JP2012236368A - 木質繊維板、該木質繊維板を用いた木質複合板および床材ならびにこれらの製造方法 - Google Patents

木質繊維板、該木質繊維板を用いた木質複合板および床材ならびにこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】寸法安定性の高い木質繊維板、該木質繊維板を用いた木質複合板および床板ならびにこれらの製造方法を提供する
【解決手段】木質繊維12を母材とし、添加剤として浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとが添加されている木質繊維板10であって、浸透性接着剤は水溶性であり、その数平均分子量が200以下であることを特徴とする。本願発明によれば、低分子量の浸透性接着剤を木質繊維12に塗布することにより、浸透性接着剤が木質繊維12の細胞壁14内部に浸透し、固化する(バルキング効果)。したがって、非常に寸法安定性の高い木質繊維板10を得ることができるようになった。
【選択図】図1

Description

本発明は、反りの発生を大幅に抑制することが可能な寸法安定性の高い木質繊維板、該木質繊維板を用いた木質複合板および床材ならびにこれらの製造方法に関する。
MDFなどの木質繊維板は、木質複合板や床材といった建築用パネルの基材として広く使用されている。木質複合板は、木質繊維板の表面に合板を接着剤で貼着し、両者を圧締(熱圧若しくは冷圧)した後、これを一定期間養生することにより形成することができる。床材は、木質繊維板の表裏両面に合板と化粧板(無垢の板材等の表面化粧材)とを接着剤でそれぞれ貼着し、三者を圧締(熱圧若しくは冷圧)した後、これを一定期間養生することにより形成することができる。
ところで、木質繊維板は、合板や化粧板に比べて水分の吸放湿による寸法変化が非常に大きいため、その伸縮率の差によって木質複合板や床材に反りやねじれ等の変形を生じさせるという問題があった。そして、この問題は、合板と木質繊維板との接着に、例えば、水性高分子ビニルウレタン系接着剤のような汎用的な水性高分子系接着剤を使用する場合に特に顕著である。
例えば木質複合板を例にとって説明すると(床材においても同様である)、水性高分子系接着剤中に含まれる多量の水分が合板の表面層や木質繊維板の裏面層に吸収されるため、養生後の木質複合板は、(非水系の接着剤を使用した場合と比較して)より多くの水分を含むことになる。したがって、この水分をより多く含んだ養生後の木質複合板を乾燥雰囲気下で長期間使用していると、非水系の接着剤を使用した木質複合板と比較してより多くの水分が放湿し、その分、反り量が大きくなってしまうのである。
このように、水性高分子系の接着剤は、取り扱いが容易であるというメリットがある反面、使用すると大きな反りが発生しやすいというデメリットも大きいため、水性高分子系の接着剤を積極的に使用し難いという問題があった。
かかる問題を解消すべく、例えば特許文献1(特開2006−192817)では、木質繊維板の裏面側に貼り合わせる合板として、所定厚さの4枚の単板を、各単板の繊維方向が交互に直交するように積層させたものを使用し、木質複合板の反りを防止することが提案されている。
しかしながら、この方法では、複合板の反りやねじれの解消には一定程度寄与するが水性高分子系接着剤の使用による反りやねじれを軽減するには不十分であり、その結果、木質複合板の変形を防止する効果が十分であるとはいえなかった。また、合板の構成が極めて特殊であるため、応用性に乏しく、生産性が悪くなるという問題もあった。
一方、木質繊維板の反りやねじれ等を軽減する技術として、例えば、特許文献2(特開2002−337116)が知られている。この第2の従来技術は、例えばPEG(ポリエチレングリコール)に代表される寸法安定化処理剤を木質繊維板に塗布または含浸させることにより木質繊維板の変形を軽減させるというものである。
しかしながら、PEGに代表される寸法安定化処理剤は水に可溶であるため、木質繊維板の使用により、接着剤に含まれる水分によってPEGの溶脱が生じて木質繊維板の寸法安定性や強度が低下する虞れがあるだけでなく、寸法安定化処理剤を塗布または含浸させるための工程や設備が別途必要となって生産性が低下するという問題もある。
さらに、特許文献3(特開平11−6277)の加熱水蒸気処理や、特許文献4(特開2007−106073)のガラス繊維を添加処理等も提案されているが、これらの処理は工程が複雑であり、経済性や生産性の点で問題がある。
