JP2013042594A - 架空支持金具 - Google Patents

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Abstract

【課題】厳しい腐食環境下で使用され、かつ他の金具と組み合わされて繰り返し摩擦が加わるような用途の架空支持金具として、優れた耐食性を示すと同時に、高い耐摩耗性を示し、しかも厚物や太物の素材から複雑な形状に冷間で加工可能で、かつ応力腐食割れも生じにくいようにした、架空支持金具を提供する。
【解決手段】冷間加工による加工部を少なくとも1以上含み、他の金具と接触して繰り返し摩擦を受ける用途の架空支持金具11、例えばL型金具や棒状フック金具として、その材料に、フェライト系ステンレス鋼、例えばSUS430鋼を用いた。
【選択図】図1

Description

本発明は、通信用ケーブルなどの架空線を、電柱などの固定構造物に支持するための架空支持金具に関するものである。
光ファイバケーブルなどの架空線を、屋外において電柱間に吊下したり、家屋などの建築物中に引き込んだりする場合、その架空線や吊線を、支持金具を介して電柱などの固定構造物に引き留めたり、連結したりする必要がある。そのための支持金具としては、引き留め構造に応じて種々の形状のものが用いられているが、支持金具の材料としては、炭素鋼がほとんどである。但し、この種の支持金具は、屋外で使用する関係上、耐食性について考慮する必要があり、そのため炭素鋼の表面に、耐食性溶融亜鉛めっきを施した状態で使用するのが一般的である。
ところで、炭素鋼に溶融亜鉛めっきを施してなる架空支持金具は、腐食がさほど厳しくない一般の環境下においては、めっき厚にもよるが、実用上支障のない程度の耐食性を示す。しかしながら、海岸付近の塩害を受けやすい地域や、温泉地帯などの、腐食条件が厳しい環境でこの種の架空金具を使用した場合には、溶融亜鉛めっき層が短期間で消失して炭素鋼の地肌が露出してしまい、炭素鋼の腐食が急速に進行して、必要な強度を保てなくなってしまう問題がある。そこで、腐食が進行して強度が保てなくなる以前の段階で点検して、交換あるいは補修を行なう必要があるが、このような保守点検・交換・補修作業には膨大な手間と時間、コストを要する。したがって特に腐食が厳しい環境下で使用する架空支持金具としては、溶融亜鉛めっきを施した炭素鋼よりも耐食性が優れているものが強く望まれる。
架空支持金具の耐食性を、溶融亜鉛めっきよりも向上させる方策としては、溶融亜鉛めっきに代えて、他の耐食性付与表面処理を適用することが考えられる。具体的には、亜鉛(Zn)とアルミニウム(Al)のZn−Al系合金めっきを施したり、Zn−Al系合金を溶射したり、さらにポリエチレンテレフタレート(PET)などの有機ライニングを施したり、耐食性塗料で塗装する方法などがあり、これらはいずれも一部では実用化されている。
また、耐食性付与表面処理を行なうことなく耐食性を向上させる方策として、架空支持金具の材料を、炭素鋼よりも耐食性が優れた金属に変更することも考えられ、例えばステンレス鋼に変更したり、チタンやチタン合金に変更したりすることが考えられる。そして架空支持金具の一部にステンレス鋼を使用することは、既に例えば特許文献1や特許文献2などに記載されている。
特開2001−231137号公報 特開平8−262298号公報
架空支持金具としては、他の金具と接触した状態で使用されて、使用時に繰り返し摩擦が加わるものがある。例えば、電柱などの固定構造物の側に取り付けられる支持金具としては、引っ掛け用のフック部を有する、いわゆるL型金具がある。そしてリング部を有する別の金具(引き留め金具)に架空線を接続しておき、その引き留め金具のリング部を、前記L型金具のフック部に引っ掛けた状態で使用することがある。このような場合、L型金具のフック部と、引き留め金具のリング部とは、相互に接触した状態で使用され、かつ風による架空線の振動にともなって、その接触部分に繰り返し摩擦が加わることになる。このように、使用時において繰り返し摩擦が加わるような支持金具については、耐食性のみならず、耐摩耗性をも配慮する必要がある。
しかるに、前述のような汎用の炭素鋼を母材として表面処理によって耐食性を向上させた支持金具においては、表面の耐食性付与皮膜(例えばZn−Al合金めっき層、Zn−Al合金溶射層、有機ライニング層、塗膜)は、母材の炭素鋼と比較して格段に軟質であるか、または母材に対する密着性が低い。そのため、このような耐食性付与皮膜を有する架空支持金具を、繰り返し摩擦が加わるような個所に使用した場合、耐食性付与皮膜が、繰り返し摩擦によって早期に磨耗あるいは剥離して、母材の炭素鋼も早期に磨耗が進行し、また母材の炭素鋼の露出によって厳しい腐食環境下では早期に腐食が進行してしまう。その結果、これらの腐食の進行および摩耗の進行により、架空支持金具の強度が早期に低下し、その耐用寿命が短くなってしまう。
