今日の自動車技術者は、フード下の全ての部品を合理的な方法で適合させ、組み立てることのますます多大な困難さに直面している。エンジンはより強力になり、このエンジンを支えるため、ならびにますます向上し続ける運転経験、安全性および快適性の水準を乗客に提供するため、増え続ける種々の部品を取り付ける。このことによって、利用可能なフード下のスペースが僅かになる。熱交換器はほとんどが初期仕様では長方形状であり、それが、熱交換器を自動車へ組み立てるのに最適な配置を考える自動車技術者を制限する。その熱交換器の配置に関する制限の多くは、不規則なまたは特注の形状をした熱交換器を生産するための、ヘッダープレートやタンク製作の経済的な実現可能性によって生じる。そのようなヘッダーやタンクの製作に現行の方法を用いると、非常に高価な熱交換器を生じてしまう。
また、フード下の安全性、快適性および性能に関連する部品が増え続けると、車両の後部よりも前部がますます重くなり、好ましくない。通常の乗用車において、CAC、コンデンサー、ラジエーターおよびEGRクーラーのような熱交換器は、十分な熱交換性能を促進するために、車両の極めて前部付近に設置される必要がある。本発明は、費用を抑え、性能を犠牲にすることなく格納時における幾何的柔軟性が向上させつつ、これらの部品の軽量化を促進する。
熱交換器のヘッダータンクの製造に最も一般的に用いられる方法は、圧延されたブレージングシートを準備し、プラスチックタンクを圧着するためのタブおよび冷却液の循環に用いられるフローチューブを差し込むためのスロットを付加してそれを成形することであり、最終形状の成形ヘッダーが作り出される。これは、通常は、圧延シートを正しい寸法で切断し、側面に穴を開けて(タブ用の)長方形状のシート端を作り、シート片に深絞りを施してヘッダープレートを成形し、最後にフローチューブ/フィンのパッケージを差し込むためのスロットを穴開けすることによって実施される。その後、通常のろう付けの手順が始まる。ろう付けの後、ヘッダー表面のクラッドが融け、ヘッダーのチューブジョイントへ流れ込み、正確な寸法や形状を有する隅肉が作られる。その後、その上にタンクが圧着される。
ラジエーターやヒーターの場合、一般にタンクはポリマー材料で作られ、また、CAC用としては通常アルミニウムで作られる。ヘッダータンクの成形で過去に用いられた他の技術として、ハイドロフォーミング法がある。
上述の製造手順は費用がかかり、工具形状や工具とシートの接触面の潤滑という観点で非常に厳格な管理を必要とする。また、残留潤滑剤の廃棄および洗浄ならびに例えば製造現場の穿孔作業により発生する金属スクラップの廃棄に関する管理、ならびに人員配置、フロアスペースならびに費用のかさむ管理機器への投資をも必要とする。さらに、深絞り作業は室温にて行われるため、通常は厳しい精度で機械加工するのが非常に困難かつ高価である冷間加工工具鋼を使用しなければならない。
射出成形によるプラスチックタンクの製造は比較的時間および費用のかかる手順であり、機械、工具および制御への多大な投資が必要となる。このタンクは熱交換器の多機能な部分であり、固定治具で製作され、例えばインタンクオイルクーラーや感覚装置等にアクセスしやすい組み立て場所にある。また、プラスチック原料はアルミニウムに比べてかなり軟らかいため、タンクの厚みは厚く、十分に大きなねじり剛性を得るために一体化された外部剛化フレームワークでできている。このように、このタンクは、低密度の材料を用いて製造されているにもかかわらず重くなる。しかしながら、ウイスカや繊維強化材を用いることで大幅に剛性を向上させることができるものの、実質的な費用増加を招く。
CACの操作温度は、プラスチック原料が強度を失って実用性が無くなるときの温度を超えることがある。したがって、現在、タンクは通常はアルミニウムで製作される。ほとんどの場合、そのようなタンクはダイカスト技術を用いて製作されるが、一般的にタンクの壁厚を1.5 mm以上にしなければならないという制限があるため、熱交換器の重量が増加する。また、鋳造アルミニウムはヘッダーへの圧着が容易にできず、その有効な接合方法はMIGまたはTIGによる溶融溶接である。この種のタンクおよび接合方法は、一般には強固な組立品を与える。しかし、この溶接は高価かつ時間を要する上、良好な溶接接合を提供するためにも溶接部やヘッダープレートを厚くする必要があり、熱交換器の重量が大幅に増加する。
