以下、本発明を実施するための形態の一例として、マンションなどの集合住宅において実施するに好適な電気自動車の充電システムに関する実施例につき添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施例に示す集合住宅では、電気自動車の充電システムとともに物品収受装置が配置され、この物品収受装置の制御部(200)と、充電制御部(301)とが協働して充電制御を行う構成を示すが、以下の実施例における充電制御は、必ずしもこのように機能が分離された複数の制御部によって実施することを必須とするものではない。
図1は本発明を採用した電気自動車の充電システムの構成を示している。
本実施例の電気自動車の充電システムは、マンションなどの集合住宅(以下、単に「集合住宅」と称する)に設置されるもので、図1に示すように、充電出力手段として電気自動車を複数台それぞれ充電する充電器303、303…を含む。これら充電器303、303…は、集合住宅の駐車スペース(あるいは充電専用のスペース)などに配置される。
充電器303、303…が配置される駐車スペースは各居住者(ユーザ)ごとに割り当てられ、各居住者が保有する電気自動車(電気自転車などを含む)が専有的に使用するスペース、あるいは、他の駐車位置から居住者が車両を移動してきて充電のみ行うような共用の充電スペースであってよい。充電対象の電気自動車は、各居住者が保有するものであってもよいし、また、その集合住宅の居住者で共有(カーシェアリング)されるものであってもよい。充電対象の電気自動車が共有(カーシェアリング)される場合は、電気自動車は所定の予約手続を経て予約管理される。
充電器303、303…は、電気自動車に対して、充電電流を供給するためのレセプタクル(あるいは直出しのケーブルおよびコネクタ)を有し、商用交流電源302の出力(たとえば単相100V)をレセプタクル(あるいはケーブルおよびコネクタ)から不図示の電気自動車に対して出力し、電気自動車を充電する。なお、電気自動車の仕様によって、あるいは電気自動車のバッテリを直接充電するような用途のために、充電器303、303…は交流出力ではなくスイッチングレギュレータなどを用いて生成した直流を充電電力として電気自動車に供給できるように構成されていてもよい。
商用交流電源302は、制御部200(後述)の主電源部(不図示)にも電源供給を行なう。商用交流電源302〜制御部200の電源ライン上には、停電時のデータ退避などの停電時の充電中断処理を確実に行なうためにバックアップ無停電電源501を配置してある。バックアップ無停電電源501は、充電式バッテリーおよびスイッチングレギュレータ、あるいは大容量のコンデンサ、あるいは発電機などの商用交流電源302に依存しない電源を用いて構成され、制御部200への電源ラインの給電が遮断された場合、直ちに制御部200への電源供給を開始する。当然ながら、バックアップ無停電電源501は、停電時のデータ退避などの停電時の充電中断処理を充分実行できるだけの時間、制御部200(ないしはさらに必要な周辺回路)に給電を行なえる能力を有する。また、バックアップ無停電電源501は、停電により制御部200への電源ラインの給電が遮断された場合、および復旧した場合、割込み信号(INT)を発生し、制御部200のCPU201に対して割込みをかけ、CPU201はこれに応じて後述の停電時(図7)および停電復旧時(図8)の割込制御を実行する。
なお、停電、および停電復旧をCPU201に対して報知する割込み(あるいは検出)信号は、特にバックアップ無停電電源501で発生する必要はなく、他の検出回路が発生するようになっていてもよい。
また、バックアップ無停電電源501は、制御部200に対する電源供給(通常100V単相)を行なうもので、充電器303、303…に給電する商用交流電源が200V系などである場合には、制御部200に対して電源供給を行なう不図示の電源ライン上に配置される。
充電器303、303…は、集合住宅の規模などに応じて複数、N台分用意する(図1では5台分の充電器303のみを図示している)。本実施例では、諸条件、たとえば当該集合住宅で電気自動車の充電に利用できるトータルの電流容量などを考慮し、このうちの数台(n台、たとえば3台)を用いて電気自動車を同時充電するものとする。同時充電できるn台を超える分の電気自動車は、他の充電器に接続して、充電待ちの待機状態とすることができる。
充電器303、303…のうち、どの充電器を同時充電するかは充電制御部301により制御される。充電制御部301は後述の制御部200と同様にCPU、ROM、RAMなどの部材から構成され、制御部200と通信することにより、充電器303、303…の充電出力をオン/オフする。
また、充電制御部301は充電器303、303…のそれぞれの状態、たとえば、動作中か否か、現在の充電電流の値、などを制御部200との通信を介してCPU201に報知することができ、CPU201はこれにより現在の各充電器303、303…の状態を把握し、後述のような充電制御を行なうことができる。
一方、図1の右方には物品収受装置100が示されている。物品収受装置100は、いわゆる宅配物の授受に用いる宅配ボックス(宅配ロッカー)や、郵便受けなどとして構成される。
図1の物品収受装置100は、たとえば集合住宅の(宅配業者や郵便配達員がアクセスできる)公共側に面する側を図示してある。
物品収受装置100は、複数の物品収受ボックス101、101…から構成され、物品収受ボックス101が郵便受けとして構成される場合には破線で示すように投函口102、102…が設けられ、物品収受ボックス101…の投函口102とは反対側(不図示)の面には郵便物を取り出すための電気錠(あるいは番号キー)により開閉される扉(不図示)が設けられる。
物品収受ボックス101、101…が宅配ボックスとして構成される場合には、図示の公共側の面は宅配業者が宅配物を収容するための扉(この扉は居住者が宅配物を取り出すための扉を兼ねていてもよい)として構成され、その反対側には居住者が宅配物を取り出すための扉(不図示)が設けられ、これらの扉の開閉は電気錠により制御される。
物品収受ボックス101、101…の郵便物を取り出すための扉、あるいは宅配物を収容し、また取り出すための表裏の2つの扉の開閉は、コンソール103での居住者(あるいは宅配業者)操作に応じて制御部200により制御される。
コンソール103は、ここでは便宜上、公共側に配置されたものを図示しているが、ほぼ同じ構造のものをプライベート側(図示した側と反対側)に設けることができる。
コンソール103には、LCDパネルなどから構成されたディスプレイ104、ファンクションキーやテンキーから成るキーボード105、および認証手段としてのIDカード111の情報を読み取るカードリーダー102が設けられる。
IDカード111は、集合住宅の居住者がそれぞれ保有するもので、たとえばその居室番号などがID情報として記録されたICカードなどにより構成される。また、当該集合住宅以外のIDカード111を用いたりできないように、IDカード111には、当該集合住宅で用いることができる正規のカードであることを示す特定の鍵情報を格納したり、あるいは居室番号などのID情報を当該集合住宅のみで通用する鍵情報を用いて暗号化して記録したりすることができる。