したがって、表面処理によって耐食性を向上させる方策は、厳しい腐食環境下でかつ繰り返し摩擦が加わる用途には不適当であった。もちろん耐食性付与皮膜として、硬質でかつ耐食性にすぐれ、しかも母材との密着性が優れた特殊な皮膜を形成することも考えられないではないが、そのような特殊な皮膜の形成には、大幅なコスト上昇を招くのが通常であり、低コスト化が求められるこの種の架空支持金具に適用することは実際的ではなかった。
一方、母材の材料を、炭素鋼から、より耐食性が優れた材料に変更する方策のうち、チタンもしくはチタン合金に変更する方策は、材料コストが著しく高くなってしまうため、
実際に適用することは困難である。また母材の材料を、汎用の炭素鋼からステンレス鋼に変更する方策については、次のような問題がある。
すなわち、ステンレス鋼としては種々の鋼種のものがあるが、市場に流通しているステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種であるSUS304鋼が最も一般的である。そこで、厳しい腐食環境下で使用する架空支持金具の材料としても、SUS304鋼を使用することが考えられる。ここで、特許文献1、特許文献2においては、単にステンレス鋼を使用することが記載されているだけであって、特にステンレス鋼の鋼種の記載までは見当たらないが、実際にこれらの特許文献に記載されている架空支持金具を製造しようとした場合、汎用のSUS304鋼を使用すると考えられる。
しかしながら、SUS304鋼で代表されるオーステナイト系ステンレス鋼は、冷間で加工した場合、加工硬化が極めて生じやすく、そのため厚みや太さが大きくしかも複雑な形状を有する架空支持金具には不向きであった。例えば前述のように、他の金具と組み合わされて、繰り返し摩擦が加わるような用途、言い換えれば架空線から振動が継続的に加わるような個所に使用される架空支持金具は、振動に対して十分な強度、耐久性を与えるため、かなりの厚みや太さを有していることが必要であり、しかも前述のようなフック部やリング部などを有する複雑な形状に加工しなければならない。このように、厚肉もしくは大径のSUS304鋼素材を、複雑な形状に冷間で加工しようとした場合、加工硬化により実際上は所望の形状に加工できないことが多い。
またSUS304鋼を用いて仮に所望の支持具形状に加工できたとしても、加工によって発生した残留応力により、応力腐食割れが発生しやすくなる問題がある。特に前述のような海岸付近や温泉地帯のような厳しい腐食環境下で使用すれば、応力腐食割れが早期に発生し、思わぬ事故を招いてしまうおそれがある。
したがってこれらの理由から、厳しい腐食環境下で、他の金具と組み合わされて繰り返し摩擦が加わるような用途に使用される架空支持金具の材料として、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304鋼は、不適当であると言わざるを得なかった。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたもので、厳しい腐食環境下で使用され、かつ他の金具と組み合わされて繰り返し摩擦が加わるような用途の架空支持金具として、優れた耐食性を示すと同時に、高い耐摩耗性を示し、しかも厚物や太物の素材から複雑な形状に冷間で加工可能で、かつ応力腐食割れも生じにくいようにした、架空支持金具を提供することを課題としている。
以上のような課題を解決するため、本発明においては、基本的には、表面処理によって耐食性を向上させるのではなく、材料そのものとして高耐食性を有する材料を用いることとし、しかもその高耐食性材料として、ステンレス鋼のうちでも、特にSUS430鋼で代表されるフェライト系ステンレス鋼を用いることとした。
すなわち本発明の基本的な態様(第1の態様)による架空支持金具は、冷間加工による加工部を少なくとも1以上含む架空支持金具において、その材料としてフェライト系ステンレス鋼を用いたことを特徴とするものである。