特開2006−192817号公報 特開2002−337116号公報 特開平11−6277号公報(第4頁、図2) 特開2007−106073号公報(第4頁、図2)
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、寸法安定性の高い木質繊維板、該木質繊維板を用いた木質複合板および床板ならびにこれらの製造方法を提供することにある。
請求項1に記載した発明は、「木質繊維12を母材とし、添加剤として浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとが添加されている木質繊維板10であって、浸透性接着剤は水溶性であり、その数平均分子量が200以下である」ことを特徴とする木質繊維板10である。
請求項2に記載した発明は、浸透性接着剤の分子量分布を限定したもので「前記浸透性接着剤は、単量体と多量体との混合物であってその数平均分子量が50〜100のものを重量比で40〜70%含み、数平均分子量が300〜500の多量体を重量比で30〜60%含む」ことを特徴とする木質繊維板10である。
請求項3に記載した発明は、「木質繊維12が100重量部に対し、前記浸透性接着剤を7〜20重量部、イソシアネート系接着剤を2〜3重量部、内添ワックスを0.5〜1.5重量部の割合で添加した」ことを特徴とする木質繊維板10である。
請求項4に記載した発明は、「請求項1〜3の何れかに記載の木質繊維板10と合板20とを接着剤で貼着一体化した」ことを特徴とする木質複合板22である。
請求項5に記載した発明は、「化粧板24と、請求項1〜3の何れかに記載の木質繊維板10と、合板20とをこの順で積層するとともに、隣合う板材同士を接着剤で貼着一体化した」ことを特徴とする床材26である。
請求項6に記載した発明は、請求項4において接着剤の種類を限定したもので「接着剤が水性高分子ビニルウレタン系接着剤である」ことを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、「木質繊維12に、数平均分子量が200以下の浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとをそれぞれ噴霧混合してマット状に成形した後、熱圧プレスで成型する」ことを特徴とする木質繊維板10の製造方法である。
請求項8に記載した発明は、「請求項1〜3の何れかに記載の木質繊維板10と合板20とを接着剤を用いて貼着した後、前記木質繊維板10の含水率が平衡状態になるまで静置養生し、その後、木質繊維板10と化粧板24とを接着剤を用いて貼着する」ことを特徴とする床材の製造方法である。
請求項1に記載の木質繊維板によれば、浸透性接着剤として数平均分子量が200以下と低分子量のものを使用しているので、浸漬や減圧・加圧などの煩雑な工程を経なくても接着剤を木質繊維に浸透させ、細胞壁が固化された木質繊維を有する木質繊維板を得ることができる。つまり、この低分子量の浸透性接着剤を木質繊維に塗布することにより浸透性接着剤が木質材料の細胞壁内部に浸透し、固化させることができる。これにより、細胞壁の動きを物理的に抑制することができる(固定効果)と共に、湿気や水分の細胞壁内外への移動を防ぐことができる(充填効果)ので、寸法安定性ならびに耐水性の高い木質繊維板を得ることができる(バルキング効果)。
また、この寸法安定性の高い木質繊維板の表面に合板を張り合わせて木質複合板を形成する場合や、木質繊維板の表裏両面に合板と化粧板とをそれぞれ張り合わせて床材を形成する場合には、取り扱いが容易な水溶性の浸透性接着剤であっても使用することが可能となり、生産性の向上に資するという利点もある。
そして、浸透性接着剤の分子量分布を請求項2に記載の発明の範囲とすれば、単量体による高い浸透性と、多量体による高い結合力をバランスよく引き出すことができ、取扱性にも優れるので、寸法安定性が高く強度低下を抑制した木質繊維板が生産性よく得られる。
なお、浸透性接着剤、イソシアネート系接着剤および内添ワックスの配合量を請求項3に記載の数値範囲にすれば、実用的に実施可能である。すなわち、低分子量の浸透性接着剤による寸法安定性、耐水性の効果を保ちつつ、イソシアネート系接着剤によって木質材料の表面がコーティングされ、かつ、木質材料同士の隙間に充填されることにより、木質繊維板の強度、耐水性、耐ワックス性等を向上させ、更には内添ワックスの撥水効果によって耐水性や耐ワックス性をも向上させた木質繊維板が、生産性よく実現できる。
