以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
[衛生洗浄装置の基本構成]
まず、本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の基本構成について、図1および図2を参照して具体的に説明する。図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置10は、本体12、袖体13、便蓋14、便座15、リモートコントローラ16、および人体検知センサ17を備えている。本体12および袖体13は一体的に構成されており、したがって袖体13は本体12の一部となっている。便蓋14および便座15は、本体12に対して開閉可能に取り付けられ、本体12、便蓋14および便座15は便器50の上面に設置されている。また、便器50は図1には示さないトイレルーム内に設置されており、リモートコントローラ16および人体検知センサ17は、本体12等とは別体として構成され、トイレルームの壁面に取り付けられている。
なお、本実施の形態においては、衛生洗浄装置10の便座15側を前方(すなわち便座15に着座した使用者から見た前方に同じ)、本体12側を後方とし、前方に向かって右側および左側を、それぞれ右方および左方として各構成要素の配置を説明する。また、便蓋14および便座15は、それぞれ起立位置と倒伏位置との間で、それぞれ別個にかつ両者一緒に回動可能に設けられるが、以下では、便宜上、これらが倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
一体的に構成される本体12および袖体13は、内部が中空の筐体となっており、図1および図2に示すように、本体12の右方に袖体13が位置している。本体12内には、図2に示すように、洗浄ノズル部21、熱交換部22、洗浄水供給部23、乾燥部24、脱臭部25、図2には図示されない開閉部26(図3参照)等の機能ユニット、および制御部27等が収容されている。
また、袖体13内には、図2に示すように静電霧化部31が収容されており、袖体13の上面には、図1に示すように本体側操作部32が設けられている。静電霧化部31は、図2のブロック矢印F1に示す方向に本体12内の空気を吸引し、ブロック矢印F4に示す方向に向かって放出口311dから本体12外に空気を放出する。この空気中には、静電霧化部31で生成された帯電微粒子水が含まれている。また、本体側操作部32は、複数の操作スイッチ321および表示部322を備えており、また、後述する加湿異常報知部を備えていてもよい。
本体12および袖体13の具体的な構成は特に限定されず、本実施の形態では、本体12は横長の形状を有しており、その一方の端部(本実施の形態では右端部)に、本体12から突出するように袖体13が一体的に設けられる構成となっている。この構成により本体12は、便器50の後側で左右方向に横断した状態で便器50上に配置され、袖体13は、便器50の側方(本実施の形態では右方)に位置することになる。
また、本体12および袖体13はまとめて一つの樹脂製の筐体(ケーシング)となっており、前述した機能ユニットおよび制御部27等を収容するための内部空間および内部枠等が設けられ、また、図1に示すように、洗浄ノズル部21の第一洗浄ノズル211等を本体12の外に進出させるための開口等が設けられている。さらに後述するように、本体12が便器50上に載置された状態では、前記開口等を介して、その内部が便器50内に連通するよう構成されている。
便蓋14および便座15は、図1には図示されないが、それぞれ2本の回動軸を有し、本体12に対して開閉可能に取り付けられている。本体12の内部には、図1および図2には図示されない開閉部26が設けられており、この開閉部26により、便蓋14および便座15の回動軸がそれぞれ単独で回動可能になっているので、便蓋14および便座15は開閉部26による回動軸の駆動によってそれぞれ開閉される。また、便座15が開いている状態で便蓋14を開閉部26により閉じる場合には、便蓋14だけでなく便座15も同時に開閉部26により閉じられる。なお、開閉部26の具体的構成に関しては後述する。
便蓋14が開いた状態では、図1に示すように、当該便蓋14は衛生洗浄装置10の最後部の位置で起立し、閉じた状態では便座15の上面を隠蔽する。便座15も便蓋14と同様な位置となるように開閉する。便座15は、内部に図示されない便座ヒータを内蔵しており、当該便座15の着座面が快適な温度になるように、制御部27によって加熱制御される。
本実施の形態では、便蓋14は樹脂製で回動軸も含めて一体的に構成されており、便座15は、前記便座ヒータを内蔵する中空を形成するために、例えば上面(着座面)側と下面側に分割可能に構成されており、少なくとも上面側の部分が金属製である。これは、後述するように、便座15の着座面が常時適温に維持されず、使用者が便座15に着座するタイミングに合わせて短時間で暖められるよう構成されているので、着座面側の熱伝導率を向上させるためである。なお、便蓋14および便座15は前述した構成に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
本体12の前面であり、かつ、閉じた状態の便座15の着座面よりも上になる位置(本実施の形態では、本体12の前面における面取りされた角部)には、着座センサ271が設けられている。この着座センサ271としては、例えば反射型の赤外線センサが用いられ、赤外線を本体12の前面から便座15の上方へ向けて投射するとともに便座15に着座した人体で反射された赤外線を検知して、この検知信号を制御部27へ出力する。制御部27は、着座センサ271から入力された検知信号から、便座15上に使用者が着座していることを判定する。
リモートコントローラ16は、トイレルーム内において便座15に着座した使用者が操作可能な位置に設置することができる。このリモートコントローラ16には、衛生洗浄装置10に備えられた機能を操作するための複数の操作スイッチ161と表示部162とが設けられている。リモートコントローラ16は、本体12内の制御部27と無線通信可能に構成されており、リモートコントローラ16の操作スイッチ161にて入力された操作信号は本体12の制御部27へ送信され、制御部27では受信した操作信号に応じた衛生洗浄装置10の動作制御を行う。このようにリモートコントローラ16は、本体12とは別体に設けられた操作部に相当する。なお、リモートコントローラ16は、後述する加湿異常報知部を備えていてもよい。
