JP2012214301A - 中空カーボン粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】中空カーボン粒子を、毒性の懸念がある樹脂の使用を必要とせず、また、複雑な製造工程を必要とせず、容易に作製することができる中空カーボン粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】重合性ビニル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆した後、不活性ガスの雰囲気下で焼成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、カーボン層の内側に中空部が形成された中空構造を有する中空カーボン粒子及びその製造方法に関する。
中空カーボン粒子の製造方法としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどの熱分解消失性ポリマーとポリアクリロニトリル系樹脂などの炭素前駆体ポリマーとからマイクロカプセルを作製し、このマイクロカプセルを焼成して作製する方法(下記の特許文献1参照)が知られている。
また、中空カーボン粒子の製造方法として、ポリアクリロニトリル又はその共重合ポリマーなどの液相炭素化可能材料とポリメタクリル酸メチルなどの易分解性ポリマーとからなる球状粒子を、該球状粒子の形状を維持するようにシリカゲルで被覆し、シリカゲルで被覆された球状粒子を窒素雰囲気下で加熱して前記球状粒子を炭素化し、その後、シリカゲルを水酸化ナトリウム水溶液で溶解除去する方法(下記の特許文献2参照)も知られている。
特開2003−48705号公報 特開2006−151797号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の方法は、炭素前駆体ポリマーとしてポリアクリロニトリル系樹脂などを用いている。ポリアクリロニトリル系樹脂は、炭化水素鎖上にシアノ基を有しているため、毒性の懸念がある。
また、上記特許文献2記載の方法では、シリカゲルで被覆する工程、及び球状粒子の炭素化の後にシリカゲルを水酸化ナトリウム水溶液で溶解除去する工程等が必要で、製造工程が複雑で手間のかかるものであるといった課題があった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、中空カーボン粒子を、毒性の懸念がある樹脂の使用を必要とせず、また、複雑な製造工程を必要とせず、容易に作製することができる中空カーボン粒子の製造方法及び該方法を使用して製造された中空カーボン粒子を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る中空カーボン粒子の製造方法(1)は、重合性ビニル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆した後、不活性ガスの雰囲気下で焼成することを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(1)によれば、含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆された樹脂粒子を焼成することにより、含窒素芳香族化合物に由来する重合体が炭素化してカーボン層を形成する一方、樹脂粒子が消失してカーボン層の内側に中空部を形成し、中空構造を有するカーボン粒子が生成する。上記方法では、重合性ビニル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子を用いるので、毒性の懸念があるポリアクリロニトリル系樹脂のような樹脂の使用を必要としない。また、上記方法では、樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆し、不活性ガスの雰囲気下で焼成するだけでよいので、複雑な製造工程を必要としない。したがって、中空カーボン粒子を、毒性の懸念がある樹脂の使用を必要とせず、また、複雑な製造工程を必要とせず、容易に作製することができる。
また、本発明の一形態に係る中空カーボン粒子の製造方法(2)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)または(2)において、前記含窒素芳香族化合物が、ピロールまたはピロール誘導体であることを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(2)によれば、含窒素芳香族化合物に由来する重合体の被覆層を安定して形成することができ、したがって、中空カーボン粒子のカーボン層を安定して形成できる。
また、本発明の一形態に係る中空カーボン粒子の製造方法(3)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)または(2)において、前記樹脂粒子の形状が、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状であることを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(3)によれば、外形が断面凹形状の中空カーボン粒子を製造することができる。
また、本発明の一形態に係る中空カーボン粒子の製造方法(4)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)または(2)において、前記樹脂粒子の形状が、キノコ状であることを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(4)によれば、外形がキノコ形状の中空カーボン粒子を製造することができる。
また、本発明の一形態に係る中空カーボン粒子の製造方法(5)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)または(2)において、前記樹脂粒子の形状が、半球状であることを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(5)によれば、外形が半球形状の中空カーボン粒子を製造することができる。
また、本発明の一形態に係る中空カーボン粒子の製造方法(6)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)または(2)において、前記樹脂粒子の形状が、両面凸レンズ状であることを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(6)によれば、外形が両面凸レンズ形状の中空カーボン粒子を製造することができる。
また、本発明の一形態に係る中空カーボン粒子の製造方法(7)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)〜(6)のいずれか1つにおいて、含窒素芳香族化合物に対して0.5〜2.0モル当量の無機過酸のアルカリ金属塩を含む水性媒体中に前記樹脂粒子を分散させて分散液とし、該分散液に含窒素芳香族化合物を添加し攪拌することによって、前記樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆することを特徴としている。
上記中空カーボン粒子の製造方法(7)によれば、前記樹脂粒子の表面全体を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で均一に被覆することができるので、均一な厚みのカーボン層を有する中空カーボン粒子を製造することができる。
また、本発明に係る中空カーボン粒子(8)は、上記中空カーボン粒子の製造方法(1)〜(7)のいずれか1つの製造方法により得られたものであることを特徴としている。
上記中空カーボン粒子(8)によれば、各種用途に適した種々の形状の中空カーボン粒子を提供することができる。
