JP2012241115A - 熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス繊維織物に含浸した際のプリプレグの熱伝導率の低下が小さいために熱伝導率の高いプリプレグを製造することが可能な樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いたプリプレグ及び積層板とを提供する。
【解決手段】特定の一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂と、特定の一般式(2)で表わされる繰り返し構造及び/又は特定の一般式(3)で表される繰り返し構造を有するフェノール性化合物とを配合してなる熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物と、この熱硬化性樹脂組成物及びガラス繊維を有するプリプレグと、このプリプレグを積層してなる積層板に係り、詳しくは、半導体パッケージやプリント配線板用に好適な熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板に関する。
近年、携帯電話やモバイル機器など、電子機器の小型軽量化または薄型化が顕著である。これにより、電子機器内部のプリント配線板に搭載されたICやLSI等の電子部品は高密度化してきており、それに伴って電子機器内部の発熱密度も大きくなっている。
電子機器内の発熱密度が大きくなると、電子機器内部の発熱に伴う温度上昇は顕著になり、電子部品の動作信頼性は低下する。したがって、電子部品や導体から発生した熱を速やかに外部に放出するために、プリント配線基板の放熱性を向上させる必要がある。
上記問題を解決する手段としては、様々な方法が提案されている。例えば特許文献1には、内層回路板に対し、熱硬化性樹脂に電気絶縁性フィラーを分散させた半硬化状態の接着層を積層してなる多層プリント配線板が記載されている。
特開2000−349446号公報
特許文献1のようにフィラーを添加すると放熱性(熱伝導率)が向上するが、その添加割合にも限界があるため、熱硬化性樹脂の方の熱伝導率の更なる向上が望まれている。
しかしながら、熱伝導性に優れた樹脂組成物が得られた場合であっても、ガラス繊維織物に含浸して得られるプリプレグや積層板にすると、熱伝導性が大きく低下することがある。特に、樹脂組成物の熱伝導性がガラス繊維織物の熱伝導性を上回る場合に、プリプレグや積層板にしたときの熱伝導が著しく低下する傾向が見られる。なお、このように樹脂組成物の熱伝導性がガラス繊維織物の熱伝導性を上回る場合、ガラス繊維織物の割合を少なくし、樹脂組成物を多くすることで熱伝導率は改善するが、積層板の剛性が低下したり熱膨張率が増加したりしてしまい、薄い積層板を作ることができない。
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、ガラス繊維織物に含浸した際のプリプレグの熱伝導率の低下が小さいために熱伝導率の高いプリプレグを製造することが可能な樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いたプリプレグ及び積層板とを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のエポキシ樹脂及び多価フェノール性化合物を含有する樹脂組成物が、上記目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]下記一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂と、下記一般式(2)で表わされる繰り返し構造及び/又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造を有するフェノール性化合物とを配合してなる熱硬化性樹脂組成物。
Figure 2012241115
Figure 2012241115
Figure 2012241115
[式(1)中において、mは0〜10の整数であり、nは0〜10の整数であり、R1及びR2はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。]
[2]前記フェノール性化合物の数平均分子量が300〜600であり、前記フェノール性化合物中におけるカテコール及びレゾルシノールの合計数に対するレゾルシノールの存在比率が80%以上である[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]前記熱硬化性樹脂組成物は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化珪素、及び窒化硼素より選ばれる1種又は2種以上よりなる無機充填材を含有しており、前記無機充填材の前記熱硬化性樹脂組成物全体に対する含有量が30〜70体積%である[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]前記無機充填材は表面処理剤で表面処理されたものである[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物と、ガラス繊維基材と
を含有するプリプレグ。
[6]プリプレグ全体に対する前記熱硬化性樹脂組成物の含有量が60〜90体積%である[5]に記載のプリプレグ。
[7][5]又は[6]に記載のプリプレグを積層成形してなる積層板。
本発明によれば、ガラス繊維に含浸した際におけるプリプレグの熱伝導率の低下が小さい熱硬化性樹脂組成物の熱伝導率と、熱伝導率が高いために半導体パッケージやプリント配線板用に好適なプリプレグ及び積層板とを提供することができる。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物、それを用いたプリプレグ、及びこのプリプレグを積層してなる積層板について詳細に説明する。
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール性化合物とを配合してなるものである。
[エポキシ樹脂]
