JP2013028685A - オルガノ変性シリコーンの製造方法、オルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤、及び金型鋳造方法。 - Google Patents

オルガノ変性シリコーンの製造方法、オルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤、及び金型鋳造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた離型性を金型鋳造用離型剤に付与することができるオルガノ変性シリコーンを提供すること。
【解決手段】(I)鎖状シリコーンに、(II)炭素数4〜18のモノオレフィン及び/又はアルケニル基を有する炭素数8〜12の芳香族炭化水素と、(III)下記一般式(2):

[式(2)中、Rは炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基、Rは水素原子又はメチル基を示し、pは0又は1、qは3又は4である。]で代表されるポリ(メタ)アクリル酸エステルとを、ヒドロシリル化触媒存在下において付加反応せしめることによりオルガノ変性シリコーンを得ることを特徴とするオルガノ変性シリコーンの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の非鉄金属の金型鋳造に用いる金型鋳造用離型剤に適したオルガノ変性シリコーンの製造方法、その製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤、及びその金型鋳造用離型剤を用いた金型鋳造方法に関する。
金型鋳造用離型剤の代表的な成分としては、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル共変性シリコーン及びアルキルエステル共変性シリコーン等のシリコーンが従来から使用されている。
前記アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル共変性シリコーン及びアルキルエステル共変性シリコーンは、アルキル基、アラルキル基、エステル基等の側鎖基を有するために潤滑性があり、さらに、金型上で加熱されることによりゲル化されて強固な離型皮膜を形成するため、これらを用いた離型剤の離型性がより高まることが知られている。しかしながら、このような離型剤は、低温条件では離型性を発揮することができるものの、金型を高温にするとシリコーン成分が分解揮発してしまうため十分な離型性が得られないという問題を有していた。また、前記ジメチルシリコーンは高温条件でも非常に安定な化合物であり、耐熱性が高く金型上で加熱されても上記のような離型皮膜を作らないため、得られる離型剤の離型性が不十分であるという問題を有していた。
また、高温条件での離型性を高めることを目的として、オルガノ変性シリコーンの粘度を上げて離型剤の金型への付着性を向上させる開発がなされている。例えば、特許文献1では側鎖に加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンの縮合反応生成物を用いた離型剤が開示されており、特許文献2では炭化水素基又は両末端に二重結合をもつ共役ジエンによりオルガノ変性シリコーン同士を架橋せしめた分岐状オルガノ変性シリコーンを用いた離型剤が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のジオルガノポリシロキサンは加水分解性基を有しているために金型鋳造用離型剤に用いると不安定となり、離型性が十分に得られないという問題を有しており、特許文献2に記載の分岐状オルガノ変性シリコーンは粘度が高いために得られる離型剤の金型への付着性は向上されているものの、その離型性は未だ不十分であり、特に油性の金型鋳造用離型剤に用いると離型性がより低下するという問題を有していた。
特開平09−12886号公報 特開2008−69215号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた離型性を金型鋳造用離型剤に付与することができるオルガノ変性シリコーンの製造方法、その製造方法によって得られるオルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤、及びその金型鋳造用離型剤を用いた金型鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の鎖状シリコーンに、特定のモノオレフィン及びアルケニル基を有する芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種と、特定のポリ(メタ)アクリル酸エステルとを、特定のモル比条件を満たすようにヒドロシリル化触媒存在下において付加反応せしめることにより、水系溶媒中においても油性溶媒中においても高温条件においても優れた潤滑性すなわち離型性を金型鋳造用離型剤に付与することができるオルガノ変性シリコーンを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のオルガノ変性シリコーンの製造方法は、(I)下記一般式(1):
[式(1)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示し、a及びbは、下記式(i)〜(iii):
0≦a≦195・・・(i)
5≦b・・・(ii)
10≦a+b≦200・・・(iii)
で表わされる条件を満たす数である。]
で表わされる鎖状シリコーンに、
(II)炭素数4〜18のモノオレフィン、及びアルケニル基を有する炭素数8〜12の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種と、
(III)下記一般式(2):
[式(2)中、Rは、炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基を示し、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、Rが3価の脂肪族炭化水素基である場合には、pは0且つqは3であり、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、pは式:p=4−qで表わされる条件を満たす整数且つqは3又は4である。]
で表わされるポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−1)、及び下記一般式(3):
[式(3)中、Rは、炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基を示し、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、AO及びAOは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜6の整数且つ式:m+n≧1で表わされる条件を満たす整数を示し、Rが3価の脂肪族炭化水素基である場合には、sは0且つtは3であり、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、sは式:s=4−tで表わされる条件を満たす整数且つtは3又は4である。]
で表わされるポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−2)からなる群から選択される少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸エステルとを、
下記式(iv):
{(I)の全モル数}:{(II)の全モル数}:{(III)の全モル数}=A:B:C・・・(iv)
[式(iv)中、Aは前記(I)鎖状シリコーンの数平均分子量から求めたモル数を示し、B及びCは、下記式(v)及び(vi):
0.01×A≦C≦A・・・(v)
0.5×b×A≦B≦2×b×A・・・(vi)
[式(vi)中、bは、式(1)中のbと同義である。]
で表わされる条件を満たす数である。]
で表わされる条件を満たすモル比でヒドロシリル化触媒存在下において付加反応せしめることによりオルガノ変性シリコーンを得ることを特徴とするものである。
前記(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の金型鋳造用離型剤は、前記本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンを含有することを特徴とするものである。本発明の金型鋳造用離型剤としては、界面活性剤と水とをさらに含有する水系金型鋳造用離型剤であるか、又は、液状有機化合物をさらに含有する油性金型鋳造用離型剤であることが好ましい。
さらに、本発明の金型鋳造方法は、前記本発明の金型鋳造用離型剤を用いて金属成形品を鋳造することを特徴とするものである。
なお、本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーン及びそれを含有する金型鋳造用離型剤によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の製造方法によると、アルキル変性シリコーン及び/又はアラルキル変性シリコーン同士が特定のエステル構造で適度に架橋されたオルガノ変性シリコーンを得ることができる。本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンは適度な粘度を有するため、金型への優れた付着性を金型鋳造用離型剤に付与することができることができる。さらに、このようなオルガノ変性シリコーンを用いた金型鋳造用離型剤は、金型から成型品を取り出す際に前記架橋構造部分のエステル結合が切れるため、金型から成型品を取り出す際の摩擦が少なくなり、優れた潤滑性すなわち離型性を発揮することができる。従って、本発明の金型鋳造用離型剤は、高温条件においても優れた離型性を維持することができるようになると本発明者らは推察する。
また、本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンは水系溶媒においても油性溶媒においても安定であるため、水系金型鋳造用離型剤として用いても油性金型鋳造用離型剤として用いても優れた離型性を発揮することができると本発明者らは推察する。
本発明によれば、優れた離型性を金型鋳造用離型剤に付与することができるオルガノ変性シリコーンの製造方法、その製造方法によって得られるオルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤、及びその金型鋳造用離型剤を用いた金型鋳造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明のオルガノ変性シリコーンの製造方法について説明する。本発明のオルガノ変性シリコーンは、(I)鎖状シリコーンに(II)炭素数4〜18のモノオレフィン、及びアルケニル基を有する炭素数8〜12の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種と(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルとを、特定のモル比条件を満たすように、ヒドロシリル化触媒存在下において付加反応せしめることによりオルガノ変性シリコーンを得ることを特徴とするものである。
本発明に係る(I)鎖状シリコーンは、下記一般式(1)で表わされる。
前記式(1)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。このような脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、これらの中でも工業的に入手し易いという観点からメチル基が好ましい。
前記式(1)中、a及びbは、下記式(i)〜(iii):
0≦a≦195・・・(i)
5≦b・・・(ii)
10≦a+b≦200・・・(iii)
で表わされる条件を満たす数であり、bは本発明に係る(I)鎖状シリコーンのヒドロシリル基の数を示し、aが0の場合には式:−SiOR−で表わされる基は単結合を示す。aの値が前記上限を超えたり、bの値が前記下限未満であると得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性が低下する。また、aとbとの合計(a+b)が前記下限未満であると得られるオルガノ変性シリコーンの粘度が低下するため離型剤に用いた際の付着性が低下し、他方、前記上限を超えると得られるオルガノ変性シリコーンの粘度が高くなり取り扱いが困難となる。また、工業的に入手し易いという観点から、(a+b)は40〜60であることが好ましい。
なお、本発明において、a及びbの値は、以下の方法により得ることができる。先ず、鎖状シリコーンと水酸化ナトリウム水溶液とアルコールとの反応により発生する水素ガスが前記式(1)中のヒドロシリル基由来の水素に相当するため、これを測定することにより、前記式(1)中のaとbとの割合が得られる。さらに、ヒドロシリル化触媒存在下で鎖状シリコーンが有するヒドロシリル基にモノオレフィンを付加せしめて得られる付加反応物であるアルキル変性シリコーンの数平均分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリエチレングリコール(PEG)換算法)で測定することにより、ヒドロシリル基の数であるbの値が得られ、前記aとbとの割合より、aの値が得られる。
このような鎖状シリコーンとしては、例えば、重合度が5〜200であるメチルハイドロジェンポリシロキサン及びジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体等が挙げられる。これらの中でも工業的に入手し易いという観点から重合度が40〜60であるメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。
本発明に係る(I)鎖状シリコーンにおいては、5個以上のヒドロシリル基(−SiH)を有するため、ヒドロシリル化触媒存在下において、後述する(II)モノオレフィン及び/又はアルケニル基を有する芳香族炭化水素、及び(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルにおける炭素−炭素二重結合と反応して本発明に係るオルガノ変性シリコーンを得ることができる。
