JP2012236218A - レーザ溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高反射材からなる大型部材及び長尺部材の部材に簡便に適用でき、且つ、高能率且つ変形を抑制して高品質に溶接できるレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
【解決手段】レーザ溶接方法は、金属材料からなる母材3と主成分が同一であり、且つ、母材3よりも体積を小さくした溶加材1を、母材3の被溶接部に供給する工程と、溶加材1を供給すると同時に、または、溶加材1を供給した後の少なくともいずれかのタイミングで、被溶接部にレーザ光2を照射する工程と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属材料からなる母材をレーザ溶接する方法に関し、特に、高反射材からなる母材をレーザ溶接加工する方法に関するものである。
銅系材料からなる部材は熱伝導率が高く、TIG溶接し難い。よって、銅系材料からなる部材を溶接する方法として、電子ビームまたはレーザ光などの高エネルギー密度の熱源の利用が種々検討されている。
電子ビーム溶接は、真空中でフィラメントを加熱させ、放出された電子を高い電圧で加速させ、電磁コイルで収束させた上で、母材に衝突させ溶接を行う方法である。電子ビーム溶接は、銅系材料からなる部材を、高能率且つ変形を抑制して高品質に溶接することができる。しかしながら、電子ビーム溶接では、被溶接部材を真空容器内に入れることが必要であるため、被溶接部材の大きさが制限される、真空引きに時間を要するという問題がある。
レーザ溶接は、レーザ光のエネルギーを利用して行う溶接方法である(特許文献1乃至7参照)。レーザ溶接は、不活性ガスにて被溶接部近傍をシールドすることで、真空引きをせずに溶接を行うことができる。よって、レーザ溶接は、電子ビーム溶接よりも能率向上に効果的である。
特開2010−082673号公報 特開2010−069489号公報 特開2001−087877号公報 特開平11−123585号公報 特許第4098024号公報 特許第3410590号公報 特開平10−328862号公報
銅系材料は、レーザ光に対する反射率が高く、90%程度を反射する高反射材であるため、レーザ光を用いて安定した溶接を実現することは困難とされている。よって、銅系材料からなる部材をレーザ溶接する場合、その適用は極薄板の部材などに限られるという課題がある。
上記課題を解決する方法が、特許文献1乃至特許文献7に開示されている。
特許文献1〜3では、高反射材の表面を、レーザ光を良く吸収する無電解ニッケル膜などで被覆し、レーザ溶接する。特許文献4では、レーザ加工中に、同時に、ワーク表面に反射防止剤を塗布する。特許文献5では、第1のレーザ光と、これよりもエネルギー密度が高く照射時間が短いパルス状の第2のレーザ光とを同時に加工点に照射し、被加工物に穴を形成し、穴内で第1のレーザ光を多重散乱させる。これにより、高反射率材に対する加工効率の向上を図っている。特許文献6では、溶接部材のレーザ光照射部位に底面が粗面の凹部を形成し、この凹部の底面にレーザ光を照射する。これにより、レーザ光の反射を少なくしてエネルギーを吸収し易くしている。特許文献7では、被溶接部を溶融温度よりも僅かに低い温度で予熱することで、レーザ溶接し易くしている。
しかしながら、特許文献1乃至特許文献7に記載の方法は、大型部材、長尺部材、複雑形状の部材には適用し難い。また、溶込み深さや幅といった溶込み形状の制御を行うための溶接パラメータ設定範囲が狭い。溶接パラメータの設定範囲を広くすることができれば、溶接速度を遅くすることもできるため、溶接パラメータの設定範囲を広くすることが望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高反射材からなる部材の溶接施工を容易にし、且つ、溶接パラメータの設定範囲の広いレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、金属材料からなる母材と主成分が同一であり、且つ、前記母材よりも体積を小さくした溶加材を、前記母材の被溶接部に供給する工程と、前記溶加材を供給すると同時に、または、前記溶加材を供給した後の少なくともいずれかのタイミングで、前記被溶接部にレーザ光を照射する工程と、を備えるレーザ溶接方法を提供する。
本願発明者らは、レーザ光を吸収し難い材料(高反射材)が、一旦溶融するとレーザ光の吸収効率が上昇することに注目し、体積を小さくした溶加材を被溶接部に供給するレーザ溶接方法を発明した。