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂を含むものである。
Figure 2012241115
[式(1)中において、mは0〜10の整数であり、nは0〜10の整数であり、R1及びR2はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。]
この一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂を配合した熱硬化性樹脂組成物は、ガラス繊維基材に含浸させる等してプリプレグにした際における熱伝導率の低下が小さいため、熱伝導率の大きいプリプレグ及び積層板を得ることができる。また、溶剤に対する溶解性に優れるため、プリプレグ製造用のワニスを容易に得ることができる。さらに、溶融粘度が低くフィラー充填性に優れ、また耐熱性にも優れる。
式(1)中において、mが10よりも大きいと、分子量が大きくなるため粘度が高くなり、作業性、流動性、耐ブロッキング性、保存安定性の面で不都合がある。nが10よりも大きい場合も同様である。このmは好ましくは1であり、このnは好ましくは1である。
また、式(1)中において、R1及びR2は、好ましくは共に水素である。
なお、エポキシ樹脂として、一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が一般式(1)で表されるエポキシ樹脂と共に配合されていてもよい。その際、エポキシ樹脂総量における一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の割合が30重量%以上であることが好ましく、50重量%であることがより好ましい。このエポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
[フェノール性化合物]
本発明で用いられるフェノール性化合物は、下記一般式(2)で表わされる繰り返し構造及び/又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造を有するものである。
Figure 2012241115
Figure 2012241115
上記フェノール性化合物を配合した熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導率が高い。その理由は明らかでないが、このフェノール性化合物の水酸基が上記一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂のエポキシ基と反応することで、高熱伝導性が付与されるものと考えられる。
また、レゾルシノールはカテコールより熱伝導性に優れ、カテコールは安定性に優れていることから、レゾルシノールとカテコールの混合物をノボラック化したものが好ましい。具体的には、カテコール及びレゾルシノールの合計数に対するレゾルシノールの存在比率が80%以上100%未満とすることが好ましく、85%以上98%未満とすることがより好ましい。また、プリプレグの可とう性を向上するため、レゾルシノールやカテコールのモノマを一定量含むことも有効である。
このフェノール性化合物の数平均分子量は、好ましくは300〜600であり、より好ましくは350〜575であり、更に好ましくは400〜550である。300以下であるとモノマの存在比率が多くなり、硬化しにくくなったり、Tgが低くなる傾向があり、600以上であるとプリプレグの柔軟性が失われる傾向がある。
このフェノール性化合物の一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂に対する配合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ1当量に対して0.85〜1.25当量にして用いることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。
[無機充填材]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有することが好ましい。これにより、プリプレグや積層体の熱伝導性が向上する。
この無機充填材の材料としては、シランカップリング剤もしくはシリコーンオリゴマーのアルコキシ基や加水分解してできるシラノール基が強い吸着性、反応性を持つ絶縁材料が好ましい。それは表面にOH基をもった無機材料であり、例えば酸化珪素、酸化アルミニウムなどはシランカップリング剤もしくはシリコーンオリゴマーの効果が顕著に現れる。その中でも25℃における熱伝導率が3W/mK以上の熱伝導率の高い無機充填材を用いるのが好ましく、酸化アルミニウム(25℃における熱伝導率:20〜30W/mK)が好ましい無機充填材である。その他にも、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び窒化硼素も好適に用いられる。これらの無機充填材は、単独で使用されても良く、2種以上で使用されても良い。
ここで、熱伝導率は温度の依存性があるため、測定上の制約が少なく管理も容易な温度である25℃における熱伝導率を、無機充填材、樹脂組成物、プリプレグ、積層板等の熱伝導率として使用した。
また、無機充填材の形状は、樹脂に高充填した際に流動性の低下が少ない球状の粒子が好ましい。無機充填材の粒子径は、累積50%粒子径が0.1〜10μmが好ましい。この粒子径の領域では、粒子径が大きいほどフィラの充填性が向上するが、粒子径が5μm以上になるとガラス繊維織物を含むプリプレグの厚さを薄くすることができるため、特に0.3〜5μmのものが好ましい。
ここで、累積50%粒子径とは、粉末の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置などで測定することができる。
本発明では、熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは30〜80体積%であり、より好ましくは30〜70体積%であり、更に好ましくは40〜65体積%であり、特に好ましくは45〜60体積%である。無機充填材の含有量が樹脂組成物全体の30〜80体積%であると、無機充填材による樹脂組成物の熱伝導率を高める効果が大きく、また樹脂組成物の熱膨張率が低減し、適度な流動性を有し優れた成形性を有する樹脂組成物が得られるからである。詳しくは、無機充填材の含有量が樹脂組成物全体の30体積%以上であると、熱伝導効果が十分となり、80体積%以下であると、流動性が維持されて成形性が良好となる。
