JP7084137B2 - 高強度で均一な銅-ニッケル-錫合金および製造プロセス - Google Patents

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Description

(関連出願への相互参照)
本出願は、2014年3月17日に出願された米国仮特許出願番号第61/954,084号に基づく利益を主張しており、その全体は、参考として本明細書中に援用される。
(背景)
本開示は、銅-ニッケル-錫合金と、これら合金を生産するためのプロセスとに関する。これら合金は、均質であって、高強度および延性を呈する。
銅-ニッケル-錫合金は、非常に高い凝固温度範囲を呈し、従来の溶融および鋳造合金において、有害な偏析および空隙をもたらす。特に、約9重量%~約15重量%のニッケルおよび約6重量%~約8重量%の錫を含有するような合金は、これらの短所を呈する。
新しい均質な高強度の銅-ニッケル-錫合金と、これら合金を生産するためのプロセスとを開発することが望ましいであろう。
本開示は、銅-ニッケル-錫合金と、これら合金を生産するためのプロセスとに関する。合金は、高強度を呈し、かつ均質であって、特性の特有の組み合わせを呈する。
特定の実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも40%の延性と、少なくとも25ksi(172.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さとを有する。
他の実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも96ksi(661.9MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、少なくとも113ksi(779.1MPa)の極限引張強さと、少なくとも2%の延性とを有してもよい。これらの特性に加え、合金はまた、少なくとも280のブリネル硬さを有してもよい。具体的実施形態では、合金は、少なくとも100ksi(689.5MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、少なくとも120ksi(827.4MPa)の極限引張強さと、少なくとも7%の延性と、少なくとも280のブリネル硬さとを有する。
異なる実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも120ksi(827.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さを有してもよい。
また、種々の実施形態において本明細書に開示されるのは、高強度で均質の銅-ニッケル-錫合金を生産するためのプロセスである。プロセスは、銅、ニッケル、および錫の溶融混合物を調製するステップと、溶融混合物を圧力支援鋳造し、鋳造物を形成するステップと、鋳造物を熱によって処理するステップとを含む。圧力支援鋳造は、従来の連続鋳造(例えば、遠心鋳造)と異なり、正または負圧を利用して、溶融金属を成形される構成要素に固化させる役割を果たす、鋳型の中に溶融金属を運搬する。
いくつかの実施形態では、合金は、約8~約20重量%のニッケルと、約5~約11重量%の錫とを含有し、残部は、銅である。特定の実施形態では、合金は、約9重量%~約15重量%のニッケルおよび約6重量%~約8重量%の錫を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、合金は、鋳造物をネットシェイプまたは入力ビレットに成形するようにさらに鋳造されることができる。
溶融混合物は、要求される金属元素を固体形態の中にまとめ、ロットを溶融し、液体金属を調質することによって調製されてもよい。
いくつかの実施形態では、鋳造物を熱によって処理するステップは、約1500°F~約1625°F(約815.6℃~約885℃)の範囲内の温度で、約4時間~約24時間の期間の間、鋳造物を加熱することを含む。
随意に、本プロセスはさらに、鋳造物をスピノーダル硬化するステップを含む。これは、鋳造物を溶体化焼鈍し、次いで、急冷し、次いで、熱処理によってスピノーダル分解することによって行われることができる。
他の実施形態において開示されるのは、銅-ニッケル-錫合金を含む、物品である。物品は、銅、ニッケル、および錫の溶融混合物を調製するステップと、溶融混合物を圧力支援鋳造し、鋳造物を形成するステップと、鋳造物を均質化するステップと、鋳造物を成形し、物品を生産するステップとによって生産される。物品は、ネットシェイプされた物品または後続温間加工のための入力ビレットであってもよい。
鋳造物は、スピノーダル硬化されてもよい。
いくつかの実施形態では、合金は、約9重量%~約15重量%のニッケルおよび/または約6重量%~約8重量%の錫を含み、残部は、銅である。
