の内部空間に連通するスリット15が形成されている。
熱電変換部40は、サーモパイルにより構成されている。このサーモパイルからなる熱電変換部40は、支持基板10と薄膜構造部20とに跨って形成された複数(図1(a)の例では4つ)の熱電対40bが直列接続されている。熱電対40bは、細長の第1熱電要素41と、細長の第2熱電要素42と、第1熱電要素41および第2熱電要素42の一端部41a,42a同士を薄膜構造部20において電気的に接続した第1の接続部43とで構成されている。第1熱電要素41および第2熱電要素42は、各々の平面形状が直線状となっている。ここで、熱電変換部40は、対をなす第1熱電要素41および第2熱電要素42の各一端部41a,42aと、これら一端部41a,42a同士を接続した第1の接続部43とで温接点T1を構成している。また、熱電変換部40は、隣り合う熱電対40bの第1熱電要素41の他端部41bおよび第2熱電要素42の他端部42bと、これら他端部41b,42b同士を接続した第2の接続部44とで、冷接点T2を構成している。しかして、熱電変換部40は、各温接点T1が支持基板10から熱絶縁され、各冷接点T2が支持基板10に熱結合されている。なお、図1(a)では、第1熱電要素41と第2熱電要素42とのレイアウトを分かりやすくするために、第1熱電要素41と第2熱電要素42とに互いに異なるハッチングを施してある。
熱電変換部40は、第1熱電要素41および第2熱電要素42の中間部41c,42cの各々が、1つずつ梁部30を構成し、露出している。また、本実施形態の熱電変換デバイスは、熱電変換部40の熱電材料が、SiGeもしくはGeである。複数の梁部30は、第1熱電要素41の中間部41cにより構成された梁部30と、第2熱電要素42cの中間部42cにより構成された梁部30とが、薄膜構造部20の外周方向に沿って交互に並んで配置されている。また、各梁部30は、凹所11側にシリコン窒化膜からなる下地膜30bを備えている。この下地膜30bは、支持基板10の絶縁層10bと一体に形成されている。
本実施形態の熱電変換デバイスでは、熱電変換部40の熱電材料がSiGeもしくはGeであることにより、熱電材料がSiである場合に比べて、ゼーベック係数の向上による高感度化を図ることが可能となる。また、SiGeおよびGeは、多結晶でもよいし単結晶でもよい。ここで、SiGeおよびGeは、多結晶のほうが単結晶よりも低温で成膜可能であり、製造が容易になるという利点がある。
また、本実施形態の熱電変換デバイスでは、第1熱電要素41および第2熱電要素42の熱電材料がSiGeもしくはGeであることにより、支持基板10に凹所11を形成する際のエッチング液に対する第1熱電要素41および第2熱電要素42のエッチング耐性を高めることが可能となる。要するに、この熱電変換デバイスでは、シリコン基板10aをアルカリ系溶液(例えば、TMAH溶液やKOH溶液など)によって結晶異方性エッチングする際に、第1熱電要素41および第2熱電要素42がエッチングされるのを抑制することが可能となる。熱電変換デバイスでは、例えば、第1熱電要素41、第2熱電要素42を、それぞれ、p形多結晶SiGe層、n形多結晶SiGe層により構成することができる。また、熱電変換デバイスは、第1熱電要素41、第2熱電要素42を、それぞれ、p形単結晶SiGe層、n形単結晶SiGe層により構成してもよい。また、熱電変換デバイスは、第1熱電要素41、第2熱電要素42を、それぞれ、p形多結晶Ge層、n形多結晶Ge層により構成してもよい。また、熱電変換デバイスは、第1熱電要素41、第2熱電要素42を、それぞれ、p形単結晶Ge層、n形単結晶Ge層により構成してもよい。
第1の接続部43および第2の接続部44は、例えば、Al−Si膜、Al膜などからなる金属膜により構成することができる。
薄膜構造部20は、シリコン窒化膜からなる下地膜20bを備えている。この下地膜20bは、梁部30の下地膜30bおよび支持基板10の絶縁層10bと一体に形成されている。薄膜構造部20は、下地膜20bにおける支持基板10側とは反対の表面側に、赤外線を吸収する赤外線吸収膜45、第1熱電要素41および第2熱電要素42の各一端部41a,42aが形成されている。また、薄膜構造部20は、赤外線吸収膜45、各温接点T1の各々の一部を覆う層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50および各温接点T1の各々において層間絶縁膜50から露出した部分を覆うパッシベーション膜60とを備えている。層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜は、薄膜構造部20と支持基板10における凹所11の周部とに形成されている。そして、層間絶縁膜50は、支持基板10から分離された部位が、薄膜構造部20の一部を構成して、各熱電変換部40の各々の温接点T1の群を覆っており、支持基板10における凹所11の周部に形成された部位が、各熱電変換部40の各々の冷接点T2の群を覆っている。
