JP2013040111A - ジペプチジルペプチダーゼ−iv阻害剤及びその製造方法 - Google Patents

ジペプチジルペプチダーゼ−iv阻害剤及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期に連続して使用しても安全であり、小腸からの吸収性に優れ、DPP−IV阻害作用が強く、しかも血中での安定性に優れたDPP−IV阻害剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤である。また、アルカリ溶液を用いて米又は玄米から抽出した米糠又は玄米由来のタンパク質を、アスペリギルス オリゼ由来のタンパク質分解酵素を用いて分解する前記ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、インスリン分泌増強作用などを有するインクレチンを不活性化するジペプチジルペプチダーゼ−IVを阻害するジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤及びその製造方法に関する。
国民の40歳代以上の男性の3人に1人は、代謝異常症候群いわゆるメタボリックシンドロームの予備群であると、厚生労働省より発表されている。この代謝異常症候群の上流にある症状は肥満であり、特に内臓脂肪から生ずるアディポサイトカインによって高血圧、高脂血症、糖尿病を引き起こす。この中でも糖尿病は、インスリンというホルモンの作用不足によって高血糖状態が長く続く代謝疾患群であり、冠状心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、アルツハイマー症及び網膜症を含めた大血管及び微小血管合併症を併発する危険性が高い。
厚生労働省の2002年の糖尿病実態調査の速報値によると、II型糖尿病予備群は成人の6.3人に1人に当たる約1620万人にのぼると発表され、毎年数百万人の勢いで増加している。したがって、血糖値を適切に管理することが重要である。そして、糖尿病予防・改善効果を目指した食品を摂取しうる対象人口は今後ますます高まることが想定される。
通常、人体内においては、食物の摂取後、膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモンであるインクレチンが消化管から放出されている。このインクレチンは、血中の酵素ジペプチジルペプチダーゼ−IV(以下、ジペプチジルペプチダーゼ−IVを「DPP−IV」と略称することがある。)によって分解され、その能力を失う。したがって、糖尿病の改善・予防において、血糖値を適切に管理するには、このインクレチンを分解する酵素であるDPP−IVの酵素活性を緩やかに抑えることが重要である。
これまで、このようなDPP−IV阻害効果を有する食品として報告されているのは、熟成ナチュラルチーズ成分中のペプチド(特許文献1及び非特許文献1参照)や、食肉の乳酸菌発酵物(非特許文献2参照)、海藻・茶類・クルミ・ザクロ・ブドウ種子・黄杞葉・カカオ・ブドウ新芽・グアバ・生コーヒー豆・コタラヒムブツ・タマリンドの各抽出物から得られるもののみである(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1、非特許文献1及び非特許文献2に記載のDPP−IV阻害剤は、チーズの水溶性画分や食肉の乳酸菌発酵物を有効成分とするものであり、高カロリーであるため長期的に連続して摂取することは好ましいことではない。また、乳酸菌発酵物は発酵の条件を厳しくコントロールしなければならないなど製造が容易であるとはいえない。また、特許文献2に記載の各抽出物から得られるDPP−IV阻害剤は、収率が極めて低いため大量に入手するという点で難点がある。
また、DPP−IVの酵素活性を抑えるDPP−IV阻害剤は、小腸を通って吸収されるが、小腸からの高い吸収という観点から検討された食品由来のDPP−IV阻害剤は見当たらない。さらに、食品由来のDPP−IV阻害剤は血中での安定性が必要であるが、かかる点から検討された報告もない。
特開2007−39424号公報 特開2010−13423号公報
冠木敏秀,Milk Science, Vol. 55, No.2, p.91-92, 2006 田口真理他,日本畜産学会大会要旨,Vol. 107, p.135, 2007
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、長期に連続して使用しても安全であり、小腸からの吸収性に優れ、DPP−IV阻害作用が強く、しかも血中での安定性に優れたDPP−IV阻害剤及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤を提供することによって解決される。
このとき、前記ペプチドが、Xaa−Proで示されるジペプチドであることが好適であり、前記ペプチドが、Ile−Pro及び/又はLeu−Proで示されるジペプチドであることが好適である。
