JP2013108152A - 硬質粒子とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超硬合金に比べてWの使用量を削減でき、かつ超硬合金の代替となり得る強度と靭性を備えた焼結体の原料として好適な硬質粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】この硬質粒子10は、コア11と、コア11を覆うシェルとを備える。コア11は、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素とWの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体を含有する。シェル12は、WCで構成される。Wが固溶された所定の複合固溶体でコア11を構成し、かつWCでシェル12を構成することにより、コア11とシェル12の線膨張係数差を小さくすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼や鋳鉄、焼結合金などの金属材料を切削する工具の原料として好適な硬質粒子とその製造方法に関する。特に、超硬合金に比べてWの使用量を削減でき、かつ超硬合金の代替材料として期待できる焼結体が得られる硬質粒子に関する。
従来、鋼や鋳鉄、焼結合金を切削するための硬質材料(焼結体)としては超硬合金やサーメット、或いはそれらの表面にセラミックスの硬質被覆を設けたものが知られている。超硬合金は強度と破壊靱性に優れ
、熱伝導率にも優れているため、鋼や鋳鉄の粗加工や断続切削などの切削可能に適している。一方、サーメットは鉄との反応性が低く、優れた仕上げ面が得られるため、鋼や鋳鉄の仕上げ加工や焼結合金の連続旋削加工などに使用されている。サーメットの一例としては、硬質相として、TiCN相(内芯部)の周辺をTiWCNといった複合固溶体相(周辺部)が取り囲んだ二重構造(有芯構造)の有芯粒子を含むサーメットが特許文献1に記載されている。
特開2010−31308号公報
近年、超硬合金の主要原料であるタングステンは原料供給の地域偏在性が高く、供給リスクが懸念されるため、チタンを主要原料とし、TiCやTiCNといったチタン化合物を主成分とするサーメットを代替使用するニーズが高まっている。
しかし、サーメットを構成するTiCやTiCNは超硬合金を構成するWCと比較して熱伝導率が1/5程度と非常に低く、しかも線膨張係数はWCの2倍以上と大きく、ヤング率もWCの約1/2と小さいため、サーメットの耐熱衝撃性は超硬合金のそれと比較してかなり劣っている。このため、サーメットを鋼や鋳鉄の粗加工や断続切削などの熱衝撃負荷の大きい切削用途で使用すると、欠損に対する信頼性が低く、超硬合金の代替材料としてサーメットを使用することには限界がある。そこで、超硬合金の代替となり得る焼結体の原料として好適な硬質粒子の開発が求められている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、超硬合金に比べてWの使用量を削減でき、かつ超硬合金の代替となり得る強度と靭性を備えた焼結体の原料として好適な硬質粒子とその製造方法を提供することにある。
本発明者は、WCとWC以外の化合物とを硬質相に利用することを前提に、その硬質相の材質や形態を工夫することを鋭意検討した。その結果、特定材質のコアシェル構造の硬質粒子を用いて硬質相を構成することで、十分な耐摩耗性を確保しながら硬質相の熱伝導率を高め、特に焼結体の耐熱衝撃性を改善できるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づいてなされたもので、以下に示す硬質粒子及びその製造方法の各構成を有する。
〔硬質粒子〕
本発明の硬質粒子は、コアと、コアを覆うシェルとを備える硬質粒子である。この硬質粒子において、前記コアは、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素とWの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体を含有する。そして、前記シェルは、WCで構成されている。この明細書において、「Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素」を「主元素」ということがある。
この構成によれば、主元素にWが固溶された所定の複合固溶体を含有するコアと、WCからなるシェルを構成することにより、コアとシェルの線膨張係数差を小さくすることができる。そのため、コアにシェルを形成する際の熱履歴、或いはこの硬質粒子を原料として焼結体を製造する際の熱履歴によって、シェルが剥離したり、シェルに亀裂が生じたりすることを効果的に抑制できる。その結果、この硬質粒子を原料とした成形体の焼結時、シェルを熱伝導率の高いWCのまま維持することができ、焼結体の放熱性を向上させることで、特に耐熱衝撃性の高い焼結体とすることができる。これは、硬質粒子が剥離や割れの実質的に存在しないシェルを備えることで、焼結時、コアが液相と接触することを抑制し、コアの主元素が液相を介してシェルに固溶されて、シェルが熱伝導率の低い固溶体となることを抑制できるからであると考えられる。また、硬質粒子を全てWCで構成した場合に比べて、Wの使用量を低減することができる。なお、このWの固溶されたコアは、成形体の焼結時にシェルのWCからコアに固溶されて構成されたものよりも、原料粉末の段階で予めWが固溶されたコアを用いることで構成されたものであることが好ましい。また、Wの固溶された領域は、コアのうち、少なくともシェルとの界面部に形成することで、コアとシェルとの密着力を高めることができる。コアのシェルとの界面部におけるWの固溶化は、後述するように、硬質粒子の粉末製造時に行うことができる。
