JP2012246533A - めっき物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
基材上に設けられたプライマー層と、導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む塗料をプライマー層上にパターン印刷して形成されためっき下地塗膜層との間で剥離が生じ、密着性に劣る問題があった。
【構成】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、めっき下地塗膜層中の合成樹脂において、Tg(ガラス転移点)が30℃以下の合成樹脂を該めっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むことでプライマー層との密着性を向上できることを見出し、その結果、基材とパターン化された金属めっき膜との密着性に優れためっき物を提供することができるものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材上に設けられたプライマー層と、そのプライマー層上に設けられた導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むめっき下地塗膜層間の密着性を向上させることができ、その結果、基材とパターン化された金属めっき膜との密着性に優れるめっき物の技術に関する。
基材上にパターン化された金属めっき膜を形成するために、導電性又は還元性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含んだ塗料を基材上にパターン印刷し、これにより形成されためっき下地塗膜層中に導電性の高分子微粒子を含んだ場合には、更に脱ドープ処理をして還元性の高分子微粒子とした後、該めっき下地塗膜層上に無電解めっき液から金属膜を化学めっきし、基材上にパターン化された金属めっき膜を形成することが特許文献1に開示されている。
ところが、上記塗料を、例えば基材としてポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」ともいう)のような樹脂フィルム上にパターン印刷した場合、該基材とパターン印刷して形成されためっき下地塗膜層との間で剥離が生じ、密着性に劣るものであった。
そこで、密着性を改善するために、PENのような樹脂フィルムからなる基材上に特許文献2に記載されているようなプライマー層を設け、該プライマー層上に上記塗料をパターン印刷して形成されためっき下地塗膜層を設け、該めっき下地塗膜層上に無電解めっき法による金属めっき膜を設けることが検討された。
特開2010−095776号公報 特開2010−031318号公報
しかしながら、基材上に設けられたプライマー層と、導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む塗料をプライマー層上にパターン印刷して形成されためっき下地塗膜層との間で剥離が生じ、密着性に劣る問題があった。
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、めっき下地塗膜層中の合成樹脂において、Tg(ガラス転移点)が30℃以下の合成樹脂を該めっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むことでプライマー層との密着性を向上できることを見出した。
すなわち、本発明の請求項1記載のめっき物は、基材と、該基材上に設けられたプライマー層と、該プライマー層上に設けられた導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むパターン状のめっき下地塗膜層と、該パターン状のめっき下地塗膜層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜とからなるめっき物であって、該めっき下地塗膜層における合成樹脂は、Tgが30℃以下の合成樹脂を該めっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むことを特徴とする。
また、本発明の請求項2記載のめっき物は、前記請求項1記載のめっき物の構成に加えて、該プライマー層における合成樹脂には、Tgが30℃以下の合成樹脂を該プライマー層の合成樹脂中に、固形分比率で10〜75質量%含むことを特徴とする。
また、本発明の請求項3記載のめっき物は、前記請求項1または2記載のめっき物の構成に加えて、該めっき下地塗膜層における合成樹脂と無機系フィラーの固形分比は、合成樹脂1質量部に対して0.1ないし0.7質量部であり、該めっき下地塗膜層における導電性の高分子微粒子と合成樹脂の固形分比は、導電性の高分子微粒子1質量部に対して5ないし30質量部であることを特徴とする。
本発明のめっき物は、基材上に設けられたプライマー層と、そのプライマー層上に設けられた導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むめっき下地塗膜層間の密着性を向上させることができ、その結果、基材とパターン化された金属めっき膜との密着性に優れためっき物を提供することができるものである。
本発明のめっき物は、基材と、該基材上に設けられたプライマー層と、該プライマー層上に設けられた導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むパターン状のめっき下地塗膜層と、該パターン状のめっき下地塗膜層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜とからなるめっき物であって、該めっき下地塗膜層における合成樹脂は、Tgが30℃以下の合成樹脂を該めっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むことを特徴とする。
1)基材
本発明の基材としては、例えば、ポリエチレンナフタレートからなる樹脂フィルムを用いることができ、該フィルム上に本発明のプライマー層およびめっき下地塗膜層を設けることで、プライマー層とめっき下地塗膜層の密着性を向上させることができ、結果的に、該フィルムと、該フィルム上に設ける無電解めっき法による金属めっき膜との密着性を向上させることができる。
