JP2013014792A - 硬質材料とその製造方法、並びに切削工具 - Google Patents

硬質材料とその製造方法、並びに切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】超硬合金に比べてWの使用量を削減でき、超硬合金の代替となり得る強度と靭性を備えた硬質材料とその製造方法、並びにその硬質材料を用いた切削工具を提供する。
【解決手段】この硬質材料は、第一硬質相(第一硬質相粒子10A)と、鉄族金属を含む結合相20とを備える。この第一硬質相は、Tiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方からなるコア11と、WCで構成されて、コア11を覆うシェル12とを含む。さらに、第二硬質相(第二硬質相粒子10B)として、WCを含有しても良い。WCの第一硬質相により高熱伝導率の硬質材料とできる。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼や鋳鉄、焼結合金などの金属材料の切削に好適な硬質材料とその製造方法、並びに前記硬質材料を用いた切削工具に関する。特に、超硬合金に比べてWの使用量を削減でき、かつ超硬合金の代替材料として期待できる硬質材料に関する。
従来、鋼や鋳鉄、焼結合金を切削するための硬質材料としては超硬合金やサーメット、或いはそれらの表面にセラミックスの硬質被覆を設けたものが知られている。超硬合金は強度と破壊靱性に優れ、熱伝導率にも優れているため、鋼や鋳鉄の粗加工や断続切削などの切削加工に適している。一方、サーメットは鉄との反応性が低く、優れた仕上げ面が得られるため、鋼や鋳鉄の仕上げ加工や焼結合金の連続旋削加工などに使用されている。サーメットの一例としては、硬質相として、TiCN相(内芯部)の周辺をTiWCNといった複合固溶体相(周辺部)が取り囲んだ二重構造(有芯構造)の有芯粒子を含むサーメットが特許文献1に記載されている。
特開2010−31308号公報
近年、超硬合金の主要原料であるタングステンは原料供給の地域偏在性が高く、供給リスクが懸念されるため、チタンを主要原料とし、TiCやTiCNといったチタン化合物を主成分とするサーメットを代替使用するニーズが高まっている。
しかし、サーメットを構成するTiCやTiCNは超硬合金を構成するWCと比較して熱伝導率が1/5程度と非常に低く、しかも線膨張係数はWCの2倍以上と大きく、ヤング率もWCの約1/2と小さいため、サーメットの耐熱衝撃性は超硬合金のそれと比較してかなり劣っている。このため、サーメットを鋼や鋳鉄の粗加工や断続切削などの熱衝撃負荷の大きい切削用途で使用すると、欠損に対する信頼性が低く、超硬合金の代替材料としてサーメットを使用することには限界があった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、超硬合金に比べてWの使用量を削減でき、かつ超硬合金の代替となり得る強度と靭性を備えた硬質材料とその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記硬質材料を用いた切削工具を提供することにある。
本発明者は、従来のサーメットの硬質相を構成するチタン系の化合物を利用することを前提に、その硬質相の材質や形態を工夫することを鋭意検討した。その結果、特定材質のコアシェル構造の硬質相を用いることで、十分な耐摩耗性を確保しながら硬質相の熱伝導率を高め、特に硬質材料の耐熱衝撃性を改善できるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づいてなされたもので、以下に示す硬質材料、切削工具、及び硬質材料の製造方法の各構成を有する。
〔硬質材料〕
本発明の硬質材料は、第一硬質相と、鉄族金属を含む結合相とを備える。この硬質材料において、前記第一硬質相は、Tiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方からなるコアと、WCで構成されて、前記コアを覆うシェルとを有する。
このようなコアシェル構造の第一硬質相を備える硬質材料は、コアがTiを主体とする化合物からなることにより、鋼に対する低い反応性、すなわち高い耐摩耗性を備える。特に、Tiの炭化物及びTiの炭窒化物をコアとすれば、Tiの窒化物をコアとする場合に比べて、WCに対する線膨張係数差を小さくでき、シェルの形成過程や硬質材料の焼結過程における熱履歴でシェルに亀裂が生じたり、シェルが部分的に剥がれたりすることを抑制できる。また、供給安定性に優れるTiの化合物をコアとする第一硬質相を用いることで、WCを硬質相の主材料とする超硬合金に比べて、Wの使用量を削減することができる。
一方、シェルがWCからなることにより、硬質材料中に優れた熱伝導率を有するWC骨格のネットワークを形成し易く、硬質材料の熱伝導率を高めることができ、従来のサーメットの欠点である耐熱衝撃性の低さを改善できる。また、シェルがWCであることにより、鉄族金属との濡れ性に優れるため、結合相原料として鉄族金属を用いると焼結性が向上して緻密な焼結体を得ることができ、耐欠損性に優れた硬質材料とできる。
本発明の硬質材料の一形態として、さらに第二硬質相としてWCを5〜80質量%含有することが挙げられる。
