JP2013049608A - 大口径サファイア単結晶基板 - Google Patents

大口径サファイア単結晶基板 Download PDF

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Abstract

【課題】窒化物系化合物をエピタキシャル成長する際に、不規則な反りが発生しない大口径サファイア単結晶基板を提供する。
【解決手段】チョクラルスキー法により、サブグレインや気泡のない直胴部の直径が150mm以上のc軸方位サファイア単結晶体を育成し、これを水平方向に切断・基板加工することにより、平面方向の応力分布が同心円状を呈した6インチ以上の大口径サファイア単結晶基板を得る。この基板は窒化物系化合物をエピタキシャル成長する際に発生する基板の反りが規則的な碗型であり、窒化物系化合物の膜厚や膜組成を容易に均一に制御できるため、LEDの歩留まり向上に優れた効果が得られる。
【選択図】図5

Description

本発明は、窒化物系化合物エピタキシャル成長用のサファイア単結晶基板に関する。
サファイア(酸化アルミニウム)単結晶体は、青色LEDや白色LEDを作製する際のエピタキシャル成長基板として広く利用されている。近年、これらのLEDは省エネルギーの観点からLEDテレビやLED照明などとして需要が拡大傾向にあり、サファイア基板の需要も拡大が予想されている。
LEDチップは、c軸面サファイア基板上にMOCVD装置を用いてGaN、InGaN、AlN等の窒化物系化合物半導体発光体層を形成した後、チップに分割して作製する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。よって、安価かつ大面積のc軸面を表面に有するサファイア基板を提供することは、LEDチップの生産の高効率化、低コスト化を達成するために重要な課題である。
c軸面サファイア基板の材料となるサファイア単結晶体の作製方法にはベルヌーイ法、EFG(Edge−defined Film−fed Growth)法、チョクラルスキー法、キロポーラス法、HEM(Heat Exchange Method)法などが知られているが、現状、直径150mmの大型基板(当該業者は一般にこれを6インチ基板と呼ぶ)の材料となるサファイア単結晶体の成長方法としては、唯一、キロポーラス法のみが実用化されている。
キロポーラス法は溶融固化法の一種で、原料溶融液面に接触させた種結晶体を引上げず、或いはチョクラルスキー法と比較して極端に遅い速度で引上げつつ、ヒーター出力を徐々に下げて坩堝を冷却することにより、原料溶融液面下で単結晶体を成長させる方法であり、優れた結晶特性を有する大口径の単結晶体を比較的容易に得ることができる。
しかし、キロポーラス法はチョクラルスキー法と比べて非常に弱い温度勾配下で結晶成長を行うため、結晶方位ごとに異なる成長速度の差の影響を大きく受けることが知られている。サファイア単結晶の場合、c軸方向の結晶成長速度はa軸方向に比べて著しく遅いことから、生産性を高く、すなわち結晶成長速度を速くするために、a軸を下面に向けた種結晶を溶融液に接触させ、a軸方向に結晶成長させることが一般的である(例えば、特許文献2参照)。このようにして得られたa軸を成長方向とするサファイア単結晶体から前記c軸面のサファイア単結晶基板を得るためには、コアドリル等を用いて該単結晶体の側面方向であるc軸方向から希望の直径を持つ円柱体を切り抜き、これをマルチワイヤソー等で円板状に切断する必要がある。
特開2000−82676号 特開2004−83407号 特開2010−143781号公報
このようにキロポーラス法を用いてa軸方向に成長したサファイア単結晶体を、側面c軸方向から切り抜くことで得られたc軸面サファイア単結晶基板は、基板表面として結晶の成長方向に対して垂直方向の面を有していることから、基板表面の応力分布は結晶の成長方向に沿った不規則な変動を有していることが知られている。
