JP2013006722A - 合成石英ガラス母材の製造方法及び合成石英ガラス母材 - Google Patents

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司明 根岸
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Abstract

【課題】設備にかかわりなく合成石英ガラス母材の径方向のΔnの均質性を高める。
【解決手段】バーナ1による酸水素火炎中でシリカガラス原料を加水分解してシリカ微粒子を生成するとともに、前記シリカ微粒子を堆積することで多孔質シリカ母材3を生成し、多孔質シリカ母材3を焼結して中心部のOH基濃度が25ppm以上50ppm以下の合成石英ガラス母材4を製造する方法であって、多孔質シリカ母材3の径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上となるように、堆積中の堆積面温度を調整することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、合成石英ガラス母材の製造方法及び合成石英ガラス母材に関する。
合成石英ガラス母材の比屈折率差(以下「Δn」という)の均質性は、合成石英ガラス母材のOH基濃度の均質性に依存している(特許文献1参照)。
一般に合成石英ガラス母材のOH基濃度は、シリカ微粒子を堆積してなる多孔質シリカ母材の焼結時に、OH基が多孔質シリカ母材の外側から抜けていくため、合成石英ガラス母材の中心部が高く、径方向外側に向かうにつれて低くなっている。
合成石英ガラス母材のΔnの均質性を高めるには、全体のOH基濃度を低くして合成石英ガラス母材の中心部と径方向外側のOH基濃度の差を小さくすることでも達成できるが、OH基濃度が低いと、紫外線照射によりE’センター(紫外線照射により生じるSi・構造、215nmにピークを持つ吸収帯)等のガラス欠陥が生じるという問題がある。
合成石英ガラス母材のガラス欠陥を抑制するには、OH基濃度を高くすることで達成でき、例えば合成石英ガラス母材をスス付け法により製造することによってOH基濃度を高めにすることはできるが、前述のように多孔質シリカ母材の焼結時にOH基が多孔質シリカ母材の外側から抜けていくため、合成石英ガラス母材の中心部と径方向の外周部とのOH基濃度差が大きくなってしまい、その結果、合成石英ガラス母材のΔnの均質性が低下するという問題がある。
特開平7−53225号公報
このような合成石英ガラス母材のΔnの均質性が低下するのを防止するため、多孔質シリカ母材の平均かさ密度を高くすることにより焼結時にOH基を抜けにくくし、合成石英ガラス母材の中心部と径方向の外周部とのOH基濃度差を小さくすることが提案できる。
多孔質シリカ母材のかさ密度を高くするには、例えば、シリカ微粒子の堆積中の成長軸方向の成長速度を遅くすること(すなわち長時間同じ位置で堆積させる)で達成できる。
しかしながら、成長軸方向の成長速度を遅くする、ということは、長時間同じ位置で堆積させることになり、多孔質シリカ母材の堆積径が大きくなることになる。したがって、この方法において、径方向のΔnの均質性を満足するかさ密度にするには、設備的に大きな母材を収容できる反応容器が必要となるため、設備的な点において難しいものであった。
本発明は、このような問題を解決することを課題とするものである。すなわち、設備にかかわりなく合成石英ガラス母材の径方向のΔnの均質性を高めることが本発明の目的である。
前記目的を達成するため、本発明に係る合成石英ガラス母材の製造方法及び合成石英ガラス母材は、次の構成を具備する。
バーナによる酸水素火炎中でシリカガラス原料を加水分解してシリカ微粒子を生成するとともに、前記シリカ微粒子を堆積することで多孔質シリカ母材を生成し、該多孔質シリカ母材を焼結して中心部のOH基濃度が25ppm以上50ppm以下の合成石英ガラス母材を製造する合成石英ガラス母材の製造方法であって、前記多孔質シリカ母材の径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上となるように、堆積中の堆積面温度を調整することを特徴とする。
堆積中の前記堆積面温度が922℃以上となるように、酸水素流量及び/又はバーナ径を調整することが好ましい。