本発明に係る(II)炭素数4〜18のモノオレフィンは、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状構造を有していてもよい。前記環状構造を有する場合は、炭素−炭素二重結合を有する炭素数2以上の直鎖状構造を1つ有する。前記モノオレフィンの炭素数が前記下限未満であると得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性が低下し、他方、前記上限を超えると得られるオルガノ変性シリコーンの融点が高くなるため、工業的にオルガノ変性シリコーンを製造する際の取り扱いが困難となる。前記モノオレフィンとしては、得られるオルガノ変性シリコーンを用いた離型剤の潤滑性がより優れる傾向にあるという観点から、直鎖状であり炭素数6〜12であるα−オレフィンが好ましい。このようなα−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンが挙げられる。また、これらのモノオレフィンは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る(II)アルケニル基を有する炭素数8〜12の芳香族炭化水素は、芳香族環に炭素数2〜6のアルケニル基を1つ有している。前記芳香族炭化水素の炭素数が前記上限を超えると得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性が低下する。前記アルケニル基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、工業的にオルガノ変性シリコーンを製造し易いという観点から、炭素−炭素二重結合が末端にあることが好ましい。このようなアルケニル基を有する芳香族炭化水素としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。また、これらのアルケニル基を有する芳香族炭化水素は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記モノオレフィン及び前記アルケニル基を有する芳香族炭化水素はいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記モノオレフィン及び前記アルケニル基を有する芳香族炭化水素を組み合わせて用いる場合には、そのモル比は特に制限されないが、潤滑性がより優れる離型剤を得ることができるという観点から、前記アルケニル基を有する芳香族炭化水素1モルに対して前記モノオレフィンが0.5〜5モルであることが好ましい。
本発明に係る(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−1)、及びポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−2)からなる群から選択される少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸エステルである。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、メタアクリル酸又はアクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
本発明に係るポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−1)は、下記一般式(2)で表わされる。
前記式(2)中、Rは、炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。前記脂肪族炭化水素基の炭素数が前記上限を超えるとポリ(メタ)アクリル酸エステルの融点が高くなるため、工業的にオルガノ変性シリコーンを製造する際の取り扱いが困難となる。前記脂肪族炭化水素基としては、工業的に入手し易いという観点から、飽和であることが好ましく、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。また、前記式(2)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、工業的に入手し易いという観点から、Rは水素原子であることが好ましい。
前記式(2)中、Rが3価の脂肪族炭化水素基である場合には、pは0且つqは3であり、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、pは式:p=4−qで表わされる条件を満たす整数且つqは3又は4である。また、前記式(2)中、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの取り扱いがより容易となり、さらに、得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際により優れた付着性を有する離型剤が得られるという観点から、qは3であることが好ましい。
このようなポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−1)としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明に係るポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−2)は、下記一般式(3)で表わされる。
前記式(3)中、Rは、炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。前記脂肪族炭化水素基の炭素数が前記上限を超えるとポリ(メタ)アクリル酸エステルの融点が高くなるため、工業的にオルガノ変性シリコーンを製造する際の取り扱いが困難となる。前記脂肪族炭化水素基としては、工業的に入手し易いという観点から、飽和であることが好ましく、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。また、前記式(3)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、工業的に入手し易いという観点から、Rは水素原子であることが好ましい。
前記式(3)中、Rが3価の脂肪族炭化水素基である場合には、sは0且つtは3であり、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、sは式:s=4−tで表わされる条件を満たす整数且つqは3又は4である。また、前記式(3)中、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの取り扱いがより容易となり、さらに、得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際により優れた付着性を有する離型剤が得られるという観点から、tは3であることが好ましい。
前記式(3)中、AO及びAOは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。前記オキシアルキレン基の炭素数が前記上限を超えると得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性が低下する。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシブチレン基等が挙げられ、これらの中でも、得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性がより優れるという観点から、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
