JP2012252831A - X線管 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁管と陰極との接合部からの電子放出に起因する絶縁管の内壁の帯電を抑制し、耐電圧性能を向上したX線管を提供する。
【解決手段】中空の絶縁性の管(4)と前記絶縁性の管の軸方向の両端にそれぞれ接合された陰極(2)および陽極(3)を有する真空管と、前記真空管の内部に、前記陰極(2)から前記陽極(3)の側に軸方向に突出して設けられた電子銃構造体(5)と、を有する透過型のX線管(1)において、前記陰極(2)と前記絶縁性の管(4)の端縁との接合部(13)から放出される電子を遮蔽する電子遮蔽部材としての凸部(14)が設けられている。凸部(14)は接合部(13)よりも径方向の内側へ50μm以上突出していることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、X線発生装置に適用できる、透過型ターゲットを用いたX線管に関するものである。
透過型のX線管は、陰極の電子放出源から放出される電子を、陽極−陰極間に加えられた高電圧で加速し、陽極に設けられた金属ターゲットに照射して、X線を発生させるものであり、医療用や工業用のX線発生装置に採用されている。
このようなX線管においては、耐電圧性能(以下耐圧)が課題となり、小型軽量化が困難となっていた。特開平09−180660号公報(特許文献1)には、透過型X線管において、電子銃の集束電極を絶縁管と陰極に挟んで固定し、かつ管壁と集束電極の間に隙間を作る構造によって、管壁の絶縁沿面距離を稼ぐことにより耐圧を向上させることが開示されている。また、特開2006−019223号公報(特許文献2)には、反射型のX線管において、真空容器内の導体を支持するガラス絶縁体の真空側の表面に、導体の端の位置から一定範囲にわたって算術平均粗さ1〜10μmの凹凸を形成することが開示されている。
特開平09−180660号公報 特開2006−019223号公報
X線管の更なる高圧化や小型化を目指した場合、以下のような課題がある。
絶縁管の端縁に陰極が接合されたX線管にあっては、その構造上、絶縁管と陰極との接合部(接合界面)から意図しない電子放出が起きる可能性がある。X線管の高圧化もしくは小型化を進めると、接合部近傍の電界強度が増すために、接合部からの放出電子の増加が避け得ない。しかしこのような放出電子は、絶縁管の内壁を帯電させ、結果として放電を引き起こすおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、絶縁管と陰極との接合部からの電子放出に起因する絶縁管の内壁の帯電を抑制し、耐電圧性能を向上したX線管を提供することを目的とする。
本発明は、中空の絶縁性の管と前記絶縁性の管の軸方向の両端にそれぞれ接合された陰極および陽極を有する真空管と、前記真空管の内部に、前記陰極から前記陽極の側に軸方向に突出して設けられた電子銃構造体と、を有する透過型のX線管であって、前記陰極と前記絶縁性の管の端縁との接合部から放出される電子を遮蔽する電子遮蔽部材が設けられており、前記電子遮蔽部材は、前記絶縁性の管の内壁に設けられた凸部である、X線管を提供するものである。
本発明によれば、絶縁管と陰極との接合部からの電子放出に起因する絶縁管の内壁の帯電を抑制し、耐電圧性能を向上したX線管を提供することができる。
本発明のX線管の一例を模式的に示す断面図。 本発明のX線管の一例を模式的に示す断面図。 本発明のX線管の絶縁管の一例を模式的に示す断面図。 本発明のX線管の一例を模式的に示す断面図。 本発明のX線管の一例を模式的に示す断面図。 本発明のX線管の一例を模式的に示す断面図。
以下、図面を参照して、本発明のX線管について好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部材の材質、寸法、形状、相対配置等は、特に記載がない限り、この発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