ここで、無機充填材の体積%とは、樹脂組成物全体の体積に対する無機充填材の占める体積を百分率で示したものである。
上記のとおり、無機充填材は、表面処理剤で前処理されたり、インテグラルブレンド処理されたりしていることが好ましい。この表面処理剤としては、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。
このうち、シランカップリング剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシランのようなビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリル基含有シラン;および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シランが挙げられる。
なお、上記シランカップリング剤のほかに、チタネート系等のカップリング剤を用いてもよい。
[その他の配合成分]
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記成分以外の成分を配合してもよい。たとえば、上記フェノール性化合物以外の硬化剤を配合してもよい。また、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着性向上剤等を配合してもよい。
硬化促進剤の例としては、たとえばエポキシ樹脂の硬化促進剤として、イミダゾール類及びその誘導体;有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩;等が挙げられる。
このようなイミダゾール類及びその誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4、5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2、4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2、4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。これらイミダゾール系化合物は、マスク化剤によりマスクされていても良い。
このようなマスク化剤としては、アクリルニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアニネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等が挙げられる。
有機リン系化合物としては、エチレンホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
第二級アミン類としては、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−アルキルアリールアミン、ピペラジン、ジアリルアミン、チアゾリン、チオモルホリン等が挙げられる。
第三級アミン類としては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2、4、6−トリス(ジアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムフルオライド、塩化ベンザルコニウム、ベンジルジ(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウムクロライド、デシルジ(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
なお、上記硬化促進剤は、2種類以上を併用しても良い。
難燃剤の例としては、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤;三酸化アンチモン;等の無機系難燃剤が挙げられる。
その他、紫外線吸収剤の例としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化防止剤の例としてはヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール系酸化防止剤、密着性向上剤の例としては尿素シラン等の尿素化合物やシランカップリング剤が挙げられる。
[ワニス]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、プリプレグに用いられるため、各成分が有機溶媒中に溶解もしくは分散された状態で配合され、最終的にはワニスの状態で提供されることが好ましい。
この際用いる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;等が挙げられ、単独または2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の点からメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブが好ましく、低毒性である点からメチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
また、配合の順序は、無機充填材をあらかじめ有機溶媒中に分散させた後、無機充填材以外の成分と配合することが好ましい。
無機充填材を有機溶媒中に分散させる際は、分散性向上のためにビーズミル、ホモジナイザー、ジェットミル等の分散機を使うことができる。また、上述のとおり、無機充填材をシラン系やチタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理、あるいはインテグラルブレンド処理することも好ましい。
最終的に得られるワニス中の樹脂組成物は、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量が50質量%以上であると、適切な樹脂組成物の付着量のプリプレグを作製することが容易となり、80質量%以下であると、ワニスの粘度が低くなり塗工性が向上する。
