JP2012510806A - 単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質 - Google Patents

単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質 Download PDF

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Abstract

本発明は、式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、HRS2及びHRS3は7アミノ酸反復配列であり、L1及びL2は構造的に柔軟性のあるリンカー配列である)の単鎖タンパク質であって、HRS1、HRS2及びHRS3が水溶液中で熱力学的に安定な三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する、単鎖タンパク質に関する。本発明は、アミノ酸配列変異体、かかるタンパク質及び変異体を得るための条件及び方法、並びにそれらの使用、特に足場及び治療薬としてのそれらの使用にも関する。
【選択図】図1

Description

本発明は分子生物学の分野にあり、水溶液中で本質的に三重逆平行αヘリックスコイルドコイル足場構造からなる熱力学的に安定な単鎖タンパク質に関する。かかる分子は非常に安定であり、アミノ酸置換に寛容である。したがって、これらの分子はタンパク質ベースの足場の基本的な要件を満たす。治療能力、診断能力及び/又は精製能力を示すこの足場は、創薬、分析的研究、精製技術の分野において、また、新たなタンパク性(タンパク質様)足場構造の設計を改良するためのモデルとして有用である。タンパク質ベースの足場分子は、分子認識に関する「次世代の」化合物群と見なされることが多く、次第に免疫グロブリンベースの化合物と競合するものとなっている。したがって、本発明の化合物は免疫グロブリンに対する代替的アプローチ、及びさらなるタイプのタンパク質ベースの(タンパク性)足場を提供する。
三重(三連)αヘリックスコイルドコイル複合体(コイルドコイル構造、コイルドコイル)は、溶液中で個々の(別個の、単量体、遊離)ペプチド分子の三量体(3分子複合体)への会合(集合(coming together))によって形成される。個々のペプチドは典型的には、かかる会合への熱力学的駆動力をもたらす1つ又は複数の7アミノ酸反復(7アミノ酸単位、7つ組(heptads))を含む。
三量体複合体の形成によって直面する重大な実際問題は、かかる反応が濃度に極度に依存するという事実である。したがって、熱力学的駆動力が極めて強い場合(すなわち、7つ組が極めて強力な相互作用を生じる場合)でない限り、三量体複合体を形成させるためには比較的高い濃度を適用する必要がある。高濃度は薬学的化合物に適用される(として投与される)場合に複数の悪影響を有し得る。三量体複合体とは対照的に、本発明の単鎖コイルドコイル構造の形成(フォールディング)は溶液中のそれらの濃度に依存しない。本発明はしたがって、この濃度依存性の問題に対する解決策を提供することを意図するものである。
ペプチドオリゴマー(多量体)複合体の使用に関する第2の問題は、組み換え法によって(すなわち、分子生物学的技法を用いて)構成ペプチドを製造(合成)することが困難であるということである。これは組み換え合成に理想的に適した、安定にフォールディングされる単鎖タンパク質とは対照的である。したがって、本発明はペプチド形態の三量体コイルドコイル足場の合成に関する技術的問題に対する解決策を提供するものである。
本発明は第3に、ヘテロ三量体コイルドコイル構造を生成することの問題に対する実際的な解決策を提供することを目的としている。ペプチドコイルドコイルのオリゴマー性は概して、会合したペプチドの数(例えば二量体複合体、三量体複合体、四量体複合体についてはそれぞれ2個、3個、4個)、それらの相互の配向(例えば平行又は逆平行)、及びそれらの化学的類似性(すなわち、任意で誘導体化されたそれらのアミノ酸配列;例えば、ホモ三量体コイルドコイルは3つの同一のペプチドによって形成され、ヘテロ三量体コイルドコイルは配列の異なる、又は誘導体化されたペプチドを少なくとも1つ含む)によって規定される。オリゴマーコイルドコイルは、同一でないペプチドを混合することによって水溶液中で得ることができる。次いで、十分に長いインキュベーション期間の後、ホモマーコイルドコイルとヘテロマーコイルドコイルとの分布が、主にそれらの熱力学的適合性(安定性、自由エネルギー、会合の質)に応じて形成される。熱力学的適合性、したがってオリゴマー選択性(preferences)(分布)の根底にある複雑な原子相互作用を考えると、所望される特定のタイプのヘテロマーコイルドコイルの生成を制御することは技術的に難しい。この点に関し、本発明は技術的問題に対する実際的な解決策を提供する。すなわち、コイルドコイルを形成するペプチド断片は、(適当に選択されたリンカー断片を介して)共有結合的に連結して単鎖となるため、所定(所望)の性質のコイルドコイル構造を形成するその傾向は、遊離ペプチドの会合体からなる同等のコイルドコイルと比較して大幅に向上している。結果として、特定のヘテロマー(例えばヘテロ三量体)コイルドコイルの構築が大幅に容易となる。加えて、単鎖コイルドコイルフォーマットは、望ましくない(例えば非機能的な)タイプの会合体の形成を回避する(又はそのリスクを大幅に低減する)という利点も提供する。概して、本発明の全ての実施の形態に適用される単鎖フォーマットは、三量体コイルドコイル(コイルドコイルを形成するペプチド断片は(任意に)アミノ酸配列が異なる)のフォールド特異性を制御し、保存することの実際的な解決策を提供する。
本発明の全ての実施の形態は、「単鎖」だが「三重」のαヘリックスコイルドコイル構造に関する。明確にする目的で、「単鎖」という特性は本発明の分子全体に関し、一方で「三重」という特性はこれらの分子内のαヘリックスコイルドコイル部分に関することがここで説明される(下でさらに詳細に論考される)。「単鎖コイルドコイル」という記載が使用される場合、この記載は、(2つの)構造的に柔軟性のあるリンカー断片によって共有結合的に相互接続した、(3つの)コイルドコイルを形成するペプチド断片間の強力な会合(上記ペプチド及びリンカー断片は共に、単一の連続したアミノ酸鎖からなる1つのタンパク質分子を形成する)として解釈されたい。本発明の単鎖コイルドコイルタンパク質は、単量体(溶液中の単量体タンパク質分子)でもある(かかるタンパク質の各々に含有されるコイルドコイル構造の三量体性と混同してはならない)。
タンパク質データバンク(以下、PBDと称する)内の三重コイルドコイル構造の大部分は平行コイルドコイル、すなわち「平行αヘリックスペプチド」タイプである。これはコイルドコイルが、へリックスが平行配置(配向)で配向した、1つの構造当たり3つのαヘリックスペプチドの複合体(非共有結合的会合体)として存在することを意味する。3つのαへリックスのうち1つが、他の2つ(これらは互いに平行である)に対して逆平行であることは滅多にない。かかる逆平行配置は、天然のタンパク質において例外的であり、通常の7アミノ酸反復モチーフから構成され、それによって安定化された規則的なコイルドコイル構造の形態では観察されたことはなかった。表1は、PDBから得た179個のペプチド三重コイルドコイル複合体の包括的なリストを示すが、そのうち175個が平行であり、逆平行は4個のみである。このことは、平行配向がペプチド三量体コイルドコイルにとって最も安定な配置であることを示唆している。平行配置が多いことの考え得る理由は、最大数の最適接触を可能にする3回対称性の保存である。対照的に、本発明の全ての実施の形態は、逆平行配向をとる単鎖コイルドコイルに関する。PDBにおいて逆平行三重コイルドコイル構造の例が稀であることを考えると、かかる構造の設計及び生成は全く明白でない。例えば、かかる研究は代表的な鋳型(実例)構造がないために複雑なだけでなく、平行三重コイルドコイルに認められるものに匹敵する質のコア相互作用を有する逆平行コイルドコイルを開発することができるか否かは先験的に不明確である。上記の点を考えると、本発明の主要な独創的(inventive)態様の1つは、高度に安定な逆平行三重コイルドコイルを得ることができるという予想外の発見である。これは通常の7アミノ酸反復位置のコア残基が、逆平行配置でも準最適相互作用をもたらすことができることを示しているが、このことはこれまで知られていなかった。
本発明者らは、平行配置でフォールディングすることが予想されるが、このタイプのフォールディングを可能にするには大幅に短過ぎるリンカー断片を有する単鎖三重コイルドコイルタンパク質構造を構築した。予想外にも、この構築物は、非常に長いリンカーを有する変異体と同じ物理的特性(αヘリックス含量、熱安定性、溶解性等)を有することが見出された。物理的に短過ぎるリンカーを有する構築物は概して、構造のアンフォールディングを引き起こすが、本発明の三量体足場構造は予想外にも、生理的条件から大幅に外れた条件下、例えば8Mの尿素中、又は90℃を超える温度で、そのリンカー長にかかわらず高い熱安定性を示した。これらの発見は、本発明の分子が逆平行配置へとフォールディングすることを強く示唆している。このことはNMR分光法によっても確認された。このため、かかる新規のコイルドコイル構造は多くの足場ベースの用途にとって高い価値を有している。
本発明は、式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は共有結合的に相互接続したアミノ酸配列断片を表す)の新規の種類の単鎖タンパク質であって、
a)断片HRS1、HRS2及びHRS3は7アミノ酸反復配列であり、
b)断片L1及びL2は構造的に柔軟性のあるリンカー配列であり、上記タンパク質が、三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する該HRS1、HRS2及びHRS3断片によって水溶液中で自発的にフォールディングする、単鎖タンパク質に関する。
より明確に述べると、本発明は、式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は共有結合的に相互接続したアミノ酸配列断片を表す)の新規の種類の単離した、好ましくは非天然の単鎖タンパク質であって、上記タンパク質が、三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する該HRS1、HRS2及びHRS3断片によって水溶液中で自発的にフォールディングし、
a)HRS1、HRS2及びHRS3は各々独立して、(a−b−c−d−e−f−g−)又は(d−e−f−g−a−b−c−)として表される、7残基のアミノ酸型のn回の繰り返しパターンを特徴とする7アミノ酸反復配列であり、ここで該パターンの要素「a」〜「g」は、上記アミノ酸型が位置する通常の7アミノ酸位置を示し、nは2以上の数であり、
b)通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」は主に疎水性アミノ酸型によって占められており、通常の7アミノ酸位置「b」、「c」、「e」、「f」及び「g」は主に親水性アミノ酸型によって占められており、結果として生じる疎水性アミノ酸型と親水性アミノ酸型との間の分布によって、上記7アミノ酸反復配列の同定が可能となり、
c)L1及びL2は各々独立して、明確に7アミノ酸反復配列に割り当てることのできない任意のアミノ酸残基を含む、1個〜30個のアミノ酸残基からなるリンカーである、単鎖タンパク質に関する。
7アミノ酸反復を含む合成ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。アミノ酸配列は一文字表記で表示され、Aはアラニンを指し、Iはイソロイシンを指し、Qはグルタミンを指し、Kはリシンを指す。このペプチドは7アミノ酸反復(HRx)、コア残基(黒色のボックス)、非コア残基(灰色のボックス)及び隣接領域(白色のボックス)を含む。このペプチドは、「t」と表示されたC末端7アミノ酸コア残基をさらに含む。このペプチドは、それぞれ「N」及び「C」と表示されたN末端及びC末端の隣接断片をさらに含む。各々の7アミノ酸反復残基は、「a」〜「g」という添え字及び7アミノ酸反復数に対応する数字によってさらに注記されている。コア残基はa位置及びd位置に位置する。 三重αヘリックスコイルドコイル複合体の原理を示す図である。この図は三重αヘリックスコイルドコイル構造のヘリカルホイール表示を提供する。左のパネルは平行コイルドコイルの上面図を示す。右のパネルは逆平行コイルドコイルの上面図を示す。中央のパネルは7アミノ酸反復位置の線形配列を示す。明確にするために1つの7アミノ酸反復のみを表示する。異なる色合いを用いて特定の位相的位置を示している。 円二色性(CD)によってモニタリングしたペプチドコイルドコイルの熱変性を示す図である。5セルシウス度及び90セルシウス度でのペプチドAc-MSIEEIQKQQAAIQKQIAAIQKQIYRMTP-NH2のCDスペクトルを示す(それぞれ黒色及び灰色の曲線)。このペプチドは20mMリン酸緩衝液(PBS)、150mM NaCl(pH7.2)中に292μMの濃度で溶解したものである。 温度に応じた222nMでのCDシグナルによってモニタリングした、図3のペプチドの可逆的アンフォールディング及びフォールディングを示す図である(アップスキャン及びダウンスキャンを示す)。 図4の熱アンフォールディング曲線のさらなる熱力学的分析を示す図である。黒色の曲線は図4から取り出した実験データを表し、白色の曲線は適合曲線を表す。理論(適合)曲線は、実施例3において説明される手順によって得た。適合パラメータ(適合結果)を図5の右側に挙げる。「Transit. T」はTに対応するが、セルシウス度で表される。パラメータ「ΔC」は3.0kJ・mol−1・K−1で一定に保った。パラメータ「θ(T)」及び「θ(T)」をTの線形関数として処理し、図の右側に示したそれぞれのオフセット及び傾きによって表される点線の直線を得た。「RMS Resid.」は、実験データ点と理論データ点との間の差の二乗平均平方根を指す。 実施例3と同じ条件下でのQ2aIペプチドの試料調製についてのCD熱スキャン曲線を示す図である。Q2aIペプチドはアミノ酸配列Ac-MSIEEIQKQIAAIQKQIAAIQKQIYRMTP-NH2を有する。アップスキャン及びダウンスキャンの結果をそれぞれ黒色及び灰色で示す。 