JP2014181146A - サファイア単結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 サファイア単結晶を育成する際に、該単結晶に泡群が生じない、サファイア単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】 坩堝とヒーターと断熱材とを備えるサファイア単結晶育成用の育成炉において、断熱材と、坩堝側方部及び上方部との間に融点が2100℃以上の高融点金属からなる遮蔽材が設けることで、断熱材からの落下物の混入を防ぐことができる。これにより、泡群を有しないサファイア単結晶体を製造することができ、直胴からのサファイア基板収率を向上させることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、チョクラルスキー法によるサファイア単結晶の製造方法に関する。
サファイア(酸化アルミニウム)単結晶体は、青色LEDや白色LEDを作製する際のエピタキシャル成長基板として広く利用されている。近年、これらのLEDは省エネルギーの観点からLEDテレビやLED照明などとして需要が急激な拡大傾向にあり、サファイア基板の需要も拡大が予想されている。
LEDチップは、c面サファイア基板上にMOCVD装置を用いてGaN、InGaN、AlN等の窒化物系化合物半導体発光体層を形成した後、チップに分割して作製する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。よって、安価かつ大面積のc面を表面に有するサファイア基板を提供することは、LEDチップの生産の高効率化、低コスト化を達成するために重要な課題である。
酸化物単結晶体の育成方法はさまざまあるが、その優れた結晶特性や大口径の単結晶体が得られることから大部分が溶融固化法で育成されている。溶融固化法の中でも特に、チョクラルスキー法やキロポーラス法などの引き上げ法が一般的に広く用いられている。チョクラルスキー法とは、坩堝中の原料溶融液面に種結晶体を接触させ、次いで、その種結晶体を坩堝の加熱域から徐々に引上げて冷却することにより、該種結晶体の下方に単結晶体を成長させる方法である。
キロポーラス法はチョクラルスキー法に類似しているが、原料溶融液面に接触させた種結晶体は引上げず、或いはチョクラルスキー法と比較して極端に遅い速度で引上げつつ、ヒーター出力を徐々に下げて坩堝を冷却することにより、原料溶融液面下で単結晶体を成長させる点がチョクラルスキー法と異なる方法である。一般に、チョクラルスキー法はキロポーラス法に比べて育成速度が速く生産性が高い利点がある。
チョクラルスキー法やキロポーラス法などの引き上げ法によりサファイア単結晶体を育成する場合の単結晶体引き上げ方位は、a軸或いはc軸が一般的であるが、LED用途としてはc面のサファイア基板が使用されるため、c軸引き上げにより得られた単結晶体単結晶からc面基板を取得する方が、生産性(加工性、基板収率)に優れており、サファイア基板の低コスト化に期待できる。
特開2000−82676号 特開2010−59031号 特開2008−207992号
サファイアは2050℃という高融点であり、ホットゾーンは部分的にはそれ以上の高温となる。チャンバーをこの高温から保護するために断熱材が必要となるが、このような温度、およびサファイア育成環境で使用可能な部材は経済性や加工性などまで考慮するとジルコニア、アルミナ、ハフニア等の高融点酸化物及び/又はカーボン等が用いられている。
しかしながら、これらの材質からなる断熱材は使用を続けると、膨張と収縮の繰り返しによる劣化により破片が落下し、これらが融液内に異物として混入することで、着色や泡などサファイアの品質に影響を与えることが問題となる。
また、ルツボ内に残存したメルトは坩堝から取り外すことが困難で、原料を継ぎ足しながらサファイア育成を行っているが、落下物により、不純物が濃縮されていき、サファイアの品質に影響を与えることも問題である。
従って本発明は、融液への異物の混入を防ぎ、安定してサファイア育成できる技術の提供を目的とする。