溶加材は、体積を小さくすることで熱容量が小さくなる。そうすることで、組成が母材と同一である場合でも、より溶融し易い溶加材となる。このような溶加材にレーザ光が照射されると、母材よりも先に溶融して初期溶融池が形成される。初期溶融池の形成は母材溶融の引き金として作用するため、母材の溶融が促進される。これによって、高反射材からなる母材であっても、効率的に溶接することが可能となる。
上記発明の一態様において、前記溶加材を、ワイヤー状の形態で前記被溶接部に供給することができる。
溶加材をワイヤー状とすることで、溶加材の作製及び供給時の取扱いが容易となる。また、溶加材をワイヤー状で供給することにより、溶接時の溶加材の飛散が抑制されるため、材料歩留りが良く、且つ、環境を汚染せずに溶接を行うことができる。
上記発明の一態様において、前記溶加材を、粉末状の形態で前記被溶接部に供給することができる。
溶加材を粉末状とすることで、熱容量をより小さくすることが可能となる。よって、より溶融しやすい溶加材とすることができる。
上記発明の一態様において、前記溶加材を、箔状の形態で前記被溶接部に供給することができる。
溶加材を箔状で供給することにより、溶接時に溶加材が飛散しにくくなるため、環境を汚染せずに溶接を行うことができる。また、箔状の溶加材は、粉末と比較して材料歩留りが良い。
上記発明の一態様において、前記レーザ光を照射するとともに、前記溶加材を、一方向からまたは前記レーザ光と同軸状に前記被溶接部へ供給しても良い。
上記のようにすることで、被溶接部の形状や向きなどに関わらず、溶加材を供給することが可能となる。溶加材をレーザ光と同軸に供給すると、溶接方向へ依存せずに、容易に装置を駆動させることができる。
上記発明の一態様において、前記レーザ光を照射する前に、予め前記溶加材を前記被溶接部へ供給しても良い。
予め溶加材を溶接部へ供給するため、溶接装置の構成を単純化することができる。
上記発明の一態様において、前記溶加材を、面取り部または段付き部の開先に形成された凹部に配置することができる。
開先は、被溶接部面に対して凹形状であるため、溶加材の設置が容易となる。特に、溶加材が粉末状である場合には、凹部によって画定された領域により溶加材の拡散を防止することができる。
上記発明の一態様において、前記溶加材を予め前記被溶接部に供給した後、前記被溶接部に前記レーザ光を照射すると同時に、前記溶加材を更に供給しても良い。
被溶接部に、事前に溶加材を配置することで、ビード幅(アスペクト比)を増大させることが容易となる。また、レーザ光照射時に、溶加材を追加供給することで、供給量不足を回避できるとともに、十分量の溶加材を供給することが可能となる。
本発明によれば、高反射材からなる部材を容易に溶接施工することができ、且つ、溶接パラメータの設定範囲の広いレーザ溶接方法とすることができる。また、レーザ光の吸収が悪い材料からなる被溶接部材であっても、より安定的に、且つ、高能率にて溶接することができる。レーザ光は真空容器内で行う必要がないため、高反射材からなる大型部材や長尺部材に適用しやすい。
第1実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する図である。 第2実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する図である。 第2実施形態の変形例に係るレーザ溶接方法を説明する図である。 第3実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する図である。 第4実施形態に係る開先部の断面図である。 第4実施形態に係る開先部の断面図である。 試験1の出力を変化させたときの入熱と溶込み深さとの関係を示す図である。 試験1の出力14kWでレーザ溶接した試験片のビード外観写真である。 試験1の出力16kWでレーザ溶接した試験片のビード外観写真である。 試験1の出力16kWでレーザ溶接した試験片の断面写真である。 試験2の入熱とエネルギー密度との関係を示す図である 試験3の低速化したときの入熱とエネルギー密度との関係を示す図である。 試験3の出力10kWでレーザ溶接した試験片のビード外観写真である。 試験3の出力13kWでレーザ溶接した試験片のビード外観写真である。 試験3の出力13kWでレーザ溶接した試験片の断面写真である。 試験4の試験片のビード外観写真である。