また、このとき、アルカリ溶液を用いて米又は玄米から抽出した米糠又は玄米由来のタンパク質を、アスペリギルス オリゼ由来のタンパク質分解酵素を用いて分解することを特徴とするジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の製造方法を提供することも本発明の好適な実施態様である。
本発明により、DPP−IV阻害剤及びその製造方法を提供することができる。本発明のDPP−IV阻害剤は、米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分とするもので、長期に連続して使用しても安全であり、小腸からの吸収性に優れ、DPP−IV阻害作用が強く、しかも血中での安定性に優れている。したがって、本発明のDPP−IV阻害剤は、血糖値を容易に管理することができ、糖尿病の予防・改善に有用である。また、本発明のDPP−IV阻害剤は、米糠タンパク又は玄米タンパクをタンパク質分解酵素で分解して製造されるので、効率よく大量に生産することができる。
実施例2で得られた米糠由来加水分解物をゲル濾過カラムで分画したクロマトグラムである。 実施例2におけるフラクションナンバー24のSIM分析結果を示すマスクロマトグラムである。 標品のプロテインシークエンサーによるアミノ酸の測定結果を示すクロマトグラムである。 実施例2におけるフラクションナンバー24をさらに分画して得たフラクションナンバー18(1サイクル目)のSIM分析結果を示すクロマトグラムである。 実施例2におけるフラクションナンバー24をさらに分画して得たフラクションナンバー18(2サイクル目)のSIM分析結果を示すクロマトグラムである。
本発明のDPP−IV阻害剤は、米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有するものである。米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有することにより、長期に連続して使用しても安全であり、小腸からの吸収性に優れ、DPP−IV阻害作用が強く、しかも血中での安定性に優れたDPP−IV阻害剤を得ることができる。以下、本発明において、米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを米糠由来加水分解物又は玄米由来加水分解物と呼ぶことがある。
本発明のDPP−IV阻害剤に含まれるペプチドとしては、Xaa−Proで示されるジペプチドであることが好ましい。本発明において、Xaaとは任意のアミノ酸を示す。このように、本発明のDPP−IV阻害剤がXaa−Proで示されるジペプチドを含有することにより、DPP−IV阻害効果を増加させることができ、しかも血中での安定性の点でも優れるので好ましい。Xaa−Proで示されるジペプチドとしては、Ile−Pro(イソロイシン−プロリン)、Met−Pro(メチオニン−プロリン)、Val−Pro(バリン−プロリン)、Arg−Pro(アルギニン−プロリン)、Thr−Pro(スレオニン−プロリン)、Leu−Pro(ロイシン−プロリン)、Lys−Pro(リシン−プロリン)、His−Pro(ヒスチジン−プロリン)、Tyr−Pro(チロシン−プロリン)、Phe−Pro(フェニルアラニン−プロリン)、Trp−Pro(トリプトファン−プロリン)、Pro−Pro(プロリン−プロリン)、Ser−Pro(セリン−プロリン)、Ala−Pro(アラニン−プロリン)などが挙げられる。中でも、本発明のDPP−IV阻害剤に含まれるペプチドとしては、Ile−Pro(イソロイシン−プロリン)、Met−Pro(メチオニン−プロリン)、Val−Pro(バリン−プロリン)、Arg−Pro(アルギニン−プロリン)、Thr−Pro(スレオニン−プロリン)、及びLeu−Pro(ロイシン−プロリン)からなる群から選択される少なくとも1種のXaa−Proで示されるジペプチドであることが好ましく、Ile−Pro(イソロイシン−プロリン)及び/又はLeu−Pro(ロイシン−プロリン)で示されるジペプチドであることがより好ましく、Ile−Pro(イソロイシン−プロリン)で示されるジペプチドであることが更に好ましい。また、Val−Pro−Gly(バリン−プロリン−グリシン)のようなトリペプチドを含有させていてもよい。
