以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、本発明に係る第1の実施形態に従った暖房便座装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図である。暖房便座装置100は、トイレルーム105内に設置されており、衛生装置の一例として暖房便座装置100と、便器120とを備えている。暖房便座装置100は、遠隔操作装置(リモートコントローラ)130と、便座140と、センサ部150と、制御部210とを備えた暖房便座装置である。便座140は、加熱部としてのヒーター142を内蔵している。便座140は、ヒーター142に電流を供給することによって加熱される。センサ部150は、電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを含む。トイレルーム105は、壁106および扉107で囲まれた空間であり、ユーザは扉107からトイレルーム105へ入室する。
電波センサ160は、例えば、マイクロ波の周波数帯域を利用した移動体検知センサである。電波センサ160は、トイレルーム105内を移動するユーザの移動状態だけでなく、トイレルーム105の外にいるユーザがトイレルーム105の出入り口に設置された扉107を開けた際に生じる扉107の開閉する動きを検知し、トイレルーム105の外にいるユーザがトイレルーム105内に入室しようとする動きをを間接的に検知できる。また、ユーザが扉107を開けてからトイレルーム105内に入室する移動状態やユーザが便座140に着座したこと等、電波センサ160の第1検知領域DR1内に進入したユーザの動き(移動状態)を検知することができる。
マイクロ波とは電波の周波数による分類の一つである。一般的には波長100マイクロメートル〜1メートル、周波数300メガヘルツ〜3テラヘルツの電波(電磁波)を指す。この範囲の電波には、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波が含まれる。尚、電波センサ160は、トイレルーム105に設置された扉107の開閉する動き、トイレルーム105内へ入室するユーザの動きを検知することができればよく、利用可能な周波数帯域はマイクロ波帯に限定されない。
焦電センサ170は、例えば、焦電型赤外線センサであり、ユーザがトイレルーム105内に入室したことを検知する。焦電型赤外線センサは、周囲環境の温度と、検知したい物体の温度との差を検知して、その空間(第2検知領域DR2)に物体が存在するか否かを判断する。尚、本実施例ではトイレルーム105内に入室したユーザの人体を検知するために焦電センサ170を暖房便座装置100に設置したが、焦電型赤外線センサに限定されない。
着座センサ180は、例えば、反射型赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座140上にユーザが着座していることを検知する。尚、着座センサ180も、便座140上にユーザが着座していることを検知することができればよく、反射型赤外線センサに限定されない。
電波センサ160および焦電センサ170は、便器120や遠隔操作装置130に取り付けてもよく、あるいは、トイレルーム105内の壁面、天井または床面に取り付けてもよい。
第1検知領域DR1は、電波センサ160が人体等の移動体を検知することができる範囲を示し、トイレルーム105の内側から外側へ向かい広がっている。第2検知領域は、焦電センサ170が人体を検出することができる範囲を示し、扉107が閉じた状態においてはトイレルーム105の内側に制限される。
図2は、第1の実施形態による暖房便座装置100の構成を示すブロック図である。暖房便座装置100は、遠隔操作装置130と、センサ部150と、便座140と、洗浄部200と、制御部210とを備えている。
遠隔操作装置130は、機能設定部132と、機能操作部134と、表示部136とを備えている。機能設定部132は、便座140の温度設定、洗浄装置200の水温設定等の各種設定事項をユーザが入力/選択する手段である。機能操作部134は、機能設定部132で設定された設定事項に基づいて便座140および洗浄部200をユーザが操作する手段である。表示部136は、ユーザが機能設定部132または機能操作部134を用いて入力/選択した事項を表示する手段である。機能設定部132および機能操作部134は、例えば、ボタン、切替えスイッチを含み、ユーザは、ボタンを押し、あるいは、切替えスイッチを切替えることによって暖房便座装置100の設定および操作を行う。表示部136は、例えば、液晶表示装置でよい。
センサ部150は、上述の通り電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを備えている。電波センサ160は、送信アンテナ162と、発振回路164と、受信アンテナ166と、検波回路168とを備えている。本実施形態では、発振回路164は、所定の周波数の電波(マイクロ波)を生成し、送信アンテナ162からその電波を送信する。受信アンテナ166は、送信アンテナ162から送信された電波の反射波を受信する。検波回路168は、受信アンテナ166において受信された反射波から電圧値(振幅電圧)、周波数の差分を抽出し、検知信号として制御部210へ送る。発振回路164に周波数可変回路を備えれば、扉や人体からの反射波の位相状態を抽出し移動速度だけでなく電波センサ160から扉や人体までの距離を認識できる。また、検波回路168を複数備えれば、複数の検知信号の位相差から電波センサ160に対し扉や人体が接近または離遠しているのかを容易に判別できる。
