本発明によれば、血管中の位置へ膨張可能な要素であって、つぶれた形態と膨張した形態との間で動く膨張可能な要素を備え、膨張した形態では前記膨張可能な要素の長手軸の少なくとも一部は、3次元空間に曲がっている、医療器具が提供される。
本発明の一実施の形態では、膨張した形態で、膨張可能な要素は、血管の内壁に力を及ぼすようになされ、血管の長手軸を3次元空間で曲がるようにする。血管の3次元に曲がった部分を流れる血液は、渦巻き作用を受ける。血液の渦巻き流れが、血栓と血小板粘着を最少化すること、および、内膜の内部成長によるステントの被覆を最小化または防止することが分かっている。血管の平面的でない形状により生ずる渦巻きパターンを含めた血管中の流れパターンは、血栓症・アテローム性動脈硬化および内膜過形成のような血管疾患の進行を抑制するように作用する。好ましくは、該医療器具は、単一の膨張可能な要素を備える。しかし、該医療器具は、代わりに、複数の別々の膨張可能な部材を備えてもよい。
一実施の形態では、つぶれた形態で、膨張可能な要素の長手軸の少なくとも一部は、実質的に直線である。この配置により、搬送を容易にする低い外形となる。好ましくは、つぶれた形態で、膨張可能な要素の少なくとも一部は、実質的に円筒形状とされる。膨張した形態では、膨張可能な要素の少なくとも一部は、実質的に螺旋形状とされてもよい。膨張した形態では、膨張可能な要素の少なくとも一部は、渦巻形状とされてもよい。
ある好適な実施の形態では、膨張可能な要素の少なくとも1つの長手端部は、該端部の長さ方向に変化する螺旋角を有する。両端の長手端部が、この形態を有してもよい。ある実施の形態では、膨張可能な要素の一端部の長手軸の螺旋角は、その要素の端部から離間する方向に増加する。このような膨張可能な要素により血管が螺旋の長手軸を有するようになされる場合、膨張可能な要素の端部は、血管の長手軸の螺旋角を端部の長手方向で増加するようにする。よって、遷移領域が血管に存在し、そこでは膨張可能な要素の端部により形作られた血管の部分の流れは、変化する螺旋角により調整される。この配置は、低い壁面剪断応力を有する血管の内壁の領域を低減し、再循環の可能性を低減し、新生内膜過形成のリスクを低減するように作用する。壁面剪断応力は、血管壁に隣接する流れによって、血管の内膜に生ずる。比較的高いレベルの壁面剪断応力は、ステント内再狭窄のレベルの低下を伴っていた。
膨張可能な要素は、膨張式要素を備えてもよい。好ましくは、膨張式要素はバルーンを備える。バルーンは、上述の長手端部を1つ以上有してもよい。
膨張可能な要素は、少なくとも部分的にステントを拡張するように構成される。好ましくは、膨張した形態で、膨張可能な要素は、ステントを介して血管の内膜に力を及ぼすように構成される。膨張可能な要素は、3次元空間で曲がる長手軸を有するステントを拡張するように構成されてもよい。膨張可能な要素は、実質的に直線の長手軸を有するステントを拡張するように構成されてもよい。理想的には、医療器具は、ステント配置器具を備える。
あるいは、3次元空間で曲がる長手軸を有するステントを前もって配置し、膨張可能な要素を、その形状が時間と共に画定されなくなる、あるいは、3次元形状が初めから十分でない(すなわち、ステントを注入した際血管により形状が部分的にのみ定まる)ならば、形状を再構築あるいは強化するようにステントに力を及ぼすように構成されてもよい。
最も好ましくは、医療器具は、膨張可能な要素をステントあるいは血管内腔と位置調整させる手段を備える。3次元で曲がるステントの場合には、ステントが膨張可能な要素の3次元の曲がりと正しく位置調整することは特に重要である。位置合わせ手段は、膨張可能な要素を可視化する手段を備える。位置合わせ手段は、膨張可能な要素とステントの回転方向の位置調整を容易にするように配置されてもよい。位置合わせ手段は、膨張可能な要素とステントの軸方向の位置調整を補助するようになされてもよい。好ましくは、位置合わせ手段は、回転方向と軸方向の位置調整を容易にするようになされる。好ましくは、位置合わせ手段は、膨張可能な要素上のに1つ以上のマーカーを備える。