ここで、温接点T1の第1の接続部43は、熱電対40bの第1熱電要素41および第2熱電要素42の各一端部41a,42aに対して、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a1,50a2それぞれを通して接続されている。また、冷接点T2の第2接続部44は、隣り合う熱電対40bにおける一方の熱電対40bの第1熱電要素41の他端部41b、他方の熱電対40bの第2熱電要素42の他端部42bに対して、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50b1,50b2それぞれを通して接続されている。
赤外線吸収膜45、第1熱電要素41および第2熱電要素42は、支持基板10の上記一表面を含む仮想平面上に配置されている。薄膜構造部20は、赤外線吸収膜45が、赤外線を吸収して熱に変換する機能を有している。ここにおいて、本実施形態の熱電変換デバイスでは、熱電変換部40により、赤外線吸収膜45の温度変化を検出することが可能である。
層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成している。また、パッシベーション膜60は、PSG膜とNSG膜との積層膜により構成されているが、当該積層膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。また、本実施形態の熱電変換デバイスでは、層間絶縁膜50およびパッシベーション膜60も赤外線吸収膜として機能する。
本実施形態の熱電変換デバイスは、図1(a)に示すように、複数(ここでは、4つ)の熱電変換部40を備えている。すなわち、熱電変換デバイスは、薄膜構造部20に対して1対複数(図1(a)の例では、1対4)の関係で熱電変換部40を備えている。そして、熱電変換デバイスは、複数(ここでは、4つ)の熱電変換部40が、直列接続されている。これにより、熱電変換デバイスは、各熱電変換部40ごとに出力を取り出す場合に比べて、温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全ての熱電変換部40が電気的に接続されているから、出力電圧の向上による感度の向上を図ることが可能となる。上述の例では、複数の熱電変換部40の全てを直列接続しているが、これに限らず、例えば、各々2個の熱電変換部40を直列接続した直列回路を並列接続するようにしてもよい。このように複数の熱電変換部40が直並列接続されている場合には、複数の熱電変換部40の全てが並列接続されている場合や各熱電変換部40ごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることが可能となる。また、複数の熱電変換部40が直並列接続されている場合や、複数の熱電変換部40の全てが並列接続されている場合には、4つ全ての熱電変換部40が直列接続されている場合や各熱電変換部40ごとに出力を取り出す場合に比べて、電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
複数の熱電変換部40が上述の接続関係で接続された素子部46は、この素子部46の一端が、金属膜(例えば、Al−Si膜、Al膜など)などからなる配線47を介して一方のパッド(図示せず)と電気的に接続されている。また、素子部46は、この素子部46の他端が、金属膜(例えば、Al−Si膜、Al膜など)などからなる配線48を介して他方のパッド(図示せず)と電気的に接続されている。各配線47,48および各パッドは、層間絶縁膜50上に形成されている。また、各配線47,48は、それぞれ、素子部46の上記一端になる第1熱電要素41の他端部41b、素子部46の上記他端になる第2熱電要素42の他端部42bに対して、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50c1,50c2を通して接続されている。また、パッシベーション膜60には、各パッドそれぞれを露出させる2つの矩形状の開口部(図示せず)が形成されている。本実施形態の熱電変換デバイスでは、各配線47,48および各パッドは、各接続部43,44と同じ材料で、且つ、同じ膜厚に設定されている。これにより、本実施形態の熱電変換デバイスでは、製造時に、各配線47,48および各パッドと、各接続部43,44とを同時に形成することが可能となり、製造コストの低コスト化を図ることが可能となる。なお、各配線47,48および各パッドは、各接続部43,44と同じ材料に限らず、別の材料で形成してもよいし、各接続部43,44とは別々の工程で形成することも可能である。
本実施形態の熱電変換デバイスでは、赤外線吸収膜45の材料として、第2熱電要素42と同じ材料を採用している。また、本実施形態の熱電変換デバイスでは、赤外線吸収膜45の膜厚と第2熱電要素42の膜厚とを、同じ値に設定してある。これにより、本実施形態の熱電変換デバイスでは、赤外線吸収膜45と第2熱電要素42とを同時に形成することが可能となり、製造コストの低コストを図ることが可能となる。赤外線吸収膜45の材料は、第2熱電要素42と同じ材料に限らず、第1熱電要素41と同じ材料を採用してもよい。この場合は、赤外線吸収膜45の膜厚と第1熱電要素41の膜厚とを同じ値に設定することにより、赤外線吸収膜45と第1熱電要素41とを同時に形成することが可能となり、製造コストの低コストを図ることが可能となる。