また、IDカード111は、宅配物(あるいは郵便物や郵便小包)を収容するため物品収受ボックス101、101…の公共側の扉を開錠するために用いる特別なカードとして特定の宅配業者(あるいは郵便配達人)に配布することもできる。さらに、IDカード111は、集合住宅のエントランスの扉(不図示。いわゆるオートロック制御される玄関扉)や、居住者個々の居室を開閉する鍵として機能するカードキーを兼ねていてもよい。
さらに、本実施例では、IDカード111は、居住者が電気自動車(自己の保有する車両、あるいはカーシェアリングにより貸与される車両)を充電するための充電サービスを受けるために必要な認証を行なう認証手段としても用いる。
すなわち、本実施例では、IDカード111は、充電器303、303…により提供する充電サービスに対するユーザ認証手段としても用いられる。
このために、コンソール103のみならず、IDカード111を読み取るカードリーダー(102と同等のもの)を含む充電制御用のコンソール(不図示)を充電器303、303…の近傍に(個々の充電器のそれぞれ近傍または充電スペースの所定場所に1ないし数個)に配置することもできる。
また、充電器303、303…の筐体にそれぞれこのようなカードリーダーを有するコンソールを配置してもよい。居住者(あるいは管理者)の充電サービスに関する操作は、図示のコンソール103ないし、充電器303、303…に、あるいはその近傍に設けた不図示のコンソールのいずれによっても行なうことができるが、以下では便宜上、また、説明を容易にするため図示のコンソール103を用いて居住者(あるいは管理者)の充電サービスに関する操作が行なわれるものとする。
以上のように特定の居住者と1:1に対応づけられたIDカード111を用いることにより、後述のように特定の居住者の電気自動車の充電サービスの利用行動に係わる情報、ないしは、その居住者が充電サービスを受ける電気自動車に係わる情報をデータベース情報として蓄積し、該データベース情報を用いて効率よく迅速に複数の電気自動車を充電することができる。
物品収受装置100の制御部200は、コンソール103でのIDカード111の提示、操作に応じて、物品収受装置100の物品収受ボックス101、101…を施錠/開錠する電気錠の開閉制御を行なう。
また、上述のように、IDカード111には、物品収受装置100の施錠/開錠操作のほか、居住者(保有する、あるいは使用の権利のある電気自動車)に対する充電サービスを関連づけ、IDカード111によって充電サービスの認証を行なうようにすることから、物品収受装置100の制御部200は、物品収受装置100の制御および充電制御部301が制御する充電サービスを統合的に制御する。
その際、特定の居住者の電気自動車の充電サービスの利用行動に係わる情報、ないしは、その居住者が充電サービスを受ける電気自動車に係わる情報をデータベース情報として蓄積し、該データベース情報を用いて複数の電気自動車の充電制御を行なうことができる。
制御部200は、主制御部としてのCPU201、後述のプログラムを格納したROM202、ワークエリアとして用いられるRAM203、充電制御部301と通信するための所定通信方式によるインターフェース205(たとえば IEEE 802.3 ネットワークインターフェース、シリアルインターフェースなど)、さらに現在時刻を計時する、たとえばバッテリバックアップされたリアルタイムクロック(RTC)のような計時手段などから構成される。
さらに制御部200には、HDDや不揮発メモリカードから成る外部記憶装置207が接続されており、後述のプログラム、および充電行動データベース情報はこの外部記憶装置207に格納される。
また、CPU201には、不揮発メモリ209が接続されており、CPU201は、停電時、バックアップ無停電電源501からの割込み信号(INT)に応じて充電制御を続行できるよう不揮発メモリ209に制御データを退避させる。不揮発メモリ209はEEPROMやバッテリーバックアップされたRAMなどの半導体メモリから構成することができるが、上述のHDDなどから成る外部記憶装置207の記憶領域を不揮発メモリ209として用いるようにしてもよい。
また、制御部200は、ネットワークインターフェース(たとえば IEEE 802.3 ネットワークインターフェースや所定方式の WAN インターフェースなど)204を有し、ネットワーク206(イントラネットやインターネット)を介して遠隔地のサーバと通信することができる。後述の制御の一部は、制御部200のみならず、ネットワーク206を介して接続されるサーバによって代行することができる。特に、後述のデータベース情報の蓄積や管理は、このようにネットワーク206を介して接続されるサーバによって実施するようにしてもよい。
また、制御部200は、ネットワークインターフェース204を経由してネットワーク206上にあるメールサーバを用いて、居住者(ユーザ)に対して、たとえば当該居住者が登録した電気自動車の充電サービスの充電開始、および後述の充電終了検出制御(図5、図6)によって制御される充電終了などを通知するメールを送信できるようにしておく。また、充電サービスの開始や終了の通知は、当該集合住宅のインターホン(不図示)を介して行なうこともできる。集合住宅のインターホンとの接続は、ネットワークインターフェース204ないし他の専用信号線を介して行ない、たとえば居住者の居室のインターホンの表示装置などに特定の表示を行なうことにより電気自動車の充電の開始や終了の通知を実施することができる。
図2および図3は、図1のような本実施例の物品収受装置および充電システムからなる装置の制御に用いられるデータベースの構成の一例を示している。
図2および図3のデータベースは、制御部200の外部記憶装置またはネットワーク206を介して制御部200と接続されるサーバの外部記憶装置(いずれも不図示)の記憶領域(通常特定のデータベース方式におけるデータベースファイル)を用いて構成される。
この種のデータベースは、通常、いわゆるリレーショナル形式で、複数の記憶領域を関連づける形で種々のデータレコードを格納する。図2は、本実施例のシステムにおける主データベースの概要を示しており、符号1301〜1304で示すフィールド、すなわち、居室ID、物品収受ボックスID、物品収受データベースへのポインタ、充電行動データベースへのポインタ、から構成される。
このうち、居室ID1301は、IDカード111によって識別される居住者の居室ID(たとえば居室の部屋番号)を格納する。
物品収受ボックスID1302には、物品収受ボックス101が郵便受け、宅配ボックスのいずれの場合であっても、居室ID1301のデータの示す居住者に対応づけられた物品収受ボックス101が存在する場合に、そのボックスのID(番号)が格納される。
居室ID1301、および物品収受ボックスID1302には、特定のIDカード111に対して特定の居住者ないし物品収受ボックス101のボックスIDを発行する登録時に上記の情報が格納される。この登録処理は上記のコンソール103、あるいは不図示の別の登録システムを用いて実行する(本発明の本質とはほとんど関係しないのでここではその詳細については説明を省略する)。