マーカーは、タンタル、プラチナ、金あるいはインジウムのようなX線不透過性物質を備えてもよい。マーカーは、膨張可能な要素の直径方向反対側に配置され、ステントに挿入された膨張可能な要素にX線源が作用するときに、作り出されるX線画像を用いて膨張可能な要素の向きを決定できるようにする。例えば、両方のマーカーを示す画像は、膨張可能な要素が位置調整されていないことを示し、1つだけのマーカー(他のマーカーは最初のマーカーの陰になる)を示す画像は膨張可能な要素が位置調整されていることを示す。
別の実施の形態では、位置合わせ手段は、膨張可能な要素の少なくとも一部に沿って円周方向におよび/または長手方向に、例えば十字または部分的十字に、延在する。
好ましくは、ステントもマーカーを備え、マーカーは、膨張可能な要素がステントと正しく位置調整された場合にステントのマーカーに関して所定の形で位置するように、配置される。たとえば、ステントは、膨張可能な要素が正しく位置調整された場合に膨張可能な要素のマーカーと直線に並ぶX線不透過性マーカーを備えることができる。
別の実施の形態では、膨張可能な要素がつぶれたステント内に挿入されるとマーカーを用いて正確な位置調整をできるように、マーカーは、膨張可能な要素とステントの両方に備えられる。たとえば、膨張可能な要素とステントのマーカーは、合致する。ステントが本体に挿入され、膨張可能な要素がステント内で膨張したときに、マーカーを用いて、膨張可能な要素とステントの間の正確な位置調整を成し遂げてもよい。
しかし、場合によっては、経管的手順に含まれる搬送システムのサイズが小さいことのために、器具の個々のマーカーを識別するのが困難な場合もある。たとえば、膨張可能な要素の「L」のような非対称なマーカーの回転方向を見るのは困難かもしれない。このことを考慮して、本発明の一実施の形態は、別の代わりとなる位置合わせ手段を提供する。この実施の形態では、膨張可能な要素は、変断面を有する。生理食塩水またはコントラスト増強媒体(X線不透過性染料)で膨張されると、膨張可能な要素の変断面は、蛍光透視法を用いて観察すると視認できるようになる(膨張可能な要素を満たすのに特にX線不透過性染料を用いることは、膨張時と配置時に可視化するのを容易にする)。変断面を用いて、膨張可能な要素の回転方向を決定することができ、よって、正しく配置することを可能とする。膨張可能な要素は、生体内で、血管または血管内のステントに配置され位置調整され、または、体内に挿入される前に体外でステントに配置され位置調整される。
例えば、蛍光透視にCアーム型の機能を用いて、膨張可能な要素は、例えば鉛直(縦)視と平面(前後方向)視の2つの直交方向で視認できる。この方法で、体内の血管またはステントに挿入される一方、膨張可能な要素の変断面またはノッチ付き断面の方向が決定でき、よって、膨張可能な要素をステントまたは血管内腔の曲がりに関して正しく方向付けすることができる。
断面は、膨張可能な要素の方向を識別することが出来るいかなる方法で変化してもよい。たとえば、変化は、膨張可能な要素の断面の投影図が、膨張可能な要素が回転すると変化する様なものでもよい。一実施の形態では、断面の変化は、ノッチを備えるのが好ましく、ノッチは膨張可能な要素の外面のどのような形状または窪みでもよい。そのようなノッチは、一次の回転対称性を有するのが好ましい。好ましくは、ノッチは、膨張可能な要素の外面に窪んだ実質的に平らな部分を備える。
一実施の形態では、ステントには少なくとも1つの参照ポイント、例えば、X線不透過性マーカーが具備され、参照ポイントは、膨張可能な要素が正しく配置されたときに所定の方法で膨張可能な要素の変断面(またはその一部)と直線に並ぶように配置される。一実施の形態では、X線不透過性マーカーは、膨張可能な要素が正しく回転され配置されたときに、膨張可能な要素のノッチ部分と一致するように配置される。マーカーは、どんな形状でもよいが、好ましくは楕円形または長方形である。適切なX線不透過性物質は、タンタル、プラチナ、金またはイリジウムである。