図1を参照して、本発明の一実施形態にかかる透過型のX線管の構成を説明する。図1は、X線管の中心軸を通る平面でX線管を切断した場合の軸方向断面図である。
X線管1は、陰極2、陽極3、および、中空の絶縁性の管(以下絶縁管)4を有している。陰極2および陽極3が絶縁管4の軸方向の両端縁にそれぞれ接合されることで、真空管が形成されている。
真空管の内部には、陰極2から陽極3の側に軸方向に突出するように電子銃構造体5が設けられている。電子銃構造体5は主に電子源6、グリッド電極7、集束電極8からなる。
電子源6は電子を放出する。電子源6には電子放出素子として冷陰極、熱陰極のいずれも用いることができるが、X線管に適用する電子源としては、大電流を安定に取り出せる含浸型カソード(熱陰極)を好適に使用することができる。含浸型カソードは、電子放出部近傍のヒーターに通電することにより、カソードの温度を上昇させ、電子を放出する。
グリッド電極7は、電子源6から放出された電子を真空中に引き出すために所定の電圧が印加される電極である。グリッド電極7は、電子源6と所定の距離を持って配置される。また、グリッド電極7は、電子の引き出し効率やカソード近傍の排気コンダクタンスを考慮して、形状、孔径、開口率等が決定される。例えば線径50μm程度のタングステンメッシュを好適に使用することができる。
集束電極8は、グリッド電極7によって引き出された電子線の広がり(=ビーム径)を制御するために配置される電極である。通常、集束電極8には数百〜数kV程度の電圧が印加されてビーム径の調節を行う。電子源6近傍の構造や印加電圧によっては、集束電極8を省略して、電界によるレンズ効果のみによって電子線を集束することも可能である。
陰極2は絶縁部材9を有する。絶縁部材9には電子源駆動用端子10とグリッド電極用端子11が、陰極2とは電気的に絶縁されるように固定されている。両端子10、11はX線管1内の電子源6やグリッド電極7からX線管1の外部へと引き出されている。一方、集束電極8は直接陰極2に固定され、陰極2と同電位に規定されている。ただし、集束電極8が陰極2と絶縁され、陰極2とは別の電位を与えられるようにしても構わない。電子源6から放出された電子が効率よくターゲット12に照射されるような電圧を適宜選ぶとよい。
陽極3は、所定のエネルギーを有する電子線が衝突することにより、X線を発生させるターゲット12を有する。この陽極3には数十k〜百kV程度の電圧が印加される。電子源6により発生し、グリッド電極7により引き出された電子線は、集束電極8により陽極
3上のターゲット12へと向けられ、陽極3に印加された電圧により加速されて、ターゲット12との衝突によりX線を発生する。X線は、ターゲット12の電子線衝突面の反対側の面方向にも放出され、X線管1の外部に取り出される。
ターゲット12は、X線を透過する基板の電子線照射面に、電子衝突によってX線を発生する金属膜が付された構造を有する。金属膜には、通常、原子番号26以上の材料を用いることができる。具体的には、タングステン、モリブデン、クロム、銅、コバルト、鉄、ロジウム、レニウム等、あるいはこれらの合金材料を用いた薄膜を好適に用いることができ、スパッタリング等の物理性膜によって緻密な膜構造を取るように形成される。金属膜の膜厚は、加速電圧によって電子線浸入深さすなわちX線発生領域が異なるため、最適な値が異なるが、百kV程度の加速電圧を用いる場合は通常、数μm〜十μm程度の厚さである。一方、基板は、放射線の透過性が高く、熱伝導が良く、真空封止に耐える必要があり、ダイヤモンド、窒素ケイ素、炭化ケイ素、炭化アルミ、窒化アルミ、グラファイト、ベリリウム、などを好ましく用いることができる。より好ましくは、放射線の透過率が高く、熱伝導率がタングステンよりも大きい、ダイヤモンド、窒化アルミ、窒化ケイ素が望ましい。基板の厚さは、上記の機能を満足すればよく、材料によって異なるが、0.1mm以上2mm以下が好ましい。特に、ダイヤモンドは、他の材料に比べて、熱伝導性が極めて大きく、放射線の透過性も高く、真空を保持しやすいため、より優れている。