請求項4に記載の発明によれば、木質複合板の材料として、寸法安定性が高い木質繊維板を使用することによって、合板との間の寸法変化の差が小さくなり、その結果、反りやねじれの生じにくい寸法安定性の高い木質複合板を得ることができるようになる。
請求項5に記載の発明によれば、床材の材料として、寸法安定性が高い木質繊維板を使用することによって、合板や化粧板との寸法変化の差が小さくなり、その結果、反りやねじれの生じにくい寸法安定性の高い床材を得ることができるようになる。
なお、請求項6に記載の発明のように、接着剤として汎用的で取り扱いの容易な水性高分子ビニルウレタン系接着剤を使用した場合には、寸法安定性が高く、耐水性、耐ワックス性に優れた床材を経済的で生産性高く得ることができる。
請求項7に記載の発明によれば、低分子量(数平均分子量が200以下)の浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとをそれぞれ木質繊維に噴霧して混合するだけで上述したバルキング効果を発現させることができるので、浸漬や減圧・加圧などの煩雑な含浸工程や別バッチでの作業を行う必要がなく、既存の繊維板設備をそのまま利用して簡便に寸法安定性のよい木質繊維板を得ることができる。
請求項8に記載の発明によれば、寸法安定性の高い木質繊維板を使用しているので、その表裏両面に合板や化粧板を貼着する際に水性高分子ビニルウレタン系接着剤のような水性高分子系の汎用接着剤を用いた場合であっても反りやねじれ等が生じにくい。
この発明にかかる木質繊維板を示す図である。 木質繊維板の母材となる木質繊維を示す図である。 寸法安定性効果が得られる仕組みを示す概略図である。 本発明にかかる化粧版を示す図である。
[実施例1]
以下、本発明について説明する。本発明に係る木質繊維板10は、木質繊維12を主原料とし、これに添加剤を加えて熱圧成型することにより得られる板状の部材である(図1参照)。なお、木質繊維板10と、合板20とを接着剤で貼着一体化したものが木質複合板22であり、合板20と木質繊維板10と化粧板24とをこの順で積層するとともに、隣り合う板材同士を接着剤で貼着一体化したものが床材26である(図4参照)。
木質繊維12(図2参照)は、チップやフレークなどの木片を繊維化したものであり、より具体的に説明すると、木片を粉砕し、これを蒸気加熱(蒸煮)した後、繊維または繊維束に解離(解繊)することにより得ることができる。
各木質繊維12の長さは、0.1〜4.0mmの範囲に設定することが実用上望ましい。各木質繊維12の長さが0.1mm以下の場合には、木質繊維板10に必要な強度を付与しにくくなるし、各木質繊維12の長さが4.0mmを超える場合は、後述する添加剤との混合性や分散性が低くなるため、添加剤を木質繊維12に含浸させるための時間がかかり過ぎ、生産性が低下するという問題がある。なお、上述した木質繊維12の長さは、木質繊維板10の原料として一般的に採用されている数値範囲である。
各木質繊維12にあっては、細胞14間のマトリックス(基質)が、蒸煮工程と解繊工程とを経ることにより除去されて細胞壁16が剥き出しになっている(図2参照)。
添加剤は、木質繊維12に各種機能を付与するもので、本実施例では、浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとが使用される。なお、各添加剤を混合して使用する場合は、分散力を高めるため、必要に応じて水で希釈するようにしてもよい。
浸透性接着剤は、木質繊維12同士を接着させる接着機能と、各木質繊維12の寸法安定性を高めるための寸法安定効果付与機能とを併有するものであり、例えば、水性で低分子量(数平均分子量が200以下、望ましくは150以下)のフェノール樹脂やメラミン樹脂が好適に用いられる。
浸透性接着剤の数平均分子量として200以下の低分子量のものを使用するのは、数平均分子量が200を超えると後述するバルキング効果が得られにくく、期待する寸法安定性効果が得られないからである。
ここで、浸透性接着剤の分子量分布は、単量体と多量体の混合物であってその数平均分子量が50〜100のものを重量比で40〜70%含み、数平均分子量が300〜500(重合度は3〜5程度)の多量体を重量比で30〜60%含むように構成されている。
