JP2012214625A - 樹脂発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含む樹脂組成物からなる発泡体であって、該樹脂組成物が、前記導電付与材が多く含まれる樹脂相Iと、少なく含まれる樹脂相IIとからなる樹脂発泡体、及び(2)(a)導電付与材を、2種類の樹脂の内一方の樹脂Iに混練して樹脂組成物Iを調製する工程、(b)前記樹脂組成物Iと、もう一方の樹脂IIとを混練して、樹脂組成物IIを調製する工程、(c)前記樹脂組成物IIに物理発泡剤を含浸させて樹脂組成物IIIを調製する工程、及び(d)前記樹脂組成物IIIを発泡させて、樹脂発泡体を形成させる工程、を順次施す樹脂発泡体の製造方法である。
【選択図】なし
Description
しかしながら、近年、携帯電話等の電子機器類の小型化に伴い、内部に搭載される部材点数の減少、及び電子部品の高密度搭載化の傾向がある。そのため、従来のように導電材及び緩衝シール材を個別に使用するのではなく、導電材及び緩衝シール材の機能を併せ持つ部材が求められている。さらには、高密度搭載された電子部品間の微小なクリアランスを埋めることできるように、柔軟な導電材や緩衝シール材が求められている。また、導電性能が求められない用途においても、緩衝シール材は電子部品との接触が避けられないことから、緩衝シール材自体の帯電防止、静電気防止が必要となってきている。
しかし、発泡体表面へ導電材料を積層したものでは、導電材料にて発泡体の柔軟性が損なわれ、加えて厚み方向の導電性(厚み方向の体積抵抗率)を得ることは困難であった。
さらに、導電付与材を内部添加した発泡体(特許文献5)では、導電付与材の含有量の割には、十分な導電性が得られないという問題があった。
しかし、これらのカーボン系導電付与材を用いた樹脂組成物では、導電パスを形成するために、多量の導電付与材を添加するため、樹脂マトリックス自体の特性、例えば、耐衝撃性や流動性、柔軟性等の特性が損なわれてしまうという問題や、混練が困難になったり、発泡倍率が小さくなったり、摩擦等により、樹脂成形品表面から導電付与材が脱落してしまうという問題があった。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含む樹脂組成物からなる発泡体であって、該樹脂組成物が、該導電付与材が多く含まれる樹脂相IIと、少なく含まれる樹脂相Iとからなることを特徴とする樹脂発泡体。
[2]樹脂相IIに含まれる導電付与材の割合をA、樹脂相Iに含まれる導電付与材の割合をBとした場合、B/A(質量比)が0.02〜0.9である、上記[1]の樹脂発泡体。
[3]導電付与材が少なく含まれる樹脂相Iにおける樹脂Iの含有量が、樹脂組成物全量に対して、25〜95質量%である、上記[1]又は[2]の樹脂発泡体。
[4]導電付与材の量が、樹脂Iと樹脂IIとの合計量に対して1〜25質量%であり、かつ樹脂組成物全量に対して、1〜15質量%である、上記[1]〜[3]のいずれかの樹脂発泡体。
[5]樹脂相Iにおける樹脂Iが、融点80〜160℃の熱可塑性樹脂であり、樹脂相IIにおける樹脂IIが、23℃における貯蔵弾性率5〜40GPaの熱可塑性エラストマーである、上記[1]〜[4]のいずれかの樹脂発泡体。
[6]熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体、ポリブテン及びポリメチルペンテンから選ばれる少なくとも一種のオレフィン系重合体であり、熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びアイオノマーから選ばれる少なくとも一種のエラストマーである、上記[5]の樹脂発泡体。
[8]前記導電付与材が、得られる樹脂発泡体の体積固有抵抗率を1010Ω・cm以下にし得る導電材料である、上記[1]〜[7]のいずれかの樹脂発泡体。
[9]前記導電付与材が、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンから選ばれる少なくとも一種である、上記[8]の樹脂発泡体。
[10]前記樹脂組成物において、樹脂相Iと樹脂相IIとが相分離し、海島構造を形成してなる、上記[1]〜[9]のいずれかの樹脂発泡体。
[11]体積固有抵抗率が5×108Ω・cm以下である、上記[1]〜[10]のいずれかの樹脂発泡体。
[12]表面抵抗率が2×1012Ω/□以下である、上記[1]〜[11]のいずれかの樹脂発泡体。
[13]見掛け密度が1.5〜50g/cm3である、上記[1]〜[12]のいずれかの樹脂発泡体。
[14]樹脂組成物における、樹脂Iと樹脂IIとの合計含有量が60〜98質量%である、上記[1]〜[13]のいずれかの樹脂発泡体。