本発明の製造例に係る4つの異形樹脂粒子を示す概略説明図である。 本発明の実施例1により得られた真球状の中空カーボン粒子を示す電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例1により得られた真球状の中空カーボン粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例2により得られた真球状の中空カーボン粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例3により得られた半球状の中空カーボン粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例4により得られた両面凸レンズ状の中空カーボン粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例5により得られた断面凹形状の中空カーボン粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。
本発明に係る中空カーボン粒子の製造方法は、重合性ビニル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆した後、含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆された樹脂粒子(以下、被覆樹脂粒子と呼ぶ)を不活性ガスの雰囲気下で焼成する方法である。
本発明の製造方法に用いる重合性ビニル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子は、焼成時に熱分解して消失するものであれば特に限定されるものではない。
前記樹脂粒子は、球状の樹脂粒子(以下、球状樹脂粒子と呼ぶ)であってもよく、球状と異なる形状の異形の樹脂粒子(以下、異形樹脂粒子と呼ぶ)であってもよい。以下では、球状樹脂粒子の場合と異形樹脂粒子の場合とに分けて製造方法を説明する。
(I)球状樹脂粒子の製造
(重合方法)
まず、実施の形態に係る球状樹脂粒子の製造方法を述べる。
球状樹脂粒子を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合法、例えば塊状重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、懸濁重合等の方法が挙げられる。塊状重合の場合は、粉砕後、分級することで所望の粒径の樹脂粒子を得ることができる。乳化重合とは、水等の水性媒体と、媒体に溶解し難いモノマーと乳化剤(界面活性剤)とを混合し、そこに水性媒体に溶解可能な重合開始剤を加えて行う重合法をいう。乳化重合は、得られる粒子径のバラツキが少ないという特徴がある。ソープフリー乳化重合とは、乳化剤を用いない乳化重合をいい、均一径の粒子が得られるという特徴がある。シード重合とは、重合開始の際に別途作製した種(シード)粒子に重合性ビニル系単量体を吸収させて行われる乳化重合をいう。シード重合は、種粒子の粒子径、粒子径分布、及び量(個数)と種粒子に吸収させる重合性ビニル系単量体の量とを調整することで、所望の粒子径及び粒子径分布の樹脂粒子を狙って重合させることができるという特徴がある。懸濁重合とは、モノマーと水等の水性媒体(分散媒)とを機械的に攪拌して、懸濁させて行う重合方法をいう。懸濁重合は、粒子径が小さくかつ整った形状の粒子を得られるという特徴がある。
以下、シード重合を例に挙げて述べるが、本発明に係る樹脂粒子の製造方法は、何らこの重合方法に限定されるものではない。
まず、重合性ビニル系単量体と水性媒体とから構成される乳化液(懸濁液)に種粒子を添加する。乳化液は、公知の方法を用いて作製できる。例えば、重合性ビニル系単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機を使用して分散させることで、乳化液を得ることができる。ここでいう水性媒体としては、水、水と低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)との混合物等が挙げられる。また、種粒子の製造方法としては、特に限定されないが、乳化重合、ソープフリー乳化重合、懸濁重合等の方法を用いることができる。種粒子の粒子径の均一性や製造方法の簡便さを考慮すると、乳化重合及びソープフリー乳化重合が種粒子の製造方法として好ましい。種粒子の重量平均分子量は、重合開始剤の使用量の加減あるいは分子量調整剤の添加量の加減等により、調整することができる。
(重合性ビニル系単量体)
重合性ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸アルキルエステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等の芳香族ビニル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の飽和脂肪酸ビニル系単量体、アクロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン系カルボン酸、無水マレイン酸等のエチレン系カルボン酸無水物、モノブチルマレイン酸などのエチレン系ジカルボン酸のモノアルキルエステル、及びこれらのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩等のエチレン系カルボン酸塩類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のエチレン系カルボン酸の酸アミド類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メチロール化ジアセトンアクリルアミド及び、これらの単量体と炭素数1〜8個のアルコール類とのエーテル化物(例えば、N−イソブトキシメチルアクリルアミド)等のエチレン系カルボン酸アミド類のメチロール化物及びその誘導体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエチレン系カルボン酸とエポキシ基を有するアルコールとのエステル類、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート等のエチレン系カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のエチレン系カルボン酸とアミノ基を有するアルコールとのエステル類など、エチレン性不飽和結合を1個有する単量体、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の非共役性不飽和結合を有する単量体が挙げられる。
これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら重合性ビニル系単量体の中でも、1.5重量%以下の水(20℃)溶解度を有する疎水性の重合性ビニル系単量体がより均一な被覆膜を得られることから好ましい。1.5重量%以下の水(20℃)溶解度を有する疎水性の重合性ビニル系単量体の中でも、スチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルが特に好ましい。また、これら重合性ビニル系単量体の中で、アクリル酸アルキルエステル系単量体及びメタクリル酸アルキルエステル系単量体が好ましい。
重合性ビニル系単量体には、必要に応じて重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤は、重合性ビニル系単量体に予め混合された後、水性媒体中に分散されてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散されたものが混合されてもよい。乳化液中に存する重合性ビニル系単量体の液滴の粒子径は、種粒子よりも小さい方が、重合性ビニル系単量体が種粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
種粒子は、乳化液に直接添加されてもよく、種粒子が水性媒体に分散された形態で添加されてもよい。種粒子が乳化液へ添加された後、単量体は種粒子に吸収される。この吸収は、通常、種粒子添加後の乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間攪拌することにより行うことができる。また、単量体の吸収を促進するために、乳化液を30〜50℃程度に加温してもよい。