この構成によれば、所定量の第二硬質相を含有することで、コアシェル構造の第一硬質相の粒子間に熱伝導率に優れるWCの第二硬質相が適度に介在されるため、硬質材料中に高熱伝導率の熱伝導パスをより多く形成することができる。そのため、硬質材料の放熱性を高めることができ、耐熱衝撃性に優れた材料とすることができる。
本発明の硬質材料の一形態として、前記コアがさらにWを含む固溶体であることが挙げられる。
コアがさらにWを含む固溶体であると、コアの線膨脹係数をWCのそれに近づけることができ、さらにコアのチタン化合物とシェルのWCとの化学的な親和性が高まる結果、コアとシェルの密着力を高めることができる。その結果、硬質材料の強度、靭性を向上できる。
コアがWを含む本発明の硬質材料の一形態として、前記Wの固溶量がTiに対する原子比で1〜30%であることが好ましい。
コアがWを1〜30%固溶していると、シェルを構成するWCとの密着性が高まり、シェルが剥がれ難くなる。この結果、高熱伝導率のWC骨格のネットワークが焼結後にも維持され易く、高熱伝導率の硬質材料を製造できる。
本発明の硬質材料の一形態として、前記コアの平均粒径を0.5μm以上とすることが挙げられる。より好ましいコアの平均粒径は2μm以上である。
この構成によれば、コアの平均粒径を特定することで、硬質材料の熱伝導率の向上効果が得られ易い。
本発明の硬質材料の一形態として、前記シェルの平均厚みを、前記コアの平均粒径の3%未満とすることが挙げられる。
この構成によれば、高熱伝導率のWCからなるシェルが剥がれたり、シェルに亀裂が入ったりすることを防ぐことができる。この結果、焼結中の液相にTiCやTiCNが溶解し、シェルを構成するWCの上に再析出して、熱伝導率の低い(W,Ti)Cや(W,Ti)CNが形成することを防ぐことができ、硬質材料の熱伝導率を向上させる効果が顕著になる。
〔切削工具〕
一方、本発明の切削工具は、逃げ面及びすくい面の両面の稜線部で構成される切刃とその近傍とを含む切刃周辺領域を備える。この切削工具の少なくとも前記切刃周辺領域は、上述した本発明に係る硬質材料からなる基材と、この基材を覆う硬質被覆とを備える。そして、この基材を構成する硬質材料は、前記コアが露出することなくシェルで覆われている。
本発明の硬質材料で基材を構成し、その基材表面に硬質被覆を設けた切削工具とした場合、切刃周辺領域、特に切削工具の逃げ面及びすくい面の少なくとも一部の基材を構成するコアがシェルで覆われていることで、硬質被覆がWCのシェルに対して成膜されることになる。そのため、コアが露出している基材に対して硬質被覆を成膜する場合に比べて、硬質被覆の基材への密着力を高めることができる。その結果、切削工具としての寿命を長くできる。勿論、この切削工具は、上述した硬質材料が持つ高い耐熱衝撃性、耐欠損性などの特性を有することは言うまでもない。
〔硬質材料の製造方法〕
さらに、本発明の硬質材料の製造方法は、第一硬質相と、鉄族金属を含む結合相とを含む硬質材料を得るための硬質材料の製造方法であって、次の工程を備える。
準備工程:前記第一硬質相と結合相とを含む原料粉末を準備する。
混合工程:前記原料粉末を混合して混合粉末とする。
成形工程:前記混合粉末を所定の圧力にて圧縮して成形体を得る。
焼結工程:前記成形体を所定の温度にて焼結する。
この製造方法において、前記準備工程における第一硬質相は、Tiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方からなるコアと、前記コアの外周に成膜されたWCからなるシェルとを有する。そして、前記混合工程は、前記シェルを損傷しないように、粉砕メディアを用いることなく前記原料粉末を混合する。
Tiの炭化物及び炭窒化物の少なくとも一方のコアと、WCのシェルとを備える第一硬質相を用い、この硬質相を含む原料粉末を混合する際、粉砕メディアを用いないメディアレス混合とすることで、シェルの損傷や剥離を最小限に抑えることができる。それにより、コアがシェルでより確実に覆われた焼結体の硬質材料を得ることができる。
本発明の硬質材料の製造方法の一形態として、前記シェルは、気相成長法により前記コアの外周に成膜され、その成膜温度を700〜1100℃とすることが挙げられる。
シェルの成膜を気相成長法により行うことで、緻密なシェルを比較的容易に形成することができる。また、上記の温度範囲でWCを成膜すると、WCの結晶性が高くなり、シェルをより高熱伝導率にできる。また、この温度範囲で成膜を行うと、コアとシェルとの密着性が高くなり、WCの剥がれや、それに伴い焼結工程でシェルを構成するWCがTiなどの他元素と固溶体化することによる熱伝導率の低下が抑制できるため、好ましい。
また、シェルを気相成長法で成膜した本発明の硬質材料の製造方法において、前記気相成長法はCVD法であり、このCVD法にはCH3CNガスを用いることが挙げられる。
WCの成膜にCH3CNガスを用いると、脆性のW2Cよりも化学的に安定で高熱伝導率のWCを成膜し易く、中でも結晶性の高いWCを成膜できるため好ましい。
本発明の硬質材料によれば、高熱伝導率で、特に耐熱衝撃性に優れた材料とすることができる。
本発明の硬質材料の製造方法によれば、コアシェル構造の硬質相粉末を含む原料粉末を用いて硬質材料を作製する際、シェルの損傷を効果的に抑制できる。その結果、シェルの亀裂や剥離が少ない、或いは実質的に亀裂や剥離のないコアシェル構造の硬質相を有する硬質材料を得ることができる。
本発明の切削工具によれば、本発明の硬質材料を用いることで、十分な耐摩耗性を備えながら、耐欠損性や耐熱衝撃性に優れる工具とすることができる。