本発明の硬質粒子の一形態として、前記コアがTiを含有することが挙げられる。
コアがTiを含む所定の複合固溶体で構成されることにより、シェルを構成するWCとの線膨脹係数差が比較的小さく、かつWCに比べて硬度の高い材料でコアを構成することができる。
本発明の硬質粒子の一形態として、前記Wの固溶量が、主元素とWの合計に対する原子比で1〜30%であることが挙げられる。
コアがWを1〜30%固溶していると、シェルを構成するWCとの密着性が高まり、シェルがより一層剥がれ難くなる。この結果、本発明の硬質粒子を原料に用いて焼結体を製造した場合、高熱伝導率のWC骨格のネットワークが焼結後にも維持され易く、高熱伝導率の焼結体を製造できる。
本発明の硬質粒子の一形態として、前記コアの平均粒径は0.5μm以上であることが挙げられる。より好ましいコアの平均粒径は、2μm以上である。
この構成によれば、コアの平均粒径を特定することで、本発明の硬質粒子を原料に用いて焼結体を製造した場合、焼結体の熱伝導率の向上効果が得られ易い。
本発明の硬質粒子の一形態として、前記シェルの平均厚みは、前記コアの平均粒径の3%未満であることが挙げられる。
この構成によれば、高熱伝導率のWCからなるシェルが剥がれたり、シェルに亀裂が入ったりすることを防ぐことができる。この結果、本発明の硬質粒子を原料に用いて焼結体を製造した場合、その焼結中の液相にコアの構成材料が溶解し、シェルを構成するWCの上に再析出して、熱伝導率の低い(W,M)Cや(W,M)CN(Mは主元素)などが形成されることを防ぐことができ、焼結体の熱伝導率を向上させる効果が顕著になる。
本発明の硬質粒子の一形態として、硬質粒子の表面に鉄族金属の粉末又は膜からなる被覆層を備えることが挙げられる。
この構成によれば、鉄族金属の被覆層を有することで、この硬質粒子を含む原料粉末を成形して焼結することで、鉄族金属を結合相とする焼結体を得ることができる。
〔硬質粒子の製造方法〕
本発明の硬質粒子の製造方法は、コアの外側をシェルで覆って硬質粒子を製造する方法であって、次の工程を備える。
コア準備工程: Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiよりなる群から選択される一つ以上の元素とWとの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体を含むコアを準備する。
シェル成膜工程:前記コアの外側に、気相成長法により、700〜1100℃の成膜温度にてWCのシェルを成膜する。
シェルの成膜を気相成長法により行うことで、緻密なシェルを比較的容易に形成することができる。また、上記の温度範囲でWCを成膜すると、WCの結晶性が高くなり、シェルをより高熱伝導率にできる。また、この温度範囲で成膜を行うと、コアとシェルとの密着性が高くなり、WCの剥離や、それに伴い、後の焼結工程でシェルを構成するWCが主元素と固溶体化することによる熱伝導率の低下が抑制できるため、好ましい。
本発明の別の硬質粒子の製造方法は、コアの外側をシェルで覆って硬質粒子を製造する方法であって、次の工程を備える。
コア粒子準備工程: Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiよりなる群から選択される一つ以上の元素を含む非炭化物粒子、炭化物粒子、及び炭窒化物粒子から選択される少なくとも一種のコア粒子を準備する。
シェル層成膜工程:このコア粒子に、Wの非炭化物からなるシェル層を成膜して前駆体粒子を形成する。
加熱工程:この前駆体粒子を炭化又は炭窒化させて、少なくとも前記コア粒子とシェル層との境界面近傍に、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiよりなる群から選択される一つ以上の元素とWとの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体を含む領域を形成してコアとし、前記非炭化物のシェル層をWCのシェルとする。
この方法によっても、本発明の硬質粒子を製造することができる。また、この方法によれば、コアの全体が上記固溶体で構成される硬質粒子は勿論、コアの中心部は上記非炭化物粒子、炭化物粒子、及び炭窒化物粒子の少なくとも一つで、外周部が上記固溶体で構成されるコアを有する硬質粒子を形成することもできる。なお、非炭化物粒子には、金属元素の粒子の他、窒化物粒子も含まれる。
本発明の硬質粒子の製造方法の一形態として、前記気相成長法はCVD法であり、このCVD法にはCH3CNガスを用いることが挙げられる。
WCの成膜にCH3CNガスを用いると、脆性のW2Cよりも化学的に安定で高熱伝導率のWCを成膜し易く、中でも結晶性の高いWCを成膜できるため好ましい。
