JP2013044978A - レーザ光用光ファイバ構造体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】誘電体多層膜のレーザ耐性を高める。
【解決手段】レーザ光用光ファイバ構造体10は、レーザ光入射端及び出射端の少なくとも一方に誘電体多層膜12が設けられている。誘電体多層膜12は、その形成後に酸素雰囲気下でCWレーザが照射され、その光吸収によるアニール処理が施されている。
【選択図】図1

Description

本発明はレーザ光用光ファイバ構造体及びその製造方法に関する。
レーザ光伝送用或いはファイバレーザ用の光ファイバのファイバ端面には、高反射を目的としたHR(high-reflection)膜や反射防止を目的としたAR(anti-reflection)膜が設けられる。これらのHR膜やAR膜は、高屈折率光学薄膜と低屈折率光学薄膜とを交互積層した誘電体多層膜で構成されている(例えば、特許文献1)。
特開2011−124460号公報
光ファイバで高出力のレーザ光を伝送等する場合、レーザ光源からのレーザ光をコアに集光するので、ファイバ端面には高出力のレーザ光が高パワー密度で入力されることとなる。そのため、ファイバ端面に設けられる誘電体多層膜には、高出力・高密度のレーザ光に対する高い耐性が求められる。
一般的に、誘電体多層膜のレーザ耐性を高める方法としては、膜形成時に被成膜基板の温度を例えば300℃以上の高温とすることにより膜の酸素欠損を抑制すると共に膜の緻密性を適切化する方法、或いは、成膜後に例えば300〜1000℃の大気雰囲気下でアニール処理を施すことにより膜の改質を行う方法がある。
本発明の課題は、レーザ光用光ファイバ構造体において、誘電体多層膜のレーザ耐性を高めることである。
本発明は、レーザ光入射端及び出射端の少なくとも一方に誘電体多層膜が設けられたレーザ光用光ファイバ構造体であって、上記誘電体多層膜は、該誘電体多層膜の形成後に酸素雰囲気下でCWレーザが照射され、その光吸収によるアニール処理が施されている。
本発明は、レーザ光入射端及び出射端の少なくとも一方に誘電体多層膜が設けられたレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法であって、誘電体多層膜の形成後に、該誘電体多層膜に酸素雰囲気下(空気あるいは純酸素を含む酸素雰囲気、以下同様)でCWレーザを照射し、その光吸収によりアニール処理を施す。
本発明によれば、形成後の誘電体多層膜に酸素雰囲気下でCWレーザを照射し、その光吸収により誘電体多層膜を局所的に昇温してアニール処理を施すことにより、そのレーザ耐性を高めることができる。
実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体を示す側面図である。 実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体の要部を拡大して示す側面図である。 (a)及び(b)は光ファイバ心線の斜視図である。 電子ビーム蒸着装置の構成を示す図である。 実施形態2に係るレーザ光用光ファイバ構造体を示す側面図である。 レーザ光パワーと誘電体多層膜の温度との関係を示すグラフである。
以下、実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び2は実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10を示す。実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10は、レーザ光伝送用途或いはファイバレーザ用途で用いられるものである。
実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10は、光ファイバ111を含む光ファイバ心線11と光ファイバ111のレーザ光入射端及び出射端、つまり、両ファイバ端面のそれぞれを被覆するように設けられた誘電体多層膜12とで構成されている。
光ファイバ心線11は、光ファイバ111とそれを被覆する被覆層112で構成されている。光ファイバ心線11の心線径は例えば0.125〜1.5mmである。
光ファイバ111は、例えばレーザ光伝送用の場合、図3(a)に示すように、ファイバ中心に設けられた高屈折率のコア111aとそれを被覆するように設けられた低屈折率のクラッド111bとの二層構造を有する構成であってもよい。この場合、光ファイバ111は、例えば、ファイバ径が0.25〜2.5mm、コア径が5〜1200μm、及びクラッド111bの層厚さが60〜300μmである。