人体検知センサ17は、トイレルーム内に使用者が入室したことを検知し、トイレルームの壁面等に設置される。本実施の形態において、人体検知センサ17は、例えば焦電型の赤外センサで構成され、人体の表面から輻射される物体の表面温度に比例して輻射される赤外線を検知する。これにより、人体検知センサ17は、人体のトイレルームへの入室に伴う検知範囲内での赤外線の変化量を検知し、この検知信号を本体12の制御部27へ出力する。制御部27は、人体検知センサ17から入力された検知信号から、トイレルーム内に使用者が入室したことを判定する。なお、人体検知センサ17は、トイレルーム内での人体の存在を検知するため、使用者の退室を検知することもできる。
なお、本体12(および袖体13)に設けられる前述した本体側操作部32および着座センサ271、並びに、本体12とは別体として設けられるリモートコントローラ16、人体検知センサ17は、前述した構成に限定されるものではなく、公知の種々の構成を用いることができる。また、衛生洗浄装置10の設置条件、使用条件、あるいはその他の具体的な構成に応じて、本体側操作部32およびリモートコントローラ16以外の操作部が設けられてもよいし、着座センサ271および人体検知センサ17以外のセンサが用いられてもよい。
本実施の形態では、便座15は、トイレルームに使用者が所在しないときの電力を大幅に削減できるように構成されている。具体的には、本体12の制御部27は、トイレルームに使用者が存在しない場合は、便座ヒータへの通電を停止するか、もしくは待機温度(例えば20℃程度の低温)に保温する。トイレルームに使用者が入室すると、制御部27は、人体検知センサ17からの検知信号を受けて便座ヒータに通電する。便座ヒータは高出力(例えば800W程度)のヒータであり、便座15の着座面は金属製であるので、使用者がトイレルームに入室してから便座15に着座するまでの短時間(例えば6秒から10秒程度の間)に、便座15の着座面を待機温度から適温(例えば40℃程度)まで温めることができる。便座15が適温に達した後は、制御部27は、便座ヒータへの通電を低出力(例えば50W程度)に変化させて適温を維持する。使用者がトイレルーム内から出ると、便座ヒータへの通電を停止するか、もしくは待機温度まで低下させる。
[機能ユニットの構成]
次に、本体12内に設けられている機能ユニットについて、図1ないし図4を参照して具体的に説明する。なお、機能ユニットのうち袖体13内に収容される静電霧化部31については、後述する「加湿動作」に関わる要部の一つであるため、別途説明する。また、図4は、機能ユニットのうち脱臭部25の構成の一例を示す断面図であるが、本体12を左側から見たときの脱臭部25の断面を示している。
図2に示すように、本実施の形態では、機能ユニットのうち洗浄ノズル部21が本体12内の中央部に配置され、本体12の左側には、機能ユニットのうち乾燥部24および脱臭部25(並びに制御部27)が配置されている。また、本体12の右側には、機能ユニットのうち、熱交換部22および洗浄水供給部23が配置され、さらにその右側、すなわち袖部13内には静電霧化部31が配置されている。これら機能ユニットのうち、洗浄ノズル部21、熱交換部22、および洗浄水供給部23は、人体局部等を洗浄する洗浄機構を構成している。
洗浄ノズル部21は、便座15に着座した使用者の局部等を洗浄するものであり、図3に示すように、第一洗浄ノズル211、第二洗浄ノズル212、ノズルクリーニング部213、流路切替弁214、ノズル駆動モータ215、洗浄用ポンプ216、バッファタンク217、および洗浄側バキュームブレーカ218、並びに温水配管200a等を備えている。
第一洗浄ノズル211は、肛門およびその近傍を洗浄するためのノズルであり、「お尻洗浄ノズル」ということができる。また第二洗浄ノズル212は、女性の局部およびその近傍を洗浄するためのノズルであり、「ビデノズル」ということができる。ノズルクリーニング部213は、第一洗浄ノズル211および第二洗浄ノズル212を洗浄するものであり、本実施の形態では、これらに洗浄水を噴射するクリーニングノズルとして構成されている。第一洗浄ノズル211および第二洗浄ノズル212は、いずれも人体を洗浄するためのノズルであるため、「人体洗浄ノズル」ということができる。
第一洗浄ノズル211、第二洗浄ノズル212、およびノズルクリーニング部213は、流路切替弁214を介して温水配管200aに接続されている。この温水配管200aは、バッファタンク217および洗浄用ポンプ216を介して熱交換部22に接続されている。また、バッファタンク217には、洗浄側バキュームブレーカ218が接続されている。また、第一洗浄ノズル211、第二洗浄ノズル212、およびノズルクリーニング部213は、ノズル駆動モータ215により本体12(図3には図示せず)から進出したり本体12内に後退したりする進退移動を行う。ノズル駆動モータ215は、図3に示すように制御部27の制御(図中破線の矢印)により動作する。
また、洗浄用ポンプ216は、図3に示すように、制御部27の制御(図中破線の矢印)により動作し、熱交換部22で生成した温水を人体洗浄ノズルまたはノズルクリーニング部213へ送出する。バッファタンク217は、洗浄用ポンプ216で送出される温水の急激な圧力変動を緩和する。洗浄側バキュームブレーカ218は、温水中に生じた負圧を破壊する。流路切替弁214は、温水配管200aから供給される温水を第一洗浄ノズル211、第二洗浄ノズル212、またはノズルクリーニング部213のいずれかに供給するために流路を切り換える。
熱交換部22は、図3に示すように、洗浄ノズル部21および洗浄水供給部23に接続され、洗浄水供給部23から供給される洗浄水(水道水)を加熱して温水を生成し、洗浄ノズル部21に供給する。
洗浄水供給部23は、洗浄ノズル部21に洗浄水を供給するものであり、図3に示すように、止水弁231、ストレーナ232、逆止弁233、定流量弁234、止水電磁弁235、給水側バキュームブレーカ236、および流量センサ237、並びに洗浄水配管200b等を備えている。
止水弁231は、水道配管53に接続され、当該水道配管53から洗浄水配管200bを分岐させている。洗浄水配管200bには、止水弁231から見て、ストレーナ232、逆止弁233、定流量弁234、止水電磁弁235、および流量センサ237がこの順で設けられ、また、止水電磁弁235と流量センサ237との間には、給水側バキュームブレーカ236が設けられている。洗浄水配管200bの一端は前記の通り止水弁231に接続されるが、他端は熱交換部22に接続されている。
ストレーナ232は、止水弁231から供給される洗浄水中の異物等を分離し、逆止弁233は、洗浄水の逆流を防ぎ、定流量弁234は、圧力変動によらず洗浄水の流量を所定の範囲内に調節する。止水電磁弁235は、図3に示すように、制御部27により開閉が制御され(図中破線の矢印)、洗浄ノズル部21により温水が吐出されるときに洗浄水配管200bを開き、温水の吐出がないときには洗浄水配管200bを閉じる。給水側バキュームブレーカ236は、洗浄水中に生じた負圧を破壊する。流量センサ237は、洗浄水配管200bから熱交換部22に流入する洗浄水の流量を計測し、得られた流量の実測値を制御部27に出力する(図中破線の矢印)。