この不規則な応力分布は、特に6インチ以上の大型基板になると、窒化物系化合物のエピタキシャル成長時に、基板が鞍型になったり、波打ちを生じたりする等の不規則な反りを発生させる要因となる。このような反りの発生によって、MOCVD装置内で加熱体(サセプター)と基板の一部に空隙ができると、基板が均一に加熱されないために窒化物系化合物の膜厚や膜組成に不均一をもたらし、LEDの歩留まりを低下させることが問題となっていた。
一方、チョクラルスキー法によれば、サファイア単結晶をc軸方向に成長させることは比較的容易である(例えば、特許文献3)が、なおサブグレインの頻発などの問題によりc軸方向に成長させて、4インチ級を超える基板に加工可能な結晶は育成できていなかった。
そこで発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究した結果、チョクラルスキー法において特定の条件下であれば、c軸を結晶成長方向(鉛直方向)としたサブグレインを有しない直径150mm以上の直胴部を持つサファイア単結晶体を製造しうることを見出し、さらに検討を進めた結果、該単結晶体を水平方向に切断して基板とすることで、応力分布が規則的な同心円状で、直径が6インチ級以上であり、かつc軸面を表面に有するサファイア基板を生産性よく得ることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、平行な二つの平面を有するサファイア単結晶基板であって、該サファイア単結晶のc軸は該平面に対して90±1°の範囲にあり、平面に対する内接円の直径が140mm以上であり、X線トポグラフで確認可能なサブグレインを有さず、かつ平面方向の応力分布が同心円状を呈していることを特徴とするサファイア単結晶基板である。
本発明による、同心円状の応力分布を有する大型のc軸面サファイア基板を用いることで、窒化物系化合物をエピタキシャル成長する際の基板の反りを規則的な碗型(ドーム型または逆ドーム型)とすることができる。規則的な碗型の基板の反りに対しては、MOCVD装置の加熱体を同様の碗型にしたり、ガス組成を基板に対して同心円状に変化させることで、基板が大口径であっても均一な膜形成が可能となり、LEDの歩留まりを飛躍的に向上させることが可能となる。
本発明のサファイア単結晶基板を示す模式図。 チョクラルスキー法単結晶引上げ炉の構造を示す模式図。 アニール炉の構造を示す模式図。 サファイア単結晶体の加工工程の一例。 実施例で得られた基板の応力複屈折分布。 実施例で得られた単結晶体のX線トポグラフ。
本発明は、平行な二つの平面を有するサファイア単結晶基板に係わり、該サファイア単結晶のc軸は該平面に対して90±1°の範囲にある。当該平行な二つの平面を有するとは、MOCVD法により該基板上に窒化物系化合物を形成するのに十分な反り(BOWおよびSORI)、平坦度(GBIR)及び表面、裏面の面粗さ(Ra)を有していることを意味する。より具体的には、BOWが±20μm以下(好ましくは±15μm以下)、SORIが30μm以下(好ましくは20μm以下)、GBIRが20μm以下(好ましくは15μm以下)、表面粗さが0.5nm以下(好ましくは0.3nm以下)、裏面粗さが1.5μm以下(好ましくは1.0μm以下)となる平行二面を有していることを示す。
また本発明のサファイア単結晶基板上に、GaN、InGaN又はAlNから選ばれるいずれかの窒化物系化合物半導体発光体層を形成させるために、該サファイア単結晶のc軸の向きは上記平面に対して90±1°の範囲に入っている必要がある。
本発明のサファイア単結晶基板は、上記平面に対する内接円の直径が140mm以上である。通常、サファイア基板には、工程中で基板の向きを合わせるために、オリエンテーションフラット(オリフラ)と呼ばれる切り欠きが設けられる(図1参照)。このオリフラの存在を考慮すると、例えば内接円の直径が140mmであれば、基板自体は6インチ(150mm)級の基板となる。
本発明のサファイア基板は単結晶体であるが、さらにX線トポグラフで確認可能なサブグレインも有さない、即ち、真の単結晶体若しくはそれに近いものである。当該サブグレインの確認のためのX線トポグラフの測定条件を以下の表1に示す。
Figure 2013049608