このような第1の態様の架空支持金具においては、その材料としてフェライト系ステンレス鋼が使用されている。フェライト系ステンレス鋼は、厳しい腐食環境でも優れた耐食性を示すため、耐食性向上のためにめっきや溶射、ライニング、塗装などの表面処理を特に施さなくても、急速な腐食や発錆を招くことなく、長寿命を維持することができる。さらに、上述のように高耐食性付与のためにめっきや溶射、ライニング、塗装などの表面処理を施す必要がなく、しかもフェライト系ステンレス鋼は汎用の炭素鋼より硬質であるため、相手側の他の金具との接触面の繰り返し摩擦によって表面処理膜が磨耗もしくは剥離してさらに母材部分の摩耗まで早期に進行して、強度の低下を早期に招いてしまうこともない。またフェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼とは異なり、冷間加工を行っても加工硬化が少ないため、冷間加工で複雑な形状に容易に加工でき、そのため、他の金具と組み合わせるための複雑な形状の部分を有するものを容易に製造することができる。さらに、冷間加工を行なっても、残留応力によって応力腐食割れが発生するおそれが少ないから、海岸付近などの厳しい腐食環境でも、応力腐食割れにより不測の事故を招くおそれが少ない。
また本発明の第2の態様による架空支持金具は、前記第1の態様の架空支持金具において、前記加工部として、フック状に曲げられた部分を有していることを特徴とするものである。
さらに本発明の第3の態様による架空支持金具は、前記第1の態様の架空支持金具において、前記加工部として、軸方向圧縮加工により外周方向にフランジ状に張り出した部分を有していることを特徴とするものである。
さらに本発明の第4の態様による架空支持金具は、前記第1の態様の架空支持金具において、前記加工部として、リング状に曲げられた部分を有していることを特徴とするものである。
さらに本発明の第5の態様の架空支持金具は、前記第1の態様の架空支持金具において、前記加工部として、素材の厚板に対する冷間でのプレス加工による打ち抜きを施した部分を有していることを特徴とするものである。
また本発明の第6の態様による架空支持金具は、
前記第1から第5の態様のうちのいずれかの態様の架空支持金具において、前記フェライト系ステンレス鋼として、SUS430鋼を使用することを特徴とするものである。
本発明によれば、海岸付近や温泉地帯などの厳しい腐食環境下で、他の金具と組み合わされて繰り返し摩擦が加わるような用途に使用される架空支持金具として、優れた耐食性を示すと同時に、高い耐摩耗性を示し、そのため腐食の進行や摩耗の進行によって早期に強度低下を招くことを防止して、従来よりも著しい長寿命化を図り、これにより架空支持金具の保守点検・交換・補修の頻度や手間、時間を従来より大幅に削減して、これらに要するコストを低減することができ、しかも厚物や太物の素材から複雑な形状に冷間で容易に加工可能であるため、実際に適用される架空支持金具製品として、容易かつ低コストで製造することができ、その他、応力腐食割れも生じにくいため、厳しい腐食環境下での使用にあたっても、高い安全性、信頼性を得ることができる。
本発明の第1の実施形態として、L型金具に適用した例の架空支持金具を示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態として、棒状フック金具に適用した例の架空支持金具を示す斜視図である。 本発明の第3の実施形態として、引き留め金具に適用した例の架空支持金具を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の第1の実施形態の架空支持金具11、すなわちL型金具に適用した例を示す。
図1において、この架空支持金具11は、フェライト系ステンレス鋼からなる6mmの厚板を素材とし、その厚板から、冷間でのプレス加工によって全体形状を打ち抜き、さらにそのうち抜かれた形状の一部に、冷間での曲げ加工を行って、断面がコの字型をなすフック状に曲げられた部分、すなわち板状フック部13を形成し、全体として断面L字形状としたものである。なお板状フック部13の曲げ部における最小曲げ半径は、5mmとされている。なおまた、架空支持金具11における平板状の部分14には、電柱などの固定構造物の側にボルトなどにより固定するための挿通孔15が形成されている。なお、図1に示す架空支持金具(L型金具)11においては、板状フック部13、および全体形状の周縁部分(プレス打ち抜き部分)が、前述の「冷間加工による加工部」に相当する。
このような図1に示す架空支持金具11は、電柱などの固定構造物にボルトなどにより固定し、板状フック部13に、後に図3を参照して説明する引き留め金具31のリング部33を掛けて使用される。
図2には、本発明の第2の実施形態の架空支持金具21、すなわち棒状フック金具に適用した例を示す。