前記構成の洗浄機構(洗浄ノズル部21、熱交換部22、および洗浄水供給部23)による基本的な洗浄動作について説明する。まず、リモートコントローラ16(図1参照)の操作スイッチ161を使用者が操作して人体洗浄の開始が指令されれば、制御部27は、人体洗浄ノズルのうち第一洗浄ノズル211または第二洗浄ノズル212に温水が供給されるように流路切替弁214を切り換えるとともに、いずれかの人体洗浄ノズルを本体12から進出させるようにノズル駆動モータ215を駆動させる。
ノズル駆動モータ215により人体洗浄ノズルが所定の位置まで進出すれば、制御部27は、止水電磁弁235を開いて、止水弁231を介して水道配管53から洗浄水配管200bを介して熱交換部22に洗浄水(水道水)を流入させる。なお、この洗浄水の流量は流量センサ237で計測され、制御部27の制御に利用される。
そして制御部27は、熱交換部22を動作させ、流入した洗浄水を加熱して温水を生成させるとともに、洗浄用ポンプ216を動作させ、温水配管200aに温水を送出させる。これにより、人体洗浄ノズルから温水が吐出され、人体洗浄が行われる。その後、操作スイッチ161の操作によって人体洗浄の終了が指令されれば、制御部27は、洗浄用ポンプ216および熱交換部22の動作を停止させるとともに、止水電磁弁235を閉じ、さらに、ノズル駆動モータ215を動作させて進出している人体洗浄ノズルを後退させる。人体洗浄ノズルが本体12内に収容されるまで後退すれば一連の洗浄動作が終了する。
乾燥部24は、図2に示すように、洗浄ノズル部21に近接して設けられ、洗浄後の人体の局部等を乾燥させるために温風を噴出する。これは、使用者の局部等を効率的に乾燥させるためである。この観点から、乾燥部24の噴出口は、可能な限り本体12の中央に配置することが望ましい。例えば、本実施の形態では、乾燥部24の前方を中央に向けて湾曲させた形状となっている。乾燥部24の動作も、図3に示すように、リモートコントローラ16等の操作指令に応じて制御部27により制御される(図中破線の矢印)。
脱臭部25は、図4に示すように、脱臭ダクト251、脱臭体ユニット252、脱臭送風機253、脱臭部ケーシング254等を備えており、乾燥部24と同様に、制御部27にその動作が制御される(図3の破線の矢印)。脱臭部25は、前述した乾燥部24と同様に、できるだけ本体12の中央寄りに設けられていることが望ましい。ただし、乾燥部24の機能が洗浄後の局部等の乾燥であるのに対して、脱臭部25の機能は、便器50内の空気の脱臭であるので、機能的には脱臭部25よりも乾燥部24が優先される。それゆえ脱臭部25は乾燥部24よりも外側に位置している。なお、便器50内の臭気を吸引するために、脱臭吸気口254a(図2では破線で模式的に示す)は本体12の中央に向けて湾曲させて設けられている。
脱臭ダクト251は、脱臭部ケーシング254とともに、その内部に脱臭風路255が形成されている。脱臭部ケーシング254は、内部に脱臭ダクト251が設けられるとともに脱臭送風機253が配置されており、便器50の内部側となる本体12の前方底面に脱臭吸気口254aが、本体12の後面に通じるように本体12の底面に排気口254bが開口している。脱臭ダクト251は、脱臭吸気口254aから見て後方に位置し、さらにその後方に脱臭送風機253が位置している。
脱臭送風機253は、脱臭吸気口254aから便器50内の臭気を吸引するために、図中ブロック矢印F2で示すように、脱臭吸気口254aから、脱臭体ユニット252、排気口254bに向かう空気流を形成する。本実施の形態では、脱臭送風機253としてシロッコファンが用いられ、制御部27の制御により動作する。
脱臭体ユニット252は、臭気を脱臭するための脱臭材をユニット化したもので、脱臭ダクト251の内部に、本体12の外部から着脱自在に設けられている。脱臭体ユニット252は、ハニカム状の断面形状を有する脱臭材により構成され、便器50から吸引された空気がハニカム孔の上流側から下流側に通過する間に、当該空気中の臭気物質が孔壁に吸着され、脱臭材の触媒作用により分解除去される。脱臭体ユニット252に用いられる脱臭材としては、シリカ、アルミナ、カーボン等を主成分とする公知のものが用いられる。これら脱臭材は、代表的な臭気成分である硫化水素(腐卵臭の主たる臭気成分)、メチルメルカプタン(タマネギ、キャベツ等の腐敗臭の主たる臭気成分)を触媒作用により分解除去することができる。
前記構成の脱臭部25による基本的な脱臭動作について説明する。まず、使用者が便座15に着座すると、着座センサ271が着座を検知し、制御部27へ検知信号を出力する(図3の破線の矢印)。制御部27は、着座の検知信号を受けて脱臭部25の脱臭送風機253の動作を開始させ、便器50内の空気を脱臭吸気口254aからブロック矢印F2に示すように、脱臭風路255内に吸引する。吸引された空気は、ブロック矢印F2に示すように脱臭体ユニット252を通過し、脱臭送風機253の内部に吸引されてから、排気口254bに向かって吐出され、当該排気口254bからブロック矢印F2に示すように本体12の外側に排気される。
吸引された空気中の臭気成分は、前述したように脱臭体ユニット252により分解除去されるので、脱臭体ユニット252を通過した後の空気は臭気成分を除去されている。それゆえ、排気口254bからトイレルーム内に放出された空気は、ほとんど無臭状態となっている。
その後、使用者が用便を終了して便座15から立ち上がれば、着座センサ271が使用者の着座の終了(離座)を検知し、制御部27へ検知信号を出力する(図3の破線の矢印)。制御部27は、離座の検知信号を受けて、予め設定される所定時間(例えば1分間)が経過した後に、脱臭送風機253の動作を停止する。これにより、用便中に便器50内で発生する臭気成分のほとんどは、脱臭部25により除去することが可能であるため、トイレルーム全体に臭気が拡散されるおそれを効果的に抑制することができる。
開閉部26は、前述したように便蓋14および便座15を開閉するものであり、本実施の形態では、例えば、駆動モータ、駆動モータからの回転駆動力を便蓋14および便座15の回動軸の一方に伝達してこれらを開閉する動力伝達機構、制御部27からの制御信号に基づき前記駆動モータを駆動させる開閉駆動回路、並びに、少なくとも便蓋14の開閉位置(好ましくは便蓋14および便座15の開閉位置)を検知する開閉位置センサ261等を備えている。