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った。そして、断熱材と坩堝側方部及び上方部との間に、高融点金属からなる遮蔽材を設けることで、断熱材由来の落下物が融液に入るのを防ぐことを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、チャンバーと坩堝と、該坩堝を加熱するためのヒーターと、少なくとも坩堝側方部とチャンバーとの間に配設された断熱壁と、チャンバーと坩堝上方部との間に配設された天井板を備えた、坩堝内の原料融液を固化させて単結晶体を得るためのサファイア単結晶育成用の育成炉であって、断熱壁及び天井板と、坩堝側方部及び上方部との間に融点が2100℃以上の高融点金属からなる遮蔽材が設けられたことを特徴とするサファイア単結晶育成炉である。
本発明によれば、落下物由来で発生する泡群を有しないサファイア単結晶体を製造することができ、直胴からのサファイア基板収率を向上させることができる。
また、サファイア単結晶体中に泡群が発生した場合、該泡群を起点としたサブグレインが発生することがあるため、本発明によれば、結晶中のサブグレインの発生を抑えることもできる。
遮蔽材を設けたCZ法サファイア単結晶製造炉の模式図。 CZ法サファイア単結晶製造炉の模式図(遮蔽材なし)。
本発明の育成炉は、チョクラルスキー法、キロポーラス法など坩堝内の原料融液を固化させて単結晶体を得るサファイア単結晶育成方法に特に制限なく適用できるが、チョクラルスキー法によるサファイア単結晶製造方法への適用が好ましい。
まず始めに、当該チョクラルスキー法によるc軸サファイア単結晶の製造方法について説明する。なお、本発明において「c軸サファイア単結晶」とは、引き上げにより成長する成長方向(引き上げ方向)がc軸方向であることを意味する。
図1は本発明のサファイア結晶育成炉の一例(模式図)である。
この単結晶引上げ装置は、結晶育成炉を構成するチャンバー1を備えており、このチャンバー上壁には、開口部を介して、図示しない駆動機構によって上下動および回転可能な単結晶引上げ棒2が吊設されている。この単結晶引上げ棒の先端には、保持具3を介して種結晶体4が取り付けられており、種結晶体が坩堝5の中心軸上に位置するように配置されている。また、この単結晶引上げ棒の上端には、結晶重量を測定するロードセル6を備えている。
坩堝5は、サファイア育成用坩堝として公知の形状の坩堝を使用することができる。一般には、上部から見た開口部が円形状であり、円柱状の胴部を持ち、底面の形状が平面状又は碗状又は逆円錐状のものが用いられる。また、坩堝の材質としては、原料溶融液である酸化アルミニウムの融点に耐え、また酸化アルミニウムとの反応性が低いものが適しており、イリジウム(融点2466℃)、モリブデン(融点2623℃)、タングステン(融点3422℃)、レニウム(融点3100℃)またはこれらの合金が一般的に用いられる。とりわけ、耐酸化性に優れたイリジウム、または安価で経済性の良いモリブデンを使用することが好ましい。
坩堝の周囲には、チャンバーが高温になりすぎないように坩堝の底部及び外周を取り囲むように、断熱壁7aが設置されている。また、坩堝上方の単結晶引上げ域の側周部を環囲する断熱壁7bが設置されている。該断熱壁7a,7bは、公知の断熱性素材で形成されていれば制限なく利用できるが、酸素を含む雰囲気下で育成を行う場合には、特に酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を添加して安定化したものを含むジルコニア系およびハフニア系の素材、またはアルミナ系の素材が好適に利用できる。ここで用いられる断熱壁は、内面と外面の温度差が非常に大きい環境下で使用されるため、加熱、冷却の繰り返しによって素材が著しく変形、割れを生じやすく、このような断熱壁の変形や割れによって結晶成長域の温度勾配が刻々と変化し、安定的な結晶製造を困難にする。そこで、断熱壁は全体を一体の素材で構成するのではなく、いくつかに分割された断熱材の組み合わせで構成することにより、このような変形や応力による断熱壁の割れやそれに伴う温度環境の変化を低減するのが好ましい。