[15]上記[1]〜[14]のいずれかの樹脂発泡体の製造方法であって、(a)導電付与材を、2種類の樹脂の内一方の樹脂IIに混練して樹脂組成物Iを調製する工程、(b)前記樹脂組成物Iと、もう一方の樹脂Iとを混練して、樹脂組成物IIを調製する工程、(c)前記樹脂組成物IIに物理発泡剤を含浸させて樹脂組成物IIIを調製する工程、及び(d)前記樹脂組成物IIIを発泡させて、樹脂発泡体を形成させる工程、を順次施すことを特徴とする樹脂発泡体の製造方法。
本発明の樹脂発泡体は、2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含む樹脂組成物からなる発泡体であって、該樹脂組成物が、該導電付与材が多く含まれる樹脂相IIと、少なく含まれる樹脂相Iとからなることを特徴とする。
本発明の樹脂発泡体を構成する樹脂組成物は、2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含むと共に、該導電付与材が多く含まれる樹脂相IIと、少なく含まれる樹脂相Iとからなり、そして樹脂相Iと樹脂相IIは、通常相分離し、海島構造を形成している。
前記樹脂相Iにおける樹脂Iは、融点が80〜160℃程度、好ましくは90〜150℃の範囲にある熱可塑性樹脂が好適である。
このような熱可塑性樹脂としては、オレフィン系重合体を用いることができる。このオレフィン系重合体としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体、ポリブテン及びポリメチルペンテンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)から構成される、通称でのブロック共重合体を意味し、必ずしも成分(a)と成分(b)とが完全にブロック状に結合されたものでなくてもよい。かかる、プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、例えば、メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量7質量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95質量%、第2工程で成分(a)よりも3〜20質量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5質量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、示差走査熱量分析による吸熱ピークの少なくとも1つが155〜165℃であり、JIS K7210によるMFRが1〜10g/10分であるものが好ましい。
前記樹脂相IIにおける樹脂IIは、23℃における貯蔵弾性率が5〜40GPa程度、好ましくは7〜25GPaの範囲にある熱可塑性エラストマーが好適である。
なお、上記23℃における貯蔵弾性率は以下に示す方法で測定することができる。
《複素粘弾性率の測定》
試料の熱可塑性エラストマーの試験片(幅10mm、長さ50mm、厚さ2mm)について、粘弾性測定装置を使用し、歪0.2%、振動数100Hzの条件にて、23℃における貯蔵弾性率E*を測定し、可撓性を評価する。値が小さいほど可撓性に優れる。
これらの熱可塑性エラストマーは、一般にガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、樹脂発泡体としたとき柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
なお、前記アイオノマーとは、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋してなる熱可塑性エラストマーであり、「ハイミラン」という登録商標で、三井・デュポンポリケミカル株式会社が製造販売している。
また、当該樹脂組成物における樹脂Iと樹脂IIとの合計含有量は、得られる樹脂発泡体の発泡セル形成性や、形状安定性等の観点から、60〜98質量%の範囲にあることが好ましく、75〜96質量%の範囲にあることがより好ましい。
さらに、樹脂相Iにおける樹脂Iの含有量は、発泡性と導電性の両立の観点から、樹脂組成物全量に対して、25〜95質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましい。
当該樹脂組成物は、2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含み、前記導電付与材が多く含まれる樹脂相IIと、少なく含まれる樹脂相Iとから構成されている。
当該樹脂組成物に含有する導電付与材としては、該付与材を樹脂組成物全量に対して1〜15質量%含有させた場合、得られる樹脂発泡体の体積固有抵抗率を好ましくは5×108Ω・cm以下、より好ましくは106Ω・cm以下にし得る導電材料が好適である。
《カーボンブラック》
上記カーボン系導電材料の中でも、樹脂発泡体中での導電パスの形成しやすさ、導電性の調整しやすさ、特性安定性等の観点から、いわゆる導電性カーボンブラックが好適である。