また、後述する実施例における市販ジペプチドを用いたDPP−IV阻害活性の測定結果から分かるように、特定のXaa−Proで示されるジペプチドを含有することにより、DPP−IV阻害活性が強くなることが本発明者らにより確認された。したがって、DPP−IV阻害活性を有するIle−Pro(イソロイシン−プロリン)、Met−Pro(メチオニン−プロリン)、Val−Pro(バリン−プロリン)、Arg−Pro(アルギニン−プロリン)、Thr−Pro(スレオニン−プロリン)、Leu−Pro(ロイシン−プロリン)、Lys−Pro(リシン−プロリン)、His−Pro(ヒスチジン−プロリン)、Tyr−Pro(チロシン−プロリン)、Phe−Pro(フェニルアラニン−プロリン)、Trp−Pro(トリプトファン−プロリン)、Pro−Pro(プロリン−プロリン)、Ser−Pro(セリン−プロリン)、及びAla−Pro(アラニン−プロリン)からなる群から選択される少なくとも1種のXaa−Proで示されるジペプチドが本発明の実施態様である。中でも、Ile−Pro(イソロイシン−プロリン)、Met−Pro(メチオニン−プロリン)、Val−Pro(バリン−プロリン)、Arg−Pro(アルギニン−プロリン)、Thr−Pro(スレオニン−プロリン)、及びLeu−Pro(ロイシン−プロリン)からなる群から選択される少なくとも1種のXaa−Proで示されるジペプチドが好適である。
本発明のDPP−IV阻害剤は、米又は玄米から抽出した米糠又は玄米由来のタンパク質を原料とするが、米としては、品種、種類、精米方法に限定されず、ジャポニカ米、インディカ米など種々の米を用いることができる。米糠は、通常大量に廃棄されるものであるので、DPP−IV阻害作用に優れることに加え、原料ソースの点でも好ましい。原料として米糠を用いる場合は脂質成分を除去することが好ましい。
脱脂の方法としては特に制限されるものではなく、機械搾油、溶剤による抽出方法などを用いることができる。食品に用いられるためには、残留してはならないヘキサンなどの溶剤を用いることは避けるべきであり、かかる観点からは、機械搾油やエタノールを用いた抽出により脂質を除去することが好ましい。
本発明のDPP−IV阻害剤に使用される米糠又は玄米由来の加水分解物を製造するには、まず、米糠又は玄米から、米糠タンパク又は玄米タンパクをアルカリ溶液で溶出させる。アルカリ溶液としては、pHを12.5近辺に調整したNaOH水溶液を用い、この溶液に米糠又は玄米などを添加し、40℃〜60℃の温度で撹拌しながら2〜5時間程度抽出する。次いで、遠心分離機などの分離手段でろ液とろ過物とに分離し、1〜2Nの希塩酸でろ液のpHを4に調整し、タンパク質を沈殿させ、減圧乾燥などで乾燥させて米糠タンパク又は玄米タンパクを得ることができる。タンパク質を得る方法はこれに限定されるものではなく、酵素により糖質、セルロース等を水溶化して得ても良い。
得られた米糠タンパク又は玄米タンパクを蒸留水に懸濁し、5NのNaOH水溶液でpHを7.0〜8.0に調整した後、タンパク質分解酵素を加え、40℃〜50℃で12〜24時間反応を行う。次いで、酵素を失活させ、液体窒素で凍結乾燥して米糠又は玄米由来の加水分解物を得ることができる。
タンパク質分解酵素としては、ペプシン、プロテアーゼA、プロテアーゼBなど市販のタンパク質分解酵素を使用することができるが、具体的には、ビオプラーゼSP、デナチームAP、プロテアーゼP、ペプチターゼR、ウマミザイムGなどを挙げることができる。なかでも、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のタンパク質分解酵素は、イソロイシン−プロリン(Ile−Pro)、ロイシン−プロリン(Leu−Pro)などのジペプチドを容易に導入することができ好ましい。
アスペルギルス オリゼ由来のタンパク質分解酵素としては、ペプチターゼ及びプロテアーゼを有する上述の市販のウマミザイムG(至適pH8.0、中性付近で有効に作用し、至適温度45℃)、及びアスペルギルス オリゼが生産するプロテアーゼを製剤化したデナチームAP(至適pH7.0、至適温度50℃)を挙げることができる。これらの酵素を用いることにより、高い阻害作用を示すDPP−IV阻害剤を得ることができる。また、これらの酵素を用いると、加水分解物の収率が60%以上を示す点でも好ましい。したがって、アルカリ溶液を用いて米又は玄米から抽出した米糠又は玄米由来のタンパク質を、アスペリギルス オリゼ由来のタンパク質分解酵素を用いて分解するジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の製造方法が本発明の好適な実施態様である。
本発明のDPP−IV阻害剤は、前述のように、米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有する。DPP−IV阻害剤に含まれる米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドのピーク分子量が5000以下であることが好ましい。小腸からの吸収性を高めることができる観点から、前記ピーク分子量が2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
本発明のDPP−IV阻害剤は、50%阻害濃度(IC50)が20mg/ml以下であることが好ましい。50%阻害濃度が20mg/mlを超える場合、阻害効果が期待できないおそれがある。50%阻害濃度は、15mg/ml以下であることがより好ましく、10mg/ml以下であることが更に好ましく、5mg/ml以下であることが特に好ましい。