単結晶引上げ域を環囲する断熱壁の上端の開口部は、単結晶引上げ棒の挿入孔が少なくとも穿孔された天井板8により閉塞される。これにより、単結晶引上げ域は、上記断熱壁7a,7bと天井板8とにより形成される単結晶引上げ室内に収まるため、その保熱性が大きく向上する。該天井板は断熱壁と同様、公知の断熱性素材で形成されていればよく、特に酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を添加して安定化したものを含むジルコニア系およびハフニア系の素材、またはアルミナ系の素材が好適である。
また、該天井板は、必ずしも平板状である必要はなく、断熱壁の環囲体の上端開口部を前述の穿孔部分を除いて閉塞するものであれば如何なる形状であっても良い。例えば。円錐台状、逆円錐台状、笠状、逆笠状、ドーム状、逆ドーム状等であっても良い。
断熱壁の外周、おおよそ坩堝の高さの位置を環囲して、高周波コイル9が設置されている。該高周波コイルには、図示しない高周波電源が接続される。高周波電源は、一般のコンピュータからなる制御装置に接続され、出力を適宜調節される。該制御装置は、前記ロードセルの重量変化を解析して高周波電源の出力を調整するほかに、結晶引上げ軸や坩堝の回転数、引上げ速度、ガスの流入出のためのバルブ操作なども併せて制御するのが一般的である。当該高周波コイルに所定の電流を流すことにより、誘導加熱によって坩堝が加熱され、原料を溶融させることができる。
図示した態様では、ヒーターとして高周波ヒーターを用いているため、断熱壁は高周波コイルの内側に配設されているが、抵抗加熱ヒーターを採用する場合には、断熱壁はヒーターとチャンバーの間に配設される。高周波ヒーター、抵抗加熱ヒーターのいずれの場合であっても坩堝内の原料を溶融させることができる程度に加熱できるものであれば特に限定されるものではない。
温度測定は、熱電対と放射温度計のどちらを使用して測定しても良いが、サファイアの融点の2050℃以上の温度領域では、放射温度計を使用するのが好ましい。該放射温度計は、坩堝の底または融液のどちらを測定しても良いが、融液の対流、窓の汚れの影響から、好ましくは坩堝の底を測定するほうがよい。
本発明の特徴は、断熱壁及び天井板と、坩堝側方部及び上方部との間に遮蔽材10a、10bが設置されていることである。該遮蔽材10a、10bは、融点が2100℃以上の高融点金属で形成されていればよく、イリジウム、モリブデン、タングステン、レニウムまたはこれらの合金が好適に利用できる。該遮蔽材は、一体物である必要はなく、断熱壁7a、7bまたは天井板8からの落下物の坩堝内への混入を防ぐことができれば、いくつかに分割されていてもよいし、複数枚が重なるように設置してもよい。
該遮蔽材の配設位置も断熱壁及び天井板と、坩堝側方部及び上方部との間であれば特に限定されるものではない。遮蔽材の厚さは自立性を保持できる程度であれば特に限定されないが、通常、0.5〜5mm厚程度である。
また、遮蔽材を設置することによって、ルツボ等の高温部から断熱材への輻射を低減することができ、断熱材の破損を低減し、寿命を延ばす効果も得られる。
本発明のサファイア単結晶育成炉を用いて育成する単結晶の用途は特に限定されるものではなく、LED用サファイア基板用、SOS基板用、サファイアガラス用、人造宝石用等が挙げられる。本発明のサファイア単結晶育成炉を用いてサファイア単結晶を育成する際、単結晶の用途による育成方法の違いはほとんどなく、強いて挙げるならば、用途に応じた原料の純度、及び育成単結晶の大きさ程度である。