断面の変化は、例えばノッチ部分は、ステントの1つのマーカーと1つのやり方だけで唯一に位置調整されることが好ましい。よって、マーカーとの位置調整が達成されると、ステントとの回転位置調整もまた達成される。
一実施の形態では、ステントの両端に1つずつ、2つのX線不透過性マーカーを具備する。しかし、マーカーを複数のペアで具備するほうが好ましく、各ペアは、直径方向反対側に配置された、すなわち、ステントの円周周りに180度離れた2つのマーカーを備える。別の実施の形態では、複数のペアをステントの同じ長手方向での位置に具備し、各ペアは直径方向反対側に配列され、他のペアとは識別される。例えば、マーカーの2つのペアを具備し、4つのマーカーはそれぞれ90度離れる。
よって、理解されるように、上述した位置合わせ手段は、配置されたときに、ステントまたは血管形状に関して膨張可能な要素のある回転の向きとなることを確かなものとする。
この位置合わせ手段は、3次元空間に曲がった長手軸を有する膨張可能な要素の配置に特に役立つ上に、本発明によれば、他の膨張可能な要素を位置調整するのにも有用である。したがって、それ自体で発明であることが分かる。
よって、別の観点からは、本発明は、血管に配置される膨張可能な要素であって、つぶれた形態と膨張した形態との間で移動可能な膨張可能な要素を備え、膨張可能な要素は、膨張可能な要素を血管と位置調整するのに役立つ変断面またはノッチ付き断面を備える、医療器具を提供する。
この医療器具は、膨張可能な要素を血管と直接、すなわちステントの存在なしで、位置調整しやすくし、あるいは、膨張可能な要素を血管内のステントと位置調整しやすくする。
膨張可能な要素は、直線または2次元か3次元に曲がった中心線を有してもよい。ステントまたは血管は、直線のまたは対応する曲線の中心線を有する。変断面またはノッチ付き断面は、膨張可能な要素の回転の向きがステントまたは血管の曲がりと正しく一致するようにできることが好ましい。断面は、膨張可能な要素の向きが識別されるどんな方法で変化してもよい。たとえば、変化は、膨張可能な要素の断面の投影図が膨張可能な要素が回転するにつれ変化するようなものでもよい。ノッチは、いかなる形状でも、膨張可能な要素の外面の窪みでもよい。ノッチは、膨張可能な要素の外面で窪んだ実質的に平らな部分を備えるのが好ましい。そのようなノッチの1つを、膨張可能な要素の各端部に備えるのが好ましい。X線不透過性マーカーを、膨張可能な要素が正しく位置調整されたときにノッチと合致するような位置で、ステントに具備してもよい。
更に別の態様では、本発明は、血管を処置する方法を提供し、その方法は、膨張可能な要素を血管に配置するステップと、膨張可能な要素をつぶれた形態から膨張した形態に動かすステップと、変断面またはノッチ付き断面を有する膨張可能な要素の一部を用いて、血管または血管内に配置されたステントと膨張可能な要素を位置調整するステップとを備える。したがって、これは体内で実行される、体内手順である。
別の態様では、本発明は、膨張可能な要素をステント内に配置することと、膨張可能な要素のマーカーまたは変断面を用いて、膨張可能な要素をステントと位置調整することを備える医療器具を製造する方法を提供する。ステントのマーカーをまた、膨張可能な要素を位置調整するのに用いることが好ましい。これは、体外で実行される、体外手順である。
好ましくは、位置調整するステップは、対応するステントの参照ポイントと変断面またはノッチ付き断面部分を位置調整することを備える。
好ましくは、膨張可能な要素の膨張した形態で、膨張可能な要素は、膨張可能な要素がその中に挿入されたステントを介して、血管の内膜に力を及ぼし、血管の長手軸が3次元空間で曲がるように、血管の内膜を変形させるように構成される。
一実施の形態では、膨張した形態で、膨張可能な要素は、血管の内膜に直接、すなわち、ステントを使わずに、接触するように構成される。好ましくは、医療器具は拡張器具を備える。
ある場合には、医療器具は、膨張可能な要素が取り付けられる細長い要素を備える。