図2において、この架空支持金具21は、フェライト系ステンレス鋼からなる直径9mmの棒鋼を素材とし、その一端近くの部分に、冷間で軸方向に圧縮する加工を加えて、外周方向に中間フランジ状に張り出す張り出し部23を形成し、かつ他端側の半分以上の部分に冷間で曲げ加工を施して、湾曲状の棒状湾曲フック部25を形成したものである。なお、棒状湾曲フック部25の曲げ部における曲げ半径は、19mmとされている。なおまた、張り出し部23よりも端末側の外周上には、螺条27が形成されている。なお、図2に示す架空支持金具(棒状フック金具)21においては、張り出し部23と、棒状湾曲フック部25とが、前述の「冷間加工による加工部」に相当する。
このような図2に示す架空支持金具21は、電柱と電柱の間(柱間)において架空線を分岐させるために使用される。すなわち、図2には示していないが、螺条27の部分に、吊り線等へ取付けるための支持板を固定した状態で、棒状湾曲フック部25に、後に図3を参照して説明する引き留め金具31のリング部33(通常は二つ以上の引き留め金具31のリング部33)を引掛けて使用される。
図3には、本発明の第3の実施形態の架空支持金具31、すなわち引き留め金具に適用した例を示す。
図3において、この架空支持金具31は、フェライト系ステンレス鋼からなる直径2.6mmの線材を、冷間での曲げ加工によりリング状に湾曲させてリング部33を形成し、かつそのリング部33を含む線材部分を、硬質樹脂などに任意の材料からなる基体部35に埋め込んで、これらを一体化したものである。基体部35は、架空線の端末もしくは中間部分が取り付けられる部分であり、架空線を巻き掛けるような形状に作られている。なお前記リング部33は、通常は、最小曲げ半径が、17mmとなるように作られている。なお、図3に示す架空支持金具(引き留め金具)31においては、リング部33が、前述の「冷間加工による加工部」に相当する。
このような図3に示される架空支持金具(引き留め金具)31は、その基体部35に架空線の端末もしくは中間部分を取り付け、リング部33を、図1に示した架空支持金具(L型金具)11の板状フック部13、あるいは図2に示した架空支持金具(棒状フック金具)21の棒状湾曲フック部25に引っ掛けて使用するのが通常である。
したがって、これらの架空支持金具の使用時においては、図1の架空支持金具(L型金具)11の板状フック部13と図3の架空支持金具(引き留め金具)31のリング部33とが接触して、架空線の振動に伴って繰り返し摩擦が生じ、また図2の架空支持金具(棒状フック金具)21の棒状湾曲フック部25と図3の架空支持金具(引き留め金具)31のリング部33とが接触して、同様に繰り返し摩擦が生じることになる。
ここで、本発明の架空支持金具に使用されるフェライト系ステンレス鋼としては、18Crと称されるSUS430鋼が代表的である。このSUS430鋼は、その化学成分として、C:0.12wt%以下、Si:0.75wt%以下、Mn:1.00wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.030wt%以下、Cr:16.00〜18.00wt%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるものである。このSUS430鋼は、フェライト系ステンレス鋼のうちでも比較的安価であると同時に、苛酷な腐食環境下で使用される架空支持金具として満足できる程度の耐食性を有していることから、本発明の架空支持金具でも、SUS430鋼を使用することが望ましい。その他、13Crと称されるSUS405鋼、あるいはSUS434鋼も使用することができる。SUS405鋼は、化学成分として、C:0.08wt%以下、Si:1.00wt%以下、Mn:1.00wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.030wt%以下、Cr:11.50〜14.50wt%、Al:0.10〜0.30wt%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるものであり、またSUS434鋼は、化学成分として、C:0.12wt%以下、Si:1.00wt%以下、Mn:1.00wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.030wt%以下、Cr:16.00〜18.00wt%、Mo:0.75〜1.25%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるものである。