本開示のこれらおよび他の非限定的な特性が、以下により具体的に開示される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
少なくとも40%の延性と、少なくとも25ksi(172.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さとを有する、銅-ニッケル-錫合金。
(項目2)
少なくとも96ksi(661.9MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、少なくとも113ksi(779.1MPa)の極限引張強さと、少なくとも2%の延性とを有する、銅-ニッケル-錫合金。
(項目3)
前記合金は、少なくとも280のブリネル硬さを有する、項目2に記載の合金。
(項目4)
少なくとも100ksi(689.5MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、少なくとも120ksi(827.4MPa)の極限引張強さと、少なくとも7%の延性と、少なくとも280のブリネル硬さとを有する、項目2に記載の合金。
(項目5)
少なくとも120ksi(827.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さを有する、銅-ニッケル-錫合金。
(項目6)
銅-ニッケル-錫合金から成る物品であって、
銅、ニッケル、および錫の溶融混合物を調製するステップと、
前記溶融混合物を圧力支援鋳造し、鋳造物を形成するステップと、
前記鋳造物を均質化するステップと、
前記鋳造物を成形し、前記物品を生産するステップと、
を含む、プロセスによって生産される、物品。
(項目7)
前記プロセスはさらに、
前記鋳造物をスピノーダル硬化するステップを含む、項目6に記載の物品。
(項目8)
前記スピノーダル硬化は、溶体化焼鈍、急冷、およびスピノーダル分解によって行われる、項目7に記載の物品。
(項目9)
前記物品は、ネットシェイプされる、または入力ビレットである、項目6に記載の物品。
(項目10)
前記合金は、約9重量%~約15重量%のニッケルを含む、項目6に記載の物品。
(項目11)
前記合金は、約6重量%~約8重量%の錫を含む、項目6に記載の物品。
(項目12)
前記合金は、約9重量%~約15重量%のニッケルおよび約6~約8重量%の錫を含む、項目6に記載の物品。
(項目13)
前記溶融混合物は、固体の銅、ニッケル、および錫をまとめ、前記まとめられた固体の銅、ニッケル、および錫を溶融することによって調製される、項目6に記載の物品。
(項目14)
前記鋳造物は、約1500°F(815.6℃)~約1625°F(885℃)の範囲内の温度で、約4時間~約24時間の期間の間、前記鋳造物を加熱することによって均質化される、項目6に記載の物品。
(項目15)
高強度で均質の銅-ニッケル-錫合金を生産するためのプロセスであって、
銅、ニッケル、および錫の溶融混合物を調製するステップと、
前記溶融混合物を圧力支援鋳造し、鋳造物を形成するステップと、
前記鋳造物を熱によって処理するステップと、
を含む、プロセス。
(項目16)
前記合金は、約9重量%~約15重量%のニッケルおよび約6重量%~約8重量%の錫を含む、項目15に記載のプロセス。
(項目17)
前記鋳造物をネットシェイプまたは入力ビレットに成形するステップをさらに含む、項目15に記載のプロセス。
(項目18)
前記熱によって処理するステップは、約1500°F(815.6℃)~約1625°F(885℃)の範囲内の温度で、約4時間~約24時間の期間の間、前記鋳造物を加熱することを含む、項目15に記載のプロセス。
(項目19)
前記鋳造物をスピノーダル硬化するステップをさらに含む、項目15に記載のプロセス。
次に示す図面の簡単な説明は、本明細書で開示される典型的実施形態の図解を目的とするもので、開示の限定を目的とするものではない。
図1は、本開示の例示的プロセスを図示する、フロー図である。 図2は、本明細書に説明されるような処理に先立った鋳造物の顕微鏡写真である。 図3は、本開示のプロセスを使用して得られ得る特性の組み合わせの範囲を示す、グラフである。
(詳細な説明)
本明細書に開示される構成要素、プロセス、および装置は、添付図を参照することでより完全に理解することができる。これらの図は、本開示の明示を簡便かつ容易にすることに重きを置いた模式的な略図にすぎず、したがって、デバイスまたはその構成要素の相対的サイズや寸法を示すことは意図せず、そして/または例示的実施形態の範囲を画定もしくは限定することも意図していない。
以下の記述には明確性のため特定の用語が用いられているが、これらの用語は、図中での説明のために選定された実施形態に特定の構成のみに言及することを意図しており、本開示の範囲を画定または限定することを意図しない。添付図および以下の記述において、同様の数字表示は、同様の機能の構成要素を示すものと理解されるべきである。
「a」、「an」、および「the」の単数形は、別の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