図6のQ2aIペプチドに対する分析的沈降平衡超遠心分離の結果を示す図である。沈降曲線は25000回転毎分(rpm)で得た。この図は単量体複合体、二量体複合体及び三量体複合体についての理論曲線(表示によって示される)と比較した、線形化光学密度(OD)曲線を示す。 図6のQ2aIペプチドに対する静的光散乱の結果を示す図である。PBS中1mg/mlで200マイクロリットルのペプチドを、紫外線(UV)検出器、屈折率(RI)検出器及び静的光散乱(SLS)検出器に接続したSuperdex 75 10/300GLゲル濾過カラムにかけた。3つの異なる検出器からのシグナル(曲線)をそれらに応じて表示する。 本発明の特定の実施形態を形成する2つのタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。これら2つのタンパク質をそれぞれ「scQ2aI_L8」及び「scQ2aI_L16」と称する。それらの完全アミノ酸配列を、各々の表パネルの下部に(「Full」という表示の右手に)挙げる。N末端及びC末端の隣接セグメント(それぞれ「N」及び「C」と表示される)、リンカーセグメント(それぞれ「L1」及び「L2」と表示される)及び実際の7アミノ酸反復配列(「HRS1」、「HRS2」及び「HRS3」と表示される)の特定を容易にするために、同じ配列内の特異的セグメントも同様に上部に示す。7アミノ酸のa位置及びd位置を、7アミノ酸反復配列内でのそれらの特定を容易にするために最上列に示す。 scQ2aI_L16構築物についてのCD熱スキャンを示す図である。この構築物についてのスキャンは20mM PBS、150mM NaCl(pH7.2)中で記録した。 PBS緩衝液中、タンパク質濃度約30μM、222nmでCDによって記録した6M GuHCl中でのscQ2aI_L16及びscQ2aI_L8(それらに応じて表示する)の熱変性を示す。この熱スキャンを2状態転移モデルに適合させ、フォールディングしたタンパク質の割合に変換した。 GuHCl(変性剤)濃度に応じた、本発明の特定の実施形態を形成する様々な構築物の転移温度を示す図である。上記構築物を「scQ2aI_L16」、「short_L6」、「short_L10」、「short_L14」及び「short_L18」と称し、対応する曲線がそれらに応じて表示する。上記構築物の配列、それらを作製する方法、及び実験条件は実施例5においてさらに詳述する。 構築物scQ2aI_L16及びscQ2aI_L8(それらに応じて表示する)についての15H HSQC NMRスペクトルを示す図である。 実施例6において説明されるような、scQ2aI_L16構築物のスピン標識したトリプトファン−システイン二重突然変異体のNMRスペクトルの拡大表示を示す図である。スペクトルは非処理試料及びビタミンC処理試料(共鳴をそれらに応じて表示する)について記録した。 平行及び逆平行の三連単鎖コイルドコイル(それらに応じて表示する)の分子モデルを示す図である。モデルは実施例7において説明されるように作成した。各々のモデルにおける3つのαへリックスは「A」、「B」及び「C」と表示され、それぞれ上記単鎖コイルドコイル中の7アミノ酸反復配列HRS1、HRS2及びHRS3を表す。「L1」及び「L2」という表示はそれぞれのリンカーセグメントを示す。「Nt」及び「Ct」はそれぞれ、各々の構築物のN末端及びC末端を示す。
「足場」という用語は、本発明の文脈内で、1つ又は複数のタンパク質又はタンパク性ポリぺプチド鎖からなる、特定の固定された(一定の、不変の)三次元(3D、三次)構造(構成要素の空間的配置)を有する特定の立体配座的に(構造的に)かつ熱力学的に(熱的及び化学的に)安定なタンパク性(タンパク質様又はタンパク質)分子(上記構造は様々なアミノ酸残基位置での様々な単一及び複数のアミノ酸置換に明らかに寛容である)を表すのに使用される。
「アミノ酸置換に寛容である」という概念は、本明細書中で、構造の完全性(正確さ)が上記アミノ酸置換を行った場合に本質的に変わらないままであるという意味に理解されるものとする。タンパク質における任意のアミノ酸置換は3D構造を或る程度変化させるが、かかる変化は既知であり、本明細書中では、突然変異した(置換された)3D構造のタンパク質骨格(主鎖)が突然変異していない(元の、野生型)構造と構造的に重ね合わせ可能なままであれば(両方の構造の骨格原子(水素原子を除く)の少なくとも70%を、好ましくは1オングストローム(1Å)未満、あまり好ましくはないが2Å又は3Åという二乗平均平方根(RMS)偏差で重ね合わせることができる場合、2つの構造は重ね合わせ可能であると見なされる)、本質的でないと見なされる。構造的重ね合わせが実現可能でない場合(例えば、両方の3D構造の一方が利用可能でない場合)、「アミノ酸置換に寛容である」という概念は熱力学的な意味で解釈され、置換(複数可)による熱転移の中点(転移温度Tt、融解温度Tm、アンフォールディング温度Tu)の低下が、野生型と比較して好ましくは10セルシウス度(℃)を超えない、あまり好ましくはないが20℃、又は30℃、又は40℃、又は50℃を超えない場合(いずれの場合も、置換されたタンパク質が生理的温度(37℃)で量的にアンフォールディングする範囲を超えない)、タンパク質はアミノ酸置換(複数可)に寛容であると見なされる。「様々な位置での様々な置換に寛容である」という特性は、本明細書中で、少なくとも5個の異なるアミノ酸位置、より好ましくは10個の位置、又は20個の位置、最も好ましくは全てのアミノ酸位置の約50%以上の位置での少なくとも約10個のアミノ酸残基の違いに寛容であることを意味することが意図される。
足場分子は要するに、化学基の担体として働く分子であると一般に理解される。同様に、足場タンパク質(又は簡潔に足場)は本明細書中で、アミノ酸側鎖の担体となるタンパク質又はタンパク性分子を指す。足場分子は、他のタンパク質、又はそれらの末端のいずれかに(すなわち融合構築物の一部として)結合した断片、ドメイン若しくはペプチドの担体となる場合もあるが、これは本発明の文脈内で意図される意味ではない。タンパク質中のアミノ酸側鎖は主鎖(骨格)に結合しているため、フォールディングした骨格は形式上は化学的に最も純粋な足場形態を構成する。しかしながら、純粋なタンパク質骨格(最も近いポリぺプチド類似体としてはポリグリシンがある)は、溶液中で安定にフォールディングせず、したがって有用な足場の要件を満たさない。結果として、部分的に又は完全にそれらの側鎖が奪われたタンパク質は、本発明の主題を形成しない。しかし、本発明は、所与の3Dフォールド(この場合には、単鎖三重逆平行αへリックスコイルドコイル構造)をとり、相当な数の突然変異が起こった後でも熱力学的に安定な形でフォールディングする実在のタンパク質をクレームしている。このため、「足場」という用語は、担体機能よりもむしろそれらの構造的及び熱力学的なロバスト性を指す。
本発明のタンパク質分子は、多くの他の報告された足場(Skerra [J Mol Recognit 2000, 13:167-187]、Binz et al. [Nat Biotechnol2005, 23:1257-1268]、Hosse et al. [Protein Sci 2006, 15:14-27]に概説される)と同様に足場として使用することができる。「足場として使用する」という概念は、実質的には(例えば、或る特定の機能性を有する)所望の分子を、事前に選択された参照構築物(参照足場)から得る(誘導する)ことができることを意味する。誘導される分子は、典型的にはアミノ酸置換又はループ置換された参照足場の変異体である。
非免疫グロブリンタンパク質ベース(タンパク性)の足場分子は、当該技術分野で分子認識に関する「次世代の」化合物群と見なされている。それらは主に、好ましい物理化学的特性及び利用可能な実験データに基づいて選択された天然のタンパク質分子から誘導される。この化合物群の例は、Hosse et al.[Protein Sci 2006, 15:14-27]及びBinz et al. [Nat Biotechnol 2005, 23:1257-1268]によって挙げられている。
本発明は、タンパク質足場として使用するのに優れた特性を有する特定のタイプの非免疫グロブリンタンパク質分子を開示する。その高い安定性及び構造的ロバスト性のために、本質的に同じ三次構造及びわずかに異なる配列を有する分子の大きなライブラリ(足場ベースのライブラリ、足場ライブラリ)を構築することができる。代替的には、標準的なタンパク質工学方法を利用することによって表面残基を変化させることができる。当業者の知識を活かせば、強く所望される結合特性(例えば、親和性及び特異性)が免疫グロブリンと同様である変異体(足場誘導体、特定の分子化合物)を同定することを目的として、適当な選択方法を適用することができる。
タンパク質ベースの足場分子は、例えばその比較的小さなサイズ、高い構造安定性及び翻訳後修飾がないこと等といった免疫グロブリンに勝る多数の利点を有していた。これらの特徴によってその合成、精製及び保管が大幅に容易となる。さらに、高親和性化合物を免疫化工程を経る必要なしに作製することができる。本発明のタンパク質足場は、上述の特徴の全てを具体化しているため、足場ベースの用途に特によく適したものとなっている。
本発明は、表面残基の置換及び標準的なタンパク質工学行為に対して大幅に感受性の低い、特定のタイプのタンパク質ベースの足場に関する。本発明の全ての実施形態は、高度に突然変異可能な(mutatable)タンパク質足場(この場合には、単鎖三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造)としてこれまで開発されていなかった、特定のタイプのタンパク質構造(3D構造、三次構造、フォールド)に関する。
本発明のタンパク質は、免疫グロブリンに大いに匹敵するほどの幅広い潜在的用途を有する。より具体的には、特定の足場由来突然変異体は、以下に詳述されるように、治療用化合物(例えば阻害剤)、(例えば組み換えタンパク質の検出における)検出プローブ及び(例えばアフィニティークロマトグラフィーにおける)精製プローブとして有用であり得る。
本発明のタンパク質分子は治療用化合物として好適であり得る。より具体的には、本発明のタンパク質分子は、自然な化学反応若しくは自然な分子認識事象を妨害する(阻害する、抑制する)ことによって、又は非自然的な分子認識事象を生じさせることによって生物学的過程に干渉する(影響を与える、変更する)ことができる。生物学的干渉の例としては、ヒト受容体の阻害、病原性種への結合、及び疾患関連タンパク質又は障害関連タンパク質への結合が挙げられるが、これらに限定されない。このようなタイプの生物学的干渉は、典型的には重篤な疾患又は障害を治療することが意図される。これらの用途は治療研究及び治療開発の分野に属する。現在の治療的処置は一般に薬理化合物又はバイオテクノロジー化合物(免疫グロブリン(由来)化合物又は非免疫グロブリン化合物を含む)に基づく。どちらのタイプのバイオテクノロジー化合物の製造、精製、試験及び最適化も一般に労働集約的であり、リスクが大きく、高コストである。したがって、特定の生物活性を有する新たなバイオテクノロジー化合物、並びにかかる化合物を製造、精製、試験及び最適化する改善された方法が必要とされている。
本発明のタンパク質分子は検出プローブとして好適であり得る。特定のプローブ分子(プローブ)が、対象とされる所与の試料(研究試料)中の対象とされる分析物(標的分析物)の存在の検出に適用される例としては、ヒト起源、動物起源、植物起源、細菌起源、ウイルス起源、バイオテクノロジー起源又は合成起源の試料の実験分析が挙げられるが、これらに限定されない。かかる試料は、典型的には選択されたプローブ分子と特異的に相互作用することのできる生体分子(例えばポリぺプチド、ポリヌクレオチド、多糖、ホルモン、ビタミン若しくは脂質、又はそれらの誘導体)を含有する。この相互作用は典型的には、上記研究試料中の上記標的分析物の存在を示す特徴的な(例えば分光学的又は放射性)シグナルを生じる。これらの用途は分析的研究及び分析的開発の分野に属する。医学的用途及びバイオテクノロジー用途で効率的に使用される、種々のタイプのプローブ及び標的の組み合わせの数は事実上無制限である。これらの領域における漸進的進展を考えると、所望の物理化学的特性(例えば特異性、親和性、安定性、溶解性)を有する新たな分析ツール(例えばプローブ)、並びにかかる化合物を製造、精製、試験及び最適化する改善された方法が現在必要とされている。
本発明のタンパク質分子は精製用途に好適であり得る。特定のリガンド分子(リガンド)が対象とされる所与の試料(粗試料)中の対象とされる他の分子(標的、標的分析物)の保持(抽出、単離、精製、濾過)に適用される例としては、選択されたリガンド分子と高い特異性をもって相互作用する(会合する)ことのできる生体分子(例えばポリぺプチド、ポリヌクレオチド、多糖、ホルモン、ビタミン若しくは脂質、又はそれらの誘導体)を含有するヒト起源、動物起源、植物起源、細菌起源、ウイルス起源、バイオテクノロジー起源又は合成起源の試料中で、リガンド分子が粗試料から標的分子を同時分離する(co-separating)目的で粗試料から(例えば固体支持体への付着、又は沈降によって)分離される、又は分離することができる場合が挙げられるが、これらに限定されない。これらの用途は精製技術の分野に属する。精製方法のより具体的な例としては、アフィニティークロマトグラフィー及び免疫沈降が挙げられる。これらの領域における漸進的進展を考えると、所望の物理化学的特性(例えば特異性、親和性、安定性、溶解性)を有する、精製のための新たなリガンド、並びにかかる化合物を製造、精製、試験及び最適化する改善された方法が現在必要とされている。
本発明のタンパク質足場分子は、αヘリックスコイルドコイル構造へとフォールディングする。αヘリックスコイルドコイルは、特別なタイプの3D構造フレームワーク(構造モチーフ、フォールド)を形成する。コイルドコイルフォールドは、モータータンパク質、DNA結合タンパク質、細胞外タンパク質及びウイルス融合タンパク質を含む多様なタンパク質中で生じる(例えば、Burkhard et al.[Trends Cell Biol 2001, 11:82-88])。天然のタンパク質において全てのアミノ酸の3%〜5%、又はそれ以上がコイルドコイル構造の一部であることが推定されている(Wolf et al., Protein Sci 1997, 6:1179-1189)。