ターゲット12と陽極3の接合は、熱的接合の他、真空の維持を考慮し、ろう付や溶接が好適である。
絶縁管4は、ガラスやセラミックなどの絶縁材料で形成される。絶縁管4の両側の端縁(開口端)には、陰極2と陽極3がそれぞれろう付や溶接によって接合される。X線管1内の真空度を良くするために加熱排気を行う場合には、陰極2、陽極3、絶縁管4、および絶縁部材9は熱膨張率が近い材料を用いるのが良い。例えば、陰極2および陽極3にはコバールやタングステン、絶縁管4および絶縁部材9にはホウケイ酸ガラスやアルミナを用いると良い。
絶縁管4は、中空の管状となっており真空管を形成できれば、その形状には制約は多くない。小型化や作り易さの点で円筒が好ましいが、絶縁管4の断面形状は円に限らず、楕円や多角形のような形状でもよいし、絶縁管4の断面積(内部空間の大きさ)や断面形状が軸方向で変化しても構わない。
前述のように、絶縁管4の端縁に陰極2が接合された構造にあっては、絶縁管4と陰極2との接合部(接合界面)13からの電子放出が、絶縁管4の内壁の帯電、ひいては放電を引き起こすおそれがある。そこで本実施形態では、真空管の内部に、接合部13から放出される電子を遮蔽し、そのような放出電子が絶縁管4の内壁に衝突するのを抑制するための電子遮蔽部材(電子遮蔽構造)が設けられている。図1の例では、絶縁管4の内壁(内周面)に形成した凸部14によって電子遮蔽部材を実現している。
凸部14は、接合部13よりも径方向の内側(すなわち電子銃構造体側)へ突出した形状を有している。絶縁管4の内壁の帯電防止の観点からは、平均粗さ数μm程度の凹凸でも効果があるが、接合部13から放出された電子を遮蔽するために、凸部14が接合部13よりも径方向の内側へ50μm以上突出することが望ましい。さらには、遮蔽効果を安定させるために、凸部14が接合部13よりも径方向内側へ1mm以上突出していることがより好ましい。なお、本実施形態の例では、接合部13が絶縁管4の内壁と同じ高さ(径方向位置)にあるため、凸部14の接合部13に対する突出量は凸部14自体の高さ(内壁に対する突出量)と同じに考えればよい。しかし、接合部13が絶縁管4の内壁と異なる高さに形成される場合には、接合部13と内壁との高さの差を考慮して凸部14自体の高さを設計する必要がある。以上のような凸部14を設けることにより、接合部13か
らの放出電子が遮蔽されるため、絶縁管4のより高電位側(陽極側)の内周面への電子の再突入が抑制され、より効率的に帯電が抑制される。
X線管1を図1のA−A線にて輪切りにし、陽極側から陰極側を覗いた場合の径方向断面を図2に示す。図2に示すように、切断部から陰極側を見た場合には、接合部13(点線にて表示)は凸部14に隠れて見えない。凸部14は絶縁管4の内壁の全周囲にわたり存在しており、これにより接合部13からの放出電子を全周囲的に漏れなく遮蔽できるようにしている。
接合部13からの放出電子を遮蔽する目的であれば、接合部13の近傍に少なくとも1つの凸部14(電子遮蔽部材)を設けるだけでもよい。しかしながら、絶縁管4と陰極2の接合部13以外にも、真空管内部に混入した異物や、内部構造物のバリなどからも意図しない電子放出が生じる可能性がある。このような電子放出は、主に電子銃構造体5の付着物やバリから発生すると考えられる。そこで、接合部13の近傍だけでなく、軸方向の異なる位置に複数の凸部14を設けることが好ましい。
複数の凸部14を設ける形態については様々なパターンが考えられる。たとえば、図1、図2のように複数の環状の凸部を軸方向に所定の間隔で配置してもよい(図1、図2は、6個の環状の凸部を等間隔に配置した例である。)。また、図3(a)のように、複数の弧状(非環状)の凸部を周方向位置をずらしながら軸方向に所定の間隔で配置することにより、階段状(ラビリンス状)のパターンを形成してもよい。また、図3(b)のように、絶縁管4の内壁に沿って凸部14を螺旋状に設けることもできる。また、図1〜図3のパターンを組み合わせても良い。さらに、必ずしもすべての凸部が同じ突出量である必要はなく、図4に任意の場所での径方向断面を示したように、凸部14に段差があってもよい。これら複数の凸部によって、X線管1の高耐圧が図られ、小型化も可能となる。