開閉部26による便蓋14および便座15の開閉動作は、制御部27によって制御される(図中破線の矢印)。また、開閉位置センサ261は、便蓋14(および便座15)の開閉位置を検知して検知信号を制御部27に出力する。この開閉の検知信号は、後述するように、静電霧化部31の動作制御等に用いられる。本実施の形態では、開閉位置センサ261としては、便蓋14(および便座15)の回動軸の回動位置を検知するセンサであるが、公知の他のセンサであってもよい。なお、図3においては、開閉部26による便蓋14および便座15の開閉は太線の矢印で図示し、制御信号の入出力を示す破線の矢印と区別している。
制御部27は、リモートコントローラ16または本体側操作部32からの操作信号、人体検知センサ17、着座センサ271、湿度センサ313、開閉位置センサ261、または洗浄水供給部23の流量センサ237等から出力される検知信号等に基づいて、前述した洗浄機構、乾燥部24および脱臭部25、後述する静電霧化部31等の動作を制御するものであり、図2に示すように、本実施の形態では、乾燥部24の後方に設けられている。制御部27は、本実施の形態では、公知の演算器と各種素子を基板上に実装した回路基板として構成されている。
また、制御部27の制御において予め設定される所定時間を計測するために、図3に示すように計時部272を備えている。計時部272によって計測される所定時間としては、人体検知センサ17が人体を検知しなくなってから脱臭部25の動作を開始させて停止させるまでの「脱臭動作停止時間」、あるいは、脱臭部25の動作が停止してから、静電霧化部31の動作を開始させて停止させるまでの「静電霧化動作停止時間」等が挙げられる。
計時部272の具体的な構成は特に限定されず、公知のタイマー回路またはクロック回路が好適に用いられてもよいし、制御部27を構成する演算器がプログラムに従って動作することにより実現される機能構成であってもよい。タイマー回路またはクロック回路は制御部27とともに単一の基板上に実装されてもよい。それゆえ、計時部272は制御部27に含まれる構成であってもよい。
また、リモートコントローラ16および本体側操作部32は、図3に示すように、それぞれ加湿異常報知部163および323を備えていてもよい。加湿異常報知部163,323としては、リモートコントローラ16および本体側操作部32が備えている表示部162,323が兼用されてもよいし、表示部162,323とは別の表示手段が設けられてもよいし、表示ではなく音声により異常を報知する構成であってもよい。なお、加湿異常報知部163,323は、リモートコントローラ16および本体側操作部32の双方に設けられておらず、いずれか一方のみに設けられてもよい。
前記構成の洗浄ノズル部21、熱交換部22、洗浄水供給部23、乾燥部24、脱臭部25、および制御部27等の具体的な構成は特に限定されず、本発明の技術分野で公知の構成を好適に用いることができる。また、本体12内には、これら以外の機能ユニットが内蔵されていてもよい。
[静電霧化部の構成]
次に、機能ユニットのうち静電霧化部31について、図1ないし図3、および、図5ないし図7を参照して具体的に説明する。なお、図5は、袖体13の内部構成の一例を示す側面図であるが、袖体13が本体12の右側に位置するので、本体12を右側から見たときの内部平面図に相当する。
図2および図5に示すように、静電霧化部31は袖体13内に収容されており、図6に示すように、静電霧化部31は、静電霧化器330、霧化部ケーシング311、霧化部送風機312、湿度センサ313、ルーバ314等を備えている。
霧化部ケーシング311は、図6に示すように、内部が中空の筐体であって、霧化部送風機312、湿度センサ313、静電霧化器330を内蔵している。霧化部ケーシング311の内部は、霧化部送風機312を収容するための送風機スペース311aと、静電霧化器330を収容するための静電霧化スペース311bと、放出口311dに連通するダクトスペース311cとに区分されている。これらス3つのペースのうち、静電霧化スペース311bおよびダクトスペース311cは、霧化部送風機312から送出される空気流(風)を流通させる霧化部風路315を構成している。
送風機スペース311aは、霧化部ケーシング311において空気流の最も上流側に位置しており、その内部には前記の通り霧化部送風機312が設けられている。霧化部送風機312は、図2のブロック矢印F1に示すように本体12内の空気を吸引し、図6のブロック矢印F3に示すように静電霧化スペース311b(霧化部風路315)に向かって空気流を生成するものである。本実施の形態では、霧化部送風機312としてシロッコファンが用いられている。霧化部送風機312は、図5および図6に示すように、空気を吸引するための送風機吸気口312aを有しているとともに、図6に示すように、吸引した空気を空気流として送出する送風口312bを有している。
送風機吸気口312aは霧化部送風機312の回転中心と同軸に円形で設けられており、図5に示すように、静電霧化部31の側面において、霧化部ケーシング311に覆われずに露出した状態にある。静電霧化部31が袖体13(本体12)内に収容されている状態では、送風機吸気口312aは本体12外ではなく本体12内に位置することになる。それゆえ、送風機吸気口312aから吸気される空気は本体12の空気である。本体12の空気は、後述するように、主として本体12の底板等に設けられた間隙から流入する便器50内の空気である。
静電霧化スペース311bは、送風機スペース311aの前方に隣接して位置しており、霧化部送風機312の送風口312bを除いて送風機スペース311aとは隔離されている。静電霧化スペース311b内には、中央に静電霧化器330が設けられるとともに、当該静電霧化器330の下方で、送風口312bの近傍には湿度センサ313が設けられている。それゆえ、静電霧化スペース311bは、空気流が流れるだけの空間ではなく、静電霧化器330および湿度センサ313が収容可能な空間となっている。
ダクトスペース311cは、その一端が静電霧化スペース311bの前方下部に連通し、他端が放出口311dとなって袖体13外に連通している。また、図1および図5に示すように、放出口311dは、袖体13の前面下方に位置しているので、図6に示すように、ダクトスペース311cの放出口311dの近傍は、袖体13の前方に向かうように折れ曲がっている。したがって、ダクトスペース311cは、上流側から見て下方に向かってL字状に折れ曲がった形状を有している。
放出口311dには、ルーバ314が取り付けられている。このルーバ314は、放出口311dから放出される空気流の方向を偏向させ、所望の方向に導く風向調節部材として機能するとともに、放出口311dに異物が入り込むことを回避するための部材としても機能する。