光ファイバ111は石英(SiO2)製であることが好ましい。コア111aは、純粋石英で形成されていてもよく、また、Geなどの屈折率を高めるドーパント、Fなどの屈折率を低くするドーパント、或いは希土類元素(Er、Yb、Nd等)など機能性付与ドーパントが添加された石英で形成されていてもよい。クラッド111bは、コア111aよりも屈折率が低ければその材質は特に限定されるものではなく、コア111aと同様、純粋石英で形成されていてもよく、また、ドーパントが添加された石英で形成されていてもよい。
光ファイバ111は、例えばファイバレーザ用の場合、図3(b)に示すように、ファイバ中心に設けられたコア111aとそれを被覆するように設けられたコア111aよりも低屈折率の第1クラッド111bとそれを被覆するように設けられた第1クラッド111bよりも低屈折率の第2クラッド111cとの三層のダブルクラッド光ファイバ構造を有する構成であってもよい。この場合、光ファイバ111は、例えば、ファイバ径が0.125〜1.5mm、コア径が5〜100μm、第1クラッド111bの外径が40〜1000μm、及び第2クラッド111cの層厚さが20〜250μmである。
光ファイバ111は石英製であることが好ましい。コア111aは、希土類元素(Er、Yb、Nd等)が添加された石英で形成されており、さらに、Geなどの屈折率を高めるドーパント、Fなどの屈折率を低くするドーパント、或いはその他の機能性付与ドーパントが添加されていてもよい。第1クラッド111bは、コア111aよりも屈折率が低ければその材質は特に限定されるものではなく、コア111aと同様、純粋石英で形成されていてもよく、また、ドーパントが添加された石英で形成されていてもよい。第2クラッド111cは、第1クラッド111bよりも屈折率が低ければその材質は特に限定されるものではなく、純粋石英で形成されていてもよく、また、ドーパントが添加された石英で形成されていてもよい。また、第2クラッド111cには、各々、長さ方向に延びる複数の細孔が第1クラッド111bを囲うように配設されていてもよい。
被覆層112は樹脂或いはゴムで形成されている。被覆層112を形成する樹脂或いはゴムとしては、例えば、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、ポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、シリコーンゴムなどの硬化性ゴム等が挙げられる。被覆層112の厚さは例えば200〜500μmである。
誘電体多層膜12は、高屈折率層12aと低屈折率層12bとの交互積層体で構成されている。高屈折率層12a及び低屈折率層12bを合わせた層数は、HR膜の場合には例えば40〜50層であり、AR膜の場合には例えば4〜5層である。高屈折率層12a及び低屈折率層12bは典型的にはそれぞれイオンアシスト蒸着法により形成される。
高屈折率層12aは、例えば、Ta25、HfO2、TiO2、Al23、Nb25、Y23等で形成されている。高屈折率層12aの厚さは10〜300nmであることが好ましく、50〜250nmであることがより好ましい。誘電体多層膜12に含まれる複数の高屈折率層12aは、厚さが同一であってもよく、また、厚さが異なっていてもよい。
低屈折率層12bは、例えば、SiO2等で形成されている。低屈折率層12bの厚さは10〜300nmであることが好ましく、50〜250nmであることがより好ましい。誘電体多層膜12に含まれる複数の低屈折率層12bは、厚さが同一であってもよく、また、厚さが異なっていてもよい。
誘電体多層膜12を構成する高屈折率層12a及び低屈折率層12bは、前者が後者よりも厚くてもよく、また、前者が後者よりも薄くてもよく、さらに、前者と後者とが同一厚さであってもよい。
誘電体多層膜12のうちファイバ端面に接触する層は、石英製の光ファイバ111の場合、同じ材質であって高い密着性が得られるという観点から石英製の低屈折率層12bであることが好ましい。また、誘電体多層膜12のうち最外層は、強度の観点から石英製の低屈折率層12bであることが好ましい。従って、誘電体多層膜12の層数は奇数であることが好ましい。
そして、実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10では、誘電体多層膜12は、後述の通り、その形成後に酸素雰囲気下でCWレーザが照射され、その光吸収によるアニール処理が施されている。
次に、実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10の製造方法について説明する。
実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10の製造では、まず、公知の方法により光ファイバ心線11を作製し、続いて、その両ファイバ端面のそれぞれに誘電体多層膜12をイオンアシスト蒸着法により設ける。
図4は誘電体多層膜12を蒸着するための電子ビーム蒸着装置30を示す。