(A)は第二硬質相を含まない実施形態に係る本発明硬質材料の組織を示す模式図、(B)は第二硬質相を含む実施形態に係る本発明硬質材料の組織を示す模式図である。 実施形態に係る本発明切削工具の切刃近傍を示す模式断面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔概要〕
本発明の硬質材料は、図1(A)にその一例を示すように、硬質相10の粉末を結合相20で結合した焼結体で構成される。この硬質材料の主たる特徴は、その硬質相の材質と構造にある。具体的には、コア11の外周をシェル12で覆ったコアシェル構造の第一硬質相粒子10Aを硬質相10に含み、コア11の材質をTiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方とし、シェル12の材質をWCとしている。以下、この硬質材料、その製造方法、並びに硬質材料を用いた切削工具を順次詳しく説明する。
〔硬質材料〕
{硬質相}
硬質相は、コアシェル構造の第一硬質相を含み、必要に応じて、第一硬質相とは異なる第二硬質相を含む。
(第一硬質相)
本発明における第一硬質相のコアシェル構造は、従来のサーメットにおいて、特許文献1などに硬質相粒子として開示される有芯構造とは異なる。従来のサーメットは、例えばTiCNとWCを原料粉末に用い、焼結過程で生じるTiCNとWCの構成元素の固溶に伴い、TiCNの内芯部と、(Ti,W)CNの周辺部とを有する有芯構造の硬質相粒子としている。これに対し、本発明における第一硬質相粒子は、原料粉末の段階でTiC又はTiCNのコアにWCのシェルを被覆したコアシェル構造の複合粒子を用い、焼結過程においてコアとシェルとの間で実質的に両者の構成元素の拡散を生じさせない。そのため、シェルは(Ti,W)CNよりも高熱伝導率でTiが実質的に固溶しないWCにより構成されている。
<コア>
コアは、コアシェル構造の硬質相の中心部を構成し、十分な硬度を備えることで、主に硬質材料の耐摩耗性の向上に寄与する機能を有する。
《材質》
コアの材質は、Tiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方とする。これらはWCに対する線膨張係数差がTiの窒化物などと比べて小さく、WCを高温でコアに被覆してシェルを形成した後の冷却過程でシェルの亀裂発生や剥離を抑制する。この線膨張係数差の僅少性は、焼結時の成形体の熱履歴においても、シェルの損傷抑制に寄与する。WCのシェルが部分的に剥がれたコアシェル構造の粉末を液相存在下で焼結すると、シェルから露出したコアのTiが液相に固溶してシェルのWCなどと反応し、コア上やシェル上に再析出するときに(Ti,W)CNなどの固溶体として析出して、硬質材料の熱伝導率の低下を招き易くなる。このため、コアの線膨張係数をWCの線膨張係数に近づけて剥離し難いシェルを形成することは、高熱伝導率の硬質材料を獲得するためには重要となる。各材料の線膨張係数は、WC<TiC<TiCN<TiNの関係にある。また、各材料の熱伝導率は、TiC<TiCN<TiN≪WCの関係にあり、WCはTiNの約5倍、TiCの約8倍の熱伝導率を持つ。
第一硬質相のコアは、TiC又はTiCNのいずれか一方でも構わないが、TiCをコアとする第一硬質相とTiCNをコアとする第一硬質相とを併用しても良い。2種類の第一硬質相を併用する場合、TiCはTiCNよりも高硬度で線膨張係数がWCに近いが、硬脆材料なので、この特性に応じて適宜各第一硬質相の割合を選択すれば良い。各材料の硬度は、WC<TiN<TiCN<TiCの関係にある。
その他、コアの材質としては、Tiの炭化物又はTiの炭窒化物に、さらに他の金属元素が固溶された固溶体であっても構わない。この金属元素は、上記固溶体を形成することで、TiNに比べて、さらにはTiCやTiCNに比べても、コアの線膨脹係数をWCのそれに近づけることができる元素が好ましい。具体的には、Wが好適に利用できる。つまり、(Ti,W)Cや(Ti,W)CNをコアとして利用できる。このWの固溶されたコアは、成形体の焼結時にシェルのWCからコアに固溶されて構成されたものではなく、原料粉末の段階で予めWが固溶されたコアを用いることで構成されたものである。Wの固溶量は、Tiに対する原子比で1〜30%であることが好ましい。コアがWを1〜30%固溶していると、シェルを構成するWCとの密着性が高まり、シェルが剥がれ難くなるため、上述したWC(シェル)の固溶体化が進み難くなる。この結果、高熱伝導率のWC骨格のネットワークが焼結後にも維持され易く、高熱伝導率の硬質材料を製造できる。
《サイズ》
コアの平均粒径は0.5μm以上とすることが好ましい。硬質相の粒径が小さいと、粒界が多くなるため、硬質材料の熱伝導率が低下する。そのため、コアの平均粒径を0.5μm以上とすれば、硬質材料の熱伝導率の向上効果が得られ易い。また、このようなサイズのコア粒子は製造し易い。特に、硬質材料の高熱伝導化を考慮すると、この平均粒径は1.5μm以上、さらには2μm以上とすることが好ましい。一方、コアの平均粒径の上限は7μm程度である。コアの平均粒径が7μm以下であれば、高強度の硬質材料が得られ易いからである。この平均粒径は、焼結後の硬質材料に対して切断面を平面研削後に鏡面研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影を行い、フルマンの式を用いて算出した値である。この明細書における他の粒子の平均粒径も同様に測定される。なお、本発明の硬質材料におけるコアの平均粒径(焼結後の平均粒径)は、後述するように粉砕メディアを用いない混合方法を経て製造されるため、原料粉末におけるコア粒子の平均粒径がほぼ維持されている。