このようなフェライト系ステンレス鋼は、従来から架空支持金具の母材として使用されている一般的な炭素鋼と比較して、材料それ自体として、優れた耐食性を示す。言い換えれば、炭素鋼を母材としてそれに溶融亜鉛めっきを施した架空支持金具、その他、Zn−Al合金めっき層、Zn−Al合金溶射層、有機ライニング層、塗膜などの耐食性付与皮膜を形成した架空支持金具のように、表面処理皮膜により耐食性を向上させる必要がない。そして、海岸付近や温泉地帯などの厳しい環境で使用されても、充分な耐食性を示し、錆や腐食が発生することなく、長期間使用することができる。
また、上述のように溶融亜鉛めっきやその他の耐食性付与皮膜を特に形成していないため、架空線の振動に伴って繰り返し摩擦が生じても、溶融亜鉛めっきやその他の耐食性付与皮膜の摩耗や剥離により他の金具との接触部分の摩耗が早期に進行することがなく、しかもフェライト系ステンレス鋼自体も、溶融亜鉛めっきやその他の耐食性付与皮膜よりも硬質で耐摩耗性が優れている。したがってこれらの相乗的な効果として、摩耗の進行が著しく遅くなり、摩耗による強度低下の進行を遅らせて、長寿命化を図ることができる。
さらに、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼と比較して、冷間加工時における加工硬化が格段に少ないため、各実施形態で示したような、冷間加工による加工部を有する形状、特に厚板や小さな曲げ半径など、強加工を必要を有する形状にも、容易に加工することができる。
そしてまた、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼とは異なり。冷間加工による残留応力が存在しても、応力腐食割れが生じるおそれが少なく、そのため、厳しい腐食環境下でも、応力腐食割れにより急激に亀裂や破壊が発生してしまうおそれが極めて少なく、そのため高い安全性、信頼性を維持したまま、長期間使用することができる。
以下に本発明の実施例を示す。なお以下の実施例は、本発明の作用効果を明確化するためのものであって、実施例に記載された条件が本発明の技術的範囲を限定しないことはもちろんである。
本発明例、および比較例1〜4として、それぞれ図1に示すような形状を有する架空支持金具(L型金具)を用意した。板厚は6mmであり、全体形状は素材の厚板から冷間でのプレス加工によって打ち抜き、板状フック部を、冷間でのプレス加工による曲げによって形成した。板状フック部の最小曲げ半径は、5mmである。
発明例1は、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430鋼を用いたものであり、耐食性付与のための皮膜は、特に形成しなかった。
比較例1は、炭素鋼の一般構造用圧延鋼材であるSS400鋼を母材とし、その表面に、JIS H 8641の1種Aの規定以上の溶融亜鉛めっきを施したもの、すなわち従来品に相当するものである。なお比較例1における溶融亜鉛めっき層の実際の厚みは、約70μmであった。
比較例2は、炭素鋼の一般構造用圧延鋼材であるSS400鋼を母材とし、その表面に、Zn−5%Alの成分組成のZn−Al合金めっきを、溶融亜鉛めっきと同様な溶融めっき法により施し、耐食性付与皮膜としてのZn−Al合金めっき皮膜を形成したものである。なおZn−Al合金皮膜の厚みは、約50μmである。
比較例3は、炭素鋼に溶融亜鉛めっきを施した比較例1の従来品に、さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする粉体塗料を焼き付け、耐食性付与皮膜として焼付け塗膜を形成したものである。なお、焼付け塗膜の厚みは、約200μmである。
比較例4は、炭素鋼の一般構造用圧延鋼材であるSS400鋼を母材とし、その表面に、Zn−5%Alの成分組成のZn−Al合金を溶射し、耐食性付与皮膜としてのZn−Al合金溶射膜を形成したものである。なおZn−Al合金溶射膜の厚みは、約100μmである。
これらの本発明例および比較例1〜4の各架空支持金具(L型金具)について、苛酷な腐食雰囲気における耐食性を評価するため、中性塩水噴霧試験を行なった。ここで、中性塩水噴霧試験は、JIS K5600−7−1の規定に従い、35℃で5重量%の塩化ナトリウム水溶液を、500時間連続噴霧した。
中性塩水噴霧試験後の発錆状況を目視により観察した結果を、表1中に示す。