本願の明細書および請求範囲の数値は、同数の有効数字に四捨五入した際に同じ値となる数値、ならびに示された数値との差異が、本願に示されたものと同種の従来の計測手法における実験誤差より小さな数値を含むものと理解されるべきである。
本明細書で開示される全ての範囲は、示された端点を含むものであり、独立して組み合わせ可能である(例えば、「2グラム~10グラム」の範囲は、端点2グラムおよび10グラムと、さらにそれらの間の値の全てとを含む)。
「約」、「実質的に」等の用語で修飾される数値は、規定される正確な値のみに限定されるとは限られない。概略を表わす言語は、数値を測定する機器の精度に対応する場合もある。修飾語の「about(約)」はまた、2つの端点の絶対値で画定される範囲を開示するものと考えられるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲をも開示する。
本開示は、温度範囲に言及する。これらの温度は、合金が暴露される、または炉が設定される、大気の温度を指し、合金自体は、必ずしも、これらの温度に到達するわけではないことに留意されたい。
本明細書で使用されるように、用語「スピノーダル合金」は、その化学組成物がスピノーダル分解を受けることが可能であるような合金を指す。用語「スピノーダル合金」は、物理的状態ではなく、合金の化学的性質を指す。したがって、「スピノーダル合金」は、スピノーダル分解を受けていてもよく、またはそうでなくてもよく、スピノーダル分解を受けるプロセス中にあってもよく、またはそうでなくてもよい。
スピノーダルエージング(aging)/分解とは、複数の成分が、異なった化学組成および物性を有する別個の領域または微小構造に分離できる機構である。特に、状態図の中央域にあるバルク組成を有する結晶は、離溶を起こす。本開示の合金の表面のスピノーダル分解は、表面が硬化する結果を招く。
図1は、本開示による、物品100を形成する例示的プロセスを図示する。プロセス100は、銅、ニッケル、および錫の溶融混合物を調製および最適化するステップ110と、随意に、溶融混合物を調質するステップ120と、溶融混合物を圧力支援鋳造するステップ130と、鋳造物を熱によって処理するステップ140と、随意に、鋳造物をスピノーダルエージングするステップ150と、随意に、鋳造物を物品に成形するステップ160とを含む。
調製および最適化110は、固体形態の銅、ニッケル、および錫をまとめるステップを含んでもよい。固体形態は、純粋元素および/または既知の量の銅、ニッケル、および錫を任意の組み合わせで含有する事前鋳造物を含んでもよい。必要とされる溶融重量または体積は、所望の最終鋳造物に依存し、小ロット(例えば、50ポンド(22.7キログラム))~大ロット(例えば、数千ポンド(454キログラムの数倍))の範囲であってもよい。溶融は、アルゴンまたは二酸化炭素等の保護ガスを使用して不活性化され、溶融金属を酸化から保護することができる、ガス燃焼または電気炉内で実施されてもよい。
合金は、約9重量%~約15重量%のニッケルおよび/または約6重量%~約8重量%の錫を含有してもよく、残部は、銅である。いくつかの実施形態では、合金内のニッケル含有量は、約12重量%を含む、約11重量%~約13重量%である。合金の錫含有量は、約7重量%を含む、約6.5重量%~約7.5重量%の範囲内であってもよい。
いくつかの実施形態では、合金は、1つまたはそれを上回る他の金属を含有する。他の金属は、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ベリリウム、カルシウム、および/またはリチウムから選択されてもよい。本開示の合金は、随意に、少量の添加物(例えば、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、およびそれらの混合物)を含有する。添加剤は、最大1重量%、好適には、最大0.5重量%の量として存在してもよい。さらに、少量の天然不純物が、存在してもよい。アルミニウムおよび亜鉛等の少量の他の添加物が、存在してもよい。付加的元素の存在は、結果として生じる合金の強度をさらに増加させる効果を有し得る。
随意の調質120は、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ベリリウム、カルシウム、または浴中に沈められ、酸素と反応し、金属酸化物を形成する、類似元素等の反応性金属を利用することによって、溶解された酸素を除去するステップを含んでもよい。金属酸化物は、溶融物の表面に浮遊し、上澄みをすくい取ることによって物理的に除去されることができる。酸素が除去された後、水素化物形成元素(例えば、リチウム)が、溶融浴に添加され、水素を除去し、それによって、ガス空隙を排除することができる。