本発明の医療器具は、ステント搬送器具、および/または、ステント配置器具、および/または、拡張後の器具として利用できる。
本発明の別の態様では、医療システムが提供され、医療システムは、本発明の医療器具と、血管に配置されるのに適し、血管の内膜の少なくとも一部を支えるステントとを備える。
本発明の一実施の形態では、ステントは、搬送形態と配置形態との間で可動である。好ましくは、ステントは、搬送形態ではつぶれている。この低い外形配置により、搬送が容易になる。理想的には、搬送形態では、ステントの長手軸の少なくとも一部は、実質的に直線である。より好ましくは、ステントは配置形態で拡張される。配置形態では、ステントの長手軸の少なくとも一部は、3次元空間で曲がっている。好ましくは、配置形態では、ステントは血管の内膜に力を及ぼし、血管の長手軸を3次元空間で曲げるように構成される。血管の3次元に曲がった部分を流れる血液は、渦巻き作用を受ける。血液の渦巻き作用は、血栓や血小板粘着を最少化することが知られており、内膜の内部成長によるステントの覆いを最小化または防止することも知られている。血管の平面的でない形状により生ずる渦巻きパターンを含む血管内の流れのパターンは、血栓/アテローム性動脈硬化や内膜過形成のような血管疾患の進行を抑制する働きをする。
ある場合には、ステントは、搬送形態と中間形態、および、中間形態と配置形態との間で可動である。好ましくは、ステントは、中間形態で、少なくとも部分的に拡張する。中間形態では、ステントの長手軸の少なくとも一部は、実質的に直線である。中間形態では、ステントの長手軸の少なくとも一部は、3次元空間で曲がっていてもよい。
本発明は、別の態様では、血管を処置する方法も提供し、該方法は、血管中に膨張可能な要素を配置するステップと、膨張可能な要素をつぶれた形態から膨張した形態に動かすステップであって、膨張した形態では膨張可能な要素の長手軸の少なくとも一部は3次元空間で曲がっている、ステップとを備える。
本発明の一実施の形態では、膨張可能な要素は血管の内膜に力を及ぼし、血管の長手軸を3次元空間で曲げる。血管の3次元で曲がった部分を流れる血液は渦巻き作用を受ける。血液の渦巻き流れは、血栓や血小板粘着を最少化することが知られており、内膜の内部成長によるステントの覆いを最小化または防止することも知られている。血管の平面的でない形状により生ずる渦巻きパターンを含む血管内の流れのパターンは、血栓/アテローム性動脈硬化や内膜過形成のような血管疾患の進行を抑制する働きをする。
ある場合には、膨張可能な要素を少なくとも部分的につぶれた形態から膨張した形態に膨張可能な要素を動かすステップは、ステントを拡張する。好ましくは、膨張可能な要素は、ステントを介して血管の内膜に力を及ぼす。理想的には、この方法は、ステントを搬送形態から配置形態に動かすステップを備える。最も好ましくは、この方法は、ステントを搬送形態から中間形態に、中間形態から配置形態に動かすステップを備える。本発明は、ステントを配置する方法を提供することもできる。好ましくは、その方法は、膨張可能な要素をステントと位置調整する工程を備える。3次元的に曲がったステントの場合には、ステントが膨張可能な要素の3次元の曲がりと正しく位置調整されることを確かにすることが重要である。
別の実施の形態では、膨張可能な要素は、血管の内膜に直接接触する。本発明は、拡張する方法を提供することも出来る。
本発明は、添付の図面を参照し、例として示しただけではあるが、以下のいくつかの実施の形態の説明からより明確に理解されるであろう。
図面を参照して、最初に図1〜2(a)を参照すると、本発明による医療システムが図示される。この場合では、医療システムは、ステント配置システムを備える。
ステント配置システムは、ステント配置器具1、および、血管5の内膜の少なくとも一部を支えるのに血管5に配置されるのに適したステントを備える。
ステント配置器具1は、細長いカテーテルシャフト2、および、血管5に配置される単一の膨張可能な要素3を備える。膨張可能な要素3は、カテーテルシャフト2に取り付けられる。