また、本発明例および比較例1〜4の各架空支持金具(L型金具)について、他の支持金具と組み合わされて繰り返し摩擦が加わった場合の耐摩耗性を、次のような磨耗試験により評価した。
すなわち、図3に示した引き留め金具を、相手側金具として用い、その引き留め金具に、長さ35mの1条の屋外線の一端を取り付け、引き留め金具のリング部を、本発明例および比較例1〜4の各架空支持金具(図1に示したL型金具)の板状フック部に引っ掛け、前記屋外線を振動させることによって、各架空支持金具の板状フック部に繰り返し摩擦を付与した。そして、1.5Hzの振動を25,000回与えた後に、板状フック部の最大磨耗量を調べた。
その結果を、表1中に示す。なお表1中に示している「磨耗量」は、表面に耐食性付与皮膜を形成している例(本発明例を除いた、比較例1〜4)においては、耐食性付与皮膜の表面からの最大磨耗量を示す。したがって、その「磨耗量」が耐食性付与皮膜の厚みを越えている場合は、その最大磨耗個所において母材まで磨耗が進行していたことを意味する。
Figure 2013042594
表1中の中性塩水噴霧試験結果(500時間後の発錆状況)に示すように、母材として炭素鋼を用いて溶融亜鉛めっきを施した比較例1(従来品)では錆が発生してしまったが、フェライト系ステンレス鋼のSUS430鋼を用いた本発明例では、特に耐食性付与皮膜を形成していなかったにもかかわらず、錆がまったく発生せず、耐食性が従来品よりも優れていることが確認された。なお、その他の比較例2〜4でも錆は発生せず、従来品よりも耐食性が良好であることが確認されたが、次に述べるように耐磨耗性の点で問題がある。
表1中の磨耗試験結果から、比較例1の従来品では、溶融亜鉛めっき層厚み(約70μm)を越えて磨耗が進行し、母材炭素鋼まで磨耗が進んだことが確認された。
これに対して本発明例では、従来品(比較例1)と比較して磨耗量が1/3以下で、格段に耐摩耗性が優れていることが確認された。しかも従来品(比較例1)では、母材自体の磨耗量(=全磨耗量−溶融亜鉛めっき層厚み)が約100μmに達していたのに対し、耐食性付与皮膜を形成していない本発明例では磨耗量が53μmと、従来品(比較例1)の母材部分の磨耗量の約1/2であり、したがって素材自体を炭素鋼からフェライト系ステンレス鋼に変更したことによる耐磨耗性向上効果も大きいことが分かる。
また比較例2〜4では、比較例1の従来品と同等もしくはそれ以上の磨耗量となり、いずれも下地の母材炭素鋼が露出したばかりでなく、下地の母材炭素鋼にも磨耗が進んでいた。したがってこれらの比較例2〜4と比べても、本発明例の耐摩耗性が優れていることが分かる。
以上のように、本発明例は、従来品(比較例1)と比較して耐食性が著しく優れているばかりでなく、耐食性付与皮膜を形成した各比較例1〜4と比べて、繰り返し摩擦を加えたときの耐摩耗性が優れているため、繰り返し摩擦によって大きく磨耗して早期に強度低下を招いてしまうおそれが少ないことが明らかである。
11・・・架空支持金具(L型金具)、13・・・板状フック部、21・・・架空支持金具(棒状フック金具)、23・・・張り出し部、25・・・棒状湾曲フック部、31・・・架空支持金具(引き留め金具)、33・・・リング部。

Claims (6)

  1. 冷間加工による加工部を少なくとも1以上含み、他の金具と接触して繰り返し摩擦を受ける用途の架空支持金具において、その材料としてフェライト系ステンレス鋼を用いたことを特徴とする架空支持金具。
  2. 請求項1に記載された架空支持金具において、
    前記加工部として、フック状に曲げられた部分を有していることを特徴とする架空支持金具。
  3. 請求項1に記載された架空支持金具において、
    前記加工部として、棒状部分の軸方向圧縮加工により外周方向にフランジ状に張り出した部分を有していることを特徴とする架空支持金具。
  4. 請求項1に記載された架空支持金具において、
    前記加工部として、リング状に曲げられた部分を有していることを特徴とする架空支持金具。
  5. 請求項1に記載された架空支持金具において、
    前記加工部として、素材の厚板に対する冷間でのプレス加工により打ち抜かれた部分を有していることを特徴とする架空支持金具。
  6. 請求項1〜請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載された架空支持金具において、
    前記フェライト系ステンレス鋼として、SUS430鋼を使用することを特徴とする架空支持金具。

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