<プリプレグ>
次に上記の熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは、上記の熱硬化性樹脂組成物をガラス繊維基材に含浸、吹付け、押出し等の方法で塗工し、加熱等により半硬化して製造することができる。特に、上記樹脂組成物ワニスを用いて基材に含浸塗工し、加熱半硬化する方法が生産性に優れているので好ましい。
プリプレグ全体に対する熱硬化性樹脂組成物の含有割合は、好ましくは60〜90体積%であり、より好ましくは65〜85体積%であり、更に好ましくは70〜85体積%である。特に70体積%以上であると、熱伝導率の大きい熱硬化性樹脂組成物の含有割合が大きいため、プリプレグの熱伝導率が高くなる。60体積%以下であると、ガラス繊維基材の含有割合が大きいため、剛性及び熱膨張性が高くなるが、熱伝導性は損なわれる。
[ガラス繊維基材]
本発明のプリプレグに用いるガラス繊維基材としては、Eガラス、Dガラス、SガラスおよびQガラス等が挙げられる。
これらのガラス繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマットおよびサーフェシングマット等の形状を有するが、材質および形状は目的とする積層板の用途や性能により選択され、必要により、単独または2種類以上の材質および形状を組み合せることができる。シランカップリング剤等で表面処理したもの、または機械的に開繊処理を施したものが耐熱性や耐湿性、加工性の面から好ましい。また熱伝導性を高める場合には、未開繊のものを使用することが好ましい。
ガラス繊維基材の厚さは、好ましくは0.01〜0.2mmであり、より好ましくは0.02〜0.15mmであり、更に好ましくは0.02〜0.1mmである。
<積層板>
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを用いて積層成形してなるものである。例えば、本発明のプリプレグを1〜20枚重ね、その片面または両面に銅またはアルミニウム等の金属箔を配置した構成で、多段プレス、多段真空プレス、連続成形機、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で積層成形して、金属箔張積層板を製造することができる。金属箔は、電子部品用途で用いるものであれば特に制限されない。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せて積層成形し、多層板を製造することもできる。
<熱伝導率の評価方法>
熱硬化性樹脂組成物、プリプレグおよび積層板の熱伝導率は、熱拡散率と定圧比熱容量と密度の積で求めることが出来る。熱拡散率や定圧比熱容量は、フラッシュ法によって測定することができる。フラッシュ法にはレーザーフラッシュ法やキセノンフラッシュ法などがある。また、定圧比熱容量は示差走査熱量測定(DSC)によって求めることもできる。密度は、アルキメデス法等によって測定することができる。熱伝導率は温度の依存性があるため、すべての測定は同一温度で測定することが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[成分]
なお、各成分として、次のものを用いた。
<エポキシ樹脂A>
ナフタレン型エポキシ樹脂
(DIC(株)製、商品名:EPICLON HP4032D)
<エポキシ樹脂B>
ナフタレン型エポキシ樹脂
(DIC(株)製、商品名:EPICLON EXA4070)
<エポキシ樹脂C>
ビフェニル型エポキシ樹脂
(ジャパンエポキシレジン製、商品名:YL6121H)
<エポキシ樹脂D>
フェノールノボラック型エポキシ樹脂
(DIC(株)製、商品名:N770M70)
<フェノール性化合物(硬化剤)E>
カテコール・レゾルシノールノボラック
(日立化成工業(株)製、材料名:A−4、数平均分子量:430、カテコール及び
レゾルシノールノボラックの合計数に対するレゾルシノールの割合:95%、
シクロヘキサノン50%希釈液)
<フェノール性化合物(硬化剤)F>
クレゾールノボラック型フェノール樹脂
(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:KA−1165)
<硬化促進剤G>
2−エチル−4−メチルイミダゾール
(四国化成(株)製、商品名:2E4MZ)
<無機充填材H>
酸化アルミニウムAl23
(住友化学(株)製、商品名:AA−1.5、AA−0.4)
<表面処理剤I>
シランカップリング剤
(信越化学工業(株)製、商品名:KBM573)
実施例1
(熱硬化樹脂組成物のワニスの作製)
表1に示した樹脂組成物の配合のうち、まず無機充填材H(酸化アルミニウム)1000gを用い、その最小被覆面積を満たす表面処理剤I(シランカップリング剤)を10g添加して乾式処理した。次に、エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂A(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂)193.3gおよびフェノール性化合物E(カテコール・レゾルシノールノボラック)84.1g(シクロヘキサノンを含まない重量)をシクロヘキサノン200gとメチルエチルケトン125gの混合溶媒中に加えて均一に分散するまで撹拌した。さらに、上記無機充填材H(酸化アルミニウム)を撹拌しながら加え、分散液とその他の成分が十分混合してから硬化促進剤G(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.83gを加えて全体が均一になるまで攪拌した。最後に、塗工に適切な粘度になるようにメチルエチルケトン25gとシクロヘキサノン50gを加えて濃度を調整し、樹脂組成物のワニスを得た。
(熱伝導率評価用樹脂板の作製)
また、上記樹脂組成物のワニスをガラス板に塗工し、150℃で5分加熱乾燥して得られた膜から樹脂組成物の粉末を得た。この樹脂組成物の粉末を温度185℃、圧力4MPaで1.5時間成形を行って、厚さ1mmの樹脂板を得た。この樹脂板を10mm角の大きさに切断して、熱伝導率評価用樹脂板を作製した。