例えば、LED用サファイア基板用の単結晶サファイア製造の原料としては、通常、純度4N(99.99%)以上の純度を有する酸化アルミニウム(アルミナ)が用いられる。不純物はサファイア単結晶の格子間又は格子内に混入して結晶欠陥の起点となることから、純度の低い原料を用いるとサブグレインが発生しやすく、また結晶が濃く着色する傾向がある。結晶の着色の原因は不純物によって形成された結晶欠陥に起因する色中心(カラーセンター)であり、結晶欠陥の多さを間接的に示している。特に不純物としてのクロムは着色に顕著な影響を及ぼすことから、クロムの含有量が100ppm未満の原料を使用することが好ましい。また、該原料の嵩密度はなるべく高いものが坩堝に多くの原料を充填することができ、また炉内での原料の飛散を抑制できるため適している。好ましい原料の嵩密度は1.0g/ml以上、さらに好ましくは2.0g/ml以上である。このような性状の原料としては、酸化アルミニウム粉末をローラープレス等で造粒したものや、破砕サファイア(クラックル、クラッシュサファイア等)が知られている。
該原料を前記結晶成長炉内に設置された前記坩堝内に装入し、加熱により原料溶融液とする。原料が溶融状態に到達するまでの昇温速度は特に限定されないが、50〜200℃/時間であることが好ましい。
結晶引上げ軸先端の種結晶保持具に装着された種結晶を該原料溶融液面に接触させ、ついで徐々に引上げて単結晶体を成長させる。単結晶引上げを実施する際の原料溶融液の温度は、結晶が異常成長を起こさず安定的に成長するためには、必然的に融点よりも僅かに低い温度(過冷却温度)となることが知られている。サファイア単結晶の場合は2000〜2050℃の温度で実施することが好ましい。
引き上げに用いる種結晶は、サファイア単結晶であり、溶融液と接する先端鉛直方向は任意の面であればよいが、一般にチョクラルスキー法、キロポーラス法ではc面、或いはa面である。
例えば、チョクラルスキー法でc軸を該種結晶の先端鉛直方向とする場合の融液に接触する先端の形状は特に限定されず、不特定面で構成されていても良いが、好ましくはc面、または、n面、r面、R面、S面の任意の組み合わせで構成された多角錐形が好ましい。また、該種結晶の側面は特に限定されず任意の形状を選択できるが、円柱状、あるいはm面もしくはa面によって構成される三角柱状、六角柱状、あるいはm面とa面によって構成される四角柱状、十二角柱状などが好ましい。
また、該種結晶の上方には、保持具で保持するための拡大部及び/又はくびれ部及び/又は貫通孔を有するのが一般的である。
成長させる単結晶の品質は、該種結晶の品質に大きく依存するため、その選定には特に注意を要する。種結晶としては、結晶欠陥や転移と呼ばれる結晶構造の不完全部分が極力少ないものが望ましい。結晶構造の良否は、種結晶の先端面又はその近傍をエッチピット密度測定、AFM、X線トポグラフィ等の方法を用いて評価することができる。また、結晶欠陥は残留応力が大きいほど多くなる傾向があることから、クロスニコル観察や応力複屈折などで応力の程度が小さいものを選定することも効果的である。一般に、種結晶としては、キロポーラス法で製造されたサファイア単結晶が特に適している。
該種結晶を原料溶融液に接触させた後、種結晶および/又は坩堝の回転数、引上げ速度、高周波コイルの出力等を制御して肩部(拡径部)を形成し、所望の結晶径まで拡径させた後、当該結晶径を維持するように直胴部の引き上げを行う。
単結晶体引上げ中の炉内圧力は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでもよいが、常圧下で行うことが好ましい。雰囲気としては窒素、アルゴン等の不活性ガスに、0〜10体積%の任意の量の酸素を含む雰囲気が好ましい。
所望の直胴部径と長さを有する、c軸を鉛直方向に持つサファイア単結晶体を引上げた後、該単結晶体を原料溶融液から切り離す。単結晶体を原料溶融液から切り離す方法は特に限定されず、ヒーター出力の増大(原料溶融液の温度の上昇)により切り離す方法、結晶引上げ軸上昇速度の増加により切り離す方法、坩堝の降下により切り離す方法など、いずれの方法を採用しても良い。なお、単結晶体が原料溶融液から切り離れる瞬間の温度変動(ヒートショック)を小さくするために、ヒーター出力を徐々に上げる、もしくは結晶引上げ軸上昇速度を徐々に速くすることによって結晶径を徐々に減少させるテール処理を行うことは効果的である。