圧力支援鋳造130は、従来の連続鋳造(例えば、遠心鋳造)と異なる。圧力支援鋳造は、正または負圧を利用して、溶融金属を成形される構成要素に固化する役割を果たす、鋳型の中に溶融金属を運搬する。圧力支援鋳造またはさらに無圧力鋳造を使用した鋳造は、液体金属を特注構成要素または基本形状等の有用構成にする役割を果たす。最終用途に応じて、合金は、圧力支援を用いて、または用いずに鋳造されてもよい。
従来、大部分の金属物品は、溶融鋳造(例えば、遠心鋳造)または金属鍛造を介して生産される。典型的には、鋳造は、安価である。しかしながら、遠心鋳造は、不純物および/または空隙を鋳造物の中にもたらし、その構造を劣化させ、それによって、遠心鋳造物をいくつかの寸法および/または合金組成物の物品の生産に好適ではないものにする。さらに、固化プロセスの間の鋳造物中の合金化構成要素の偏析は、鋳造物内の異なる空間場所に非均一特性を生じさせ得る。鍛造が、高品質物品を生産するために使用されてもよいが、比較的に高コストである。
いくつかの実施形態では、圧力支援鋳造130は、正圧を利用して、溶融合金を鋳型の中に運搬する。他の実施形態では、圧力支援鋳造130は、負圧を利用して、溶融合金を鋳型の中に運搬する。
熱処理140は、圧力支援熱処理であってもよい。熱処理140は、高温拡散プロセスによって、元素偏析をさらに低減させるために使用される。高温は、約1500°F~約1625°F(約815.6℃~約885℃)を含む、約1400°F~約1800°F(約760℃~約982.2℃)の範囲内であってもよい。処理は、約10時間~約18時間および約14時間を含む、約4時間~約24時間の期間にわたって生じてもよい。
好ましくは、高圧不活性ガスは、約7500~約12500psi(約51.7~約86.2MPa)および約10000psi(約68.9MPa)を含む、5000~15000psi(34.5~103.4MPa)の好ましい圧力範囲内で液化される。
高温での熱処理は、ミクロ偏析固体の高速固体状態相互拡散を可能にし、均一組成物状態を形成する。熱処理はまた、均質化処理とも称され得る。
プロセス100は、随意に、鋳造物をスピノーダル硬化するステップ150を含む。スピノーダル処理は、2つのステップ、すなわち、溶体化焼鈍ステップと、後続スピノーダル分解強化ステップとを含む。溶体化焼鈍ステップは、元素を固溶体の中に強制し、後続スピノーダル分解の間に硬化が生じることを可能にする。溶体化焼鈍ステップは、約1時間~約10時間の範囲内の時間の間、約1450°F~約1625°F(約787.8℃~約885℃)の範囲内の温度への暴露に続き、軟硬化性条件をもたらす、周囲温度水等の中における高速急冷を要求する。いくつかの実施形態では、温度は、約1500°F~約1600°F(約815.6℃~約871.1℃)の範囲内である。暴露時間は、約4時間~約5時間を含む、約3時間~約8時間の範囲内であってもよい。最後に、冷温合金は、約1時間~約6時間の範囲内の時間の間、約650°F~約1000°F(約343.3℃~約537.8℃)の範囲内の温度に保持した後、空気、または随意に、水冷を続けることによって、より高い強度にスピノーダル分解される。温度は、約825°F(約440.6℃)を含む、約700°F~約900°F(約371.1℃~約482.2℃)の範囲内であってもよい。時間は、約3時間~約4時間を含む、約2時間~約5時間の範囲内であってもよい。
鋳造物はさらに、物品に成形されてもよい160。物品は、航空産業および医療産業等の産業において有用であってもよい。物品は、ネットシェイプされてもよい。いくつかの実施形態では、物品は、続いて、温間加工され得る、入力ビレットである。
銅-ニッケル-錫合金は、スピノーダル合金であってもよい。スピノーダル合金は、殆どの場合、その状態図中に、溶解度ギャップと呼ばれる異常を呈する。溶解度ギャップの比較的に狭い温度範囲内において、原子規則性が、既存の結晶格子構造内に生じる。結果として生じる2相構造は、ギャップを有意に下回る温度で安定である。
いくつかの実施形態では、熱処理されたスピノーダル構造は、原型と同一幾何学形状を留保し、物品は、類似サイズの原子の結果、熱処理の間、歪曲しない。
銅合金は、従来の高性能鉄、ニッケル、およびチタン合金と比較して、非常に高い電気および熱伝導性を有する。従来の銅合金は、典型的には、これらの合金と比較して、非常に軟質であって、その結果、過酷な用途では、めったに使用されない。しかしながら、銅-ニッケル-錫スピノーダル合金は、固化された鋳造物および鍛造状態の両方において、高い硬度および伝導性を併せ持つ。
さらに、熱伝導性は、従来の鉄(工具鋼)合金のものの3~5倍であって、熱をより均一に消散させることによって歪曲の低減を助長しながら、熱除去速度を増加させる。加えて、スピノーダル銅合金は、類似硬度において、優れた機械加工性を呈する。
三元銅-ニッケル-錫スピノーダル合金は、海中および酸環境において、高強度、優れた摩擦学的特性、および高腐食耐性等の特性の有益な組み合わせを呈する。卑金属の降伏強さの増加は、銅-ニッケル-錫合金におけるスピノーダル分解から生じ得る。
