JP2012207177A - ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造条件を適正化して、安価かつ容易に、安定性に優れたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を製造できる方法、特に、形成される成形品の耐熱性及び耐久性が改善され、保存安定性も良好なポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を簡単な方法で効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】上流側より第一供給口と第二供給口をそれぞれ備えた二軸押出機を用いて、第一供給口よりポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を投入して溶融混練し、第二供給口より、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して3〜15重量部のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を水溶液として供給して、ポリアミド系ゴム弾性体を乳化させることを特徴とする、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法に関する。
高分子ゴム弾性体は、基本的には、軟質高分子構造を有するもの、又は硬質高分子部位と軟質高分子部位とを組み合わせた構造を有するものであり、常温でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性プラスチックと同様に可塑化することから機械的成形が可能であるため、幅広い工業分野で使用されている。代表的な高分子ゴム弾性体としては、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系などのゴム弾性体が挙げられる。これらの高分子ゴム弾性体は、通常、押し出し成形等の機械的操作により成形品が提供されるが、各種材料へのコーティグ剤、粘接着剤、バインダー、エマルジョン等の改質剤や繊維の収束剤等として用いる場合には、水性分散液での使用が望ましい。
高分子ゴム弾性体の水性分散液については、これまでに多くの検討がなされており、実用品としては、スチレン系ゴム弾性体の水性分散液が提供されている。スチレン系ゴム弾性体の水性分散液は、通常、スチレン系ゴム弾性体を有機溶媒に溶解した有機相と、乳化剤(界面活性剤)を水性媒体に溶解した水相とを混合し、これをホモミキサー等を用いて乳化した後に有機溶剤を除去して製造されている(下記特許文献1および2参照)。
この様に、スチレン系ゴム弾性体の水性分散液が実用化されているが、スチレン系ゴム弾性体の水性分散液により得られる成形品は、一般に、耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、耐候性等に劣るという欠点がある。
これに対して、ポリアミド系ゴム弾性体は、耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、耐候性等の特性に優れているだけではなく、透明性、柔軟性、衝撃強度、引張強度、耐薬品性、耐熱性等においても良好な特性を有する成形品を製造することができ、しかも、同硬度の他の高分子ゴム弾性体に比べて変形時の応力が大きいために成形品の薄肉化を達成できるという利点があり、例えば包装フィルム、自動車部品、スポーツ用品、医療器具等を得るための材料として有用な材料である。
このため、ポリアミド系ゴム弾性体について、水性分散液としての利用が望まれており、例えば、水性媒体と界面活性剤の存在下でポリアミド系ゴム弾性体を乳化分散することによって水性分散液とする方法が報告されている(特許文献3参照)。
しかしながら、ポリアミド系ゴム弾性体は、大きく分けて、ハードセグメント部分とソフトセグメント部分という熱可塑性が全く異なる成分の共重合体として構成されており、これに起因して、一般的なポリアミド樹脂の水性分散液と比較すると、水性分散液の静置安定性等が悪いという欠点がある。このため、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造においては、粒子径の制御等、製造条件の適正化等に注意を要する面がある。
熱可塑性樹脂の水性分散液の製造方法に関しては、連続的に安価かつ容易に水性分散液を製造できる方法として、二軸押出機を用いて水性分散液を作製する方法が報告されている(下記特許文献4参照)。
しかしながら、上記した通り、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液については、静置安定性等が悪いという問題点があり、二軸押出機を用いてポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を製造しようした場合に、製造条件の適正化が困難であり、安定性に優れた水性分散液を製造することは容易ではない。
更に、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液から形成される成形品の性能に関しては、耐熱性及び耐久性が劣るという欠点があり、加熱して成形する際に性能が低下して機械的特性が低下する他、長期間使用後に変色し、外観が損なわれるという懸念がある。このため、安定性に優れた水性分散液を効率良く製造できることに加えて、耐熱性、耐久性等についても改善された成形体を形成できる水性分散液の製造方法が望まれている。
特開昭51−23532号公報 特開2003−253134号公報 WO2000/020520号公報 特開平4−20532号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造条件を適正化して、安価かつ容易に、安定性に優れたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を製造できる方法を提供することであり、特に、形成される成形品の耐熱性及び耐久性が改善され、保存安定性も良好なポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を簡単な方法で効率よく製造できる方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成するために、連続的に効率よく水性分散液を製造可能な二軸押出機を用いて、安定性に優れ、耐熱性、耐久性などについても改善されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を製造できる方法について鋭意研究を重ねてきた。その結果、ポリアミド系ゴム弾性体の酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を用い、まず、ポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を同時に二軸押出機に供給して溶融混練することによって、溶融混練に要する加熱時間を短縮することができ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の機能を最大限に生かして、形成される成形品の耐熱性及び耐久性を向上させることが可能となることを見出した。