一方、凸部14を際限なく突出させると、電子銃構造体(本実施態様においては集束電極8)との空間距離が狭くなる。そうすると、電子銃構造体5と凸部14との電位差によっては、空間耐圧を劣化させてしまうおそれがある。凸部14の電位は、その軸方向の位置に応じて陰極電位と陽極電位のあいだの電位をとり、陽極3に近づくほど高くなっていく。したがって、電子銃構造体5と凸部14のあいだの耐圧が最も問題となるのは、電子銃構造体5の先端近傍であることがわかる。そこで、電子銃構造体5の先端に近い側に設けられている凸部14では、陰極2に近い側に設けられている凸部14に比べて、電子銃構造体5とのあいだの径方向距離(あるいは最近接距離)を大きくするとよい。これにより空間耐圧の劣化を低減できる。
図5を用いて、凸部14の突出量の上限についてさらに詳しい検討を行う。図5はX線管の中心軸を通る平面でX線管を切断した場合の軸方向断面図であり、符号は図1のものと同じである。
図5において、L1は、陰極2から電子銃構造体5の先端までの軸方向の距離を示し、Dは、電子銃構造体5の先端(つまり陰極2から距離L1の位置)における電子銃構造体5と絶縁管4の内壁とのあいだの径方向の距離を示す。ここで、陰極2からの軸方向の距離がLの位置にある凸部14と電子銃構造体5とのあいだの最近接距離R(L)が、式1の関係を満たすことが望ましい。図5には式1の導く境界のイメージを点線で示してあり、式1は凸部14が点線よりも電子銃構造体5側にはみ出さないことを意味する。

R(L)≧D×L/L1 (式1)
これは電子銃構造体5と絶縁管4との間の空間の電界強度が、電子銃構造体5の先端部付近において最も強くなるような条件である。式1を満足することにより、電子銃構造体5と絶縁管4に設けられた凸部との空間電界強度によって耐圧が低下することなく、X線管の高電圧化と小型化を両立することが可能となる。
図5のように絶縁管4の内壁が円筒面である場合に、陰極2からの凸部14までの軸方向の距離Lの位置における、内壁に対する凸部14の突出量H(L)(つまり凸部14の内壁に対する高さ)が満たすべき条件は次のようになる。電子銃構造体5の先端(L=L1)を境に場合分けでき、陰極側では式2、陽極側では式3で表わされる。

L≦L1の場合:
H(L)≦(1−L/L1)×D (式2)
L>L1の場合:
(D−H(L))+(L−L1)≧(D×L/L1) (式3)
なお、本発明の絶縁管4の形状として、絶縁管4の断面積(内部空間の大きさ)や断面形状が軸方向で変化した場合には、X線管の動作時の電場を考慮して以下のようにH(L)を考慮すればよい。すなわち、X線管動作時に陰極2と陽極3との空間に発生させる平均電界の方向に沿って、絶縁管4と陰極2との接合部から延在する仮想的な筒状の内壁面を基準面として、該基準面上の任意の位置と陰極2からの距離をLとして、仮想内壁に対する凸部14の突出量H(L)を決定する事が可能となる。
以上述べた本実施形態のX線管の構造によれば、電子遮蔽部材としての凸部14を設けたことにより、陰極2と絶縁管4の接合部13からの放出電子や、異物やバリなどからの放出電子を遮蔽することができるため、絶縁管4の内壁の帯電を抑制できる。したがって、X線管1の耐電圧性能を向上することができるため、X線管1の高電圧化や小型化を図ることが容易になる。本実施形態のX線管1は、各種X線発生装置に用いることが可能である。
なお、上記実施形態では、絶縁管4の内壁に形成した凸部14により電子遮蔽部材を実現したが、電子遮蔽部材の構造はこれに限られず、接合部13からの放出電子を遮蔽できれば、その具体的構造、形状、材料などはどのようなものでもよい。たとえば、四角型の凸部14でなく、丸型や三角型の凸部により電子遮蔽部材を構成することもできるし、絶縁管4とは別の部材(部品)により電子遮蔽部材を構成することもできる。