前記式(3)中、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、それぞれAO及びAOの繰り返し数であって、0〜6の整数且つ式:m+n≧1で表わされる条件を満たす整数を示す。m又はnが前記上限を超えると得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性が低下する。また、工業的に入手し易いという観点から、m及びnとしては、それぞれ0〜4の整数且つ式:m+n≧1で表わされる条件を満たす整数であることが好ましい。また、前記式(3)中、m及びnが2以上の場合、複数あるAO及びAOはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、AO及びAOがそれぞれ2種以上の場合、その繰り返し形態はランダムであってもブロックであってもよいが、本発明に係るポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−2)としては、工業的に入手し易いという観点から、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基がそれぞれ単独で繰り返されていることが好ましい。
このようなポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−2)としては、例えば、グリセリンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明の製造方法において得られるオルガノ変性シリコーンは、本発明に係る(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルが複数の末端に炭素−炭素二重結合を有しているため、アルキル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン及びアルキルアラルキル共変性シリコーンからなる群より選択される1種同士又は2種以上同士がエステル構造で架橋された構造を有することができ、離型剤に優れた離型性を付与することができる。
本発明においては、(I)鎖状シリコーンに(II)炭素数4〜18のモノオレフィン、及びアルケニル基を有する炭素数8〜12の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種と(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルとを、下記式(iv):
{(I)の全モル数}:{(II)の全モル数}:{(III)の全モル数}=A:B:C・・・(iv)
で表わされる条件を満たすモル比でヒドロシリル化触媒存在下において付加反応せしめることによりオルガノ変性シリコーンを得る。
前記式(iv)中、Aは前記(I)鎖状シリコーンの数平均分子量から求めたモル数を示す。本発明において、数平均分子量から求めたモル数とは、前記(I)鎖状シリコーンの質量を数平均分子量で除した数である。本発明において、前記(I)鎖状シリコーンの数平均分子量は、前記式(1)中のa及びbから算出した分子量であり、a及びbの値は、前述の方法により得られる。
前記式(iv)中、B及びCは、下記式(v)及び(vi):
0.01×A≦C≦A・・・(v)
0.5×b×A≦B≦2×b×A・・・(vi)
で表わされる条件を満たす数である。
前記式(vi)中、bは前記一般式(1)中のbと同義である。前記式(v)で表わされる条件から、本発明における(I)と(III)とのモル数の比(A:C)としては、1:0.01〜1である。Cの値が前記下限未満であると得られるオルガノ変性シリコーンの粘度が低下するために離型剤に用いた際の付着性が低下し、他方、前記上限を超えると得られるオルガノ変性シリコーンの粘度が高くなって取り扱いが困難となる。また、より優れた離型性を離型剤に付与することができるという観点から、Cの値は(0.1×A)〜(0.5×A)の範囲(A:C=1:0.1〜0.5)であることが好ましい。
前記式(vi)で表わされる条件から、本発明における(I)と(II)とのモル数の比(A:B)としては、1:0.5b〜2bである。Bの値が前記下限未満であると得られるオルガノ変性シリコーンを離型剤に用いた際の離型性が低下し、他方、前記上限を超えると使用量に見合った離型性の向上効果が得られず、コスト的に不利となる。また、より優れた離型性を離型剤に付与することができるという観点から、Bの値は(0.8×b×A)〜(1.2×b×A)の範囲(A:B=1:0.8b〜1.2b)にあることが好ましく、さらに、使用量に見合った離型性の向上効果が得られるためにコスト的により有利であるという観点から、Bの値は(b×A)〜(1.1×b×A)の範囲(A:B=1:b〜1.1b)にあることがより好ましい。
本発明に係るヒドロシリル化触媒は、前記(I)鎖状シリコーンのヒドロシリル基と前記(II)モノオレフィン及び/又はアルケニル基を有する芳香族炭化水素、及び前記(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルにおける炭素−炭素二重結合とを反応せしめる触媒である。このようなヒドロシリル化触媒としては、公知のものを制限なく用いることができ、例えば、VIII族遷移金属又はその化合物等が挙げられる。前記VIII族遷移金属としては、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が挙げられ、前記VIII族遷移金属化合物としては、PtCl、HPtCl・6HO、Pt−エーテル錯体、Pt−オレフィン錯体、Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、PdCl(PPh、PdCl(PhCN)、RhCl(PPh(Phはフェニル基を示す)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、必要に応じて、アルコール類、芳香族化合物、炭化水素類、ケトン類、塩基性溶媒、及びこれらの混合物で希釈して用いてもよい。
前記ヒドロシリル化触媒の使用量としては、系内の反応物(溶媒等を除く)の全質量に対して、触媒中の金属元素が1〜50質量ppmとなる使用量であることが好ましく、経済的な観点から1〜5質量ppmであることが好ましい。
本発明に係る付加反応としては、公知の反応方法を適宜採用することができ、前記(I)鎖状シリコーンに前記(II)モノオレフィン及び/又はアルケニル基を有する芳香族炭化水素と前記(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルとを付加せしめる順序は特に制限されず、(I)に(II)と(III)とを同時に付加せしめてもよいし、(II)と(III)とを順次(順番は(II)が先であっても(III)が先であってもよい)(I)に反応せしめてもよいし、適宜交互に反応せしめてもよい。前記(I)鎖状シリコーンと前記(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルとがより反応しやすく、反応時間がより短縮できるという観点から、本発明に係る付加反応としては、先ず、(II)の前記式(iv)で表わされる条件を満たすモル数(B)の一部の量(第1回目の仕込み量)と(I)の前記式(iv)で表わされる条件を満たすモル数(A)の全量とを反応容器に仕込んで反応せしめ、次いで(III)の前記式(iv)で表わされる条件を満たすモル数(C)の全量を添加して反応せしめた後、(II)の前記モル数(B)の残りをさらに添加して反応せしめ、次いで、付加反応が完結したことを確認してから、反応せずに余った(II)を除去することが好ましい。また、(II)の前記第1回目の仕込み量のモル数(B1)としては、次式:0.5×b×A≦B1≦0.8×b×A(式中のbは前記一般式(1)中のbと同義である)で表わされる条件を満たす範囲(A:B1=1:0.5b〜0.8b)にあることがより好ましい。なお、前記付加反応が完結したことの確認は、得られたオルガノ変性シリコーンのFT−IR分析を行い、原料である(I)鎖状シリコーンのヒドロシリル基由来の吸収スペクトルが消失したことにより確認することができる。