そして、この方法でポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を溶融混練した後、ノニオン系界面活性剤であるエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を適正な濃度の水溶液として二軸押出機に供給することによって、安定性に優れた水性分散液を得ることができ、更に、この方法で得られた水性分散液に対して希釈水を添加することによって、ポリアミド系ゴム弾性体の粒子同士の凝集を抑制して、水性分散液の安定性をより向上させることができ、保存安定性に優れ、形成される成形品の耐熱性及び耐久性が良好な、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得ることが可能となることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に研究を重ねた結果、完成されたものである。
即ち、本発明は、下記のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法を提供するものである。
項1. 上流側より第一供給口と第二供給口をそれぞれ備えた二軸押出機を用いて、第一供給口よりポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を投入して溶融混練し、第二供給口より、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して3〜15重量部のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を水溶液として供給して、ポリアミド系ゴム弾性体を乳化させることを特徴とする、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
項2. 第二供給口よりエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を供給して、ポリアミド系ゴム弾性体を乳化させた後、第二供給口より下流側で希釈水を添加する操作を含む上記項1に記載のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
項3. ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量が、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して0.1〜12重量部である上記項1又は2に記載のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
項4. ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
以下、本発明のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法について詳細に説明する。
(1)製造装置
本発明では、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造に用いる製造装置として二軸押出機を用いる。二軸押出機を用いて、後述する方法で水性分散液を製造することによって、連続的に効率よく安定性に優れた水性分散液を製造できる。
二軸押出機としては、ポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を供給するための第一供給口と、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を供給するための第二供給口を第一供給口の下流側に備えた二軸押出機を用いる。
二軸押出機における第一供給口と第二供給口については、二軸押出機のシリンダー長さを100とした際に、第一の供給口は上流側の先端から0〜15%の長さの位置に設置され、第二の供給口は、上流側の先端から25〜50%の長さの位置に設置されることが望ましい。なお、二軸押出機のシリンダー長さは、800mm程度以上あるものが望ましい。
二軸押出機の構造としては、特に限定されないが、2本のスクリューがシリンダー内に取り付けられていることが特徴である。2本の軸が平行なものやコニカルタイプのスクリューが軸を斜交させたもの、スクリューフライトのかみ合い型と非かみ合い型、スクリュー回転方向が同方向のもの、異方向のもの等があるが、いずれも運転条件を調整することにより、好適に使用することができる。
図1に、本発明で用いる二軸押出機装置の一例を示す。図中には、二軸押出機のスクリューのパターンの一例が示されており、スクリューのパターンは、各ディスクの組み合わせにより、送り部、分散部、混練部の3種類に大別される。送り部は、主に樹脂の移送、分散部は、主に水中での樹脂の分散、混練部は、高剪断力により、樹脂を練りこむ機能を持っている。
二軸押出機のL/Dは、20以上約60未満が好ましく、30以上60未満がより好ましく、40以上60未満が最も好ましい。ここでL/Dとは、押出機のスクリューの長さ[L]をスクリューの直径[D]で割った値である。
(2)原料の供給
本発明のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法では、原料としてポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を用い、これらの原料を第一供給口から二軸押出機に供給する。以下、まず、これらの原料について具体的に説明する。
(i)ポリアミド系ゴム弾性体
原料として用いるポリアミド系ゴム弾性体の種類については特に限定されないが、例えば、ポリアミドブロックを有する硬質高分子部位とポリエーテルブロックを有する軟質高分子部位を組み合わせた構造を有するものを用いることができる。
ポリアミドブロックの構成成分としては、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム等のラクタム化合物;ω―アミノカプロン酸、ω―アミノエナント酸、ω―アミノカプリル酸、ω―アミノペルコン酸、ω―アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸化合物;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン化合物とシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸化合物との塩などを挙げることができる。これらの構成成分は2種以上のものが含まれていてもよい。
ポリエーテルブロックの構成成分としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等のグリコール化合物などを挙げることができる。これらの構成成分は2種以上のものが含まれていてもよい。