物品収受データベースへのポインタ1303は、当該居住者の物品収受ボックス101を用いた物品収受に関する物品収受データベースの格納領域へのポインタ(ファイル名や、メモリアドレス)である。この物品収受データベースには、当該居住者に対して物品収受ボックス101により行なわれた物品(宅配物、郵便物など)の収受に関する情報、たとえば着荷日時や、物品収受サービスに関して課金が行なわれる場合にはその課金情報などが蓄積される。ここでは、この種の物品収受を管理する物品収受データベースについては公知であるから詳細な説明は省略するが、物品収受データベースへのポインタ1303の値として例示したP11〜P13の意味は後述の充電行動データベースへのポインタ1304の値P21〜P23と同様に他の特定のデータベース領域へのポインタ(ファイル名や、メモリアドレス)である。
充電行動データベースへのポインタ1304は、当該居住者の電気自動車の充電サービスの利用行動に係わる情報、ないしは、その居住者が充電サービスを受ける電気自動車に係わる情報を図3に示すように蓄積する充電行動データベースの格納領域へのポインタ(ファイル名や、メモリアドレス)である。充電行動データベースへのポインタ1304の値P21、P22は、それぞれ図3に示す他のデータベース格納領域へのポインタである(P23の指している格納領域は図3では不図示)。
上記のような主データベースが用意されていれば、IDカード111がコンソール103のカードリーダー102に提示されるなどして、CPU201が居住者のID情報であるIDカード111に記録された居室IDを取得すると、その居室IDを用いて図2の居室IDのフィールド1301を参照することによりその居住者に割り当てられた物品収受ボックスID(フィールド1302)を特定することができる。
また、ポインタ格納フィールド1303、1304を参照することにより図3に示すような充電行動データベースの格納領域を特定し、その領域に格納されたデータを取り出して利用し、また、特定の居室IDの居住者に対して新たな充電サービスの実施があった場合には、その内容に応じて充電行動データベースの対応するデータを更新することができる。
図3の充電行動データベースは、以下に示すように特定の居住者の充電行動、すなわち、特定の居住者が亨受した充電サービスに関する情報を格納するもので、図の行方向の1レコードに当該居住者が亨受した1回の充電サービスに関する情報がそのレコードを構成する各フィールドに格納される。
なお、図3の符号P21およびP22は、図2の居室ID101および102のレコードに格納されたポインタP21およびP22を示しており、これらの居室ID101および102により識別される居住者の充電行動データベースの先頭レコードを示している。ここでは、説明を容易にするために、1つの表形式で居室ID101および102により識別される居住者の充電行動データベースがあたかも1ファイルに格納されるが如く図示しているが、実際にはこれらの異なる居住者の充電行動データベースはそれぞれ別のデータベースファイルに格納されていてもよい。
図3の充電行動データベースのレコードは、符号401〜408で示すような各フィールドにより構成されている。
フィールド401は、この居住者のある充電サービスの充電開始日時、フィールド402は、当該充電サービスの充電終了日時を格納する。
フィールド403は、当該充電サービスの充電時間長を示す情報を格納する。ここでは格納情報をS(短)、M(中)、L(長)のようなニーモニックで示しており、これらはたとえば1時間前後、3時間前後、3時間を超える長さなどの時間間隔に対応づけられている。フィールド403に格納するS、M、Lのような情報は、当該充電終了時にフィールド402の開始時刻情報からフィールド402の終了時刻情報を減算して求めた充電所要時間から生成することができる。ただし、フィールド403の格納情報は必ずしもこのようなニーモニックで格納せず、単に充電所要時間を格納しておき、値を利用する時にS、M、Lのようなニーモニックに変換してもよい。
フィールド404には、当該居住者が充電した電気自動車の車種情報を格納する。電気自動車の車種情報は、充電サービスに係る登録時に居住者が申告した車種情報であってもよいが、好ましくはたとえば充電サービスごとに充電電流の推移パターンなどから車種情報を推定して格納することが考えられる。このように充電電流の推移パターンなどから車種情報を推定するには、あらかじめ充電電流の推移パターンと車種情報を関連づけた他のデータベース情報(不図示)を用意しておく。そして、当該充電サービスにおける実際の充電電流の推移パターンから、車種情報との関連づけを格納したデータベース情報を参照することにより車種情報を特定することができる。
フィールド405には、当該充電サービスで消費した充電電流を格納する。ここでは図示のように適当な複数のアンペア数のしきい値との比較により求めた大、中、小のようなおおまかなニーモニックを格納した例を示しているが、平均電流の具体的な数値などを格納してもよい。
フィールド406には当該充電サービスに関する課金情報を格納する。課金情報は、単価(固定値、または充電電流に応じて定まる従量値)と充電所要時間の積、などにより求められる。なお、図示した課金方式はあくまでも一例であり、他の課金方式を用いる場合には異なる算出方法を用いてよい。また、課金情報は、他の格納位置に別のデータベースファイルなどとして記憶させるようにしてもよい。
フィールド407には当該充電サービスの終了コードを格納する。図3では、終了コードを正常終了を0、異常終了を1、ユーザの強制充電終了操作(たとえばコンソール103により行なわれる強制充電終了操作や、充電器303からのケーブルの抜去など)を2、のような数値で表わすものとしている(異常終了:1のケースは不図示)。
また、フィールド408には、当該レコードに対応する当該充電サービスにおける充電電流の変動(推移)データを刻々と記録する(後述の図5参照)とともに、当該ユーザが充電を行なっていない期間などの適当な管理期間においてフィールド408に記録した充電電流の変動パターンからその種別を示す情報を特定し格納する(このとき、あるいはさらにフィールド403、404、405、406などのデータも併せて更新することができる)。
本実施例では、フィールド408には、さらに当該ユーザの車両の充放電特性を格納することができる。本実施例では、後述のように、停電後の復旧時に、残りの充電制御を補正、具体的には、停電していた期間に生じる自然放電を補なうため、停電していた期間の長さにみあった充電の補正(充電時間の延長、あるいは充電電流の調節)を行なう。このため、フィールド408に格納する充放電特性は、当該車両のバッテリーの自然放電特性、たとえば時間あたりの自然放電量であれば足りる。
なお、この当該車両の充放電特性は、電気自動車側との間に特別な通信ラインがあれば、電気自動車側から通知させたり、あるいは充電期間の間の短時間に充電ラインをオープンとし、その前後で電気自動車側からバッテリー残量をそれぞれ報知させるような手法により取得することができる。また、フィールド404の車種情報の一部に、当該車種のデータ(仕様)としてメーカーが公開している充放電特性を格納しておき、この充放電特性を用いるようにしてもよい。このように充放電特性のデータは、種々の方法で実測、あるいは蒐集することができ、どのようなデータベースフィールドに格納してもよく、独立したデータベースを設けてそこに格納してもよい。