また、本発明の基材としては、ポリエチレンナフタレートからなる樹脂フィルム以外のものも用いることができる。例えば、(1)ポリブチレンテレフタレートやポリ乳酸等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、液晶ポリマー、変性ポリフェニルエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、PC/ABS(ポリカエービーエス)樹脂、ASA/PC(アクリロニトリルスチレンアクリレート/ポリカ)樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、フェノール樹脂、(2)自己粘着性を有する軟質の合成樹脂として、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコン樹脂、ブチルゴム、軟質ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、(3)ガラス、アルミナなどを、板状(シート状も含む)、フィルム状、射出成形などにより成形した成形品にしたものを基材として用いることができる。
そして、この成形品に本発明のめっき物を設けることにより、例えば、自動車向けの装飾めっき品を作製できたり、或いは、ポリイミド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂や液晶ポリマーなどからなるフィルム上に金属めっき膜をパターン状に設けることにより、例えば、電気回路品を作製することができる。
2)プライマー層
本発明のプライマー層は、合成樹脂を含む塗料を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥を行うことにより形成することができる。合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられるが挙げられる。
また、プライマー層における合成樹脂は、Tgが30℃以下の合成樹脂を該プライマー層の合成樹脂中に、固形分比率で10〜75質量%含むことが好ましい。10質量%未満であると、めっき物としての密着性を得るために、めっき下地塗膜層におけるTgが30℃以下の合成樹脂分を多量に使用しなければならず、その結果、めっき下地塗膜層形成から金属めっき膜を形成する迄にブロッキングを起こし易い。また、75質量%を超えるとプライマー層形成後にブロッキングを起こし易い。
前記プライマー層を形成する塗料には、合成樹脂に加えて、溶媒を含み得る。溶媒としては、合成樹脂を溶解することができるものであればよく、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
更に、前記プライマー層を形成するための塗料は、用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、インキ合成樹脂、無機系化合物を加えてもよい。
前記プライマー層を形成するための塗料の塗布方法は、例えば、スプレー、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、オフセット印刷機、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、フローコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。乾燥条件も特に限定されず、室温、又は加熱条件下で行うことができる。
プライマー層の厚みは、0.01〜10μmの範囲がよい。プライマー層の厚みが10μmを超えると、基材とプライマー層、若しくはプライマー層とめっき下地塗膜層において層間剥離する場合がある。逆に、0.01未満であると、プライマー層が凝集破壊する場合がある。
3)めっき下地塗膜層
本発明のめっき下地塗膜層は、導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む層であり、該めっき下地塗膜層における合成樹脂は、Tgが30℃以下の合成樹脂を該めっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むものである。
・導電性の高分子微粒子
本発明の導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むめっき下地塗膜層は、プライマー層上に還元性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む下地塗料をパターン状に塗布してめっき下地塗膜層を形成するか、又は、プライマー層上に導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む下地塗料をパターン状に塗布し、その後、該導電性の高分子微粒子を脱ドープ処理してめっき下地塗膜層を形成する。すなわち、無電解めっきを行う前のめっき下地塗膜層は、還元性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む状態にしておく必要があり、プライマー層上に導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む下地塗料を塗布した場合には、その導電性の高分子微粒子を脱ドープして還元性の高分子微粒子と合成樹脂、無機系フィラーを含む状態にしておく必要がある。そして、例えば、プライマー層上に形成された還元性の高分子微粒子を含むめっき下地塗膜層上に、パラジウム等の触媒金属を還元・吸着させ、該パラジウム等の触媒金属が吸着されためっき下地塗膜層上に金属めっき膜を形成することにより製造されるが、この際の、パラジウム等の触媒金属の還元及び高分子微粒子への吸着は、例えば、ポリピロールの場合、下図で示される状態になると考えられる。
Figure 2012246533