<シェル>
シェルは、コアの外周を覆い、硬質材料の靭性を確保すると共に、硬質材料中に高熱伝導率の熱伝導パスを形成することを主たる機能とする。
《材質》
シェルがWCからなることにより、硬質材料中に優れた熱伝導率を有するWC骨格のネットワークを形成し易く、硬質材料の熱伝導率を高めることができ、従来のサーメットの欠点である耐熱衝撃性の低さを改善できる。この効果はシェルをW2Cとした場合に比べて明らかに大きい。これはWCの熱伝導率がW2Cのそれよりも大きいためと考えられる。W2CはWCよりも20〜30%程度硬く、耐摩耗性の向上が期待できるが脆性であり、硬質材料の熱伝導率を向上させ、従来のサーメットの欠点である耐熱衝撃性の低さを大きく改善するには、シェルにW2CでなくWCを採用する意義は非常に大きい。また、シェルがWCであることにより、鉄族金属との濡れ性に優れるため、結合相原料として鉄族金属を用いると焼結性が向上して緻密な焼結体を得ることができ、耐欠損性に優れた硬質材料とできる。結合相原料を用いない場合でも、シェルを構成するWCの優れた焼結性により、緻密な焼結体を得ることができる。
《厚さ》
WCで構成されるシェルの平均厚みは0.01〜2μm程度であることが好ましい。これは、平均厚みが0.01μm以上であればシェルを熱伝導パスとして硬質材料を高熱伝導化する効果が得られ易く、2μm以下であればシェルに亀裂が生じ難く、やはり硬質材料を高熱伝導化する効果が得られ易いためである。特に、硬質材料の高熱伝導化の効果を顕著にするには、シェルの平均厚みを0.02μm以上、特に0.04μm以上とすることが好ましく、シェルの亀裂をより確実に抑制するには、シェルの平均厚みを1.5μm以下、特に0.3μm以下とすることが好ましい。この平均厚みの測定は、硬質材料の切削面を集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工して、透過型電子顕微鏡(TEM)で写真撮影を行い、複数の第一硬質相粒子における10点以上の測定点のシェルの厚みを平均することにより行う。
また、WCで構成されるシェルの平均厚みをコアの平均粒径との比率で示すと、コアの平均粒径の3%未満であることが好ましい。これは、前記比率を3%未満とすることで前述の理由により硬質材料の高熱伝導化の効果が大きくなるためである。
つまり、シェルの亀裂抑制のために好ましい条件としては、コアシェル構造の複合粒子に占めるコアの体積含有率をシェルの体積含有率よりも大きくすることが挙げられる。コアのサイズに応じて、一定比率未満の厚みのシェルが形成されていれば、シェルの亀裂発生を抑制し易い。
(第二硬質相)
第二硬質相は、第一硬質相以外の硬質相であり、その材質、配合量などに応じて、硬質材料の耐摩耗性、耐熱衝撃性、耐欠損性などの特性を改善する機能を有する。例えば、図1(B)に示すように、第二硬質相を含む硬質材料は、第一硬質相粒子10Aと第二硬質相粒子10Bが混在して結合相20で結合された構造となる。
《材質》
第二硬質相の材質としては、周期率表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも一種の金属元素とC及びNの少なくとも一種の元素との化合物、即ち、上記金属元素の炭化物、窒化物、及び炭窒化物の少なくとも一種が利用できる。特に、WCが好適に利用できる。第二硬質相としてWCを含むと硬質材料の耐熱衝撃性、耐欠損性をさらに高めることができる。その他、第二硬質相としてTaCとNbCの少なくとも一方を含むと鋼に対する耐反応性を向上でき、ZrC、ZrCN、及びZrNの少なくとも一種を含むと高温での硬質材料の強度を向上させることができる。第二硬質相として、WCとWC以外の材料を含む場合、第二硬質相全体に占めるWCの含有量を50質量%以上とすることが耐熱衝撃性(耐欠損性)の向上の点で好ましい。
《構造》
第二硬質相の構造は、単相構造のものが一般的であるが、従来のサーメットに含まれる有芯構造であっても構わない。その具体例としては、内芯部が実質的にTi(C,N)からなり、周辺部が、(Ti,W,Mo)(C,N),(Ti,W,Nb)(C,N),(Ti,W,Mo,Nb)(C,N),(Ti,W,Mo,Nb,Zr)(C,N)等からなる有芯構造が挙げられる。
《サイズ》
第二硬質相の平均粒径は、0.1〜4μm程度が好ましい。0.1μm以上の平均粒径とすることで、原料粉末を扱い易く、工業的に入手可能だからである。また、4μm以下の平均粒径とすることで、硬質材料の強度や耐摩耗性を確保し易いからである。特に、第一硬質相の粒径よりも第二硬質相の粒径を小さくした場合には、第一硬質相の粒子間に第二硬質相を介在させ易く、高熱伝導率の熱伝導パスを形成し易いからである。第二硬質相の平均粒径を第一硬質相の平均粒径よりも小さくすることで、焼結中に生成する液相への溶解が第二硬質相を主体とするものにでき、第一硬質相の溶解、固溶体化を防ぐことができる。この結果、硬質材料の熱伝導率を高くすることができる。なお、第一硬質相の液相への溶解を防ぐ目的のみの観点では、第二硬質相、例えばWCの粒度を微粒と粗粒の2つのピークを粒度分布に持つ二重粒度分布とし、微粒の粉末を第一硬質相の溶解防止のための優先溶解用とし、粗粒の粉末を熱伝導率向上用として残存させる構成としてもよい。この場合には、必ずしも第二硬質相の平均粒径は第一硬質相よりも小さくなくても良い。