原料溶融液から切り離された単結晶体は、炉内から取り出せる程度の温度まで冷却される。冷却速度は速いほうが結晶育成炉を占有する時間が短く、育成工程の生産性を上げることができるが、速すぎると単結晶体の内部に残留する応力歪みが大きくなり、冷却時や後の加工時に破砕やひび割れが発生したり、最終的に得られる基板に異常な反りが発生するおそれがある。逆に、冷却速度が遅すぎると結晶育成炉を占有する時間が長くなり、育成工程の生産性が低下する。これらを勘案し、冷却速度としては、10〜200℃/時間が好ましい。
上記のようにして得られたサファイア単結晶は、直胴上部に泡群がなく、よって、該単結晶を公知の方法によって切断、研削、研磨等の加工を行うことにより得られる、GaN膜、InGaN膜、AlN膜などのエピタキシャル成長に使用するサファイア基板の収率を高くすることができる。
以下、具体的な実験例を挙げて本発明の実施態様をより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
図1に示す育成炉で、10aと10bの遮蔽材に厚さ0.5mmのイリジウムを使用して、サファイア単結晶の育成を行った。最初に、内径が220mm、深さが225mmのイリジウム製坩堝に、出発原料として純度が4N(99.99%)の高純度アルミナ(AKX−5 住友化学製)を26kg投入した。
原料を投入した前記坩堝を、図1に示すような炉内構造をした高周波誘導加熱方式のチョクラルスキー型結晶引上げ炉に設置し、炉内を100Pa以下まで真空排気した後に、酸素を1.0体積%含む窒素ガスを40L/minで大気圧まで導入した。大気圧到達後は、酸素を1.0体積%含む窒素ガスを2.0L/minで炉内に導入しながら、炉内圧力が大気圧を維持するよう排気を行った。坩堝の加熱を開始し、坩堝内の酸化アルミニウム原料が溶融する温度に到達するまで16時間かけて徐々に加熱した。
原料溶融液表面の対流の様子(スポークパターン)を参考にヒーター出力を適宜調整した後、キロポーラス法で製造され、サファイア単結晶からなる、先端がc面、直径10mmの種結晶を、18回転/minの速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を原料溶融液に接触させた。種結晶が溶けず、かつ融液表面に結晶が成長しないようヒーター出力をさらに微調整した後、引き上げ軸上昇速度2mm/hの速度で種結晶の引き上げを開始した。
引き上げを開始した後は、表1に示す育成プログラムを実行させ、結晶直径、結晶引き上げ軸上昇速度、結晶回転数を、当該育成プログラムに示した目標値となるよう制御させながら結晶育成を行った。
Figure 2014181146
当該育成プログラム終了後、引き上げ軸上昇速度10mm/minで単結晶を原料溶融液から切り離した。切り離した単結晶は20時間かけて室温まで冷却した。その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶の肩部及び/又は直胴には泡群が見られなかった。また、遮蔽材10bの上には、断熱材の破片があった。
引き続き坩堝に、坩堝内に残存したメルトとあわせて26kgになるように高純度アルミナ(AKX−5 住友化学製)を追加投入し、結晶育成を行う
一連の操作を繰り返し実施した所、10回目までに育成した単結晶の肩部及び/又は直胴には泡群が見られなかった。泡とは関係なく、サブグレインが生じている場合もあった。表2に結果を示す。
Figure 2014181146
比較例1
図2に示すように、遮蔽材を有しない育成炉を用いた以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部には泡群が見られなかったものの、直胴には不連続な泡群が見られた。
引き続き、実施例1と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、5回目までに育成した単結晶の直胴に不連続な泡群の発生が見られたが、6回目以降に育成した単結晶の肩部には泡群が見られないものの、直胴の結晶中心部に連続した泡群が見られた。該泡群には断熱材の内包物が多数含まれており、該泡群を起点としたサブグレインが発生していた。表3に結果を示す。
Figure 2014181146