種粒子は、重合性ビニル系単量体を吸収することにより膨潤する。重合性ビニル系単量体と種粒子との混合比率は、種粒子1重量部に対して重合性ビニル系単量体が5〜300重量部の範囲であることが好ましく、100〜250重量部の範囲であることがより好ましい。重合性ビニル系単量体の混合比率が小さいと、重合による粒子径の増加は小さくなり、重合性ビニル系単量体の混合比率が大きいと、重合性ビニル系単量体が完全に種粒子に吸収されず、水性媒体中で独自に懸濁重合して、異常粒子が生成されることがある。なお、種粒子による重合性ビニル系単量体の吸収の終了は、光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定することができる。
重合開始剤は、必要に応じて添加される。重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アソビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2、2’−アゾビス(4−メトキシー2、4−ジメチルバレロニトリル、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4、4’−アソビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2、2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物等が挙げられる。重合開始剤は、重合性ビニル系単量体100重量部に対して、0.1〜1.0重量部の範囲で使用されることが好ましい。
次に、種粒子に吸収された重合性ビニル系単量体を重合させることにより、樹脂粒子を得る。重合温度は、重合性ビニル系単量体や重合開始剤の種類に応じて適宜選択することができる。重合温度は、具体的には、25〜110℃の温度範囲が好ましく、50〜100℃の温度範囲がより好ましい。また、重合時間は、1〜20時間とすることが望ましい。重合は、窒素雰囲気のような重合に対して不活性な不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。なお、重合反応は、種粒子に重合性ビニル系単量体及び重合開始剤が完全に吸収された後に、昇温して行わせるのが好ましい。
上記重合工程において、樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物が併用されてもよい。これらの高分子分散安定剤のうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、重合性ビニル系単量体100重量部に対して1〜10重量部の範囲が好ましい。
また、上記重合工程において水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
(II)異形の樹脂粒子の製造
次に、実施の形態に係る異形樹脂粒子の製造方法を述べる。
異形樹脂粒子は、種粒子に、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体を吸収させ、吸収させた重合性ビニル系単量体を重合させる、いわゆるシード重合法を採用することにより製造できる。
(異形樹脂粒子の形状)
本発明に用いる異形樹脂粒子は、種々の形状に作り分けることができる。例えば、異形樹脂粒子としては、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状(以下、断面馬蹄状と称する)、キノコ状、半球状あるいは両面凸レンズ状の形状を備えた樹脂粒子が挙げられる。
上記形状を図1(a)〜(d)を用いて説明する。
図1(a)は、断面馬蹄状の異形樹脂粒子を示す投影図であり、上図が投影面積が最大となる図を示し、下図が最小となる図を示している。投影面積が最大となる図における粒子の外形は円形となる。また、投影面積が最小となる図の粒子の外形は、切り欠き部の投影図に対応する凹部と扇形とが組み合わさった形状となる。ここで、断面馬蹄状の異形樹脂粒子は、凹部が、樹脂粒子の粒子径Aの0.1〜0.9倍の深さBを有し、かつ樹脂粒子の粒子径Aの0.1〜0.95倍の開口部の幅Cを有するものである。
図1(b)は、キノコ状の異形樹脂粒子を示す投影面積が最小となる場合の図を示している。この図に示すようなキノコ状またはそれに類似した形状の異形樹脂粒子は、傘部と軸部とからなると見做すことができる。キノコ状の異形樹脂粒子は、軸部の底の幅D1が、樹脂粒子の粒子径Aの0.1〜0.8倍であり、軸部の中間部の幅D2が、樹脂粒子の粒子径Aの0.2〜0.9倍であり、軸長さ方向の高さEが、樹脂粒子の粒子径Aの0.2〜1.5倍であるものである。
図1(c)は、半球状の異形樹脂粒子を示す投影図であり、上図が投影面積が最大となる場合を示す図であり、下図が最小となる場合を示す図である。ここで、半球状の異形樹脂粒子は、投影面積が最小となる半円状の図において、異形樹脂粒子の高さFが、樹脂粒子の粒子径Aの0.2〜0.8倍であるものである。
図1(d)は、両面凸レンズ状(碁石状)の異形樹脂粒子を示す投影図であり、上図が投影面積が最大となる円形状を示す図であり、下図が最小となる場合を示す図である。ここで、両面凸レンズ状の異形樹脂粒子は、投影面積が最小となる下図において、凸レンズの厚さH及びIが、樹脂粒子の粒子径Aの0.2〜0.8倍であるものである。
図1(a)〜(d)において、粒子径Aは、0.5〜30μmの範囲で設定することができる。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、0.5〜30μmの範囲で設定することができる。
なお、図1(a)〜(d)は、異形樹脂粒子の形状をわかりやすく説明するための形状を示す図であり、実際には若干の膨らみやへこみが存在している異形樹脂粒子も本発明に使用できる。また、上記以外にも、凹凸形状の異形樹脂粒子も本発明に使用できる。
上記異形樹脂粒子の形状は、原料の使用割合、重合条件等を適宜調製することにより、作り分けることができる。例えば、種粒子の組成、種粒子の重量平均分子量、種粒子に対する重合性ビニル系単量体の使用量、及びアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量を調整することにより形状を作り分けることができる。例えば、種粒子に対する重合性ビニル系単量体の使用量を増やすと、断面馬蹄状の異形樹脂粒子が得られやすい。また、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用しない場合、両面凸レンズ状の異形樹脂粒子が得られやすい。アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルを少量使用した場合、半球状の異形樹脂粒子が得られやすく、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用量を増やすと、断面馬蹄状の異形樹脂粒子が得られやすい。さらに、種粒子の分子量が低い場合、断面馬蹄状の異形樹脂粒子が得られやすい。種粒子の分子量を増やすと、半球状の異形樹脂粒子が得られやすく、種粒子の分子量をさらに増やすと、キノコ状の異形樹脂粒子が得られやすい。なお、(メタ)アクリルとは、メタクリルまたはアクリルを意味する。
(異形樹脂粒子製造用原料及び製造法)
以下、異形樹脂粒子製造用の原料及び製造法を説明する。
(1)種粒子
種粒子は、炭素数3以上6未満のアルキル基をエステル部に含む(メタ)アクリル酸エステル(炭素数3以上6未満のアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とが縮合したもの)を含む重合性ビニル系単量体に由来する樹脂粒子であることが好ましい。重合性ビニル系単量体は、炭素数3以上6未満のアルキル基をエステル部に含む(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含むことがより好ましい。このような重合性ビニル系単量体に由来する樹脂粒子は、非真球状(異形)粒子となり易い。この炭素数3以上6未満のアルキル基としては、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の分岐アルキル基が挙げられる。炭素数3以上6未満のアルキル基をエステル部に含む(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の単量体が挙げられる。これら単量体は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、分岐アルキル基(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基)を有する(メタ)アクリル酸エステルは、得られる樹脂粒子が非真球状(異形)の樹脂粒子となり易いため、好ましい。