本発明の一実施形態に係るレーザ溶接方法は、例えば、高反射材からなる加速器などの溶接に適用され得る。高反射材とは、レーザ光の反射率が高く、且つ、熱伝導率が高い金属材料を指す。例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などとされる。
本発明の一実施形態に係るレーザ溶接方法は、溶加材を母材の被溶接部に供給する工程と、被溶接部にレーザ光を照射する工程とを含む。レーザ光は、溶加材を供給すると同時に、または、溶加材を供給した後の少なくともいずれかのタイミングで被溶接部に照射する。
母材は、無酸素銅などの高反射材とされる。
溶加材は、主成分が母材と同一とされる。溶加材は、母材と同一組成であって良い。また、溶加材は、融点制御、あるいは強度及び組成の調整などを目的として、他成分を微量に含んでいても良い。例えば、Zn、Al、Mn、Fe、Ni、Ti、Si、Mg、Snまたは、上記成分を任意に組み合わせて添加され得る。
溶加材は、母材よりも体積が小さく、ワイヤー状、粉末状、箔状の形態とされる。
レーザ光源は、ファイバレーザ、COレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザなどとされる。レーザの出力は、溶かしたい深さによって適宜設定すると良い。例えば、無酸素銅で2mmの溶込みを想定した場合、ファイバレーザの出力を5kW以上20kW未満などとすると良い。
〔第1実施形態〕
図1を参照して、本実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する。
本実施形態では、溶加材1の被溶接部への供給、及び、被溶接部へのレーザ光2の照射を同時に実施する。ここで「同時」とは、完全に一致している必要はなく、操作上の誤差を含む。溶加材1は、一方向から被溶接部に供給される。溶加材1の供給方向は、適宜設定されると良い。溶加材1は、例えば、レーザ光2の進行方向A前側または進行方向A後側から適宜傾斜させて供給される。例えば、図1では、溶加材1は母材(被溶接材)3に対して30°〜40°で傾斜されている。
本実施形態では、高反射材からなる母材3の被溶接部に、母材3よりも体積を小さくしたワイヤー状の溶加材1を供給する。ワイヤー状の溶加材1は、母材3よりも熱容量が小さいため、より溶融しやすい。被溶接部には、溶加材1の供給と同時に、レーザ光2が照射される。これによって、被溶接部では、まず溶加材1が溶融し、初期溶融池を形成する。銅やアルミニウムなどのからなる高反射材は、融点が低く、一旦溶融すると、レーザ光の吸収効率が上昇する。溶加材1は、母材3と同一組成または同一主成分である。このような材料からなる溶加材1により初期溶融池が形成されることで、初期溶融池が母材溶融の引き金となり、母材3の溶融を促す。これによって、レーザ光2の吸収が悪く、溶融させにくい材料に対して、効率的にレーザ溶接することが可能となる。
本実施形態において、溶加材1はワイヤー状とされる。溶加材1の径は0.4mm〜2mm程度とすると良い。ワイヤー径が細すぎると座屈などにより送給が困難となる。一方、ワイヤー径が太すぎると、熱容量が大きくなり初期溶融池を形成しにくくなる。ワイヤー状の溶加材1は、溶加材供給部4などにより保持され、適量を被溶接部に供給され得る。
なお、溶加材1は、レーザ光2に対して同軸状に供給されても良い。
〔第2実施形態〕
図2を参照して、本実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する。
本実施形態では、溶加材の形態が異なる以外は、第1実施形態と同様にレーザ溶接を実施する。溶加材5は、粉末状の形態で被溶接部に供給される。溶加材5の粒子径は、例えば、50μm〜300μm程度とされる。粒子径が小さすぎると、供給時の取り扱いが難しくなる。粒子径が大きすぎると、熱容量が大きくなり初期溶融池を形成しにくくなる。
粉末状の溶加材5は、ワイヤー状の溶加材1よりも熱容量を小さくすることができるため、初期溶融池をより形成しやすい。
なお、溶加材5は、図3に示すように、レーザ光2に対して同軸状に供給されても良い。図3では、レーザヘッド6が、同軸に形成された内筒7と外筒8とからなる2重構造とされている。該レーザヘッド6は、内筒7の開口からレーザ光2を出射し、内筒7と外筒8との間の開口から粉末状の溶加材5が供給される。溶加材5をレーザ光2に対して同軸に供給することで、溶接方向への依存性がなくなるため、装置駆動が容易となる。
〔第3実施形態〕