静電霧化器330は、静電霧化現象により帯電微粒子水を生成するものであり、図7に示すように、結露水生成部331、霧化電極332、および対向電極333を備えている。結露水生成部331は、空気中の水分(水蒸気)を結露させて液体の水(結露水)を生成するものであり、少なくともペルチェ素子334および放熱フィン335から構成されている。静電霧化現象は、ペルチェ素子334の冷却側に霧化電極332(放電電極)を設け、霧化電極332の先端に結露する水に高電圧を印加し、対向電極333との間の静電気力によって、帯電微粒子水を放出させる現象である。静電霧化現象により発生する帯電微粒子水は、脱臭作用や除菌作用を有している。
ペルチェ素子334は、冷却基板334aおよび放熱基板334bを備え、リード線334cが接続されている。リード線334cにはコネクタ334dが設けられ、当該コネクタ334dを介して、図2に示す制御部27に対して電気的に接続されている。本実施の形態では、ペルチェ素子334には直流電圧、例えば0Vを超えており1V以下となる程度の電圧が印加される。放熱フィン335は、ペルチェ素子334の放熱基板334bに接続されており、例えばアルミニウム等の金属で構成されている。
霧化電極332は、結露水生成部331で生成された水に電圧を印加する電極であり、下側の先端が尖った形状を有している。霧化電極332の上側の他端は、ペルチェ素子334の冷却基板334aにつながっており、下側の先端は対向電極333に向かっている。霧化電極332は、ペルチェ素子334の冷却基板334aに結露した水は、霧化電極332の先端に向かって流下する。
対向電極333は、霧化電極332に対向する位置に設けられ、霧化電極332の先端を包囲する略ドーム形状を有している。霧化電極332および対向電極333には、それぞれ通電用の霧化電極接続端子332aおよび対向電極接続端子333aが設けられており、これら接続端子332a,333aを介して制御部27に対して電気的に接続されている。霧化電極332および対向電極333の間には、直流の高電圧、例えば約3500Vが印加される。
このように、本実施の形態における静電霧化部31は、静電霧化器330および湿度センサ313は、霧化部風路315内(より具体的には静電霧化スペース311b)に位置しているが、これにより、静電霧化器330で生成した帯電微粒子水を速やかに本体12外(トイレルーム内)に放出することができるとともに、静電霧化器330が設置される空間(霧化部風路315)の湿度を湿度センサ313で検知することができるので、後述する加湿動作を良好に制御することが可能となる。
また、霧化部風路315の中央部に静電霧化器330を位置させれば、次に説明する循環空気流を形成できるという利点もある。さらに、本体12および袖体13の内部は便器50内と連通しており、静電霧化部31の内部は、送風機吸気口312aを介して本体12内に連通しているので、湿度センサ313を霧化部風路315内に設けても、実質的に便器50内の湿度を検知することができる。
次に、前記構成の静電霧化部31における基本的な動作について説明する。まず、制御部27が所定の設定条件に基づいて静電霧化部31の動作を開始させるに伴い、霧化部送風機312および静電霧化器330に通電が開始される。霧化部送風機312は、図2のブロック矢印F1に示すように、送風機吸気口312aから本体12内から空気を吸引して、図6のブロック矢印F3に示すように、送風口312bから静電霧化スペース311bに向けて空気流を送出する。
ここで、前述したように、洗浄ノズル部21の第一洗浄ノズル211等を進退させるために開口が設けられており、さらにそれ以外においても給水系から漏れ出た余剰水を排水するための排水口等が設けられているので、本体12内はこれら開口等によって便器50内に連通している。それゆえ、本体12内の空気は便器50内から吸引された湿気の多いものとなっている。
静電霧化スペース311bに送出された空気流は、静電霧化器330の下部を通過する。静電霧化器330の下部には、図7に示すように、結露水生成部331のペルチェ素子334、霧化電極332および対向電極333が位置しているが、送出された空気流は、特にペルチェ素子334の冷却基板334aおよび霧化電極332と、対向電極333の低温部位とに向かって送風される。静電霧化器330の下部を通過した空気流の大部分は、図6のブロック矢印F31に示すように、ダクトスペース311cを通過して放出口311dから袖体13の外側(トイレルーム内)に放出される。
ここで、静電霧化器330の下部を通過した空気流の一部は、図6のブロック矢印F32に示すように、静電霧化スペース311bの前方内面に衝突して上昇し、静電霧化器330の上部を通過して霧化部送風機312の送風口312b近傍に戻る。したがって、前記空気流の一部は、静電霧化スペース311b内を循環する循環空気流となる。静電霧化器330の上部は放熱フィン335が位置しているので、前記循環空気流は放熱フィン335から放熱される熱を吸熱することにより昇温され、再びブロック矢印F3の方向に流れる。
静電霧化器330においては、空気流がペルチェ素子334の冷却基板334aに接することで、空気中の水分が冷却基板334aに結露して結露水が生成する。この結露水は冷却基板334aから霧化電極332の先端側に流下する。静電霧化器330には通電されているため、霧化電極332および対向電極333の間には前述したように高電圧が印加されている。そのため、結露水にレイリー分裂が生じ、これによってナノメートルサイズの帯電微粒子水が発生する。なお、前記循環空気流によってペルチェ素子334の冷却基板334aおよび霧化電極332と対向電極333の低温部との温度差が拡大するので、冷却基板334a(および霧化電極332)での結露が向上され、より効率的に帯電微粒子水を発生させることができる。
このように、静電霧化器330の下部を通過した空気流(ブロック矢印F31の空気流)には、帯電微粒子水が含まれているので、放出口311dからトイレルーム内には帯電微粒子水を含む空気流が放出される。放出された帯電微粒子水は、トイレルーム内に飛散し、当該トイレルーム内に浮遊する臭気成分、あるいは、当該トイレルームの壁面、天井面あるいは床面等に付着する。
ナノメートルサイズの帯電微粒子水は、その径が非常に小さいため、壁面、天井面、あるいは床面に存在する微細な凹凸の内部に有効に入り込むことが可能である。それゆえ、壁面等に付着した臭気成分を脱臭したり菌類を除菌したりすることが可能となる。特に脱臭に関しては、帯電微粒子水によって、アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸、メタン、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド等の臭気成分の分解除去を行うことができるため、トイレルームの壁面等付着した臭気成分を良好に脱臭することが可能となる。