種粒子の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定で、15万〜100万の範囲であることが好ましく、20万〜80万の範囲であることがより好ましい。種粒子の重量平均分子量が100万より大きい場合には、異形樹脂粒子が得られ難く、球状樹脂粒子が混入することがある。すなわち、重量平均分子量が100万より大きくなると、種粒子の単量体吸収能力が小さくなることがある。その結果、重合性ビニル系単量体が吸収されないまま独自に重合するために、目的の異形樹脂粒子とは異なる球状樹脂粒子が生成することがある。他方、種粒子の重量平均分子量が15万未満の場合には、種粒子と重合性ビニル系単量体との相分離が起こり難く、目的の異形樹脂粒子が得られ難くなる。
なお、種粒子の大きさ及び形状は、特に限定されない。種粒子には、通常0.1〜5μmの粒径の球状粒子が使用される。
(2)種粒子の製造法
種粒子の製造法は特に限定されないが、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができる。種粒子の製造法は、種粒子の粒子径の均一性や製造法の簡便性を考慮すると、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合が好ましい。
種粒子を製造するための重合は、分子量調整剤の存在下で行ってもよい。分子量調節剤としては、α−メチルスチレンダイマー;n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;t−テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等のような連鎖移動剤を使用できる。分子量調節剤は、種粒子製造用の重合性ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用することが好ましい。
(3)重合性ビニル系単量体
種粒子に吸収させて重合させる重合性ビニル系単量体は、架橋性単量体を含むことが好ましい。架橋性単量体としては、特に限定されず、公知の架橋単量体を何れも使用できる。架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等の、重合性ビニル基を1分子中に2つ以上有する多官能性単量体が用いられる。架橋性単量体の使用量は、重合性ビニル単量体全量に対して、5〜50重量%の範囲であることが好ましい。架橋性単量体の比率が5重量%未満や50重量%より大きい場合は、異形化が小さく球状に近い粒子が得られることがある。より好ましい架橋性単量体の使用量は、重合性ビニル単量体全量の10〜40重量%の範囲である。
必要に応じて、重合性ビニル系単量体は、架橋性単量体以外の他の単量体を含んでいることが好ましい。他の単量体としては、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;酢酸ビニル;アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、非真球状(異形)の粒子が得られやすいので、他の単量体として好ましい。そのようなアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
上記一般式中、R1はH又はCH3を示し、R2及びR3は異なってC24、C36,C48、及びC510から選択されるアルキレン基を示し、mは0〜50、nは0〜50(但しmとnとは同時には0にならない)であり、R4はH又はCH3を示している。
なお、式1の単量体において、mが50より大きい場合及びnが50より大きい場合、重合安定性が低下し、合着粒子が発生することがある。好ましいm及びnの範囲は0〜30であり、より好ましいm及びnの範囲は0〜15である。
アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、市販品を利用することができる。市販品として、例えば、日油社製のブレンマー(登録商標)シリーズが挙げられる。さらにブレンマー(登録商標)シリーズの中で、ブレンマー(登録商標)50PEP−300(R1はCH3であり、R2はC25、R3はC36、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)70PEP−350B(R1はCH3であり、R2はC25、R3はC36、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)PP−1000(R1はCH3であり、R3はC36、mは0、nは平均して4〜6の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)PME−400(R1はCH3であり、R2はC25、mは平均して9の混合物、nは0、R4はCH3である)等が適している。
上記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、重合性ビニル系単量体の全量に対し、0〜40重量%の範囲が好ましく、1〜40重量%の範囲がより好ましく、5〜30重量%の範囲がさらに好ましく、10〜20重量%の範囲が特に好ましい。上記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量が重合性ビニル系単量体の全量の40重量%を越えると重合安定性が低下し、合着粒子が多くなることがある。
(4)異形樹脂粒子の製造
異形樹脂粒子の製造は、種粒子に、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体を吸収させ、吸収させた重合性ビニル系単量体を重合させる、いわゆるシード重合を使用して行う。以下に、シード重合法の一般的な方法を述べるが、異形樹脂粒子の製造方法は、この方法に限定されるものではない。
まず、重合性ビニル系単量体と水性媒体とから構成される水性乳化液に種粒子を添加する。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、炭素数5以下の低級アルコール)との混合媒体などが挙げられる。
水性媒体には、界面活性剤が含まれる。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性イオン系界面活性剤のいずれをも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤のうち、重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
水性乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、重合性ビニル系単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機を用いて分散させることで、水性乳化液を得ることができる。重合性ビニル系単量体は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、重合性ビニル系単量体に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた水性乳化液中の重合性ビニル系単量体の液滴の粒子径は、種粒子よりも小さい方が、重合性ビニル系単量体が種粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