比較例2
図1に示す育成炉で、坩堝上方部の遮蔽材10bを使用せず、坩堝側方部の遮蔽材10aにのみイリジウムを使用した装置以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部には泡群が見られなかったものの、直胴には不連続な泡群が見られた。
引き続き、実施例1と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、7回目までに育成した単結晶の直胴に不連続な泡群の発生が見られることがあったが、8回目以降に育成した単結晶の肩部には泡群が見られないものの、直胴の結晶中心部に連続した泡群が見られた。該泡群には断熱材の内包物が多数含まれており、該泡群を起点としたサブグレインが発生していた。表4に結果を示す。
Figure 2014181146
比較例3
図1に示す育成炉で、坩堝側方部の遮蔽材10aを使用せず、坩堝上方部の遮蔽材10bにのみイリジウムを使用した装置以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部には泡群が見られなかったものの、直胴には不連続な泡群が見られた。また、遮蔽材10bの上には、断熱材の破片があった。
引き続き、実施例1と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、8回目までに育成した単結晶の直胴に不連続な泡群の発生が見られることがあったが、9回目以降に育成した単結晶の肩部には泡群が見られないものの、直胴の結晶中心部に連続した泡群が見られた。該泡群には断熱材の内包物が多数含まれており、該泡群を起点としたサブグレインが発生していた。表5に結果を示す。
Figure 2014181146
実施例1と比較例1、2、3の結果をまとめて以下の表6に示す。どの例でも結晶育成はできるが、遮蔽材が片方又は両方無いものでは連続した泡群の発生が早まることから、まずは断熱材の劣化による破片が融液の中に混入することで、不連続な泡群が生じることがある。その融液を繰り返し使用することにより不純物が濃縮され、不純物濃度がある一定以上になると、連続した泡群が発生すると考えられる。育成回数を重ねる毎に、融液への不純物の濃縮は進むが、毎回新しい原料を追加することから、肩部から直胴上部にかけては泡群の発生がないが、直胴中部以降は不純物の濃縮が進み、連続した泡群が発生すると思われる。
サブグレインに関しては、泡群が入ってない場合にも生じることから、泡群を起点とするのみではなく別の要因でも生じると考えられるが、連続した泡群が入った場合には、該泡群を起点としてほとんどの場合でサブグレインが生じている。
遮蔽材10aと10bの導入により、該断熱材の破片が融液へ混入することを防ぐことができたものと考えられ、それにより泡群の発生だけでなくサブグレインの発生も減少させることができた。また、天井板8を覆うように設置する遮蔽材10bのみ、もしくは遮蔽材10aのみの使用で、一定の効果がみられたが、10a、10bの両方用いることがより好ましい。
Figure 2014181146
実施例2
図1に示す装置で、10aと10bの遮蔽材、坩堝にタングステンを使用し、また、タングステンの酸化を防ぐため、雰囲気にアルゴンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部及び/又は直胴には泡群が見られなかった。また、遮蔽材10bの上には、断熱材の破片があった。
引き続き、実施例1と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、10回目までに育成した単結晶の肩部及び/又は直胴には泡群が見られなかった。泡とは関係なく、サブグレインが生じている場合もあった。表7に結果を示す。
Figure 2014181146
比較例4
図2に示すように、遮蔽材を使用しない以外は、実施例2と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部には泡群が見られなかったものの、直胴には不連続な泡群が見られた。