導電性カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられる。中でも、導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラックが好ましい。
カーボン系導電材料の一つであるカーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンは、それ自体の導電性が優れていること、アスペクト比が高く、樹脂中にネットワークを形成し易いこと、非常に微細で嵩密度が小さく、単位質量当たりの本数が多い等の理由から、本発明の樹脂発泡体に少量存在することにより、導電パスを効果的に形成し得るので、前述した導電性カーボンブラックと同様に導電付与材として使用することが好ましい。
カーボンナノチューブには、1層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する単層ナノチューブと、黒鉛シートが何層も同心筒状に閉じた多層構造を有する多層ナノチューブとがある。用いることのできるカーボンナノチューブに特に制限はないが、量産性と価格の点から、直径5〜200nm、特に直径10〜100nmの単層又は多層ナノチューブが好ましい。カーボンナノチューブとしては、Hanwha Chemical社製の商品名CM-250、昭和電工株式会社製の商品名マルチウォール、VGCF III、VGCF IV、ハイペリオン・カタリシス・インターナショナル社製の商品名 Graphite Fibrils Grades BN、日機装株式会社製の商品名MWCNT、GSIクレオス社製商品名カルベール、本荘ケミカル株式会社製のカーボンナノチューブ等が挙げられる。
当該樹脂組成物には、導電付与材として、前述したカーボン系導電材料以外の導電材料を含むことができる。
カーボン系以外の導電材料としては、例えば銅、銀、金、鉄、白金、ニッケル、アルミニウム等純金属系フィラー;ステンレス、真鍮等の合金系フィラー;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銀、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等の金属酸化物系フィラー等が挙げられる。また、その他のフィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母(マイカ)、ベントナイト、シリカ、アルミニウムシリケート、バサルト繊維等が挙げられる。
また、当該樹脂組成物における導電付与材の含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、3〜12質量%であることがより好ましい。導電付与材の含有量が1質量%以上であれば充分な導電性能を得ることができ、15質量%以下であれば樹脂組成物は流動性を保持することができ高発泡の発泡体を得ることができる。
また、樹脂Iと樹脂IIとの合計量(樹脂全量)に対して、前記導電付与材を好ましくは1〜25質量%、より好ましくは1.5〜20質量%の割合で添加することにより、前記の効果を奏することができる。
本発明の樹脂発泡体を構成する樹脂組成物は、2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含むと共に、該導電付与材が多く含まれる樹脂相IIと、少なく含まれる樹脂相Iとからなっている。
[樹脂相I及び樹脂相II]
前記樹脂相IIに含まれる導電付与材の割合をA、前記樹脂相Iに含まれる導電付与材の割合をBとした場合、B/A(質量比)が0.02〜0.9の範囲にあることが好ましく、0.05〜0.5の範囲にあることがより好ましい。
このように、導電付与材が多く含まれる樹脂相IIを有することで、従来技術に対して、相対的に少ない導電付与材の量で同等の導電性能を付与することが可能となる。
樹脂相IIに含まれる導電付与材の質量をW1、樹脂相Iに含まれる導電付与材の質量をW2、樹脂相IIに含まれる樹脂IIの質量をW3、樹脂相Iに含まれる樹脂Iの質量をW4とすると、A=W1/W3、B=W2/W4で計算される。
本発明の樹脂組成物には、必須成分である前述した樹脂I、樹脂II及び導電付与材の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種の添加成分を含有させることができる。
この添加成分の種類は特に限定されず、発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、滑剤、収縮防止剤、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、上記導電付与材を除いた充填剤、補強剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、表面処理剤等が挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の樹脂の発泡・成形に用いられる添加量を採用できる。かかる添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