また、前記バーナ径が、前記多孔質シリカ母材の最終外径に対して1/3.2倍以上であることが好ましい。
前述の製造方法で製造された合成石英ガラス母材であって、この合成石英ガラス母材中心部のOH基濃度が25ppm以上50ppm以下であり、この合成ガラス母材の中心から最終外径の径方向80%の範囲のOH基濃度の差が15ppm以下であることが好ましい。
このような特徴を有することで本発明は以下の効果を奏する。すなわち、多孔質シリカ母材の径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上となるように、堆積面温度を調整することで、設備にかかわりなく合成石英ガラス母材の径方向のΔnの均質性を高めることができる。
合成石英ガラス母材を製造する製造装置の一例を示す概略構成図である。 平均かさ密度と、合成石英ガラス母材の中心から径方向80%の範囲のOH基濃度差との関係を示す。 堆積中の堆積面温度と平均かさ密度との関係を示す。 スス外径/バーナ径と平均かさ密度との関係を示す。
以下、本発明に係る合成石英ガラス母材の製造方法の一実施形態を図1に基づいて説明する。
合成石英ガラス母材4は、排気装置1Aを有する反応容器A内において、シリカガラス原料とH2ガスとO2ガスとをバーナ1に供給し、バーナ1が噴出する酸水素火炎中でシリカ微粒子(以下「スス」という)を生成させ、生成したススを、成長軸方向に引き上げながら軸方向を中心として回転する出発棒2に対して堆積(以下「スス付け」という)させて多孔質シリカ母材3を製造し(図1(a))、製造された多孔質シリカ母材3を、焼結炉Bに挿入して焼結することにより(図1(b))、透明な円柱状に製造されたものである。
多孔質シリカ母材3を製造する具体的なスス付け法としては、気相軸付け法(VAD法)、外付け化学気相堆積法(OVD法)等が用いられる。
このように製造された合成石英ガラス母材4は、特に短波長を用いたステッパ等の露光機に好適であり、YAGレーザ等、固体レーザを用いた加工機、あるいはドライ洗浄等に用いられる紫外線エキシマランプ等にも適用される、光学系部材の材料となる透過特性に優れた高純度の合成石英ガラスの母材となる。
本実施形態の合成石英ガラス母材4は、径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上の多孔質シリカ母材を加熱焼結することによって、OH基濃度が径方向で均一になるように製造したものである。
図2に示すように、径方向の平均かさ密度を0.6g/cm3以上とした多孔質シリカ母材3を加熱焼結してなる合成石英ガラス母材4は、中心から径方向80%の範囲のOH基濃度の差が15ppm以下となることが測定された。このように、径方向の平均かさ密度を0.6g/cm3以上とすることで、径方向のOH基濃度の差を15ppm以下の、均質な状態とすることができる。なお、この時の合成石英ガラス母材4中心部のOH基濃度は、25〜50ppm程度であり、この程度のOH基濃度があれば、紫外線照射時に合成石英ガラス母材に生じるE’センター等のガラス欠陥の発生を抑えることができる。
しかしながら、図2に示すように、径方向の平均かさ密度を0.6g/cm3未満とした多孔質シリカ母材3を加熱焼結することによって製造された合成石英ガラス母材4は、中心から径方向80%の範囲のOH基濃度差が15ppmを超える結果となった。
この結果から、中心から径方向80%の範囲のOH基濃度差が15ppm以下となる合成石英ガラス母材4は、径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上の多孔質シリカ母材3を焼結することにより製造することができることが分かった。これは、径方向の平均かさ密度を0.6g/cm3以上と高めに設定することにより、多孔質シリカ母材3の焼結時における母材表面からのOH基の抜けが抑制されたためと考えられる。このように、径方向の平均かさ密度を0.6g/cm3以上とすることで、中心から径方向80%の範囲のOH基濃度差を15ppm以下とすることができ、その結果、径方向のΔnの均質性に優れ、且つE’センター等のガラス欠陥が少ない合成石英ガラス母材4を製造することができる。