本発明の硬質粒子によれば、高熱伝導率で、特に耐熱衝撃性に優れた焼結体の原料として利用することができる。
本発明の硬質粒子の製造方法によれば、シェルに亀裂や剥離が少ない、或いは実質的に亀裂や剥離のないコアシェル構造の硬質粒子を得ることができる。
(A)は本発明硬質粒子の一例を示す模式図、(B)は本発明硬質粒子を用いて作製した焼結体の組織の一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔概要〕
本発明の硬質粒子10は、図1(A)にその一例を示すように、コア11の外周をシェル12で覆ったコアシェル構造の粒子で構成される。コア11は、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiよりなる群から選択される一つ以上の元素(主元素)と、Wと、C及びNの少なくとも一方とを含む固溶体で構成される。シェル12は、WCで構成されている。一方、この硬質粒子10を原料粉末に用いた焼結体は、図1(B)にその一例を示すように、硬質相10Pを結合相20で結合した焼結体で構成される。そして、この硬質相10Pが、上記硬質粒子10で構成されている。以下、この硬質粒子10とその製造方法を順次詳しく説明する。
〔硬質粒子〕
この硬質粒子は、コアシェル構造を有する。本発明硬質粒子のコアシェル構造は、従来のサーメットにおいて、特許文献1などに硬質相粒子として開示される有芯構造とは異なる。従来のサーメットは、例えばTiCNとWC、さらにNiおよびCoの少なくとも一方を原料粉末に用い、焼結過程で生じるNiおよびCoの少なくとも一方の液相へのTiCNとWCの構成元素の固溶に伴い、焼結および冷却過程で生成したTiCNの内芯部と、(Ti,W)CNの周辺部とを有する有芯構造の硬質相粒子としている。これに対し、本発明の硬質粒子は、原料粉末の段階で所定の固溶体からなるコアにWCのシェルを被覆したコアシェル構造の複合粒子を用い、焼結過程におけるコアとシェルとの間での両者の構成元素の拡散を最小化する。そのため、シェルは高熱伝導率のWCをそのまま残存できるため、(Ti,W)CNよりも高熱伝導率であり、Tiが実質的に固溶しないWCにより構成されている。
<コア>
コアは、コアシェル構造の硬質粒子の中心部を構成し、十分な硬度を備えることで、主に焼結体の耐摩耗性の向上に寄与する機能を有する。
《材質》
コアの材質は、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素とWの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体とする。具体的には、(Ti,W)C、(Ti,W)N、(Ti,W)(C,N)、(Ti,Mo,W)C、(Ti,Mo,W)N、(Ti,Mo,W)(C,N)、(Ti,Nb,W)C、(Ti,Nb,W)N、(Ti,Nb,W)(C,N)、(Ti,Mo,Nb,W)(C,N)、(Ti,Mo,Nb,Zr,W)(C,N)、(Cr,W)C、(Cr,W)N、(Cr,W)(C,N)、(Ti,Ta,W)C、(Ti,Ta,W)N、(Ti,Ta,W)(C,N)、(Nb,Ta,W)C、(Nb,Ta,W)N、(Nb,Ta,W)(C,N)、(Zr,W)C、(Zr,W)N、(Zr,W)(C,N)などが挙げられる。特に、Tiを含む固溶体、例えば(Ti,W)C、(Ti,W)N、(Ti,W)(C,N)、(Ti,Mo,W)C、(Ti,Mo,W)N、(Ti,Mo,W)(C,N)、(Ti,Nb,W)C、(Ti,Nb,W)N、(Ti,Nb,W)(C,N)、(Ti,Zr,W)N、(Ti,Zr,W)(C,N)、(Ti,Zr,W)C、(Ti,Mo,Nb,W)(C,N)、(Ti,Mo,Nb,Zr,W)(C,N)などが好適に利用できる。
これらの固溶体は、WCに対する線膨張係数差が、Wの固溶されていないTiの窒化物などと比べて小さく、WCを高温でコアに被覆してシェルを形成した後の冷却過程でシェルの亀裂発生や剥離を抑制する。この線膨張係数差の僅少性は、硬質粒子の粉末と結合相粉末とを含む成形体の焼結時の熱履歴においても、シェルの損傷抑制に寄与する。WCのシェルが部分的に剥がれたコアシェル構造の粉末を液相存在下で焼結すると、シェルから露出したコアの主元素が液相に固溶してシェルのWCなどと反応し、コア上やシェル上に再析出するときに(Ti,W)CNなどの固溶体として析出して、焼結体の熱伝導率の低下を招き易くなる。このため、コアの線膨張係数をWCの線膨張係数に近づけて剥離し難いシェルを形成することは、高熱伝導率の焼結体を獲得するためには重要となる。各材料の線膨張係数は、WC<MWX(Mは主元素、XはC、Nの少なくとも一方)<TiC<TiCN<TiNの関係にある。また、各材料の熱伝導率は、MWX<TiC<TiCN<TiN≪WCの関係にあり、WCはTiNの約3倍、TiCの約4倍の熱伝導率を持つ。
Wの固溶量は、主元素とWの合計に対する原子比で1〜30%であることが好ましい。コアがWを1〜30%固溶していると、シェルを構成するWCとの密着性が高まり、シェルが剥がれ難くなるため、上述したWC(シェル)の固溶体化が進み難くなる。この結果、高熱伝導率のWC骨格のネットワークが焼結後にも維持され易く、高熱伝導率の焼結体を製造できる。