本発明においては、上記条件で撮影された、明度0(黒)〜255(白)の256階調の濃淡で表されるグレースケール像において、該明度が16以上異なる境界を有する面(及びそれに伴う粒界)が認められない場合、X線トポグラフで確認可能なサブグレインを有さないとする。なお、簡易的には暗室内でのクロスニコル等によって観察できる脈理(ストライヤ)の有無でも判定が可能である。
本発明のサファイア単結晶基板は、前記した平面方向に同心円状の応力分布を有する。前述のとおり、このような物性を有する本発明の基板は、その反りを規則的な碗型とすることができ、その結果、LEDの歩留まりを飛躍的に向上させることが可能となる。なお当該応力分布は、基板の厚み方向に633nmのレーザー光を照射して得られた透過光の位相差から求めることができる。当該位相差を求める機器は複屈折・応力測定装置等として市販されている。
本発明のサファイア単結晶基板は上述の通りのものであるが、その他に以下のような物性を具備していることが望ましい。基板の厚さは、好ましくは0.25〜3.0mm、より好ましくは0.5〜1.5mmである。また、蛍光灯などの室内光で確認可能な気泡はもとより、暗室内で高照度ハロゲンランプを結晶内部に照射することによって確認できる微少気泡も有さないか、多くとも5個以下であることが好ましい。
上述した本発明のサファイア単結晶基板は、チョクラルスキー法により、c軸方向を結晶成長方向(鉛直方向)として製造された直胴直径が150mm以上のアズグロウン単結晶体に、熱処理、切断、研削、研磨加工等の加工処理を施すことで得られる。
前記のように、従来法であるキロポーラス法では、結晶の方位によって成長速度が著しく異なることから、サファイア単結晶においては、生産性、すなわち成長速度の観点からa軸を鉛直方向に結晶成長を行わざるを得ない。このことが、最終的に得られるサファイア単結晶基板の不規則な反りを発生させる原因となっている。
一方、キロポーラス法と比較して強い温度勾配下で結晶化を行うチョクラルスキー法では、結晶方位による成長速度の差が小さく、いずれの結晶方位であってもほぼ同等の成長速度で結晶成長を行うことができる。そのため、c軸を鉛直方向にサファイア単結晶を成長させ、これを水平方向に切断することで応力分布が規則的な同心円状であるサファイア単結晶基板を得ることができる。
しかし、チョクラルスキー法は強い温度勾配下で高速に結晶化を行うために、特に微小な気泡やサブグレインが発生しやすいという問題がある。特に大口径の結晶成長においてはその抑制が飛躍的に困難であり、本発明者等の知りうる限り、直径150mm以上のサファイア基板用の結晶成長法として実施、成功された例はない。
本発明者等の検討によれば、本発明のサファイア単結晶基板を得るためには、4インチ級のサファイア単結晶体を得るための従来公知のチョクラルスキー法を単に適用するだけでは足りず、該チョクラルスキー法によってサファイア単結晶体を成長させるに際し、原料溶融液に対して種結晶を接触させる時点での、融液面の1cm上方における水平方向の温度勾配が、中心(種結晶回転中心位置)から外周方向(径方向)に向かい、少なくとも成長させる単結晶の直胴部直径までの距離の範囲において15℃/cm以下と緩やかになるように、炉内構造を構成する必要がある。これによって、これまで実施が困難と考えられていた、融液面に対して鉛直方向にc軸を有する種結晶を用いて、微小な気泡やサブグレインを有さない、直胴部の直径が150mm以上の単結晶を安定的に生産できる。
径方向の温度勾配と結晶品質が相関する理由は明らかではないが、次のように考えられる。チョクラルスキー法では、育成方位に関わらず高速な結晶成長を実現するために、一般に融液直上の高さ方向の温度勾配を5〜10℃/cmと大きくなるように断熱壁の構成を決定する。そのため、特別な意図をもって断熱壁の構成を設計しない限り、溶融液面1cm上方における中心から成長させる単結晶の直胴部直径までの径方向の温度勾配も一般に20℃/cm以上と大きくなってしまう。