単量体は、比較的浸透性が高いため、木質繊維の壁内に容易に浸透固化し、寸法安定性に寄与することとなる。一方、数平均分子量が300〜500の多量体は、比較的浸透性が低いため、壁外に留まり固化して木質繊維同士の結合に寄与する。
このように、浸透性接着剤の分子量分布を上述した範囲に設定することにより、期待される寸法安定性と強度をバランスよく得ることができる。
浸透性接着剤の添加量は、木質繊維100重量部に対して、固形分(蒸発残分)で7〜20重量部(望ましくは7〜10重量部)の範囲に設定するのが好ましい。なぜならば浸透性接着剤の添加量が7重量部より少ないと寸法安定性向上の効果が少なく、20重量部より多く添加しても一定以上の寸法安定性向上効果が得られず経済的でないからである。
イソシアネート系接着剤は、木質繊維板の強度、耐水性、耐ワックス性を向上させるためのものであり、例えばMDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)、TDI(トリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)などが使用できるが、中でもMDIは汎用的で、経済的にも優れている。
特に、低分子量浸透性接着剤と内添ワックスとを併用することにより、フロアー用ワックスの浸入を抑制し、耐ワックス性や剥離強度の向上効果が得られる(この点については後述する)。
イソシアネート系接着剤の添加量は、木質繊維100重量部に対して、3重量部以下にするのが好ましい。イソシアネート系接着剤の添加量が3重量部を超えると、木質繊維同士の結合が強固となる反面、水分による木質繊維の伸縮が隣接する木質繊維に伝達しやすくなること等により木質繊維板の寸法安定性が悪化するという問題が顕在化するからである。
内添ワックスは、木質繊維板10に撥水機能を発現させるためのものであり、撥水効果を与えるワックスであれば特に選ばないが、浸透性接着剤(フェノール樹脂やメラミン樹脂)との混和性に優れたパラフィン系ワックスを使用することが望ましい。
なお、内添ワックスの添加量は、木質繊維100重量部に対して1重量部程度(0.5〜1.5重量部)添加すれば十分である。
次に、木質繊維板10の製造方法について説明する。まず、図示しない混合容器に木質繊維12を充填し、これをメカニカルブレンダーで攪拌しながら、添加剤であるフェノール樹脂、内添ワックスならびにMDIを順次、スプレーガンを用いてスプレー噴霧した。なお、添加剤のスプレー噴霧の順序は必ずしもこの順である必要はなく、任意に設定してもよい。木質繊維12に添加剤を塗布すると、添加剤中の浸透性接着剤が木質繊維12(より詳しくは細胞壁)に浸透して細胞壁が固化される。なお、図3(A)は、木質繊維12の細胞壁に浸透性接着剤が浸透する前の状態を模式的に示した図であり、図3(B)は、木質繊維12の細胞壁に浸透性接着剤が浸透した後の状態を模式的に示した図である。
そして、得られた添加剤付きの木質繊維12をフォーミングしてマット状に成形し、このマット状物を熱圧プレスすることにより、目的とする木質繊維板10を得た。なお、熱圧プレスの条件は、目標とする木質繊維板10の密度や厚さ等に応じて任意に設定すればよい。
以上のようにして得られた木質繊維板10が外部の水分と接触すると、木質繊維12の細胞壁が僅かに膨張する(図3のBからCの状態になる)が、その寸法変化は、浸透性接着剤による処理を行っていない場合(図3のAからCの状態になる)に比べて小さく、その寸法安定性は非常に高いものであった。
発明者らは、上述した手法によって木質繊維板を製作し、得られた木質繊維板の寸法安定性について試験を行い、その実用性を検証した。以下には、その試験方法および試験結果について説明する。
[木質繊維板の寸法安定性試験]
(試料1a)
木質繊維100重量部に対し、浸透性接着剤を固形分で7重量部、イソシアネート系接着剤を固形分で2重量部、内添ワックスを固形分で1重量部用意した。
具体的には、木質繊維(ラワン材を素材とする)を900g用意し、これを含水率が8〜10%となるように調整したものを使用した。浸透性接着剤としては、数平均分子量110の低分子量フェノール樹脂(単量体と多量体との混合物であって数平均分子量84のものを重量比で66%、数平均分子量340の多量体を重量比で34%に調整したもの。)を用意し、これを固形分が32.5%となるよう水で希釈したものを180g使用した。イソシアネート系接着剤としては、MDIを用意し、これを固形分が50%となるよう水で希釈したものを33.2g使用した。内添ワックスは、水で希釈して固形分を20%としたものを41.6g使用した。