(含有量)
硬質相(第二硬質相がある場合は第二硬質相も含む)の含有量は、硬質材料全体に対して70質量%以上97質量%以下とすることが好ましい。硬質相を70質量%以上、特に80質量%以上含有することで、硬質材料の強度や耐摩耗性を確保し易い。一方、硬質相の含有量を97質量%以下とすることで、硬質材料中に結合相を一定量含有させ、硬質材料の靭性(耐欠損性)を確保し易くできる。
第二硬質相を含む場合、硬質材料全体に対する第二硬質相の含有量は5〜80質量%とすることが好ましい。これは、5質量%以下であると第二硬質相を含有する効果は小さく、80質量%を超えるとコアシェル構造の粒子の存在効果が小さくなるためである。
また、第二硬質相にWCを含有する場合、第一硬質相の体積含有率が第二硬質相(WC)の体積含有率よりも大きい場合には、従来の類似組成の硬質合金に対する耐熱衝撃性と耐摩耗性の向上効果が大きい。その上、地域偏在性が高く供給リスクを有するWCの使用比率が小さい省タングステン材料とできる。逆に、第一硬質相の体積含有率がWC(第二硬質相)の体積含有率よりも小さい場合でも、本発明の硬質材料は、従来の超硬合金と比較して、遜色ない耐摩耗性、耐熱衝撃性、耐欠損性を発揮できる。
{結合相}
《材質》
結合相は硬質相の粒子を結合する材料で、鉄族金属が好ましい。特に、CoとNiの少なくとも一方は硬質相と濡れ性が高く好ましい。結合相がCoを主体とすると特に焼結性が向上し、焼結体を緻密とし易く、強度、破壊靱性を向上できる。一方、Niは耐食性に優れる。また、結合相中にはW、Cr、Ru、Cなど、硬質相の構成元素が固溶していても構わない。特にW、Cr、Ruの少なくとも一種の固溶量が多いと結合相が固溶強化され、硬質材料の靭性を向上できて好ましい。
《含有量》
結合相は、硬質材料全体に対して3質量%以上20質量%以下含有することが好ましい。結合相の含有量が多いほど硬質材料の靱性や焼結性が高くなる傾向があり、少ないと強度や靭性が低下する傾向にある。
〔硬質材料の製造方法〕
本発明の硬質材料は、代表的には、原料粉末の準備→混合→成形→焼結・冷却という工程を経て製造される。
{準備工程}
準備工程では、第一硬質相粉末を含む硬質相粉末と、結合相粉末とを準備する。その際、第一硬質相粉末以外の原料粉末の多くは、例えば市販品を利用することができるため、以下の説明は主に第一硬質相粉末を得る方法について述べる。
コアシェル構造の第一硬質相粉末を得るには、まずコアとなる粒子からなる粉末(コア粉末)を用意する。つまり、TiC、TiCN又はこれらの各々にWが固溶された固溶体のコア粉末を用意する。TiCやTiCNのコア粉末の他、Wの固溶されたコア粉末も、Wの固溶量の異なる各種粉末を市販品から選択することができる。次に、用意したコア粉末の各粒子に、シェルとなるWCを被覆する。このシェルの形成には、CVD法、PVD法などの気相成長法の他、ゾルゲル法などの液相法を用いることができる。シェルの成膜を気相成長法により行うことで、緻密なシェルを比較的容易に形成することができる。
例えば、CVD法の場合には、コア粉末を容器に入れ、その容器を真空引き後に、容器を回転させながら所定のガスを容器内に導入して、所定の温度で保持することにより、コア粉末の各粒子の表面にWCのシェルを成膜する。容器を回転させることで、コア粉末の各粒子に満遍なくシェルを成膜することができる。容器に導入するガスとしては、原料ガスとしてタングステンのフッ化物(例えばWF6ガス)とメタン(CH4)若しくはアセトニトリル(CH3CN)が挙げられ、キャリアガスとして水素若しくはアルゴンガスが挙げられる。特に、CH3CNガスを用いると、脆性のW2Cよりも化学的に安定で高熱伝導率のWCを成膜し易く、中でも結晶性の高いWCを成膜できるため好ましい。成膜温度は700〜1100℃程度が好ましい。この温度範囲でWCを成膜すると、WCの結晶性が高くなり、WC中での結晶欠陥に伴うフォノンの散乱を抑制でき、シェルを高熱伝導率にできる。また、この温度範囲で成膜を行うと、コアとシェルとの密着性が高くなり、WCの剥がれや、それに伴う焼結工程でのWCのTi元素との固溶体化によるシェルの熱伝導率の低下が抑制できるため、好ましい。
一方、PVD法の場合には、例えば次の方法が挙げられる。まず、コア粉末を容器に入れ、その容器を真空引き後に、容器を回転させながらタングステン製ターゲットを用いてタングステンをコア粉末にスパッタ蒸着する。次に、得られたタングステン被覆コア粉末を1700〜2000℃程度の温度で炭化してコア粉末の各粒子表面にWCを形成させる。
{混合工程}
上述した各原料粉末は、適宜な混合手段でできるだけ均一に混合して混合粉末とされる。この混合工程においては、第一硬質相のコアシェル構造を損傷しないように原料粉末を混合することが重要である。つまり、この混合工程では、シェルに亀裂が生じたり、剥離が生じたりすることのないような混合手段を選択する。具体的には、例えば、原料粉末にエタノールやアセトンなどの有機溶媒を合わせてスラリーとし、このスラリーに超音波を照射しながら、粉砕メディアを用いることなく混合する。この混合方法によれば、原料粉末を実質的に粉砕することなく、かつシェルを損傷させることなく原料粉末を混合することができる。