硬質粒子からなる粉末は、全ての硬質粒子のコアを同じ材質で構成しても良いし、異なる材質からなるコアの硬質粒子が混在していても良い。また、コアとシェルとの界面部にのみ、両者の構成元素の固溶体が形成されている場合でも、本発明の効果は期待できる。
《サイズ》
コアの平均粒径は0.5μm以上とすることが好ましい。硬質相の粒径が小さいと、粒界が多くなるため、焼結体の熱伝導率が低下する。そのため、コアの平均粒径を0.5μm以上とすれば、焼結体の熱伝導率の向上効果が得られ易い。また、このようなサイズのコアの粒子は製造し易い。特に、焼結体の高熱伝導化を考慮すると、この平均粒径は1.5μm以上、さらには2μm以上とすることが好ましい。一方、コアの平均粒径の上限は7μm程度である。コアの平均粒径が7μm以下であれば、高強度の焼結体が得られ易いからである。この平均粒径は、焼結体に対して切断面を平面研削後に鏡面研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影を行い、フルマンの式を用いて算出した値である。なお、本発明の硬質粒子を原料とした焼結体におけるコアの平均粒径(焼結後の平均粒径)は、後述するように粉砕メディアを用いない混合方法を経て製造されると好ましく、その場合、原料粉末におけるコアの平均粒径がほぼ維持されている。
<シェル>
シェルは、コアの外周を覆い、焼結体の靭性を確保すると共に、焼結体中に高熱伝導率の熱伝導パスを形成することを主たる機能とする。
《材質》
シェルがWCからなることにより、焼結体中に優れた熱伝導率を有するWC骨格のネットワークを形成し易く、焼結体の熱伝導率を高めることができ、従来のサーメットの欠点である耐熱衝撃性の低さを改善できる。この効果はシェルをW2Cとした場合に比べて明らかに大きい。これはWCの熱伝導率がW2Cのそれよりも大きいためと考えられる。W2CはWCよりも20〜30%程度硬く、耐摩耗性の向上が期待できるが脆性であり、焼結体の熱伝導率を向上させ、従来のサーメットの欠点である耐熱衝撃性の低さを大きく改善するには、シェルにW2CでなくWCを採用する意義は非常に大きい。また、シェルがWCであることにより、鉄族金属との濡れ性に優れるため、結合相原料として鉄族金属を用いると焼結性が向上して緻密な焼結体を得ることができ、耐欠損性に優れた焼結体とできる。結合相原料を用いない場合でも、シェルを構成するWCの優れた焼結性により、緻密な焼結体を得ることができる。
《厚さ》
WCで構成されるシェルの平均厚みは0.01〜2μm程度であることが好ましい。これは、平均厚みが0.01μm以上であればシェルを熱伝導パスとして焼結体を高熱伝導化する効果が得られ易く、2μm以下であればシェルに亀裂が生じ難く、やはり焼結体を高熱伝導化する効果が得られ易いためである。特に、焼結体の高熱伝導化の効果を顕著にするには、シェルの平均厚みを0.02μm以上、特に0.04μm以上とすることが好ましく、シェルの亀裂をより確実に抑制するには、シェルの平均厚みを1.5μm以下、特に0.3μm以下とすることが好ましい。この平均厚みの測定は、焼結体の切削面を集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工して、透過型電子顕微鏡(TEM)で写真撮影を行い、複数の硬質粒子における10点以上の測定点のシェルの厚みをフルマンの式を用いて算出することにより行う。
また、WCで構成されるシェルの平均厚みをコアの平均粒径との比率で示すと、コアの平均粒径の3%未満であることが好ましい。これは、前記比率を3%未満とすることで前述の理由により焼結体の高熱伝導化の効果が大きくなるためである。
その他、シェルの亀裂抑制のために好ましい条件としては、コアシェル構造の複合粒子に占めるコアの体積含有率をシェルの体積含有率よりも大きくすることが挙げられる。コアのサイズに応じて、一定比率未満の厚みのシェルが形成されていれば、シェルの亀裂発生を抑制し易い。
<結合相金属の被覆層>
上記の硬質粒子は、さらに結合相金属からなる被覆層をシェルの外側に備えていても良い。結合相金属としては、Co、Niなどの鉄族金属が好適に利用できる。結合相金属の被覆層を備えることで、この硬質粒子を含む原料粉末を成形体とし、その成形体を焼結することで、コアシェル構造の硬質相を有する焼結体を得ることができる。特に、シェルの外側を結合相金属の被覆層で覆うことで、硬質粒子の粉末を混合する際に、シェルが損傷することを抑制できる。
この結合相金属の被覆層は、シェルの外側に結合相金属の粉末を付着させた構成でも良いし、シェルの外側に結合相金属の膜を形成した構成でも良い。前者の構成は、比較的容易に結合相の被覆層を形成できる。後者の構成は、硬質粒子の粉末を混合する際に、シェルが損傷することを特に効果的に抑制できる。
この被覆層の厚みは、シェルの外側をほぼ満遍なく覆うことができる程度で、かつ過度に厚くならず容易に剥離しない程度とすればよい。
〔硬質粒子の製造方法〕
本発明の硬質粒子は、代表的には、コアの準備→シェルの成膜という工程を経て製造される。
{準備工程}