この場合、膨張可能な要素3は、膨張式バルーンを備える。膨張式バルーン3は、つぶれた形態(図1)と膨張した状態(図2)との間で可動である。つぶれた形態では、バルーン3の長手軸は、直線であり、バルーン3は円筒形形状とされる。膨張した形態では、バルーン3の長手軸の一部は、3次元空間で曲げられ、バルーン3の一部は螺旋形状とされる。バルーンは各端に端部4を有し、端部の長手軸の螺旋角は、バルーンの端から離れる方向で増加する。
バルーン3は、ステントを拡張するのに適している。
ステントは、図3〜10(e)に示すように、バルーン拡張式ステント6でよい。あるいは、ステントは、図11〜18に示すように、自己拡張式ステント7でもよい。
ステント6、7は、つぶれた搬送形態(図4および12)から部分的に拡張した中間形態(図6および14)に、そしてその後に、中間形態から完全に拡張した配置形態(図10および18)に可動である。搬送形態では、ステント6、7の長手軸は直線である。配置形態では、ステント6、7の長手軸は、3次元空間で曲がっている。
ステント6の長手軸は、中間形態では直線でもよい(図6)。バルーン3は、直線の長手軸を有するステント6を拡張するのに適する。この場合、バルーン3は、ステント6を拡張し、配置形態でステント6の長手軸が3次元空間で曲がることを確かなものとする。
あるいは、ステント7の長手軸は、中間形態で3次元空間で曲がっていてもよい(図14)。バルーン3は、3次元空間で曲がっている長手軸を有するステント7を拡張するのに適する。この場合、バルーン3はステント7を拡張し、配置形態でステント7が血管5の内膜にはめ込まれ、ステント7が完全に配置された3次元曲線を取ることを確かなものとする。さらに、バルーン3はステント7を拡張し、ステント振幅比が、血液が渦流を生ずることなく欠陥5またはステント7を通って流れることができないようにすることを確かなものとする。振幅比は、ステントの内径に対するステントの螺旋長手軸の振幅の比である。
バルーン3は膨らんで、ステント7を拡張し、その螺旋構造を大きくし、振幅比を増大し、ピッチを低減し、ステントを所定の位置に固定し、好適な壁付加物とする。
ステント6は、中間形態なしで、つぶれた搬送形態(図10(b))から完全に拡張した配置形態(図10(c))に直接可動してもよい。搬送形態では、ステント6の長手軸は直線である。配置形態では、ステント6の長手軸は3次元空間で曲がっている。
バルーン3は、直線の長手軸を有するステント6を拡張するのに適する。この場合、バルーン3はステント6を拡張し、配置形態でステント6の長手軸が3次元空間で曲がるのを確かなものとする。
それぞれの場合に、膨張した形態のバルーン3は、ステント6、7に力を及ぼす。配置形態では、ステント6、7は今度は血管5の内膜に力を及ぼし、血管5の長手軸が3次元空間で曲がるようにする(図8および16)。
図2(a)に示されるように、ステント配置器具1は、バルーン3をステント6、7に位置調整するための可視化手段をも備える。この場合、可視化手段は、バルーン3のマーカー20を備える。マーカー20は、螺旋または渦巻き状にバルーン3の円周方向および長手方向に延在する。マーカー20はステント6、7の螺旋形状と位置調整される。
図2(a)は螺旋のバルーン3の螺旋のマーカー20を示す。
ステント配置器具1は、ガイドワイヤ上で急速交換搬送し、あるいは、ガイドワイヤ上でワイヤ搬送するように構成されてもよい。
図1は、カテーテル2上で膨張していない螺旋のバルーン3を示し、図2は、カテーテル2上で膨張した螺旋のバルーン3を示す。
使用においては、ステント配置器具1を用いて、バルーン拡張式ステント6を血管5に配置し、図3〜10(e)に示すように、血管5の内膜の少なくとも一部を支えてもよい。あるいは、ステント配置器具1を用いて、自己拡張式ステント7を血管5に配置し、図11〜18に示すように、血管5の内膜の少なくとも一部を支えてもよい。
ある場合には、バルーン拡張式ステント6は、搬送カテーテル8に取り付けられた搬送形態になされてもよい。搬送形態では、ステント6の長手軸は直線である。搬送カテーテル8は、膨張式バルーン9を備える。