上述のようなポリアミド系ゴム弾性体の具体例としては、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの結合部の分子構造、すなわち結合形態が異なる数種類のものがあり、例えば、「(ポリアミドブロック)−CO−NH−(ポリエーテルブロック)」の結合形態を有するポリエーテルブロックアミド共重合体、「(ポリアミドブロック)−CO−O−(ポリエーテルブロック)」の結合形態を有するポリエーテルエステルブロックアミド共重合体等を挙げることができる。
ポリアミド系ゴム弾性体は、市販されているものを用いてもよいし、あるいは適宜製造したものを用いてもよい。ポリアミド系ゴム弾性体を製造する方法としては、例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物およびジアミン化合物のうちの少なくとも1種とジカルボン酸とを反応させて実質的に両末端がカルボキシル基であるポリアミドブロックを調製した後、このポリアミドブロックにポリエチレンオキシドグリコール等のグリコール化合物若しくはポリエーテルジアミン等のジアミン化合物を添加して加熱することで反応させる方法等を挙げることができる。
本発明で用いるポリアミド系ゴム弾性体の融点については、特に限定されないが、例えば、100〜220℃程度であることが好ましく、120℃〜160℃程度であることがより好ましい。
本発明で用いるポリアミド系ゴム弾性体の相対粘度は特に限定されないが、例えば、メタクレゾール中(ポリマー濃度0.5重量%)、25℃で測定した相対粘度が1〜7程度であることが好ましく、1.5〜5程度であることがより好ましい。
該ポリアミド系ゴム弾性体の溶融粘度は特に限定されないが、例えば、MFR(メルトフローレイト、190℃、2160g荷重)が5〜1000g/10min程度であることが好ましく、10〜50g/10min程度であることがより好ましい。
(ii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
本発明では、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いる。ポリアミド系ゴム弾性体をヒンダードフェノール系酸化防止剤と組み合わせて用いることによって、形成される成形品の耐熱性及び耐久性を向上させることが可能となり、長時間加熱後にも、引張強度、伸び等の機械的特性が良好に維持され、長時間使用後もほとんど変色せず、機械的特性も良好となる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用でき、その具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチ−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス[メチレン−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン等を挙げることができる。これの成分は1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらの内で、特に、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)および1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチ−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましい。
更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と他の酸化防止剤とを併用することによって、耐熱性および耐変色性をより向上させることができる。他の酸化防止剤としては、硫黄系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などを挙げることができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量については特に限定されないが、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して0.1〜12重量部程度とすることがましく、0.2〜8重量部程度とすることがより好ましく、1〜5重量部程度とすることが更に好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量が多すぎる場合には、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を製造する際の乳化が不安定になり、ポリアミド系ゴム弾性体の粒子がやや大きくなる可能性がある。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量が少なすぎる場合には、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液から製造される成形品の耐熱性や耐着色性が劣り、機械的特性が劣る可能性があるので好ましくない。
(iii)原料供給方法
ポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を供給する方法については特に限定されず、目的とする混合比に応じた量で第一供給口より両者を供給すればよい。例えば、第一供給口の上部に設置されたホッパーを通して、定量フィーダーによりそれぞれ定量的に供給すればよい。
(3)溶融混練操作
二軸押出機の第一供給口から供給されたポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤は、二軸押出機の溶融ゾーンにおいて混練、加熱され、また、スクリューによって高剪断力を加えられることにより軟化し、溶融される。
ポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を溶融するための加熱温度は、ポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤の軟化点、融点、溶融粘度等を考慮して設定されるが、使用するスクリューのパターンにより、設定温度を微調整する必要がある。すなわち、混練が弱く、スクリューによって高い剪断力を加えることができないスクリューのパターンの場合にはやや加熱温度を高めに設定し、一方、混練が強く、スクリューによって高い剪断力を加えることができるスクリューのパターンの場合、やや加熱温度を低めに設定することが望ましい。
二軸押出機を用いることによって溶融混練するための加熱時間を短くすることができ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の性能を十分生かして、耐熱性、耐久性に優れた成形品を得ることが可能となる。
(4)界面活性剤の添加