前記付加反応の条件としては、採用する反応方法に応じて適宜調整することができるが、本発明においては、50〜150℃の温度条件において、1〜12時間反応させることが好ましい。前記温度が前記下限未満となると反応が進みにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応を制御しにくくなる傾向にある。また、前記時間が前記下限未満となると未反応のヒドロシリル基が多数残存する傾向にあり、他方、前記上限を超えても反応時間に見合った反応の進行がみられず、経済的に不利となる傾向にある。
本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンにおいては、アルキル変性シリコーン及び/又はアラルキル変性シリコーン同士が特定のジエステル構造で適度に架橋された構造を有しているため、金型鋳造用離型剤に用いた際に、金型への良好な付着性が得られる粘度を有することができると本発明者らは推察する。なお、本発明において、オルガノ変性シリコーンの25℃における粘度は、単一円筒型回転粘度計(B形粘度計)を用いてJIS K7117−1(1999)に従った方法で測定することができる。本発明のオルガノ変性シリコーンの25℃における粘度としては、1000mPa・s以上であることが好ましく、金型鋳造用離型剤に用いる際の取り扱いがより容易になるという観点から、1000〜40000mPa・sであることがより好ましい。
次いで、本発明の金型鋳造用離型剤について説明する。本発明の金型鋳造用離型剤は、前記本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンを含有していることを特徴とするものである。本発明において、金型鋳造用離型剤とは、金型鋳造に用いられる離型剤及び金型鋳造に用いられる潤滑剤を意味する。
本発明の金型鋳造用離型剤において、前記オルガノ変性シリコーンの含有量は、離型剤の形態や用いるオルガノ変性シリコーンに応じて適宜調整することができるが、0.05〜40質量%であることが好ましい。また、本発明の金型鋳造用離型剤としては、本発明の目的を阻害しない範囲内において、界面活性剤、水、有機溶媒、添加剤等をさらに含有していてもよい。このような金型鋳造用離型剤としては、溶媒が水系である水系金型鋳造用離型剤、溶媒が油性である油性金型鋳造用離型剤を挙げることができる。本発明のオルガノ変性シリコーンは、水系金型鋳造用離型剤に含有せしめても油性金型鋳造用離型剤に含有せしめても優れた離型性及び付着性を金型鋳造用離型剤に付与することができる。
本発明において、前記水系金型鋳造用離型剤(以下場合により水系離型剤という)としては、本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンと界面活性剤と水とを含有しており、前記水を分散媒とする乳濁液であることが好ましい。本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンは、界面活性剤により水に安定に乳化せしめることができる。このような水系離型剤において、前記オルガノ変性シリコーンの含有量は0.05〜40質量%であることが好ましい。含有量が前記下限未満であると十分な離型性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると水系離型剤の流動性が低下して取り扱いが困難になる傾向にある。
前記界面活性剤としては、用いるオルガノ変性シリコーンを水に安定に乳化せしめることができればよく、特に制限されず、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、高級アミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物等の非イオン界面活性剤、アルキルサルフェート、タモール型等の陰イオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、アルキルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの界面活性剤の中でも、本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンをより安定に乳化せしめることができるという観点から、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましく、前記非イオン性界面活性剤の中でも、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物を用いることがより好ましい。このような高級アルコールアルキレンオキサイド付加物としては、炭素数8〜14の1価アルコール1モルに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを4〜20モル付加せしめたものを用いることが好ましい。前記1価アルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられ、前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。前記アルキレンオキサイドは1種の単独付加であっても2種以上のブロック又はランダム付加であってもよい。本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンをより安定に乳化せしめることができるという観点から、前記アルキレンオキサイドの付加形態は、エチレンオキサイドの単独付加がより好ましく、付加モル数は6〜12がより好ましい。
これらの界面活性剤の含有量としては、用いるオルガノ変性シリコーンにより適宜調整することができるが、優れた離型性を得るため、安定な乳化に必要な最小量とするという観点からは、水系離型剤におけるオルガノ変性シリコーンの含有量に対して5〜25質量%とすることが好ましい。
前記水としては、水道水、純水、イオン交換水等を用いることができる。水の含有量は、前記オルガノ変性シリコーンの含有量が前述の範囲内となるように適宜調整することができる。
また、前記水系離型剤としては、必要に応じて、付着性や離型性を損なわない範囲で、金型鋳造用離型剤に従来から使用されている添加剤をさらに含有することができる。このような添加剤としては、例えば、椰子油、大豆油、菜種油等の植物油;鉱物油;シリコーン、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン等のシリコーン化合物;油脂;合成エステル油;油性剤;合成ワックス;消泡剤;増粘剤;防錆剤;防腐剤;水性高分子;pH調整剤;防かび剤等が挙げられる。また、防煙及び防炎性を高めるために、重炭酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩、及びホウ酸等の無機物をさらに含有していてもよい。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記添加剤を含有させる場合、その含有量は、水系離型剤において10質量%以下であることが好ましい。