図4を参照して、本実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する。
本実施形態では、予め溶加材9を被溶接部へ供給した後、被溶接部へのレーザ光2の照射を実施する。溶加材9は、箔状とされる。箔の膜厚は、例えば、0.05mm〜2mm程度とされる。箔の膜厚が薄すぎると、供給時の取り扱いが難しくなる。箔の膜厚が厚すぎると、熱容量が大きくなり初期溶融池を形成しにくくなる。
本実施形態では、まず、箔状の溶加材9を被溶接部表面上に載置する。その後、溶加材9が載った被溶接部にレーザ光2を照射する。箔状の溶加材9は、母材3よりも熱容量が小さいため、より溶融しやすい。よって、被溶接部では、まず溶加材9が溶融し、初期溶融池を形成する。初期溶融池が母材溶融の引き金となり、母材3の溶融を促す。これによって、レーザ光2の吸収が悪く、溶融させにくい材料に対して、効率的にレーザ溶接することが可能となる。本実施形態によれば、事前に溶加材9を供給するため、レーザ溶接装置の構成を簡略化することができる。また、溶加材9を箔状とするため、取扱いが容易であり、材料歩留りも向上する。また、目外れを防止するために、ビード幅(アスペクト比)を増大することが容易となる。
なお、本実施形態において溶加材9は箔状としたが、粉末状の溶加材を事前に供給しても良い。
〔第4実施形態〕
図5及び図6を参照して、本実施形態に係るレーザ溶接方法を説明する。
本実施形態では、第3実施形態と同様に、予め溶加材を被溶接部へ供給した後、被溶接部へのレーザ光の照射を実施する。ただし、溶加材は粉末状の形態とされ、被溶接部は開先部とされる。溶加材5は、第2実施形態と同様の粒子を用いることができる。図5は、面取り開先部の断面図である。図6は、段付き開先部の断面図である。
図5及び図6のように、被溶接部面に対して凹部(底部)が形成された開先部10,11では、この底部に、粉末状の粒子を供給する。溶加材5の供給は、レーザ光2を照射する前に行われるため、レーザ照射装置の構成を簡略化することができる。また、凹部により供給領域がある程度画定されているため、溶加材5を設置しやすい。
なお、本実施形態において溶加材5は粉末状としたが、箔状の溶加材9を事前に開先部に供給しても良い。その場合、溶加材9は、凹部の底部に載置する、または、開先の間12に挟んで設置してよい。
なお、第1実施形態及び第2実施形態のいずれかと、第3実施形態及び第4実施形態のいずれかと、を組み合わせてレーザ溶接を実施しても良い。すなわち、予め被溶接部に溶加材を供給しておき、レーザ光を照射すると同時に、更に、溶加材を供給しても良い。事前に溶加材を供給するだけでは、溶加材の供給量が不足する可能性がある場合に、レーザ光照射時に、溶加材を追加供給することで、必要量の溶加材を被溶接部へと供給することができる。
以下で、高反射材からなる母材のレーザ溶接条件を検討した。
<試験1>
速度一定で、出力を変化させながら、母材にレーザ光を照射したときの溶込み深さを測定した。母材として無酸素銅(C1020(ビードオン)、200mm×200mm×板厚:5mm)を用いた。試験条件を以下に示す。
出力 :20kW,18kW,16kW,14kW
溶接速度 :4m/min
焦点位置 :−15mm
ビーム半径 :0.82mm
前進角 :15°
図7に、出力を変化させたときの入熱と溶込み深さとの関係を示す。横軸が入熱、縦軸が溶込み深さである。図8に、出力14kWでレーザ溶接した試験片のビード13外観写真を示す。図9に、出力16kWでレーザ溶接した試験片のビード13外観写真を示す。図10に、出力16kWでレーザ溶接した試験片の断面写真を示す。
図7によれば、出力を20kWから16kWまで一定の変化率で低下させると、溶込み深さは線形的に減少し、浅くなった。また、スパッタを発生させることなく溶接できていた(図9及び図10参照)。一方、出力を14kWまで低下させた場合には、母材への溶込みを観察することはできなかった(図8参照)。上記結果から、出力16kWと出力14kWとの間には閾値が存在し、出力14kWは溶融の閾値を超えてないことが確認された。また、図7によれば、閾値が存在するため、溶け込み深さを2mm程度に調節しすることは難しいことがわかる。
レーザ照射装置としての実用化を考慮すると、溶接速度4m/minでは動きが速すぎる。よって、駆動装置を作製しやすいように、より低速でレーザ溶接を実施できることが好ましい。
また、溶接速度を遅くした場合、溶込み深さも深くなる。よって、レーザ光が母材を貫通することを防止するため、出力も低下させると良い。しかしながら、図7で示されるように、溶融の閾値があるため、あまり出力を落とすと溶けなくなる。