薄膜構造部20は、5箇所に赤外線吸収膜45が形成されており、薄膜構造部20の中央部に形成された1つの赤外線吸収膜45の平面サイズが、薄膜構造部20の周部に形成された4つの赤外線吸収膜45の平面サイズよりも大きく設定されている。また、各赤外線吸収膜45の平面形状は、正方形状である。薄膜構造部20の中央部の赤外線吸収膜45は、素子部46の全ての温接点T1により囲まれている。また、薄膜構造部20の周部の4つの赤外線吸収膜45は、中央部の赤外線吸収膜45の対角線の延長線上に配置されている。すなわち、薄膜構造部20の周部の4つの赤外線吸収膜45は、中央部の赤外線吸収膜45の外周方向において等間隔で離間して配置されている。これにより、薄膜構造部20の面内での温度のばらつきを低減することが可能となる。
複数の梁部30は、薄膜構造部20の厚み方向に沿った薄膜構造部20の中心線に対して回転対称となるに配置されていることが好ましい。これにより、薄膜構造部20および各梁部30に反りなどの変形が発生するのを抑制することが可能となる。
熱電変換デバイスは、各梁部30の各々の平面形状が直線状であり、各梁部30が長手方向への引張応力を有していることが好ましい。これにより、熱電変換デバイスは、機械的強度の向上を図ることが可能となり、また、各梁部30の変形を抑制することが可能となる。つまり、熱電変換デバイスは、各梁部30が反るのを抑制することが可能となる。よって、熱電変換デバイスは、各梁部30が支持基板10に付着するスティッキングの発生を防止することが可能となり、製造歩留まりの向上による低コスト化を図ることが可能となる。また、熱電変換デバイスは、各梁部30と支持基板10の凹所11の内面との距離のばらつきを低減可能となり、製品ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
本実施形態の赤外線センサでは、絶縁層10bの膜厚を50nm、下地膜20bの膜厚を50nm、下地膜30bの膜厚を50nm、第1熱電要素41および第2熱電要素42の膜厚を1μm、層間絶縁膜50の膜厚を1μm、上記金属膜の膜厚を1μm、パッシベーション膜60の膜厚を0.5μm(PSG膜の膜厚を0.2μm、NSG膜の膜厚を0.3μm)、としてあるが、これらの数値は一例であって、特に限定するものではない。
以下、本実施形態の熱電変換デバイスの製造方法について図2および図3を参照しながら説明する。なお、図2および図3では、図1(b)に示した断面図に対応する部位の断面を示してある。
まず、支持基板10の基礎となるシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハの状態である)10aを準備する。その後、シリコン基板10aの主表面側に第1の所定膜厚(例えば、50nm)のシリコン窒化膜10cを形成する窒化膜形成工程を行うことによって、図2(a)に示す構造を得る。この窒化膜形成工程では、シリコン基板10aの主表面側に、シリコン窒化膜10cをLPCVD法により形成している。このシリコン窒化膜10cは、絶縁層10bおよび各下地膜20b,30bの元となる。
上述の窒化膜形成工程の後、シリコン基板10aの主表面側の全面に、第2の所定膜厚(例えば、1μm)のノンドープの半導体材料層16を形成する半導体材料層形成工程を行うことによって、図2(b)に示す構造を得る。半導体材料層形成工程では、ノンドープの半導体材料層16としてノンドープの多結晶SiGe層をLPCVD法により成膜しているが、これに限らず、ノンドープの多結晶Ge層をLPCVD法により成膜してもよい。また、半導体材料層形成工程では、ノンドープの多結晶SiGe層もしくはノンドープの多結晶Ge層をLPCVD法により成膜した後、その成膜温度(例えば、700℃)よりも高いアニール温度(例えば、1000℃)でアニール処理を行うことが好ましい。これにより、多結晶SiGe層もしくは多結晶Ge層の結晶粒の結晶粒径を大きくさせ結晶性を向上させることが可能となる。このアニール処理のプロセス条件としては、例えば、アニール装置として、ランプアニール装置を用い、アニール温度を1000℃、アニール時間を6時間とすることにより、多結晶SiGe層もしくは多結晶Ge層の結晶性を向上させることが可能になるとともに、このアニール処理の後の製造工程で結晶粒の結晶粒径の変化を抑制可能となる。アニール処理のプロセス条件について、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、このアニール処理の後の製造工程で結晶粒の結晶粒径の変化を抑制可能なプロセス条件であることが好ましい。また、本実施形態では、アニール処理の雰囲気を酸素ガス雰囲気としているが、雰囲気は酸素ガス雰囲気に限らず、例えば、窒素ガス雰囲気や真空雰囲気などでもよい。また、アニール処理は、ランプアニール装置を用いたランプアニールに限らず、例えば、レーザ装置を用いたレーザアニールでもよい。