トイレルーム105内とトイレルーム105外に別々に人体検知センサ(例えば、赤外線センサや焦電センサ、電波センサ等)を設置して後述するアプローチ時間T1を決定する場合、トイレルーム105内に設置された人体検知センサとトイレルーム105外に設置された人体検知センサで通信や同期を取る必要が生じ制御が複雑となる。また、ユーザの好みや生活環境に応じてトイレルーム105外に設置される人体検知センサの位置により検知精度がバラつきアプローチ時間T1に影響を与える。トイレルーム105内に設置された暖房便座装置100や遠隔操作装置130に、ユーザが入退室するトイレルーム105の出入り口に設置された扉107が開くことを検出する電波センサ160を備えることにより、ユーザがトイレルーム105外の第1検知領域DR1内に進入し扉107を開けてからトイレルーム105内へ入室するまでの移動情報を連続的に検出できるため、通信や同期を取る必要がなく制御が簡素となる。また、トイレルーム105が設置される住宅環境に応じて最適なアプローチ時間T1を決定できる。
また、特定の少数ユーザがトイレルーム105に隣接された廊下を通りトイレルーム105へ入室する住宅環境であれば、廊下を通行するユーザの移動速度や移動方向、ユーザが廊下を通行する時間帯、ユーザのトイレ使用状況等に応じて、予め設定されたトイレルーム105外の第1検知領域DR1内に進入したユーザを電波センサ160で検知したとき、ユーザがトイレルーム105内に入室するか否かを推定できる。そして、その推定結果に基づいて便座温度を制御すれば、待機温度をできる限り低く維持し、便座の消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。
一方、近年の住宅市場では、トイレルーム105がリビング(居間)等の広い空間に廊下を介さず併設された住宅も供給されるようになった。そのため、ユーザの滞在時間や使用状況が様々である空間にトイレルーム105が併設された場合、トイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入したユーザを電波センサ160で検知したとき、ユーザがトイレルーム105内に入室するか否かを推定することは困難である。
その際、トイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入したユーザがトイレルーム105の出入り口に設置された扉107を開ける動作に伴い生じる扉107の開く動きを電波センサ160で検知することにより、トイレルーム105内への入室意図があるユーザを間接的に検知し、ユーザがトイレルーム105内に入室することを確実に判断できる。そうすれば、暖房便座装置100が設置される住宅環境に関わらず、待機温度をできる限り低く維持し、便座の消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。
焦電センサ170は、検知領域を設定するレンズと人体から放射された赤外線を受信する受光素子を備え、着座センサ180は、赤外線を発光する発光素子と発光素子から送信された赤外線の反射波を受信する受光素子を備え、ともに受光素子にて受信した結果を制御部210へ送る。
便座140は、加熱部としてのヒーター142と、温度検知部(サーミスタ)144と、便蓋146と、便蓋開閉センサ148を備えている。ヒーター142は、制御部210の制御を受けて便座140を加熱すなわち昇温する。温度検知部144は、便座140の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。便蓋開閉センサ148は便蓋146の開閉状態を検知する。
ここでヒーター142の加熱電力は調整可能に構成される。ヒーター142の加熱電力は、単位時間当たりの消費電力量(例えば、ワット時(Wh))で表わされる。ヒーター142の加熱電力は、便座140の昇温速度に影響し、便座140の昇温速度は、単位時間当たりの上昇温度(例えば、℃/sec)で表わされる。ヒーター142としては、たとえば位相制御により電力を調整可能な加熱源を用いることができる。あるいは、ヒーター142は、それぞれ同一または異なる一定の出力電力を有する複数の加熱源を備えたものであってもよい。この場合、動作させる加熱源を組み合わせることで所望の加熱電力を得ることができる。
洗浄部200は、ヒーター202と、温度検知部(サーミスタ)204と、ノズル駆動部206とを備えている。ヒーター202は、制御部210の制御を受けて、洗浄部200内のタンクに蓄えられた洗浄水を加熱する。温度検知部204は、洗浄水の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。ノズル駆動部206は、ノズルを駆動させ、洗浄水を吐出するように構成されている。
制御部210は、演算処理部(CPU)212と、記憶部214と、タイマ216と、カウンタ218とを備え、遠隔操作装置130、センサ部150、便座140および洗浄部200を制御するように構成されている。
図3は、センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図である。電波センサ160によって検出された電圧波形がW1、焦電センサ170によって検出された電圧波形がW2、並びに、着座センサ180によって検出された電圧波形がW3で示されている。これらの電圧波形W1〜W3は、センサ部150によって受信された受信波を、制御部210に含まれる周波数帯域フィルタを用いてフィルタリングすることによって得られた所望の周波数帯域の波形である。制御部210は、電圧波形W1〜W3の振幅電圧の変化によって、電波センサ160が扉107の開動(トイレルーム105を使用するためにトイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入したユーザが扉107を開ける動きを検知したこと(扉開検知)、焦電センサ170がユーザの入室を検知したこと(入室検知)、並びに、着座センサ180がユーザの着座を検知したこと(着座検知)を判断することができる。制御部210は、電波センサ160が扉107の開く動きを検知(反射波の測定値が所定の閾値を超える)した時点から便座140の加熱を開始する。