したがって、ヘッダータンクの製作において効率的かつ柔軟な方法が必要である。
本発明は、AA3XXXアルミニウム合金から製作されるヘッダータンクに関するものである。
熱交換器のヘッダータンクに一般に使用される合金群、つまりAA3XXXXは、従来のヘッダータンク製作に用いられた典型方法では、目的とする形状に成形するのが困難である。これらの合金は、室温において、鋳型内および圧延状況下でのヘッダータンクの高度な成形に要求される成形性を有していない。
従来の方法は、ろう付けを行うことができ、かつ複雑形状への成形が行えるという、ヘッダータンクに対する長年に渡る要求を満たしていない。本発明によれば、添付の特許請求の範囲に示した工程を用いることによる、そのようなヘッダータンクの製作方法が提供される。
高品質な成形が首尾よく実施されるためには、20%を超える破断伸張率が常に必要とされる。極めて良好な成形性を得るため、クラッドされたブレージングシートの原料である芯材のインゴットは、最新式の工程にて、高温での均質化処理にさらされる。均質化処理により、熱間および冷間圧延ならびに焼きなましの後に微細構造が付与され、この操作が正しく行われれば、この構造によって合金ストリップの成形性が向上する。均質化処理の間に、合金中に存在するマンガンのほとんどが沈殿して大きな分散質粒子を形成し、固溶体中のマンガンによって提供されていた強度潜在力のいくらかが失われる。AA3XXX合金の耐食性もまた、この均質化処理によって悪影響が及ぼされる場合がある。均質化処理および焼きなましはまた、熱間圧延前の予熱操作のみと比較して、材料に追加費用がかかる。したがって、熱交換器のヘッダータンク用の合金に関しては、均質化処理および焼きなましを避けるのが望ましい。
納入状態で高い伸張性を得るため、原料は十分に柔軟なO材または時々はH112材で、すなわち焼きなましをされた状態で供給される。この操作もまた、熱交換器の原料の費用を増加させる。本発明の方法で熱交換器のヘッダータンクを製作することにより、チューブの合金は均質化処理を行う必要がなくなり、それにより均質化処理されていないアルミニウム合金のチューブが効率的に成形される。その上、チューブのブランク材は成形前に焼きなましをする必要がなく、それにより本方法をさらに費用効率の高いものにする。
本発明は、AA3XXXアルミニウム合金でできた芯材を有するチューブを準備する工程と、任意にチューブを予熱する工程と、最終的なヘッダータンクの形状をした成形キャビティを有する成形金型にチューブを挿入する工程と、該チューブの端部を閉塞する工程と、該チューブが十分に予熱されていない場合には該チューブを成形温度まで加熱し、前記金型のキャビティの形状に適合させるためにガスを用いてチューブ内部を加圧し、こうして最終的なヘッダータンクを得る工程と、前記金型からヘッダータンクを取り除く工程と、該ヘッダータンクを冷却する工程とを含む、熱交換器のヘッダータンクを製作する方法を提供する。本方法により、AA3XXXアルミニウム合金製のヘッダータンクの効率的な製作が可能になる。
均質化処理されていない材料をチューブに用いることにより、改善された腐食および機械特性が得られる。焼きなましされていないチューブは、費用の低減および環境負荷の低減に寄与する。このように、本発明によって製作された均質化処理されていないAA3XXX合金のヘッダータンクは、均質化処理されたAA3XXX合金から製作された深絞りのヘッダータンクと比較して、より高い強度およびより改善された耐食性を有することとなる。
チューブの芯材は、ろう付けの性能を高めるため、アルミニウム合金製のクラッドを少なくとも1つ有していてよい。熱交換器の製作を容易にするため、成形後、ヘッダータンクにチューブまたは接続部材用のスロットが製作されてもよい。
