JP2012523493A - 機械加工できる銅基合金と、それを製造するための方法 - Google Patents
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Abstract
【選択図】図1
Description
とりわけ、しかし限定的ではなく、本発明は、旋削、スライシング、またはフライス削りによって容易に機械加工される銅、ニッケル、錫、鉛を主成分とする合金に関している。
それらの合金は、優れた機械的性質を提供し、歪み硬化中に強い硬化を示す。
それらの合金の機械的性質は、スピノーダル分解のような既知の熱時効処理によってさらに改善される。
15重量%のニッケルと8重量%の錫とを含む合金(標準合金 ASTM規格 C72900)については、機械抵抗は1500Mpaに到達可能である。
これらの合金はまた、良好な耐応力緩和性、そして空気中で高耐食性も示す。
さらに、これらの合金は、腐食に対する良好な耐性と、熱緩和に対する優れた耐性とを提供する。
このため、Cu‐Ni‐Snバネは、振動および高熱または応力を受けても、時間の経過とともにバネの圧縮力が失われることはない。
また、これらの合金は、スイッチおよび電気装置もしくは電気機械装置において、または電子部品の基板として、または高荷重にさらされる軸受摩擦面を作るために、利用されることも出来る。{りんしょうてき がっぺいしょう}
残念なことに、そのような鉛の添加は、合金の温熱脆性を著しく増すことにもなり、このことによりプロセスとサービスの両方において問題を招く可能性がある。
この温度範囲における粒界すべりの始まりは、粒界での空隙と空洞の形成を招き、そして銅とその合金との通常延性破壊を粒界脆性破壊に変える。
この現象は、純銅について観察されたが、脆化させる合金化元素または不純物元素が合金中にあるとき、この現象はずっと顕著になる。
この臨界範囲を超える、より高い温度での動的再結晶により延性を回復させることができる。
それに加えて、18ppm程度の鉛含有量がCu‐Ni合金の粒界を脆化させると報告され、また、800℃で鉛ガスにさらされ続けた合金は脆性的に破壊しており、鉛もまた固相粒界脆化の原因になることを示している。
固相粒界脆化は、LMEに反して、低歪み速度で深刻度が増す。
Cu合金において粒界脆化の原因となる既知の他の元素は、硫黄と酸素である。
該合金が、さらに、0.01重量%と5重量%の間のPまたはBを、単独または併用で含むことを特徴とする。
また、該合金は、800℃での約1時間の熱処理、およびそれに続く約12時間の320℃での時効の後で、基本的に190を超えるHV硬さ(ビッカース硬さ)を有することを特徴とする。
機械加工作業の間、鉛は、潤滑効果をもち、薄片の破砕を容易にする。
通常、数重量パーセント以下の鉛の量は、常温で合金の機械的性質が変更されることなく導入することが出来る。
しかしながら、鉛の融点(327℃)を超えると、液体鉛は、合金をひどく脆弱化させる。
このように、鉛を含む合金は製造が難しいが、その理由は、一方では、鉛を含む合金が非常に強い顕著な亀裂傾向を有しているからであり、他方では、望ましくない脆弱化層を含む二層から成る結晶構造を呈する可能性があるからである。
したがって、本発明の合金において、鉛含有量は、好ましくは0.5重量%と3重量%の間、または0.5重量%と2重量%の間であり、さらに好ましくは0.5重量%と1.5重量%の間である。
Cu合金は、また、Mnの代わりに、またはMnに加えて、Al、Mg、Zr、Feのような他の元素、または、これらの元素の少なくとも二つの組み合わせを含むことも出来る。
また、これらの元素の存在により、Cu合金のスピノーダル硬化を向上させることも出来る。
代わりに、Cu合金が酸化するのを防ぐ装置を利用することが可能である。
あるいは、本発明のCu基合金は、Al、Mn、Zr、PまたはBの中から選ばれる少なくとも二つの追加の元素の混合物を、少なくとも0.01重量%含む。
この目的を達成するために、約9重量%のNi、約6重量%のSn、約1重量%のPb、そして、約0.02と0.5%の間のPまたはBを含むCu基合金から成る金属製品が、純粋成分(プレアロイCu3PとプレアロイCuZr:99.5重量%、Al:99.9重量%、その他全て:99.99重量%)から、半連続鋳造設備(限度容量:30kg)において、アルゴン雰囲気下で準備された。