即ち、還元性の高分子微粒子(ポリピロール)がパラジウムイオンを還元することにより、高分子微粒子上にパラジウム(金属)が吸着されるが、これにより、高分子微粒子(ポリピロール)はイオン化される、即ち、パラジウムによりドーピングされた状態となり、結果として導電性を発現する。したがって、該めっき下地塗膜層上に無電解めっき法により金属膜を設けて得られた本発明のめっき物のめっき下地塗膜層は、結果的に導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むものとなる。
本発明のプライマー層上にパターン化されためっき下地塗膜層を形成するための前記下地塗料は、還元性又は導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むものである。そして、前記還元性の高分子微粒子は、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。また、還元性の高分子微粒子としては、0.01S/cm以下が好ましく、より好ましくは0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。還元性の高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性の高分子微粒子を使用することもできる。
また、前記導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含む下地塗料に使用する導電性の高分子微粒子としては、導電性を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。導電性の高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性の高分子微粒子を使用することもできる。
また、上記還元性の高分子微粒子や導電性の高分子微粒子の製造方法は、特開2010−095776号公報に記載されている方法を採用することができる。
・合成樹脂(バインダー)
本発明の合成樹脂は、Tgが30℃以下のものをめっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むものである。25質量%未満であると、プライマー層との密着性に劣る。また、75質量%を超えると、熱負荷後の密着性に劣る。
合成樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。そして、これら樹脂においてTgが30℃以下のものをめっき下地塗膜層の全合成樹脂中に25〜75質量%含むように用いればよい。
合成樹脂の使用量は、固形分比で、導電性の高分子微粒子1質量部に対して5ないし10質量部の範囲であるのが好ましい。合成樹脂が10質量部を超えると金属めっきが析出し難く、合成樹脂が5質量部未満であると、プライマー層との密着性が劣り易い。
・無機系フィラー
本発明に使用する無機系フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン及びシリカ粒子等が挙げられる。
無機系フィラーの使用量は、固形分比で、合成樹脂1質量部に対して0.1ないし0.7質量部の範囲であるのが好ましい。無機系フィラーの使用量が、合成樹脂1質量部に対して0.7質量部を超える場合、塗膜強度が低下する場合があり、また、0.1質量部未満となる場合、めっき析出性が低下する場合がある。
・溶媒
本発明の導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むめっき下地塗膜層を形成するための前記下地塗料には、導電性又は還元性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーに加えて、溶媒を含み得る。
前記下地塗料に含み得る溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。尚、導電性又は還元性の高分子微粒子として、予め有機溶媒に分散された分散液を使用する場合は、分散液に使用されている有機溶媒を下地塗料の溶媒の一部又は全部として使用することができる。
更に、前記下地塗料は用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、顔料、染料、無機物等の充填剤を加えることも可能である。
本発明のプライマー層上に、前記下地塗料をパターン状に塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、ドライオフセット印刷機、パッド印刷機等を用いて、印刷することができる。乾燥条件も特に限定されず、室温、又は加熱条件下で行うことができる。
本発明のめっき下地塗膜層の厚さは、0.1μmないし10μmの範囲とするのが好ましい。めっき下地塗膜層の厚さを0.1μmより薄くすると、めっき析出性が低下する場合がある。また、めっき下地塗膜層の厚さを10μmを超えると、プライマー層とめっき下地塗膜層において層間剥離する場合がある。
前記下地塗料として、導電性の高分子微粒子を用いて形成されためっき下地塗膜層は、微粒子を還元性とするために脱ドープ処理が行われる。脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液で処理して還元する方法、又は、アルカリ性溶液で処理する方法が挙げられる。
操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で処理するのが好ましい。導電性の高分子微粒子を用いて形成された層は、緩和な条件下で短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。上記の脱ドープ処理により、導電性の高分子微粒子を用いて形成されためっき下地塗膜層中の高分子微粒子は還元されて、還元性の高分子微粒子となる。
4)無電解めっき法