ユーザがトイレルーム105に接近し、電波センサ160の第1検知領域DR1に進入すると、電波センサ160によって検出されるマイクロ波の電圧振幅が大きくなる。その後、マイクロ波の電圧振幅が所定の閾値±Vth(例えば、上限閾値電圧+Vthおよび/または下限閾値電圧−Vth)を超えると、制御部210は、電波センサ160が扉107の開く動きを検知したものと判断する。閾値は、扉の開く動きを検知するために用いられるパラメータであり、例えば、扉が開く際に生じる反射波の信号レベル(振幅電圧)を基準として設けられた上限閾値電圧および下限閾値電圧、あるいは、所定のS/N比により表現され得る。
電波センサ160により扉の開く動きを検知した時点(以下、扉開時点)をt0とする。扉開時点t0は、扉が開く際に生じる反射波の信号レベルの上限と下限との閾値幅を小さくすること、反射波の信号レベルが閾値を単位(所定)時間に超える回数を小さくすることによって(即ち、判定S/N比を小さくすることによって)、より早めることができる。しかしながら、判定S/N比を小さくすることによって、第1検知領域DR1に進入しただけのユーザを検知し易くなるため、電波センサ160は、実際にトイレルーム105に入室しないユーザの人体を検知する頻度が多くなる可能性がある。従って、閾値は、扉107が開く際に生じる反射波と、トイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入したユーザの反射波のバランスを考慮して設定される。
従って、扉107付近におけるユーザからの反射波(反射電力)のS/N比をα、扉からの反射波のS/N比をβとすると、扉107が開く動きを検知するための閾値のS/N比は、α<閾値<βとなるよう設定すれば良い。そうすれば、第1検知領域DR1に進入するユーザに対し、ユーザが扉107を開けるまではユーザの体の大きさや歩く向きに関係なく、電波センサにてユーザを検知しない。そして、子供や大人、成人と老人等、人体からの反射波がばらついてもユーザが扉107を開けるタイミングにて間接的に人体を検知できる。従って、複数のユーザが利用するトイレルーム105でも電波センサにてユーザを検知する位置はトイレルーム105外の扉107付近となり、その時点(扉開時点t0)でユーザがトイレルーム105内に入室することを精度良く検知できる。
また、ユーザがトイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入しトイレルーム105の扉107を開けると、反射波から得られる信号は、電圧値だけでなく周波数も変化する。従って、電波センサ160は、ドップラ効果を利用し、マイクロ波の送信波と受信波との周波数差を検知することによって、ユーザがトイレルーム105の扉107を開ける移動速度を検知することができる。扉107が開く際に生じる周波数差から算出される扉107の移動速度は、人体の移動速度に対して比較的遅い傾向にある。従って、扉107が開く際に生じる反射波の信号レベル(振幅電圧)が小さい(S/N比が大きくとれない)場合、扉107の移動速度を検知判断基準として制御部210に付加することにより、扉107の開く動きを確実に検知することができる。
図3の閾値電圧±Vthは、所定のS/N比(Signal−to−Noise ratio)で決定される。例えば、閾値を決定する所定のS/N比(以下、判定S/N比ともいう)が3であるとすると、閾値電圧は、ノイズ(暗雑音)の電圧振幅の3倍の振幅を有する電圧の上限および下限となる。また、扉107が開く際に生じる反射波の信号レベルが閾値を単位(所定)時間に所定回数超えた場合に、制御部210は、電波センサ160にて扉107の開く動きを検知したものと判断すれば、突発的なノイズに対し誤検知を防止できる。例えば、判定S/N比が3であり、かつ、所定回数が5回であるとすると、ノイズの振幅に対して3倍以上の振幅を有する反射波が単位時間に5回以上検知された場合に、制御部210は、電波センサ160が扉107の開く動きを検知したものと判断する。この場合、カウンタ218は、上限閾値および下限閾値の両方または一方を超える反射波のピーク値およびボトム値をカウントする。尚、上記の単位時間や所定回数は、予め記憶部214に格納しておけばよい。
尚、後述するように、閾値は、予め決定されていてもよく、演算部210によって演算で自動に決定されてもよく、あるいは、ユーザや施工業者によって手動で決定されてもよい。閾値は、決定後、記憶部214に格納される。
ユーザは、第1検知領域DR1に進入後、トイレルーム105の扉107を開けて、トイレルーム105内に入室する。ユーザが第2検知領域DR2に進入すると、焦電センサ170は、ユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧(初期電圧値に対する変化量)を超えた場合に、制御部210は、焦電センサ170がユーザのトイレルーム105内への入室を検知したものと判断する。焦電センサ170がユーザのトイレルーム105内への入室を検知した時点を入室時点t1とする。
本実施形態では、扉開時点t0から入室時点t1までの時間をアプローチ時間T1と規定する。即ち、アプローチ時間T1は、扉107が開く際に生じる反射波の測定値が閾値を超えた時点(t0)からユーザがトイレルーム105内に入室する時点(t1)までの時間である。さらに換言すると、アプローチ時間T1は、ユーザがトイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入し扉107を開けた時点(t0)から、ユーザが第2検知領域DR2に進入した時点(t1)までの時間である。
その後、ユーザが便座140に着座すると、着座センサ180がユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧を超えた場合に、制御部210は、着座センサ180が人体を検知したものと判断すればよい。このように、着座センサ180がユーザの着座を検知した時点を着座時点t2とする。
本実施形態では、入室時点t1から着座時点t2までの時間を着座時間T2と定義する。即ち、着座時間T2は、ユーザがトイレルーム105に入室して第2検知領域DR2に進入した時点(t1)から、ユーザが便座140に着座する時点(t2)までの時間である。