上述の半導体材料層形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してノンドープの半導体材料層16をパターニングする半導体材料層パターニング工程を行う。この半導体材料層パターニング工程では、シリコン基板10aの主表面側の全面に形成されているノンドープの半導体材料層16のうち、第1熱電要素41、第2熱電要素42および赤外線吸収膜45それぞれに対応する部分が残るように、パターニングを行う。上述のパターニング工程の後、ノンドープの半導体材料層16のうち第2熱電要素42および赤外線吸収膜45に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことにより第2熱電要素42および赤外線吸収膜45を形成するn形不純物ドーピング工程を行う。次に、ノンドープの半導体材料層16のうち第1熱電要素41に対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことにより第1熱電要素41を形成するp形不純物ドーピング工程を行うことによって、図2(c)に示す構造を得る。なお、n形不純物ドーピング工程でのイオン注入条件については、例えば、ノンドープの半導体材料層16がノンドープの多結晶SiGe層、n形不純物がリンの場合、加速電圧を60keV、ドーズ量を7.5×1015cm-2とすればよいが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、p形不純物ドーピング工程でのイオン注入条件については、例えば、ノンドープの半導体材料層16がノンドープの多結晶SiGe層、p形不純物がボロンの場合、加速電圧を60keV、ドーズ量を5×1015cm-2とすればよいが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、n形不純物ドーピング工程とp形不純物ドーピング工程との順序は逆でもよい。また、第1熱電要素41の形成方法は、上述の例に限らず、例えば、p形の半導体材料層(例えば、p形多結晶SiGe層、p形多結晶Ge層など)をLPCVD法により成膜してから、このp形の半導体材料層をパターニングすることで第1熱電要素41を形成してもよい。また、第2熱電要素42および赤外線吸収膜45の形成方法は、上述の例に限らず、n形の半導体材料層(例えば、n形多結晶SiGe層、n形多結晶Ge層など)をLPCVD法により成膜してから、このn形の半導体材料層をパターニングすることで第2熱電要素42および赤外線吸収膜45を形成してもよい。
上述の第1熱電要素41、第2熱電要素42および赤外線吸収膜45を形成した後、シリコン基板10aの主表面側の全面に、第3の所定膜厚(例えば、1μm)の層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行うことによって、図2(d)に示す構造を得る。この層間絶縁膜形成工程では、例えば、BPSG膜からなる層間絶縁膜50を常圧CVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより表面が平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
上述の層間絶縁膜形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に、上述の各コンタクトホール50a1,50a2、50b1,50b2、50c1,50c2を形成するコンタクトホール形成工程を行う。その後、シリコン基板10aの主表面側の全面に各接続部43,44、各配線47,48および各パッドの基礎となる金属膜(例えば、Al−Si膜、Al膜など)を形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで各接続部43,44、各配線47,48および各パッドを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図3(a)に示す構造を得る。上述のコンタクトホール形成工程では、例えば、RIE装置により、層間絶縁膜50をエッチングすることで各コンタクトホール50a1,50a2、50b1,50b2、50c1,50c2を形成する。また、金属膜形成工程では、シリコン基板10aの主表面側(支持基板10の上記一表面側)に、第4の所定膜厚(例えば、1μm)の金属膜をスパッタ法などにより形成する。また、金属膜パターニング工程におけるエッチングは、例えばRIE装置により行うことができる。
上述の金属膜パターニング工程の後、シリコン基板10aの主表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)にパッシベーション膜60を形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図3(b)に示す構造を得る。このパッシベーション膜形成工程では、第5の所定膜厚(例えば、0.2μm)のPSG膜と第6の所定膜厚(例えば、0.3μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60を例えば常圧CVD法により形成する。なお、パッシベーション膜60は、PSG膜とNSG膜との積層膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜でもよい。
上述のパッシベーション膜形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン基板10aの主表面側の積層構造部をパターニングする積層構造部パターニング工程を行うことによって、図3(c)に示す構造を得る。この積層構造部パターニング工程では、シリコン窒化膜10cと層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とが積層されている領域においてスリット15に対応する部位を、シリコン基板10aの主表面が露出するようにエッチングする。また、この積層構造部パターニング工程では、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とが第1熱電要素41および第2熱電要素42の各々において梁部30となる中間部41c,42c上に形成されている部位を、第1熱電要素41および第2熱電要素42が露出するようにエッチングする。積層構造部パターニング工程では、例えば、RIE装置などのドライエッチング装置を用いてエッチングを行ってもよいし、バッファードフッ酸などのエッチング液を入れたウェットエッチング装置を用いてエッチングを行ってもよい。また、積層構造部パターニング工程では、シリコン基板10a、第1熱電要素41および第2熱電要素42をエッチングストッパ層として、エッチングを行う。上述の積層構造部パターニング工程を行うことによって、シリコン窒化膜10bがパターニングされるので、これにより、シリコン窒化膜10cを元とした絶縁層10bおよび各下地膜20b,30bが形成される。
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドを露出させる上記開口部を形成する開口部形成工程を行う。その後、凹所11を形成する凹所形成工程を行うことによって、図3(d)に示す構造の熱電変換デバイスを得る。この凹所形成工程では、上述の積層構造部の厚み方向に貫通しているスリット15を通してシリコン基板10aをエッチングすることにより、凹所11を形成する。この凹所形成工程では、スリット15を通してアルカリ系溶液からなるエッチング液を導入してシリコン基板10aを結晶異方性エッチングする。アルカリ系溶液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、アルカリ系溶液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。
上述の凹所形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、凹所形成工程が終了した後、個々の熱電変換デバイスに分離する分離工程(ダイシング工程)を行えばよい。上述の製造方法では、各梁部30がLPCVD法により形成されたシリコン窒化膜10cおよび半導体材料層16をパターニングすることにより形成されているので、各梁部30を各々の長手方向において引張応力を有した構成とすることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の熱電変換デバイスは、支持基板10と、支持基板10の一表面に形成された凹所11の内面から離れて配置された薄膜構造部20と、支持基板10と薄膜構造部20とを連結している複数の梁部30と、熱エネルギを電気エネルギに変換する熱電変換部40とを備えている。そして、本実施形態の熱電変換デバイスでは、支持基板10が、シリコン基板10aとシリコン基板10aの主表面上の絶縁層10bとを有している。また、本実施形態の熱電変換デバイスは、複数の梁部30が、薄膜構造部20の厚み方向に沿った薄膜構造部20の中心線に対して回転対称となるように配置され、梁部30で、熱電変換部40の熱電材料により形成された部分が露出しており、熱電材料が、SiGeもしくはGeである。これにより、本実施形態の熱電変換デバイスでは、感度の向上を図ることが可能となる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態の熱電変換デバイスについて図4に基づいて説明する。本実施形態の熱電変換デバイスの基本構成は実施形態1と略同じなので、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の熱電変換デバイスは、支持基板10における絶縁層10bがシリコン酸化膜により構成されている点が相違する。なお、このシリコン酸化膜は、シリコン基板10aの主表面側の全面に熱酸化法により形成し、その後、実施形態1において説明した積層構造部パターニング工程でパターニングすればよい。
また、本実施形態の熱電変換デバイスは、各梁部30が熱電変換部40の熱電材料のみにより形成されている点が相違する。要するに、本実施形態の熱電変換デバイスでは、第1熱電要素41の中間部41cのみにより構成された梁部30と、第2熱電要素42の中間部42cのみにより構成された梁部30とが、薄膜構造部20の外周方向において交互に並んで配置されている。要するに、各梁部30は、実施形態1で説明した下地膜30b(図1参照)を備えていない。
また、本実施形態の熱電変換デバイスは、薄膜構造部20において、実施形態1で説明した下地膜20b(図1参照)を備えていない。したがって、本実施形態の熱電変換デバイスでは、赤外線吸収膜45と、第1熱電要素41および第2熱電要素42の各一端部41a,42aとが支持基板10の凹所11側で露出している。なお、本実施形態の熱電変換デバイスの製造にあたっては、上述のシリコン酸化膜のうち梁部30および薄膜構造部20それぞれの下になる部分を、凹所形成工程において、上述のアルカリ系溶液によってエッチングすることが可能となる。ただし、シリコン酸化膜のエッチングレートがシリコン基板10aの〔100〕方向のエッチングレートに比べて遅いので、シリコン酸化膜の膜厚は、10nm程度に設定しておくことが好ましい。