これらの合金は、熱伝導性および強度の特有の組み合わせを呈し、より短いサイクル時間、改良されたプラスチック部品寸法制御、より優れた型割線維持、および優れた腐食耐性等、プラスチックツール用途において多くの利点を提供することができる。そのような合金はまた、プラスチック部品と直接接触する射出成形構成要素および金型インサートのために使用されるとき、優れた摩耗耐性を呈することができる。銅基は、プラスチック処理から生じ得る、塩酸、炭酸、および類似分解生成物に対して優れた耐性を提供するのに役立つ。その結果、そのような合金は、潜在的に腐食性のプラスチックを伴う用途に理想的である。そのような合金はまた、容易に機械加工可能である。従来の機械加工操作では、これらの合金は、工具鋼より1%~25%の機械加工時間の短縮を提供し得る。
特定の実施形態では、本開示の銅合金は、約8重量%~約10重量%のニッケルと、約5.5重量%~約6.5重量%の錫とを含有し、残部が、銅である、銅-ニッケル-錫合金である。本合金は、ベリリウムを含有せず、AISI P-20工具鋼に匹敵する硬度を有するが、その熱伝導性は、2~3倍より高い。この合金は、優れた靭性、摩耗耐性、および表面仕上げを有する。表1は、この合金が本開示に従って処理される前のこの合金の種々の特性を説明する。
Figure 0007084137000001
他の特定の合金は、約14~約16重量%のニッケルと、約7重量%~約9重量%の錫とを含有し、残部が、銅である、銅-ニッケル-錫合金である。これらの合金は、航空用スリーブ、球面軸受、および工業用軸受を含む、多くの異なる用途において使用されることができる。これらの合金は、ベリリウムが無く、海水、塩化物、および硫化物中において優れた腐食および応力腐食亀裂抵抗を呈する。他の特性は、以下の表2に説明され、再び、この合金は、本開示に従って処理される前のものである。
Figure 0007084137000002
図2は、Cu-15Ni-8Sn合金の鋳造されたままの状態を図示する、顕微鏡写真である。示される構造は、このような高凝固温度範囲合金に典型的ではない、(a)80マイクロメートル未満の均一に微細な樹枝状晶枝間隔および樹枝状晶枝内の非常に少量の化合物形成を例示する。本構造は、均一組成物状態をさらに形成するように設計される、本開示の高温および高圧熱処理下で容易に均質化する。スピノーダル硬化は、種々の強度および延性を有する合金をもたらす。
いくつかの実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも40%の延性と、少なくとも25ksi(172.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さとを有する。他の実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも96ksi(661.9MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、少なくとも113ksi(779.1MPa)の極限引張強さと、少なくとも2%の延性とを有する。そのような合金はまた、少なくとも280のブリネル硬さを有することができる。より具体的実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも100ksi(689.5MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、少なくとも120ksi(827.4MPa)の極限引張強さと、少なくとも7%の延性と、少なくとも280のブリネル硬さとを有する。さらに他の実施形態では、銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも120ksi(827.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さを有する。ここでは、延性は、パーセント破断伸びと同義であることに留意されたい。これらの特性は、ASTM E8に従って測定される。
以下の実施例は、本開示の合金、物品、およびプロセスを例証するために提供される。これらの実施例は、単に、例証であって、本開示をその中に記載される材料、条件、またはプロセスパラメータに限定することを意図するものではない。
機械的特性の測定が、ASTM E8規定引張試験に従う形状およびサイズに鋳造された試料を使用して行われた。種々の合金が、5000~15000psi(34.5~103.4MPa)および温度1525°F~1675°F(829.4℃~912.8℃)において、圧力支援鋳造および均質化(すなわち、熱処理)によって鋳造された。試料は、次いで、1時間~5時間の時間の間、700°F~750°F(371.1℃~398.9℃)でスピノーダル分解された後、空冷が続いた。さらなる機械加工または表面調製は、行われなかった。表3は、これらの鋳造物の特性を列挙する。
Figure 0007084137000003