(プリプレグの作製)
次に上記樹脂組成物のワニスを、Eガラスクロス(旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:AS750、厚さ0.06mm、Eガラスの熱伝導率1.03W/mK)に含浸塗工し、160℃で5分加熱乾燥して樹脂組成物の含有量が70体積%のプリプレグを得た。
(熱伝導率評価基板の作製)
次に、このプリプレグを6枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、温度185℃、圧力4MPaで1.5時間積層成形を行って銅張積層板(厚さ0.45mm)を得た。銅張積層板の銅箔をエッチング液により取除いた後、10mm角の大きさに切断して熱伝導率評価基板を作製した。
(熱伝導率の評価)
熱伝導率の評価は、熱拡散率はキセノンフラッシュ法(Nano Flash LEA447、NETZSCH製)を用いて、定圧比熱容量はDSC(PE Pyris Series Pyris1、パーキンエルマー製)を用いて、密度は電子比重計(SD−200L、アルファミラージュ製)を用いて測定し、これらの積によって算出した。なお、熱拡散率、密度は25℃で測定し、定圧比熱容量測定についても25℃の比熱容量を測定により導いた。
実施例2〜3、比較例1〜5
各成分の種類及び配合割合を表1に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして操作を行った。
Figure 2012241115
(結果)
実施例1〜2及び比較例1〜4の比較から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維基材に含浸して積層板とした際の熱伝導率の低下が小さく、積層板の熱伝導率が大きくなる。
すなわち、実施例1〜2及び比較例1〜4は、積層板中の樹脂組成物とガラス繊維基材との含有量が同一である(樹脂組成物70質量%、ガラス繊維基材30質量%)。そして、樹脂組成物の熱伝導率(1)と積層板の熱伝導率(2)との差(1)−(2)は、実施例1〜2では0.27〜0.32W/mKであるのに対して、比較例1〜4では0.34〜0.48W/mKであり、実施例1〜2の樹脂組成物は積層板とした際の熱伝導率の低下が小さい。別言すると、表1の最下欄に記載されているとおり、熱伝導率の低下率{(1)−(2)}/(1)は、実施例1〜2では15〜18%であるのに対して、比較例1〜4では21〜26%であり、実施例1〜2の樹脂組成物は積層板とした際の熱伝導率の低下率が小さい。そのため、実施例1〜2の方が比較例1〜4よりも、積層板の熱伝導率が大きい。
また、実施例1と比較例2を比較すると、樹脂組成物の熱伝導率は1.85W/mKと同一であるのに対し、積層板にした場合の熱伝導率は、実施例1では1.58W/mK(低下量(1)−(2)=0.27)であるのに対して、比較例2では1.37W/mK(低下量(1)−(2)=0.48)であり、実施例1の樹脂組成物は比較例2の樹脂組成物と比べ、積層板とした際の熱伝導率の低下が小さい。別言すると、熱伝導率の低下率{(1)−(2)}/(1)が、実施例1では15%であるのに対して、比較例2では26%であり、実施例1の樹脂組成物は比較例2の樹脂組成物と比べ、積層板とした際の熱伝導率の低下率が小さい。そのため、実施例1の方が比較例2よりも、積層板の熱伝導率が大きい。
更に、実施例1と比較例5とを比較すると、実施例1の方が比較例5よりも積層板中における樹脂組成物の含有量が10体積%も少ないのに、熱伝導率の低下率{(1)−(2)}/(1)は15%と同一である。
したがって、本発明により、熱伝導性に優れ、半導体パッケージやプリント配線板用に好適な熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、及び積層板を得ることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物、それを用いたプリプレグ、および積層板は、半導体パーケージやプリント配線板の製造に好適に用いられる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂と、
    下記一般式(2)で表わされる繰り返し構造及び/又は下記一般式(3)で表される繰り返し構造を有するフェノール性化合物と
    を配合してなる熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2012241115
    Figure 2012241115
    Figure 2012241115
    [式(1)中において、mは0〜10の整数であり、nは0〜10の整数であり、R1及びR2はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。]
  2. 前記フェノール性化合物の数平均分子量が300〜600であり、
    前記フェノール性化合物中におけるカテコール及びレゾルシノールの合計数に対するレゾルシノールの存在比率が80%以上である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記熱硬化性樹脂組成物は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化珪素、及び窒化硼素より選ばれる1種又は2種以上よりなる無機充填材を含有しており、
    前記無機充填材の前記熱硬化性樹脂組成物全体に対する含有量が30〜70体積%である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記無機充填材は表面処理剤で表面処理されたものである請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物と、
    ガラス繊維基材と
    を含有するプリプレグ。
  6. プリプレグ全体に対する前記熱硬化性樹脂組成物の含有量が60〜90体積%である請求項5に記載のプリプレグ。
  7. 請求項5又は6に記載のプリプレグを積層成形してなる積層板。
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