成形時に使用されるガスの圧力は、成形金型のキャビティにおいてチューブの効率的な成形を得るため、85 barより高い方が望ましい場合がある。
必要に応じ、成形時に材料を成形キャビティに送り込むために、チューブの端部に軸圧力をかけることができる。
さらに、熱交換器の組み立てを容易にするため、チューブの端部に接続部材、ネジ山またはアンカーを形成することができる。
タンクの形状およびアルミニウムブランク材の厚みによっては、200 barより高い圧力を要する場合がある。
ヘッダータンクの成形前のチューブは、溶接された圧延アルミニウム合金ブランク材からの製作が可能である。それにより、該チューブを効率的に提供することができる。圧延ろう付けクラッドアルミニウムブランク材からのチューブ製造は、ろう付けクラッドチューブを得る有効な方法であるので、特に都合がよい。ろう付けクラッドチューブは非常に高価であり、押出しが極めて困難である。
或いは、このチューブは、アルミニウム押出合金からの製作も可能であり、これは、幾つかの状況において、特にチューブにろう付けクラッドが設けられていない場合において有利である。
本発明はさらに、上述の熱間金属ガス成形にて製造された熱交換器ヘッダータンクを提供する。
本発明はまた、熱交換器が非長方形状である場合の、特許請求の範囲に記載のヘッダータンクを有する熱交換器を提供する。
本発明はさらに、ヘッダータンクを多数のチューブに接続し、波形フィンを該チューブの間に挿入した後、該フィンをチューブにろう付けする熱交換器の製造方法を提供する。
熱間金属ガス成形により、AA3XXX合金からほぼ任意の形状の熱交換器用アルミニウムヘッダータンクを構築することができる。
本発明の、そのような熱交換器用のヘッダータンクは、競合技術と比較して軽量であり、低価格での最適化が可能である。
プラスチックタンクを排除することにより、物質回収がより容易になる。タンクの断面形状は、ハイドロフォーミングや深絞りなどの競合するアルミニウム成形技術よりも多様化できる。実施された引張試験では、成形時の温度が上がるとヘッダータンク材料の成形性が著しく向上することが示され、これは、室温における破断伸張率が20〜30%の増加率であるのに対し、400℃にまで上げられたときの破断伸張率が100%以上に増加しうることを意味している。
本発明によって製作されるヘッダータンクの形状は、長方形の熱交換器の製作に制限されるわけではなく、不規則な形状の製作も同様に可能である。特に、非長方形状の熱交換器は、優れた形状柔軟性と共に成形することが可能である。
本発明によって製作されるヘッダータンクは、非常に高い原料歩留まりを与え、それは現在使用される深絞りやハイドロフォーミング技術よりも高い。
本発明によるヘッダータンクは熱交換器の経済的生産を促し、それにより自動車技術者がフード下の小部屋へより効率的に格納できるようにし、それと同時に熱交換器の性能を最適化する可能性を広げる。
本発明によって製作されるヘッダータンクは、より高強度、高耐食性能な材料を用いての製作が可能であり、それらの材料は競合技術と比べて熱機械操作のより少ない、環境により優しい工程ルートによって製作されることが可能である。
本発明の実施態様は、添付図面と共に後述の詳細な説明によって容易に理解されるであろう。本発明の実施態様は一例として示されるものであり、添付図面の形態に制限されるものではない。
本発明のヘッダータンクは、次に示す工程ステップによって生産される:(i)一般的な工業的操作によってブレージングシートを製作する、(ii)そのブレージングシートから製作されるチューブを溶接し、場合によっては曲げる、(iii)内部がヘッダータンク製品に従って設計された金型にて、チューブの熱間金属ガス成形を行う、(iv)フローチューブ用または熱交換器システムの残部との接続用スロットを施工する。
ブレージングシートは、シート表面の片側または両側がクラッドされていてもよい芯材料からなる。芯材は融点が610℃を超えるAA3XXXシリーズから選択され、例としてAA3003やAA3005がある。ろう付けされるクラッドは通常、融点の低い亜共晶のAA4XXX合金から選択され、例えばAA4343やAA4045がある。