なお、これらの添加剤は、例えば前記滑剤と前記収縮防止剤を組み合わせて用いてもよい。例えば、ステアリン酸モノグリセリド等の滑剤と、エルカ酸アミド、ラウリン酸ビスアミド等の収縮防止剤を組み合わせて用いてもよい。
当該樹脂組成物の調製方法については、後述の樹脂発泡体の製造方法において説明する。
また、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物の他に、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム等のリン系難燃剤等が挙げられる。
難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ナトリウム、三塩化アンチモン、三硫化アンチモン、オキシ塩化アンチモン、二塩化アンチモンパークロロペンタン、アンチモン酸カリウム等のアンチモン化合物、メタホウ酸亜鉛、四ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、塩基性ホウ酸亜鉛等のホウ素化合物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物等が挙げられる。
本発明の樹脂発泡体を構成する樹脂組成物においては、前述したように樹脂相Iと樹脂相IIとが相分離して、海島構造を形成していることが好ましい。
本発明の樹脂発泡体は、導電付与材として、前述したように、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーン等を用いることにより、導電パス(導電ネットワーク)の形成が可能であるが、該導電パスを容易に形成し得る観点から、気泡構造は、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と半連続半独立気泡構造とが混在している気泡構造)が好ましく、独立気泡構造がより好ましい。特に、樹脂発泡体中に独立気泡構造部が好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上となっている気泡構造が好適である。
本発明の樹脂発泡体は、幅広い用途への適用が可能であるが、樹脂発泡体の体積固有抵抗率が108Ω・cm以下の場合、例えば、クリーンルーム内での使用も可能となる帯電防止性緩衝シール材等への適用が可能であり、また樹脂発泡体の体積固有抵抗率が105Ω・cm以下の場合、接触する電子部品の接地を行ない、静電気障害による誤作動を防ぐ導電性緩衝シール材等への適用が可能である。
例えば、本発明の樹脂発泡体において、樹脂発泡体の表面抵抗率を108Ω/□以下とすると、クリーンルーム内での使用も可能となる帯電防止性緩衝シール材等へより好適に適用することができる。また、樹脂発泡体の表面抵抗率を105Ω/□以下とすると、接触する電子部品の接地を行ない、静電気障害による誤作動を防ぐ導電性緩衝シール材等へより好適に適用することができる。
なお、樹脂発泡体の表面抵抗率は、JIS K 6271に記載されている二重リング電極法に基づいて測定される。
また、薄層加工を容易に可能にして微小なクリアランスへの運用性を向上させる点から、樹脂発泡体の厚さは、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。なお、樹脂発泡体の厚さは、通常、0.2mm以上であり、好ましくは0.3mm以上である。
本発明の樹脂発泡体では、柔軟性や衝撃吸収性の点から、発泡倍率は、好ましくは1.5〜50cm3/g、より好ましくは2〜40cm3/g、更に好ましくは4〜35cm3/gである。
本発明の樹脂発泡体は、導電付与材の含有量が少ないにもかかわらず、良好な導電性能を有し、かつ柔軟性に優れており、例えば導電材、衝撃吸収材、緩衝シール材、導電性緩衝シール材、防塵材、導電性防塵材等への適用が可能である。また、本発明の樹脂発泡体は、シート状やフィルム状の形状を有することが好ましい。
本発明の樹脂発泡体は、公知の化学発泡法又は物理的発泡法により製造することができ、製造方法に特に制限はないが、本発明の製造方法によれば効率的に本発明の樹脂発泡体を得ることができる。
本発明の樹脂発泡体の製造方法は、(a)導電付与材を、2種類の樹脂の内一方の樹脂IIに混練して樹脂組成物Iを調製する工程、(b)前記樹脂組成物Iと、もう一方の樹脂Iとを混練して、樹脂組成物IIを調製する工程、(c)前記樹脂組成物IIに物理発泡剤を含浸させて樹脂組成物IIIを調製する工程、及び(d)前記樹脂組成物IIIを発泡させて、樹脂発泡体を形成させる工程、を順次施すことを特徴とする。