電気自動車の充電においては、たとえば電気自動車側のレギュレータを介した自動制御などにより、電気自動車に対して供給される充電電流が刻々変化し、たとえばその電流変化のパターンは図6に示すようなものとなる。
図6は電気自動車の充電電流Iの時間(t)変動パターンの一例を概念的に示しており、t0〜t1の期間で充電電流Iを漸増させ、その後、ほぼ定電流となり、電気自動車のバッテリーを保護するための間欠充電期間(t2〜t3)、あるいはバッテリー残量などに応じて充電電流Iを漸減させるような制御(不図示)を挿入しつつ充電が進む。そして充電期間の終盤(t4〜t5)において充電電流を漸減(あるいは間欠充電モードに移行する)させ、最後にt5以降からは低電流(数100〜1A程度)の充電電流を流すモードに移行するが、電気自動車側では充電電流を遮断することはなく、この状態が維持される。
図6に示したような充電電流の変動(推移)パターンをあらかじめ分類して他のデータベース(不図示)として用意しておけば、当該充電サービスにおける充電電流の変動(推移)パターンと比較することなどにより、A、B、Cのようなニーモニックによって識別されるパターン情報を特定し、フィールド408に格納することができる。これらのニーモニックによって識別される充電電流の変動パターン(波形変化)は、たとえば、充電期間の最初から最後までほぼ充電電流が一定であるとか、充電期間の最後に漸時充電電流を減衰させる制御が入るとか、あるいは充電期間の最後にパルス充電のような特別なパターンで充電電流を減衰させる区間が入る、といったいくつかのパターンに相当させるものとする。
また、本実施例では、充電器303、303…を用いて同時に複数の充電サービスを実施するに際し、あるユーザに提供している特定の充電サービスにおいて、その充電サービスに対応する特定の充電器を介して電気自動車に供給している充電電流が所定の低電流値となりその充電状態が所定の最低持続時間続いたことを充電終了条件とし、この充電終了条件の成立に応じて当該の充電サービスを停止させ、充電待ちとなっている他の充電サービスを開始させる制御を行なう。
このため、フィールド408には、充電終了を判定する条件として、充電電流の変動(推移)パターン情報を格納する。たとえば充電期間の終盤(図6でいえばタイミングt5以降)における低電流値Is(たとえば数100mA〜1A程度)、およびその低電流値Isの最低持続時間の情報も格納する(あるいは上記のニーモニックをこれらのパラメータごとに用意する)。
また、電気自動車の車種(あるいはメーカー)によっては「充電電流がXXmA以下となり所定時間(たとえば10数分〜1時間程度)その状態が持続した場合、満充電とみなしてよい」といった仕様が公開されている場合が多く、このような情報に基づいてフィールド408に格納しておく上記の充電終盤の低電流値Isと、充電終了と判定するための低電流値Isの最低持続時間を定めることができる。
なお、充電終了条件として用いる充電終盤の低電流値Isと、充電終了と判定するための低電流値Isの最低持続時間は、必ずしもフィールド408に格納しておく必要はなく、上記のように電気自動車の車種ごとにこれらの情報が公開されている場合にはフィールド404の車種情報からこれらの充電終了条件を求めることができる。車種情報から充電終盤の低電流値Isと、充電終了と判定するための低電流値Isの最低持続時間への変換は、たとえばあらかじめそのためのデータベース(不図示)を用意しておくことにより可能である(あるいは必要となる毎にネットワーク206上のサーバから最新の車種〜充電終了条件の対応データをダウンロードして用いてもよい)。
次に、上記構成における充電制御の一例につき、図4、図5、図7、図8のフローチャートを参照して説明する。図4は充電制御の全体を示し、図5は特に充電終了時の充電行動データベースの情報を用いた最適化処理を、また、図7および図8は、停電および停電復旧時の割込み制御を示している。
図4のフローチャートは、制御部200のCPU201、あるいはさらにCPU201と充電制御部301の連携により実行される本充電システムの充電制御の全体の流れを示している。図4の充電制御プログラムは、制御部200のROM202(あるいは不図示の外部記憶装置)、あるいはさらに処理の一部が充電制御部301により実行される場合、その部分は充電制御部301のROM(あるいは不図示の外部記憶装置)などに格納される。
図4の処理が前提とする充電処理は次のようなものである。
本実施例では、当該集合住宅で電気自動車の充電に利用できるトータルの電流容量などを考慮し、このうちのn台(たとえば3台)を用いて電気自動車を同時充電する。同時充電できるn台を超える分の電気自動車は、他の充電器に接続して充電待ちの待機状態とする。1台の電気自動車に対する充電は、特定のユーザ(居住者)が、コンソール103にIDカード111を提示して申し込み、登録した1個の充電サービスにより行なわれ、したがって、制御部200が行なう充電制御では同時にn個の充電サービスがユーザ(居住者)に提供される。
電気自動車の充電を申し込むには、居住者がコンソール103のカードリーダー102に自己のIDカード111を提示し、コンソール103で所定の操作を行ない、充電サービスの登録を行なうものとする。このユーザーインターフェースは制御部200のCPU201により制御され、その細部の構成は任意であるが、重要な点は居住者がコンソール103のカードリーダー102に対して認証手段としての自己のIDカード111を提示することにより、充電サービスに関する認証が行なわれる点である。
これにより、CPU201は居住者の居室IDを認識し、図2および図3のデータベースを参照し、当該居住者の過去の電気自動車の充電サービスの利用行動に係わる情報、ないしは、その居住者が充電サービスを受ける電気自動車に係わる情報をデータベース情報などにアクセスすることができるとともに、これらの情報をこれから実施する充電サービスの実際の態様に応じて更新することができる。
また、もちろん、IDカード111は、充電サービスのユーザとしての居住者に当該充電サービスを提供するか否かを決定するためのユーザ認証手段としても機能し、適正なIDカード111がカードリーダー102(あるいは充電器303やその近傍に配置されたカードリーダー)に提示されない場合は充電サービスの提供を禁止することができ、これにより適正なIDカードを提示した者以外に対する不正な充電サービスの提供を防止することができる。
なお、居住者が登録した充電サービスにおいていずれの充電器303を用いるかは、居住者が手動でコンソール103のキーボードなどを用いて空きとなっている充電器303、303…の一台を指定するか、制御部200のCPU201が空きとなっている充電器303、303…を指定してもよい。居住者は充電開始時刻(下記)までに指定した、あるいは指定された充電器303に充電する電気自動車を接続して待機するものとする。