なお、霧化部送風機312は、本実施の形態ではシロッコファンであるが、静電霧化器330により生成した帯電微粒子水を外部に放出するための空気流を生成するものであれば、公知の他の送風手段を用いることができる。また、放出口311dは袖体13の前面下部に設けられているが、この位置に限定されず、放出口311dは、生成した帯電微粒子水を本体12(袖体13)外であり便器50外に放出できれば、他の位置であってもよい。
さらに、本実施の形態では、静電霧化スペース311bおよびダクトスペース311cにより霧化部風路315が構成されているが、霧化部風路315はこれに限定されず、他のスペースを含んでもよいし、静電霧化スペース311bおよびダクトスペース311cに明確に区分されていなくてもよい。あるいは、霧化部送風機312で形成された空気流が良好に放出口311dから放出されるのであれば、送風機スペース311aと霧化部風路315(特に静電霧化スペース311b)とを区分する隔壁等は無くてもよい。
また、本実施の形態では、静電霧化スペース311bの中央部に静電霧化器330が位置することで前述した循環空気流(図6のブロック矢印F32参照)が生成するが、静電霧化器330は、循環空気流が形成されるように静電霧化スペース311b内に位置していなくてもよい。静電霧化器330は、霧化部風路315内に位置していればよく、霧化部風路315の具体的な構成は、図6に示すような3つのスペースへの区分に特定されない。また、湿度センサ313は、霧化風路315内に設けられてもよいし、霧化風路315に吸気する送風機吸気口312aの近傍の本体側に設けられてもよい。
[衛生洗浄装置の通常動作および加湿動作]
次に、前記構成の衛生洗浄装置10において、使用時の通常動作と、静電霧化部31による帯電微粒子水の発生を効率的に行うための加湿動作とについて、図3、図8(a),(b)、図9および図10を参照して具体的に説明する。
まず、衛生洗浄装置10の通常動作について説明すると、使用者がトイレルームに入室して人体検知センサ17が人体を検知すると、図3に示すように、人体検知センサ17からの検知信号により、制御部27は開閉部26を動作させて便蓋14(図3には図示せず)を開くとともに、便座15内の便座ヒータ(図3には図示せず)に通電を開始して便座15の着座面が着座に適した温度(例えば40℃程度)になるように、短時間(例えば10秒以内)に昇温させる。
次に、使用者が便座15に着座すると、着座センサ271が着座を検知し、着座センサ271からの検知信号により、制御部27は脱臭部25(図3には図示せず)による脱臭動作を開始させる。また、制御部27は、着座の検知信号を受けて本体12の本体側操作部32およびリモートコントローラ16による洗浄操作を許可する。脱臭部25は、使用者の用便中および用便後の洗浄ノズル部21の洗浄動作中も脱臭動作を継続するが、使用者が便座15から離れてトイレルームから退出し、人体検知センサ17が人体を検知しなくなってから(使用者がトイレルームを退室してから)、所定時間(脱臭動作停止時間)が経過した後に脱臭動作を停止する。
使用者が退室してから脱臭部25の脱臭動作が停止すれば、制御部27は、静電霧化部31による静電霧化動作を開始させ、所定時間(静電霧化動作停止時間)が経過した後には、静電霧化動作を停止させる。制御部27は、静電霧化部31の動作中に使用者がトイレルームに入室したとき(人体検知センサ17が人体を検知したとき)には、静電霧化部31の動作を停止する。また、使用者が便座15に着座しない男子小用の場合には、制御部27は脱臭部25を動作させないが、使用者がトイレルームから退室した後には(人体検知センサ17が人体を検知しなくなってからは)、制御部27は静電霧化部31の動作を開始させ、前記の通り所定時間(静電霧化動作停止時間)が経過した後に停止させる。
ここで静電霧化部31が動作してもトイレルームの環境によっては帯電微粒子水が発生しない場合がある。具体的には、温度に対して帯電微粒子水が発生する下限の湿度を「下限湿度」と定義すれば、図8(b)に示すように、温度が24〜25℃前後(約25℃)かそれ以上であれば「下限湿度」は概ね20%となる。それゆえ、温度が約25℃かそれ以上であっても、湿度が約20%未満であれば、静電霧化部31は帯電微粒子水を発生させることができない。言い換えると、トイレルームの湿度が20%以上であり、温度が約25℃以上であれば、静電霧化部31は帯電微粒子水を発生させることが可能である。
ところが、温度が約25℃よりも下がっていくと「下限湿度」は20%から徐々に上昇し、トイレルームの温度が概ね1℃に達すれば、「下限湿度」も概ね85%に達する。したがって、温度が比較的高温のときに比べて温度が低温のときには、湿度が相対的に高くなければ、静電霧化部31により帯電微粒子水を発生させることができない。また、トイレルームの温度が1℃未満であれば、湿度が85%以上であっても静電霧化部31により帯電微粒子水を発生させることができない。
夏場であれば、トイレルームの温度も高くなる傾向にあるので、湿度が多少低めであっても20%以上であれば、静電霧化部31は帯電微粒子水を発生させることができる。これに対して、冬場であれば、トイレルームの温度も一桁台の温度(℃)に低下する可能性があるので、湿度が高くなければ静電霧化部31は帯電微粒子水を発生させることができない。
そこで本実施の形態に係る衛生洗浄装置10は、図8(a)に示すように、静電霧化部31に設けられる湿度センサ313により、予め設定された所定の湿度(所定値)、例えば85%以下であることが検知されれば、制御部27が、開閉部26を動作させて便蓋14を閉じて、その後に洗浄ノズル部21により便器50内に温水を吐出させてから、静電霧化部31を動作させる加湿動作を行うように構成されている。これにより静電霧化部31を動作させている間に湿度が所定値を下回っても、帯電微粒子水を良好に発生させることができる。
前述したように、便器50内と本体12の内部とは連通しており、通常、便器50内には洗浄水が存在しているので、便器50の外(トイレルーム)よりも相対的に湿度は高い傾向にある。そして、便蓋14を閉じて便器50内を略閉鎖した状態を形成し、洗浄ノズル部21から温水を吐出させれば、便器50内の湿度を良好に上昇させることができる。このとき、加熱しない洗浄水を吐出させてもよいが、熱交換部22により加熱した洗浄水(すなわち温水)を吐出させることで、便器50内の湿度をより良好に上昇させることが可能となる。