次に、径方向の平均かさ密度を0.6g/cm3以上とするための製造方法の一実施形態について説明する。径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上の多孔質シリカ母材3は、図3に示すように、例えば堆積中の堆積面温度が922℃以上となるように保持することで製造することができる。
堆積中の堆積面温度が922℃未満であると、多孔質シリカ母材3の径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3未満となってしまい、上記した結果より、中心から径方向80%の範囲のOH基濃度差が15ppm以下の合成石英ガラス母材4を製造することができない。
また、この堆積面温度を922℃以上となるように保持するには、例えば酸水素流量及び/又はバーナ径を調整することで達成できる。酸水素は、シリカガラス原料を加水分解するための火炎を発生させるものであるが、この酸水素流量を増やすことにより、火炎を強くすることができ、堆積面温度を上げることができる。
また、図4に示すように、バーナ径を多孔質シリカ母材3の最終外径に対して1/3.2倍以上とすることで、堆積面温度を高くすることができ、その結果として、径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上の多孔質シリカ母材3を製造することができる。
尚、堆積面温度を922℃以上となるように保持する方法は、例示した酸水素流量及び/又はバーナ径を調整する方法に限らず、例えば、バーナ1の位置を調整するなど、他の方法を採用することも可能である。また、これらの方法を組み合わせることも可能である。
本実施形態における多孔質シリカ母材3は、中心部のOH基濃度が25ppm〜50ppmであることが好ましい。一般的に、合成石英ガラス母材をスス付け法により製造することによってOH基濃度を高くすることはできるが、この程度のOH基濃度であれば、初期の透過率の低下が生じることも無く、また、紫外線照射時に合成石英ガラス母材に生じるE’センター等のガラス欠陥をOH基で埋めることができるため、紫外線照射時のガラス欠陥の発生も抑えることができる。
以上のように、径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上の多孔質シリカ母材を焼結することで、径方向のΔnの均質性に優れ、E’センター等のガラス欠陥が少ない合成石英ガラス母材4を製造することができる。
上記合成石英ガラス母材4は、設備的な改造を強いることなく、既存の設備において可能な、酸水素流量、バーナ径を制御して堆積面温度を調整する方法で実現可能である。すなわち、設備にかかわりなく合成石英ガラス母材4の径方向のΔnの均質性を高めることができる。
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
1:バーナ
3:多孔質シリカ母材
4:合成石英ガラス母材

Claims (4)

  1. バーナによる酸水素火炎中でシリカガラス原料を加水分解してシリカ微粒子を生成するとともに、前記シリカ微粒子を堆積することで多孔質シリカ母材を生成し、該多孔質シリカ母材を焼結して中心部のOH基濃度が25ppm以上50ppm以下の合成石英ガラス母材を製造する合成石英ガラス母材の製造方法であって、前記多孔質シリカ母材の径方向の平均かさ密度が0.6g/cm3以上となるように、堆積中の堆積面温度を調整することを特徴とする合成石英ガラス母材の製造方法。
  2. 堆積中の前記堆積面温度が922℃以上となるように、酸水素流量及び/又はバーナ径を調整することを特徴とする請求項1記載の合成石英ガラス母材の製造方法。
  3. 前記バーナ径が、前記多孔質シリカ母材の最終外径に対して1/3.2倍以上であることを特徴とする請求項2記載の合成石英ガラス母材の製造方法。
  4. 請求項1乃至3いずれか1項記載の製造方法で製造された合成石英ガラス母材であって、該合成石英ガラス母材中心部のOH基濃度が25ppm以上50ppm以下であり、該合成ガラス母材の中心から最終外径の径方向80%の範囲のOH基濃度の差が15ppm以下であることを特徴とする合成石英ガラス母材。
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