複数台の電気自動車に対する充電サービスの提供に際しては、電気自動車が充電器303に接続され、コンソール103を用いてユーザの充電サービスに関する登録が完成した時点で直ちに充電を開始する方法が考えられるが、本実施例では同時充電するn台の電気自動車のグループの内訳(申し込みのあったいずれの電気自動車のうちどのn台を同時充電するか)を効率よく決定し、また、その後、電気自動車のいずれかが充電終了となった時点で充電待ちになっているどの電気自動車の充電を開始するか、といった充電の順序を効率よく決定するために、充電サービスの登録(申し込み)後に直ちに充電を開始するのではなく、充電サービスの登録は随時受け付けるが、実際の充電開始は一日のうち、たとえば、9:00、12:00、15:00、18:00などの決まった定時に開始するものとする。このような制御により、充電サービスの登録と複数台から成るグループの電気自動車に対する充電サービス開始との間にタイムラグを置くことによって、より効率的で、しかも集合住宅の電流容量をオーバーすることなく、確実な充電制御を行なうことができる。
さて、図4の充電制御は、制御部200に設けられた不図示のリアルタイムクロックの計時などにしたがって、上記の充電開始の定時タイミングのわずか前に開始されるものとする。
制御の対象となる充電サービスは、図4の処理開始前までに居住者がコンソール103を用いて登録を完了した有効な充電サービスである。
図4のステップS101では、申し込み順で1グループで同時実施するn個の充電サービスを仮選択する。
ここでは、既に登録を完了した有効な充電サービスのうち、登録を完了した時刻の早い順で完了した充電サービスを選択し、同時充電するn個の充電サービスと、それに対応するn台の1グループの充電器303、303…を選択する。
充電器303と登録されている充電サービスの関係は上記の登録処理によってCPU201が認識している。さらにCPU201は、当該充電サービスを登録した特定の居住者の居室IDを用いて図2および図3の過去の充電行動データベースを参照することができる。
これによって、当該居住者の充電行動データベースから、充電時間スペック(図3の403)、当該居住者が充電する電気自動車の車種情報(同404)、所要充電電流(同405)、充電電流パターン(同408)などの情報にアクセスすることができる。
続いて、ステップS102およびS103において、同時に実行(提供)するn個の充電サービスの組合せを決定する。本実施例では、このとき充電時間スペック(図3の403)、当該居住者が充電する電気自動車の車種情報(同404)、所要充電電流(同405)、充電電流パターン(同408)などの情報を用いて、現在選択中のn個の充電サービスの組合せが最適になるまで同時に実行(提供)するn個の充電サービスの組合せを選び直す。すなわち、同時実行する充電サービスの組合せを最適化する。
ここでは、ステップS102において、現在選択中のn個の充電サービスの組合せが最適か否かを判定し、ステップS103において、図2、図3の充電行動データベースにしたがって仮選択状態の1または数台分の充電サービスを仮選択状態となっていない他の充電サービスと入れ換える。
このときの充電サービスの最適化(入れ換え)の条件の最も重要な1つは、電気自動車n台分の充電に必要なトータルの電流容量が、複数の充電サービスの同時提供に際して要求される上限値、特に本実施例においては集合住宅の商用交流電源302によって供給可能な最大電流容量を超過しないようにする、という点である。この条件は、たとえば商用交流電源302の電源ラインに挿入されているブレーカーが断となって全ての充電処理が実行できなくなるのを防止するために必須である。この最重要条件を判定するには、具体的には、仮に定めた充電サービスの組合せにそれぞれ該当する居住者につき、図3のフィールド405の充電電流(たとえば過去の充電行動における充電電流値)を参照し、その総和が上記の上限値を超過しないか判定する処理を行なえばよい。
その他の最適化条件としては、種々の条件が考えられ、当業者において任意に採用して構わないが、たとえば、次のような最適化条件が考えられる。
その1つは、過去の充電行動データベースから、ある充電サービスについて、そのサービスに対応する居住者がどのような充電行動をとってきたかに応じて当該の充電サービスと他の充電サービスとを同時実行するか否かを決定するものである。
たとえば、過去の充電行動データベースから、その居住者が実行した充電が長時間の充電が多いのか、短時間の充電が多いのかを特定することができる。
そこで、最適化条件のひとつとして考えられるのは、充電サービスを登録した居住者全員の電気自動車を一斉に同時充電できない場合、居住者に充電待ちをさせる待ち時間ができるだけ小さくなるようにする、という戦略である。この場合には、ステップS103において、図3の充電行動データベースのフィールド403において、S(短)、M(中)、L(長)に分類された過去の充電時間長のうち、S(短)(ないしM(中))の充電時間長の多い(たとえばS(短)の充電時間が最も多い、など)居住者の充電サービスを先に実行するように充電サービスを入れ換える(L(長)ないしM(中)の充電時間長の多い居住者の充電サービスはあと回しにする)。これにより、たとえば「近所に出掛けるため、短時間の充電をしたいだけなのに長時間待たされた」といった居住者の不満を回避することができるようになる、と考えられる。
さらに、図3のような充電行動データベースを用意している場合には、現時点で登録されている特定の充電サービスが長時間に渡るものになるか、それとも短時間で済みそうかをより確実に特定することもできる。たとえば、図3のP21のポインタで示される居住者の2つのデータベースレコードのフィールド403は、それぞれ充電時間長S(短)、L(長)を示している。そして、これらのレコードのフィールド401および402の充電開始および終了日時を参照すると、このうち充電時間長S(短)のレコードは平日(金曜)のもの、充電時間長L(長)のレコードは週末(土曜〜日曜)のものであることが判る。
このようなデータベースレコードからは、この居住者は(ないしこの居住者の充電する電気自動車使用の態様が)平日には短時間の充電を行ない、週末には遠方にドライブするために長時間の充電を必要とする、というような充電行動パターンがある、と推定できる。
あるいは、平日、週末の観察のみならず、月のうち上旬、中旬、下旬に分けて特定居住者の充電行動を解析することもできる。たとえば、下旬になると(月末が近付くと)、充電時間長L(長)のレコードが減り、充電時間長S(短)のレコードが増える、というような充電サービス利用パターンが読み取れる場合もある。このようなケースは、たとえば、月末に近づくにつれ、長距離のレジャー利用が減り、短距離のビジネス利用が増加する、といった充電サービス利用パターンに相当すると考えられる。
この場合には、制御部200のリアルタイムクロックの計時によって判明する現在日時(曜日や旬日)によって、特定の居住者の登録した充電時間がどれくらいになりそうか(S(短)、M(中)、L(長)のいずれになりそうか)をより確実に推定できる。したがって、この場合には、ステップS103において、上記の充電行動データベースのS(短)(ないしM(中))の充電時間長の多い居住者の充電サービスを先に(優先して)実行するという戦略に、現在の日時(たとえば曜日や旬日)と、特定居住者の充電サービスの利用日時(たとえば曜日や旬日)との関係から推定される特定の充電サービスの関係に関する解析結果を組合せて、より確実に居住者の登録した充電時間がどれくらいになりそうかを判定できる。たとえば、S(短)の充電時間が多い居住者の充電サービスであっても、週末にかかる現在日時においては、データベースレコードがその登録された充電サービスが長時間充電(L)になりそうな充電行動を示している居住者の充電サービスは後回しにする、といった制御を行なうことができる。