種粒子は、水性乳化液に直接添加してもよく、種粒子を水性分散媒体に分散させた形態で添加してもよい。
種粒子の水性乳化液への添加後、種粒子へ重合性ビニル系単量体を吸収させる。この吸収は、通常、種粒子添加後の水性乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間撹拌することで行うことができる。また、水性乳化液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
種粒子は、重合性ビニル系単量体の吸収により膨潤する。重合性ビニル系単量体と種粒子との混合比率は、種粒子1重量部に対して、重合性ビニル系単量体が、5〜150重量部の範囲であることが好ましく、10〜120重量部の範囲であることがより好ましい。重合性ビニル系単量体の混合比率が上記範囲より小さくなると、重合による粒子径の増加が小さくなることにより、生産性が低下する。重合性ビニル系単量体の混合比率が上記範囲より大きくなると、重合性ビニル系単量体が、完全に種粒子に吸収されず、水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することがある。なお、吸収の終了は、光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
水性乳化液には、重合開始剤を必要に応じて添加する。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、重合性ビニル系単量体100重量部に対して、0.1〜3重量部の範囲で使用することが好ましい。
次に、種粒子に吸収させた重合性ビニル系単量体を重合させることで、異形樹脂粒子が得られる。
重合温度は、重合性ビニル系単量体、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択する。重合温度は、25〜110℃の範囲であることが好ましく、50〜100℃の範囲であることがより好ましい。重合反応は、種粒子に単量体、重合開始剤が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、必要に応じて異形樹脂粒子を遠心分離して水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥、単離する。
上記重合工程において、異形樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を添加してもよい。
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。また、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、重合性ビニル系単量体100重量部に対して1〜10重量部の範囲が好ましい。
また、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
(III)被覆樹脂粒子の製造
本発明に用いる被覆樹脂粒子は、上記したシード重合法等による重合性ビニル系単量体の重合により得られた樹脂粒子(球状樹脂粒子あるいは異形樹脂粒子)を分散させた媒体中において含窒素芳香族化合物を重合することにより、含窒素芳香族化合物に由来する重合体の層を樹脂粒子の表面上に形成することで製造できる。
(含窒素芳香族化合物)
含窒素芳香族化合物としては、ピロール、アニリン、インドール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、及び、これらのアルキル置換体(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基での置換体)、ハロゲン置換体(例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基での置換体)、ニトリル置換体といった誘導体が挙げられる。これらの単量体は、単独で使用して、単独重合体とすることができ、あるいは2種類以上を併用して、共重合体とすることもできる。安定して被覆膜が形成されやすいことから、ピロール及びピロールの誘導体が含窒素芳香族化合物として好ましい。
含窒素芳香族化合物の添加量は、所望の被覆層の厚みなどに応じて設定すればよいが、樹脂粒子100重量部に対し、1〜30重量部の範囲であることが好ましく、3〜20重量部の範囲であることがより好ましい。含窒素芳香族化合物の添加量が樹脂粒子100重量部に対して1重量部より少ないと、樹脂粒子の表面全体が均一に含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆されず、所望の被覆層の厚みを得られない場合がある。一方、含窒素芳香族化合物の添加量が樹脂粒子100重量部に対して30重量部より多いと、添加した含窒素芳香族化合物が単独で重合し、目的とする被覆樹脂粒子以外のものができてしまう場合がある。
(含窒素芳香族化合物の重合)
含窒素芳香族化合物の重合としては、特に限定されるものではないが、酸化剤を含む水性媒体中で含窒素芳香族化合物を酸化重合する方法が好ましい。
したがって、本発明に用いる被覆樹脂粒子の製造方法としては、酸化剤を含む水性媒体中に前記樹脂粒子を分散させて分散液とし、該分散液に含窒素芳香族化合物を添加し攪拌することによって、前記樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆する方法が好ましい。含窒素芳香族化合物は、溶媒に溶解させて溶液とした状態で分散液に添加することが好ましい。前記溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類などを用いることができる。含窒素芳香族化合物は、酸化重合により、黒色に着色された重合体となる。
(酸化剤)
酸化重合に用いる酸化剤としては、特に限定されるものではないが、塩酸、硫酸、クロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、塩化第二鉄、塩化アルミニウムのような金属ハロゲン化物、過塩素酸カリウムのようなハロゲン酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素のような過酸化物が挙げられる。これらは単独または混合して使用してもよい。好ましい酸化剤としては、無機過酸のアルカリ金属塩が挙げられる。無機過酸のアルカリ金属塩としては、具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
無機過酸のアルカリ金属塩は、含窒素芳香族化合物全量に対して0.5〜2.0モル当量となるように用いることが好ましい。これにより、得られた被覆樹脂粒子は、表面全体が均一に含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆される。ここで、「均一」とは、樹脂粒子を覆う含窒素芳香族化合物に由来する重合体の層の厚さの振れが50%以下であることをいう。
無機過酸のアルカリ金属塩の使用量が含窒素芳香族化合物全量に対して0.5モル当量未満であると、樹脂粒子の表面全体が均一に含窒素芳香族化合物由来の重合体で被覆されず、均一な厚みのカーボン層を有する中空カーボン粒子を得られない場合がある。一方、無機過酸のアルカリ金属塩の使用量が含窒素芳香族化合物全量に対して2.0モル当量を超えると、添加した含窒素芳香族化合物が単独で重合し、目的とする被覆樹脂粒子以外のものができてしまう場合がある。好ましくは、1〜1.5モル当量である。
(水性媒体)
酸化重合に用いる酸化剤は、水性媒体に添加して用いる。水性媒体は、特に限定されるものではないが、水、又は、水と、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類との混合媒体が挙げられる。
酸化剤が添加された水性媒体は、3以上のpHを有することが好ましい。pHが3未満だと、樹脂粒子の表面全体が均一に含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆されず、所望の厚みのカーボン層を有する中空カーボン粒子を得られないことがある。安定な被覆を実現するには、pHを3〜10の範囲に調整することが好ましい。