図示しない混合容器に木質繊維を充填し、これをメカニカルブレンダーで攪拌しながら、添加剤であるフェノール樹脂、内添ワックスならびにMDIを順次、スプレーガンを用いてスプレー噴霧した。次に、得られた添加剤付きの木質繊維をフォーミングしてマット状に成形した。そして、このマット状物を180℃で60秒間の熱圧プレスを行った後、更に、200℃で120秒(2分)間の熱圧プレスを行い木質繊維板(試料1a)を完成させた。なお、得られた木質繊維板(試料1a)は、横の長さが320mm、縦の長さが910mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.801g/cm3であった。
(試料1b)
浸透性接着剤(数平均分子量110の低分子量フェノール樹脂)の添加量を、木質繊維100重量部に対して10重量部(固形分が32.5%となるよう水で希釈したものを256g使用)とした以外は、試料1と同じようにして得られた木質繊維板を試料1bとした。なお、得られた試料1bは、横の長さが320mm、縦の長さが910mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.808g/cm3であった。
(比較試料1)
浸透性接着剤を添加しない点、イソシアネート系接着剤(MDI)の添加量を、木質繊維100重量部に対して10重量部(固形分が50%となるよう水で希釈したものを166.6g使用)とした点以外は、試料1aと同じようにして得られた木質繊維板を比較試料1とした。なお、得られた比較試料1は、横の長さが320mm、縦の長さが910mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.863g/cm3であった。
(寸法安定性試験の方法)
各試料を23℃、相対湿度53%RHの雰囲気下で72時間静置したときの長さを基準値とする。
次に、各試料を(1)40℃、相対湿度90%RH雰囲気下で168時間静置、(2)40℃、相対湿度40%RH雰囲気下で168時間静置、(3)60℃、乾燥雰囲気下で14日間(336時間)静置した後の長さをそれぞれ測定し、基準値からの寸法変化率を算出する。
各試料における寸法変化量は[表1]の通りである。
[表1]
[表1]から分かるように、試料1a〜1bと比較試料1とを比較すると、いずれの雰囲気下で測定した場合であっても、試料1a〜1bの方が比較試料1に比べて寸法変化量が小さいことがわかる。このことから、添加剤として低分子量の浸透性接着剤を添加することにより、寸法安定性が向上することが分かった。
[浸透性接着剤の分子量の違いによる寸法安定効果確認試験]
(試料2a)
木質繊維100重量部に対し、浸透性接着剤を固形分で10重量部用意した。
具体的には、木質繊維(ラワン材を素材とする)を280g用意し、これを含水率が8〜10%となるように調整したものを使用した。浸透性接着剤としては、数平均分子量110の低分子量フェノール樹脂(単量体と多量体との混合物であって数平均分子量84のものを重量比で66%、数平均分子量340の多量体を重量比で34%に調整したもの。)を用意し、これを固形分が32.5%となるよう水で希釈したものを76g使用した。
図示しない混合容器に木質繊維を充填し、これをメカニカルブレンダーで攪拌しながら、フェノール樹脂をスプレーガンで噴霧した。得られたフェノール樹脂付きの木質繊維をフォーミングしてマット状に成形した。そして、このマット状物を180℃で60秒間の熱圧プレスを行った後、更に、200℃で120秒(2分)間の熱圧プレスを行い木質繊維板(試料2a)を完成させた。なお、得られた木質繊維板(試料2a)は、横の長さが320mm、縦の長さが320mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.905g/cm3であった。
(試料2b)
浸透性接着剤として、数平均分子量120の低分子量フェノール樹脂(単量体と多量体との混合物であって数平均分子量71のものを重量比で47%、数平均分子量370の多量体を重量比で53%に調整したもの。)を用いた以外は、試料2aと同じようにして得られた木質繊維板を試料2bとした。なお、得られた試料2bは、横の長さが320mm、縦の長さが320mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.858g/cm3であった。