コイルドコイルはフォールディング(集合、オリゴマー形成)モチーフであることが機能的に特徴付けられている。すなわち、コイルドコイル構造の形成は多くの場合、種々のタンパク質鎖の非共有結合的会合を推進する。コイルドコイルは平行、逆平行又は混合トポロジーで配置されたαへリックスの二連、三連、四連又は五連の会合体であることが構造的に特徴付けられている(例えば、Lupas [Trends Biochem Sci 1996, 21:375-382])。へリックスは左巻き又は右巻きに、互いにわずかに巻きついている(wrapped (coiled, wound))(スーパーコイル形成と称される)。本発明の全ての実施形態は、三重(三連、三量体)コイルドコイル構造のみに関する。
αへリックスコイルドコイルは、各々のへリックスが一連の7アミノ酸反復から構成されるというように、それらのアミノ酸配列のレベルでさらに特徴付けられている。7アミノ酸反復(7アミノ酸単位、7つ組)とは、HppHppp(ここで、各々の「H」は(異なる可能性のある)疎水性残基を表し、各々の「p」は(異なる可能性のある)極性残基である)として記号化することのできる7残基の配列モチーフである。時折(まれに)、p残基がH位置に見られる場合があり、逆もまた同様である。7アミノ酸反復は、a−b−c−d−e−f−g(abcdefg)又はd−e−f−g−a−b−c(defgabc)というパターンによって記号化されることも多い(この場合、「a」〜「g」という添え字は、典型的なアミノ酸型が見られる通常の7アミノ酸位置を指す)。慣例により、「a」及び「d」という添え字はコイルドコイル中のコア残基(中央残基、埋没残基)の位置を示す。コアのa位置及びd位置で観察される典型的なアミノ酸型は疎水性アミノ酸残基型であり、他の全ての位置(非コア位置)では、主に極性(親水性)残基型が見られる。このため、通常の7アミノ酸パターン「HppHppp」が「abcdefg」というパターン表記に対応する(「HpppHpp」パターンは、d位置の疎水性残基から始まるコイルドコイルに対して使用されるパターン表記「defgabc」に対応する)。本発明の全ての実施形態は、コイルドコイル構造の各々のαヘリックス中に少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の連続した(中断しない)7アミノ酸反復を含む。へリックス中の連続した7アミノ酸反復の各々は「7アミノ酸反復配列」(HRS)と示される。7アミノ酸反復配列の開始及び終了は、好ましくは利用可能な場合、実験的に決定された三次元(3D)構造に基づいて決定される。3D構造が利用可能でない場合、7アミノ酸反復配列の開始及び終了は、好ましくは実際のアミノ酸配列との(HppHppp)パターン又は(HpppHpp)パターン(ここで、「H」及び「p」はそれぞれ疎水性残基及び極性残基を示し、「n」は2以上の数である)の最適な重ね合わせに基づいて決定される。その場合、各々の7アミノ酸反復配列の開始及び終了は、それぞれa位置又はd位置にある最初及び最後の疎水性残基と見なされる。通常のH残基は、好ましくはバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン、トレオニン、セリン及びアラニンからなる群、より好ましくはバリン、イソロイシン、ロイシン及びメチオニンからなる群、最も好ましくはイソロイシンから選択される。通常のp残基は、好ましくはグリシン、アラニン、システイン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン及びアルギニンからなる群から選択される。この単純な方法によって7アミノ酸反復配列へのアミノ酸残基の明白な割り当てが可能とならない場合、Lupas et al.[Science 1991, 252:1162-1164; http://www.russell.embl-heidelberg.de/cgi-bin/coils-svr.pl]のCOILS法等のような、より特殊化した分析方法を適用することができる。
コイルドコイルは熱力学的には以下のように特徴付けられる。配列がαへリックスへとフォールディングする場合、疎水性残基(H)は疎水性の継ぎ目を形成し、一方で極性残基(p)は極性面を形成する。種々のαへリックスの疎水性の継ぎ目は、コイルドコイルへと会合する場合、中央の疎水性コア(中心、内部、内側部)を形成する。このコアの形成は、溶媒に向かう極性面の配向と相まって、安定な会合に必要とされる主な熱力学的駆動力をもたらすことが想定される(ただし、或る特定の非コア残基も同様に安定性を向上し得る)。本発明の全ての実施形態は、7アミノ酸反復のH残基が疎水性コアを形成し、それにより構造のフォールディングのための主な熱力学的駆動力がもたらされる、1つのαへリックスにつき少なくとも2つの7アミノ酸反復からなる三重コイルドコイル構造に関する。
ペプチド(非単鎖)三連コイルドコイルは、オリゴマー形成に対するその依存性、したがって高い濃度依存性にもかかわらず高い熱安定性を示し得る。例えば、Suzuki et al. [Protein Eng 1998, 11:1051-1055]のIleジッパーは、80℃を超える融解(アンフォールディング、転移)温度を有することが示された。同様に、Harbury et al.[Science 1993, 262:1401-1407; Nature 1994, 371:80-83]は、GCN4由来三重コイルドコイル(GCN4−pIIと名付けられた)を設計したが、これは結晶状態及び溶液中で安定であることが見出されている。さらに、ヘテロ三量体平行コイルドコイルも首尾よく設計されている(Nautiyal and Alber, Protein Sci 1999, 8:84-90)。三量体平行配置へのペプチドの集合に関する主な規則は大変よく知られている(Yu, Adv Drug Deliv Rev 2002, 54:1113-1129]。さらに、国際出願PCT/EP2008/061886号は、非天然の熱力学的に安定なタンパク性足場の形態のペプチド三連コイルドコイルをクレームしている。本発明の分子は三連コイルドコイル構造も含むが、これは単量体タンパク質としてフォールディングする単一のアミノ酸鎖でできているという点で、ペプチドコイルドコイル(三量体複合体を形成する)とは根本的に異なる。
上記の点から三連平行コイルドコイルの設計が比較的単純であることが示唆され得るが、多くの研究によって重大な問題点が報告されている。例えば、平行二量体として設計されたコイルドコイルが、結晶構造中で逆平行三量体として観察されている(Lovejoy et al., Science 1993, 259:1288-1293)。さらに、フォールディング動態を向上するためのトリガー配列の必要性は論議を呼んでいる(Yu、同上)。加えて、熱アンフォールディングプロセスは必ずしも単純な2状態機構に従うわけではなく(Dragan and Privalov, J mol Biol 2002,321:891-908)、集合(フォールディング)プロセスは非常に遅いこともある(Dragan et al., Biochemistry 2004, 43:14891-14900)。したがって、平行コイルドコイルについての豊富な実験データに反して、熟練した研究者らによって得られた多くの予期せぬ結果を考えると、平行αヘリックスコイルドコイル分子の設計及び適用でさえも全く明白でないと結論付けることができる。結果として、逆平行コイルドコイルの開発はさらに複雑であると予想され得る。
本発明者らは、初めにペプチド三重コイルドコイル足場の使用を検討すると同時に、適切な(すなわち意図された、機能的な)フォールドをとる前に溶液中で最初に三量体形成する必要があるという、かかる複合体の固有の欠点に対する実際的な解決策を見出そうとした。かかる解決策は、最終的に単鎖バージョンの三量体の形態(第1の構成αへリックスのC終端(C末端)が第2のαへリックスのN終端(N末端)に結合(接合、連結)し、第2のαへリックスのC終端が第3のαへリックスのN終端に結合(接合、連結)している)下で見出された。Harris et al. [J Mol Biol 1994,236:1356-1368]の用語法に従うと、平行へリックス間の結合は「オーバーハンド」(又は「長い」)結合と呼ばれ、逆平行へリックス間では結合は「アンダーハンド」(又は「短い」)結合と呼ばれる。本発明の実施形態では、連続したαへリックス間の結合が、構造的に柔軟性のあるリンカー断片の使用によって実現され、3つのαへリックスが2つの柔軟性のあるリンカーによって連結した構築物を生じる。本発明の全ての実施形態はこのタイプの配置に属する。本発明の分子はしたがって、形式的には式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は、上記式に示す順序で共有結合的かつ連続的に相互接続したアミノ酸配列断片を表し、断片HRS1、HRS2及びHRS3は上で記載されるような7アミノ酸反復配列を表し、断片L1及びL2は構造的に柔軟性のあるリンカー配列である)の配列として表現することができる。
柔軟性のあるリンカー断片は、種々の機能単位を相互接続するためにタンパク質工学の分野で、例えば抗体の可変軽(VL)鎖及び可変重(VH)鎖に由来する単鎖可変断片(scFv)構築物の生成において頻繁に使用される。現在のところ、単鎖だが三重のコイルドコイル足場構造を生成する目的で、柔軟性のあるリンカー断片を三量体コイルドコイル構造と組み合わせて適用することは、一般に開示も予想されていない。「単鎖」が完全アミノ酸配列を指す一方で、「三重」はコイルドコイル構造が3つの個々のαヘリックスストランド(鎖断片)からなることを示す一般用語であるため、「単鎖だが三重の」という表現に矛盾はない。本発明の全ての実施形態は、三連コイルドコイル構造内に柔軟性のあるリンカーセグメント(断片)をちょうど2つ含む。リンカーセグメントは必ずしも長さ又はアミノ酸配列が同一であるわけではない。しかし、リンカーセグメントが溶液中で立体配座的に柔軟性を有する可能性を増すには、主に極性アミノ酸残基型から構成されるのが好ましい。柔軟性のあるリンカーにおいて典型的な(頻繁に使用される)アミノ酸はセリン及びグリシンである。あまり好ましくはないが、柔軟性のあるリンカーは、アラニン、トレオニン及びプロリンも含み得る。上記のより好ましいアミノ酸と組み合わせて、システイン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン及びアルギニン、又はそれらの非天然誘導体を含むことは、(望ましくない相互作用のリスクが増大するために)さらに好ましくない。
リンカー断片と7アミノ酸反復配列とを区別する好ましい単純な方法は、最初に上に記載の方法のいずれかによって7アミノ酸反復配列を決定し、次いで残りのアミノ酸断片をリンカーに加えることである。この方法は、実験的に決定されたタンパク質分子の3D構造が存在しない場合、及びかかる構造が1つ又は複数存在する場合のどちらにも適用される。このような実験的に決定された構造(複数可)によって、いずれかのリンカーの構造的に柔軟性のある状態に関して不確かさ又は曖昧さが生じる場合、「柔軟性のあるリンカー」という概念は、構造的に動的な又は可動性のある断片としてではなく、単に2つの7アミノ酸反復配列間を結合(連結、架橋)することが可能な断片として解釈されるものとする。
本発明における柔軟性のあるリンカーの使用は、線形アミノ酸配列(単鎖構築物)を生成する目的で、αヘリックス断片を相互接続することが主に意図される。これは技術的に単純であるが、考慮すべき重要な点は各々のリンカーの長さ(アミノ酸残基数)である。へリックスが同じ数の残基を含む平行コイルドコイルについては、3D空間における所与のαへリックスの終わり(C末端)から、隣接するαへリックスの始まり(N末端)までの距離(オーバーハンド結合)は、「αへリックス1つ当たりの残基数×1.5オングストローム」という式によって概算することができる。伸長立体配座でリンカーによって架橋することのできる距離は、「リンカー断片中の残基数×3.0オングストローム」という式によって概算することができる。したがって、原則として、緩和状態でオーバーハンド結合を可能とするためには、リンカーはαへリックス1つ当たりの数の少なくとも半分の残基を有していなくてはならない(この規則の例外は、へリックスの長さが異なるか、又はへリックス−リンカーターンが容易には作製されない場合に適用される:このような場合、少数のさらなるリンカー残基を加えるのが好ましい)。
重要なことには、上記規則は平行配向を強要する方法ではなく、平行配置でαヘリックス要素間のオーバーハンド結合に必要とされる最小リンカー長を算出する実用的方法を提供する。溶液中での柔軟性のあるリンカーの立体配座は、本質的に構造がランダムであり、挙動が動的である(すなわち、時間とともに構造的に変動する)か、又は少なくともそのように意図される。したがって、「十分な長さの」リンカーは平行フォールディングを許容するが、強要するものではない。逆に、「不十分な長さの」リンカー(「短過ぎるリンカー」)は平行フォールディングを許容せず、したがってアンフォールディング、又は代替フォールドの形成(ただし、そのフォールド自体が安定である)を誘導する。このような代替フォールドの1つの可能性は、逆平行コイルドコイル構造である:逆平行へリックス間の連結(アンダーハンド結合)についての要件は、トポロジー的に非常に複雑であるが、全体的にはあまり制限的でない。言い換えると、平行配向でαへリックス間の距離を架橋するのに大幅に短過ぎるリンカーは、逆平行フォールディングを許容する可能性が高い。重要なことには、このことは、このように短いリンカーが逆平行フォールディングに必要とされるか、又はそれを必ず誘導することを示唆するものではなく、これは本質的には、逆平行モードで物理的かつ熱力学的に安定なコア(おそらくは非コア残基間のさらなる有利な相互作用によってさらに増強されている)が形成される可能性に左右される。
三量体コイルドコイル構造が、まれな例外を除いて平行配向でフォールディングすることが観察されているが、同じ配列が安定な逆平行フォールディングをとることもできるとは考えにくい。本発明者らは平行フォールディングには大幅に短過ぎるリンカーを備える単鎖三重コイルドコイル構造を作製し、特性化したため、このことは本発明に特に関連するが、この分子はαヘリックス含量を完全に保存したまま、熱アンフォールディング実験(実施例5を参照されたい)において転移温度にごくわずかな影響しか与えずにフォールディングした。これらの実験に基づいて、これらの構築物が(おそらくは長いリンカーを有する構築物も)、推定上は逆平行フォールディングをとることが結論付けられた。