本発明において、DPP−IV阻害剤に含まれる米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドの含有量としては特に限定されないが、米糠又は玄米由来の加水分解物1mgあたり、0.01μg以上含有することが好ましく、0.1μg以上含有することがより好ましく、0.5μg以上含有することが更に好ましい。
本発明のDPP−IV阻害剤は、例えば経口的に投与して、生体におけるDPP−IVを阻害することにより血糖値を低下させることができる。経口投与に用いる本発明のDPP−IV阻害剤の剤形は、錠剤、カプセル剤、細粒剤、散剤、タブレット剤、トローチ剤、舌下剤、液剤などが可能である。また、本発明のDPP−IV阻害剤は、各種食品、各種飲料に添加して用いることもできるし、サプリメントとして用いてもよい。
本発明のDPP−IV阻害剤の経口投与量としては、治療や予防の目的、投与対象の症状、体重、年齢、性別などの諸条件を考慮して適宜決定されるが、通常、成人を対象とした場合、一日あたり、有効成分量として、5mg〜5000mg摂取すればよい。
本発明のDPP−IV阻害剤は、米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有する。前記ペプチドは、DPP−IV阻害活性を有する高血糖防止剤等として利用可能な、安全性が高く、副作用のない画分であり、数々の医薬品、特定用保健食品、機能性食品等への利用が期待できる。また、本発明のDPP−IV阻害剤は、安価に入手することができるという利点があり、実用上極めて利用価値が高い。
以下、実施例を用いて本発明のDPP−IV阻害剤を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において、ピーク分子量の測定、DPP−IVの活性測定及び阻害活性測定方法は以下の方法により行った。
(ピーク分子量の測定)
ピーク分子量は、ゲル濾過カラム(GEヘルスケア社製Superdex Peptide)を用いて分析した。溶媒として、0.15MのNaClを含む50mM酢酸バッファー(pH5.5)に、米糠由来又は玄米由来加水分解物を10mg/mlの濃度になるように溶解し、その200μlを流速0.7ml/分で上記ゲル濾過カラムに注入する。別途、表1に示す標品の溶出位置をもとに検量線を作成し、215nmの吸光度を測定することによってピーク分子量を求めた。
Figure 2013040111
(DPP−IVの調製)
DPP−IVの組み換え体の作出については、メタノール資化性酵母による系での例が報告されている(W. Metzler et al. Protein Sci.,17: 240-250 (2008))。この方法をもとに、市販されているhuman cDNA PCR templateを鋳型に、ヒトジペプチジルベプチダーゼ−IV遺伝子をPCRにより増幅し、発現ベクター・形質転換酵母を作出し、菌体外発現させた。この培養上清を水に対し透析して得た液をDPP−IV酵素液とした。
(DPP−IVの活性測定)
基質として、Ala(アラニン)−Pro(プロリン)−pNA(パラニトロアニリン)(バッケム社製)を使用した。すなわち、あらかじめ37℃に加温した2mMのAla−Pro−pNAを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)720μlを、37℃で加温したホルダーに装着したプラスチックセルに加え、前記酵素液を80μl加え、405nmの1分間当たりの吸光度変化を求めた。1ユニットを1分間あたり1マイクロモルのパラ−ニトロアニリンを遊離させる活性を1ユニットと定義し、405nmにおけるパラ−ニトロアニリンのミリモル分子吸光係数が10.6であることから、当該酵素液の活性を測定したところ、0.29ユニット/mlと見積もられた。
(DPP−IV阻害率の測定方法)
基質として上記Ala−Pro−pNAを使用し、酵素として前記酵素液を使用した。具体的操作としては、まず、下記実施例1〜3で調製した3種の米糠由来又は玄米由来加水分解物を超純水で50mg/mlとなるように溶解し、同じく超純水にて、25、12.5、6.25、3.125mg/mlになるように2倍希釈溶液を調製した。96穴透明マイクロプレートに、あらかじめ37℃に加温した2mMのAla−Pro−pNAを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)80μlおよび米糠由来又は玄米由来加水分解物溶液10μlあるいは超純水を10μl/ウェル添加し撹拌した後、SH−8000マイクロプレートリーダー(コロナ社製)にて、37℃、5分間加温した。この後、DPP−IV酵素液を10μl/ウェル添加し攪拌した後、前記マイクロプレートリーダーにて1分間当たりの405nm吸光度変化を求めた。超純水を加えたものの吸光度変化を100%とし、米糠由来又は玄米由来加水分解物溶液を添加した際の相対的な活性を算出した。各サンプルについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。