なお、ステップS102、S103の段階で図4の処理開始以前から引き続き実施中の充電サービスがあれば、引き続きそのまま続行させるためにステップS102およびS103における最適化処理から除外することができる。あるいは、続行中の充電サービスがあっても、ステップS102およびS103における最適化処理に含めても構わない。いずれの仕様を採用するかは当該集合住宅の充電サービス規約に応じて決定してよい。
以上のようにして、ステップS102〜S103において1グループで同時実施するn個の充電サービスの最適化が終了すると、ステップS104で同時実施するn個の充電サービスの1グループを確定する。そして、他のすぐに実施できない(後程実施する)前記n個を超える数の後続の充電サービスについては、それらを順次実行する仮の順序を定めておく。すなわち、他のすぐに実施できない充電サービスについては、たとえば充電サービス登録の先着順序に応じた順でRAM203上などに確保した待ち行列に登録しておく。
本実施例においては、この待ち行列上の充電サービス登録順は、仮のものであって、後述のステップS107〜S110において充電終了を検出し、先に順序を定めて待ち行列に登録してある充電サービスを新たに開始する必要が生じた場合に、その時点での充電サービスの実施状況、ないしは過去の各ユーザの充電サービス亨受の態様、すなわち図2、図3の充電行動データベースの登録内容に応じて充電サービスの実行順序を組み換え、同時実行するn個の充電サービスの組合せを決定する。
また、後述のステップS107〜S110において充電終了を検出する際にも、図2、図3の充電行動データベースの登録内容を参照して得た充電終了条件が用いられる。
ステップS105では、n台同時充電制御を開始する所定時刻(たとえば上述の9:00、12:00、15:00、18:00のような定時)が到来しているか否かを制御部200のリアルタイムクロックの計時に基づき判定する。
ステップS105でn台同時充電制御を開始する所定時刻が到来している場合にはステップS106に進み、CPU201が充電制御部301を介して確定している同時実施すべきn個の充電サービスにそれぞれ対応して登録された特定のn台の充電器303、303…をONとし、それぞれの充電器を介して接続された電気自動車の充電を開始する。なお、各充電器303に関して充電終了フラグ(後述)がRAM203などに配置されるが、これらの充電終了フラグは充電開始に伴ないリセットされる。n個の充電サービスにそれぞれ対応する特定の充電器303、303…との対応は不図示のデータテーブルなどに登録して管理する。
この後、ステップS107以降では、充電処理を終了した充電ジョブが出た場合は、後続の充電待ちになっている充電ジョブの中から、充電開始する充電ジョブを図2、図3の充電行動データベースの内容に応じて決定する(ステップS107〜S110)。
また、図4の制御では、緊急性ないしは優先度の高い充電サービスを割り込みで優先して実行する処理を組み込んである。たとえば、このような割り込み充電サービスとしては、「特急料金」のような形で割増し料金を居住者にチャージした上で許可する充電サービスが考えられる。あるいは、このような割り込み充電サービスは、コンソール103に「緊急ボタン」のような操作手段を設けておくか、コンソール103で実施するユーザーインターフェースに緊急操作手段を組み込んでおき、急病などの特別な事由に応じて居住者が行なう操作によって発生されるような充電サービスであってもよい。この割り込み充電サービスの制御では、図2、図3の充電行動データベースの内容に応じて、割り込み充電サービスのかわりに中断し、待ち行列に回す充電サービスを決定する(ステップS107〜S110)。
ステップS107では、CPU201は図5に示す後述の充電終了検出制御を行ない、終了した充電サービスがあるか否か、すなわち、充電制御部301と通信し、充電の終了した充電器303があるか否かを判定する。
ステップS107で終了した充電サービスがある場合には、後述のようにその充電サービスに対応する充電器303に関してRAM203などに配置された充電終了フラグがセットされるため、このフラグの状態に基づいてステップS108において充電制御部301を介して充電を終了した充電器303をオフとし、続いてステップS109においてRAM203上などに確保した待ち行列中に登録され、後続の充電待ちになっている充電ジョブの中から、充電開始する充電ジョブを図2、図3の充電行動データベースの内容に応じて決定する。
ここでは、たとえば、1つの充電サービスの終了に応じて、1ないし数個の充電サービスを開始する。というのは、図6に示したように充電期間の後半では漸時充電電流を減少させる制御が多くの電気自動車側で行なわれており、消費電流が低下している場合が考えられるからである。このため、後続の充電待ちになっている充電ジョブの最上位の充電ジョブのうち1ないし数個の充電サービスについて、図3の充電行動データベースに記録されているフィールド405の充電電流、フィールド408の充電電流パターン、あるいはさらにフィールド404の車種情報などを参照し、開始できる充電サービスを1ないし数個選択する。
この選択制御では、もちろん、ステップS102およびS103で説明したのとほぼ同様に、最適化制御のうち、当該集合住宅の商用交流電源302で使用できる最大電流容量をオーバーしないように、との条件がまず適用される。また、ステップS102およびS103で説明したのとほぼ同様に、充電サービスの待ち時間がなるべく少なくなるように、短い充電時間が予想される充電ジョブを優先的に選択するような制御を行なうことができる。
なお、ステップS109のように充電制御を開始した後の段階では、図2、図3の充電行動データベースの参照の結果、充電時間が長時間に渡ると推定されることによって充電サービス登録の先着順序から著しく実行順が遅らせられている充電サービスがある場合には、その充電サービスの実行順を早めるように補正を行なってもよい。たとえば、1〜数度、既に充電サービスの実行順を充電サービス登録の先着順序よりも遅らせた充電サービスが存在する場合には待ち行列中の順位を1(ないし数ステップ)上昇させるような補正を行なうようにしてもよい。
ステップS109で、開始する充電サービスを決定すると、ステップS110において充電制御部301を介して開始すべき充電サービスに対応する充電器303をONし、ステップS107に復帰する。
一方、ステップS107で終了した充電サービスを検出していない場合には、ステップS115において、全充電サービスが終了したか否かを判定し、全充電サービスが終了した場合には充電制御を終了し、全充電サービスが終了していない場合にはステップS107に復帰して上記の処理を繰り返す。
図5は、図4のステップS107における充電終了制御の一例を詳細に示したものである。
図5の充電終了制御では、CPU201は、終了した充電サービスがあるか否か、すなわち、充電制御部301と通信し、充電の終了した充電器303があるか否かを判定する。
図5のステップS201では、実行中のn個(上述のようにこのnの数値は変動し得る)の充電サービスを特定するためのポインタiの値を0に初期化する。