逆平行フォールディングが構造的に実現可能であるか否かを試験するために、本発明者らは、第2のαへリックス(「B」)が第1のαへリックス(「A」)及び第3のαへリックス(「C」)に対して逆平行である、単鎖三量体コイルドコイルの3Dモデルの作成を試みた。予想外にも、規則的な「ノブ・イントゥー・ホール(knobs-into-holes)」充填を有する確かなモデルを、標準的なタンパク質モデリング操作(実施例7を参照されたい)によって作成することができた。全てのコア形成側鎖をそれらの最も緩和した回転異性体立体配座に位置付けることができた。興味深いことに、逆平行Bへリックスの通常の7アミノ酸a位置はAへリックス及びCへリックスのd残基(d層)に充填される。このように、Bへリックスはその全長にわたってAへリックス及びCへリックスと相互作用し、全ての7アミノ酸コア位置がフォールドの安定性に寄与することが示唆される。このことは逆平行フォールディングが事実であることを証明するものではないが、元の仮説とは対照的に、モデリング結果はそれが少なくとも構造的に実現可能であることを示唆している。
同様の予期せぬ観察結果が、Lovejoy et al. [Science 1993, 259:1288-1293]によって、「Coil−Ser」(二重平行コイルドコイルを形成するように設計されたが、実際には三重コイルドコイルへと集合するペプチドである)についてなされている。この構造は、8つの層(平行へリックス内の各々のa層が逆平行へリックスに由来するd残基に会合し、各々のd層がa残基に会合することが見出された;これらの層はそれぞれ「a−a−d」及び「d−d−a」と称される)からなる意図せぬ独特の疎水性界面によって安定化されていた。Holton and Alber [Proc NatlAcad Sci USA 2004,101:1537-1542]による別の研究では、GCN4ロイシンジッパーAla突然変異体が同様にデフォルトの平行二量体配置から逆平行三量体配置へと転換した。この構造転換は、コア内のキャビティの生成の回避によるものであることが見出された。交互に重なったa−a−d層及びd−d−a層への同じ配置がHolton and Alberの研究と同様に見出された。重要なことには、これらの研究はどちらもロイシン残基(「Leuジッパー」)によって形成されるコアを有するコイルドコイルに関するものであったが、本発明者らはイソロイシン残基(「Ileジッパー」)によって形成されるコアを有するコイルドコイルについての逆平行配向を観察した(これまでは、Ileジッパーが逆平行三連コイルドコイルを形成することは見出されていなかった)。第2に、上記研究はどちらもペプチドコイルドコイルに関するものであったが、本発明の分子は単鎖コイルドコイルのみに関する(これまで、逆平行三連コイルドコイルが単鎖分子(単鎖フォーマット)の形態で生成されたことはなかった)。これらのタンパク質分子の逆平行配向がリンカー断片の存在によるものであるか、又はそれらの特定のアミノ酸配列によるものであるか、又はその他の理由によるものであるか、又はこれらの理由の組み合わせによるものであるかは定かではない。いずれにしても、本発明の分子の3Dモデルも、Lovejoy et al.(同上)及びHolton and Alber(同上)により引用された研究に記載される結晶構造も、全て規則的な間隔の層に規則的に充填されたコア残基を有する実際のコイルドコイル構造である。この点によりこれらは普通の3へリックス束と異なっている。
三重逆平行コイルドコイル構造を普通の3へリックス束と混同してはならない。規則的なコイルドコイルではない3つのαへリックスの会合体(束)の例は十分にある。αへリックスの束は、主にαヘリックスからなるタンパク質の多数において観察することができ、3つの相互に作用するへリックスは多くの場合、かかるタンパク質において識別することができる。三重コイルドコイルは明らかに3つのαへリックスの束でもあるが、3へリックス束がコイルドコイルとなるには、多数のさらなる条件が満たされる必要がある。第1に、3つ全てのへリックスが相互に作用する必要があり、それにより3つのへリックスの可能なペアのうち2つのみが互いに接触するというトポロジー(非凝集トポロジー)が排除される。第2に、適度なスーパーコイル形成(すなわち、へリックスが互いに巻きつくこと)が存在しなくてはならない。スーパーコイル形成の主要決定因子は、各々のへリックスペア間の角度(へリックス間角度、へリックス間相互作用角度、交角)である。平行αへリックスについては、この角度は「右巻き」スーパーコイル形成に対する小さな負の値(典型的には約−10度〜0度の範囲)から、「左巻き」スーパーコイル形成に対する正の値(典型的には約20度〜0度の範囲)まで様々であり得る。逆平行αへリックスについては、上記値から180度減ずるものとする。過度に高い角度(逆平行αへリックスには絶対値で40度が設定される)を有するトポロジーは、コイルドコイルとは見なされない。第3に、相互作用するαへリックス(上に規定される)の各々において識別可能な7アミノ酸反復が存在しなくてはならない。実際のコイルドコイルは、αへリックスの各々に少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの7アミノ酸反復を含む。第4に、αへリックスは平行二量体、三量体及び四量体コイルドコイルについてはHarbury et al.[Nature 1994, 371:80-83]に、逆平行三量体コイルドコイルについてはLovejoy etal. [Science 1993, 259:1288-1293]に示されるように、ノブ・イントゥー・ホール方式で相互作用するそれらの側鎖によって互いに密集していなくてはならない。Walshaw et al. [J Struct Biol 2003, 144:349-361]は、より精緻な規則及び実際のコイルドコイルと多重へリックス会合体とを区別する方法を記載している。
上記の点に加えて、本発明のタンパク質分子は単離タンパク質として存在し、「コイルドコイルのCC+データベース」(http://coiledcoils.chm.bris.ac.uk/ccplus/search/periodic_table)に挙げられる或る特定の種類の複合コイルドコイル会合体の場合のように、溶液中でのその安定なフォールディングのために会合したさらなるαへリックス(又は他のタンパク質断片)を必要としない。
さらに、本発明のコイルドコイル構造は、それらの7アミノ酸反復配列に不規則(すなわち、どもり(stammers or stutters))を含有しない、つまり配列に沿って連続したコア残基(通常の7アミノ酸「a」及び「d」位置にある)間に標準的な3残基〜4残基の間隔を有する。
本発明の分子はまた、測定することが可能である限り(すなわち、3D構造を得ることができるのであれば)、逆平行コイルドコイルフォールド内に存在する2つの平行αへリックスにおいて反復した規則的な間隔のコア「a」残基の層(a層)及びコア「d」残基の層(d層)を有するという点で、高度の構造的対称性を有する。コア残基はフォールディングのタイプの主要決定因子となるため、構造的対称性をアミノ酸配列に基づいて、すなわちコアアミノ酸残基の適当な選択によって識別する、さらには強要することができる。かかる構造的対称性は設計作業を管理しやすくするため、非天然の(設計)コイルドコイル分子を開発するうえで重要である(不規則構造は新たに設計することができない)。さらに、対称性をコア残基のレベルで導入することによる構造的対称性の生成は、高度に安定な、規則的なコイルドコイルへとフォールディングする可能性を大幅に向上する。
規則的なa層及びd層の形成を確実にすることの1つの可能性は、コア位置での巨大な芳香族残基(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)及び微小な残基(グリシン、アラニン)の選択を回避することである。規則的なa層及びd層を促進する別の方法は、適度なサイズの疎水性コア残基、例えばイソロイシン、ロイシン、メチオニン及びバリン等を選択することである。規則的なa層及びd層を得るさらに別の方法は、連続したコア層において同じアミノ酸残基を(例えば、全てのa層の位置でイソロイシンを)選択することである。規則的なコア層を得るさらに別の方法は、隣接するαへリックスの同等位置において同じアミノ酸残基を(例えば、第1及び第3のαへリックス(これらのへリックスはコイルドコイル構造の平行へリックスを形成する)の両方において最初の7アミノ酸a位置でイソロイシンを)選択することである。概して、コア位置でのアミノ酸配列の対称性が高いほど、設計分子が所望されるようにフォールディングする可能性が高くなる。このため、本発明の分子は少なくとも幾らかの、好ましくはかなりの、最も好ましくは高度の配列対称性、したがって構造的対称性を有する。
対称性の有無は、本発明の分子と既知の3へリックス束(本発明の実施形態を形成しない)との間の適切な識別因子となる。実際は、高度に対称的なコイルドコイルはオリゴマーとしてのみ観察され、単鎖分子としては観察されない(この観察結果の背景にある理由は複雑であり、興味深いが、ここではほとんど重要でない)。逆に、天然の単鎖3へリックス束は非常に稀なだけでなく(通常は大きなタンパク質又は複合体中の小さな逆平行ドメインとして生じる)、内部対称性を著しく欠いている。
逆平行3へリックス束に最も近い従来技術の例は、ヒトGGA1 GATドメインのPDB構造に見られる(Zhu et al., EMBO J 2004, 23:3909-3917; PDB code: 1X79)。GGA1 GATドメインの残基210〜302は、逆平行3へリックス束モチーフ(おそらく本発明の逆平行コイルドコイル構造と混同される可能性がある)を形成する。この束にある第1のαへリックスは第3のへリックスと概ね平行に走り、第2のへリックスはこれらと逆平行に配向する。充填は比較的密であり、ノブ・イントゥー・ホール方式で行われる。しかしながら、その構造中にa層及びd層がないこと、並びにへリックス1及びへリックス3のアミノ酸配列中に構造的に類似した7アミノ酸コア残基がないこと(大きな残基(1つのアルギニン、1つのチロシン)及び小さな残基(2つのアラニン)が、混合した脂肪族コア残基(バリン、イソロイシン、ロイシン)と互いに入り込んでいる)から認めることができるように、この2つの平行へリックスは充填対称性を欠いている。さらに、結晶学者らは、GATドメインをコイルドコイルとは表しておらず(3へリックス束と表してはいる)、一方で結合したラバプチン−5リガンドを(二量体)コイルドコイルと分類している。非コイルドコイル3へリックス束の他の例としては、ブドウ球菌プロテインAのBドメイン、Eドメイン及びZドメイン並びにビリンヘッドピース(villin headpiece)の三次構造が挙げられる。
本発明の特定のタイプ及びフォーマットのコイルドコイル形成分子は天然では観察されないが、それが本発明の分子を「非天然」と称するのが好ましいということの理由の1つである。
本発明は主に、式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は共有結合的に相互接続したアミノ酸配列断片を表す)によって表される単離単鎖タンパク質であって、
a)HRS1、HRS2及びHRS3は各々独立して、a−b−c−d−e−f−gとして表される、7残基のアミノ酸の繰り返しパターンからなる7アミノ酸反復配列であり、
b)L1及びL2は各々独立して、1個〜30個のアミノ酸残基からなるリンカーであり、上記タンパク質が、三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する該HRS1、HRS2及びHRS3断片によって水溶液中で自発的にフォールディングする、単離単鎖タンパク質に関し、本発明の好ましい実施形態はこれを含む。
より明確に述べると、本発明は主に、式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は共有結合的に相互接続したアミノ酸配列断片を表す)によって表される非天然単離単鎖タンパク質であって、上記タンパク質が、三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する該HRS1、HRS2及びHRS3断片によって水溶液中で自発的にフォールディングし、
a)HRS1、HRS2及びHRS3は各々独立して、(a−b−c−d−e−f−g−)又は(d−e−f−g−a−b−c−)として表される、7残基のアミノ酸型のn回の繰り返しパターンを特徴とする7アミノ酸反復配列であり、ここで該パターンの要素「a」〜「g」は、上記アミノ酸型が位置する通常の7アミノ酸位置を示し、nは2以上の数であり、
b)通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」は主に疎水性アミノ酸型によって占められており、通常の7アミノ酸位置「b」、「c」、「e」、「f」及び「g」は主に親水性アミノ酸型によって占められており、結果として生じる疎水性アミノ酸型と親水性アミノ酸型との間の分布によって、上記7アミノ酸反復配列の同定が可能となり、
c)L1及びL2は各々独立して、明確に7アミノ酸反復配列に割り当てることのできない任意のアミノ酸残基を含む、1個〜30個のアミノ酸残基からなるリンカーである、非天然単離単鎖タンパク質に関し、本発明の好ましい実施形態はこれを含む(上記タンパク質は以下で「単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質」として表される)。
上述の「単離(isolated)」という特性は、実質的には本発明のタンパク質が、上にも説明されているように、リガンド(例えば他のタンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、イオン等)とさらに会合するか、又はより大きなタンパク質コンテクスト(context)内に(すなわち、融合構築物内に又はドメインとして)埋め込まれる必要のない安定な構造を形成するという要件に関する。
上述の「非天然」という特性は、実質的には本発明のタンパク質が、天然で、天然のタンパク質として、又は天然に生じるタンパク質ドメインとして観察されないという要件に関する。それらと天然のタンパク質又はドメインとが区別されるには、アミノ酸配列同一性のパーセンテージは好ましくは90%未満、より好ましくは80%未満、最も好ましくは70%未満に相当する。「非天然」という用語はまた、そのタンパク質が人為的に、好ましくは合理的根拠に基づいて設計された、又は考え出されたものであるという事実を指す。