前記水系離型剤を製造する方法としては、特に制限されず、例えば、前記オルガノ変性シリコーン、前記界面活性剤、前記水及び必要に応じて前記添加剤を混合し、必要に応じてホモジナイザー、コロイドミル、プラネタリーミキサー等の乳化装置を用いて乳化することにより水中油滴型のエマルジョンを生成する方法等が挙げられる。
前記水系離型剤を使用する際は、得られた水系離型剤そのもの、又は、さらに水を加えて乳化させたものを金型の成形周面に塗布する。塗布する方法としては従来公知の方法を採用することができ、例えば、スプレーガンを用いて吹き付ける方法(スプレー塗布)等が挙げられる。塗布量は、用いる水系離型剤におけるオルガノ変性シリコーンの含有量、金型内へ射出する金属溶湯の種類、射出圧、金型の温度等の鋳造条件等によって適宜調整することができ、例えば、水系離型剤にさらにその質量が50〜200倍となるように水を加えて乳化させたものをスプレー塗布する場合、表面積が0.2m程度の成形型に対して0.2〜5L程度となるような塗布量が挙げられる。
本発明において、油性金型鋳造用離型剤(以下場合により油性離型剤という)としては、本発明のオルガノ変性シリコーンと液状有機化合物とを含有しており、前記液状有機化合物を分散媒又は溶媒とするものであることが好ましい。このような油性離型剤において、前記オルガノ変性シリコーンの含有量は0.05〜40質量%であることが好ましい。含有量が前記下限未満であると十分な離型性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると油性離型剤の流動性が低下して取り扱い難くなる傾向にある。
前記液状有機化合物としては、椰子油、大豆油、菜種油、パーム油等の植物油;牛油、豚脂等の動物油;マシン油、タービン油、スピンドル油、シリンダー油、灯油等の鉱物油;オレイン酸、ステアリン酸、ラウリル酸、牛脂脂肪酸等の高級脂肪酸の一価アルコールエステルや多価アルコールエステル;有機モリブテン、イソプロパノール等のアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩素化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも相溶性がより優れるという観点から、前記液状有機化合物としては、鉱物油、芳香族炭化水素が好ましい。このような液状有機化合物の含有量は、オルガノ変性シリコーンの含有量が前述の範囲内となるように適宜調整することができる。
また、前記油性離型剤としては、必要に応じて、付着性や離型性を損なわない範囲で、金型鋳造用離型剤に従来から使用されている添加剤をさらに含有することができる。このような添加剤としては前記水系離型剤において記載した界面活性剤;シリコーン、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン等のシリコーン化合物;油性剤;合成ワックス;消泡剤;増粘剤;防錆剤;防腐剤;水性高分子;pH調整剤;防かび剤;重炭酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩;ホウ酸等の無機物等が挙げられる。前記添加剤を含有させる場合、その含有量は、油性離型剤において10質量%以下であることが好ましい。
前記油性離型剤を製造する方法としては、特に制限されず、例えば、前記オルガノ変性シリコーンと前記液状有機化合物と必要に応じて前記添加剤とを、必要に応じてミキサー等の機器を用いて混合する方法が挙げられる。
前記油性離型剤を使用する際は、得られた油性離型剤そのもの、又は、前記液状有機化合物でさらに希釈又は分散したものを金型の成形周面に塗布する。塗布する方法及び塗布量としては前記水系離型剤において述べたとおりである。
本発明の金型鋳造方法は、前記本発明の金型鋳造用離型剤を用いて金属成形品を鋳造することを特徴とする。前記金属成形品に用いられる金属としては、従来から金属成形品に用いられている非鉄金属を用いることができ、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びこれらの合金が挙げられる。また、本発明の金型鋳造方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができ、例えば、プレッシャーダイカスト及びスクイーズ(Squeeze)キャスト法等のダイカスト鋳造法、低圧鋳造法等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.オルガノ変性シリコーンの製造
<鎖状シリコーンの数平均分子量測定>
先ず、メチルハイドロジェンシロキサン(鎖状シリコーン)、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液及びエタノールを反応せしめ、水素ガス発生量を測定した。水素ガス発生量は365ml/gであった。得られた水素ガス発生量からメチルハイドロジェンシロキサン中のヒドロシリル基由来の水素量を求めると1.6質量%であり、ヒドロシリル基当量は63g/molとなり、前記一般式(1)中のaは0であった。
次いで、撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応容器にメチルハイドロジェンシロキサン(63g)、1−オクタデセン(25g、0.15モル)を入れ、65℃まで加熱しながら均一となるまで混合した。次いで、ヒドロシリル化触媒として、塩化白金(IV)のエチレングリコールモノブチルエーテル・トルエン混合溶液を、系内の反応物に対し白金濃度が5質量ppmとなるように添加したところ、発熱したため冷却しながら反応させた。反応物の温度が90℃となったところで、1−オクタデセン(151g、0.90モル)を反応物の温度が80〜110℃となるよう、反応物を冷却しながら滴下した。滴下後反応物を加熱して温度を120℃とし、4時間攪拌し反応させ、付加反応を完結させた。その後、160℃で減圧、吸引して反応物から過剰の1−オクタデセンを除去し、付加反応物を225g得た。付加反応が完結したことの確認は、得られた付加反応物のFT−IR分析を行い、原料であるメチルハイドロジェンシロキサンのSiH基由来の吸収スペクトルが消失したことを確認することで行った。
得られた付加反応物の数平均分子量をGPC法(PEG換算法)により測定したところ、11500であり、前記一般式(1)中のbは51であった。a、b及び付加反応物の数平均分子量から、メチルハイドロジェンシロキサンの数平均分子量は3200であった。
(実施例1)
先ず、撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応容器にメチルハイドロジェンシロキサン(63g、数平均分子量から求めたモル数:0.02モル)、0.13モルのα−メチルスチレン(15g)、0.03モルの1−ドデセン(5.0g)を入れ、65℃まで加熱しながら均一となるまで混合した。次いで、ヒドロシリル化触媒として塩化白金(IV)のエチレングリコールモノブチルエーテル・トルエン溶液を、系内の反応物に対し白金濃度が5質量ppmとなるように添加したところ、発熱したため冷却しながら反応させた。反応物の温度が90℃となったところで、0.37モルのα―メチルスチレン(44g)を反応物の温度が80〜110℃となるよう、反応物を冷却しながら滴下した。滴下後反応物を加熱して温度を120℃とし、1時間攪拌し反応させた。その後冷却し反応物の温度が90℃となったところで0.25モルの1−ドデセン(42g)を、反応物の温度が80〜110℃となるよう反応物を冷却しながら滴下した後、0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を添加した。