図8(a)に示す例では、時間t1で静電霧化部31が静電霧化動作を開始(図中ON)したときには、湿度センサ313で検知された湿度は85%を超えているが、湿度が徐々に低下し、時間t2に達した時点で湿度が85%を下回り始めたため、湿度85%を所定値(閾値)として制御部27は加湿動作を開始している(図中「実施」のブロック矢印)。その後、加湿動作を継続して時間t3に達した時点で湿度が85%に回復したので、制御部27は加湿動作を停止し、さらにその後、時間t4に達した時点で湿度が85%を下回り始めたため、制御部27は加湿動作を開始し、時間t5に達した時点で静電霧化部31の静電霧化動作が停止したため、湿度が85%に回復しなくても制御部27は加湿動作を中断している。
なお、加湿動作を開始するか否かを判定する湿度の所定値は、前述した85%に限定されるものではなく、衛生洗浄装置10の使用環境または使用方法、あるいは衛生洗浄装置10の具体的な構成等の諸条件に応じて、適宜好ましい値を設定することができる。例えば、トイレルームの温度が冬場でも5℃以下にならないと想定されれば、図8(b)に示すグラフから、前記所定値を60〜70%に設定してもよい。
加湿動作に関してより具体的に説明する。まず、図9の下方図に示すように、一般的な便器50は、後方に貯水タンク51が配置されており、用便後に当該貯水タンク51から放出される水は便器50内を流れ、排水管52に排水される。ここで、通常、便器50内には、排水管52に全ての水が流出せずに溜まり水60が残存する。それゆえ、便蓋14を閉じた状態では、便器50内は外部(トイレルーム)から実質的に隔離されるので、相対的に外部よりも湿度が高くなる傾向にある。
そして、図9の上方図に示すように、本体12および袖体13の内部は、例えば本体12に設けられている隙間12a等の開口を介して便器50内に連通している。それゆえ、静電霧化部31の霧化部送風機312(図5および図6参照)を動作させれば、隙間12aから静電霧化部31の送風機吸気口312aに向かってブロック矢印F5に模式的に示すように空気流が形成される。それゆえ、便器50内の空気を静電霧化部31に供給することが可能である。ただし、例えば冬場等、温度が低い場合には、便器50内の温度または湿度は静電霧化部31で帯電微粒子水を発生できる程度に達していないおそれがある。
そこで、制御部27は、便蓋14を閉じた状態で、ブロック矢印Dに示すように、便蓋14が閉じた状態の便器50内に洗浄ノズル部21から温水を吐出させる。この加湿動作を行うことで、湿度が高くなりやすい便器50内を外部から隔離した状態で、便器50内の湿度を(条件次第では便器50内の温度も)上昇させることができる。それゆえ、静電霧化部31は、便器50内の高湿度の空気を利用して良好に帯電微粒子水を生成することができ、生成した帯電微粒子水を放出口311dからトイレルームに放出する(ブロック矢印F4)ことができる。
なお、図9の上方図は本体12の水平方向の模式的断面図であり、図9の下方図は上方図に対応する、便器50を含む本体12の鉛直方向の模式的断面図である。また、図9の上方図に示す本体12の隙間12aと、便器50内から送風機吸気口312aに向かう空気流を示すブロック矢印F5は、加湿動作を説明するために模式的に図示するものである。例えば、隙間12aとしては、洗浄ノズル部21の近傍に設けてもよいし、本体12の上方カバーと底板との間にスリット状に設けてもよいし、本体12の底板側に複数の貫通孔として設けてもよい。
ここで、洗浄ノズル部21から吐出される温水の温度は、人体洗浄用に設定される温水の温度を基準値としたときに、基準値よりも高い温度(加湿値)となっていることが好ましい。温水の温度がより高い加湿値であれば、基準値の温水を吐出するよりも便器50内の湿度を効率的に上昇させることができる。
温水の基準値は、人体洗浄を行うための温水(洗浄用温水)に設定される公知の温度と同等かそれ以上となっていればよく、例えば、40〜60℃程度の温度を挙げることができる。基準値および加湿値は、トイレルームの温度に応じて適宜設定することができるので、具体的な値は特に限定されない。制御部27は、加湿動作時に生成される温水の温度が基準値より高い加湿値になるように、熱交換部22の加熱動作を制御するよう構成されていればよい。したがって、例えば夏場であれば、基準値および加湿値を冬場よりも低い温度にするように熱交換部22を制御してもよい。
また、湿度センサ313で検知される湿度の実測値は、静電霧化部31内の湿度であるが、静電霧化部31の内部は送風機吸気口312aを介して袖体13内に連通しているので、袖体13内(すなわち本体12内)の湿度を検知していることになる。そして、図9の上方図に示すように、袖体13内および本体12内は隙間12aを介して便器50内に連通しているので、湿度センサ313で検知される湿度は、便器50内の湿度と見なすことができる。
それゆえ、制御部27は、洗浄ノズル部21による便器50内への温水の吐出動作を、湿度センサ313により検知される湿度の実測値に応じて制御してもよい。例えば、湿度センサ313による湿度の実測値の変化に応じて洗浄ノズル部21から吐出される温水の量を変化させてもよいし、湿度の実測値に応じて第一洗浄ノズル211または第二洗浄ノズル212、あるいはその両方を本体12から進出させて、便器50内に温水を拡散させるように温水を吐出させてもよい。もちろん、湿度センサ313で検知される湿度の実測値が85%を回復するまで、第一洗浄ノズル211または第二洗浄ノズル212を進退させることなく、同量の温水を吐出させる等、加湿動作の間に温水の吐出を変化させずに一律に行ってもよい。
また、洗浄ノズル部21における温水を吐出する部材は、第一洗浄ノズル211または第二洗浄ノズル212(図3参照)であればよいが、これら人体洗浄ノズルに限定されず、ノズルクリーニング部213(図3参照)であってもよい。制御部27は、湿度センサ313により湿度の所定値(例えば85%)以下であることが検知されれば、ノズルクリーニング部213から温水を吐出させて加湿動作をおこなってもよい。
さらに、便器50内に温水を吐出する構成は、洗浄ノズル部21以外の構成であってもよい。つまり、本体12には、熱交換部22で加熱された温水を吐出する吐水部が設けられていればよいので、例えば、洗浄ノズル部21以外に、図3に示す温水配管200aから分岐する吐水部が別途設けられてもよい。
次に、前述した制御部27による静電霧化部31の制御の具体的な一例について、図10を参照して具体的に説明する。まず、制御部27は、静電霧化部31の動作が開始されたか否かを判定する(ステップS101)。つまり、使用者が退室して脱臭部25の動作が開始してから所定時間(脱臭動作停止時間)が経過し、脱臭部25の動作が停止して静電霧化部31の動作が開始されたか否かを判定する。開始されていなければ(ステップS101でNO)判定を繰り返すが、開始されていれば(ステップS101でYES)、湿度センサ313により検知される湿度の実測値が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。