上述の「単鎖」という特性は、実質的には本発明のタンパク質が、オリゴマー(二量体、三量体等)会合体ではなく単一のアミノ酸鎖(ポリぺプチド鎖)でできているという事実に関する。これは本発明のタンパク質を溶液中で単量体として単離することができるという意味を含む。しかしながら、このことは、本発明のタンパク質がin vitro又はin vivoで他の分子、生物学的実体又は非生物学的物質と相互作用する(会合する、複合体を形成する、結合する)ことができるという可能性を排除するものではない。
上述の「タンパク質」という特性は、実質的には直鎖状に配置され、溶液(水溶液、水に富んだ培地)中で球状の形態へとフォールディングする、アミノ酸(アミノ酸残基、任意に非天然の又は誘導体化されたアミノ酸)から構成されるポリぺプチドを意味する。
上述の「自発的に」という用語は、実質的には「妥当な(極端でない)時間内に妥当な条件下で自然に」ということを意味する。
上述の「フォールディング」という用語は、実質的には鎖内の原子間相互作用によって特徴付けられ、推進される、球状の(小型の「球体様の」)フォールドの形成を意味する。
上述の「三重」、「逆平行」、「コイルドコイル構造」、「7アミノ酸反復配列」、「パターン」、「通常の7アミノ酸位置」、「主に〜によって占められている」、「疎水性アミノ酸型」、「親水性アミノ酸型」、「リンカー」及び「明確に7アミノ酸反復配列に割り当てる」という用語は、本明細書の他の部分で説明されるような意味を有する。これらは当該技術分野で一般的な用語法に最大限に従うように選択される。
本発明は上記タンパク質を製造する方法にも関する。かかる方法は、例えば実施例5に記載されるように、細菌宿主において上記タンパク質を発現させることを含む。代替的には、上記タンパク質の発現は酵母細胞又は昆虫細胞等の真核細胞系において行ってもよい。代替的には、上記タンパク質のサイズが小さければ、当該技術分野で既知のプロセス工程を用いた化学合成によるその製造が可能となる。
本発明の好ましい実施形態は、通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも90%又は100%(全て)が、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン、トレオニン、セリン、アラニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸によって占められている、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。上記通常の7アミノ酸位置での上記アミノ酸の好ましいパーセンテージは、上記タンパク質の設計において負うことのできるリスクレベルによって異なる。50%を下回るパーセンテージは、フォールドの正確さに対して過度に高いリスクが生じると見なされる。
本発明の別の好ましい実施形態は、通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸によって占められている、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。これらのアミノ酸は、より標準的な(よりよく観察される)コイルドコイルコア残基に相当するため、この実施形態は上記の実施形態よりも好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態は、通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、イソロイシンによって占められている、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。上記単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質の最初の発見は、通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」にイソロイシン残基を有する構築物を用いてなされたため、この実施形態が上記の実施形態よりも好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態は、通常の7アミノ酸位置「b」、「c」、「e」、「f」及び「g」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、グリシン、アラニン、システイン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸によって占められている、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。上記通常の7アミノ酸位置での上記アミノ酸の好ましいパーセンテージは、上記タンパク質の設計において負うことのできるリスクレベルによって異なる。50%を下回るパーセンテージは、フォールドの正確さ及びタンパク質の溶解性に対して過度に高いリスクが生じると見なされる。
本発明の別の好ましい実施形態は、L1及びL2が、少なくとも50%、70%、90%又は100%がグリシン、アラニン、システイン、プロリン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸であるというアミノ酸組成を有する、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。リンカー内の上記アミノ酸の好ましいパーセンテージは、上記タンパク質の設計において負うことのできるリスクレベルによって異なる。50%を下回るパーセンテージは、フォールドの正確さ、タンパク質の溶解性、及びその潜在的な機能(例えば、所与の標的への特異的結合)に対して過度に高いリスクが生じると見なされる。
本発明の別の好ましい実施形態は、L1及びL2が、少なくとも50%、70%、90%又は100%がグリシン、アラニン、セリン、トレオニン、プロリン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸であるというアミノ酸組成を有する、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。これらのアミノ酸はより標準的な(より一般に選択される)リンカー残基に相当するため、この実施形態は上記の実施形態よりも好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態は、L1及びL2が、少なくとも50%、70%、90%又は100%がグリシン及び/又はセリンアミノ酸であるというアミノ酸組成を有する、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。これらのアミノ酸は最も標準的な(最もよく選択される)リンカー残基に相当するため、この実施形態は上記の実施形態よりも好ましい。
本発明の別の好ましい実施形態は、L1及びL2の各々のアミノ酸残基数が、L1又はL2のそれぞれに先行する該7アミノ酸反復配列のアミノ酸残基数の半分未満に相当する、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。この規則を順守することで、上に説明されるような(例えば平行コイルドコイルとしての)意図せぬフォールディングのリスクが大幅に低下する。
本発明の別の好ましい実施形態は、L1及び/又はL2の末端付近のアミノ酸残基が、該コイルドコイル構造のαヘリックス末端を安定化させる、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。かかるアミノ酸の選択肢(Possibilities to select)は文献内で十分に立証されており、「へリックスキャッピングアミノ酸」又は「へリックスキャッピングモチーフ」として一般に知られている。
本発明の別の好ましい実施形態は、L1及び/又はL2の末端付近のアミノ酸残基が、該構造における局所的なターンの形成を促進する、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。かかるアミノ酸の選択肢としては、例えば、グリシン及びプロリン等のへリックス破壊アミノ酸、又はセリン若しくはアスパラギン酸等のへリックス開始アミノ酸の選択が挙げられる。或る特定のへリックスキャッピングモチーフを同じ目的で適用してもよい。代替的には、へリックス−ループ−へリックスモチーフを文献内で報告されるか、又はタンパク質データバンク(PDB)に認められるように適用してもよい。
本発明の別の好ましい実施形態は、通常の7アミノ酸位置「e」及び「g」がグルタミンによって占められている、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。本発明の逆平行コイルドコイル分子のコンピュータモデリングによって、上記位置にあるグルタミンペアが逆平行へリックス間に準理想的な相互作用(すなわち、エネルギー的に有利な水素結合)を生じさせ、それによりフォールドの全体的な安定性を増大させ得ることが示唆される。
本発明の別の好ましい実施形態は、通常の7アミノ酸位置「b」、「c」及び「f」が極性のある溶解促進アミノ酸である、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。これらの位置は最も溶媒に曝露されているため、これらの位置で極性のある、好ましくは荷電したアミノ酸を排他的に選択することによって、上記タンパク質の溶解性が大幅に向上し得る。
本発明の別の好ましい実施形態は、pHが1〜13、又は2〜12、又は3〜11、又は4〜10、又は5〜9の水溶液中でフォールディングする、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。タンパク質がフォールディングしたままでいるpH範囲は、その適用性の重要な決定因子である。例えば、極端なpH条件に対する非感受性(耐性)によって、タンパク質は、タンパク質が消化管を通過するか、又は消化管内でその機能を果たす必要がある治療的用途に好適なものとなり得る。さらに、pH非感受性タンパク質は、エンドサイトーシスに続くリソソーム経路の酸性条件に対して耐性を有していてもよい。したがって、本発明のタンパク質は、好ましくは5〜9、より好ましくは4〜10、3〜11、2〜12、最も好ましくは1〜13のpH範囲で安定である。
本発明の別の好ましい実施形態は、温度が0℃〜100℃、又は0℃〜80℃、又は0℃〜60℃の水溶液中でフォールディングする、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。熱安定性は全体的な安定性(タンパク質分解安定性及び長期安定性すなわち「保存期限」を含む)、したがって同様に機能の保存の重要な決定因子である。本発明のタンパク質は、好ましくは0℃〜60℃、より好ましくは0℃〜80℃、最も好ましくは0℃〜100℃の温度範囲で安定である。
本発明の別の好ましい実施形態は、イオン強度が0モル〜1.0モルの水溶液中でフォールディングする、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。生理的条件では、約150ミリモルのイオン強度(概ね塩濃度に対応する)で安定なフォールディング及び機能の保存が要求される。本発明のタンパク質は、好ましくはより広い範囲のイオン強度、最も好ましくは0モル〜1モルの範囲で安定である(かつ機能的に活性を有する)。
本発明の別の好ましい実施形態は、足場として使用される、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。本発明のタンパク質分子は、上に説明されるように、足場として非常に有用である。
本発明の別の好ましい実施形態は、図15に示される、単鎖逆平行コイルドコイルタンパク質に関する。
本発明のタンパク質には、タンパク質のコイルドコイルフォールドを損なう(変化させる、破壊する)ことなく、当該技術分野の知識を用いた数多くの修飾、例えば(多重)アミノ酸置換、非天然アミノ酸の導入、特定の化学的部分の付加、ペプチド伸長、標識、自己連結(self-concatenation)、融合タンパク質への連結等による結合活性の向上等が可能である。高度な改変工程を受けるタンパク質の潜在的可能性を例示するために、かかる修飾の多くをここで系統立てて説明することができる。具体的には、本発明者らは以下の改変構築物(全て、その特定の特徴の全てを有する本発明のタンパク質を含む)を考慮する:
任意の本発明のタンパク質をアミノ酸配列において修飾し、それにより1つ又は複数のその誘導体を生成してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えばその安定性を向上するために修飾してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えばそのフォールディング動態を向上するために修飾してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えばそのフォールディング状態の正確さを向上するために修飾してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えば標的化合物へのその結合親和性を向上するために修飾してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えば標的化合物に対するその結合特異性を向上するために修飾してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えばその溶解性を向上するために修飾してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、そのN終端及び/又はC終端で、又はその側鎖の1つ又は複数で任意の他のタンパク質又はタンパク性分子と共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えば結合活性を増大するために、同じタンパク質又は誘導体の他のコピーと共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、例えば二重特異性又は多重特異性をもたらすために、異なる結合特性を有する任意のタンパク質又は誘導体と共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、本発明に関しない任意の既存の天然又は非天然のタンパク質又はタンパク質ドメイン又はペプチド(Fcドメイン、Fc受容体、血清アルブミン、蛍光タンパク質、別のタイプのタンパク質分子等が挙げられるが、これらに限定されない)と共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、1つ又は複数の検出タグに共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、1つ又は複数の精製タグに共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体を、1つ又は複数のタンパク質側鎖部分との化学反応によって有機化合物と共有結合的に連結してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体をグリコシル化してもよい;