また電波センサ160が人体を検知した時点(t0)から着座センサ180がユーザの着座を検知する時点(t2)までのトータル時間をTtotalと定義する。トータル時間Ttotalを長くすることによって、便座140のヒーター142の加熱電力が低くても、制御部210は、ユーザの着座時t2までに便座140を適温(目標温度)まで昇温させることができる。さらに、ヒーター142の加熱電力を低く抑えることで、暖房便座装置の安全な使用も図ることができる。
電波センサ160は電圧値の時系列変化、さらにはマイクロ波の周波数(位相)変化によって、ユーザがトイレルーム105内へ入室したことや便座140に着座したことを検知できる。従って、焦電センサ170や着座センサ180を省略してもよい。即ち、人体検知、入室検知、および、着座検知は電波センサ160のみにより実行可能である。この場合、焦電センサ170および着座センサ180が不要となるので、コストが低減されるとともに暖房便座装置100のコンパクト化が図れる。
ところで、第1検知領域DR1は実際に暖房便座装置100を設置する環境によって変化する。第1検知領域DR1が変化すると、人体検知から着座検知までの実際の時間(トータル時間Ttotal)も変化する。さらに、トータル時間Ttotalは、ユーザの移動速度によっても変化する。このため、トータル時間Ttotalの設定には或る程度の推測が必要となる。本実施形態による暖房便座装置100は、実測値に基づいてトータル時間Ttotalを決定し、トータル時間Ttotalに応じてヒーター142の加熱電力を制御する。これにより、暖房便座装置100は、ヒーター142の加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を適切な温度まで昇温させる。このようにして、暖房便座装置の消費電力の低減および安全な使用を図ることができる。
[基準テーブル]
図4は、基準テーブルの一例を示す図である。基準テーブルは、暖房便座装置100のトイレルーム設置設置直後から暖房便座装置100の即暖機能を利用することができるように、製造メーカによって出荷前に設定され記憶部214に予め格納されている。例えば、基準テーブルでは、目標温度TEMPtrgが29℃、待機温度(暖房便座装置100が利用されていない待機時における便座140の温度)TEMPstbが26℃、トータル時間Ttotal内に昇温すべき温度ΔTEMP(ΔTEMP=TEMPtrg−TEMPstb)が3℃、トータル時間Ttotalが6秒、判定S/N比(閾値)が3、加熱電力が200Wに設定されている。尚、当初、どのようなユーザが使用したとしても、ユーザの着座時までに便座140を目標温度TEMPtrgまで昇温できるように、基準テーブルでは、加熱電力は高めに設定されている。
上述の通り、電波センサ160がトイレルーム105の出入り口に設置された扉107の開く動きにより、トイレルーム105外のユーザを間接的に検知してから着座センサ180がユーザの着座を検知するまでの実測時間(トータル時間Ttotalの実測値)は、暖房便座装置100が実際に設置されている環境によって変化する。環境とは、たとえばトイレルーム105自体の構造、トイレルーム105の周辺の構造、ユーザ自身の特徴、暖房便座装置100の使用状況等である。より具体的には、トイレルーム105の扉の位置、ユーザがトイレルームへ接近するときの進行方向、ユーザの移動経路、歩行(移動)速度、トイレルーム105の構造、トイレルームに通じる通路(廊下)の延伸方向、トイレルームにおける扉の開閉状態、トイレルームの壁の材質または扉の材質、ユーザの年齢(老若男女)、ユーザの着衣の多さ(季節)、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯等である。
実際にユーザがトイレルーム105外の第1検知領域DR1に進入し、扉107を開けてから入室するまでの実測時間(アプローチ時間T1の実測値)は、例えば、トイレルーム105の扉の位置、ユーザがトイレルームへ接近するときの進行方向、ユーザの移動経路、歩行速度、トイレルーム105の構造、トイレルームに通じる通路(廊下)の延伸方向、トイレルームにおける扉の有無、トイレルームの壁の材質または扉の材質等によって変化する。実際にトイレルーム105内にユーザが入室してから便座140に着座するまでの実測時間(着座時間T2の実測値)は、例えば、ユーザの年齢(老若男女)、ユーザの着衣の多さ(季節)等によって変化する。
このような事情から、図4に示す基準テーブルは、必ずしも暖房便座装置100が設置された環境に適合しているとは限らないため、この基準テーブルを、暖房便座装置100のトイレルーム105設置後にその環境に適合するように更新して適合テーブルを生成し適合テーブルに基づき即暖(便座140を素早く加熱する)制御を行うことが好ましい。あるいは、基準テーブルを更新するのではなく、使用環境に適合するように別途新たに適合テーブルを生成するようにしてもよい。これらの方法は後述する。
ここで基準テーブルの設定は、様々なユーザが暖房便座装置100を利用した場合であっても、着座時点t2において便座140を確実に目標温度TEMPtrgまで昇温するために、基準テーブルの待機温度TEMPstbおよび加熱電力の設定は統計的に決定されることが好ましい。例えば、図6のような標準的なトイレルームを用意し、複数のユーザに暖房便座装置100を使用してもらう。このとき、暖房便座装置100は、人体検知時点t0から着座時点t2までの時間を実測する。この実測値のうち最小値を基準テーブルのトータル時間Ttotalとし、該トータル時間Ttotalに基づいて基準テーブルの待機温度TEMPstbおよび加熱電力を設定する。人体検知時点t0から着座時点t2までの実測時間のうち最小値をトータル時間Ttotalとして設定することで、どのようなユーザが暖房便座装置100を利用しても、制御部210は、着座時点t2において便座140を確実に目標温度TEMPtrgまで昇温させることができる。