さらに、片面または両面に対して2種以上の材料でクラッドされることが可能であり、これはいわゆるマルチクラッドと呼ばれる。加えて、特にラジエーターおよびヒーター、さらにはその他の熱交換器のチューブストリップに対して、腐食環境下で芯材の犠牲となるよう、電気化学的に安定した材料でクラッドされてもよい。こうして、芯材はその片側もしくは両側へクラッドされ、または両側共クラッドされることが可能である。クラッドは片側または両側に単一層または二重層で施されてもよく、そのクラッドは低融点のろう材、犠牲材としてのクラッド、または例えば拡散によって発生するろう材と芯材との相互作用を低減するためにろう材と芯材の間に存在するクラッドで構成することが可能である。
熱間圧延を行うことで芯材にクラッドを付与し、その後、冷間圧延および必要な熱処理を行い、正しい幅でスリットを入れる前に正確な中間体性質および最終性質を得る。そして、このブレージングシートから製作される製品は、管理雰囲気ろう付け(CAB)または真空ろう付けを用いてのろう付けが可能である。
6XXXまたは5XXX合金は、一般的に(CABによる)ろう付け用でない製品に使用される。これらの合金は、例えば構造の詳細部などのように、高強度を要する製品に使用される。6XXXまたは5XXX合金は、Mg含有量が高いことで、その強度を得ている。これらの合金のCABによるろう付けは、マグネシウムとそのフラックス間の反応が原因で、実施が困難である。
管理雰囲気ろう付け(CAB)を使用するラジエーター製作者にとって、従来利用可能であったヘッダーの芯材に関する二つの主要な問題が生じ、それはすなわち、機械的強度が過度に低いことおよび耐腐食性が過度に低いことである。マグネシウムを約0.7wt%含んだ熱処理合金であるAA6063は、CAB工程においてろう付け可能でないとみなされている。マグネシウムを約0.4〜0.5wt%含んだAA6060はろう付け可能であるが、より多くのおよび特別なフラックス、ならびにより特別なフラックス施工技術を必要とし、施工によってはろう付け後の強度が十分ではない。
AlMgSi合金においては、熟成中に小さなMg2Siの沈殿物が形成され、強度の増加をもたらす。このように、強度の増加に関する自明な解は、MgとSi含有量を増加させ、より多くのMg2Siが形成されることであるように思われる。しかしながら、Mgはろう付け時にフラックスと反応し、これがMgの総量を制限するため、Mgが0.4%よりも多く含まれる合金はCABによる効率的なろう付けが困難である。また、上述のAA6060およびAA6063は、例えば粒間腐食などによる貫通腐食に対しては通常低い耐性を示す。
Mgが最大で約0.4%含まれる3XXX合金は、CABでろう付けしてもよい。本発明の方法によって、3XXX合金から所望の形状へ成形する困難さが克服される。こうして、本発明の方法によりヘッダータンク用として3XXX合金を選択することが可能となり、結果的に後半の段階でヘッダータンクのCABによるろう付けが可能となる。
本発明によれば、ヘッダータンク製作における中間製品の一つにチューブがある。クラッドされた、またはクラッドされていないブレージングシートからのチューブ製作を可能にするためには、それから溶接チューブを製作する必要がある。実際の溶接方法は、誘導溶接でも、MIGでも、TIGでも、摩擦撹拌溶接でも、その他の適切な溶接方法でもよい。
チューブは、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形またはその他の適切な対称若しくは非対称の断面形状を有していてもよい。チューブは、顧客の要求に応じて、その長さ方向に沿って一定の若しくは変化する断面形状および寸法での製作が可能である。常に必要ではないが、次工程で、過剰の変形が必要になることを回避できるような断面を選択するのが賢明である。また、チューブがその長さ方向に沿って一定の断面形状で溶接される場合は、定尺切断操作の前のこの溶接操作における原料歩留まりは、理論的に100%である。