Zrの値は、ICP法では検出不可能であった。
これらの棒から、30mmのゲージ長と4mmの直径をもつ円筒形の引張試験サンプルが機械加工された。
サンプルは、空気中で1時間800℃で均質化され、そして水中で急冷された。
Bと表示される合金と対照的に、合金C1とC2のサンプルは、800℃での1時間の焼き鈍しの後、空気中で冷やされた。
合金B4およびB5は、両方とも、硬い第二相粒子1を示しており、該第二相粒子は、Ni、Sn、および、BまたはPがCu基合金に加えられるときそれぞれに形成されるBもしくはPに富んでいる。
Ni、Sn、およびZrに富んだ硬い第二相粒子1もまた、ZrがCu基合金に加えられるとき形成される(非表示)。
第二相1は、残部であるCu基合金の母材よりも硬い。
合金B4およびB5は、また、粒径によっても特徴付けられるが、ここでは基本的に平均直径35μmであって、BまたはPを含まない他の合金の粒径に比べて二分の一近く小さい。
それぞれ、BまたはPを、より低い含有量で含む合金C1およびC2もまた第二相粒子1を示すが、その量は減少する(顕微鏡写真は非表示)。
第二相粒子1は、むらなく微細構造の中に分配され、そして大きさは数ミクロンである。
Pb介在物2は、図1と図2において、白色に見えている。
試験値は、合金A2について得られる値と比較される。
最も大きな硬さの増加は、本発明による合金B4とB5について見つかった。
値は、800℃での約1時間の熱処理に続いて、水中または空気中での急冷の後、熱間引張試験を行うことによって得られた。
引張試験は、油圧サーボ式試験機(MFL 100kN)を用いて、400℃で、10−2s−1の歪み速度で行われた。
サンプルは、昇温時間中の相変態の発生を最小限にするために、2分未満で安定した試験温度に到達するランプ加熱炉(Research Inc.、Model 4068‐12‐10)を使用して急速に加熱された。
急速な加熱と速い歪み速度との両方により、サンプルの破砕は、400℃で3分以内で得られた。
Pおよび/またはBの添加のない、A2からB3のPbを含む合金について得られる値と比較して、本発明の合金B4およびB5について、改善される降伏強度(Rp0.2)と最大応力(Rm)の値が得られる。
より少ない量のB(0.03重量%)とP(0.1重量%)を含む合金C1とC2について得られる降伏強度と最大応力の値は、400℃でそれぞれ160Mpaとおよそ300Mpaであり、これらもまた、その温度での合金A2からB3の値と比較して改善がみられた。
表4において、符号「+」は、割れ目の存在を意味し、割れ目の数と深さは「+」から「+++」に増して示され、一方、「0」は、いかなる割れ目も存在しないことを意味する。
急冷実験は、鋳放しの合金A2からB5のサンプルで、最初に800℃で1時間サンプルを熱処理し、それから該サンプルを室温の水浴、または80℃もしくは180℃に保たれる油浴に落とすことによって行われた。
合金サンプルの表面は、その後、割れ目について光学的に調べられた。
表4は、本発明による合金B4とB5が、焼割れの形成に対して最も低い脆弱性を有することを示している。
合金B5は、A1からC2グループのその他の合金と比較して、最良の機械加工性を有することが分かった。
さらに、Zr、B、そしてPを含む本発明の合金(B3、B4、B5、C1、C2)において、Pb介在物2は、BまたはPを含む固体の第二相析出物1に隣接して位置するという際立った傾向を示し、不規則な複雑な形状である。
このことは、中間温度での溶融鉛介在物2と硬い第二相1との間の界面に低エネルギーをもたらすことを可能にし、つまりPbが第二相粒子1を「ウェット」(wet)するのである。
このことは、溶融Pb介在物2の不安定度の到達に必要な負荷応力を増加させ、合金をより強く且つより延性のあるものにするBおよびPを含む合金の破砕を遅らせ、そして場合によっては中間温度での引張特性を改善させる。
言い換えれば、P、B、またはZrのような、Cu基合金中に加えられる元素は、例えば応力負荷下での形状の変更に対して粒子を安定させるために、溶融Pbと接触して界面に低エネルギー示す、硬い第二相1の形成を引き起こす。