(比較試料2)
浸透性接着剤として、数平均分子量1100の高分子量フェノール樹脂を用いた以外は、試料2aと同じようにして得られた木質繊維板を比較試料2とした。なお、得られた比較試料2cは、横の長さが320mm、縦の長さが320mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.858g/cm3であった。
(寸法安定性試験の方法)
各試料を23℃、相対湿度53%RHの雰囲気下で72時間静置したときの長さを基準値とする。
次に、各試料を(1)40℃、相対湿度90%RH雰囲気下で72時間静置、(2)40℃、相対湿度40%RH雰囲気下で72時間静置、(3)40℃、乾燥雰囲気下で72時間静置、(4)60℃、乾燥雰囲気下で72時間静置した後の長さを測定し、基準値からの寸法変化率を算出する。
各試料における寸法変化率は[表2]の通りである。
[表2]
[表2]から分かるように、試料2a〜2bと比較試料2とを比較すると、いずれの雰囲気下で測定した場合であっても、試料2a〜2bの方が比較試料2に比べて寸法変化率が小さくなっていることがわかる。このことから、寸法変化を抑制するためには、浸透性接着剤として、低分子量フェノール樹脂が有効であり、高分子量フェノール樹脂では寸法抑制効果が低いことが分かった。
[イソシアネート系接着剤(MDI)の効果確認試験]
(試料3a)
木質繊維100重量部に対し、浸透性接着剤を固形分で7重量部、イソシアネート系接着剤を固形分で2重量部、内添ワックスを固形分で1重量部用意した。
具体的には、木質繊維(ラワン材を素材とする)を280g用意し、これを含水率が8〜10%となるように調整したものを使用した。浸透性接着剤としては、数平均分子量110の低分子量フェノール樹脂(単量体と多量体との混合物であって数平均分子量84のものを重量比で66%、数平均分子量340の多量体を重量比で34%に調整したもの。)を用意し、これを固形分が32.5%となるよう水で希釈したものを55.6g使用した。イソシアネート系接着剤としては、MDIを用意し、これを固形分が50%となるよう水で希釈したものを10.8g使用した。内添ワックスは、水で希釈して固形分を20%としたものを10.8g使用した。
図示しない混合容器に木質繊維を充填し、これをメカニカルブレンダーで攪拌しながら、添加剤であるフェノール樹脂、内添ワックスならびにMDIを順次、スプレーガンを用いてスプレー噴霧した。次に、得られた添加剤付きの木質繊維をフォーミングしてマット状に成形した。そして、このマット状物を180℃で60秒間の熱圧プレスを行った後、更に、200℃で120秒(2分)間の熱圧プレスを行い木質繊維板(試料3a)を完成させた。なお、得られた木質繊維板(試料3a)は、縦と横の長さがそれぞれ303mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.750g/cm3であった。
(試料3b)
浸透性接着剤(数平均分子量110の低分子量フェノール樹脂)の添加量を、木質繊維100重量部に対して10重量部(固形分が32.5%となるよう水で希釈したものを76g使用)とした以外は、試料3aと同じようにして得られた木質繊維板を試料3bとした。なお、得られた試料3bは、縦と横の長さがそれぞれ303mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.731g/cm3であった。
(比較試料3a)
イソシアネート系接着剤(MDI)を添加しない以外は、試料3aと同じようにして得られた木質繊維板を比較試料3aとした。なお、得られた比較試料3aは、縦と横の長さがそれぞれ303mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.720g/cm3であった。
(比較試料3b)
浸透性接着剤(数平均分子量110の低分子量フェノール樹脂)の添加量を、木質繊維100重量部に対して10重量部とし、イソシアネート系接着剤(MDI)の添加量を、木質繊維100重量部に対して4重量部とした以外は、試料3aと同じようにして得られた木質繊維板を比較試料3bとした。なお、得られた比較試料3bは、縦と横の長さがそれぞれ303mmで、厚さが3.2mmの板状のものであり、その密度は0.741g/cm3であった。