代替的に、トータル時間Ttotalの実測値のヒストグラムから最も頻度の多い測定値をトータル時間Ttotalとして設定してもよい。ユーザがトイレルーム105へ駆け込んだ場合のように、人体検知時点t0から着座時点t2までの実測値が非常に短時間である場合がある。頻度の多い時間をトータル時間Ttotalとして設定することによって、このような例外的な状況を排除して、基準テーブルの待機温度TEMPstbを設定することができる。
図5(A)は、トータル時間Ttotalと便座140の温度との関係を示すグラフである。待機温度TEMPstbは上述したように便器を使用していないときの便座140の温度、目標温度TEMPtrgはユーザが着座したときにユーザに不快感を与えないための便座140の温度、設定温度TEMPsetは、ユーザが所望する便座140の温度である。一般に目標温度TEMPtrgは、設定温度TEMPsetよりも低い温度である。便座140は、トータル時間Ttotal時間(本例では6秒)にて目標温度TEMPtrgに達するように、基準テーブルまたは後述の適合テーブルに設定された加熱電力(例えば300W)で加熱された後、設定温度TEMPsetまで加熱され、設定温度TEMPsetに維持される。
扉開検知時点t0まで制御部210は、便座140の温度を待機温度TEMPstbに維持している。扉開検知時点t0において、制御部210はヒーター142によって便座140の温度を待機温度TEMPstbから加熱し始める。そして、着座時点t2において、便座140の温度が目標温度TEMPtrgに達していることが望まれる。図5(A)に示す便座140の温度変化T140aは、ヒーター142の電力、ヒーター142から便座140への熱伝達特性およびヒーター142への印加電圧とその通電時間に依存する。本例では温度変化T140aの傾きは一定であり、ヒーター142の電力は一定である。
なお、図5(A)に示すように扉開検知時点がt0からt0’にずれてトータル時間Ttotalの実測値が短くなった場合、t0の場合よりも便座140の加熱開始が遅くなるので、ユーザの着座時までに便座140の温度を目標温度TEMPtrgまで昇温するためには、矢印のように加熱電力を高くする必要がある。
図5(A)の例では、基準テーブルまたは適応テーブルに設定された一定の加熱電力で便座140を加熱する例が示されるが、加熱の方法はこれに限定されない。
たとえば目標温度TEMPtrgに達した以降は、当該テーブルで設定された加熱電力と異なる電力で加熱を行っても良い。たとえば目標温度に達した以降の電力を事前に指定してき、目標温度に達した以降はこの指定した電力で加熱を行っても良い。すなわちこの場合、当該テーブルで設定された値は目標温度TEMPtagに達するまでの加熱電力を意味する。上記指定の電力はたとえばテーブルに設定された加熱電力より小さくても大きくても良い。上記指定の電力が大きければユーザの所望する設定温度に速く達することができ、一方、小さければ安全性に優れた即暖を実現できる。
また目標温度TEMPtrgに達するまでの加熱電力も常に一定でなく、時間に応じて変化してもよい。たとえば図5(B)の温度変化T140bに示すように、加熱開始から目標温度TEMPsetに達するまでの電力を時間に応じて2段階もしくはそれより大きい段階に分けてもよい。この場合、平均電力がテーブルで設定された加熱電力に一致または略一致するようにする。
以降の説明では簡単のため加熱電力は常に一定であるとするが、本発明は上記のようにこれに限定されるものではない。
図7は、暖房便座装置100による即暖制御の基本的な動作の流れを示すフロー図である。即暖制御は基準テーブル(図4参照)または後述する適合テーブル(図10参照)に基づき行われる。
まず、記憶部214に基準テーブルまたは適合テーブルが格納されているか否かを確認し、適合テーブルが格納されていれば適合テーブルを、格納されていなければ基準テーブルを読み出す(S10)。
暖房便座装置100は読み出したテーブルに基づき待機制御を行う(S11)。待機制御においては、制御部210は、便座140の温度を待機温度TEMPstbに維持する。
ユーザから即暖機能オフの入力があった場合は(S12のYES)、本フローを終了する。
即暖機能オフの入力がない場合は(S12のNO)は、電波センサから送信されたマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたか否かを検査し(S13)、超えていない場合は(S13のSO)、ステップS11の制御に戻る。すなわち電波センサ160が扉107の開く動きを検知するまで、待機制御が行われる。
ユーザがトイレルーム105に接近し扉107を開けたことによりマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた場合(S13のYES)、制御部210は、電波センサ160が扉107の開く動きを検知したものと判断して、暖房便座装置100は便座140の昇温動作を開始し、タイマ216は計時を開始する(S14)。
尚、扉107が常時、開いた状態で使用される環境、例えば駅や公共機関に暖房便座装置100が設置されたトイレルーム105では、ユーザによる扉107を開ける動作が行われないため、ユーザが扉107を開ける動きを検知することはできない。その場合、記憶部214は扉開検知時点t0から入室検知時点t1までのアプローチ時間T1を0秒として記憶してよい。また、扉107が常時開いているトイレルーム105では、焦電センサにてトイレルーム105外のユーザを検知する場合があり、焦電センサにて検知されたユーザは必ずしもトイレルーム105内へ入室しない場合がある(S15のNO)。このような場合には、便座140の昇温動作を停止する必要がある。従って、入室検知時点t1の後、タイマ216の時間が第1の制限時間を超えた場合に、制御部210は、ユーザがトイレルーム105内に入室しないと判断する。制御部210にてユーザがトイレルーム105に入室しないと判断した場合、タイマ216は計時を終了し、その時間をリセットする(S155)。また、暖房便座装置100は、昇温動作を中止し、ステップS130の待機状態に戻る。第1の制限時間は、基準テーブルのアプローチ時間T1よりも長く、且つユーザが入室してから便座140に着座するまでの時間(後述する着座時間T2に相当)よりも短い時間に設定され、記憶部214に予め格納されている。