(a)工程は、2種類の樹脂Iと樹脂IIの内、樹脂IIである熱可塑性エラストマーと、所定量の導電付与材とを混練して樹脂組成物Iを調製する工程であり、(b)工程は、上記(a)工程で得られた樹脂組成物Iと、もう一方の樹脂Iである熱可塑性樹脂の所定量とを混練して樹脂組成物IIを調製する工程である。
(c)工程は、上記(b)工程で得られた樹脂組成物IIに物理発泡剤を含浸させて樹脂組成物IIIを調製する工程である。
<物理発泡剤>
前記樹脂組成物IIに含浸させる物理発泡剤としては、セル径が小さく、かつセル密度の高い発泡体を容易に得ることができる点から、高圧の不活性ガスを用いることが好ましい。
本発明で用いられる不活性ガスとしては、前記樹脂I及びIIに対して不活性で、かつ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いる樹脂I及びIIへの含浸量が多く、含浸速度の速い二酸化炭素が好適である。また、不純物の少ないクリーンな樹脂発泡体を得る観点からも二酸化炭素が好ましい。
ここで、例えば、二酸化炭素の「超臨界状態」とは、圧力が二酸化炭素の臨界圧力以上であり、かつ温度が臨界温度以上である状態をいう。二酸化炭素を超臨界状態とするためには、温度40〜50℃、圧力7.38〜30MPa、特に8〜20MPとすることが好ましい。また、二酸化炭素の「亜臨界状態」とは、(i)圧力が二酸化炭素の臨界圧力(7.38MPa)以上であり、温度が二酸化炭素の臨界温度(31.1℃)未満である液体状態、(ii)圧力が二酸化炭素の臨界圧力未満であり、温度が臨界温度以上である液体状態、又は(iii)温度及び圧力が共に二酸化炭素又は窒素の臨界点未満ではあるがこれに近い状態をいう。より具体的には、二酸化炭素の場合、温度が20℃〜31℃で圧力が5MPa以上の状態が好ましい。
(d)工程は、上記(c)工程で得られた物理発泡剤を含浸してなる樹脂組成物IIIを発泡させて樹脂発泡体を形成させる工程である。
(d)工程の具体的な方法について、連続方式を例に挙げて説明すると、例えば以下のようにして樹脂発泡体を形成することができる。すなわち、樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら高圧の不活性ガスを注入し、十分にガスを樹脂中に含浸させた後、押し出して圧力を解放し(通常、大気圧まで)、発泡と成形とを同時に行い、場合によっては加熱することにより気泡を成長させる。気泡を成長させた後、冷水等により急激に冷却し、形状を固定化する。
不活性ガス(発泡剤としてのガス)の混合量は、特に制限されないが、発泡性や、小さな平均セル径を有する気泡構造を得る点から、樹脂組成物中の樹脂全量に対して好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜12質量%、更に好ましくは3〜10質量%である。
なお、実施例で得られた樹脂発泡体について、下記の評価を行った。
(1)体積固有抵抗率及び表面抵抗率
JIS K 6271に記載されている二重リング電極法に準じて、体積固有抵抗率及び表面抵抗率を測定した。抵抗値の測定には、株式会社三菱化学アナリック製の「ハイレスタUP MCP-HT450型」を使用した。
(2)見掛け密度
40mm・40mmの打抜き刃型にて発泡体を打抜き、打抜いた試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚さを測定する。これらの値から発泡体の体積を算出した。次に、発泡体の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値より発泡体の見掛け密度(g/cm3)を算出した。
(1)樹脂組成物Tペレットの作製
樹脂IIとしてエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)(JSR株式会社製、EP21)を90g、導電付与材としてカーボンナノチューブ(Hanwha Chemical社製、CM-250)を3g、酸化防止剤としてアデカスタブ SB-1002RGを1g混練機である3Lニーダー(株式会社モリヤマ製、DS3)に投入し、160℃、30rpmの条件にて20分間混練して樹脂組成物Tを調製し、さらに径3mm、長さ5mmのペレット状に加工した。
(2)樹脂発泡体の作製
二軸スクリュー押出機(株式会社テクノベル製、KZW)に、上記(1)で得たペレットを8000g、樹脂Iとして、ポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、プライムポリプロ(登録商標)E105GM)を2000g、その他にプラスチック用滑剤(アルフローH50T)を3gの割合で混合し、投入して溶融混練した。この押出機の途中から二酸化炭素を20MPaで圧入して混練した。押出機の先端に取り付けたT−ダイより、押出機で混練した樹脂組成物を押出し、幅約100mm、厚さ約3mmの樹脂発泡体を得た。上記押出機の運転条件は、1000g/h、150rpm、200℃、平均滞留時間20min、押出機の先端圧力22MPaであった。