原料粉末を混合して混合粉末としたら、通常、この混合粉末にバインダを加え、スプレードライヤーなどの乾燥手段を用いて噴霧乾燥して造粒する。バインダとしては、パラフィンワックスやポリエチレングリコールなどが挙げられる。このバインダの含有量は、上記原料粉末とバインダの合計に対して、1〜4質量%程度が好ましい。
{成形工程}
混合工程で得られた混合粉末の成形は、混合粉末を金型に充填し、所定の圧力で所定の形状に成形する。成形方法としては、乾式加圧成形法、冷間静水圧成形法、射出成形法、押出成形法などが挙げられる。この成形時の圧力は、50〜200MPa程度が好ましい。また、成形体の形状は、求められる製品の形状に応じて、過度に複雑形状とならないような適宜な形状を選択する。最終的な製品形状へは、必要に応じて、仮焼後もしくは焼結後に適宜な機械加工を行えばよい。
{焼結工程}
成形体の焼結は、液相の生じる温度域で成形体を所定時間保持して行うことが好適である。焼結温度は1300℃以上1600℃以下程度が好ましい。焼結温度を高くし過ぎると、硬質相を構成する粒子が成長し易い。保持時間は0.5時間以上2.0時間以下程度、特に1.0時間以上1.5時間以下程度が好ましい。加熱時の雰囲気は、窒素,アルゴンなどの不活性ガス雰囲気又は真空(0.1〜0.5Pa程度)とすることが好ましい。
この焼結工程において、原料粉末の段階からシェルに亀裂や剥離などの損傷が実質的にない第一硬質相粉末を用いているため、シェルがバリアとなって液相がコアに接触することを阻止し、コアとシェルの間で構成元素同士の相互拡散が抑止される。また、シェル表面の一部が液相に溶解しても、シェル上に再析出するだけである。その結果、シェルは、コアの金属元素が固溶されて熱伝導率の低い固溶体となることなく、WCのまま維持される。もし一部の第一硬質相粒子のシェルに亀裂や剥離があったとしても、そのような第一硬質相の粒子はごく一部のため、大半の第一硬質相粒子のシェルはTiWCやTiWCNなどの熱伝導率の低い固溶体とならず、WCのまま維持される。第一硬質相全体のうち、シェルに亀裂や剥離が認められない第一硬質相粒子の割合は、70%以上、さらには80%以上、特に90%以上であることが好ましい。この割合は、SEMやTEMによる硬質材料の断面の観察により、(シェルに亀裂や剥離が認められない第一硬質相粒子の数/第一硬質相粒子の全数)×100を算出することで求める。その際、第一硬質相粒子の全数は30個以上となるように、必要に応じて複数視野での観察を行う。
また、焼結工程において、焼結温度を所定の時間保持して加熱した成形体を冷却する際、真空、又はアルゴン(Ar)といった不活性ガス雰囲気で冷却することが好ましい。
〔切削工具〕
本発明の硬質材料を用いた切削工具は、例えば図2に示すように、基材110と、基材110を覆う硬質被覆120とを備える。図2では、切削工具の上面がすくい面、左斜面が逃げ面で、両面の稜線部が切刃である。
{切刃周辺領域}
この切削工具では、基材全体を上述した本発明の硬質材料で構成し、基材110の全面を硬質被覆120で覆っている。但し、本発明の硬質材料で構成する箇所は、少なくとも切削に関与する領域、つまり切刃とその近傍を含む切刃周辺領域であればよく、硬質被覆120の形成領域も同様である。切刃周辺領域は、逃げ面摩耗、クレータ摩耗が生じ易い領域や、切り屑が接触する領域をも含む。本発明の硬質材料からなる基材110を切刃周辺領域に用いることで、耐摩耗性だけでなく、耐欠損性、特に耐熱衝撃性に優れた切削工具とすることができる。特に、基材110を構成する第一硬質相では、コアがシェルに覆われて露出されていないため、次述する硬質被覆120がコアではなくシェルを構成するWC上に形成されることになり、硬質被覆120の基材110に対する密着性を高めることができる。これは、硬質被覆120が部分的に異なる材質(TiC、TiCN、WC)に対して形成されるのではなく、一様な材質(WC)に対して形成されるためであると考えられる。特に、硬質被覆120をPVD法で成膜した場合、硬質被覆120の構成材料の核がWC上に形成され易いことも、この密着力の向上に寄与していると考えられる。一方、切削工具では刃先処理を行うことがある。その場合、刃先処理領域はシェルが損傷し、コアが露出されることがある。但し、その場合でも、刃先処理領域でない逃げ面とすくい面の少なくとも一部では、コアが露出することなくシェルに覆われている。そのため、基材110の全被覆領域に亘ってシェルの損傷した第一硬質相粒子の割合が高い場合に比べれば、硬質被覆120の基材110に対する密着性は十分に高い。
{硬質被覆}
この切削工具は、基材110の少なくとも切刃周辺領域に硬質被覆120を備えていることが好ましい。硬質被覆を設けることで、より高い耐摩耗性を得ることができる。
硬質被覆120の材質は、周期表4,5,6族の金属,Al,Si及びBからなる群から選択される1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群から選択される1種以上の元素との化合物からなる化合物とすることが好ましい。具体例としては、TiCN,Al2O3,TiAlN,TiN,AlCrNなどが挙げられる。硬質被覆120の膜構造は、1層でも多層でもよい。硬質被覆120の合計厚さは1〜20μm程度が好ましい。硬質被覆120の形成方法は、熱CVD法などのCVD法、カソードアークイオンプレーティング法などのPVD法のいずれもが利用できる。