本実施形態の熱電変換デバイスでは、各梁部30が熱電変換部40の熱電材料のみにより形成されているので、実施形態1に比べて、薄膜構造部20から支持基板10への熱伝導を低減することが可能となり、感度の向上を図ることが可能となる。
(実施形態3)
以下では、本実施形態の熱電変換デバイスについて図5に基づいて説明する。本実施形態の熱電変換デバイスの基本構成は実施形態1と略同じなので、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施形態の熱電変換デバイスの製造方法は、実施形態1において説明した熱電変換デバイスの製造方法と略同じなので、説明を省略する。
熱電変換デバイスは、薄膜構造部20に、凹所11の内部空間に連通する孔25が貫設されている。ここにおいて、薄膜構造部20の孔25は、熱電変換デバイスの製造時において、スリット15を形成する積層構造部パターニング工程において形成する。したがって、本実施形態の熱電変換デバイスの製造方法では、凹所形成工程において、スリット15だけでなく孔25を通してエッチング液を導入することが可能となり、凹所形成工程でのエッチング時間を短くすることが可能となる。
薄膜構造部20は、3つの孔25が、直線状の形状に形成されている。ここで、薄膜構造部20は、中央部の赤外線吸収膜45の平面視における一方の対角線に沿って1つの孔25が形成され、他方の対角線に沿って2つの孔25が形成され、前者の1つの孔25の幅方向の両側に後者の2つの孔25が形成されている。これにより、薄膜構造部20は、全ての温接点T1で囲まれた赤外線吸収膜45が分離されず、且つ、各孔25が温接点T1に干渉しないようにしている。
本実施形態の熱電変換デバイスでは、薄膜構造部20に、凹所11の内部空間に連通する孔25が貫設されているので、製造コストの低コスト化を図ることが可能となる。
(実施形態4)
以下、本実施形態の熱電変換デバイスについて図6および図7に基づいて説明する。
ところで、実施形態1〜3において説明した熱電変換デバイスでは、1枚の支持基板10に対して薄膜構造部20を1つだけ設けてある。
これに対して、本実施形態の熱電変換デバイスは、支持基板10の上記一表面側において薄膜構造部20を複数備え、これら複数の薄膜構造部20が、支持基板10の上記一表面側でアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配置されている。ここにおいて、熱電変換デバイスは、上述の薄膜構造部20および素子部46と画素選択用のスイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有する画素部2が、支持基板10の上記一表面側でアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配置されている。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
熱電変換デバイスは、i×j個(図7の例では、8×8個)の画素部2が、支持基板10の一表面側においてi行j列(図示例では、8行8列)の2次元アレイ状に配置されている。なお、図示例では、i=8、j=8としてあるが、i≧2、j≧2であればよい。
上述のMOSトランジスタ4は、シリコン基板10a(図1(b)参照)の主表面側においてウェル領域(図示せず)内でドレイン領域4dとソース領域4sとが離間して形成されている。なお、図7には、MOSトランジスタ4をnチャネルMOSトランジスタとした場合の熱電変換デバイスの等価回路図を示してある。また、図7の等価回路図では、素子部46を抵抗の図記号で表してある。
また、図7から分かるように、熱電変換デバイスは、各列のj個(8個)の画素部2の素子部46の一端がMOSトランジスタ4のソース領域4s−ドレイン領域4dを介して各列ごとに共通接続されたj個(8個)の第1の配線101を備えている。
また、熱電変換デバイスは、各行の素子部46に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極4geが各行ごとに共通接続されたi個(8個)の第2の配線102と、各行のMOSトランジスタ4のウェル領域が各列ごとに共通接続されたj個(8個)の第3の配線103と、各列のi個(8個)の素子部46の他端が各列ごとに共通接続されたj個(図7に図示した例では、8個)の第4の配線104とを備えている。
上述の熱電変換デバイスは、第1の配線101が各別に接続された出力用のj個の第1のパッドVout1〜Vout8と、第2の配線102が各別に接続された画素部選択用のi個の第2のパッドVsel1〜Vsel8と、各第3の配線103が共通接続された第3のパッドVchと、第4の配線104が共通接続された基準バイアス用の第4のパッドVrefinとを備えている。しかして、熱電変換デバイスは、全ての素子部46の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。例えば、熱電変換デバイスを制御する制御手段であるIC素子によって、MOSトランジスタ4が順次、オン状態になるように各画素部2を選択するための第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位を制御することで、IC素子が、各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。