(脱脂米糠の製造)
精米工場からの生糠を70〜100℃に加熱することにより、生糠に残留するリパーゼを失活させ、油が絞りやすい状態にしてレイノルズ社(ドイツ)製の搾油機AP14/22を用いて搾油した。圧搾された油と(半)脱脂米糠を分離し、半脱脂米糠には3〜5倍量のエタノールを入れ、30〜60℃で0.5〜4時間撹拌し、その後5Aの濾紙にてろ過した。この撹拌とろ過を再度繰り返し、半脱脂米糠を70℃以下の通風乾燥機で半脱脂米糠の水分が5%以下になるように乾燥し、脱脂米糠を得た。
(米糠タンパクの調製)
250mlの水に1.0gのNaOHを溶解し、pHを12.5付近に調整したアルカリ溶液に上記のようにして得た脱脂米糠25gを加え、45℃の温度で攪拌しながら2時間抽出した。遠心分離機により、ろ液とろ過物に分け、ろ過物にさらに上記アルカリ溶液を250ml加え、同様に抽出した。得られたろ液を併せて1〜2規定の希塩酸でpH4に調整することにより、タンパク質を溶液中に沈殿させた。これを再度、遠心分離機でろ液とろ過物に分けた後、ろ過物を40℃で減圧乾燥して米糠タンパクとして回収した。得られた米糠タンパクのタンパク含量はデュマ法で77.3%であった。
実施例1:(デナチームAPによる米糠由来加水分解物の調製)
上記で得た米糠タンパク2.5gをプラスチック製50mlコニカルチューブにとり、蒸留水40mlに懸だくし、5規定NaOHによりpHを7.0に調整した。デナチームAP(ナガセケムテックス社製)を25mg加え、反応温度を40℃に設定した。反応装置は、エッペンドルフ社製サーモミキサーコンフォートを用い、750rpmの攪拌を行って終夜反応を行った。終夜反応の後、静置した状態で80℃、30分加熱して酵素を失活させた。反応終了時においても、不溶物が残存していたので、反応液を2000Gで20分間遠心分離し、その上清を液体チッソにより凍結し、ラブコンコ社製凍結乾燥用フラスコおよび装置を用いて、終日凍結乾燥を行い、デナチームAPによる米糠由来加水分解物1.1gを得た。ピーク分子量は230であった。
(DPP−IV阻害効果の評価)
上記説明したDPP−IV阻害率の測定方法にしたがって、実施例1のサンプルについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。上記阻害活性とサンプル濃度(固形分濃度)の対数の関係式から逆算して、サンプルの50%阻害濃度(IC50)を求めた。その結果、デナチームAPによる米糠由来加水分解物(実施例1)のIC50は、9.08±2.04mg/mlであった。
実施例2:(ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物の調製)
上記で得た米糠タンパク2.5gを、プラスチック製50mlコニカルチューブにとり、蒸留水40mlに懸だくし、5規定NaOHによりpHを7.5に調整した。実施例1と同様の方法により、ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物1.2gを得た。ピーク分子量は245であった。
(DPP−IV阻害効果の評価)
上記説明したDPP−IV阻害率の測定方法にしたがって、実施例2のサンプルについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。上記阻害活性とサンプル濃度(固形分濃度)の対数の関係式から逆算して、サンプルの50%阻害濃度(IC50)を求めた。その結果、ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物(実施例2)のIC50は、2.34±0.13mg/mlであった。
(ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物中のIle−ProおよびLeu−Proの定量)
上記ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物を、200μg/mlになるように、0.1%ギ酸を含む超純水に溶解した。また検量線を引く目的で、市販されているIle−Pro(バッケム社製)を0.25、0.50、1.00μg/mlになるように、同じく0.1%ギ酸を含む超純水に溶解した。これらサンプル各1μlをLC/MS分析した。装置は、高速液体クロマトグラフ装置NEXERAおよび質量分析計LCMS−2020(いずれも島津製作所製)を用い、カラムはジーエルサイエンス社製のInertsil ODS−3(2.1mm ID×50mm)を40℃で使用した。溶出は、0〜1分、0.1%ギ酸を含む超純水を供給し、1〜11分、0%から100%へ、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルのグラジエント供給で、0.3ml/分の流速で行った。