バルーン9は、つぶれた形態(図4)と膨張した形態(図5)の間で可動である。つぶれた形態では、バルーン9の長手軸は直線であり、バルーン9は円筒形形状とされる。膨張した形態では、バルーン9の長手軸は直線であり、バルーン9は円筒形形状とされる。
搬送カテーテル8とステント6は、血管5に挿入され、ステント6が所望の処置場所10(図4)に位置するまで送られる。バルーン9は膨張してステント6を搬送形態から中間形態(図5)に動かす。ステント6の長手軸は、中間形態で直線である。バルーン9をしぼめて、搬送カテーテルを引き抜く(図6)。
その後、本発明のステント配置器具1は血管5に挿入され、バルーン3がステント6と位置合せされる(図7)まで送られる。バルーン3を膨らませ、ステント6を中間形態から配置形態に拡張する。膨張した形態のバルーン3はステント6に力を及ぼし、ステント6を中間形態から配置形態(図8)に動かす。配置形態で、ステント6の長手軸は、3次元空間で曲げられる。配置形態で、ステント6は血管5の内膜に力を及ぼし、血管5の長手軸を3次元空間で曲げる。
バルーン3をしぼめて(図9)、ステント配置器具1を血管5から引き抜く(図10)。配置されたステント6は血管5内に留まる。
3次元で曲がった血管5中を流れる血液は、渦巻き作用を受ける。血液の渦巻き流れは、血栓や血小板粘着を最小化し、内膜の内部成長によるステント6の覆いを最小化または防止することが知られている。血管5の平面的でない形状により生ずる渦巻きパターンを含む血管5の流れパターンは、血栓/アテローム性動脈硬化や内膜過形成などの血管疾患の進行を抑制する作用をする。
図3〜10は、3Dバルーン3を伴うバルーン膨張式直線ステント6を示す。図3は、狭窄した血管10を示す。図4は、搬送システム8上の縮めたステント6を示す。図5は、膨らまされたバルーン9と配置されたステント6を示す。図6は、回復した血管の開通性を示す。図7は、3Dバルーンカテーテル1を示す。図8は、膨らんだ3Dバルーン3を示す。図9は、引き抜くためにしぼめられた3Dバルーン3を示す。図10は、3D曲線を呈するように変形したステント6と血管5を示す。
別の場合では、バルーン拡張式ステント6は、搬送形態で、本発明のステント配置器具1に取り付けられるようになされる。搬送形態では、ステント6の長手軸は直線である。
ステント配置器具1とステント6は血管5に挿入され、ステント6が所望の処置場所10(図10(b))に配置されるまで送られる。バルーン3を膨らませてステント6を搬送形態から配置形態(図10(c))に拡張する。膨張した形態のバルーン3はステント6に力を及ぼし、ステント6を搬送形態から配置形態に動かす。配置形態では、ステント6の長手軸は3次元空間で曲げられる。配置形態で、ステント6は血管5の内膜に力を及ぼし、血管5の長手軸を3次元空間で曲げる。
バルーン3をしぼめ(図10(d))、ステント配置器具1を血管5から引き抜く(図10(e))。配置されたステント6は血管5内に留まる。
3次元で曲がった血管5中を流れる血液は、渦巻き作用を受ける。血液の渦巻き流れは、血栓や血小板粘着を最小化し、内膜の内部成長によるステント6の覆いを最小化または防止することが知られている。血管5の平面的でない形状により生ずる渦巻きパターンを含む血管5の流れパターンは、血栓/アテローム性動脈硬化や内膜過形成などの血管疾患の進行を抑制する作用をする。
図10(a)〜10(e)は、螺旋のバルーン3上に縮めた直線ステント6を示す。
自己膨張式ステント7の場合、ステント7は、搬送鞘11内に拘束された搬送形態になされる。搬送形態では、ステント7の長手軸は直線である。
搬送鞘11とステント7は血管5内に挿入され、ステント7が所望の処置場所10(図11および12)に配置されるまで送られる。搬送鞘11は引き戻され、ステント7が搬送形態から中間形態に動けるようにする(図13)。ステント7の長手軸は、中間形態で3次元空間で曲げられる。中間形態で、ステント7は血管5の内膜に力を及ぼし、血管5を3次元空間で曲げる。搬送鞘11を引っ込める(図14)。