A2および残りのB系合金と比較して、より高いB4およびB5の引張特性(表2)は、BとPの両方が結晶成長抑制剤としての役割を果たしている粒径の違いによって、また、より延性の低い第二相1による耐荷重性によっても説明できる。
鉛を含む合金B3からC2は、該合金の魅力的な快削性の特性を保持する。
該方法において、第一のスラグは、押出されて、例えば、典型的には25mmと1mmの間に含まれることが出来る直径となる。
合金は、それから、例えば圧縮気流によって、または水噴霧によって、または他のあらゆる適切な手段によって冷やされるが、該他のあらゆる適切な手段とは、適切な冷却速度に達することのできる手段であり、該適切な冷却速度とは、好ましくは、脆化させる第二相の形成を制限するのに充分速く、そして亀裂を防ぐのに充分速い速度であり、以降に説明されるであろう通りである。
冷間成形過程の後、第二のスラグは焼き鈍しされるが、該焼き鈍しは、典型的にはスルータイプの炉または取り外し可能なカバーの炉の中で、合金が単相になる範囲内に収まるはずの焼き鈍し温度で行われるものである。
上記に説明された組成のうちの一つを有する本発明のCu合金の場合において、焼き鈍し温度は、690℃と880℃の間に含まれる。
焼き鈍し過程、すなわち均質化熱処理の過程は、とりわけ、延性を誘起するため、構造を均質にすることによって精錬するため、そして合金の冷間成形特性を向上させるために利用される。
焼き鈍し過程の後、第二のスラグは冷やされるが、この場合もやはり、好ましくは、脆化させる第二相の形成を制限するのに充分速く、また亀裂を防ぐのに充分速い冷却速度で冷やされる。
その後ついに、スピノーダル分解熱処理、すなわち硬化を、機械加工できる製品または機械加工された部品に施し、最適な機械的性質を得ることができる。
後者の熱処理は、最終的な機械加工の前に行うことも可能であるし、後に行うことも可能である。
速度が遅すぎると、相当な量の第二相が出現する可能性がある。
この第二相は、非常に脆く、また合金の変形能を大幅に減らしてしまう。
多すぎる量の第二相の形成を避けるために必要な臨界冷却速度は、合金の化学的性質に依存し、ニッケルと錫の量が多いほど速くなる。
該内部拘束は、スラグまたは製品の表面と中心との間の温度差に関係している。
これらの拘束が合金の耐性を超えると、合金に割れ目が生じて、もはや利用不可能である。
冷却が原因である内部拘束は、製品の直径が大きいほど高い。
亀裂を防ぐための臨界冷却速度は、このように製品の直径に依る。
本発明の方法において、押出し過程および/または焼き鈍し過程の後の冷却は、50℃/分と50000℃/分の間に含まれる冷却速度で行われる。
連続または半連続の鋳造過程の間、溶融合金は、かき回されることができるが、これは、偏析および鋳引けのような、表面の状態と内部特性とに関して、鋳物のより大きな規則性を得るためである。
さらに、溶融合金が溶けて鋳造されるとき、デンドライト構造が生まれ、微粒子合金を得ることは出来ない。
そのような磁力は、スラグの充分な撹拌を生み出して、中心偏析の数を減らすことを可能にし、また、平均粒径が基本的に5mm未満である細かい等軸結晶を有するCu基合金を得ることを可能にする。
他のタイプの機械的撹拌もまた利用することができるが、それらは強制ガス混合、また溶融合金の振動や震動のような物理的混合、またはロータ、プロペラ、撹拌パルスジェットのような機械装置などである。
あるいは、電磁的撹拌は、機械的撹拌と組み合わせて利用することができるし、または、超音波撹拌は、機械的撹拌と組み合わせて利用することができる。
ここで、1〜500ミクロンのサイズ範囲の噴霧粒径を利用して、200ミクロン未満の平均粒径の合金を得ることが出来た。
溶射成形法は、偏析の程度が最小であるほぼ均質な微細構造を得ることを可能にする。
他のタイプのスラグ、例えば長方形断面を持つインゴット、円盤、または棒などもまた、溶射成形法によって製造することが出来る。
溶融金属または金属合金粒子のスプレイは、望まれる雰囲気下で行われるが、好ましくは、窒素やアルゴンのような不活性雰囲気下で行われる。
さらに、本発明のCu基合金製品は、旋削の最中に生じる切りくずの除去が促進されることによって、容易に機械加工することができ、また、とりわけ旋削過程、快削過程、スタンピング過程、曲げ過程、または穴あけ過程などを必要とする機械加工作業に有利に利用することができる。