このように径方向の温度勾配が大きい環境で、チョクラルスキー法によって育成を行った場合、ヒーター出力を減少させて希望の直径まで増加させる肩部の成長工程において、単位時間あたりのヒーター出力の変化量は必然的に非常に大きくなる。この温度環境の急激な変化が融液対流の乱れや局所的な結晶成長速度の不均一を引き起こし、結晶性の不連続な領域(サブグレイン)を発生させると考えられる。一方、本発明のように径方向の温度勾配が小さい環境で結晶成長を実施した場合、肩部の成長工程におけるヒーター出力の経時変化量は比較的小さく維持されるため、結晶成長速度は均一かつ安定し、きわめて良い結晶性を全体に維持した結晶成長が可能となると考えられる。
図2は本発明のサファイア単結晶基板を上述のチョクラルスキー法により製造する際に用いられる結晶育成装置の一例(模式図)である。
この単結晶引上げ装置は、結晶成長炉を構成するチャンバー1を備えており、このチャンバー上壁には、開口部を介して、図示しない駆動機構によって上下動および回転可能な単結晶引上げ棒2が吊設されている。この単結晶引上げ棒の先端には、保持具3を介して種結晶体4が取り付けられており、種結晶体が坩堝5の中心軸上に位置するように配置されている。また、この単結晶引上げ装置の上端には、結晶重量を測定するロードセル6を備えている。
坩堝5は、チョクラルスキー法に用いられる坩堝として公知の形状の坩堝を使用することができる。一般には、上部から見た開口部が円形状であり、円柱状の胴部を持ち、底面の形状が平面状又は碗状又は逆円錐状のものが用いられる。また、坩堝の材質としては、原料溶融液である酸化アルミニウムの融点に耐え、また酸化アルミニウムとの反応性が低いものが適しており、イリジウム、モリブデン、タングステン、レニウムまたはこれらの混合物が一般的に用いられる。とりわけ、耐熱性に優れたイリジウム、または安価で経済性の良いモリブデンを使用することが好ましい。
坩堝の周囲には坩堝の底部及び外周を取り囲むように、断熱壁7aが設置されている。また、坩堝上方の単結晶引上げ域の側周部を環囲する断熱壁7bが設置されている。該断熱壁7a,7bは、公知の断熱性素材で形成されていれば制限なく利用できるが、酸素を含む雰囲気下で育成を行う場合には、特にイットリウム、カルシウム、マグネシウム等を添加して安定化したものを含むジルコニア系およびハフニア系の素材、またはアルミナ系の素材が好適に利用できる。ここで用いられる断熱壁は、内面と外面の温度差が非常に大きい環境下で使用されるため、加熱、冷却の繰り返しによって素材が著しく変形、割れを生じやすく、このような断熱壁の変形や割れによって結晶成長域の温度勾配が刻々と変化し、安定的な結晶製造を困難にする。そこで、断熱壁は全体を一体の素材で構成するのではなく、いくつかに分割された断熱材の組み合わせで構成することにより、このような変形や応力による断熱壁の割れやそれに伴う温度環境の変化を低減するのが好ましい。
また、前記のように結晶成長における径方向の温度勾配を希望する範囲に設定するためには、チャンバーの形状や材質に起因するガス対流や熱移動を考慮しながら、適宜計算機シミュレーション等を活用し、断熱壁を構成する素材の種類、厚みや組み合わせ、分割数などを工夫して構成を決定する必要がある。
単結晶引上げ域を環囲する断熱壁の上端の開口部は、単結晶引上げ棒の挿入孔が少なくとも穿孔された天井板8により閉塞される。これにより、単結晶引上げ域は、上記断熱壁7a,7bと天井板8とにより形成される単結晶引上げ室内に収まるため、その保熱性が大きく向上する。該天井板は断熱壁と同様、公知の断熱性素材で形成されていればよく、特にイットリウム、カルシウム、マグネシウム等を添加して安定化したものを含むジルコニア系およびハフニア系の素材、またはアルミナ系の素材が好適である。
また、該天井板は、必ずしも平板状である必要はなく、断熱壁の環囲体の上端開口部を後述する穿孔部分を除いて閉塞するものであれば如何なる形状であっても良い。例えば。円錐台状、逆円錐台状、笠状、逆笠状、ドーム状、逆ドーム状等であっても良い。
断熱壁の外周、おおよそ坩堝の高さの位置を環囲して、高周波コイル9が設置されている。該高周波コイルには、図示しない高周波電源が接続される。高周波電源は、一般のコンピュータからなる制御装置に接続され、出力を適宜調節される。該制御装置は、前記ロードセルの重量変化を解析して高周波電源の出力を調整するほかに、結晶引上げ軸や坩堝の回転数、引上げ速度、ガスの流入出のためのバルブ操作なども併せて制御するのが一般的である。