電子ビーム蒸着装置30は、真空ポンプが繋がれたチャンバー31を有する。チャンバー31の下部中央には電子銃32及び蒸着源33が設けられている。電子銃32及び蒸着源33の側方にはイオン銃34が設けられている。電子銃32及び蒸着源33の上方にはボウル状のドーム35が下方に開口するように回転可能に設けられており、そのドーム35には多数の加工品保持孔35aが形成されている。また、チャンバー31には酸素供給管36が導入されている。
電子ビーム蒸着装置30は、ドーム35の頂部に、水晶モニタ35bが設けられており、それによって蒸着量及び蒸着速度をモニタできるように構成され、また、水晶モニタ35bに並んでモニタガラス35cが設けられると共に、チャンバー31の外部に光源37及び光検出器39が設けられており、光源37からの光をミラー38を介してモニタガラス35cに反射させ、それをミラー38を介して光検出器39で検出し、それによって蒸着により形成された被膜の膜厚をモニタできるように構成されている。
誘電体多層膜12の形成に際しては、まず、誘電体多層膜12を蒸着させる対象となる光ファイバ心線11をドーム35にセットする。このとき、光ファイバ心線11の両方のファイバ端面が加工品保持孔35aからドーム35の内側を向くように配置する。なお、光ファイバ心線11の中間部分はドーム35に巻き付ける等する。
次いで、蒸着源33として低屈折率の蒸着材料(例えばSiO2)をセットした後、チャンバー31を密閉して内部を真空にし、ドーム35を回転させると共にイオン銃34からイオンを発する。このとき、誘電体多層膜12を形成するファイバ端面に付着したごみやほこりがイオンによって飛散する(クリーニング)。
次いで、酸素供給管36からチャンバー31内に酸素を供給しつつ、電子銃32からの電子の放出とイオン銃34からのイオンの放出とを同時に行う。このとき、電子銃32からの電子が蒸着源33に衝突し、それによって蒸着源33から蒸着材料が上方に向かって発せられ、また、イオン銃34からのイオンが飛んでいる蒸着材料に衝突し、それによって飛んでいる蒸着材料の運動エネルギーが高められる。運動エネルギーが高められた蒸着材料は、ドーム35の加工品保持孔35aから臨む光ファイバ心線11のファイバ端面に衝突して付着することにより低屈折率層12bの被膜が形成される。また、形成される低屈折率層12bの被膜内の酸素欠損にチャンバー31内の酸素が補われる。
続いて、蒸着源33を高屈折率の蒸着材料(例えばTa25)に変更し、低屈折率層12bの被膜形成の場合と同じ操作を行う。これにより、低屈折率層12b上に高屈折率層12aの被膜が形成される。
そして、蒸着材料の変更及び蒸着操作を繰り返すことにより、高屈折率層12aと低屈折率層12bとの交互積層体からなる誘電体多層膜12を形成する。
実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10の製造では、誘電体多層膜12を形成した後、誘電体多層膜12に酸素雰囲気下でCWレーザを連続照射し、その光吸収によりアニール処理を施す。
誘電体多層膜12に照射するCWレーザの波長は、1μm帯域とすることが好ましく、具体的には、915nm、940nm、970nm等が挙げられる。なお、CWレーザは、これらに限定されるものではなく、高出力CW(例えば100W以上)であり、分光特性上、透過し易い波長であればよい。また、誘電体多層膜12の光学特性と照射するCWレーザとの組合せとしては、誘電体多層膜12の全層にレーザ光を吸収させた方が発熱させ易いことから、誘電体多層膜12の分光特性として透しやすい波長のCWレーザが好ましく、一般的には、より短波長のCWレーザの方が吸収が大きいので効果的である。但し、短波長のCWレーザは平均出力が小さいので、上記に列挙した波長のCWレーザが好ましい。
CWレーザのパワー密度は、60〜600W/m2とすることが好ましく、300〜600W/mm2とすることがより好ましい。CWレーザのパワー密度は、経時的に一定としてもよく、また、連続的に上昇させてもよく、さらに、段階的に上昇させてもよい。
CWレーザの照射時間は30分以上とすることが好ましく、60分以上とすることがより好ましい。
CWレーザを照射する酸素雰囲気の酸素濃度は、酸素欠損状態とならないよう18体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましい。CWレーザを照射する酸素雰囲気は大気雰囲気であってもよい。
CWレーザの照射によるアニール時の誘電体多層膜12の温度は100〜1000℃であることが好ましく、300〜500℃であることがより好ましい。
以上の構成の実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10の製造方法によれば、形成後の誘電体多層膜12に酸素雰囲気下でCWレーザを照射し、その光吸収により誘電体多層膜12を局所的に昇温してアニール処理を施すことにより、そのレーザ耐性を高めることができる。