上記のようにして製造された、パターン化されためっき下地塗膜層が形成された基材を無電解めっき法によりめっき物とするが、該無電解めっき法は、通常知られた方法に従って行うことができる。即ち、前記基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウムが特に好ましい。好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、塗膜中の還元性の高分子微粒子は、結果的に、導電性の高分子微粒子となる。
上記で処理された基材は、金属を析出させるためのめっき液に浸され、これにより無電解めっき膜が形成される。めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
得られためっき物は、使用したプライマー層若しくはめっき下地塗膜層中の合成樹脂の融点より低い温度において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましい。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1:還元性のポリピロール微粒子分散液の調製
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社製)0.42mmol、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤エマルゲン409P(花王株式会社製)2.1mmol、トルエン10mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有する還元性ポリピロール微粒子を得た。なお、得られたトルエン分散液中の還元性のポリピロール微粒子の固形分は、5%であった。
製造例2:プライマー層用の合成樹脂と、めっき下地塗膜層用の合成樹脂(B)の調製
各層(プライマー層、若しくはめっき下地塗膜層)の合成樹脂中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が表1に示す値となるようにTg=30℃以下の合成樹脂(a)とTgが30℃超えの合成樹脂(b)を配合し、プライマー層用の合成樹脂と、めっき下地塗膜層用の合成樹脂(B)をそれぞれ調製する。
なお、Tg=30℃以下の合成樹脂(a)としては、Tg=10℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GK68BS:ポリエステル系樹脂)と、Tg=16℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GS33CS:ポリエステル系樹脂)の中から選択し、選択したものを表1では○と示した。
また、Tgが30℃超えの合成樹脂(b)としては、Tg=35℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GK78CS:ポリエステル系樹脂)と、Tg=60℃(東洋紡績(株)社製のVYLON 24CS:ポリエステル系樹脂)と、Tg=67℃(東洋紡績(株)社製のVYLON 23CS:ポリエステル系樹脂)の中から選択し、選択したものを表1では○と示した。
製造例3:めっき下地塗膜層を形成するための下地塗料の調製
製造例2で得られた合成樹脂(B)に、無機系フィラー(日本エアロジル(株)社製のアエロジル200:粉末シリカ)を固形分比で、合成樹脂(B):無機系フィラー(C)=1:0.4となるように配合し、プレ撹拌後、3本ロールミルにて分散させた。
続いて、製造例1で調製した還元性ポリピロール微粒子分散液に、前記で調製した合成樹脂(B)及び無機系フィラー(C)を含む分散液を固形分比で、高分子微粒子(A):合成樹脂(B):無機系フィラー(C)=1:6:2.6となるように配合し、撹拌、脱泡を行い、めっき下地塗料を得た。
実施例1:めっき物の製造
<プライマー層の製造>
基材としてPENフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製のテオネックスQ81:ポリエチレンナフタレート)を用い、その基材上にプライマーとして、製造例2で得られた合成樹脂をコーティングし、100℃で10分間乾燥させて厚みが3μmのプライマー層を形成した。
<めっき下地塗膜層の製造>
続いて、上記で製造したプライマー層上に製造例3で得た下地塗料をスクリーン印刷機にてL/S=100μm/100μmの細線パターンを印刷し、乾燥させてめっき下地塗膜層を形成した。
<無電解めっき法によるめっき物の製造>
続いて、上記で製造しためっき下地塗膜層が形成された基材を、0.02%塩化パラジウム−0.01%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、洗浄水で水洗した。
次に、該基材を無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し銅めっきを施し、洗浄水で水洗した後、水分を乾燥させて金属めっき膜の厚みが0.3μmのめっき物を製造した。
実施例2:めっき物の製造
めっき下地塗膜層の合成樹脂(B)中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が25%となるように配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例3:めっき物の製造
めっき下地塗膜層の合成樹脂(B)中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が75%となるように配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例4:めっき物の製造
めっき下地塗膜層の合成樹脂(B)について、Tg=30℃以下の合成樹脂(a)として、Tg=10℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GK68BS:ポリエステル系樹脂)を選択し、Tgが30℃超えの合成樹脂(b)として、Tg=60℃(東洋紡績(株)社製のVYLON 24CS:ポリエステル系樹脂)を選択し、該Tg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率が50%の値になるように配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例5:めっき物の製造