LED用サファイア基板用の単結晶サファイア製造の原料としては、通常、純度4N(99.99%)以上の純度を有する酸化アルミニウム(アルミナ)が用いられる。不純物はサファイア単結晶の格子間又は格子内に混入して結晶欠陥の起点となることから、純度の低い原料を用いるとサブグレインが発生しやすく、また結晶が着色する傾向がある。結晶の着色の原因は不純物によって形成された結晶欠陥に起因する色中心(カラーセンター)であり、結晶欠陥の多さを間接的に示している。特に不純物としてのクロムは着色に顕著な影響を及ぼすことから、クロムの含有量が100ppm未満の原料を使用することが好ましい。また、該原料の嵩密度はなるべく高いものが坩堝に多くの原料を充填することができ、また炉内での原料の飛散を抑制できるため適している。好ましい原料の嵩密度は1.0g/ml以上、さらに好ましくは2.0g/ml以上である。このような性状の原料としては、酸化アルミニウム粉末をローラープレス等で造粒したものや、破砕サファイア(クラックル、クラッシュサファイア等)が知られている。
該原料を前記結晶成長炉内に設置された前記坩堝内に装入し、加熱により原料溶融液とする。原料が溶融状態に到達するまでの昇温速度は特に限定されないが、50〜200℃/時間であることが好ましい。
結晶引上げ軸先端の種結晶保持具に装着された種結晶を該原料溶融液面に接触させ、ついで徐々に引上げて単結晶体を成長させる。単結晶引上げを実施する際の原料溶融液の温度は、結晶が異常成長を起こさず安定的に成長するためには、必然的に融点よりも僅かに低い温度(過冷却温度)となることが知られている。サファイア単結晶の場合は2000〜2050℃の温度で実施することが好ましい。
引き上げに用いる種結晶は、サファイア単結晶であり、溶融液と接する先端鉛直方向をc軸とする必要がある。
c軸を該種結晶の先端鉛直方向とする場合の、融液に接触する先端の形状は特に限定されず、不特定面で構成されていても良いが、好ましくはc面の平面、または、n面、r面、R面、S面の任意の組み合わせで構成された多角錐形が好ましい。また、該種結晶の側面は特に限定されず任意の形状を選択できるが、円柱状、あるいはm面もしくはa面によって構成される三角柱状、六角柱状、あるいはm面とa面によって構成される四角柱状、十二角柱状などが好ましい。
また、該種結晶の上方には、保持具で保持するための拡大部及び/又はくびれ部及び/又は貫通孔を有するのが一般的である。
成長させる単結晶の品質は、該種結晶の品質に大きく依存するため、その選定には特に注意を要する。種結晶としては、結晶欠陥や転移と呼ばれる結晶構造の不完全部分が極力少ないものが望ましい。結晶構造の良否は、種結晶の先端面又はその近傍をエッチピット密度測定、AFM、X線トポグラフィ等の方法を用いて評価することができる。また、結晶欠陥は残留応力が大きいほど多くなる傾向があることから、クロスニコル観察や応力複屈折などで応力の程度が小さいものを選定することも効果的である。一般に、種結晶としては、キロポーラス法で製造されたサファイア単結晶が特に適している。
該種結晶を原料溶融液に接触させた後、種結晶および/又は坩堝の回転数、引上げ速度、高周波コイルの出力等を制御して肩部(拡径部)を形成し、所望の結晶径まで拡径させた後、当該結晶径を維持するように引き上げを行う。
拡径により150mmを超えてどの程度の大きさまでにするかは、どのような大きさの単結晶体を製造するかによって決定されるが、一般にチョクラルスキー法の育成においては結晶径が大きいほどサブグレインや微小な気泡が発生する傾向がある。よって、6インチ級のエピタキシャル成長用の基板を量産するという観点からは、150〜160mmとするのが好適である。
引上げは通常、0.1〜20mm/hの速度で行うことができるが、引上げ速度が小さすぎると単位時間あたりの結晶成長量が減少して生産性が悪化し、引上げ速度が大きすぎると育成環境の変動が大きくサブグレインや微小な気泡が発生しやすくなる。生産性と結晶品質の両立を勘案すると、引上げ速度は好ましくは0.5〜10mm/h、さらに好ましくは1〜5mm/hである。