次いで、上記(3)項の操作によって溶融混練されたポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤からなる原料に対して、第二供給口からエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を水溶液として供給し、混練、乳化ゾーンにおいて強制混練する。これによりポリアミド系ゴム弾性体が乳化され、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が得られる。
この工程では、上記(3)項の操作によって溶融混練されたポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物に対して、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を水溶液として添加することが必要であり、これによって、乳化が安定となり、得られる製品中に未乳化の凝集物が発生することを抑制できる。
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液を第二供給口より供給する方法については特に限定はなく、例えば、プランジャーポンプなど定量的に移送が可能な装置を用いて供給すればよい。
第二供給口より供給されるエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は、下記一般式(1)で表される化合物である。
HO(CH2CH2O)p(CH2CH(CH3)O)q(CH2CH2O)rH …(1)
一般式(1)において、p、qおよびrは、それぞれ付加モル数を示し、pは2〜300の整数、qは10〜150の整数、rは2〜300の整数を示している。これらは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは3,000〜30,000程度、より好ましくは6,000〜25,000程度、特に好ましくは8,000〜20,000程度である。また、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体中のエチレンオキシドの含有割合は、特に限定されないが、好ましくは40〜95重量%程度、より好ましくは45〜90重量%程度、特に好ましくは50〜85重量%程度である。
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量は、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して、3〜15重量部程度とすることが好ましく、5〜13重量部程度とすることがより好ましく、7〜11重量部程度とすることが更に好ましい。エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量が少なすぎる場合には、安定な水性分散液が得られない可能性がある。一方、使用量が多すぎると、乳化が容易になり、安定な水性分散液が得られるが、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を用いて形成される成形品において、ポリアミド系ゴム弾性体により期待できる各種物性が損なわれる可能性があり、特に、成形品の耐熱性、耐久性等の機械的特性が悪くなる懸念がある。
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液の濃度は、特に限定されないが、使用するエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の水に対する溶解性および溶解した際の粘度を考慮して設定される。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の水溶液を25℃にてB型回転式粘度計(米国のブルックフィールド社により開発された製品)で回転数20rpmで測定した時の粘度が1〜100,00mPa・sを与える濃度の水溶液が好適に使用され、20〜5000mPa・sのものがより好適に使用される。
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液の濃度が低い場合、すなわち水の使用量が多いと粘度が低くなりすぎ、ポリアミドゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤との混練、強制乳化の際、これらの混合物とスクリューの間でスリップが起こり、充分な混練ができず、乳化がうまくいかないおそれがある。
従って、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を水溶液とした際の粘度を考慮し、移送に問題がない範囲で、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液の濃度を高くするほうが望ましい。
この操作で得られるポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の固形物濃度は、特に限定されないが、50重量%以上、80重量%未満が好ましく、55重量%以上、75重量%未満がより好ましく、60重量%以上、70重量%未満が特に好ましい。ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の分散濃度が低すぎる場合には、混合物とスクリューの間でスリップが起こり、充分な混練ができず、乳化がうまくいかないおそれがある。また、濃度が高すぎる場合には、乳化がうまくいかないおそれがあることに加え、分散されない未乳化物が排出口(ダイ穴)に少しずつ溜まっていき、二軸押出機から排出時の吐出圧が安定しない懸念もある。
(5)希釈水の添加
上記(4)項の操作で得られたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液に希釈水を添加する。希釈水を添加することによって、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の分散濃度を低くして、ポリアミド系ゴム弾性体の粒子同士の凝集を抑制し水性分散液の安定性を向上させることができる。更に、二軸押出機内で高温で溶融、乳化されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の冷却を加速することもできる。
ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液に希釈水を添加する方法について特に限定されず、第二供給口より下流側で二軸押出機内に直接希釈水を添加する方法;ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が、二軸押出機の出口(ダイ部分)を通して二軸押出機の外へ排出された後に添加する方法などが挙げられる。
特に、未乳化物の生成を抑え、二軸押出機からのポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の吐出を安定化させる観点から、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が二軸押出機の出口(ダイ部分)を通して二軸押出機の外へ排出された後に希釈水を添加することが好ましい。