(イソシアネート系接着剤(MDI)の効果確認試験の方法)
イソシアネート系接着剤(MDI)の効果を確認するための試験として、ワックス浸入長、長さ方向線膨張率(LE)、20℃吸水膨張率(TS)ならびに剥離強度に関する試験をそれぞれ行った。
ワックス浸入長は、皿の上にフロアー用ワックス(リンレイオール)を十分に染み込ませた綿(又は紙)を敷き、ワックスが含浸されている綿(又は紙)の上に50mm×50mmに裁断した各試料(試験片)を、その小口面が直接接触するよう載置して30分放置する。然る後、各試験片をフロアー用ワックスとの接触面から垂直方向に裁断して、フロアー用ワックスの吸い込み長さを測定することで得られる。
長さ方向線膨張率(LE)は、JIS A5905に準拠し、40℃/湿度90%雰囲気から60℃/乾燥雰囲気まで変化させたときの試験片の伸縮率を測定した。吸水膨張率(TS)は、JIS A5905に準拠して測定した(測定温度20℃)。また、剥離強度もJISA 5905に準拠して測定した。
上記試験の結果は、[表3]の通りである。
[表3]
まず、イソシアネート系接着剤(MDI)の添加量について検討する。
ワックス浸入長についてみると、試料3aと比較試料3aとを比較して分かるように、イソシアネート系接着剤(MDI)を若干量(本実施例では、木質繊維100重量部に対して2重量部)添加することにより、ワックス浸入長が短くなることが分かった。また、剥離強度も向上することが分かった。一方、試料3bと比較試料3bとを比較して分かるように、イソシアネート系接着剤の添加量を2倍に増やしても、ワックス浸入長の大幅な改善効果は認められない。
次に、線膨張率(LE)について検討するに、実施例3aと比較例3aとの比較ならびに実施例3bと比較例3bとの比較で分かるように、イソシアネート系接着剤(MDI)の添加量を増やすと線膨張率(LE)が大きくなり、寸法安定性が低下することが分かる。
これらの結果から、イソシアネート系接着剤(MDI)は少量添加する必要があるが、過剰に添加しても飛躍的な効果は得られず、反対に、吸放湿の寸法安定性を低下させることが分かった。すなわち、イソシアネート系接着剤(MDI)については、木質繊維100重量部に対して1〜3重量部程度添加するのが効果的であることが分かった。
[実施例2]
本発明にかかる木質繊維板10の片面に合板を貼着した場合には、寸法安定性の高い木質複合板を得ることができる。また、木質繊維板10の表裏両面に合板と化粧板とをそれぞれ貼着した場合には、寸法安定性の高い床材を得ることができる。そこで、以下には、木質複合板ならびに床材を製造する方法について説明する。
まず、上述実施例1で述べた方法で得られた寸法安定性の高い木質繊維板10の片側の面に接着剤をその全面に塗布し、その上から合板を重ね合わせ、両部材を熱圧貼着する。接着剤としては、酢酸ビニル系、フェノール系、メラミン系、メラミン樹脂とSBR樹脂との混合系、ホットメルト系など任意のものが使用できるが、熱硬化性接着剤を用いて熱圧を行うことで、水分の持込を抑えることができ、さらに、ホットメルト系接着剤を用いれば、水分を持ち込ませないことができるので、床材の反りを抑えるのには効果的である。
次に、木質繊維板の含水率が平衡状態になるまで静置養生する(静置養生する直前に必要に応じて水打ちを行ってもよい)。なお、木質繊維板と木質合板との一体物は「木質複合板」として使用できる。
木質複合板(すなわち、木質繊維板と木質合板との一体物)の木質繊維板側の面に接着剤をその全面に塗布し、その上から化粧板を重ね合わせ、両部材を熱圧貼着する。化粧板としては、単板や樹脂強化化粧紙などの木質床材の化粧板として通常用いられているものが使用できる。これにより、目的とする寸法安定性の高い床板が得られることになる。
なお、化粧材の表面には、必要に応じて塗装を施すことができる。塗装用の塗料としては、紫外線硬化型、電子線硬化型、ポリウレタン系、アミノアルキッド系、ポリエステル系など常用の塗料を用いることができる。
また、上述実施例では、木質繊維板に合板を貼着した後、化粧板を貼着するようにしているが、これとは逆に、木質繊維板に化粧板を貼着した後、合板を貼着するようにしてもよい。
さらに、上述実施例では、各部材を貼着する際、熱圧貼着するようにしているが、冷圧貼着するようにしてもよい。
発明者らは、上述した手法によって床材を製作し、得られた床材の寸法安定性について試験を行い、その実用性を検証した。以下には、その試験方法および試験結果について説明する。