単結晶の育成中、種結晶は引上げ軸を中心として0.1〜30回転/分で回転させることが好ましい。また、上記種結晶の回転に併せて、坩堝も該種結晶の回転方向と逆方向又は同方向に同様の回転速度で回転させても良い。
単結晶体引上げ中の炉内圧力は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでもよいが、常圧下で行うことが簡便である。雰囲気としては窒素、アルゴン等の不活性ガスに、0〜10体積%の任意の量の酸素を含む雰囲気が好ましい。
このようにして所望の直胴部径と長さを有する、c軸を鉛直方向に持つサファイア単結晶体を引上げた後、該単結晶体を原料溶融液から切り離す。単結晶体を原料溶融液から切り離す方法は特に限定されず、ヒーター出力の増大(原料溶融液の温度の上昇)により切り離す方法、結晶引上げ速度の増加により切り離す方法、坩堝の降下により切り離す方法など、いずれの方法を採用しても良い。なお、単結晶体が原料溶融液から切り離れる瞬間の温度変動(ヒートショック)を小さくするために、ヒーター出力を徐々に上げる、もしくは結晶引上げ速度を徐々に速くすることによって結晶径を徐々に減少させるテール処理を行うことは効果的である。
原料溶融液から切り離された単結晶体は、炉内から取り出せる程度の温度まで冷却される。冷却速度は速いほうが結晶育成炉を占有する時間が短く、育成工程の生産性を上げることができるが、速すぎると単結晶体の内部に残留する応力歪みが大きくなり、冷却時や後の加工時に破砕やひび割れが発生したり、最終的に得られる基板に異常な反りが発生するおそれがある。逆に、冷却速度が遅すぎると結晶育成炉を占有する時間が長くなり、育成工程の生産性が低下する。これらを勘案し、冷却速度としては、10〜200℃/時間が好ましい。
このようにして製造されたサファイア単結晶体は、必要に応じて熱処理を行うことができる。熱処理の目的としては、切断加工時の割れの防止、結晶の応力の低減、結晶欠陥・着色の改善等がある。図3は本発明の熱処理に用いられるアニール装置の一例(模式図)である。
このアニール装置は、チャンバー10の内部に、単結晶体11を収納する容器12が設置され、この容器を環囲するように加熱体13が設置されている。単結晶体を収納する容器12および加熱体13は、天井部、底部および外周を取り囲む断熱壁14によって構成された保温域に収納されている。
単結晶体を収納する容器12の材質は、熱処理時の温度および雰囲気に耐えうる材質であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、イリジウム、モリブデン、タングステン、レニウムまたはこれらの混合物などの金属素材、イットリウム、カルシウム、マグネシウム等を添加して安定化したものを含むジルコニア系およびハフニア系の素材、またはアルミナ系の素材、カーボン断熱材などの断熱性素材などから選択することができる。
単結晶体11を容器12内に設置する方法・冶具は特に限定されず、公知のあらゆる方法を採用することができる。一例としては、図3に示したように、容器底部に酸化アルミニウム粉を敷き詰め、ここに単結晶体の尾部を埋没させることで安定して設置することができる。
保温域を任意の温度まで加熱する加熱体13は公知の加熱方式による加熱体を採用することができる。具体的には、カーボン、タングステンなどを加熱体とした抵抗加熱方式を採用することで2000℃付近まで安定して加熱を行うことができる。
保温域を構成する断熱壁14の素材としては、熱処理時の温度に耐え、雰囲気に対して反応性や腐食性がない公知の断熱性素材を任意に選択して利用できる。具体的には、イットリウム、カルシウム、マグネシウム等を添加して安定化したものを含むジルコニア系およびハフニア系の素材、またはアルミナ系の素材、カーボン断熱材などの断熱性素材が好適に使用できる。ただし、ジルコニア、ハフニア、アルミナ等の酸化物系断熱材は水素を含む雰囲気では反応して脆化したり金属不純物を放出する可能性があり、カーボン断熱材は酸素を含む雰囲気では反応して脆化したり燃焼する可能性があるため注意が必要である。