自動車産業で使用される熱交換器は、典型的には長方形状である。そのため、自動車における熱交換器組み立て品の最適な位置に関して制限が伴う。場合によっては、円形の、湾曲した、またはステップ形の、またはもっと不規則な形状の熱交換器は、利用可能なフード下のスペースへ組み立てるのに、または熱交換器性能を最適化する最良の方法で利用可能なフード下のスペースを使用するのに適しているであろう。
そのような状況においては、自動車の利用可能なスペースに、または希望するフローパターンに適応する形状を有する熱交換器を提供することが望ましい場合がある。そのような熱交換器にはオーダーメイドのヘッダータンクが必要となるであろう。本発明の方法は、三次元で任意の所望形状のヘッダータンクの製作を可能にする。考えられる形状の例としては、リング形、S形、L形またはC形がある。ヘッダータンクは、その長さ方向の軸に沿って、および/またはその長さ方向の軸と交差するように曲げられる乃至折り曲げられる場合がある。フローチューブは一列になってヘッダータンクの長さ方向に沿って取り付けられ、これは熱交換器全体がヘッダータンクの形状に対応する断面形状をしていることを意味する。
このように、熱交換器には、フード下への格納、熱交換器の性能または単なる製品の改造などの理由により、例えば円形など、非長方形状の必要がある場合がある。この必要性は、クラッドされたブレージングシートから製作された溶接チューブを曲げ、適切な曲率半径をもった形状にすることで満たされる。或いは、S形、台形または不規則な形状のヘッダータンクが必要とされる場合もある。
折り曲がった乃至曲がったタンクを製作する場合、チューブは熱間ガス成形の前から適切な形状に曲げられることがある。チューブの曲げは、製作される特有の形状に適した任意の曲げ方法を用いて行われる。曲げは、最終的なヘッダータンクに必要な特有形状の要求に合うよう、大気温度で、または昇温して実施することができる。
顧客の要求にしたがって溶接され、曲げられたチューブは、炉、火炎または誘導加熱などの任意の適切な手段で、または熱せられた金型を用いて任意に加熱される。誘導加熱および火炎加熱は、熱入力がチューブの選択された部位へ局部集中できるという有利性を持っている。これは、材料温度が降伏応力、引張強度、破断伸張率および成形性などといった特性に影響を及ぼす決め手となることで知られるように、選択された部位の機械的特性を変化させる手段として用いられることが可能である。合金のタイプ、性質、シート厚みおよびヘッダータンク製作のための変形の必要性に応じて、成形に必要な温度は250℃から550℃の間で変化させることができる。
該チューブは、内面がヘッダータンクの最終的な外形に一致するように製作された成形金型に設置される。該金型は冷えていてもよく(例えば室温)、その場合にはチューブを予熱しなければならないが、成形前または成形中に該金型を適切な温度まで加熱するのが望ましい。金型とチューブの温度の選択は、チューブ材料の機械的特性および成形特性、ならびにヘッダータンクの最終形状によって決定される。
次に、チューブの端部を閉塞し、チューブを高圧ガスシステムに接続する。成形中、チューブは250℃から550℃の間の温度になる。この成形温度は、チューブを成形キャビティに挿入する前にその温度まで予熱するか、チューブを挿入する前に成形金型を予熱するか、例えば誘導加熱により成形中に成形金型を加熱することにより達成することができる。ガスの圧力はチューブの内部で増加し、これは変形によって増加する圧力に対応する。この圧力は、チューブが金型の表面にはまるまで増加する。実際の最終圧力およびガス圧力増加率は、とりわけ、その温度におけるチューブ合金の機械的特性、チューブの壁厚、最終的なヘッダータンクの形状および希望形状を得るためにチューブに必要な変形の大きさによって決定される。