その結果、215nmおよびSelected Ion Monitoring(SIM)で、Ile−ProおよびLeu−Proに相当するM/Z=229.3を検出した。検量線から、ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物中1mgあたり、2.91±0.52μgのIle−ProおよびLeu−Proが含まれていることが見積もられた。N末端解析の結果から、イソロイシンおよびロイシンの混合物が、4.2対5.8の割合で検出された。その結果、上記比率でIle−ProおよびLeu−Proが含まれているものとして、ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物中1mgあたり、Ile−Proが1.22±0.22μg、Leu−Proが1.69±0.30μg含まれていると見積もられた。
(ゲル濾過カラムによる分画とDPP−IV阻害活性の測定)
阻害活性成分を同定するため、実施例2で得たウマミザイムGによる米糠由来加水分解物を分取用ゲル濾過カラム(GEヘルスケア社製HiLoad 26/60 Superdex 30 prep grade) で分画した。ウマミザイムGによる米糠由来加水分解物617mgを、150mMのNaClを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)で100mg/mlの濃度で溶解し、0.45μmのフィルターで濾過し、カラムに全量注入した。溶出液は、150mMのNaClを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)を用い、流速1ml/分で溶出させ、10mlずつ分画した。フラクションナンバー21から34について、DPP−IV阻害活性を測定した。
具体的には、96穴透明マイクロプレートに、各フラクションあるいは150mMのNaClを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)を90μlおよびDPP−IV酵素液を5μl/ウェル添加し撹拌した後、SH−8000マイクロプレートリーダー(コロナ社製)にて、37℃、5分間加温した。この後、20mMのAla−Pro−pNAのDMSO溶液を5μl/ウェル添加し撹拌した後、前記マイクロプレートリーダーにて1分間当たりの405nm吸光度変化を求めた。150mMのNaClを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)を加えたものの吸光度変化を100%とし、米糠由来加水分解物溶液を添加した際の相対的な活性を算出した。
表2に各フラクションのDPP−IV阻害率を示す。図1は、分取用ゲル濾過カラムの結果であり、1は215nmにおける吸光度変化を、2はDPP−IV阻害率(%)を示す。各フラクションについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。表2に示すように、フラクションナンバー24において、最も強い阻害活性を認めた。
Figure 2013040111
(活性画分のLC/MSによる解析)
前記フラクションナンバー24〜27について、各溶液9mlを、透析チューブ(家田紡績株式会社のSPECTRUM フロータライザーG2、容量10ml、分画分子量100〜500)に入れ、脱塩のため蒸留水(4L×2回)で透析した後、得られた透析液をプラスチック製50mlコニカルチューブにとり、ボルテックスエバポレーター(ラブコンコ社製)にて乾固させ、フラクションナンバー24〜27について、各々42、47、50、19mgの乾固物を得た。これを、0.1%ギ酸を含む超純水に100μg/mlの濃度になるよう溶解し、各10μlをLC/MS分析した。
装置は、高速液体クロマトグラフ装置NEXERAおよび質量分析計LCMS−2020(いずれも島津製作所製)を用い、カラムはジーエルサイエンス社製のInertsil ODS−3(2.1mm ID×50mm)を40℃で使用した。溶出は、0〜1分、0.1%ギ酸を含む超純水を供給し、1〜11分、0%から100%へ、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルのグラジエント供給で、0.3ml/分の流速で行い、215nmおよびSelected Ion Monitoring(SIM)で検出した。
SIM分析における検出するM/Zの値は、市販されている15種のXaa−Proジペプチドに相当する値、すなわち、173.2(Gly−Pro)、187.2(Ala−Pro)、203.2(Ser−Pro)、213.3(Pro−Pro)、215.3(Val−Pro)、217.3(Thr−Pro)、229.3(Ile−Pro、Leu−Pro、Pro−Ile、Pro−Leuは、同じM/Z=229.3を与える)、244.3(Lys−Pro)、247.3(Met−Pro)、253.3(His−Pro)、263.3(Phe−Pro)、272.3(Arg−Pro)、279.3(Tyr−Pro)、302.4(Trp−Pro)、計14種のM/Zを測定した。その結果、フラクションナンバー24に保持時間3.4分付近に、M/Z=229.3の顕著なピークが検出された。