任意のタンパク質又は誘導体をペグ化してもよい。
本発明のタンパク質及びその誘導体が安定な小型の構造を形成するという事実を考えると、それらは原理上はタンパク質に適用可能な全ての技法によって構築又は操作することができる。
本発明のタンパク質分子は、当該技術分野で既知の技法に従って合成するか、又は同様に当該技術分野で既知の技法を用いた遺伝子工学によって生成することができる。遺伝子工学的技法によって生成した場合、本発明のタンパク質分子はポリヌクレオチド(本明細書中で核酸とも称される)、好ましくはDNA又はRNAによってコードされる。本発明のタンパク質分子は、タンパク質分子が産生される宿主生物の遺伝コードの縮重に従って任意の核酸によってコードされ得る。
本発明のポリヌクレオチド(本明細書中で核酸とも称される)は、組み換えベクター、例えばクローニングベクター又は発現ベクターに組み込むことができる。「ベクター」という用語は発現ベクター、形質転換ベクター及びシャトルベクターを含む。「発現ベクター」という用語は、in vivo又はin vitroでの発現が可能な構築物を意味する。「形質転換ベクター」という用語は、1つの実体から別の実体(同じ種であっても、又は異なる種であってもよい)へと移動することが可能な構築物を意味する。構築物が1つの種から別の種へと(例えばMMLV又はFIV等のウイルスベクターから、ヒト又は哺乳動物の初代細胞若しくは細胞株へと)移動可能な場合、形質転換ベクターは「シャトルベクター」と称される場合もある。多種多様の発現系を種々の宿主において使用することができる。例えばエピソーム、染色体及びウイルスに由来する系(例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、SV40等のパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス及びレトロウイルスに由来するベクター)がある。DNA配列は様々な技法によってベクターに挿入することができる。DNA配列は概して、当該技術分野で既知であり、当業者の知識の範囲内であると見なされる手順によって適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を指示する適当な制御配列(すなわちプロモーター)に動作可能なように連結される。本発明のベクターを下で記載されるような好適な宿主細胞に形質転換して、本発明のタンパク質分子の発現をもたらすことができる。したがって、さらなる態様では、本発明は、タンパク質分子をコードするコード配列のベクターによる発現をもたらす条件下で、上に記載されるような発現ベクターを形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞を培養すること、及び発現されたタンパク質分子を回収することを含む、本発明によるタンパク質分子を調製するプロセスを提供する。ベクターは、例えば複製起点、任意にポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意に該プロモーターの調節因子を備える、プラスミドベクター、ウイルスベクター又はバクテリオファージ(ファージ)ベクターであり得る。本発明のベクターは、1つ又は複数の選択可能なマーカー遺伝子を含有し得る。産業用微生物に最も好適な選択系は、宿主生物における突然変異を必要としない選択マーカー群によって形成されるものである。真菌選択マーカーの例は、アセトアミダーゼ遺伝子(amdS)、ATP合成酵素サブユニット9遺伝子(oliC)、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pvrA)、フレオマイシン及びベノミル耐性遺伝子(benA)である。非真菌選択マーカーの例は、細菌G418耐性遺伝子(これは哺乳動物細胞、酵母においても使用することができるが、糸状菌において使用することはできない)、アンピシリン耐性遺伝子(大腸菌)、ネオマイシン耐性遺伝子(哺乳動物細胞)及びβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードする大腸菌uidA遺伝子である。ベクターは、例えばRNAの製造のためにin vitroで使用しても、又は宿主細胞にトランスフェクト若しくは形質転換するために使用してもよい。したがって、本発明のポリヌクレオチド又は核酸は、組み換えベクター(典型的には複製可能なベクター)、例えばクローニングベクター又は発現ベクターに組み込むことができる。ベクターは、適合する宿主細胞において核酸を複製するために使用してもよい。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入すること、該ベクターを適合する宿主細胞中に導入すること、及び該宿主細胞をベクターの複製をもたらす条件下で増殖させることによる、本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。ベクターを宿主細胞から回収してもよい。好適な宿主細胞を発現ベクターとの関連で下に記載する。「宿主細胞」という用語は、本発明との関連では、本発明による組み換えタンパク質及び/又はそれから得られる産物をコードするヌクレオチド配列を含み得る任意の細胞(プロモーターが宿主細胞中に存在する場合、それによって本発明によるヌクレオチド配列の発現が可能となる)を含む。したがって、本発明のさらなる実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞を提供する。好ましくは、上記ポリヌクレオチドは、上記ポリヌクレオチドの複製及び発現のためのベクターに搭載される。細胞は上記ベクターと適合するように選択され、例えば原核細胞(例えば細菌細胞)であっても、又は真核細胞(すなわち、哺乳動物細胞、真菌細胞、昆虫細胞及び酵母細胞)であってもよい。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、Sambrook, et al.,eds. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring HarborLaboratory Press, New York, NY, USAに記載されるような方法によって行うことができる。これらの方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスベクション、マイクロインジェクション、形質導入、スクレープローディング及びバリスティック導入が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な宿主の例としては、細菌細胞(例えば大腸菌細胞、放線菌(Streptomyces)細胞)、酵母細胞及びコウジカビ(Aspergillus)細胞等の真菌細胞、ショウジョウバエS2細胞及びヨトウガ(Spodoptera)SF9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS細胞、HEK細胞、HeLa細胞及び3T3細胞等の動物細胞が挙げられる。適当な宿主の選択は当業者の知識の範囲内であると見なされる。本発明のタンパク質分子をコードするポリヌクレオチドの性質、及び/又は発現されたタンパク質のさらなるプロセシングの望ましさに応じて、酵母又は他の真菌等の真核宿主が好ましい場合がある。概して、酵母細胞は操作がより容易であることから真菌細胞よりも好ましい。本発明の範囲内の好適な発現宿主の例は、アスペルギルス種及びトリコデルマ種等の真菌、エシェリキア種、ストレプトミセス種及びシュードモナス種等の細菌、並びにクルイベロミセス種及びサッカロミセス種等の酵母である。例えば、典型的な発現宿主は黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ツビゲニス(Aspergillus nigervar. tubigenis)、アワモリコウジカビ(Aspergillus nigervar. awamori)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatis)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、ニホンコウジカビ(Aspergillus orvzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から選択され得る。好適な宿主細胞(哺乳動物、酵母、昆虫及び真菌の宿主細胞等)は、本発明の組み換え発現産物に最適な生物活性を与えるために必要とされ得る翻訳後修飾(例えばミリストイル化、グリコシル化、切断、及びチロシン、セリン又はトレオニンのリン酸化)をもたらすことができる。前述の通り、宿主細胞は原核細胞であっても、又は真核細胞であってもよい。好適な原核宿主の一例は大腸菌である。原核宿主の形質転換の教示は当該技術分野で十分に文書化されており、例えばSambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring HarborLaboratory Press, New York, NY, USA)及びAusubel et al. (Current Protocols inMolecular Biology (1995), John Wiley & Sons, Inc.)を参照されたい。好ましい実施形態では、形質転換した宿主は哺乳動物細胞、又は例えば昆虫細胞であり、上記宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、例えばSambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring HarborLaboratory Press, New York, NY, USA)に記載されるような方法によって行うことができる。これらの方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスベクション、マイクロインジェクション、形質導入、スクレープローディング及びバリスティック導入が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、トランスジェニック生物は酵母であり得る。この点に関し、酵母は異種遺伝子発現の媒体として広く使用される。サッカロミセス・セレビシエ種は長年にわたって産業的に使用されている(異種遺伝子発現への使用を含む)。サッカロミセス・セレビシエにおける異種遺伝子の発現は、Goodey et al. (1987,Yeast Biotechnology, D. R. Berry et al., eds, pp401-429, Allen and Unwin, London)及びKing et al. (1989, Molecular and Cell Biology of Yeasts, E. F.Walton and G. T. Yarronton, eds,pp 107-133, Blackie, Glasgow)に概説されている。本発明によると、本発明のタンパク質分子の製造は、1つ又は複数の本発明のポリヌクレオチドを形質転換した真核又は原核発現宿主を、通常の栄養発酵培地において培養することによって行うことができる。適当な培地の選択は、発現宿主の選択に基づいて、及び/又は発現構築物の調節上の要件に基づいて行われ得る。かかる培地は当業者に既知である。培地は必要に応じて、他の潜在的な汚染微生物よりも形質転換した発現宿主に好都合なさらなる成分を含有していてもよい。
実施例1.コア残基及び非コア残基を有する合成ペプチドのアミノ酸配列
本実施例は、本発明に関する特定のペプチドのアミノ酸配列を提供する。アミノ酸配列AIAAIQKQIAAIQKQIAAIQKQIAは、1文字表記で表示され、Aはアラニン、Iはイソロイシン、Qはグルタミン、Kはリシンを指す。このアミノ酸配列を有するペプチドは、疎水性コア(中心、内部)を形成するそのイソロイシン及びロイシンアミノ酸残基、並びに溶媒に向かって配向するその他の残基によって三重αヘリックスコイルドコイル複合体を形成する。この人工ペプチドは、図1中で「HR1」、「HR2」及び「HR3」と表示された3つの7アミノ酸反復を含む。
図1は、7アミノ酸反復(HRx)、コア残基(黒色のボックス)、非コア残基(灰色のボックス)及び隣接領域(白色のボックス)を含む人工ペプチドのアミノ酸配列の概略図である。このペプチドは、「t」と表示されたC末端7アミノ酸コア残基をさらに含む。このペプチドは、それぞれ「N」及び「C」と表示されたN末端及びC末端の隣接断片をさらに含む。各々の7アミノ酸反復残基は、「a」〜「g」という添え字及び7アミノ酸反復数に対応する数字によってさらに注記されている。コア残基はa位置及びd位置に位置する。3つの完全7アミノ酸反復の6つのコア残基は全てイソロイシンである。「a4」と表示されたイソロイシン残基は、部分7アミノ酸反復「t」に属する。7アミノ酸反復HR1、HR2及びHR3、並びに部分7アミノ酸反復「t」は共に、コア残基a1で始まってコア残基a4で終わる7アミノ酸反復配列を構成する。
実施例2.三重αヘリックスコイルドコイル複合体の原理
7アミノ酸コア残基は、図2に示すように三重αヘリックスコイルドコイル複合体中で溶媒から遮蔽されている。接触するコア残基(図2中の位置A及びD)間の非共有結合的相互作用によって、ペプチドがかかるフォールドをとるための主な熱力学的駆動力がもたらされる。