希釈水は、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液に60〜100℃程度の温度において添加することが好ましく、75〜95℃程度の温度において添加することがより好ましく、80〜90℃程度の温度において添加することが更に好ましい。
希釈水を添加する際の水性分散液の温度が高すぎる場合には、希釈水が気化し、希釈水の均一混合を行うことが難しくなり、未乳化物が増え、その結果、得られるポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の粒子径が大きくなる恐れがある。一方、希釈水を添加する際の水性分散液の温度が低すぎると、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の粒子が再凝集し、得られるポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の粒子径が大きくなるおそれがある。
本発明のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法においては、水性分散液が二軸押出機の外へ排出された時点からポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の冷却が早いほど、粒子の再凝集を抑制できるという点で好ましい。
二軸押出機の外へ排出されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の冷却は、特に限定されないが、通常、冷却管等の冷却設備を用いて行なわれる。
希釈水を投入後のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の固形物濃度は、特に限定されないが、20〜45重量%程度が好ましい。固形物濃度が高すぎる場合には、粒子径が小さな良好な水性分散液が得られないおそれがあり、一方、固形物濃度が低すぎると、粒子径が小さな良好な水性分散液が得られるものの、生産性が悪く実用性を欠く可能性がある。
以上の方法によりポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が得られる。
(6)ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液
上記した方法で得られるポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液は、分散されたポリアミド系ゴム弾性体の粒子の平均粒子径が小さく、保存安定性が優れており、通常、平均粒子径は0.1〜5μm程度となる。この場合、平均粒子径が小さ過ぎると、水性分散液の静置安定性は高まるが、粘度が高くなるため、取扱い、特に、成形品の製造が困難になる可能性がある。一方、平均粒子径が大きすぎる場合には、水性分散液の静置安定性や機械的安定性が低下する可能性がある。なお、この平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定法によるものである。
本発明の方法で得られたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液は、上記した通り、粒子径が小さく保存安定性が優れるという本来持つべき機能を充分に満たしている上に、酸化防止剤として特定量のヒンダードフェノール系酸化防止剤を用い、上記(3)項に記載した操作で比較的短時間で均一に溶融、混練したことにより、酸化防止剤の機能を最大限に生かして、ポリアミド系ゴム弾性体から得られる成形品の耐熱性および耐久性が大きく向上している。
この様な優れた性能を有する本発明の方法で得られたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液は、例えば、基材へ塗布したり、型枠内へ流し込んだりして乾燥すると(すなわち、水分を除去すると)、酸化防止剤とポリアミド系ゴム弾性体とを含む皮膜状、フィルム状、シート状等の各種の形態の成形品になる。この際、乾燥時の温度は、特に限定されないが、通常、40〜200℃に設定するのが好ましい。
本発明の製造方法によれば、連続的に効率よく水性分散液を製造することが可能な二軸押出機を用いて、粒子径が小さく保存安定性に優れたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得ることができる。また、該水性分散液から形成される成形品は、耐熱性及び耐久性に優れたものとなり、長時間加熱後も引張強度、伸び等の機械的特性が優れる他、長期間使用後もほとんど変色をせず、機械的特性も良好である。
このため、本発明方法で得られたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液は、包装フイルム、自動車部品、スポーツ関連製品、医療器具等を製造するための素材;衣料材料、カーペットおよびエアーバッグなどに用いられるナイロン繊維やポリエステル繊維等のコーティング剤;紙、フィルム等のコーティング剤やガスバリア剤;フォームラバー用原料;合成繊維、天然繊維、ガラス繊維等の繊維材料の収束剤;ホース、チューブ、ベルト、ガスケット、パッキング等の製造用原料などとして、広い用途において活用することができる。
本発明方法で用いる二軸押出機の一例を模式的に示す図面である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
二軸押出機(株式会社 池貝製PCM−30、L/D=41.5、シリンダー長さ1260mm)の上流側の先端から80mmの位置に設けられた第一供給口に2つのホッパーを設置し、それぞれからポリエーテルブロックアミド共重合体((宇部興産株式会社製の商品名“UBESTAXPA9048X1”:融点152℃、相対粘度2.0、MFR30g/10min(190℃、2160g荷重)))を40kg/hrで、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製の商品名“イルガノックス259”)を1.6kg/hrで投入した。
これらの投入した原料を、二軸押出機の上流側の先端から480mmの位置に設けられた第二供給口まで、シリンダー温度180℃、回転数450rpmで溶融混練した後、プランジャーポンプを用いて、第二供給口から25℃でエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)の14重量%水溶液(粘度65mPa・s)を28kg/hrで供給した。