また、例えば300〜1000℃の高温度雰囲気下で誘電体多層膜を成膜すれば、或いは、成膜後の誘電体多層膜を高温度雰囲気下でアニール処理すれば、酸素欠損の抑制及び膜の緻密化が図られることから、誘電体多層膜のレーザ耐性を高めることができる。ところが、光ファイバ心線のファイバ端面に誘電体多層膜を設ける場合、被覆層の耐熱性の制約のため光ファイバ心線をかかる高温度雰囲気下に配置することはできず、従って、成膜時の雰囲気温度はせいぜい100℃程度とせざるを得ず、また、成膜後も高温度雰囲気に晒すことはできず、そのため誘電体多層膜のレーザ耐性を十分に高めることはできない。なお、成膜時の雰囲気温度が低くても、酸素イオンアシストを行うことにより、誘電体多層膜のレーザ耐性を高めることは可能であるが、高温度雰囲気下での成膜やアニール処理ほどのレーザ耐性向上効果は得られない。しかしながら、実施形態1に係るレーザ光用光ファイバ構造体10の製造方法によれば、形成後の誘電体多層膜12に酸素雰囲気下でCWレーザを照射し、その光吸収により局所的に昇温してアニール処理を施すので、誘電体多層膜12のアニール処理により被覆層112が劣化するのを抑制しつつ、誘電体多層膜12のレーザ耐性を十分に高めることができる。
さらに、誘電体多層膜12のレーザ耐性が高められることにより、例えば、レーザ光伝送用途においては、ファイバ端面破壊を抑制することができ、また、空間結合励起を行うファイバレーザ用途においては、レーザ発振光のパワー密度が非常に高い場合でもファイバ端面破壊が抑制され、そのため高パワーのレーザ発振を行うことができる。
(実施形態2)
図5は実施形態2に係るレーザ光用光ファイバ構造体20を示す。実施形態2に係るレーザ光用光ファイバ構造体20も、レーザ光伝送用途或いはファイバレーザ用途で用いられるものである。
実施形態2に係るレーザ光用光ファイバ構造体20は、光ファイバ211が被覆層212で被覆された光ファイバ心線21と光ファイバ211の両ファイバ端のそれぞれに融着されて一体に設けられた光学部材23とその端面を被覆するように設けられた誘電体多層膜22とで構成されている。
光ファイバ心線21及び誘電体多層膜22の構成は実施形態1と同一である。
光学部材23としては、例えば、短尺の光ファイバ心線、ブロック状のチップ、レンズ等が挙げられる。光学部材23は石英製であることが好ましい。
実施形態2に係るレーザ光用光ファイバ構造体20は、光ファイバ心線21に光学部材23を融着した後、その端面に誘電体多層膜22を成膜し、そして、アニール処理を施して製造してもよく、また、光学部材23の端面に誘電体多層膜22を成膜してアニール処理を施し、そして、それを光ファイバ心線21に融着して製造してもよい。
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、レーザ光入射端及び出射端の両方に誘電体多層膜12,22が設けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、レーザ光入射端のみに誘電体多層膜が設けられた構成であってもよく、また、レーザ光出射端のみに誘電体多層膜が設けられた構成であってもよい。
上記実施形態1及び2では、イオンアシスト蒸着法により誘電体多層膜12,22を形成したが、特にこれに限定されるものではなく、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング蒸着法、ゾルゲル法等により形成してもよい。
(試験評価1)
<実施形1>
コア径が60μmのコアにYbが添加され且つ外径が600μmの第1クラッドを囲うように第2クラッドに複数の細孔が形成されたファイバ径が1000μmのファイバレーザ用のダブルクラッド光ファイバの一方のファイバ端面に、低屈折率層(SiO2膜、膜厚50〜250nm)及び高屈折率層(Ta25膜、膜厚50〜250nm)を交互に成膜して全40層及び厚さ5000nmの高反射の誘電体多層膜を形成した。誘電体多層膜の形成は100℃以下の温度雰囲気下で酸素イオンアシスト蒸着法により行った。そして、この誘電体多層膜に対して大気雰囲気下において波長が976nmで且つパワー密度が450W/mm2のCWレーザを60分間照射してアニール処理を施した。なお、この誘電体多層膜は、波長が1050〜1100nmの光に対する反射率が99%以上であった。
このダブルクラッド光ファイバを用いてレーザ発振させたところ、中心波長1085nmでパワーが1.5kW以上のレーザ光の発振を確認することができた。
<比較例1>
アニール処理を施さなかった誘電体多層膜を用いたことを除いて実施例1と同一の試験を行ったところ、パワーが800Wのレーザ光の発振時にファイバ端面が破壊した。