ステップS202では、充電制御部301と通信し、ポインタiの示す特定の充電器303の充電電流データを取得し、図3の充電行動データベースにおいて、当該充電器303で充電サービスを亨受しているユーザのデータベースレコード中、フィールド408に記録されている充電電流の変動パターンを更新する。
なお、このタイミングで、制御部200の処理能力に余裕があれば、充電電流の変動パターンの種別を示す情報(たとえば上述のニーモニックA、B、C…)を特定し格納するとともに、充電行動データベースのフィールド403、404、405、406などのデータも併せて更新してもよい。制御部200の処理能力が限定されている場合には、前述のように当該ユーザが充電を行なっていない期間などの適当な管理期間においてフィールド408に記録した充電電流の変動パターンに基づき、充電電流の変動パターンの種別を示す情報(たとえば上述のニーモニックA、B、C…)を生成しフィールド408に記録するとともに、さらにフィールド403、404、405、406などのデータを更新することができる。
ステップS203では、ポインタiが示す特定充電器303が対応している。図3の充電行動データベースにおいて、当該充電器303で充電サービスを亨受しているユーザのデータベースレコードを参照し、ステップS204で当該充電器303で実行している充電が終了フェーズに入ったか否かを判定する。
ここでは、図3で説明した充電行動データベースに格納されている当該のユーザの充電している電気自動車の充電終盤の低電流値Isと、充電終了と判定するための低電流値Isの最低持続時間のデータを用いる(たとえばフィールド408に充電電流パターンデータと併せて格納されているもの)。すなわち、ステップS202で更新したフィールド408に充電電流パターンデータを参照すれば、当該充電器303の充電電流が所定の低電流値Isとなっているか否か、そして充電電流が所定の低電流値Isとなっている場合にはその持続時間を測定することができ、これが所定の最低持続時間以上であれば(あるいはそれを超えていれば)、当該充電器303が充電終了フェーズで動作している、と判定する。
ステップS204で当該充電器303が充電終了フェーズ、と判定された場合にはステップS205において当該充電器303に関して充電終了フラグ(RAM203などに配置する)をセットする。
ステップS206では、ポインタiの値を充電グループ中の次の充電器303を示すようにインクリメントし、ステップS207ではポインタiがn個の充電サービスの最後に到達したか(図中ではi=nと簡略表記している)否かを判定し、この脱出条件が肯定された場合には図5の充電終了検出処理を終了し、充電終了検出を行なっていない残りの充電器が存在する場合にはステップS201に戻り、上記の処理を繰り返す。
なお、図5の充電終了検出制御(図4のステップS107)では、電気自動車のバッテリーが満充電となり、充電が正常終了する場合の他、居住者(ユーザ)の強制操作による充電中止も検出してもよい。これは、たとえば居住者(ユーザ)の事情により予定よりも早く充電を切り上げて電気自動車を使用したい場合や、緊急の事情で充電を停止しなければならない場合を考慮して、緊急停止スイッチ、中止スイッチ、あるいは強制終了スイッチのような操作手段をコンソール103や充電器303、303…に設けておく構成が考えられるためである。
以上のようにして、充電器303、303…を介して複数のユーザ(居住者)に充電サービスを提供する際、複数のユーザにそれぞれ対応する充電行動データベースに格納されたユーザの電気自動車の充電行動に関する情報を参照し、複数のユーザに対して同時に提供する充電サービスの組み合せ、または順次提供する充電サービスの順序を決定するとともに、特定のユーザに対して提供した充電サービスの内容に応じて当該ユーザに対応する充電行動データベースの内容を更新するようにしているので、同時に提供する複数の充電サービスの組合せや順次提供する充電サービスの順序を上述のような特定の戦略に基いて最適化することができ、効率よく迅速に複数の電気自動車を充電できる電気自動車の充電システムを提供することができる。
また、物品収受装置のボックス開閉(あるいは管理)と、電気自動車に対する充電サービスに関して、IDカード111を共通の認証手段として用いており、居住者によって提示されるIDカード111による認証に基づき充電サービスユーザである居住者に当該充電サービスを提供するか否かを決定し、さらにIDカード111による認証に基づき充電サービスに関して参照し、更新すべき上記の充電行動データベースを特定することができる。そして、物品収受装置のボックス開閉および充電サービスに関する制御は共通の制御部200によって統合的に制御することができるから、システム全体の製造コストや運営、管理コストを著しく低減することができる。
また、上記ステップS107〜S110における充電終了制御と、それに続き先に順序を定めて待ち行列に登録してある充電サービスを新たに開始する必要が生じた場合に、その時点での充電サービスの実施状況、ないしは過去の各ユーザの充電サービス亨受の態様、すなわち図2、図3の充電行動データベースの登録内容に応じて充電サービスの実行順序を組み換え、同時実行するn個の充電サービスの組合せを決定するようにしているため、刻々と変化する充電サービスの実施状況に即応して、また、過去の各ユーザの充電サービス亨受の態様、すなわち充電行動データベースの登録内容に応じて適切に充電サービスの実行順序を組み換え、同時実行する充電サービスの組合せを決定することができ、効率よく迅速に複数の電気自動車を充電できる電気自動車の充電システムを提供することができる。
さらに、充電器303、303…を用いて同時に複数の充電サービスを実施するに際し、あるユーザに提供している特定の充電サービスにおいて、その充電サービスに対応する特定の充電器を介して電気自動車に供給している充電電流が所定の低電流値Isとなりその充電状態が所定の最低持続時間続いたことを充電終了条件とし、この充電終了条件の成立に応じて当該の充電サービスを停止させ、充電待ちとなっている他の充電サービスを開始させる制御を行なうようにしているので、充電サービスの終了タイミングを適切に判断することができ、マンションなどの集合住宅において電気自動車の充電処理の全体を遅滞させることなくスムーズに実行することができる。
上記の充電終了条件は、所定の低電流値Isとなりその充電状態が所定の最低持続時間続くことであるが、所定の低電流値Isおよび所定の最低持続時間の値は、上述のように電気自動車の車種ごとに特定できる。ユーザの充電する電気自動車の車種は、充電サービスの利用登録時にユーザや管理者がコンソール103などから入力する他、充電行動データベースに蓄積された情報、たとえば充電電流の変動パターンから推測しても良く、いずれにしてもユーザの充電する電気自動車の車種から上記所定の低電流値Isおよび所定の最低持続時間の値を求め、充電終了条件として充電行動データベースに格納しておく(あるいは必要になったタイミングで特定する)ことができる。
また、上記所定の低電流値Isおよび所定の最低持続時間の値は、それぞれ所望の値をユーザや管理者がコンソール103などから入力し、充電行動データベースに登録できるようにしておいてもよい。