一方、焦電センサ170がユーザの入室を検知した(S15のYES)後、男性小便時のようにユーザが便座140に着座しない場合がある(S17のNO)。このような場合には、やはり便座140の昇温動作を停止する必要がある。従って、入室検知時点t1の後、タイマ216の時間が第2の制限時間を超えた場合に、制御部210は、ユーザが暖房便座装置100の便座140に着座して利用しないものと判断する。その場合、制御部210において、タイマ216は計時を終了し、その時間をリセットする(S155)。また、便座装置100は、ステップS130の待機状態に戻る。第2の制限時間は、基準テーブルのトータル時間Ttotalよりも充分に長い時間に設定され、記憶部214に予め格納されている。第2の制御時間は、第1の制限時間よりも長いことが好ましい。
トイレルーム105内に入室したユーザが暖房便座装置100の便座140に着座して利用しない判断がなされた場合、ステップS160において得られたアプローチ時間T1の実測値は、記憶部214から消去してよい。しかし、このアプローチ時間T1の実測値は、記憶部214に格納したままでもよい。この場合、アプローチ時間T1の実測値は、ステップS200において適応テーブルのアプローチ時間T1を算出する際に用いてもよい。
ユーザの入室後、着座センサ180がユーザの着座を検知した場合(S17のYES)、タイマ215の計時を終了しタイマ216の時間をリセットし(S18)、その後、目標温度に達したか否かを確認する(S19)。目標温度に達するまで待機し(S19のNO)、目標温度に達したら(S19のYES)、保温制御を実行する(S20)。保温制御では、便座が設定温度になるまで加熱を継続し、設定温度に達したら、便座140が設定温度に維持されるように制御する。
保温制御中に着座センサ180がユーザの存在(使用)を検出している間は(S21のYES)は保温制御を継続し、ユーザの非使用を検出したら(S21のNO)、ステップS11の待機制御に戻る。なお、ステップS19において、目標温度に達する前に、着座センサ180がユーザの不在を検出したら、昇温動作を停止して、ステップS11の待機制御に戻ってもよい。
[適応テーブルの自動設定]
図4に示す基準テーブルは、上述の通り、暖房便座装置100が設置される環境に適合していない場合がある。このような場合、暖房便座装置100が設置される環境に適合した適応テーブルを作成し、適応テーブルに基づき図7に示した即暖を行うことが望ましい。
図8は、適応テーブルの待機温度TEMPstbを自動設定するために用いられる制御データテーブルを示す。本実施形態では、制御部210は、暖房便座装置100の設置後に実際に測定されたトータル時間Ttotalの実測値と、ユーザ選択の待機温度TEMPstbに基づいて、暖房便座装置100の設置環境に適合した加熱電力を制御データテーブルから選択する。この際、目標温度TEMPtrgおよび判定S/N比は、基準テーブルのそれらと同じ値に固定されているものとする。例えば、TEMPtrgは29℃、S/N比は3に固定されている。基準テーブルが無い場合には、目標温度TEMPtrgおよび判定S/N比は、ユーザまたは施工業者が遠隔操作装置130の機能設定部132を操作して設定すればよい。なお、待機温度TEMPstbもユーザ選択ではなく基準テーブルのそれと同じ値に固定されてもよい。
例えば、トータル時間Ttotalの実測値が5.5秒で、待機温度TEMPstbが26℃であった場合、制御部210は、制御データテーブルに基づいて加熱電力を300Wに決定する。尚、図8に示すように、トータル時間Ttotalが長いほど、便座140の昇温時間を長くとれるので、加熱電力を低くできる。
図8の例では、トータル時間Ttotalと待機温度TEMPstbに応じて加熱電力を決定するが、代替的に、着座時間T2を所定時間に固定し、アプローチ時間T1の実測値(実測時間)と待機温度TEMPstbに応じて加熱電力を決定してもよい。即ち、制御部210は、トイレルーム105外の第1検知領域DR1内に進入したユーザが扉107を開けたことを検知してからトイレルーム105内へ入室したことを検知するまでの実測時間をアプローチ時間T1として決定し、該アプローチ時間T1と待機温度TEMPstbに基づいて加熱電力を設定する。この場合、図8の制御データテーブルに代えて、アプローチ時間T1と待機温度TEMPstbと加熱電力との対応関係を示す制御データテーブルを用いればよい。
図8の例では目標温度を固定にした場合を示したが、目標温度をユーザ選択可能にしてもよい。この場合は図8と同様のテーブルを目標温度毎に用意し、ユーザが選択した目標温度に対応するテーブルを用いればよい。
図9は、適応テーブルの自動作成の手順の流れを示すフロー図である。適応テーブルの自動作成は、図7に示した即暖フローの処理と並行して行われる。
まず、適応テーブルが記憶部214に格納されているか否か、すなわち既に作成済みであるか否かを確認する(S100)。適応テーブルが既に作成されているときは(S100のYES)、本処理を終了する。
適応テーブルが記憶部214に格納されていない場合(S100のNO)、以降の自動作成ルーチン(ステップS130〜S240)に進む。
制御部210は、図7の即暖フローのステップS13でマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたと判定されるまで、すなわち電波センサ160が扉107が開いたことを検知するまで待機する(S130のNO)。マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたと判定されると(S130のYES)と、タイマ216による計時を開始する(S140)。このときタイマ216の計時は図7の即暖フローのステップS14と共通化してもよいし、当該ステップS14とは別途異なるタイマを用意し、このタイマを用いて行ってもよい(すなわち本フローと図7の即暖フローでタイマの計時開始、終了、リセットのタイミングは同一にできる。以下同様)。