成形後、高圧ガスを放出し、成形製品を金型から取り出すことができる。このガスは、空気、窒素、不活性ガスまたは他の適切なガス状物質であってよい。成形時の圧力はかなり低く、例えばハイドロフォーミングで採用される圧力と比較してもかなり低い。250 barというおよその上限は、熱交換器用途のアルミニウム合金材料を所望の形状に成形するには十分であるべきである。タンク成形時の圧力が制限されているため、本発明によるヘッダータンク製作で用いられる成形金型は、これまでの成形方法で用いられた金型に使用される材料以外の材料で製作されてもよい。成形終了後、成形製品を空気で冷やしたり、水で急冷することができる。
成形時に、チューブの端部に軸圧力をかけることにより材料を金型に送りこむこともまた可能である。これは、成形後に、チューブの壁厚の変化量をより小さくできることや、大きな局部変形(鋭い半径や角などに近い)が必要な、かなり要求の厳しい形状をしたチューブの破砕が避けられる点において有益である可能性がある。
チューブが金型の表面上に固着するのを防ぐためには、離型剤または高温潤滑剤の適用が必要となる場合がある。これは、チューブまたは金型の表面に施されてもよく、新しい各チューブの成形前に、または、希ではあるが、継ぎ足し不要のコーティングの形状で適用される。
チューブ、接続部材および留め具の差し込みに必要なスロットの製作方法は幾つかある。1つは、熱間ガス成形製品に対し、スロットを個々に、複数個ずつまたはいっぺんに穿孔する方法である。また、熱間ガス成形製品に対し、その他の適切な任意技術を用いて、孔及びスロットを、圧延し、穴開けし、または成形してもよい。或いは、その穴は熱間ガス成形工程の後半の段階で開けてもよく、その場合にはチューブの最終形状が得られ、熱間ガス圧力がチューブの内部から支持を提供し、穿孔作業によって起きる倒壊を防ぐことができるときに行われる。留め具は、例えばリベット打ち、ろう付け、溶接または接着など、任意の適切な手段を用いて熱間ガス成形製品へ取り付けてよい。その固定方法は、顧客の要求、許容される費用および性能、ならびに固定作業がろう付けの前後のどちらに行われるべきかによって選択される。ヘッダータンクは、スロットの成形を容易にするため、くぼみ付きでの成形が可能であり、その一例を図2に示す。
熱間ガス成形時にガスをチューブに封入するため、チューブ端部の少なくとも1つのプラグは開口を有しており、該開口には圧力ガスシステムが取り付けられている。タンクが熱交換器の用途に使用される前には、この開口は閉塞されなければならない。これは幾つかの方法での実施が可能である。第一には、熱交換媒体の入口と出口の接続口を取り付けることによってチューブ端部の閉栓が可能であり、熱交換媒体は液体でも気体でもよい。第二には、当該位置でろう付けされ、溶接され若しくは接着され、またはその他の適切な任意の方法で取り付けられたシールを用いた密閉が可能である。或いは、端部を絞り上げ、残存する隙間や割れ目には適切な金属またはポリマー充填材を詰め、漏れのない密閉性を確保することも可能である。そのような密閉材の適用は、任意の適切な方法で行われる。
配管またはホースの接続を容易にするため、配管をねじ込むことができるようにチューブの端部にねじ山を設けることを想定してもよい。或いは、クランプを用いてホースを取り付けるためのアンカーを形成してもよい。
本発明のよりよい理解のため、これから本発明の実施方法の一例を与える。
厚みが3 mmのアルミニウムシート形状の、AA4343でクラッドされたAA3003合金を溶接して、直径40 mmのチューブを成形する。該チューブをあらかじめYの形に準じた形状へと曲げ、500℃に予熱された同形状の金型に設置する。該金型は、成形温度に耐えられ、分解することのない固体潤滑剤で潤滑されている。チューブの端部を閉塞し、2つの金型のパーツが分離しないよう油圧シリンダーによる力を加える。1つの閉塞栓を介してチューブ内にガスを入れ、圧力を0 barから200 barまで増加させる。最大圧力に到達してから数秒後に圧力を開放し、成形チューブを金型から取り出し、水を噴霧して冷却する。接続が必要となるところに、スロットを開ける。
ここで、該チューブは、前もって成形されたスロットや膨らみを有するヘッダータンクの最終形状をなしている。その後、熱交換器のフィンおよびフローチューブをタンクに取り付け、ろう付けして熱交換器を形成してもよい。