また、上記所定の低電流値Isおよび所定の最低持続時間の値は、充電行動データベースに蓄積されていく情報、たとえば充電電流の変動パターンから適応的に求め、更新するように制御することもできる。たとえば、あるユーザが充電サービスの利用登録後、所定回数(数回〜10数回程度)の充電サービスにおいては所定の低電流値Isおよび所定の最低持続時間の充電終了条件は作用させずに充電サービスを実行し、数100mA〜数A程度の低電流充電状態を検出しても数時間程度は充電電流の変動パターンを記録するとともに、その際、充電中盤においては生じ得る間欠充電の周期を併せて監視し、そのユーザ(そのユーザが充電する電気自動車)に関して採用できる現実的な(たとえば充電中盤で生じ得る間欠充電と誤検出しない)充電終了条件としての低電流値Isおよび所定の最低持続時間の値を適応的に求めるようにしてもよい。
以上のように充電行動データベースに格納されたユーザの電気自動車の充電行動に関する情報を上述の種々の方法で利用し、特定のユーザが充電する電気自動車に応じて定まる充電終了条件としての所定の低電流値(Is)および所定の最低持続時間を決定する制御を行なうことによって、充電サービスの実施状況、ないしは特定のユーザの過去の電気自動車の充電サービス亨受の態様に応じて効率よく迅速に複数の電気自動車に対する充電サービスを切り換えて実行できる。
次に、図7および図8を参照して、停電時および停電復旧時の割込み制御につき詳細に説明する。
上述のように、商用交流電源302〜制御部200の電源ライン上には、停電時のデータ退避などを確実に行なうためにバックアップ無停電電源501が配置(図1)されており、停電により制御部200への電源ラインの給電が遮断された場合、および、復旧した場合に、バックアップ無停電電源501が割込み信号(INT)を発生し、制御部200のCPU201に対して割込みをかけ、CPU201はこれに応じて停電時割込み処理(図7)および停電復旧時割込み処理(図8)を実行する。
商用交流電源302で停電が生じ、バックアップ無停電電源501が制御部200への電源ラインの給電遮断を検出すると、割込み信号(INT)を発生し、CPU201は図7に示す停電時割込み処理を実行する。
バックアップ無停電電源501は、少なくとも図7の停電時割込み処理の間、制御部200のCPU201や不揮発メモリ209へのデータ退避を行なえるだけの電力を制御部200への電源ラインに供給する。
この停電時割込み処理において、CPU201はステップS301で停電時刻(現在時刻でよい)をリアルタイムクロック(RTC)などの計時手段から読み取り、不揮発メモリ209の所定領域に記録する。
ステップS302では、現在、実行中の全充電ジョブを停電復旧時に回復し、続行できるよう、RAM203に展開されている充電制御データを不揮発メモリ209の所定領域に記録し、ステップS303において実行中の全充電ジョブを一時中断するのに必要な制御を行なう。
一方、バックアップ無停電電源501が制御部200への電源ラインの給電が回復したことを検出すると、割込み信号(INT)によりCPU201に通知され、CPU201は図8の停電復旧時割込み処理を実行する。
この停電復旧時割込み処理では、CPU201は、まず停電の生じていた時間(停電時間)の長さを取得する。このためには、ステップS401で現在時刻をリアルタイムクロック(RTC)などの計時手段から読み取り、それと図7のステップS301で不揮発メモリ209に格納した停電時刻と比較し、その差分を停電時間として算出する。
ステップS402では、図7のステップS302で不揮発メモリ209に退避させた充電制御データを読み出し、RAM203上に展開する制御データ復旧処理を行なう。
ステップS403、S404では、図3の充電行動データベースに格納されているデータベース情報を参照し、それに応じて停電前に実行中であった各充電ジョブの充電終了時刻を補正する。
このとき、ステップS403で、各々の充電ジョブについて、図3のフィールド408(あるいは404など他のフィールド)に格納されている充放電特性を参照して、当該車両のバッテリーの自然放電特性を取得する。そして、ステップS404において、当該ジョブの充電終了時刻を補正する。
たとえば、自然放電特性は経過時間〜放電量の関数により近似することができるから、このような自然放電特性に相当する関数情報をフィールド408(あるいは404など他のフィールド)格納しておけば、ステップS401で求めた長さ(停電時間)の停電期間において自然放電により生じた放電量を推定することができる。
単に、停電復旧後、当初、停電がないとして決定された充電終了時刻で充電を終了させてしまえば、当初、予定した充電量まで電気自動車のバッテリーを充電できずに終ってしまう。そこで本実施例においては、停電の間に生じた放電量にみあった(ほぼ等しい)充電容量を追加するよう充電制御条件を補正する。
この補正は、たとえば、停電の間に生じた放電量にみあった(ほぼ等しい)充電容量を得られるだけの充電時間を追加することにより行なうことができる。この追加すべき充電時間は、上記の放電量の場合と同様に経過時間〜充電容量の関数により近似することができ、このような特性を図3のフィールド408(あるいは404など他のフィールド)の格納されている充放電特性として併せて格納しておけば、停電の間に生じた放電量にみあった(ほぼ等しい)充電容量と経過時間〜充電容量の関数に基づき、追加(延長)すべき充電時間を算出することができる。
なお、停電の間に生じた放電量にみあった(ほぼ等しい)充電容量を得るための充電制御条件の補正は、充電時間の追加、延長のみならず、バッテリーや、電気自動車側の充電回路の方式や仕様によっては、たとえば充電電流の補正によって行なうこともでき、たとえば停電復旧後、充電電流カーブを上方に補正する(充電電流を当初の予定電流よりも増加させる)ことによっても停電の間に生じた放電量にみあった(ほぼ等しい)充電容量を得ることができる。
本実施例によれば、停電時のデータ退避などを確実に行なうためにバックアップ無停電電源501を設け、停電により制御部200への電源ラインの給電が遮断された場合、および、復旧した場合に、バックアップ無停電電源501が割込み信号(INT)を発生し、制御部200のCPU201に対して割込みをかけ、CPU201で停電時割込み処理および停電復旧時割込み処理を実行するようにしているため、充電システムに給電する商用交流電源に停電が生じても、停電復旧後、停電前に実行していた充電処理を滞ることなく継続して実行することができる。
しかも、停電時からの復旧処理において、充電行動データベースに格納された当該ユーザの電気自動車について格納されているバッテリーの充放電特性を参照して、実行すべき残りの充電処理の制御条件を補正することができるため、停電が生じても所期の充電条件で確実に電気自動車のバッテリーを充電することができる。
以上のようにして、本実施例によれば、マンションなどの集合住宅において電気自動車の充電処理の全体を遅滞させることなくスムーズに実行することができ、さらに、その時点での充電サービスの実施状況、ないしは特定のユーザの過去の電気自動車の充電サービス亨受の態様に応じて効率よく迅速に複数の電気自動車に対する充電サービスを切り換えて実行でき、また、停電時からの復旧処理においても実行すべき残りの充電処理の制御条件を補正できる、優れた電気自動車の充電システムを提供することができる。