準備工程では、まずコアとなる粒子からなる粉末(コア粉末)を用意する。つまり、Wと、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiよりなる群から選択される一つ以上の元素(主元素)と、C及びNの少なくとも一方とを含む固溶体で構成されるコア粉末を用意する。このコア粉末は、材種によっては、市販品が利用できる。一方、主元素に対するWの固溶量を調整したコア粉末を得るには、例えば、主元素とWの各粉末を所定量の比で配合し、1700〜2000℃程度の温度で炭化することで得られる。例えば、グラファイトヒータを高周波加熱してバッチ式で炭化したり、水素雰囲気炉で黒鉛ボートに入れた粉末をMoヒータで抵抗加熱しながら連続的に炭化したりする方法を用いることができる。また、炭窒化物粉末、窒化物粉末の製造には窒素ガスを用いればよい。
{成膜工程}
成膜工程では、準備したコアの外側にシェルとなるWCを成膜する。このシェルの形成には、CVD法、PVD法などの気相成長法の他、ゾルゲル法などの液相法を用いることができる。シェルの成膜を気相成長法により行うことで、緻密なシェルを比較的容易に形成することができる。
例えば、CVD法の場合には、コア粉末を容器に入れ、その容器を真空引き後に、容器を回転させながら所定のガスを容器内に導入して、所定の温度で保持することにより、コア粉末の各粒子の表面にWCのシェルを成膜する。容器を回転させることで、コア粉末の各粒子に満遍なくシェルを成膜することができる。容器に導入するガスとしては、原料ガスとしてタングステンのフッ化物(例えばWF6ガス)とメタン(CH4)若しくはアセトニトリル(CH3CN)が挙げられ、キャリアガスとして水素若しくはアルゴンガスが挙げられる。特に、CH3CNガスを用いると、脆性のW2Cよりも化学的に安定で高熱伝導率のWCを成膜し易く、中でも結晶性の高いWCを成膜できるため好ましい。成膜温度は700〜1100℃程度が好ましい。この温度範囲でWCを成膜すると、WCの結晶性が高くなり、WC中での結晶欠陥に伴うフォノンの散乱を抑制でき、シェルを高熱伝導率にできる。また、この温度範囲で成膜を行うと、コアとシェルとの密着性が高くなり、WCの剥がれや、それに伴う焼結工程でのWCの主元素との固溶体化によるシェルの熱伝導率の低下が抑制できるため、好ましい。
一方、PVD法の場合には、例えば次の方法が挙げられる。まず、コア粉末を容器に入れ、その容器を真空引き後に、容器を回転させながらタングステン製ターゲットを用いてタングステンをコア粉末にスパッタ蒸着する。次に、得られたタングステン被覆コア粉末を1300〜1700℃程度の温度で炭化してコア粉末の各粒子表面にWCを形成させる。
また、別の硬質粒子の製造方法では、コア粒子の準備→非炭化層の成膜→非炭化層を形成したコア粒子の加熱という工程を経て硬質粒子を製造することもできる。例えば、CVD法、PVD法、ゾルゲル法でWやWO3の層を後にシェルとなる非炭化層としてコア粒子の表面に成膜し、その後、非炭化層を炭化してWCからなるシェルを得る。この場合、コア粒子にはWを固溶した固溶体を用いず、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素を含む非炭化物粒子、炭化物粒子、及び炭窒化物粒子から選択される少なくとも一種のコア粒子を用いる。コア粒子の具体的な構成材料としては、Ti,Mo,Nb,Zr,その炭化物、炭窒化物及び窒化物の少なくとも一つなどが挙げられる。コア粒子に非炭化層を成膜した前駆体粒子の粉末は所定の高温に保持する。この加熱工程では、非炭化層をWCのシェルとすると共に、コア粒子の少なくとも一部をWと固溶体化する。具体的には、コア粒子と非炭化層との界面部でコア粒子の構成元素をWと固溶体化させてコアを形成する。この方法により、コアとシェルとの密着力を高めることができる。勿論、界面部のみならず、コア粒子全体をWと固溶体化させても良い。上記加熱工程での保持温度は、1500℃以上が好ましい。
{結合相金属の被覆層の形成工程}
さらに、必要に応じて、シェルの外側に結合相金属の被覆層を形成する。上述したように、この被覆層は、粉末から構成される場合と、膜から構成される場合がある。粉末の被覆層の場合、例えば、結合相金属の粉末をシェルの外側に適宜な接着剤を介して付着させる。この接着剤としては、PVA(ポリビニルアルコール)やPVB(ポリビニルブチラール)などの樹脂系接着剤、エチレングリコール、グリセリンなどの可塑剤などが挙げられる。膜の被覆層の場合、例えば、気相合成法、より具体的には、CVD法や結合相金属をターゲットとするPVD法などによりシェルの外側に成膜することで形成できる。
〔焼結体の製造方法〕
次に、上記の本発明の硬質粒子からなる粉末を原料粉末に用いた焼結体の製造方法を説明する。この焼結体は、代表的には、原料粉末の準備→混合→成形→焼結・冷却という工程を経て製造される。
{準備工程}
準備工程では、本発明の硬質粒子からなる粉末を含む硬質相粉末と、結合相粉末とを準備する。但し、本発明の硬質粒子が結合相金属の被覆層を有する場合、結合相粉末の準備を省略することもできる。本発明の硬質粒子からなる粉末については既に述べたため、以下の説明は主にその他の原料粉末について述べる。
<その他の硬質相粉末>
硬質相粉末は、上述した本発明の硬質粒子の粉末だけでもよいが、必要に応じて他の硬質相粉末を添加しても良い。他の硬質相粉末としては、周期率表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも一種の金属元素とC及びNの少なくとも一種の元素との化合物、即ち、上記金属元素の炭化物、窒化物、及び炭窒化物の少なくとも一種が利用できる。特に、WCが好適に利用できる。WCを含むと焼結体の耐熱衝撃性、耐欠損性をさらに高めることができる。TaCとNbCの少なくとも一方を含むと鋼に対する耐反応性を向上でき、ZrC、ZrCN、及びZrNの少なくとも一種を含むと高温での焼結体の強度を向上させることができる。