サファイア単結晶の熱処理は、その目的に応じて最高温度や雰囲気、最高温度での保持時間、冷却速度などを適宜調整する。具体的には、切断加工時の割れの防止や結晶内の応力の低減を目的とする場合、真空排気下または任意のガス雰囲気下で、最高温度を1400〜2000℃、最高温度の保持時間を6〜48時間、冷却速度を1〜50℃/時間とするのが好ましい。また、結晶欠陥・着色の改善を目的とする場合、酸素を1〜10%含む任意のガス雰囲気下(酸化雰囲気)、または、真空排気下または水素を1〜10%含む任意のガス雰囲気下(還元雰囲気)で、最高温度を1400〜1850℃、任意の最高温度保持時間と冷却速度で熱処理を実施することで、好適に結晶品質を改善することができる。
サファイア単結晶体を基板へと加工する加工工程は、公知の工程を用いることができる。図4は、サファイア単結晶体の加工工程の一例である。
具体的には、図4(a)に示すように製品となる直胴部を残し、肩部および尾部を切断する。その後、図4(b)に示すように直胴部側面の凹凸を除去して一定径の円筒状とするために、円筒研削を行う。
さらに、図4(c)に示すように直胴部側面の特定方位にオリエンテーションフラットと呼ばれる平坦部を形成し、図4(d)に示すように、マルチワイヤソーなどを用いて厚み0.5〜10mmの円盤状に切断する。得られた円盤状のサファイア単結晶の片面または両面に対して図4(e)〜(f)に示すように研磨を行い、図4(g)に示すように洗浄を行ってLED用の基板とする。
上記(a)及び(d)に示す切断加工の手段は特に制限されるものではなく、切断刃、高圧水、レーザー等による切断手段を例示することができる。中でも、内周刃、外周刃、バンドソー、ワイヤソー等の切断刃、とりわけバンドソー、ワイヤソー等の無端状の切断刃が好適に使用できる。
また、上記(d)に示した円盤状への切断後、及び/または上記(e)〜(f)に示した研磨工程後に、加工によって発生した応力(加工歪み)の除去を目的とした熱処理を供することができる。
なお、窒化物系化合物のエピタキシャル成長用のサファイア基板としては、結晶格子間隔を積層する窒化物化合物に近似するため、サファイア基板の表面をc軸からm軸またはa軸方向に0.01〜0.5°程度傾けるのが一般的である。このような面の傾きは、上記(a),(d)に示す切断工程、及び/または、上記(e)〜(f)に示す研磨工程で形成される。
上記のようにして得られた直径150mm(オリフラ部除く)以上のサファイア基板はサブグレインや微小な気泡がなく、また同心円状に均一な歪み特性を持つため、GaN膜、InGaN膜、AlN膜などのエピタキシャル成長に極めて好適に使用することができる。
以下、具体的な実験例を挙げて本発明の実施態様をより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
最初に、内径が220mm、深さが225mmのイリジウム製坩堝に、出発原料として純度が4N(99.99%)の高純度アルミナ(AKX−5 住友化学製)を26kg投入した。原料を投入した前記坩堝を、結晶成長開始時の溶融液面の1cm上方における直径250mmまでの径方向の温度勾配が13℃/cm以下となるように断熱壁を設計した高周波誘導加熱方式のチョクラルスキー型結晶引上げ炉に設置し、炉内を100Pa以下まで真空排気した後に窒素ガスを40L/minで大気圧まで導入した。大気圧到達後は、酸素を1.0体積%含む窒素ガスを2.0L/minで炉内に導入しながら、炉内圧力が大気圧を維持するよう排気を行った。坩堝の加熱を開始し、坩堝内の酸化アルミニウム原料が溶融する温度に到達するまで16時間かけて徐々に加熱した。原料溶融液表面の対流の様子(スポークパターン)を参考にヒーター出力を適宜調整した後、キロポーラス法で製造され、先端がc軸面、側面がa軸面およびm軸面で構成された単結晶サファイアの種結晶を、18回転/minの速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を原料溶融液に接触させた。種結晶が溶けず、かつ融液表面に結晶が成長しないようヒーター出力をさらに微調整した後、引上げ速度2mm/hの速度で種結晶を引上げを開始した。