また、水性媒体には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をいずれも使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、コハクスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して0.0001〜1重量部の範囲であることが好ましい。
また、水性媒体には、界面活性剤以外に、高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリアクリル酸、その共重合体及びこれらの中和物ならびにポリメタクリル酸、その共重合体及びこれらの中和物、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。高分子分散安定剤は、上述の界面活性剤と併用してもよい。
(酸化重合方法)
前述した酸化重合は、例えば、上記したシード重合法等により得られた樹脂粒子を分散させた分散液(乳化液または懸濁液)及び含窒素芳香族化合物を、無機過酸のアルカリ金属塩を含む水性媒体に添加して混合物を得、その混合物を攪拌して酸化重合する方法により、行うことができる。酸化重合の温度は、−20〜40℃の範囲が好ましい。また、酸化重合の時間は、0.5〜10時間の範囲が好ましい。被覆樹脂粒子が分散している分散液を、必要に応じて、遠心分離等により水性媒体を除去し、水や溶剤で洗浄した後、乾燥することにより、被覆樹脂粒子が得られる。
(IV)被覆樹脂粒子
被覆樹脂粒子は、樹脂粒子を覆う含窒素芳香族化合物に由来する重合体の層の厚さの振れが、50%以下であることが好ましく、40%以下であることが好ましい。
(V)中空カーボン粒子の製造
中空カーボン粒子は、被覆樹脂粒子を、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で焼成することにより得られる。不活性ガスの雰囲気下で焼成することによって、樹脂粒子が熱分解して消失する一方、含窒素芳香族化合物に由来する重合体が炭素化してカーボン層を形成し、中空カーボン粒子が生成する。樹脂粒子の熱分解及び含窒素芳香族化合物に由来する重合体の炭素化を良好に進行させるために、焼成温度は500〜1000℃の範囲であることが好ましく、焼成時間は、焼成温度にもよるが、30分〜2時間の範囲であることが好ましい。
本発明に係る製造方法により得られた中空カーボン粒子は、均一の厚みを有するものとすることが可能であり、また、種々の異形の形状をしたものとすることも可能であるので、各種用途に適している。本発明に係る製造方法により得られた中空カーボン粒子の代表的な用途としては、顔料、インクジェットプリンタ用のインク、電界放射ディスプレイ、リチウム電池、特定物質やガスの吸着体、燃料電池などのデバイスでの触媒の担体、各種ポリマーの導電付与材、帯電防止層を形成する塗布液、透明導電膜の導電フィラー、生体内での診断試薬、モニター試薬の指示材料等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例中の測定方法及び計算方法について説明する。
(種粒子の平均粒子径)
種粒子の平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製のLS230型により測定した。具体的には種粒子0.1gと0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mを投入し、ヤマト科学株式会社製タッチミキサーTOUCHMIXER MT−31で2秒間混合する。この後、試験管を市販の超音波洗浄器であるヴェルヴォクリーア社製ULTRASONIC CLEARNER VS−150を用いて10分間分散させる。分散させたものをベックマン・コールター株式会社製のLS230型にて超音波を照射しながら測定する。そのときの光学モデルは、作成した種粒子の屈折率にあわせて測定する。
(樹脂粒子の球換算体積平均粒子径の測定方法)
孔径50〜280μmの細孔に電解質溶液を満たし、当該電解質溶液を粒子が通過する際の電界質溶液の導電率変化から体積を求め、球換算体積平均粒子径を計算する。具体的には、測定した平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製のコールターマルチサイザーIIによって測定した体積平均粒子径である。なお、測定に際してはCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER (1987)に従って、測定する。粒子の粒子径に適合したアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
具体的には、市販のガラス製の試験管に粒子0,1gと0.1%ノニオン系界面活性剤溶液10mlを投入する。投入物を、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXER MT−31で2秒間混合した後、試験管を市販の超音波洗浄機である株式会社ヴェルヴォクリーア社製ULTRASONIC CLEANER VS−150を用いて10秒間予備分散させる。分散物を本体備え付けの、ISOTON II(ベックマン・コールター株式会社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次に、マルチサイザーII本体にアパチャーサイズ、Current、Gain、及びPolarityをCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER (1987)に従って入力し、manualで測定する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した点で測定を終了する。
(重量平均分子量の測定方法)
重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行う。重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。具体的には、以下のようにして重量平均分子量を測定する。
試料50mgをテトラヒドロフラン(THF)10ミリリットルに溶解させ、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上でゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定する。ゲルパーミエーションクロマトグラフの条件は、下記の通りとする。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ:東ソー株式会社製、商品名「ゲルパーミエーションクロマトグラフ HLC−8020」
カラム:東ソー株式会社製、商品名「TSKgel GMH−XL−L」φ7.8mm×30cm×2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:テトラヒドロフラン(THF)
キャリアーガス流量:1ミリリットル/分
注入・ポンプ温度:35℃
検出:RI
注入量:100マイクロリットル
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工株式会社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー株式会社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、870
(異形樹脂粒子の長さA〜Iの測定方法)
異形樹脂粒子の長さA〜Iは、以下のようにして測定する。
走査型電子顕微鏡JSM−6360LV(日本電子株式会社製)を用い、5,000〜10,000倍で任意の30個の異形樹脂粒子を観察し、各部位の寸法を測定してその平均値を長さA〜Iとした。
(種粒子合成例1)