なお、図2では硬質被覆120を有する切削工具を示しているが、この被覆がなく基材110だけで構成される切削工具であってもよい。
<試験例1>
コア粉末として平均粒径3μmのTiC0.5N0.5粉末を準備し、その粉末をステンレス製容器に装入して真空引きした後、容器を回転させながら、1000℃に容器を加熱して、WF6ガスとCH3CN、H2、Arガスを流し、圧力6kPaの条件でTiC0.5N0.5粉末の各粒子(コア)に平均厚み0.08μmのWC(シェル)を被覆する。この被覆粉末のシェルの平均厚みはコアの平均粒径の約2.7%であった。シェルの平均厚みはTEMにより測定できる。作製したコアシェル構造を有する複合粉末にCo、Ni、WC、TaC、NbC、TaNbC、Cr3C2などの原料粉末を添加して、複合粉末のシェルを壊さないように混合する。具体的には、粉砕メディアを用いずに超音波を用いてエタノール中で原料粉末を混合し、コアシェル構造の粒子を用いた発明品1-1〜1-4と、コアシェル構造の粒子を用いていない比較品1-1〜1-4の混合粉末を作製する(表1参照)。これらの混合粉末を樟脳とエタノールを用いて造粒し、1ton/cm2(約98MPa)の圧力でプレス成型して成形体とする。その後、最高温度1410℃、1時間保持の条件で真空下にて成形体を焼結して、焼結体を得る。焼結体の組成はほぼ原料粉末の配合組成と一致していることをEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)にて確認できる。
Figure 2013014792
得られた焼結体を♯200のダイヤモンド砥石で座面の平面研削を行い、刃先処理を行って、SNMG120408(逃げ面、すくい面は研削加工なし)なる形状の基材とする。この基材をSEMやTEMで観察したところ、逃げ面、すくい面のうち、刃先処理が及んでいない領域はシェルに亀裂や剥離の生じたコアシェル構造の複合粒子が実質的に存在しなかった。さらに、この基材の表面に公知のPVD法でTiAlN膜(硬質被覆)を5μmの平均厚みに被覆して切削工具とした。
この工具を用いて切削速度200m/min、送り量0.3mm/rev、切り込み2.0mm、5分間、湿式の条件で、SCM435製の被削材をフライス切削試験し、工具の硬質材料(基材)に導入された亀裂本数を計測して耐欠損性(耐熱衝撃性)テストを行う。亀裂本数は、基材のSEMの組成像で観察して計測する。
また、同じ形状の工具を用いて、切削速度150m/min、送り量0.35mm/rev、切り込み1.5mm、乾式の条件で、SK5製の被削材を切削試験し、逃げ面摩耗量(mm)を計測して耐摩耗性テストを行う。
両試験の結果を表2に示す。表2より、コアがTiCNでシェルがWCのコアシェル構造を有する発明品1-1〜1-4はコアシェル構造を有さない比較品1-1〜1-4と比較して優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有することがわかる。第一硬質相に加え、第二硬質相としてWCを含有させた発明品1-2、1-3は、耐欠損性、耐摩耗性共に特に優れた結果となっている。
Figure 2013014792
<試験例2>
試験例1と同様にして、コア粉末の粒子の組成、平均粒径、並びにシェルの平均厚みが異なるコアシェル構造の複合粉末を準備する。但し、比較例2-1、2-2を構成する複合粉末は、WF6前駆体、H2、イソプロピルベンゼンを原料ガスとし、TiN粉末を装入したステンレス製容器を600℃に加熱し、その容器を回転させながらTiN粉末にW2Cを被覆することで形成した。また、比較例2-2は原料粉末を遊星ミルで粉砕して混合粉末とした。その複合粉末の組成、コアの平均粒径(d)、シェルの平均厚み(t)、厚みtの平均粒径dに対する比率(厚み/径)を表3に示す。これらの複合粉末が85質量%、WCが5質量%、ZrCが0.5質量%、Cr3C2が0.5質量%、Coが9質量%の組成となるように、試験例1と同様に混合粉末を作製し、続いてプレス成型、焼結、機械加工を行い、SNMG120408なる形状の基材とする。さらに、試験例1と同様にして、基材にPVD法でTiAlN膜を平均厚み5μmに被覆して切削工具とし、その工具に対して耐欠損性テストおよび耐摩耗性テストを行う。
Figure 2013014792
その結果を表4に示す。表4の結果より、コアの組成がTiCN又はTiCである発明品2-1〜2-7は、コアの組成がTiNでシェルがW2Cである比較品2-1や、コアの組成がTiNでシェルがW2Cであり、遊星ミルで粉砕して作製した比較品2-2よりも優れた耐欠損性を有することがわかる。中でも、シェルの平均厚みがコアの平均粒径の3%を下回る発明品2-1〜2-2、2-5〜2-7は、耐欠損性が発明品2-3〜2-4よりも優れている。さらに、コアの平均粒径が2〜7μmの範囲内にある発明品2-5〜2-7は、コアの平均粒径が1.6μmの発明品2-1〜2-4よりも耐欠損性が顕著に優れている。特に、コアの平均粒径が大きい発明品2-6、コアの組成がTiCである発明品2-7は、耐欠損性に優れていることがわかる。これは、発明品2-6については、コアの平均粒径を大きくすることで粒界が少なくなり基材の熱伝導性が向上したためと考えられ、発明品2-7については、TiCはTiNやTiCNよりも線膨張係数がWCにより近いためであると考えられる。また、TiCはTiNやTiCNよりも高硬度であるため、十分な耐摩耗性も得られている。一方、遊星ミルで原料粉末を粉砕混合した比較品2-2は、比較品2-1よりも早期に欠損する。これは、粉砕混合により、シェルに亀裂や剥離等の損傷が生じ、その損傷箇所を介して焼結時に生じた液相がコアに接触し、シェルが固溶体化したためであると考えられる。