次いで、0.25モルの1−ドデセン(42g)を反応物の温度が80〜110℃となるように反応物を冷却しながら滴下し、その後100℃で1時間、さらに120℃で4時間反応物を攪拌し付加反応を完結させた。その後、120℃で反応物を曝気して過剰の1−ドデセンを除去し、オルガノ変性シリコーンを得た。付加反応が完結したことの確認は、得られたオルガノ変性シリコーンのFT−IR分析を行い、原料であるメチルハイドロジェンシロキサンのSiH基由来の吸収スペクトルが消失したことを確認することで行った。また、得られたオルガノ変性シリコーンの25℃における粘度を単一円筒型回転粘度計(B型粘度計)を用いて、JIS K7117−1(1999)に従った方法で測定した。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表1に示す。
(実施例2)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を0.0037モルのペンタエリスリトールテトラアクリレート(1.3g)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表1に示す。
(実施例3)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を0.005モルのトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数1モル)のトリアクリレート(2.2g)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表1に示す。
(実施例4)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を0.003モルのトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2モル)のトリアクリレート(1.8g)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表1に示す。
(実施例5)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を0.005モルのグリセリンのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数1モル)のトリアクリレート(2.3g)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表1に示す。
(比較例1)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表2に示す。
(比較例2)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を、0.01モルの1,5−ヘキサジエン(0.8g)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表2に示す。
(比較例3)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を、0.01モルの1,7−オクタジエン(1.1g)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表2に示す。なお、比較例3の粘度については、実施例1と同様の方法で粘度を測定したところ、この測定方法で測定できる最大粘度(100000mPa・s)を超えており、正確な粘度が測定できなかったため、表2においては「増粘」と表記した。
(比較例4)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を、0.0055モルの1,7−オクタジエン(0.6g)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表2に示す。
(比較例5)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を、0.005モルの1,9−デカジエン(0.7g)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表2に示す。
(比較例6)
0.003モルのペンタエリスリトールトリアクリレート(1.0g)を、0.01モルの5−ビニルビシクロ[2,2,1]ヘプラ−2−エン(1.2g)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてオルガノ変性シリコーンを得た。得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度を表2に示す。
(比較例7)
ジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製、製品名:DOW CORNING TORAY SH 200 FLUID 10000cs)(100g)をそのまま用いた。前記ジメチルシリコーンの粘度を表2に示す。
(比較例8)
メチル基、ドデシル基等が導入されているアルキルアラルキル変性シリコーン(WACKER製、商品名:WACKER TN)(100g)をそのまま用いた。前記アルキルアラルキル変性シリコーンの粘度を表2に示す。
(比較例9)
50gのジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製、製品名:DOW CORNING TORAY SH 200 FLUID 10000cs)と50gのメチル基、ドデシル基等が導入されているアルキルアラルキル変性シリコーン(WACKER製、商品名:WACKER TN)とを混合し、この混合物を用いた。この混合物の粘度を表2に示す。
2.金型鋳造用離型剤の製造
<水系離型剤>
先ず、各実施例及び比較例で得られたオルガノ変性シリコーン20質量部と炭素数12〜14の分岐高級アルコールのエチレンオキサイド9モル付加物((株)日本触媒製、製品名:ソフタノール90)3質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に水77質量部を少量ずつ混合しながら添加し、オルガノ変性シリコーンを水に乳化せしめて水系乳化物を得た。この水系乳化物に水を混合しながら加え、オルガノ変性シリコーン濃度が1質量%である水系離型剤をそれぞれ得た。
<油性離型剤>
各実施例及び比較例で得られたオルガノ変性シリコーン濃度がそれぞれ0.5質量%となるようにトルエンと混合し、油性離型剤を得た。
3.金型鋳造用離型剤の離型性評価
各実施例及び比較例で得られたオルガノ変性シリコーンを用いて得られた各水系離型剤及び各油性離型剤について、それぞれ以下の方法によりリング圧縮試験を行い、得られた摩擦係数により金型鋳造用離型剤の潤滑性を評価した。摩擦係数が小さいほど潤滑性は良好であり、摩擦係数が0.20を超えると金型鋳造の際にアルミ等の溶着やカジリ等の不具合が発生するようになる。
<リング圧縮試験>