<結合相>
《材質》
結合相は硬質相の粒子を結合する材料で、鉄族金属が好ましい。特に、CoとNiの少なくとも一方は硬質相と濡れ性が高く好ましい。結合相がCoを主体とすると特に焼結性が向上し、焼結体を緻密とし易く、強度、破壊靱性を向上できる。一方、Niは耐食性に優れる。また、結合相中にはW、Cr、Ru、Cなど、硬質相の構成元素が固溶していても構わない。特にW、Cr、Ruの少なくとも一種の固溶量が多いと結合相が固溶強化され、焼結体の靭性を向上できて好ましい。
《含有量》
結合相は、焼結体全体に対して3質量%以上20質量%以下含有することが好ましい。結合相の含有量が多いほど焼結体の靱性や焼結性が高くなる傾向があり、少ないと強度や靭性が低下する傾向にある。
{混合工程}
上述した各原料粉末は、適宜な混合手段でできるだけ均一に混合して混合粉末とされる。この混合工程においては、本発明硬質粒子のコアシェル構造を損傷しないように原料粉末を混合することが重要である。つまり、この混合工程では、シェルに亀裂が生じたり、剥離が生じたりすることのないような混合手段を選択する。具体的には、例えば、原料粉末にエタノールやアセトンなどの有機溶媒を合わせてスラリーとし、このスラリーに超音波を照射しながら、粉砕メディアを用いることなく混合する。この混合方法によれば、原料粉末を実質的に粉砕することなく、かつシェルを損傷させることなく原料粉末を混合することができる。本発明硬質粒子が結合相の被覆層を備える場合や、そうでない場合でもメディアの径を小さくしたビーズミルなどの衝撃力の小さい粉砕メディアを用いた混合方法の利用も期待できる。
原料粉末を混合して混合粉末としたら、通常、この混合粉末にバインダを加え、スプレードライヤーなどの乾燥手段を用いて噴霧乾燥して造粒する。バインダとしては、パラフィンワックスやポリエチレングリコールなどが挙げられる。このバインダの含有量は、上記原料粉末とバインダの合計に対して、1〜4質量%程度が好ましい。
{成形工程}
混合工程で得られた混合粉末の成形は、混合粉末を金型に充填し、所定の圧力で所定の形状に成形する。成形方法としては、乾式加圧成形法、冷間静水圧成形法、射出成形法、押出成形法などが挙げられる。この成形時の圧力は、50〜200MPa程度が好ましい。また、成形体の形状は、求められる製品の形状に応じて、過度に複雑形状とならないような適宜な形状を選択する。最終的な製品形状へは、必要に応じて、仮焼後もしくは焼結後に適宜な機械加工を行えばよい。
{焼結工程}
成形体の焼結は、液相の生じる温度域で成形体を所定時間保持して行うことが好適である。焼結温度は1300℃以上1600℃以下程度が好ましい。焼結温度を高くし過ぎると、硬質相を構成する粒子が成長し易い。保持時間は0.5時間以上2.0時間以下程度、特に1.0時間以上1.5時間以下程度が好ましい。加熱時の雰囲気は、窒素,アルゴンなどの不活性ガス雰囲気又は真空(0.1〜0.5Pa程度)、又は減圧水素雰囲気とすることが好ましい。
この焼結工程において、原料粉末の段階からシェルに亀裂や剥離などの損傷が実質的にない本発明の硬質粒子を用いているため、シェルがバリアとなって液相がコアに接触することを阻止し、コアとシェルの間で構成元素同士の相互拡散が抑止される。また、シェル表面の一部が液相に溶解しても、シェル上に再析出するだけである。その結果、シェルは、コアの主元素が固溶されて熱伝導率の低い固溶体となることなく、WCのまま維持される。もし本発明の硬質粒子の一部のシェルに亀裂や剥離があったとしても、そのような硬質粒子はごく一部のため、大半の硬質粒子のシェルはTiWCやTiWCNなどの熱伝導率の低い固溶体とならず、WCのまま維持される。本発明の硬質粒子からなる粉末全体のうち、シェルに亀裂や剥離が認められない粒子の割合は、70%以上、さらには80%以上、特に90%以上であることが好ましい。この割合は、SEMやTEMによる焼結体の断面の観察により、(シェルに亀裂や剥離が認められない硬質粒子の数/硬質粒子の全数)×100を算出することで求める。その際、硬質粒子の全数は30個以上となるように、必要に応じて複数視野での観察を行う。
また、焼結工程において、焼結温度を所定の時間保持して加熱した成形体を冷却する際、真空、又はアルゴン(Ar)といった不活性ガス雰囲気で冷却することが好ましい。
<試験例1:コアの組成の相違>
コアの組成が異なる複数種のコアシェル構造の硬質粒子を作製し、さらにその硬質粒子を原料粉末に含む焼結体を作製して、硬質粒子の評価及び焼結体の評価を行う。
コア粉末として表1に記載の各種粉末を準備し、その粉末をステンレス製容器に装入して真空引きした後、容器を回転させながら、1000℃に容器を加熱して、WF6ガスとCH3CN、H2、Arガスを流し、圧力6kPaの条件でコア粉末の各粒子(コア)にWC(シェル)を被覆する。このCVD法により、コアシェル構造を有する硬質粒子からなる複合粉末を作製する。