図2にフラクションナンバー24のSIM(M/Z=229.3)のマスクロマトグラムを示す。この条件でIle−Pro、Leu−Proの標品を分析したところ、全く同じ保持時間を与えた。また、この条件で、Pro−Ile、Pro−Leuの標品を分析したところ、各々の保持時間は、2.2分、2.9分付近であった。
(分取用逆相カラムによる分画とDPP−IV阻害活性の測定)
前記フラクションナンバー24について、阻害活性成分を同定するため、上記活性画分のLC/MSによる解析における方法と同様にして42mgの乾固物を得た。この乾燥物を、10mg/mlになるように、0.1%ギ酸を含む蒸留水に溶解し、このうち50μLを高速液体クロマトグラフ装置(日本ウォーターズ社製)に注入し、分取用逆相カラムで分画した。カラムはジーエルサイエンス社製のInertsil ODS−3(10mm ID×150mm)を40℃で使用した。溶出は、0〜3分、0.1%ギ酸を含む超純水を供給し、3〜13分、0%から100%へ、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルのグラジエント供給で、3ml/分の流速で行い、1.5mlずつ分画した。各フラクションについて、各10μlをLC/MS分析した。
装置は、高速液体クロマトグラフ装置NEXERAおよび質量分析計LCMS−2020(いずれも島津製作所製)を用い、カラムはInertsil ODS−3(2.1mm ID×50mm、ジーエルサイエンス社製)を40℃で使用した。溶出は、0〜1分、0.1%ギ酸を含む超純水を供給し、1〜11分、0%から100%へ、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルのグラジエント供給を、流速0.3ml/分の流速で行い、215nmおよびSelected Ion Monitoring(SIM)で検出した。M/Z=229.3(Ile−Pro、Leu−Pro、Pro−Ile、Pro−Leuは同じM/Z=229.3を与える)で検出したところ、フラクションナンバー18に保持時間3.4分付近、M/Z=229.3の顕著なピークが検出された。
フラクションナンバー18について、エドマン反応を利用した気相法プロテインシークエンサー(島津製作所製)にかけ、N末端に位置するアミノ酸を検出したところ、N末端には、イソロイシンおよびロイシンの混合物が、4.2対5.8の割合で検出され、N末端の次位置にはプロリンが検出された。よってこのフラクションナンバー18には、Ile−ProおよびLeu−Proが含まれていることが判明した。
実施例3:(ウマミザイムGによる玄米由来加水分解物の調製)
玄米タンパク(Nutribiotic社製)2.5gを、プラスチック製50mlコニカルチューブにとり、蒸留水40mlに懸だくし、5規定NaOHによりpHを7.5に調整した。ウマミザイムG(アマノエンザイム社製)を25mg加え、反応温度を45℃に設定した。実施例1と同様の方法により、ウマミザイムGによる玄米由来加水分解物1.45gを得た。ピーク分子量は225であった。
(DPP−IV阻害効果の評価)
上記説明したDPP−IV阻害率の測定方法にしたがって、実施例3のサンプルについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。上記阻害活性とサンプル濃度(固形分濃度)の対数の関係式から逆算して、サンプルの50%阻害濃度(IC50)を求めた。その結果、ウマミザイムGによる玄米由来加水分解物(実施例3)のIC50は、4.58±0.79mg/mlであった。
試験例1:(市販ジペプチドによるDPP−IV阻害活性の測定)
基質として、前記と同じAla−Pro−pNAを使用し、酵素としては前記酵素液を使用した。具体的操作としては、下記表3に示す16種のジペプチドを超純水にて、6.25、12.5、25、50、100mMになるように2倍希釈溶液を調製した。96穴透明マイクロプレートに、あらかじめ37℃に加温した2mMのAla−Pro−pNAを含む0.1Mトリス―塩酸バッファー(pH7.5)80μlおよびペプチド溶液10μlあるいは超純水10μl/ウェル添加し撹拌した後、SH−8000マイクロプレートリーダー(コロナ社製)にて、37℃、5分間加温した。