引き続き、実施例1と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、4回目までに育成した単結晶の直胴に不連続な泡群の発生が見られたが、5回目以降に育成した単結晶の肩部には泡群が見られないものの、直胴の結晶中心部に連続した泡群が見られた。該泡群には断熱材の内包物が多数含まれており、該泡群を起点としたサブグレインが発生していた。表8に結果を示す。
Figure 2014181146
比較例5
図1に示す装置で、坩堝上方部の遮蔽材10bを使用せず、坩堝側方部の遮蔽材10aにのみタングステンを使用した装置以外は、実施例2と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部には泡群が見られなかったものの、直胴には不連続な泡群が見られた。
引き続き、実施例2と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、6回目までに育成した単結晶の直胴に不連続な泡群の発生が見られたが、7回目以降に育成した単結晶の肩部には泡群が見られないものの、直胴の結晶中心部に連続した泡群が見られた。該泡群には断熱材の内包物が多数含まれており、該泡群を起点としたサブグレインが発生していた。表9に結果を示す。
Figure 2014181146
比較例6
図1に示す装置で、坩堝側方部の遮蔽材10aを使用せず、坩堝上方部の遮蔽材10bにのみタングステンを使用した装置以外は、実施例2と同様にして結晶育成を行った。
その結果、鉛直方向にc軸を有する、直径160mm、直胴部の長さが150mmのサファイア単結晶体を得た。該単結晶体の肩部には泡群が見られなかったものの、直胴には不連続な泡群が見られた。また、遮蔽材10bの上には、断熱材の破片があった。
引き続き、実施例2と同様に原料を追加投入し、結晶育成を行う一連の操作を繰り返し実施した所、8回目までに育成した単結晶の直胴に不連続な泡群の発生が見られたが、9回目以降に育成した単結晶の肩部には泡群が見られないものの、直胴の結晶中心部に連続した泡群が見られた。該泡群には断熱材の内包物が多数含まれており、該泡群を起点としたサブグレインが発生していた。表10に結果を示す。
Figure 2014181146
実施例2と比較例4、5、6の結果をまとめて以下の表11に示す。遮蔽材の材質としてイリジウムではなくタングステンを用いた構成でも同様の傾向が得られた。
Figure 2014181146
1:チャンバー
2:単結晶引上げ棒
3:種結晶体保持具
4:種結晶体
5:坩堝
6:ロードセル
7a,7b:断熱壁
8:天井板
9:高周波コイル
10a,10b:遮蔽材

Claims (5)

  1. チャンバーと坩堝と、該坩堝を加熱するためのヒーターと、少なくとも坩堝側方部とチャンバーとの間に配設された断熱壁と、チャンバーと坩堝上方部との間に配設された天井板を備えた、坩堝内の原料融液を固化させて単結晶体を得るためのサファイア単結晶育成用の育成炉であって、断熱壁及び天井板と、坩堝側方部及び上方部との間に融点が2100℃以上の高融点金属からなる遮蔽材が設けられたことを特徴とするサファイア単結晶育成炉。
  2. 高融点金属が、イリジウム、モリブデン、タングステン、レニウム及び/又はこれらの合金である請求項1記載のサファイア単結晶育成炉。
  3. 断熱壁が、ジルコニア、アルミナ、ハフニア及び/又はカーボンからなる請求項1又は2記載のサファイア単結晶育成炉。
  4. チョクラルスキー法育成炉である請求項1乃至3いずれか1項記載のサファイア単結晶育成炉。
  5. 請求項1乃至4いずれか1項記載のサファイア単結晶育成炉を用いるサファイア単結晶の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019167253A (ja) * 2018-03-22 2019-10-03 住友金属鉱山株式会社 アフターヒーター

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