本発明のCu基合金製品は、また、機械加工部品の全体または一部の製造のために有利に利用することもでき、それは、例えば、コネクタ、電気機械部品、電話機の部品、バネなどの、700N/mm2を超える高い弾性限界をもつ導電性部品、またはマイクロ工学、時計製作術、摩擦学、航空学などの適用分野における微小機械部品、または多種多様な適用分野における他のあらゆる部品などである。
2 Pb介在物
Claims (17)
- 少なくとも合金の50重量%に相当するCuの中に、1重量%と20重量%の間のNi、1重量%と20重量%の間のSn、0.5重量%と3重量%の間のPbを含む合金であって、
該合金が、さらに、0.01重量%と5重量%の間のPまたはBを、単独または併用で含むことを特徴とする合金。 - 該合金が、さらに、0.01重量%と0.5重量%の間のPまたはBを単独または併用で含む、請求項1に記載の合金。
- 前記合金が、9重量%のNi、6重量%のSn、1重量%のPbを含む、請求項1または2に記載の合金。
- 前記合金が、基本的に180MPaを超える降伏強度Rp0.2をもち、
該降伏強度が、800℃での約1時間の熱処理に続いて、水中または空気中での急冷の後に400℃で測定されるものである、請求項3に記載の合金。 - 前記合金が、基本的に333MPaを超える最大応力Rmをもち、該最大応力が、800℃での約1時間の熱処理に続いて、水中または空気中での急冷の後に400℃で測定されるものである、請求項3または4に記載の合金。
- 前記合金が、基本的に190を超えるHV硬さをもち、
該硬さが、800℃での約1時間の熱処理、およびそれに続く約12時間の320℃での時効の後に測定されるものである、請求項3から5のいずれか一つに記載の合金。 - 前記合金が、第二相(1)を含み、
該第二相が、800℃での約1時間の熱処理に続く、水中または空気中での急冷の後に、Ni、Sn、そして、それぞれBまたはPのいずれかを含むものである、請求項1から6のいずれか一つに記載の合金。 - 請求項1から7のいずれか一つを特徴とする合金から成る金属製品の製造方法であって、
次の、
a)等質構造を有する前記合金の第一のスラグを得ること、
b)前記合金を、均質化の為および合金の冷間成形性向上の為に、690℃と880℃の間に含まれる温度で焼き鈍しすること、
c)50℃/分と50000℃/分の間に含まれる、前記製品の断面積と前記合金の組成とに依る冷却速度で冷やすこと、
d)冷間成形、
という過程を含む製造方法。 - 請求項8に記載の過程a)が、連続鋳造法であり、
該連続鋳造法が、前記合金の第一のスラグを25mmと1mmの間に含まれる直径で押し出すためのものである、請求項8に記載の方法。 - 第一のスラグの前記合金が、電磁的または機械的にかき回されて、平均粒径が基本的に5mm未満である細かい等軸結晶をもつ前記合金が得られる、請求項8または9に記載の方法。
- 請求項8に記載の過程a)が、溶射成形法であり、
且つ、前記第一のスラグが、直径320mm以下および平均粒径200ミクロン未満で成形される、請求項8に記載の方法。 - 前記冷間成形過程が、圧延、伸線、引張成形、ハンマリングプロセスを含む、請求項8から11のいずれか一つに記載の方法。
- 請求項8から12のいずれか一つを特徴とする方法から得られる金属製品であって、
前記金属製品が、700MPaと1500MPaの間に含まれる引張強度を有し、
該引張強度が、請求項8に記載の焼き鈍し過程b)と冷却過程c)の後に室温で測定されるものである、金属製品。 - 前記製品が、250と400の間に含まれるHV硬さをもち、
該HV硬さが、請求項8に記載の焼き鈍し過程b)と冷却過程c)の後のものである、請求項13に記載の製品。 - 前記製品が、ASTM規格 C36000真鍮と比較して、70%を超える被削性指数を有する、請求項13または14に記載の製品。
- 製品が、ロッド、ワイヤ、ストリップ、スラブ、インゴット、そして薄板の形状を有する、請求項13から15のいずれか一つに記載の製品。
- 製品が、機械加工される導電性部品または機械部品または微小機械部品の全体または部分の製造用に利用される、請求項13から16のいずれか一つに記載の製品。
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