その後、本発明のステント配置器具1は血管5に挿入され、バルーン3をステント7と位置合せするまで、送られる(図15)。バルーン3を膨らませてステント7を中間形態から配置形態に拡張する。膨張した形態のバルーン3はステント7に力を及ぼし、ステント7を中間形態から配置形態(図16)に動かす。配置形態では、ステント7の長手軸は、3次元空間でさらに曲げられる。配置形態では、ステント7は血管5の内膜にさらに力を及ぼし、血管5の長手軸をさらに3次元空間で曲げる。
バルーン3をしぼめ(図17)、ステント配置器具1を血管5から引き抜く(図18)。
3次元で曲がった血管5中を流れる血液は、渦巻き作用を受ける。血液の渦巻き流れは、血栓や血小板粘着を最小化し、内膜の内部成長によるステント7の覆いを最小化または防止することが知られている。血管5の平面的でない形状により生ずる渦巻きパターンを含む血管5の流れパターンは、血栓/アテローム性動脈硬化や内膜過形成などの血管疾患の進行を抑制する作用をする。
図11〜18は、3Dバルーンを伴う3Dステント7を示す。図11は、狭窄した血管10とステント搬送システム11を示す。図13は、配置された3Dステント7を示す。図14は、3D曲線を取るように再構築された血管5を示す。図15は、バルーンカテーテル1を示す。図17は、引き抜くためにしぼめた3Dバルーン3を示す。図18は、引き抜かれたバルーン3と、所定位置の最大化した3D曲線を有するステント7を示す。
図19および20に示すように、膨張可能な要素21は、複数の分離した膨張可能な部材22を備えてもよいことは分かるであろう。膨張した形態では、膨張可能な要素21の全体的な長手軸は、3次元空間で曲げられ、膨張可能な要素21は全体として螺旋形状とされる。膨張した形態では、各膨張可能な部材22の長手軸は直線であり、各膨張可能な部材22は円筒形形状である。膨張可能な要素21は、区分的に3次元曲線形状を有する。図19および20は、複数の直線バルーン22で構成される区分的バルーン21を示す。
膨張可能な要素が、例えば、膨張した形態で、膨張可能な要素の一部が渦巻き形状とされるなど、代替形状を有してもよいこともまた分かるであろう。渦巻きのピッチは、膨張可能な要素の長さ方向に一定でもよく、膨張可能な要素の長さ方向に変化してもよい。
ステント配置器具は、膨張可能な要素をステントと位置合せするための、種々の使用可能な可視化手段を備えてもよいことは分かるであろう。
例えば、図21〜23は、位置合せマーカーを備える可視化手段を示す。このシステムは蛍光透視法を用い、X線源30、膨張可能な要素に配置されたマーカー31および画像化媒体32を含む。ステント(不図示)は膨張可能な要素の周囲に配置される。マーカーは、X線不透過性物質を備える。図21は、位置合せ前の膨張可能な要素を示す。位置合せの程度は、画像化媒体32で作られる画像により示される。この実施の形態は、図21に示される画像、すなわち、2つの小さなマークが、位置合せされていない状態を示すように考案されている。図22は、画像化媒体32上の単一の広いマークにより示されるように、位置合せされた位置に向けて回転された膨張可能な要素を示す。図23は、画像化媒体32上単一の狭くなったマークで示されるように、ステントと位置合せされた膨張可能な要素を示す。
図24と図25は、膨張可能な要素の十字形状の位置合せマーカー41を備える別の実施の形態を示す。図24に示すように、X線源40を用いて画像化媒体42上に蛍光透視法を利用して観察すると、マーカー41は、膨張可能な要素の第1の向きでは十字に見える。膨張可能な要素を、図25に示すように正しく位置合わせされるように回転すると、マーカー41は、画像化媒体42上でT字形に見える。
図26と図27は、膨張可能な要素のT字形状の位置合せマーカー43を備える別の実施の形態を示す。図26に示すように、X線源40を用いて画像化媒体42を観察すると、マーカー43は、膨張可能な要素の第1の向きではT字に見える。膨張可能な要素を、図27に示すように正しく位置合わせされるように回転すると、マーカー43は、180度回転して見える。