(試験評価2)
<実施例2>
石英基板上に低屈折率層(SiO2膜、膜厚50〜250nm)及び高屈折率層(Ta25膜、膜厚50〜250nm)を交互に成膜して全50層及び厚さ6000nmの誘電体多層膜を形成した。誘電体多層膜の形成は100℃以下の温度雰囲気下で酸素イオンアシスト蒸着法により行った。そして、この誘電体多層膜に対して大気雰囲気下において波長が976nmで且つパワー密度が500W/mm2のCWレーザを60分間照射してアニール処理を施した。
アニール処理を施した誘電体多層膜に対し、直径が1.6mmのレーザ光を徐々にパワーを高めながら照射し、誘電体多層膜の温度をサーモビュアで経時的に測定した。誘電体多層膜の温度は、図6に示すように、パワーが200Wを少し超えた時点で約40℃まで昇温した。
<比較例2>
アニール処理を施さなかった誘電体多層膜を用いたことを除いて実施例2と同一の試験を行った。誘電体多層膜の温度は、図6に示すように、パワーが200Wを少し超えた時点で約150℃まで昇温した。
(試験評価3)
<実施例3>
コア径が400μmで且つファイバ径が500μmのレーザ光伝送用の光ファイバのファイバ端面に低屈折率層(SiO2膜、膜厚50〜250nm)及び高屈折率層(Ta25膜、膜厚50〜250nm)を交互に成膜して全6層及び厚さ500nmの無反射の誘電体多層膜を形成した。誘電体多層膜の形成は100℃以下の温度雰囲気下で酸素イオンアシスト蒸着法により行った。そして、この誘電体多層膜に対して大気雰囲気下において波長が915nmで且つパワー密度が1000W/mm2のCWレーザを60分間照射してアニール処理を施した。なお、この誘電体多層膜は、波長800〜1000nmの光に対して反射率1%以下であった。
アニール処理を施した誘電体多層膜を介して光ファイバに、波長が915nmで且つパワーが200Wのレーザ光を入射し、誘電体多層膜の温度をサーモビュアで経時的に測定した。誘電体多層膜の温度は100℃以下に抑制されていた。
<比較例3>
アニール処理を施さなかったことを除いて実施例3と同様に形成した誘電体多層膜について同一の試験を行った。誘電体多層膜の温度は500℃に達した。
本発明はレーザ光用光ファイバ構造体及びその製造方法について有用である。
10,20 レーザ光用光ファイバ構造体
11,21 光ファイバ心線
111,211 光ファイバ
111a コア
111b (第1)クラッド
111c 第2クラッド
112 212 被覆層
12,22 誘電体多層膜
12a 高屈折率層
12b 低屈折率層
23 光学部材
30 電子ビーム蒸着装置
31 チャンバー
32 電子銃
33 蒸着源
34 イオン銃
35 ドーム
35a 加工品保持孔
35b 水晶モニタ
35c モニタガラス
36 酸素供給管
37 光源
38 ミラー
39 光検出器

Claims (6)

  1. レーザ光入射端及び出射端の少なくとも一方に誘電体多層膜が設けられたレーザ光用光ファイバ構造体であって、
    上記誘電体多層膜は、該誘電体多層膜の形成後に酸素雰囲気下でCWレーザが照射され、その光吸収によるアニール処理が施されているレーザ光用光ファイバ構造体。
  2. 請求項1に記載されたレーザ光用光ファイバ構造体において、
    上記誘電体多層膜は、光ファイバのファイバ端面を被覆するように設けられているレーザ光用光ファイバ構造体。
  3. 請求項1に記載されたレーザ光用光ファイバ構造体において、
    上記誘電体多層膜は、光ファイバのファイバ端に連続して一体に取り付けられた光学部材に設けられているレーザ光用光ファイバ構造体。
  4. レーザ光入射端及び出射端の少なくとも一方に誘電体多層膜が設けられたレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法であって、
    誘電体多層膜の形成後に、該誘電体多層膜に酸素雰囲気下でCWレーザを照射し、その光吸収によりアニール処理を施すレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法。
  5. 請求項4に記載されたレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法において、
    上記CWレーザの波長が1μm帯域であるレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載されたレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法において、
    上記CWレーザのパワー密度が60〜600W/mm2であるレーザ光用光ファイバ構造体の製造方法。
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