ここで、第1のパッドVout1〜Vout8の電位をVout、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位をVs、第3のパッドVchの電位をVwell、第4のパッドVrefinの電位をVref、素子部46の出力電圧をVo、チャネル形成用領域であるウェル領域とソース領域4sとで構成される第1の寄生ダイオードおよびウェル領域とドレイン領域4dとで構成される第2の寄生ダイオードのしきい値電圧をVthとする。上述のIC素子は、MOSトランジスタ4がnMOSトランジスタである場合、第2の配線102に接続されたi個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVon、第2の配線102に接続されたi個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッド102の電位VsをVoffとし、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとしたときに、
−Vth<{Vwell−(Vref+Vo)}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で熱電変換デバイスを制御することが好ましい。
また、IC素子は、MOSトランジスタ4がpMOSトランジスタである場合、
−Vth<{(Vref+Vo)−Vwell}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で熱電変換デバイスを制御することが好ましい。
IC素子が、例えば、第4のパッドVrefinの電位Vrefを1.2V、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2V、第2の配線102に接続されたi個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVonを5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧(Vref+Vo)を読み出すことが可能となる。また、第2の配線102に接続されたi個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVoffを0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧は読み出されない。
また、熱電変換デバイスは、各MOSトランジスタ4のゲート電極4ge・ソース電極4se間に過電圧が印加されるのを防止するために、各第2の配線102それぞれにカソードが接続された複数のツェナダイオードZDを備えている。ここで、ツェナダイオードZDは、シリコン基板10aの上記主表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域内に第2導電形の第2拡散領域が形成されたものである。そして、熱電変換デバイスは、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域が共通接続された第5のパッドVzdを備えている。
また、熱電変換デバイスは、シリコン基板10aが接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えている。
各画素部2の薄膜構造部20および素子部46は、シリコン基板10aの主表面側において第1の領域A1(図6参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、シリコン基板10aの主表面側において第2の領域A2(図6参照)に形成されている。
本実施形態の熱電変換デバイスでは、薄膜構造部20を複数備え、これら複数の薄膜構造部20が、支持基板10の上記一表面側でアレイ状に配置されているので、例えば、熱分布や熱源の移動を検出することが可能となる。
なお、複数の薄膜構造部20の配置は、アレイ状であればよく、2次元アレイ状に限らず、例えば、1次元アレイ状などでもよい。
本実施形態の熱電変換デバイスでは、MOSトランジスタ4、第1の配線101、第2の配線102、第3の配線103およびツェナダイオードZDなどにより構成される回路部が、支持基板10に形成されて熱電変換部40と協働する電子回路部を構成している。これにより、本実施形態の熱電変換デバイスでは、支持基板10に形成されて熱電変換部40と協働する電子回路部を備えているので、各素子部46の出力電圧を選択的に読み出すことが可能となる。支持基板10に形成されて熱電変換部40と協働する電子回路部は、上述の構成に限らず、例えば、素子部46の出力信号を信号処理するCMOS ICなどにより構成してもよい。ここにおいて、信号処理としては、例えば、素子部46から入力させる出力信号の選択や素子部46の出力信号の増幅などがある。また、熱電変換デバイスは、薄膜構造部20が1つの場合でも、支持基板10に形成されて熱電変換部40と協働する電子回路部を設けてもよい。