ロードセルの重量変化から推測される結晶直径が希望の直径となるよう適宜ヒーター出力を制御しながら結晶成長を行った。その際、結晶径の増大に従って種結晶の回転数を減少させるとともに引上げ速度を増加させ、直径155mmに到達した時に種結晶の回転数が4回転/min、引上げ速度が3mm/hとなるようにした。直径155〜160mmを維持しながら引き上げを続け、直胴部の長さが150mmに到達した後、ヒーター出力を徐々に上げて3時間で直径100mmまで減少させるテール処理を行い、その後引上げ速度10mm/minで単結晶を原料溶融液から切り離した。切り離した単結晶は20時間かけて室温まで冷却した。その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径155mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。この単結晶体を暗室内で高照度ハロゲンランプで観察したところ、結晶内部に気泡等は観察されず、クロスニコル観察でも脈理等は観察されなかった。
上記の単結晶体をインゴットアニール用加熱炉に設置し、アルゴンガスを3L/minの速度でフローしながら、1600℃まで20時間かけて加熱した。その後、1600℃下で24時間保持した後、35時間かけて室温まで冷却した。
上記インゴットアニールの後、バンドソーで結晶上部(肩部)および結晶下部(尾部)を切断し、平面研削装置で単結晶体直胴部の上下切断面をc軸からm軸方向に0.2°傾けた面に整えた。その後、円筒研削装置で直径150mmの円筒状とした後、既定の側面にオリエンテーションフラットを形成した。この円筒状単結晶体をマルチワイヤソーで厚み1.55mmの基板素材に切断した。切断した基板素材は熱処理によって加工歪みを除去した後、両面ラップ研磨加工、面取り加工、片面ポリッシュ研磨加工を施して、c軸からm軸方向に0.2°傾いた面を表面に有する直径150mm(オリエンテーションフラット部を考慮した内接円直径は145.7mm)、厚み1.3mmの単結晶サファイア基板を得た。
得られた基板の反り(BOWおよびSORI)、平坦度(GBIR)などの品質検査結果は表2に示すとおりであった。また、HINDS社製EXICOR(光源波長633nm)を用いて直径140mmの範囲について応力複屈折分布を測定した結果、図5に示すような同心円状の応力分布を示した。さらに、単結晶体直胴部の上端および下端より切り出したウェハ状のサンプルをX線トポグラフで観察した結果、図6に示すように、ともにサブグレイン構造は認められなかった。なお図6に現れている直線状の境界は、装置の限界上、4箇所に分割して測定したX線トポグラフ像を結合したために生じたものであり、基板自身が有する境界ではない。
Figure 2013049608
1:チャンバー
2:単結晶引上げ棒
3:種結晶体保持具
4:種結晶体
5:坩堝
6:ロードセル
7a,7b:断熱壁
8:天井板
9:高周波コイル
10:チャンバー
11:単結晶体
12:容器
13:加熱体
14:断熱壁

Claims (2)

  1. 平行な二つの平面を有するサファイア単結晶基板であって、該サファイア単結晶のc軸は該平面に対して90±1°の範囲にあり、平面に対する内接円の直径が140mm以上であり、X線トポグラフで確認可能なサブグレインを有さず、かつ平面方向の応力分布が同心円状を呈していることを特徴とするサファイア単結晶基板。
  2. GaN、InGaN又はAlNのエピタキシャル成長用の基板である請求項1記載のサファイア単結晶基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015214466A (ja) * 2014-05-13 2015-12-03 信越半導体株式会社 サファイア単結晶の製造方法
JP2016200254A (ja) * 2015-04-14 2016-12-01 住友金属鉱山株式会社 断熱構造体

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