また、上記実施形態では集束電極8をもつ電子銃構造体5を示したが、集束電極8がない場合には、電子銃構造体5を構成する他の部材(たとえばグリッド電極7)と電子遮蔽部材との最近接距離を考慮すればよい。また、電子源6の形態によっては、グリッド電極7が無い場合もあるが、そのような場合でも、電子銃構造体5を構成する他の部材と電子遮蔽部材との最近接距離を考慮すればよい。
[実施例1]
図6を用いて実施例1のX線管の構成を説明する。図6は、X線管の中心軸を通る平面でX線管を切断した場合の軸方向断面図である。本実施例のX線管1は、陰極2、陽極3、絶縁管4、電子銃構造体5、絶縁部材9、電子源駆動用端子10、グリッド電極用端子11、およびターゲット12からなる。なお、電子銃構造体5は、電子源6、グリッド電極7、集束電極8からなる。
陰極2および陽極3にはコバール、絶縁管4および絶縁部材9にはアルミナを用いてい
る。陰極2および陽極3は、溶接によって絶縁管4に接合している。特に、X線管内側の陰極2と絶縁管4の接合部を符号13として示している。
電子源6として、東京カソード研究所社製含浸型カソードを使用した。このカソードはエミッタ(電子放出部)が含浸された円柱形状をしており、筒状のスリーブ上端に固定されている。スリーブ内にはヒーターが取り付けられており、このヒーターに電子源駆動用端子10より通電することによってカソードが加熱されて熱電子が放出される。電子源駆動用端子10は絶縁部材9にろう付されている。
ターゲット12は、板厚0.5mmのシリコンカーバイド基板上に、膜厚5μmのタングステン膜が形成されてなる。ターゲット12は陽極3にろう付されている。
電子銃構造体5は、電子源6と、電子源6からターゲット12に向かって、グリッド電極7と集束電極8を順に配置してなる。グリッド電極7はグリッド電極用端子11から通電され、電子源6から電子を効率よく引き出す。グリッド電極用端子11は電子源駆動用端子10と同様に絶縁部材9にろう付されている。集束電極8は陰極2に溶接され、陰極2と同電位に規定される。集束電極8は、グリッド電極7によって引き出された電子ビームのビーム径を絞り、電子ビームを効率よくターゲット12に照射させる。
陰極2、陽極3、および絶縁管4の外径はφ60mm、絶縁管4の内径はφ50mm、集束電極8の外形はほぼ円柱でφ25mmであり、それぞれの中心を合わせている。絶縁管4の軸方向の長さは70mmであり、集束電極8は陰極2よりも40mm突き出ている。
絶縁管4はX線管内部に凸部14を有している。凸部14は陰極2から5mm間隔、5mm幅を繰り返し3山、陽極3から5mm間隔、5mm幅を繰り返し2山、計5つの環状の凸部14を設けた。5つの凸部14の高さはすべて5mmである。すなわち、凸部14の接合部13に対する突出量もすべて5mmである。
最後に、加熱しながら、陰極2に溶接された不図示の排気管から排気した後、封止される。
上記のような方法で、X線管1を5個作製し、絶縁油中で高電圧印加を試みた。陰極2を接地し、陽極3を高圧電源に接続し、徐々に陽極電圧を上げていった。最初に放電した電圧の平均が81kV、100kVまでの累積放電回数は平均1.6回であった。凸部が無い場合の初回放電電圧は60kV、100kVまでの累積放電回数は平均5回であったので、本実施例のX線管の耐圧が高いことが実証できた。
[実施例2]
本実施例が実施例1と異なるのは、凸部の高さを場所によって変えたことである。本実施例の模式図を図5に示す。
凸部14は、陰極2から5mm間隔、5mm幅を繰り返し3山、陽極3から5mm間隔、5mm幅を繰り返し2山、計5つの凸部14を設けた。5つの凸部14の高さHはそれぞれ、陰極2側から順に、9mm、6mm、3mm、0.4mm、5mmである。