<試験2>
次に、出力及び速度を変化させて母材にレーザ光を照射したときのエネルギー密度を算出した。母材として無酸素銅(C1020(ビードオン)、200mm×200mm×板厚:5mm)を用いた。
出力 :11〜20kW
溶接速度 :3〜7m/min
焦点位置 :−15mm
ビーム半径 :0.82mm
前進角 :15°
図11に、入熱とエネルギー密度との関係を示す。横軸が入熱、縦軸がエネルギー密度、▲が溶込み深さ2.00mm〜2.49mm、●が溶込み深さ2.50mm〜3.49mm、■が溶込み深さ3.51mm〜5.00mmである。図11によれば、上記試験条件でレーザ溶接した場合、深さ2.00mm〜5.00mmの溶込みが観察された。
<試験3>
次に、試験2を低速化して同様にエネルギー密度を算出した。
出力 :11〜20kW
溶接速度 :2m/min
焦点位置 :−10mm〜−15mm
ビーム半径 :0.66mm〜0.98mm
前進角 :10°〜15°
図12に、低速化したときの入熱とエネルギー密度との関係を示す。横軸が入熱、縦軸がエネルギー密度、×が溶融せず、■が部分溶込み形成、○が貫通である。上記試験によれば、出力を10kWまで低下させると、途中から溶融しない部分が観察された(図13参照)。また、出力を13kWまで上昇させると、スパッタが発生した(図14及び図15参照)。上記結果によれば、低速化に伴い、ビード13の不安定化傾向が顕著になった。これは、無酸素銅は、反射率が高いものの、融点が低いため、一旦溶融するとレーザ光の滞留時間増大により突沸しやすくなるためと考えられる。
上記試験1〜試験3の結果から、レーザを用いて、高反射材からなる母材を、より低速で溶融させるための好適な条件を見つけることはできなかった。
<試験4>
次に、本発明の第1実施形態に従って、高反射材からなる母材のレーザ溶接を実施した。母材は無酸素銅(C1020(ビードオン)、200mm×200mm×板厚:5mm)を用いた。溶加材は、主成分が銅のワイヤーを用いた。試験条件を以下に示す。
出力 :11kW
溶接速度 :1m/min
焦点位置 :−15mm
ビーム半径 :0.82mm
前進角 :15°
溶加材供給速度 :3m/min
図16に、ビード外観写真を示す。図16によれば、ビード13は安定して形成されていた。上記結果によれば、母材3と主成分が同じ材料からなる溶加材を、母材よりも体積を小さくした状態で被溶接部に供給することで、出力を下げて高反射材を溶接施工することができる。また、出力を落とすことができるため、溶接速度も遅くすることができ、レーザ照射装置の駆動装置を装置化しやすくなる。
1 溶加材(ワイヤー状)
2 レーザ光
3 母材(被溶接材)
4 溶加材保持部
5 溶加材(粉末状)
6 レーザヘッド
7 内筒
8 外筒
9 溶加材(箔状)
10 開先部(面取り)
11 開先部(段付き)
12 開先の間
13 ビード

Claims (8)

  1. 金属材料からなる母材と主成分が同一であり、且つ、前記母材よりも体積を小さくした溶加材を、前記母材の被溶接部に供給する工程と、
    前記溶加材を供給すると同時に、または、前記溶加材を供給した後の少なくともいずれかのタイミングで、前記被溶接部にレーザ光を照射する工程と、
    を備えるレーザ溶接方法。
  2. 前記溶加材を、ワイヤー状の形態で前記被溶接部に供給する請求項1に記載のレーザ溶接方法。
  3. 前記溶加材を、粉末状の形態で前記被溶接部に供給する請求項1に記載のレーザ溶接方法。
  4. 前記溶加材を、箔状の形態で前記被溶接部に供給する請求項1に記載のレーザ溶接方法。
  5. 前記レーザ光を照射するとともに、前記溶加材を、一方向からまたは前記レーザ光と同軸状に前記被溶接部へ供給する請求項2または請求項3に記載のレーザ溶接方法。
  6. 前記レーザ光を照射する前に、予め前記溶加材を前記被溶接部へ供給する請求項3または請求項4に記載のレーザ溶接方法。
  7. 前記溶加材を、面取り部または段付き部の開先に形成された凹部に配置する請求項6に記載のレーザ溶接方法。
  8. 前記溶加材を予め前記被溶接部に供給した後、
    前記被溶接部に前記レーザ光を照射すると同時に、前記溶加材を更に供給する請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のレーザ溶接方法。
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