湿度が所定値以下でなければ(ステップS102でNO)制御部27は判定を繰り返すが、所定値以下であれば(ステップS102でYES)、開閉位置センサ261の検知結果から便蓋14が開いているか否かを判定する(ステップS103)。便蓋14が開いていれば(ステップS103でYES)、制御部27は、開閉部26を動作させて便蓋14を閉じる(ステップS104)。
便蓋14が閉じている状態では(ステップS103でNO、またはステップS104の実行後)、制御部27は、熱交換部22に基準値以上の温水を生成させ、吐水部、例えば第一洗浄ノズル211から当該温水を吐出させる(ステップS105)。その後、湿度センサ313による湿度の実測値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS106)。所定値に達していなければ(ステップS106でNO)、温水の吐出を継続させる(ステップS105に戻る)が、所定値以上になっていれば(ステップS106でYES)、制御部27は、静電霧化部31の動作が終了しているか否かを判定する(ステップS107)。
静電霧化部31は、前述したように、所定時間(静電霧化動作停止時間)が経過した後に停止するので、所定時間が経過していなければ(ステップS107でNO)、制御部27は、湿度センサ313により湿度の実測値を検知して所定値以下であるか否かチェックする(ステップS102に戻る)。所定値以下であれば前述した制御動作を繰り返す(ステップS103〜ステップS106)。所定時間が経過すれば静電霧化部31の動作が終了するので(ステップS107でYES)、一連の制御を終了する。
なお、図10に示す制御の例においては、制御部27は、温水の吐出後に湿度センサ313によって湿度をチェックする(ステップS106)際に、湿度の実測値に応じて吐水部から吐出する温水の量を変更させたり、温水を間欠的に吐出させたり、吐水部が人体洗浄ノズルであれば、その進退位置を変更させたりする制御を行ってもよい(温水吐出変更ステップの追加)。
また、湿度センサ313により湿度をチェックするに際して、制御部27は、検知される湿度が所定値に達しない間には、静電霧化部31の動作を停止させる制御を行ってもよいし、湿度の継続的なチェックの結果、予め設定されている所定時間が経過しても湿度の上昇が見られなければ、制御部27は、加湿動作に何らかの異常が生じていると判定して、加湿異常報知部163,323により異常を報知させてもよい(異常報知ステップの追加)。なお、この場合の所定時間は「加湿動作異常判定時間」と定義することができる。
あるいは、図10に示す制御の例において、温水を吐出している間(ステップS105)に、トイレルームに使用者が入室して便蓋14を開けた場合には、制御部27は、静電霧化部31の動作を停止するとともに、温水の吐出を停止する制御を行ってもよい(加湿動作中断ステップの追加)。このとき、前述した加湿異常報知部163,323により異常を報知させてもよい。また、使用者が異常の報知を確認して便蓋14を閉じた場合には、制御部27は、静電霧化部31の動作および温水の吐出を再開するよう制御してもよい。
また、図10に示す制御の例では、制御部27は、静電霧化部31が動作中に湿度の実測値が所定値に達していないときに加湿動作を実行しているが、加湿動作の実行のタイミングはこれに限定されず、静電霧化部31が動作可能なときであればよい。例えば、リモートコントローラ16に静電霧化部31の動作を手動で操作する操作スイッチ161が含まれていれば、使用者の使用中であっても静電霧化部31は動作可能となる。それゆえ制御部27は、静電霧化部31の動作開始(ステップS101)を判定せずに、湿度が所定値に達していなければ、随時、加湿動作を行うように制御してもよい。
このように、本実施の形態によれば、制御部27は、まず、湿度センサ313の検知結果に基づいて便蓋14を閉じてから吐水部により便器50内に温水を吐出させる。これにより、便器50内を外気から実質的に閉じた状態にできるので、吐出された温水により便器50内の湿度を上昇させることができる。そして、本体12内は便器50内に連通しており、静電霧化部31は、本体12内の空気から帯電微粒子水を生成するので、制御部27により、便器50内の湿度が上昇してから静電霧化部31の動作が開始されれば、静電霧化部31は、トイレルームが低温または低湿であっても、静電霧化部31において帯電微粒子水を発生可能な湿度環境下で十分に帯電微粒子水を生成することができる。それゆえ、トイレルームの温度または湿度によらず、静電霧化部31による脱臭および除菌を効率的に行うことができる。
また、本実施の形態では、静電霧化部31とは別に脱臭部25を備えており、脱臭部25は、使用者による使用中(用便時および洗浄ノズル部21による局部等の洗浄時)に動作し、静電霧化部31は使用後に動作するように構成されている。それゆえ、使用者が使用している間には、脱臭部25により便器50内の臭気が脱臭されるので、トイレルーム全体に臭気の拡散を抑制でき、また使用後には、静電霧化部31から放出される帯電微粒子水により、トイレルーム内に浮遊したり壁面等に付着したりしている臭気成分または細菌等を除去することができるので、脱臭または除菌の対象に合わせて好適な脱臭動作または除菌動作を実施させることができる。
さらに、先に便器50内の臭気成分を脱臭部25により脱臭できるので、静電霧化部31の動作時においては、便器50から本体12内に流入する空気流(図9のブロック矢印F5参照)は、臭気成分が大幅に除去されたものとなっている。それゆえ、本体12内に臭気成分が侵入して臭気成分が各機能ユニットに付着するおそれを有効に抑制し、かつ、脱臭された空気を吸引して帯電微粒子水の生成を行うことができる。
また、本実施の形態では、衛生洗浄装置10を例示して本発明を説明しているが、本発明が適用可能なトイレ設備は衛生洗浄装置10に限定されるものではなく、吐水部さえ供えていれば、他のトイレ設備にも適用することができる。例えば、暖房機能のみを有する便座装置、便器50に直接取り付けることが可能な構成の静電霧化装置、衛生洗浄装置10または便座装置等に取り付けたり一体化されたりする構成のトイレルーム内暖房装置等にも好適に適用することができる。
また、本実施の形態では、衛生洗浄装置10の熱交換部22において温水を生成することにより、洗浄ノズル部21等の吐水部から温水を吐出する構成としているが、本発明はこれに限定されず、温水化しない常温の洗浄水を吐出するのみであってもよい。この場合、吐出される洗浄水の量を多くしたり、洗浄水の吐出の継続時間を長くしたりする等、諸条件を適宜設定すれば、便器50内の湿度を上昇させることができる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。