次に、図7の即暖フローのステップS15で、焦電センサ170によりユーザの人体が検知された場合(S150のYES)、すなわち電波センサ160が扉開検知時点t0で扉107が開いたことを検知した後、第1の制限時間以内に焦電センサ170がユーザの人体を検知した場合、制御部210は、その時点におけるタイマ216の時刻に基づいてアプローチ時間T1を計算して記憶部214に記憶する(S160)。アプローチ時間T1は、電波センサ160の扉開検知時点t0から焦電センサ170の入室検知時点t1までの時間(t1−t0)として計算される。即ち、この段階で、アプローチ時間T1の実測値が得られる。
次に、図7の即暖フローのステップS17において、着座センサ180によりユーザの着座が検知された場合(S170のYES)、すなわち、焦電センサ170によりユーザの入室が検知された後、第2の制限時間以内に着座センサ180によりユーザの着座が検知された場合、制御部210は、その時点におけるタイマ216の時刻に基づいて着座時間T2を計算して記憶部214に記憶する(S180)。着座時間T2は、焦電センサ170の入室検知時点t1から着座センサ180の着座検知時点t2までの時間(t2−t1)となる。また制御部210は、タイマ216の計時を終了し、タイマ216をリセットする。
一方、図7の即暖フローにおいて焦電センサ170によりユーザの入室が検知された後、第2の制限時間以内に着座センサ180によりユーザの着座が検知されなかった場合(たとえば男性小便時のような場合)(S170のNO)、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S155)。この後、暖房便座装置100は、ステップS130の待機状態に戻る。ここで第2の制限時間は、図7の即暖フローで説明したものと同一である。第2の制限時間は、たとえば基準テーブルのトータル時間Ttotalよりも充分に長い時間に設定されることが好ましい。なお、上記男性小便時のような非使用がなされた場合、ステップS160において得られたアプローチ時間T1の実測値は、記憶部214から消去する。ただし、このアプローチ時間T1の実測値を消去せずに、後述のステップS200においてアプローチ時間T1を算出する際に利用することも可能である。
ステップS180において着座時間T2の計算および記憶、タイマ216の計時終了およびリセットが完了したら、その後、カウンタ218が記憶回数を1だけ増加させる(S190)。記憶回数は、ステップS180において着座時間T2を記憶部214に記憶した回数に相当する。
記憶回数が所定回数(例えば、10回)に達していない場合(S195のNO)、暖房便座装置100は、待機状態(S130)に戻り、さらに、アプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値の測定を継続する。このように、暖房便座装置100は、ステップS130〜S195を繰り返し実行する。
記憶回数が所定回数に達した場合(S195のYES)、制御部210は、記憶部214に格納されたアプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値に基づき、適応テーブルの設定するべきアプローチ時間T1および着座時間T2を決定する(S200)。
例えば、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値を単純に平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。あるいは、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値のうち最大値および最小値を除いた実測値を平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。さらに、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値のうち、値の小さい方から5個の実測値を平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。適応テーブルの着座時間T2についても、アプローチ時間T1と同様に演算することによって得られる。
次のステップS210では演算処理部212は、適応テーブルのアプローチ時間T1および着座時間T2を足し算することにより適応テーブルのトータル時間Ttotalを計算する。トータル時間Ttotalの別の計算方法として。ステップS180で着座時間が計算された際にトータル時間の実測値(T1+T2)も併せて計算および記憶しておき、ステップS200において、アプローチ時間T1および着座時間T2と同様の計算により、適応テーブルのトータル時間Ttotalを計算してもよい。
ステップS200およびS210において算出されたアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalは、適応テーブルの一部として記憶部214に記憶される(S220)。
尚、適応テーブルに用いられるアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの算出方法は、上記演算に限定されない。
次に、制御部210は、図8に示す制御データテーブルを参照し、適応テーブルのトータル時間Ttotalを用いて加熱電力を決定する(S230)。例えば、適応テーブルのトータル時間Ttotalが8.5秒、待機温度TEMPstbが26℃であった場合、制御部210は、加熱電力を150Wに決定する。本ステップS230で決定した加熱電力も、適応テーブルの一部として記憶部214に記憶される。