それぞれの凸部14において電子銃構造体5との間の電界強度が最も厳しいと思われる場所において、式2、式3を満たすようにしてある。具体的には、陰極側の3つの凸部14については電位が高い凸部14の陽極側のエッジ、陽極側の2つの凸部14については電子銃構造体5との距離が近い陰極側のエッジとした。それぞれの位置の陰極2からの距離Lは、10mm,20mm,30mm,50mm,60mmである。陰極側の3つの凸部14に対しては式2、陽極側の2つの凸部14に対しては式3を当てはめると、D=12.5mm,L1=40mmなので、陰極2側から順に、
9 ≦ 9.375・・・(式2)
6 ≦ 6.25・・・(式2)
3 ≦ 3.125・・・(式2)
246.41 ≧ 244.14・・・(式3)
456.25 ≧ 351.56・・・(式3)
となっている。
この様なX線管1を5個作製し、実施例1と同様に、絶縁油中で高電圧印加を試みた。陰極2を接地し、陽極3を高圧電源に接続し、徐々に陽極電圧を上げていった。最初に放電した電圧の平均が86kV、100kVまでの累積放電回数は平均1.4回であった。本実施例は実施例1よりも耐圧が高いことを実証した。
1:X線管、2:陰極、3:陽極、4:絶縁管、5:電子銃構造体、13:接合部、14:凸部

Claims (9)

  1. 中空の絶縁性の管と前記絶縁性の管の軸方向の両端にそれぞれ接合された陰極および陽極を有する真空管と、
    前記真空管の内部に、前記陰極から前記陽極の側に軸方向に突出して設けられた電子銃構造体と、を有する透過型のX線管であって、
    前記陰極と前記絶縁性の管の端縁との接合部から放出される電子を遮蔽する電子遮蔽部材が設けられており、
    前記電子遮蔽部材は、前記絶縁性の管の内壁に設けられた凸部である
    ことを特徴とするX線管。
  2. 前記電子遮蔽部材が、前記接合部よりも径方向の内側へ50μm以上突出している
    ことを特徴とする請求項1に記載のX線管。
  3. 前記電子遮蔽部材が、前記接合部よりも径方向の内側へ1mm以上突出している
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のX線管。
  4. 前記電子遮蔽部材が、前記絶縁性の管の内壁の全周囲にわたり設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線管。
  5. 前記陰極からの軸方向の距離が異なる位置に複数の電子遮蔽部材が設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線管。
  6. 前記電子遮蔽部材が、前記絶縁性の管の内壁に沿って螺旋状に設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線管。
  7. 前記電子銃構造体の先端に近い側に設けられている電子遮蔽部材は、前記陰極に近い側に設けられている電子遮蔽部材に比べて、前記電子銃構造体とのあいだの径方向の距離が大きい
    ことを特徴とする請求項5または6に記載のX線管。
  8. 前記陰極から前記電子銃構造体の先端までの軸方向の距離をL1、前記電子銃構造体の先端における前記電子銃構造体と前記絶縁性の管の内壁とのあいだの径方向の距離をDとした場合に、
    前記陰極からの軸方向の距離がLの位置にある前記電子遮蔽部材と前記電子銃構造体とのあいだの最近接距離R(L)が、下記の関係を満たす
    R(L)≧D×L/L1
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のX線管。
  9. 前記絶縁性の管の内壁が円筒面であり、前記電子遮蔽部材が前記絶縁性の管の内壁から径方向の内側へ突出する凸部であり、
    前記凸部の前記内壁からの突出量H(L)が、下記の関係を満たす
    L≦L1の場合:
    H(L)≦(1−L/L1)×D
    L>L1の場合:
    (D−H(L))+(L−L1)≧(D×L/L1)
    ことを特徴とする請求項8に記載のX線管。
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