図2は三重αヘリックスコイルドコイル構造のヘリカルホイール表示である。左のパネルは平行コイルドコイルの上面図を示す。右のパネルは逆平行コイルドコイルの上面図を示す。中央のパネルは7アミノ酸反復位置の線形配列を示す。明確にするために1つの7アミノ酸反復のみを表示する。異なる色合いを用いて特定の位相的位置を示している。
コア残基(位置A及びD)は複合体中に完全に埋没しており、溶媒接触可能(solvent accessible)でない。非コア残基(位置B、C、E、F及びG)は、少なくとも部分的に溶媒接触可能であり(位置E、GはB、Cより低く、位置B、CはFより低い)、複合体の安定性に(重大な)影響を与えることなくアミノ酸置換を受けやすい。
実施例3.αヘリックス構造及び可逆的フォールディング/アンフォールディング
ペプチドαヘリックスコイルドコイルは、単鎖タンパク質へとフォールディングしないため本発明の主題を形成しない。しかしながら、本発明の単鎖タンパク質は三量体コイルドコイル領域を含む。明らかに、N終端とC終端とをリンカー断片によって結合することは、フォールディング動態に影響を与える可能性がある(与える)が、「切り取られた」コイルドコイルペプチドの本質的な物理的特性は全体的に保存されることが予想される。したがって、ペプチドコイルドコイルを研究システムとすることができる。
溶液中での参照人工ペプチドのαヘリックス二次構造の量的形成を実証するために、本発明者らはアミノ酸配列Ac-MSIEEIQKQQAAIQKQIAAIQKQIYRMTP-NH2を有するペプチドを合成し、円二色性(CD)スペクトルを記録した。このアミノ酸配列は1文字コードで表記され、Ac−及び−NH2はそれぞれ、ペプチドがアセチルから開始され、アミドで終端されることを意味している。このペプチドは、末端のαヘリックス性を改善するためにアミノ(N)終端及びカルボキシ(C)終端に修飾(キャッピングと称されることが多い)を有する、三重の7アミノ酸反復配列(IAAIQKQ)×3から構成される参照ペプチドの誘導体と見なされる。より具体的には、参照配列の第1の7アミノ酸において2つのアラニン残基(AA)を2つの連続したグルタミン酸残基(EE)に置換すると共に、隣接残基Ac−MS−をN末端に結合した。さらに、アミノ酸イソロイシン(I)及びメチオニン(M)が通常の7アミノ酸のa位置及びd位置に位置し、この隣接配列が不完全ではあるが追加の7アミノ酸を形成するように、隣接残基−IYRMTP−NH2をC末端に結合した。チロシン(Y)を溶媒に向かって配向するb位置に導入し、分光光度法による濃度決定が可能となった。アルギニン(R)残基、トレオニン(T)残基及びプロリン(P−NH2)残基を導入し、C末端へリックスキャッピングが改善された。加えて、コイルドコイル形成ペプチドが正しい(意図された)形で会合するようにする、すなわち三量体複合体の形成を確実にし、可能性のある7アミノ酸レジスターシフト(register shifts)を回避するように、第2の7アミノ酸のa位置のイソロイシン(I)残基をグルタミン(Q)残基によって置き換えた(Eckert et al., J Mol Biol 1998,284:859-865)。
上記合成ペプチドを、20mMリン酸緩衝液(PBS)、150mM NaCl(pH7.2)中に292μMの濃度で溶解した。CDスペクトルを5℃及び90℃で200nM〜250nMで測定した(図3)。5℃でのスペクトルは、全ての7アミノ酸領域(隣接残基の全てではない)がαヘリックスコイルドコイルとして集合し得るという予想と一致して、高いαヘリックス二次構造含量を示した。90セルシウス度でのスペクトルは、高温でαヘリックス構造が完全にではないが大きく失われたことを示した。
温度によって誘発されるへリックス状態と非へリックス状態との間の転移が可逆的であるか否かを分析するために、フォワード(アップ)及びバックワード(ダウン)熱スキャンを、温度に応じた222nMでのCDシグナルを約1セルシウス度/分の走査速度で記録することによって、同じ試料に対して行った(図4)。アップスキャン及びダウンスキャンがほぼ完全に一致することが観察され、したがって試料中のペプチドの量的なアンフォールディング及びリフォールディングが確認された。
図4の熱アンフォールディング曲線が、3分子の遊離(単量体)ペプチドとフォールディングした(三量体)複合体の1つの実体との平衡フォールディング/アンフォールディング反応を表す熱力学方程式に従うか否かをさらに分析した。この反応は一般に、3ペプチド⇔ペプチド(ここで、「⇔」は化学的平衡を指し、「ペプチド」は溶液中の単量体ペプチドを指し、「ペプチド」はフォールディングした(集合した、会合した)状態の三量体実体を指す)と表現される。この熱アンフォールディング曲線を以下の理論方程式に適合した:
Figure 2012510806
(ここで、
Figure 2012510806
であり、
T≡試料の温度(ケルビン度)、
θ(T)≡Tに応じたCDシグナルθ222nm(℃・cm・dmol−1)、
θ(T)≡Tに応じた100%遊離(単量体)ペプチドについてのCDシグナル、
θ(T)≡Tに応じた100%会合(三量体)ペプチドについてのCDシグナル、
≡全ペプチド濃度の50%が会合した転移温度、
ΔH≡単量体状態と三量体状態との間のエンタルピー差(ペプチド1モル当たりのkJ)、
ΔC≡単量体状態と三量体状態との間の熱容量差(J・mol−1・K−1)、
R≡理想(一般)気体定数≡8.31J・mol−1・K−1)。
この適合操作の結果を図5に示す。理論曲線が温度範囲全体にわたって実験曲線とほぼ完全に一致することが見出され、したがってペプチドの三量体会合が確認された。
図5は三量体会合についての理論方程式と実験データとの適合を表す。実験データは図4の「アップ」と表示した曲線から取り出す。使用した理論方程式は上に挙げた通りである。適合したパラメータ(適合結果)を図5の右側に挙げる。「Transit. T」はTに対応するが、セルシウス度で表される。パラメータ「ΔC」は3.0kJ・mol−1・K−1で一定に保った。パラメータ「θ(T)」及び「θ(T)」をTの線形関数として処理し、それぞれのオフセット及び傾きによって表される点線の直線として図の右側に示した。「RMS Resid.」は、実験データ点と理論データ点との間の差の二乗平均平方根を指す。適合した(理論)曲線自体を図面上に白色でプロットしたが、これは温度範囲全体にわたって黒色で示した実験データ点と一致している。
実施例4.全イソロイシンコア残基の使用
実施例3の参照ペプチド中の第2の7アミノ酸の位置aにあるグルタミン残基が、三量体コイルドコイルへの正しい(意図された)フォールディングに必要とされるか否かを分析するために、この残基をイソロイシンによって置き換え、全てのコア位置(C末端隣接断片中のメチオニンを除く)にイソロイシンを有する配列を有するペプチド(「Q2aI」と名付けた)を得た。この目的で、以下の配列を有するペプチドを合成した:Ac-MSIEEIQKQIAAIQKQIAAIQKQIYRMTP-NH2。
図6は、実施例3と同じ条件下でのQ2aIペプチドの試料調製についての熱変性曲線を示す。全体的なCDシグナルは予想されたものよりも幾らか低かったが、これは機器によるずれ、濃度決定の誤差、純度の低さ、又は予想されたものよりも低いαヘリックス含量によるものであったと思われる。しかし、この実験の主な目的は、複合体の安定性に対するグルタミンからイソロイシンへの突然変異体の影響を調べることであった。したがって、興味深いことに、この変異体が熱変性に対して極めて高い耐性を示す、すなわち極めて熱安定であることが見出された。推定転移温度は、転移の不完全さから決定することが困難であるが97セルシウス度前後であった。また、ダウンスキャンはCDシグナルの完全な回復を示し、完全な可逆性が示された。
集合した複合体が三量体で予想される正しい分子量(MW)を有していることを確認するために、Q2aIペプチドに、およそ1mg/mlの濃度で25000rpmでの分析的沈降平衡超遠心分離を行った。図7は、単量体複合体、二量体複合体及び三量体複合体についての理論曲線と比較した、線形化光学密度(OD)曲線を示す。実験データ点が三量体モデル曲線と非常によく一致することが見出された。線形回帰直線の傾きから、10242Daという理論値と十分一致した(3414Daという単量体のMWの3倍)、10500Daという見掛けの分子量が導かれた。
三量体複合体の形成をさらに確認するために、同じQ2aIペプチドを静的光散乱によっても分析した。PBS中1mg/mlで200マイクロリットルのペプチドを、紫外線(UV)検出器、屈折率(RI)検出器及び静的光散乱(SLS)検出器に接続したSuperdex 75 10/300GLゲル濾過カラムにかけた。図8はその結果を示す。3つの異なる検出器からのシグナル(曲線)をそれらに応じて表示する。UVピーク及びRIピークと一致した形のよい光散乱ピークが観察された。UVピークについて導かれた見掛けの分子量は、12530±1510Daであり、これも期待値と十分一致した。
全イソロイシンコア残基の使用が、起こり得る(意図せぬ)7アミノ酸レジスターシフトについての理論考察に基づいて予想することができるように、三量体へのペプチドの集合に悪影響を与えないことが結論付けられた。それどころか、全ての試験によって、正しい(予想される)分子量を有する三量体への適切かつ排他的なフォールディングが示された。さらに、この全イソロイシンコアペプチドは、95セルシウス度まで量的にアンフォールディングされなかったことから、非常に高い熱安定性を有していた。したがって、このペプチドは好ましい三量体コイルドコイル形成ペプチドであると見なすことができる。
実施例5.単鎖コイルドコイル足場構築物
単鎖コイルドコイル足場を、構造的に柔軟性のあるリンカー断片を用いて個々の7アミノ酸反復配列(HRS)の末端を結合させることによってペプチドコイルドコイルから誘導することができるか否かを調べるために、異なるリンカー長を有する3つの構築物を設計し、生成し、試験した。具体的には、図9に挙げるアミノ酸配列を有する単鎖コイルドコイル足場分子を構築した。これらの足場は、実施例4のペプチド三量体コイルドコイル足場(Q2aI)から誘導された。8アミノ酸長及び16アミノ酸長のGly/Serリッチリンカーを試験した。これらの構築物は本明細書中でそれぞれ「scQ2aI_L8」及び「scQ2aI_L16」と表した。コア残基で始まってコア残基で終わる7アミノ酸反復配列の定義(上に示した)を考えると、それぞれN末端及びC末端のキャッピング残基であるメチオニン−セリン(「MS」)及びトレオニン(「T」)は、形式上リンカーに含まれ、配列「MGHHHHHHHHHHSSGHIEGRHMS」及び「TP」は隣接配列と見なされる。N末端隣接配列(リーダー配列)は、10Hisタグ(HHHHHHHHHH)に続いて「Xa因子」切断部位(IEGRH)を含む。
この構築物は以下の方法に従って生成した。構築物をコードする遺伝子を検索した。ヌクレオチド配列を、コドン使用頻度を大腸菌での発現に適合させるように最適化した。この遺伝子をpCR 4 TOPOプラスミドに組み込み(provided in)、その後のpET16bベクター(Novagen)でのサブクローニングのために3’−NdeI制限部位及び5’−XhoI制限部位を付加した。このpET16bベクターを大腸菌BL21(DE3)/pLysE株に形質転換し、小規模発現試験を行った。簡潔に述べると、適当な抗生物質を含有する培地(LB培地+50μg/mlのアンピシリン+25μg/mlのクロラムフェニコール)25mlに、一晩培養物(150倍希釈)を接種し、細胞をOD600が約0.65に達するまで37℃で増殖させた。次いで、0.4mM IPTGを添加することによって標的タンパク質の発現を誘導し、細胞を37℃又は30℃のいずれかでさらに増殖させた。培養アリコート(Culture aliquots)を3.5時間後(t1、37℃)及び5.5時間後(t2、37℃及びt2’、30℃)で取り出し、誘導前(t0)試料と共にSDS−PAGEゲル(10%アクリル、クマシー染色)で分析した。全ての構築物について、誘導時に予想されるMW付近でバンドが現れた。
タンパク質を可溶性画分から単離するために、約1.3リットルの培養物を30℃で5.5時間誘導した。細胞を採取し、50mM Tris、150mM NaCl(pH7.8)緩衝液中に再懸濁した後、細胞破砕機を通すことによって破壊した。可溶性画分を遠心分離によって回収し、標的タンパク質のIMACベース単離のためにNi2+を充填した5mlカラムにロードした。カラムを20mMイミダゾールを含有する10カラム容量の緩衝液で洗浄し、20mM→600mMのイミダゾールの勾配を溶出工程に使用した。タンパク質含有画分をプールし、約15mlから約6mlとなるまで濃縮した(Vivaspin MWCO 5kDa、2800rpm)。タンパク質を分取ゲル濾過カラム(Superdex 75 16/90;ランニング緩衝液として50mM Tris、150mM NaCl(pH7.8);2回;約3mlロード量/回)でさらに精製した。タンパク質は130ml前後で溶出し、関連画分をプールし、最終容量が約10mlとなるまで濃縮した(Vivaspin MWCO 5kDa、2800rpm)。算出された可溶性発現レベルは細菌培養物1リットル当たり10mg〜15mgの範囲であった。
図10は、20mM PBS、150mM NaCl(pH7.2)中でのscQ2aI_L16構築物についてのCD熱スキャンを示す。熱スキャンによって、90セルシウス度まで熱アンフォールディングがないことが示される。このことは、上記構築物が超熱安定であり、転移温度が100セルシウス度を超えることを示す。
完全転移を観察するために、6Mグアニジン塩酸塩(GuHCl)の存在下で続く熱アンフォールディング実験を行った。図11は、222nmでCDによって記録した6M GuHCl中でのscQ2aI_L16及びscQ2aI_L8の熱変性スキャンを示す。タンパク質濃度は同じPBS緩衝液中で約30μMであった。スキャンを2状態転移モデルに適合させ、フォールディングしたタンパク質の割合に変換した。scQ2aI_L8構築物の転移温度はscQ2aI_L16構築物より7セルシウス度高いことが見出された。L16構築物のみが、平行配向(「オーバーハンド結合」)でへリックス末端間の距離を架橋するのに十分に長いリンカーを搭載されていたため、この結果は予想されていなかった。上に記載のように、オーバーハンド結合については、リンカー中の残基の数は少なくともコイルドコイルへリックス中の残基の数の半分でなくてはならない。実際に、キャッピング残基をリンカーの一部であると見なした(すなわち、キャッピング残基が鎖方向の逆転(同様に少なくとも1個又は2個の残基を必要とする)を可能にするために必要とされるという事実を無視する)としても、8残基Gly/Serリンカーが含む残基は理論的に必要とされる28/2=14個に満たない。このため、scQ2aI_L8構築物のより高い熱安定性は平行コイルドコイル構造に矛盾すると結論付けられた。