[床材の寸法安定性試験]
(試料4a)
木質繊維板(試料3a)の表面をサンダーで研削した後、木質繊維板3aの表面側に接着剤を塗布し、化粧板を熱圧貼着した。化粧板には、樹脂強化化粧紙を使用し、木質繊維板3aと化粧板とを貼着するための接着剤には、メラミン樹脂とSBR樹脂との混合接着剤を用いた。
熱圧後、木質繊維板3aの裏面側(化粧板が貼着されていない側)の面に水打をし(水打の量は、54g/m2である)、これを23℃、相対湿度53%RHの室内で、木質繊維板3aの含水率が平衡状態になるまで静置した。
次に、木質繊維板3aの裏面に接着剤を塗布し、ファルカタ合板(厚さ9mm)を冷圧貼着した。木質繊維板3aとファルカタ合板とを貼着するための接着剤には、水性高分子ビニルウレタン系接着剤を用いた。
その後、木質繊維板3aと化粧板とファルカタ合板との一体物を23℃、相対湿度53%RHの室内で、木質繊維板aの含水率が平衡状態になるまで静置した。
最後に、化粧板の表面を紫外線硬化樹脂によって塗装を施し、床材A(試料4a)を完成させた。なお、得られた試料4aの厚さは、12mmであった。
(試料4b)
化粧板として、樹脂強化化粧紙の代わりにオーク単板(厚さ0.25mm)を用いた以外は、試料4aと同じようにして得られた床材を試料4bとした。
(比較試料4a)
木質繊維板として試料3aの代わりに比較試料3aを用いた以外は、試料4aと同じようにして得られた床材を比較試料4aとした。
(比較試料4b)
化粧板として、樹脂強化化粧紙の代わりにオーク単板を用いた以外は、比較試料4aと同じようにして得られた床材を比較試料4bとした。
(床材の寸法安定性試験の方法)
各床材を製造した直後の反り量を測定し、これを基準値とする。
次に、各試料を60℃、乾燥雰囲気下で14日間静置し、基準値からの寸法変化量を算出した。(−は凹みの大きさ:単位mm)
[表4]
上記結果より、水性高分子ビニルウレタン系接着剤や水性高分子イソシアネート系接着剤などの水性高分子系接着剤を使用しているにも関わらず、試料4aは比較試料4aと、試料4bは比較試料4bと比べて、床材の施工直後においても既に反りは小さく、14日間における変動値及び最大値も小さいことがわかる。
10…木質繊維板
12…木質繊維
14…細胞壁
20…合板
22…木質複合板
24…化粧板
26…床材

Claims (8)

  1. 木質繊維を母材とし、添加剤として浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとが添加されている木質繊維板であって、
    前記浸透性接着剤は水溶性であり、その数平均分子量が200以下であることを特徴とする木質繊維板。
  2. 前記浸透性接着剤は、単量体と多量体との混合物であってその数平均分子量が50〜100のものを重量比で40〜70%含み、数平均分子量が300〜500の多量体を重量比で30〜60%含むことを特徴とする請求項1に記載の木質繊維板。
  3. 前記木質材料100重量部に対し、前記浸透性接着剤を7〜20重量部、前記イソシアネート系接着剤を2〜3重量部、前記内添ワックスを0.5〜1.5重量部の割合で添加したことを特徴とする請求項1または2に記載の木質繊維板。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の木質繊維板と合板とを接着剤で貼着一体化したことを特徴とする木質複合板。
  5. 化粧板と、請求項1〜3の何れかに記載の木質繊維板と、合板とをこの順で積層するとともに、隣合う板材同士を接着剤で貼着一体化したことを特徴とする床材。
  6. 前記接着剤が水性高分子ビニルウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項4に記載の床材。
  7. 木質繊維に、数平均分子量が200以下の浸透性接着剤とイソシアネート系接着剤と内添ワックスとをそれぞれ噴霧混合してマット状に成形した後、熱圧プレスで成型することを特徴とする木質繊維板の製造方法。
  8. 請求項1〜3の何れかに記載の木質繊維板と合板とを接着剤を用いて貼着した後、
    前記木質繊維板の含水率が平衡状態になるまで静置養生し、その後、
    前記木質繊維板と前記化粧板とを接着剤を用いて貼着することを特徴とする床材の製造方法。

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