この後、DPP−IV酵素液を10μl/ウェル添加し攪拌した後、前記マイクロプレートリーダーにて1分間当たりの405nm吸光度変化を求めた。超純水を加えたものの吸光度変化を100%とし、ペプチド溶液を添加した際の相対的な活性を算出した。各サンプルについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。表3に結果を示す。表3に示された結果から分かるように、Ile−Proが最も阻害活性が強く、そのIle−ProのレトロペプチドであるPro−IleおよびGly−Proは全く阻害を示さなかった。
Figure 2013040111
試験例2:(ビオプラーゼSPによる米糠由来加水分解物の調製)
上記得られた米糠タンパク2.5gをプラスチック製50mlコニカルチューブにとり、蒸留水40mlに懸だくし、5規定NaOHによりpHを8.0に調整した。ビオプラーゼSP(ナガセケムテックス社製)を25mg加え、反応温度を50℃に設定した。反応装置は、エッペンドルフ社製サーモミキサーコンフォートを用い、750rpmの攪拌を行って終夜反応を行った。終夜反応の後、静置した状態で80℃、30分加熱して酵素を失活させた。反応終了時においても、不溶物が残存していたので、反応液を2000Gで20分間遠心分離し、その上清を液体チッソにより凍結し、ラブコンコ社製凍結乾燥用フラスコおよび装置を用いて、終日凍結乾燥を行い、ビオプラーゼSPによる米糠由来加水分解物0.65gを得た。ピーク分子量は11,500であった。
基質として、前記と同じAla−Pro−pNAを使用し、酵素としては前記酵素液を使用した。具体的操作としては、まず、上記ビオプラーゼSPによる米糠由来加水分解物を超純水で80mg/mlとなるように溶解し、同じく超純水にて、40、20、10、5mg/mlになるように2倍希釈溶液を調製した。96穴透明マイクロプレートに、あらかじめ37℃に加温した2mMのAla−Pro−pNAを含む0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5)80μlおよび米糠由来加水分解物溶液10μlあるいはミリQ水を10μl/ウェル添加し撹拌した後、SH−8000マイクロプレートリーダー(コロナ社製)にて、37℃、5分間加温した。この後、DPP−IV酵素液を10μl/ウェル添加し撹拌した後、前記マイクロプレートリーダーにて1分間当たりの405nm吸光度変化を求めた。超純水を加えたものの吸光度変化を100%とし、米糠由来加水分解物溶液を添加した際の相対的な活性を算出した。サンプルについてDPP−IV阻害率を3回測定して平均値を求めた。
上記阻害活性とサンプル濃度(固形分濃度)の対数の関係式から逆算して、サンプルの50%阻害濃度(IC50)を求めた。その結果、ビオプラーゼSPによる米糠由来加水分解物のIC50は、26.4±2.3mg/mlであった。
ビオプラーゼSPによる米糠由来加水分解物を、200μg/mlになるように、0.1%ギ酸を含む超純水に溶解した。また検量線を引く目的で、市販されているIle-Pro(バッケム社製)を0.125、0.25、0.50、1.00μg/mlになるように、同じく0.1%ギ酸を含む超純水に溶解した。これらサンプル各1μlをLC/MS分析した。
装置は、高速液体クロマトグラフ装置NEXERAおよび質量分析計LCMS−2020(いずれも島津製作所製)を用い、カラムはジーエルサイエンス社製のInertsil ODS−3(2.1mm ID×50mm)を40℃で使用した。溶出は、0〜1分、0.1%ギ酸を含む超純水を供給し、1〜11分、0%から100%へ、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルのグラジエント供給で、0.3ml/分の流速で行った。215nmおよびSelected Ion Monitoring(SIM)で測定したところ、Ile-ProおよびLeu−Proに相当するM/Z=229.3の値は検出限界以下であり測定できなかった。
1 215nmにおける吸光度変化
2 DPP−IV阻害率(%)

Claims (4)

  1. 米糠又は玄米由来のタンパク質を加水分解してなるペプチドを有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤。
  2. 前記ペプチドが、Xaa−Proで示されるジペプチドである請求項1記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤。
  3. 前記ペプチドが、Ile−Pro及び/又はLeu−Proで示されるジペプチドである請求項1又は2記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤。
  4. アルカリ溶液を用いて米又は玄米から抽出した米糠又は玄米由来のタンパク質を、アスペリギルス オリゼ由来のタンパク質分解酵素を用いて分解することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の製造方法。
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