短過ぎるリンカーは1つ又は複数のへリックス末端の局所的なアンフォールディングを誘導し、したがって依然として平行配向のオーバーハンド閉鎖(overhand closure)を可能にすることも考えられた。この仮説は、かかる現象が、観察された高い安定性の代わりに、論理的により不安定な構築物をもたらすため、あり得そうにないと考えられた。それでもなお、このような可能性を排除するために、各々のαへリックス中に1つ少ない7アミノ酸を含む一連の「短い」構築物を生成した。具体的には、新たな構築物の7アミノ酸反復配列は、(IEEIQKQIAAIQKQIAAIQKQIYRMの代わりに)配列IEEIQKQIAAIQKQIYRMからなるものであり(それ以外は同一の隣接セグメント及び式(GGSG)nGG(n=1、2、3、4)のGly/Serリンカーを有する)、「short_L6」、「short_L10」、「short_L14」及び「short_L18」と名付けたそれぞれの構築物を得た。局所的なアンフォールディングが短過ぎるリンカーを有する構築物(理論的には、L6構築物及びL10構築物)に起こった場合、それらの熱安定性は間違いなく低下するであろうと推論された。したがって、これらの構築物を様々なGuHCl濃度でCD熱スキャンによって試験し、それらの転移温度を測定した。図12はその結果を示す。4つ全ての短い構築物が、コイルドコイルサイズの低減を考えて予想されるように、同じGuHCl濃度で参照scQ2aI_L16よりも約40セルシウス度不安定であることが見出された。4つの短い構築物の相対的安定性は、試験した全ての条件下で非常によく似ていた。最も高いGuHCl濃度(4M)では、最も短いリンカーを有する構築物(short_L6)は、この場合も他のものよりやや安定であった。このことから、局所的なへリックス巻き戻し仮説は適用されず、したがって全ての構築物が平行ではなく逆平行である可能性が最も高いことが結論付けられた。
実施例6.NMR実験
先の実施例の参照コイルドコイル配列の逆平行フォールドの証拠をさらに提供するために、15H HSQC NMRスペクトルを構築物scQ2aI_L16及びscQ2aI_L8について記録した。図13はそのスペクトルを示す(それぞれ「L16」及び「L8」と表示される)。側鎖アミド及び骨格アミドは概ねそれぞれ右上及び左下の象限に集まっており、より柔軟性のあるリンカー骨格アミドは左上の象限に集まっている。2つのスペクトルが非常によく似ていることが観察され、リンカー長に依存しない或る種のフォールドが示唆される。L8リンカーは平行フォールドとは構造的に不適合であるため、これらの結果から、両方が逆平行である可能性が最も高いと結論付けられる。
さらなる証拠を提供するために、トリプトファン(W)を第2のへリックスのN末端付近に導入し、システイン(C)を第3のへリックスのC末端付近に導入したscQ2aI_L16誘導体を生成した。完全アミノ酸配列は、MGHHHHHHHHHHSSGHIEGRHMS-IEEIQKQIAAIQKQIAAIQKQIYRM-TGGSGGGSGGGSGGGSGWS-IEEIQKQIAAIQKQIAAIQKQIYRM-TGGSGGGSGGGSGGGSGMS-IEEIQKQIAAIQKQIAAIQCQIYRM-TP(突然変異を強調した)であった。この配列が単鎖逆平行コイルドコイルとしてフォールディングする場合、2つの突然変異位置は空間的に近接するはずである。このことは、システインをスピン標識に結合させ、トリプトファン側鎖NHεの共鳴に対するスピン標識の影響をモニタリングすることによって確かめることができる。標識されたシステインとトリプトファンとが極めて近接している場合(すなわち、好ましくは約15Å未満)、NHεトリプトファンシグナルは大幅に低下するはずである。ビタミンCでの処理によってNO遊離ラジカルが減少し、それによりNHεシグナルが回復する(又は増大する)。
図14は、上記突然変異構築物の上記トリプトファンNHεのNMR共鳴を示す。本実験に使用したスピン標識は、3−(2−ヨードアセトアミド)−プロキシル(すなわち、3−(2−ヨードアセトアミド)−2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ、Acros Organicsのカタログ番号224980250からの遊離ラジカル)であった。非処理試料及びビタミンC処理試料(図14のように印を付けた)を比較すると、遊離ラジカルスピン標識を有する非処理試料のシグナルが、実際に標識の少ない対照試料と比較して大幅に低下することが観察される。このことから、トリプトファン及びシステインがごく近接しており、これはコイルドコイル構造の寸法(長さ約40Å)を考えると、逆平行フォールドでしか可能性がないことが証明される。
実施例7.平行及び逆平行単鎖コイルドコイルの分子モデリング
図15は、構築物scQ2aI_L16のアミノ酸配列を有する(N末端タグは有しない)平行(左のパネル)及び逆平行(右のパネル)三重単鎖コイルドコイルの3D分子モデルを示す。HRS1、HRS2及びHRS3から構成されるαへリックスを、それぞれA、B及びCと表す。2つのリンカー断片は、それぞれL1及びL2と表示される。
平行モデルを、PDB構造1GCMから開始してホモロジーモデリングによって構築した。逆平行モデルを、平行モデル中のBへリックスの配向を逆転させ、続いてそのへリックス軸に沿って、全ての側鎖が原子重複を有しないようになるまでシフトすることによって構築した。これはコア側鎖の回転異性体構造を変更することなく達成された。リンカー断片を、αヘリックスセグメントを拘束しながら主鎖二面角周りの相互回転、分子動力学シミュレーション及びエネルギー最小化を組み合わせることによってモデリングした。
逆平行配向が構造的に実現可能であるか否かを調べるためにモデルを作製した。全てのコア形成側鎖を、断続的なキャビティから離れることなくそれらの最も緩和した回転異性体立体配座に位置付け、各々の7アミノ酸層の確かな充填をもたらすことができたため、逆平行配向が少なくとも図示したモデルにおいて構造的に可能であることが結論付けられた。
Figure 2012510806
Figure 2012510806

Claims (24)

  1. 式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は共有結合的に相互接続したアミノ酸配列断片を表す)によって表される単離単鎖タンパク質であって、
    a)HRS1、HRS2及びHRS3は各々独立して、a−b−c−d−e−f−gとして表される7残基のアミノ酸の繰り返しパターンからなる7アミノ酸反復配列であり、及び
    b)L1及びL2は各々独立して、1個〜30個のアミノ酸残基からなるリンカーであり、前記タンパク質が、三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する該HRS1、HRS2及びHRS3断片によって水溶液中で自発的にフォールディングするものである、単離単鎖タンパク質。
  2. 式HRS1−L1−HRS2−L2−HRS3(式中、HRS1、L1、HRS2、L2及びHRS3は共有結合的に相互接続したアミノ酸配列断片を表す)によって表される単離単鎖タンパク質であって、前記タンパク質が、三重逆平行αヘリックスコイルドコイル構造を形成する該HRS1、HRS2及びHRS3断片によって水溶液中で自発的にフォールディングするものであり、
    a)HRS1、HRS2及びHRS3は各々独立して、(a−b−c−d−e−f−g−)又は(d−e−f−g−a−b−c−)として表される7残基のアミノ酸型のn回の繰り返しパターンを特徴とする7アミノ酸反復配列であり、ここで該パターンの要素「a」〜「g」は、前記アミノ酸型が位置する通常の7アミノ酸位置を示し、nは2以上の数であり、及び
    b)通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」は主に疎水性アミノ酸型によって占められており、通常の7アミノ酸位置「b」、「c」、「e」、「f」及び「g」は主に親水性アミノ酸型によって占められており、結果として生じる疎水性アミノ酸型と親水性アミノ酸型との間の分布によって、前記7アミノ酸反復配列の同定が可能となり、及び
    c)L1及びL2は各々独立して、明確に7アミノ酸反復配列に割り当てることのできない任意のアミノ酸残基を含む、1個〜30個のアミノ酸残基からなるリンカーである、単離単鎖タンパク質。
  3. 非天然タンパク質である、請求項1又は2に記載の単離タンパク質。
  4. 通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン、トレオニン、セリン、アラニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸によって占められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  5. 通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸によって占められている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  6. 通常の7アミノ酸位置「a」及び「d」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、イソロイシンによって占められている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  7. 通常の7アミノ酸位置「b」、「c」、「e」、「f」及び「g」の少なくとも50%、70%、90%又は100%が、グリシン、アラニン、システイン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸によって占められている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  8. L1及びL2が、少なくとも50%、70%、90%又は100%がグリシン、アラニン、システイン、プロリン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸であるというアミノ酸組成を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  9. L1及びL2が、少なくとも50%、70%、90%又は100%がグリシン、アラニン、セリン、トレオニン、プロリン又はそれらの非天然誘導体からなる群から選択されるアミノ酸であるというアミノ酸組成を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  10. L1及びL2が、少なくとも50%、70%、90%又は100%がグリシン及び/又はセリンアミノ酸であるというアミノ酸組成を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  11. L1及びL2の各々のアミノ酸残基数が、L1又はL2のそれぞれに先行する該7アミノ酸反復配列のアミノ酸残基数の半分未満に相当する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  12. L1及び/又はL2の末端付近のアミノ酸残基が、該コイルドコイル構造のαヘリックス末端を安定化させる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  13. L1及び/又はL2の末端付近のアミノ酸残基が、該構造における局所的なターンの形成を促進する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  14. 通常の7アミノ酸位置「e」及び「g」がグルタミンによって占められている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  15. 通常の7アミノ酸位置「b」、「c」及び「f」が極性のある溶解促進アミノ酸である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  16. pHが1〜13、又は2〜12、又は3〜11、又は4〜10、又は5〜9の水溶液中でフォールディングする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  17. 温度が0℃〜100℃、又は0℃〜80℃、又は0℃〜60℃の水溶液中でフォールディングする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  18. イオン強度が0モル〜1.0モルの水溶液中でフォールディングする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  19. 足場として使用される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の単離タンパク質。
  20. 図15の逆平行配向で示される、請求項1又は2に記載の単離タンパク質。
  21. 請求項1〜20のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸。
  22. 請求項21に記載の核酸を含むベクター。
  23. 請求項21に記載の核酸又は請求項22に記載のベクターを含む宿主細胞。
  24. 請求項1〜20のいずれか一項に記載のタンパク質を製造する方法であって、核酸又はベクターを宿主細胞に導入すること、前記宿主細胞を該核酸が発現され、かつ該タンパク質が産生される条件下の培地中で培養すること、及び該タンパク質を前記宿主細胞及び/又は前記培地から単離することを含む、方法。
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