得られた複合粉末について、シェルの亀裂の有無、及び混合後のシェルの剥離の有無を調べた。シェルの亀裂の有無は、複合粉末中の30個以上の硬質粒子を顕微鏡で観察し、シェルに亀裂があるか否かを調べる。亀裂の認められる硬質粒子の割合が30%以上である場合を「あり」、亀裂の認められる硬質粒子の割合が30%未満の場合を「少ない」、亀裂が認められない場合を「なし」と評価する。混合後のシェルの剥離は、得られた複合粉末をボールミルで30分間混合し、その混合後の複合粉末を顕微鏡で観察して、シェルの剥離が認められるかどうかを調べる。剥離の認められる硬質粒子の割合が30%以下の場合を「一部発生」、この割合が30%超の場合を「剥がれ多い」と評価する。これらの結果も表1に示す。
次に、上記複合粉末でボールミルによる混合を行っていないものを含む原料粉末を用いて、焼結体を作製する。原料粉末には、上記複合粉末の他に、Co、TaC、Cr3C2を用意する。原料粉末の組成は、質量%で、複合粉末:87.5%、Co:10%、TaC:2%、Cr3C2:0.5%である。この原料粉末を、複合粉末のシェルを壊さないように混合する。具体的には、粉砕メディアを用いずに超音波を用いてエタノール中で原料粉末を混合する。続いて、これらの混合粉末を樟脳とエタノールを用いて造粒し、1ton/cm2(約98MPa)の圧力でプレス成型して成形体とする。その後、最高温度1410℃、1時間保持の条件で真空下にて成形体を焼結して、焼結体を得る。焼結体の組成はほぼ原料粉末の配合組成と一致していることをEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)にて確認できる。また、コアの平均粒径は、焼結体に対して切断面を平面研削後に鏡面研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影を行い、フルマンの式を用いて算出した値であり、原料粉末の平均粒径と実質的に一致している。
得られた焼結体について、硬質粒子のシェルの平均厚み、コア−シェル間の接合状態、及び有孔度を調べる。シェルの平均厚みは、焼結体の切削面を集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工して、透過型電子顕微鏡(TEM)で写真撮影を行い、複数の硬質粒子における10点以上の測定点のシェルの厚みをフルマンの式により平均することにより求める。コア−シェル間の接合状態は、上記TEMによる写真から30個以上の硬質粒子について、コアとシェルとの間の剥離の有無を調べる。剥離の認められる硬質粒子の割合が10%以下の場合を「良好」、この割合が10%超30%以下の場合を「一部に剥離あり」、30%超50%以下の場合を「剥離あり」、50%超の場合を「剥離多い」と評価する。有孔度は、ANSI/ASTM B276-54の規定に基づいた方法で調べる。これらの結果も表1に示す。
Figure 2013108152
表1に示すように、主元素にWが固溶された複合固溶体をコアとする試料No.1-1〜1-8は、いずれもWの固溶されていないコアを有する試料1-11〜1-18に比べて、シェルを成膜した段階において、シェルの亀裂が少ないだけではなく、ボールミルによる混合を行った後でもシェルの剥離が少ないことがわかる。また、試料No.1-1〜1-8は、焼結体とした後においても、コア−シェル間の剥離が少なく、巣の少ない緻密な焼結体が得られることがわかる。シェルに亀裂や剥離が少ない場合に、焼結体の巣が少なくなるのは、シェルを構成するWCと結合相との濡れ性が優れるからであると考えられる。巣の少ない焼結体は、例えば切削工具とした場合に、欠損が少なく、信頼性に優れた加工が行えると期待される。特に、主元素にTiを含む場合、巣の少ない焼結体を得ることができる。
<試験例2:Wの固溶量の相違>
次に、Tiを主元素とし、Wの固溶量が異なるコアを用いてコアシェル構造の硬質粒子を作製し、この硬質粒子及びその硬質粒子を原料粉末に含む焼結体に対して試験例1と同様の評価を行う。
Wの固溶量の異なるコアの粒子は、TiとWを所定量の比で配合し、1700〜2000℃程度の温度で炭化することで得られる。シェルの形成方法、焼結体の作製条件は試験例1と同様である。また、各種試験の方法も試験例1と同様である。但し、ボールミルで混合後のシェルの剥離の有無に関し、「剥がれ極少」は、剥離の認められる硬質粒子の割合が20%以下(F<B)であることを示す(他の試験例でも同様)。硬質粒子の条件及び各試験結果を表2に示す。なお、本試験例の硬質粒子は、コアの平均粒径に対するシェルの平均厚みが3%以下である。
Figure 2013108152
表2に示すように、Wの主元素とWの合計に対する固溶量が原子比で1〜30%の場合に、シェルの剥離が少なく、コアに対して密着性の高いシェルを形成できることがわかる。それに伴って、得られる焼結体も巣を少なくできる。
<試験例3:コアの粒径の相違>
次に、主元素がTiで、異なる粒径のコアを有するコアシェル構造の硬質粒子を複数種用意し、各硬質粒子及びその硬質粒子を原料粉末に含む焼結体に対して試験例1と同様の評価を行う。但し、本試験例では、造粒前の原料粉末で凝集が発生したか否かについても調べた。硬質粒子の条件及び各試験結果を表3に示す。
Figure 2013108152
表3に示すように、いずれの試料もシェルの剥離や亀裂が十分に抑制できていることがわかる。また、コアの平均粒径が2μm以上の場合に、原料粉末の凝集の発生がなく、原料粉末を取り扱い易いことがわかる。