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水600g、メタクリル酸メチル(MMA)100g、及び分子量調整剤としての1−オクタンチオール1.0gを仕込み、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空気を窒素で置換し、70℃に昇温させた。セパラブルフラスコの内部温度を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加し、8時間攪拌して重合反応を行った。この重合反応により、固形分14重量%を含有する乳化液が得られた。得られた乳化液から固形分を単離したところ、固形分は、平均粒子径0.4μm、重量平均分子量3万の真球状微粒子であった。
(種粒子合成例2)
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水600g、メタクリル酸メチル100g、及び分子量調整剤としてのn−ドデシルメルカプタン0.5gを仕込み、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空気を窒素で置換し、70℃に昇温させた。セパラブルフラスコの内部温度を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加し、8時間攪拌して重合反応を行った。この重合反応により、固形分14重量%を含有する乳化液が得られた。得られた乳化液から固形分を単離したところ、固形分は、平均粒子径0.4μm、重量平均分子量60万の真球状微粒子であった。
(種粒子合成例3)
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水600g、及びメタクリル酸メチル100gを仕込み、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空気を窒素で置換し、70℃に昇温させた。セパラブルフラスコの内部温度を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加し、8時間攪拌して重合反応を行った。この重合反応により、固形分14重量%を含有する乳化液が得られた。得られた乳化液から固形分を単離したところ、固形分は、平均粒子径0.43μm、重量平均分子量82万の真球状微粒子であった。
(種粒子合成例4)
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水550g、種粒子合成例1で得られた真球状微粒子14重量%を含有する乳化液70g、メタクリル酸メチル(MMA)100g、及び1−オクタンチオール1.0gを仕込み、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空気を窒素で置換し、70℃に昇温させた。セパラブルフラスコの内部温度を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加し、8時間攪拌して重合反応を行った。この重合反応により、固形分14重量%を含有する乳化液が得られた。得られた乳化液から固形分を単離したところ、固形分は、平均粒子径1.1μm、重量平均分子量3万の真球状微粒子であった。
(種粒子合成例5)
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水550g、種粒子合成例2で得られた真球状微粒子14重量%を含有する乳化液70g、メタクリル酸イソブチル100g、及びn−ドデシルメルカプタン0.3gを仕込み、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空気を窒素で置換し、70℃に昇温させた。セパラブルフラスコの内部温度を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加し、8時間攪拌して重合反応を行った。この重合反応により、固形分14重量%を含有する乳化液が得られた。得られた乳化液から固形分を単離したところ、固形分は、平均粒子径1.1μm、重量平均分子量61万の真球状微粒子であった。
(種粒子合成例6)
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水550g、種粒子合成例3で得られた真球状微粒子14重量%を含有する乳化液70g、及びメタクリル酸イソブチル100gを仕込み、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空気を窒素で置換し、70℃に昇温させた。セパラブルフラスコの内部温度を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加し、8時間攪拌して重合反応を行った。この重合反応により、固形分14重量%を含有する乳化液が得られた。得られた乳化液から固形分を単離したところ、固形分は、平均粒子径1.1μm、重量平均分子量83万の真球状微粒子であった。
(樹脂粒子製造例1)
攪拌機及び温度計を備えた5Lの反応器に、重合性ビニル系単量体としてメタクリル酸メチル(MMA)700g、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)300g、及び重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)6gを入れて混合した。得られた混合物と、界面活性剤としてコハクスルホン酸ナトリウム10gを含むイオン交換水1000gとを混合し、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)により8000rpmで10分間処理して水性乳化液を得た。この水性乳化液に種粒子合成例4で得られた真球状微粒子14重量%を含有する乳化液360gを攪拌しながら加えた。
3時間の攪拌後、水性乳化液を光学顕微鏡で観察したところ、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体が種粒子に吸収されていることを確認できた。その後、分散安定剤として、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製:PVA−224E)40gを溶解した水溶液2000gを反応器にさらに加え、60℃で6時間攪拌しながら重合させた。重合後の水性乳化液から樹脂粒子を単離した。得られた樹脂粒子(以下、樹脂粒子1という)の球換算体積平均粒子径は5.2μmであった。
(樹脂粒子製造例2)
攪拌機、温度計を備えた5Lの反応器に、重合性ビニル系単量体としてメタクリル酸メチル(MMA)700g、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)300g、及び重合開始剤として過酸化ベンゾイル6gを入れて混合した。得られた混合物と、界面活性剤としてコハクスルホン酸ナトリウム10gを含むイオン交換水300gとを混合し、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)により8000rpmで10分間処理して水性乳化液を得た。この水性乳化液に種粒子合成例1で得られた真球状微粒子14重量%を含有する乳化液360gを攪拌しながら加えた。
3時間の攪拌後、水性乳化液を光学顕微鏡で観察したところ、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体が種粒子に吸収されていることを確認できた。その後、75℃で6時間攪拌しながら重合させた。得られた樹脂粒子(以下、樹脂粒子2という)の球換算体積平均粒子径は1.0μmであった。
(樹脂粒子製造例3)
攪拌機、温度計を備えた5Lの反応器に、重合性ビニル系単量体としてメタクリル酸メチル(MMA)600g、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)300g、ポリ(エチレングリコーループロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名:ブレンマー(登録商標)50PEP−30/日油株式会社製)100g、及び重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル6gを入れて混合した。得られた混合物と、界面活性剤としてコハクスルホン酸ナトリウム10gを含むイオン交換水1000gとを混合し、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)により8000rpmで10分間処理して水性乳化液を得た。この水性乳化液に種粒子合成例5で得られた平均粒子径が1.1μmの真球状微粒子14重量%を含有する乳化液360gを攪拌しながら加えた。