このようにして得られた樹脂発泡体は、表面抵抗率が103Ω/□、見掛け密度が24cm3/gであった。
また透過型電子顕微鏡を用いた観察により、樹脂相II中には、導電付与材が約2.6質量%含まれており、樹脂相I中には導電付与材が約0.3質量%含まれていた。したがって、樹脂相IIに含まれる導電付与材の割合をA、樹脂相Iに含まれる導電付与材の割合をBとした場合、B/Aは0.11であった。
さらに走査型電子顕微鏡(SEM)により、樹脂発泡体を観察したところ、樹脂相Iと樹脂相IIは相分離し、海島構造を形成していることが確認された。
図2において、染色部(色の濃い部分)はEPDMの島相(樹脂相II)、その他はポリプロピレン樹脂の海相(樹脂相I)である。拡大写真からカーボンナノチューブはほぼEPDM中に分散していることが分かる。
2 導電付与材
3 発泡セル
Claims (15)
- 2種類の樹脂I及び樹脂IIと、導電付与材とを含む樹脂組成物からなる発泡体であって、該樹脂組成物が、該導電付与材が多く含まれる樹脂相IIと、少なく含まれる樹脂相Iとからなることを特徴とする樹脂発泡体。
- 樹脂相IIに含まれる導電付与材の割合をA、樹脂相Iに含まれる導電付与材の割合をBとした場合、B/A(質量比)が0.02〜0.9である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
- 導電付与材が少なく含まれる樹脂相Iにおける樹脂Iの含有量が、樹脂組成物全量に対して、25〜95質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂発泡体。
- 導電付与材の量が、樹脂Iと樹脂IIとの合計量に対して1〜25質量%であり、かつ樹脂組成物全量に対して、1〜15質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
- 樹脂相Iにおける樹脂Iが、融点80〜160℃の熱可塑性樹脂であり、樹脂相IIにおける樹脂IIが、23℃における貯蔵弾性率5〜40GPaの熱可塑性エラストマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体、ポリブテン及びポリメチルペンテンから選ばれる少なくとも一種のオレフィン系重合体であり、熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びアイオノマーから選ばれる少なくとも一種のエラストマーである、請求項5に記載の樹脂発泡体。
- 樹脂Iがポリプロピレン系樹脂であり、かつ樹脂IIがエチレン−プロピレン−ジエンゴムである、請求項6に記載の樹脂発泡体。
- 導電付与材が、得られる樹脂発泡体の体積固有抵抗率を1010Ω・cm以下にし得る導電材料である、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 導電付与材が、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンから選ばれる少なくとも一種である、請求項8に記載の樹脂発泡体。
- 前記樹脂組成物において、樹脂相Iと樹脂相IIとが相分離し、海島構造を形成してなる、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 体積固有抵抗率が5×108Ω・cm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 表面抵抗率が2×1012Ω/□以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 見掛け密度が1.5〜50g/cm3である、請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 樹脂組成物における、樹脂Iと樹脂IIとの合計含有量が60〜98質量%である、請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂発泡体。
- 請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法であって、(a)導電付与材を、2種類の樹脂の内一方の樹脂IIに混練して樹脂組成物Iを調製する工程、(b)前記樹脂組成物Iと、もう一方の樹脂Iとを混練して、樹脂組成物IIを調製する工程、(c)前記樹脂組成物IIに物理発泡剤を含浸させて樹脂組成物IIIを調製する工程、及び(d)前記樹脂組成物IIIを発泡させて、樹脂発泡体を形成させる工程、を順次施すことを特徴とする樹脂発泡体の製造方法。
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