<試験例4:シェルの厚みの相違>
次に、コアの主元素がTiとNbで、シェルの平均厚みが異なるコアシェル構造の硬質粒子を複数種用意し、各硬質粒子及びその硬質粒子を原料粉末に含む焼結体に対して試験例1と同様の評価を行う。シェルの平均厚みは、主としてシェルの成膜時間を変えることで調整できる。硬質粒子の条件及び各試験結果を表4に示す。
Figure 2013108152
表4に示すように、いずれの試料もシェルの剥離や亀裂が十分抑制できているが、特にシェルの平均厚みが0.08μm以下の場合に、その効果が顕著であり、焼結体とした場合も巣が非常に少ない。
<試験例5:結合相の被覆層がある硬質粒子>
次に、コアの主元素がTiとNbのコアシェル構造の粒子で、さらに結合相の被覆層を有する硬質粒子を用意し、各硬質粒子及びその硬質粒子を原料粉末に含む焼結体に対して試験例1と同様の評価を行う。
本試験例では、試験例4の試料No.4-2に対し、さらに結合相の被覆層を形成した2種類の硬質粒子を用いた。その一方は、結合相の被覆層がCoの粉末から構成される試料No.5-1であり、他方は結合相の被覆層がCoの膜から構成される試料No.5-2である。試料No.5-1は、平均粒径0.5μmのCo粉末を試料No.4-2のシェルの外側にPVBで付着させることで構成される。Co粉末の付着量は10質量%とした。試料No.5-2は、試料No.4-2のシェルの外側にめっき法によりCoの膜を成膜することにより構成される。Co膜の成膜量は10質量%とした。この試料No.5-1、5-2のコアシェル構造の粉末を原料粉末に含めて焼結体を作製する際、原料粉末の組成は、質量%で、結合相の被覆層を有する複合粉末:96.25%、Co:1.25%、TaC:2%、Cr3C2:0.5%である。硬質粒子の条件及び各試験結果を表5に示す。
Figure 2013108152
表5に示すように、いずれの試料も原料粉末の段階においてはシェルの亀裂や剥離が十分に抑制されており、焼結体の段階においては巣が非常に少ないことがわかる。特に、結合相の被覆層を有する複合粉末をボールミルで混合した場合でもシェルの剥離が認められていない。また、焼結体も巣の少ない組織になっていることが確認できた。これは、結合相の被覆層により、Coの分散性が向上し、焼結性が向上したためと考えられる。
今回開示された実施の形態および試験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の硬質粒子は、従来の超硬合金の代替原料としての利用が期待される。特に、この硬質粒子は、鋼と反応し難いことから、焼結体とした場合に、鋼加工用の切削工具として好適に利用することができる。また、本発明の硬質粒子の製造方法は、切削工具の製造分野などに利用することができる。
10 硬質粒子(硬質相) 10P 硬質相
11 コア 12 シェル
20 結合相

Claims (9)

  1. コアと、コアを覆うシェルとを備える硬質粒子であって、
    前記コアは、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素とWの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体を含有し、
    前記シェルは、WCで構成されていることを特徴とする硬質粒子。
  2. 前記コアがTiを含有することを特徴とする請求項1に記載の硬質粒子。
  3. 前記Wの固溶量が、Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素とWの合計に対する原子比で1〜30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質粒子。
  4. 前記コアの平均粒径は0.5μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬質粒子。
  5. 前記コアの平均粒径は2μm以上であることを特徴とする請求項4に記載の硬質粒子。
  6. 前記シェルの平均厚みは、前記コアの平均粒径の3%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬質粒子。
  7. 前記硬質粒子の表面に鉄族金属の粉末又は膜からなる被覆層を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬質粒子。
  8. コアの外側にシェルを形成する硬質粒子の製造方法であって、
    Wを除く周期律表4、5、6族元素及びSiから選択される一つ以上の元素とWの炭化物、窒化物及び炭窒化物の少なくとも一種の固溶体を含有するコアを準備する工程と、
    前記コアの外側に、気相成長法によりWCのシェルを成膜する工程とを備え、
    この成膜する工程における成膜温度が700〜1100℃であることを特徴とする硬質粒子の製造方法。
  9. 前記気相成長法はCVD法であり、
    このCVD法にはCH3CNガスを用いることを特徴とする請求項8に記載の硬質粒子の製造方法。
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