シリンダー温度180℃、回転数450rpmの条件のまま、二軸押出機の出口(ダイ部分)手前まで、混練、乳化を行なった後、ダイ部分(ダイ温度100℃)を通して、二軸押出機より排出させた。排出されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の温度が88℃に下がったところで、プランジャーポンプを用いて、25℃の希釈水を28kg/hrで供給した後、冷却管(長さ90cm×直径1.3cm×8本、冷媒;5℃)を通して45℃まで冷却した後、室温まで放冷した。この運転を2時間行い、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例2
シリンダー温度を180℃に代えて160℃としたこと以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例3
14重量%のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)水溶液に代えて、7.0%重量%のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液(粘度5.2mPa・s)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例4
14重量%のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)水溶液の供給速度を37kg/hrに変更した点を除いて、実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例5
実施例1に記載の二軸押出機の上流側の先端から720mmの位置と960mmの位置にそれぞれ希釈水の投入口を設置した。
実施例1において、二軸押出機より排出されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液に希釈水を供給する方法に代えて、上記2箇所の希釈水の投入口から、25℃の希釈水を14kg/hrで供給した点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例6
実施例1において、ダイから排出されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液に希釈水を供給した後、冷却管を通して冷却する方法に代えて、ダイから排出されたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を65℃になるまで放冷した後、25℃の希釈水を28kg/hrで供給し、これ以外は実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例7
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]に代えて、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](住友化学株式会社製の商品名“スミライザーBP101”)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例8
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]に代えて、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(BASFジャパン株式会社製の商品名“イルガノックス1098”)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例9
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]に代えて、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASFジャパン株式会社製の商品名“イルガノックス1330”)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例10
実施例1において、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]の投入量を1.6kg/hrとしたことに代えて0.06kg/hrとしたこと以外は実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
実施例11
実施例1において、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] の投入量を1.6kg/hrとしたことに代えて、4.0kg/hrとしたこと以外は実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
比較例1
14重量%の%エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)に代えて、4.0重量%のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液(粘度2.4mPa・s)を用いた点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
比較例2
14重量%のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)水溶液の供給速度を、49kg/hrに変更した点を除いて実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
比較例3
実施例1に記載の二軸押出機の上流側の先端から80mmの位置に設けられた第一供給口に3つのホッパーを設置し、それぞれからポリエーテルブロックアミド共重合体((宇部興産株式会社製の商品名“UBESTAXPA9048X1”:融点152℃、相対粘度2.0、MFR30g/10min(190℃、2160g荷重)))を40kg/hrで、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製の商品名“イルガノックス259”)を1.6kg/hrで、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)を3.92kg/hrで投入した。二軸押出機の上流部から480mmの位置にある第二供給口から、希釈水を24.08kg/hrで供給した。以降、実施例1と同様に操作し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
参考例
直径250mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積200リットルの耐圧オートクレーブ中に、ポリエーテルブロックアミド共重合体(宇部興産株式会社製の商品名“UBESTAXPA9040F1”:融点140℃)42kg、脱イオン水57.2kg、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(旭電化株式会社の商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)4.1kgおよび1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製の商品名“イルガノックス259”)1.7kgを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し、200rpmの回転数で撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに30分間撹拌した後、内容物を室温まで冷却し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