プライマー層の合成樹脂について、Tg=30℃以下の合成樹脂(a)として、Tg=10℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GK68BS:ポリエステル系樹脂)を選択し、Tgが30℃超えの合成樹脂(b)として、Tg=60℃(東洋紡績(株)社製のVYLON 24CS:ポリエステル系樹脂)を選択し、該Tg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率が50%の値になるように配合した合成樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例6:めっき物の製造
プライマー層の合成樹脂中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が10%となるように配合した合成樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例7:めっき物の製造
プライマー層の合成樹脂中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が75%となるように配合した合成樹脂を用いた実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例8:めっき物の製造
めっき下地塗膜層を形成するための下地塗料において、固形分比で、高分子微粒子(A):合成樹脂(B):無機系フィラー(C)=1:4:2.6となるように配合し、その結果、合成樹脂(B):無機系フィラー(C)=1:0.7となった以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
実施例9:めっき物の製造
プライマー層の合成樹脂について、Tg=30℃以下の合成樹脂(a)を用いず、Tgが30℃超えの合成樹脂(b)として、Tg=35℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GK78CS:ポリエステル系樹脂)と、Tg=67℃(東洋紡績(株)社製のVYLON 23CS:ポリエステル系樹脂)とを1:1の固形分比で配合した合成樹脂を用い、更にめっき下地塗膜層の合成樹脂中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が75%となるように配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
比較例1:めっき物の製造
めっき下地塗膜層の合成樹脂(B)中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が10%となるように配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
比較例2:めっき物の製造
めっき下地塗膜層の合成樹脂(B)中にTg=30℃以下の合成樹脂(a)の固形分比率、すなわち、[(a)/(a)+(b)]×100[%]の値が100%となるように配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
比較例3:めっき物の製造
めっき下地塗膜層の合成樹脂(B)について、Tg=30℃以下の合成樹脂(a)を用いず、Tgが30℃超えの合成樹脂(b)として、Tg=35℃(東洋紡績(株)社製のVYLON GK78CS:ポリエステル系樹脂)と、Tg=67℃(東洋紡績(株)社製のVYLON 23CS:ポリエステル系樹脂)とを1:1の固形分比で配合した合成樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
比較例4:めっき物の製造
プライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法にてめっき物を製造した。
試験例1
上記製造した実施例1ないし9、及び比較例1ないし4のめっき物において、密着性の評価試験を行い、その結果を表1に示した。尚、密着性の評価方法・評価基準は以下の通りである。
・密着性
(評価方法)
得られためっき物のピール強度について、得られためっき物上に電解めっきを行って金属めっき膜の厚みを12μmにした後、JIS C6471に準じて測定を実施した。
なお、得られた直後に測定したものを「初期」とし、得られためっき物を150℃で2時間の環境下においた後に測定したものを「熱負荷後」として、それぞれ測定し、以下の評価基準で評価した結果を表3に示した。
(評価基準)
◎:ピール強度が0.6N/mm以上
○:ピール強度が0.4N/mm以上0.6N/mm未満
×:ピール強度が0.4N/mm未満
Figure 2012246533

Claims (3)

  1. 基材と、該基材上に設けられたプライマー層と、該プライマー層上に設けられた導電性の高分子微粒子、合成樹脂、無機系フィラーを含むパターン状のめっき下地塗膜層と、該パターン状のめっき下地塗膜層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜とからなるめっき物であって、
    該めっき下地塗膜層における合成樹脂は、Tgが30℃以下の合成樹脂を該めっき下地塗膜層の合成樹脂中に、固形分比率で25〜75質量%含むことを特徴とするめっき物。
  2. 該プライマー層における合成樹脂は、Tgが30℃以下の合成樹脂を該プライマー層の合成樹脂中に、固形分比率で10〜75質量%含むことを特徴とする請求項1記載のめっき物。
  3. 該めっき下地塗膜層における合成樹脂と無機系フィラーの固形分比は、合成樹脂1質量部に対して0.1ないし0.7質量部であり、
    該めっき下地塗膜層における導電性の高分子微粒子と合成樹脂の固形分比は、導電性の高分子微粒子1質量部に対して5ないし30質量部であることを特徴とする請求項1または2記載のめっき物。
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