スピノーダル分解のための種々の温度を使用して、強度および延性組み合わせの特有のスペクトルが、高強度または高靭性および伸びを要求する構造用途のための有用トレードオフを有する、条件の選択を可能にするように達成されることができる。図3は、スピノーダル分解への応答の範囲を示す、グラフであって、鋳造および高圧熱処理後、広範囲のスピノーダル分解温度に曝されたサンプルからの実際のデータ点を示す。赤色正方形は、0.250インチ(6.35ミリメートル)直径の縮小ゲージ断面を有するサンプルを表し、黒色円形は、0.350インチ(8.89ミリメートル)直径のゲージ断面を有するサンプルを表す。
ここに見られるように、2つの集合が存在する。第1の集合では、合金は、約30%~約55%の引張伸び(すなわち、延性)と、約20ksi(137.9MPa)~約40ksi(275.8MPa)の0.2%オフセット降伏強さとを有する。第2の集合では、合金は、10%またはそれ未満の引張伸びと、約90ksi(620.5MPa)~約130ksi(896.3MPa)の0.2%オフセット降伏強さとを有する。
典型的引張伸び(すなわち、延性)は、非常に良好であって、約130,000psi(約896.3MPa)程度の高い0.2%オフセット降伏強さを伴う。これは、適切な高圧均質化およびスピノーダル分解温度の後続選択と結合される、均質微小構造を作成する鋳造プロセスの利点を反映する。代替として、50%伸びに近い非常に高い延性は、図および表に示されるように、より低い強度とともに達成可能である。
プロセスの適切な操作は、特性の標的組み合わせを伴う物品を確実に生産することができる。表4は、所望の標的最小100ksi(689.5MPa)降伏強さを伴うASTM E8引張試料としてのCu-15Ni-8Sn合金鋳造物の実施例を提供する。表4は、異なる日に、熱処理においていくつかの鋳型および様々なロットを用いて鋳造された少なくとも10個の材料のロットに関して、非常に信頼性のある、得られた特性の組み合わせを統計的に説明する。変動は、非常に低い。
Figure 0007084137000004
上記開示の変形、他の特徴や機能、または、これらの代替を組み合させて他の多くのシステムや用途とすることができることを理解され得る。今のところ予測または予期できない様々な代替、変更、変形、もしくは改良が当業者によって今後行われる可能性があるが、これらもまた添付の請求範囲に含まれることが意図される。

Claims (9)

  1. 銅-ニッケル-錫合金であって、圧力支援鋳造により調製されそして8重量%~20重量%のニッケルおよび5重量%~11重量%の錫を含み、残部は、銅であり、ここで、前記銅-ニッケル-錫合金は、少なくとも40%の延性と、少なくとも25ksi(172.4MPa)の0.2%オフセット降伏強さと、80マイクロメートル未満の均一に微細な樹枝状晶枝間隔とを有する、銅-ニッケル-錫合金。
  2. 前記合金は、9重量%~15重量%のニッケルを含む、請求項1に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  3. 前記合金は、6重量%~8重量%の錫を含む、請求項1に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  4. 前記合金は、9重量%~15重量%のニッケルおよび6重量%~8重量%の錫を含む、請求項1に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  5. 前記合金は、8重量%~10重量%のニッケルおよび5.5重量%~6.5重量%の錫を含む、請求項1に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  6. 前記合金は、14重量%~16重量%のニッケルおよび7重量%~9重量%の錫を含む、請求項1に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  7. 前記合金は、
    銅、ニッケル、および錫の溶融混合物を調製するステップと、
    前記溶融混合物を圧力支援鋳造し、鋳造物を形成するステップと、
    前記鋳造物を均質化するステップと、
    前記鋳造物をスピノーダル硬化し、前記合金を生産するステップと、
    を含む、プロセスにより生産される、請求項1に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  8. 前記スピノーダル硬化は、溶体化焼鈍、急冷、およびスピノーダル分解によって行われる、請求項7に記載の銅-ニッケル-錫合金。
  9. 前記鋳造物は、1500°F~1625°F(815.6℃~885℃)の範囲内の温度で、4時間~24時間の期間の間、前記鋳造物を加熱することにより均質化される、請求項7に記載の銅-ニッケル-錫合金。
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