性能評価
実施例1〜11および比較例1〜3、及び参考例で得られたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液について、凝集物量および平均粒子径を測定した。また、それぞれの水性分散液から成形皮膜シートを作成し、得られた成形皮膜シートの耐熱性を評価した。結果を下記表1に示す。
(凝集物量)
各水性分散液10kgを80cm×80cmのニップ網(PE80目;開目261μm)を用いてろ過を行なった後、ニップ網上に残った凝集物を含んだまま、網ごとSUS製バット(面積;30cm×25cm)に移して、凝集物を均一に薄く広げた。
次に、熱風乾燥機に入れ、80℃で5時間乾燥を行なった後、凝集物を回収して重量を測定し、水性分散液100重量部に対する凝集物重量を測定した。
ここで、凝集物量が3重量%未満であれば、生産性は良好と判断することができ、さらに凝集物量が1重量%未満であれば、生産性は優秀と判断することができる。
この値は、本発明のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法の実用性を示すものでもある。すなわち、平均粒子径が小さくても、凝集物量が3重量%超であれば、非常に生産性が悪いといえる。また、凝集物量が多い場合、二軸押出機を長時間運転していると、水性分散液を排出する際、吐出が安定しない上に排出口(ダイ穴)が閉塞するおそれもある。
(平均粒子径)
凝集物量を測定時、ニップ網でろ過して得られたろ液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製の商品名“SALD-2000J”)を用いて分散粒子の平均粒子径を測定した。
(耐熱性:長時間加熱した成形皮膜シートの引張強度、伸度)
各水性分散液100gをSUS製バット(面積;30cm×25cm)に入れ、均一になるように薄く広げた後、熱風乾燥機に入れ、50℃で36時間乾燥した。さらに、バットを真空乾燥機に移動し、80℃(減圧度;0.1MPa)で6時間乾燥させ、ポリアミド系ゴム弾性体の固形物を得た。得られたポリアミド系ゴム弾性体の固形物25gを、厚さ1mm、一辺長さ15cm正方形の金型に入れた後、加熱温度180℃に設定した油圧プレス機(二名工機株式会社製)で3分間(ポリアミド系ゴム弾性体の固形物に対する圧力;4.9MPa)プレスを行うことで、1mmの厚みの成形皮膜シートを作成した。
次に、得られた成形皮膜シートの熱老化試験を行うため、成形皮膜シートを熱風乾燥機に入れ、120℃400時間加熱した。
得られた成形皮膜シートを7号ダンベルで打ち抜き、オートグラフ(島津製作所の商品名“AGS−J”)を用いて、引張速度200mm/minの条件で強度と伸度を測定した(JIS K6251準拠)。なお、引張強度が、15MPa以上であると強度に優れていると判断できる。また、伸度が、400%以上であると柔軟性に優れていると判断できる。
Figure 2012207177
表1から明らかなように、本発明の製造方法で得られたポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液は、分散粒子の粒子径が小さく、静置安定性に優れたものであり、当該水性分散液から得られる成形品は耐熱性が良好で引張強度、伸び等の機械的特性が優れたものである。
これに対して、使用するエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の水溶液の濃度が低く、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の供給量が少ない比較例1の方法では、水性分散液における平均粒子径が大きく、静置安定性が劣るものとなった。また、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体水溶液の供給量が多い比較例2の方法では、成形品の耐熱性が劣り、引張強度、伸び等の機械的特性が劣るものとなった。また、ポリアミド系ゴム弾性体、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を同時に供給し、溶融混練した後、水を添加した比較例3の方法では、水性分散液の製造時に凝集物が多量に発生した。
一方、実施例1及び実施例2と同様の原料配合で耐圧オートクレーブを用いて作製した参考例の水性分散液と比較した場合に、二軸押出機を用いて得られた実施例1及び2の水性分散液から得られた成形品は、引張強度、伸び等の機械的特性の点で同等もしくはそれ以上の性能を有するものであった。
従って、本発明の製造方法によれば、二軸押出機という連続的に安価かつ容易に水性分散液を製造できる製造装置を用いて、優れた性能を有するポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を製造できることが明らかである。

Claims (4)

  1. 上流側より第一供給口と第二供給口をそれぞれ備えた二軸押出機を用いて、第一供給口よりポリアミド系ゴム弾性体とヒンダードフェノール系酸化防止剤を投入して溶融混練し、第二供給口より、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して3〜15重量部のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を水溶液として供給して、ポリアミド系ゴム弾性体を乳化させることを特徴とする、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
  2. 第二供給口よりエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を供給して、ポリアミド系ゴム弾性体を乳化させた後、第二供給口より下流側で希釈水を添加する操作を含む請求項1に記載のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
  3. ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量が、ポリアミド系ゴム弾性体100重量部に対して0.1〜12重量部である請求項1又は2に記載のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
  4. ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液の製造方法。
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