3時間の攪拌後、水性乳化液を光学顕微鏡で観察したところ、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体が種粒子に吸収されていることを確認できた(膨潤倍率約20倍)。その後、分散安定剤として、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製:PVA−224E)40gを溶解した水溶液2000gを反応器にさらに加え、60℃で6時間攪拌しながら重合させた。得られた樹脂粒子(以下、樹脂粒子3という)は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、半球状の異形樹脂粒子(A=2.92μm、F=1.71μm)であった。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、2.60μmであった。
(樹脂粒子製造例4)
重合性ビニル系単量体としてメタクリル酸メチル(MMA)600g、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)300gを用い、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレートを使用しないこと以外は樹脂粒子製造例3と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子(以下、樹脂粒子4という)は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、両面凸レンズ状の異形樹脂粒子(A=2.88μm、H=1.27μm、I=0.64μm)であった。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、2.61μmであった。
(樹脂粒子製造例5)
膨潤倍率を約40倍とすること以外は樹脂粒子製造例3と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子(以下、樹脂粒子5という)は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹形状の異形樹脂粒子(A=3.45μm、B=1.15μm、C=1.74μm)であった。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、3.10μmであった。
(樹脂粒子製造例6)
種粒子合成例6で作製した真球状微粒子14重量%を含有する乳化液を使用すること以外は樹脂粒子製造例3と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子(以下、樹脂粒子6という)は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、キノコ状の異形樹脂粒子(A=3.26μm、D1=1.43μm、D2=1.87μm、E=1.80μm)であった。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、2.71μmであった。
(実施例1)
水300gに過硫酸カリウム20gを溶解させた溶液に、50gの樹脂粒子1をイソプロパノール50gに分散させた懸濁液(分散液)を添加して攪拌した。この懸濁液を5℃まで冷却し、ピロール10gとイソプロパノール50gとからなる溶液をさらに加え、3時間攪拌して重合させた。その後、濾過により固形分を得た。固形分を取り出し、水、イソプロパノールで洗浄し、真空乾燥機により60℃で12時間乾燥を行った。その結果、ピロールの重合体で樹脂粒子が被覆された黒色の樹脂粒子(被覆樹脂粒子)が得られた。
得られた黒色の樹脂粒子を窒素気流中、500℃で1時間焼成を行い、中空カーボン粒子としての黒色粒子を得た。この黒色粒子の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。また、この黒色粒子の透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。これらの写真から実施例1で得られた黒色粒子が中空構造を有する真球状の粒子であることがわかる。
(実施例2)
樹脂粒子1に代えて樹脂粒子2を用いた以外は実施例1と同様にして、中空カーボン粒子としての黒色粒子を得た。
この黒色粒子の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。この写真から実施例2で得られた黒色粒子が真球状の粒子であることがわかる。
(実施例3)
樹脂粒子1に代えて樹脂粒子3を用いた以外は実施例1と同様にして、中空カーボン粒子としての黒色粒子を得た。
この黒色粒子の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。この写真から実施例3で得られた黒色粒子が半球状の異形粒子であることがわかる。
(実施例4)
樹脂粒子1に代えて樹脂粒子4を用いた以外は実施例1と同様にして、中空カーボン粒子としての黒色粒子を得た。
この黒色粒子の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。この写真から実施例4で得られた黒色粒子が両面凸レンズ状の異形粒子であることがわかる。
(実施例5)
樹脂粒子1に代えて樹脂粒子5を用いた以外は実施例1と同様にして、中空カーボン粒子としての黒色粒子を得た。
この黒色粒子の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。この写真から実施例5で得られた黒色粒子が断面凹形状の異形粒子であることがわかる。
(実施例6)
樹脂粒子1に代えて樹脂粒子6を用いた以外は実施例1と同様にして、中空カーボン粒子としてのキノコ状の黒色粒子を得た。

Claims (8)

  1. 重合性ビニル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆した後、不活性ガスの雰囲気下で焼成することを特徴とする中空カーボン粒子の製造方法。
  2. 前記含窒素芳香族化合物が、ピロールまたはピロール誘導体であることを特徴とする請求項1記載の中空カーボン粒子の製造方法。
  3. 前記樹脂粒子の形状が、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空カーボン粒子の製造方法。
  4. 前記樹脂粒子の形状が、キノコ状であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空カーボン粒子の製造方法。
  5. 前記樹脂粒子の形状が、半球状であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空カーボン粒子の製造方法。
  6. 前記樹脂粒子の形状が、両面凸レンズ状であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空カーボン粒子の製造方法。
  7. 含窒素芳香族化合物に対して0.5〜2.0モル当量の無機過酸のアルカリ金属塩を含む水性媒体中に前記樹脂粒子を分散させて分散液とし、該分散液に含窒素芳香族化合物を添加し攪拌することによって、前記樹脂粒子の表面を含窒素芳香族化合物に由来する重合体で被覆することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の中空カーボン粒子の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により得られた中空カーボン粒子。
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