本発明による医療システムが拡張システムを備えることは分かるであろう。拡張システムは、血管を広げる拡張器具を備える。拡張器具は、細長いカテーテルシャフトと、血管に配置される単一の膨張可能な要素を備える。膨張した形態では、膨張可能な要素は血管の内膜に直接接触する。
図28〜31は、膨張可能な要素をステントと位置合わせするための、または、拡張システムの場合には、血管内腔と直接位置合わせする別の手段を示す。
図28(b)と図29(b)は、位置合わせ手段を含む体(不図示)内の体内での膨張可能な要素51を示す。図28(b)は、図28(a)に示すCアーム型の蛍光透視を用いて観察した立面(縦)投影である。図29(b)は、図29(a)に示すCアーム型の蛍光透視を用いて観察した平面(前後方向)投影である。これらから分かるように、膨張可能な要素は、ほぼ円筒型断面を有し、両端の近くにほぼ平坦なノッチ部分52を備える。
使用中、膨張可能な要素51は、生理食塩水またはコントラスト増強媒体 (X線不透過性染料)で膨らまされ、蛍光透視法を用いて観察すると平坦なノッチ部分52が見える。Cアーム型の蛍光透視(図28(a)および図29(a)参照)の機能を用いて、例えば図28(b)と図29(b)で見られる立面と平面のような、2つの直交視で膨張可能な要素51を撮像して位置決めを容易にすることができる。膨張可能な要素51の方向を、自己拡張式ステントのマーカーなどの別の参照ポイントや、ステント/血管内腔の曲線に関する平坦なノッチ部分52の向きに基づいて、正しい位置に(すなわち、ステントまたは血管内腔の曲線と位置合わせされた)体内で調整することができる。マーカーの使用について、図30(a)〜(c)および図31(a)〜(c)を参照して、さらに説明する。
図30(a)〜(c)は、一方向に単一の曲がり(すなわち、一方向に曲がった中心線)を有するステント60と膨張可能な要素61を示す。図30(a)はステント60を示す。これは、両端の近くに直径方向反対側に配置された一組のX線不透過性マーカー63を備える(各ペアの1つだけが示される)。図30(b)と図30(c)は、ステント60に挿入された膨張可能な要素61を示し、図30(b)は立面図、図30(c)は平面図である。これらから分かるように、膨張可能な要素61は、前述したように、平坦なノッチ部分62を備える。X線不透過性マーカー63は、膨張可能な要素が正しく位置合わせされたときに平坦なノッチ部分62と合致するように配置される。
したがって、使用にあたり、蛍光透視法を用いて膨張可能な要素61を、例えば立面図と平面図のような2つの直交方向で観察し、ノッチ62をX線不透過性マーカー63と位置合わせし、すなわち膨張可能な要素61を正しく配置することができる。
図31(a)〜(c)は、図30(a)〜(c)に類似するが、3次元空間に曲がった長手軸を有するステント70と膨張可能な要素71を示す。図31(a)は、ステント70を示す。これは、両端の近くに直径方向反対側に配置された一組のX線不透過性マーカー73を備える(各ペアの1つだけが示される)。図31(b)と図31(c)は、ステント70に挿入された膨張可能な要素71を示し、図31(b)は立面図、図31(c)は平面図である。これらから分かるように、膨張可能な要素71は、前述したように、平坦なノッチ部分72を備える。X線不透過性マーカー73は、膨張可能な要素が正しく位置合わせされたときに平坦なノッチ部分72と合致するように配置される。
したがって、上記の図31の実施の形態では、使用において、蛍光透視法を用いて膨張可能な要素71を、例えば立面図と平面図のような2つの直交方向で観察することができる。その後、ノッチ72をX線不透過性マーカー73と位置合わせし、ステント70の曲線に関して膨張可能な要素71を正しく配置することができる。
本発明は、添付の図面を参照して、ここで説明した実施の形態に限定されることはなく、構造や詳細で変更されることがある。