先ず、200℃に加熱した2枚の円形鋼板(直径:120mm、厚さ:60mm、材質:SKD61(焼入れ・焼戻し))の各片面に金型鋳造用離型剤10mLをスプレー塗布(圧力0.4MPa)した後、その鋼板を400℃のホットプレートで2分間加熱した。次いで電気炉で500℃に加熱したアルミリング試験片(外径:54mm、内径:27mm、厚さ18mm、材質:A5052)を、前記2枚の円形鋼板の間に離型剤塗布面がアルミリング試験片と接触する側となるように挟み、100t油圧プレス機(コマツ産機(株)、HAF100)を用いて、圧縮率50%で圧縮した。圧縮後のアルミリング試験片の内径を測定し、次式:
内径変化率=圧縮後の内径/圧縮前の内径
より内径変化率を算出し、摩擦係数を求めるグラフ(「工藤によるエネルギー法」(Proc.5th Japan.Nat.Congr.Appl.Mech.、75頁、1955年)に基づいて内径変化率より摩擦係数を求めた。得られた摩擦係数の値を各実施例及び比較例で得られたオルガノ変性シリコーンの原料組成、収量及び粘度と共に表1〜2に示す。
表1に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンは十分に粘度が高いことが確認された。また、表1に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンを含有する本発明の金型鋳造用離型剤は、水系離型剤であっても油性離型剤であっても摩擦係数が0.20以下という優れた潤滑性(離型性)を示すことが確認された(実施例1〜5)。
他方、比較例1〜4、8で得られたオルガノ変性シリコーンは粘度が低いか、あるいは高すぎるものであり、また、比較例1〜9で得られたオルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤の摩擦係数は、水系離型剤又は油性離型剤の少なくともいずれか1つの離型剤において0.20を超えており、水系離型剤及び油性離型剤の両方では潤滑性(離型性)が得られないことが確認された。
以上、説明したように、本発明によれば、優れた離型性を金型鋳造用離型剤に付与することができるオルガノ変性シリコーンの製造方法、その製造方法によって得られるオルガノ変性シリコーンを含有する金型鋳造用離型剤、及びその金型鋳造用離型剤を用いた金型鋳造方法を提供することが可能となる。
また、本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンは金型への優れた付着性を金型鋳造用離型剤に付与することができる、適度な粘度を有するため、このオルガノ変性シリコーンを含有する本発明の金型鋳造用離型剤は、金型に対する付着性が高く、高温条件においても優れた離型性を維持することができる。
さらに、本発明の製造方法により得られるオルガノ変性シリコーンは、水系溶媒においても油性溶媒においても安定であるため、水系金型鋳造用離型剤として用いても油性金型鋳造用離型剤として用いても優れた離型性を発揮することができる。
また、本発明の金型鋳造方法においては、優れた離型性及び付着性を有する本発明の金型鋳造用離型剤を用いることにより、従来よりも金型鋳造の作業効率を向上させることができ、さらに、従来よりも品質の良好な金属成形品を得られることが期待できる。

Claims (6)

  1. (I)下記一般式(1):
    [式(1)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を示し、a及びbは、下記式(i)〜(iii):
    0≦a≦195・・・(i)
    5≦b・・・(ii)
    10≦a+b≦200・・・(iii)
    で表わされる条件を満たす数である。]
    で表わされる鎖状シリコーンに、
    (II)炭素数4〜18のモノオレフィン、及びアルケニル基を有する炭素数8〜12の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種と、
    (III)下記一般式(2):
    [式(2)中、Rは、炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基を示し、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、Rが3価の脂肪族炭化水素基である場合には、pは0且つqは3であり、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、pは式:p=4−qで表わされる条件を満たす整数且つqは3又は4である。]
    で表わされるポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−1)、及び下記一般式(3):
    [式(3)中、Rは、炭素数1〜16の3価又は4価の脂肪族炭化水素基を示し、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はメチル基を示し、AO及びAOは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜6の整数且つ式:m+n≧1で表わされる条件を満たす整数を示し、Rが3価の脂肪族炭化水素基である場合には、sは0且つtは3であり、Rが4価の脂肪族炭化水素基である場合には、sは式:s=4−tで表わされる条件を満たす整数且つtは3又は4である。]
    で表わされるポリ(メタ)アクリル酸エステル(III−2)からなる群から選択される少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸エステルとを、
    下記式(iv):
    {(I)の全モル数}:{(II)の全モル数}:{(III)の全モル数}=A:B:C・・・(iv)
    [式(iv)中、Aは前記(I)鎖状シリコーンの数平均分子量から求めたモル数を示し、B及びCは、下記式(v)及び(vi):
    0.01×A≦C≦A・・・(v)
    0.5×b×A≦B≦2×b×A・・・(vi)
    [式(vi)中、bは、式(1)中のbと同義である。]
    で表わされる条件を満たす数である。]
    で表わされる条件を満たすモル比でヒドロシリル化触媒存在下において付加反応せしめることによりオルガノ変性シリコーンを得ることを特徴とするオルガノ変性シリコーンの製造方法。
  2. 前記(III)ポリ(メタ)アクリル酸エステルが、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のオルガノ変性シリコーンの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法により得られたオルガノ変性シリコーンを含有することを特徴とする金型鋳造用離型剤。
  4. 界面活性剤と水とをさらに含有する水系金型鋳造用離型剤であることを特徴とする請求項3に記載の金型鋳造用離型剤。
  5. 液状有機化合物をさらに含有する油性金型鋳造用離型剤であることを特徴とする請求項3に記載の金型鋳造用離型剤。
  6. 請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の金型鋳造用離型剤を用いて金属成形品を鋳造することを特徴とする金型鋳造方法。
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CN111040174A (zh) * 2018-10-15 2020-04-21 上海飞凯光电材料股份有限公司 聚醚改性有机硅丙烯酸酯及其制备方法,及离型剂

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