Figure 2013014792
<試験例3>
試験例1の発明品1-2と同様の製造法でコアの組成のみが異なる表5に示す発明品3-1〜3-5を作製した。Wの固溶量の異なるコアの粒子は、TiとWを所定量の比で配合し、1700〜2000℃程度の温度で炭化することで得られる。さらに、これら発明品3-1〜3-5の切削工具に対して、試験例1と同様にして、耐欠損性テストおよび耐摩耗性テストを行う。
Figure 2013014792
その結果を表6に示す。表6の結果より、コアにWを1〜30原子%含む発明品3-2〜3-4は、コアにWを含まない発明品3-1よりも優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有することがわかる。また、コア粒子の組成がTiCである発明品3-1は、コアの組成がTiCNである発明品1-2(試験例1)よりも優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有することがわかる(表2参照)。さらに、コアにWを30原子%を超えて含む発明品3-5であっても、発明品1-2と遜色ない耐欠損性と耐摩耗性を有することがわかる。
Figure 2013014792
今回開示された実施の形態および試験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の硬質材料は、耐摩耗性と共に高い耐熱衝撃性を備えることから、従来の超硬合金の代替材料としての利用が期待される。特に、この硬質材料は、鋼と反応し難いことから、鋼加工用の切削工具として好適に利用することができる。また、本発明の硬質材料の製造方法は、切削工具の製造分野などに利用することができる。
10 硬質相 10A 第一硬質相粒子 10B 第二硬質相粒子
11 コア 12 シェル
20 結合相
110 基材 120 硬質被覆

Claims (11)

  1. 第一硬質相と、鉄族金属を含む結合相とを備える硬質材料であって、
    前記第一硬質相は、
    Tiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方からなるコアと、
    WCで構成されて、前記コアを覆うシェルとを有することを特徴とする硬質材料。
  2. さらに第二硬質相としてWCを5〜80質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の硬質材料。
  3. 前記コアがさらにWを含む固溶体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質材料。
  4. 前記Wの固溶量がTiに対する原子比で1〜30%であることを特徴とする請求項3に記載の硬質材料。
  5. 前記コアの平均粒径は0.5μm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬質材料。
  6. 前記コアの平均粒径は2μm以上であることを特徴とする請求項5に記載の硬質材料。
  7. 前記シェルの平均厚みは、前記コアの平均粒径の3%未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬質材料。
  8. 逃げ面及びすくい面の両面の稜線部で構成される切刃とその近傍とを含む切刃周辺領域を備える切削工具であって、
    少なくとも前記切刃周辺領域は、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬質材料からなる基材と、
    この基材を覆う硬質被覆とを備え、
    前記基材を構成する硬質材料は、前記逃げ面及びすくい面の少なくとも一部において前記コアが露出することなくシェルで覆われていることを特徴とする切削工具。
  9. 第一硬質相と、鉄族金属を含む結合相とを含む硬質材料を得るための硬質材料の製造方法であって、
    前記第一硬質相と結合相とを含む原料粉末を準備する準備工程と、
    前記原料粉末を混合して混合粉末とする混合工程と、
    前記混合粉末を所定の圧力にて圧縮して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体を所定の温度にて焼結する焼結工程とを備え、
    前記準備工程における第一硬質相は、Tiの炭化物及びTiの炭窒化物の少なくとも一方からなるコアと、前記コアの外周に成膜されたWCからなるシェルとを有し、
    前記混合工程は、前記シェルを損傷しないように、粉砕メディアを用いることなく前記原料粉末を混合することを特徴とする硬質材料の製造方法。
  10. 前記シェルは、気相成長法により前記コアの外周に成膜され、
    その成膜温度が700〜1100℃であることを特徴とする請求項9に記載の硬質材料の製造方法。
  11. 前記気相成長法はCVD法であり、
    このCVD法にはCH3CNガスを用いることを特徴とする請求項10に記載の硬質材料の製造方法。
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