この後、さらに基準テーブルの目標温度TEMPtrg、待機温度TEMPstb、昇温温度ΔTEMP、判定S/N比(閾値)と同一の値を適応テーブルに書き込み、これにより、暖房便座装置100の設置された環境に適合した適応テーブルが作成される(S240)。作成された適応テーブルの一例が図10に示される。
適応テーブルの作成後、暖房便座装置100は、図7の即暖フローのステップS10でその適応テーブルを新たに読み込み、以降は、基準テーブルに代えて、適応テーブルに基づき即暖制御を実行する。
このように、図9のフローでは、適応テーブルのアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalをそれらの実測値から決定し、決定したトータル時間Ttotalと、待機温度TEMPstbに基づいて制御テータテーブルから加熱電力を決定する。これにより、暖房便座装置100の設置環境に適合した適応テーブルを作成することができる。
また、図9のフローに従うことで、適応テーブルを自動で作成できるため、ユーザおよび施工業者が、設置環境に適合した適応テーブルの設定を自ら行う手間は生じない。
また、図9のフローでは、ステップS200およびS210において、アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの計算の際、複数の実測値のうち最大値および最小値を除くようにしたため、ユーザがトイレルーム105へ駆け込んで入室した場合のような例外的な状況のみに基づいて適応テーブルが作成されることは阻止され、暖房便座装置100の設置環境に対する適応テーブルの適合度を高くできる。
さらに、図9のステップS200およびS210において、アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの計算の際、複数の実測値のうち値の小さい複数の実測値を用いるようにしたことにより、移動速度の速い、薄着のユーザに適合するように適応テーブルを作成することができる。よって、制御部210は、ほとんどのユーザの場合に着座時までに便座140の温度を確実に目標温度TEMPtrgに昇温させることができる。
例えば、移動速度の遅い(実際のアプローチ時間T1の長い)高齢者に適合するように適応テーブルを作成したとすると、高齢者よりも移動速度の速い若年者が暖房便座装置100を使用した場合に、便座140の温度が目標温度TEMPtrgまで達しないことが生じ得る。このような状況を回避するために、本実施形態では、値の小さい実測値を用いることで、移動速度の速い(実際のアプローチ時間T1の短い)若年者に適合するように適合テーブルを作成する。これにより、若年者および高齢者のいずれが暖房便座装置100を使用しても、便座140の温度は、ユーザの着座時までに、目標温度TEMPtrgまで確実に達し得る。
[適応テーブルの更新]
適応テーブルは、既に説明したように、暖房便座装置100の設置環境に適合するように作成されている。従って、一旦作成された適応テーブルは、そのまま継続的に即暖制御に用いられてもよい。しかし、暖房便座装置100の設置された環境の変化によって、適応テーブルが実際の環境に適合しなくなる場合がある。例えば、ユーザ数の変化、ユーザの年齢の変化、歩行速度の変化、季節の変化(ユーザの着衣の変化)、ユーザの在宅時間帯の変化、ユーザの睡眠時間帯の変化、リフォームによるトイレルーム105の構造の変化等により、扉開検知時点t0から着座時点t2までの実際の時間が変化する場合がある。このような場合、ユーザの着座時t2に便座140の温度が目標温度TEMPtrgまで達しない可能性がある。そこで、このような場合は、新たな環境に適合するように適応テーブルを更新することが考えられる。
図11は、適応テーブルの更新の手順を示すフロー図である。
まず、図9の自動作成フローのステップS130〜S180を実行する。すなわち、アプローチ時間T1の実測値(更新用実測時間)および着座時間T2の実測値を新たに測定し、アプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値を、記憶部214に格納する。ここで、新たに測定されたアプローチ時間および着座時間の各実測値を、それぞれ更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nとする。
次に、制御部210は、更新用アプローチ時間T1Nを適応テーブルのアプローチ時間T1と比較し、更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にあるか否かを判定する(S300)。これは、ユーザがトイレルーム105へ駆け込んだ場合にように例外的な状況で得られた時間T1Nを排除するためである。
更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にある場合(S300のYES)、制御部210は、更新用アプローチ時間T1Nと適応テーブルのアプローチ時間T1との平均値を、新しいアプローチ時間T1として適応テーブルへ登録する(S310)。
尚、新しいアプローチ時間T1の計算方法はこれに限定されず、他の演算により得られた値でもよい。例えば、アプローチ時間T1を得た際の実測回数に基づいてアプローチ時間T1と更新用アプローチ時間T1Nとに重み付けをして平均してもよい。具体的には、アプローチ時間T1がn個の実測時間の平均値である場合、更新用アプローチ時間T1Nは1回の実測値であるので、制御部210は、(T1×n+T1N×1)/(n+1)を演算した結果を新しいアプローチ時間T1としてよい。即ち、制御部210は、元のアプローチ時間T1の重み付けをnとし、実測された更新用アプローチ時間T1Nの重み付けを1として、平均値を演算する。このとき、カウンタ218は、アプローチ時間T1の測定回数をカウントし、nをn+1とする。次の新しいアプローチ時間T1を算出する際には、制御部210は、その時点での適応テーブルのアプローチ時間T1の重み付けを(n+1)とし、次に実測された更新用アプローチ時間T1Nの重み付けを1とすればよい。カウンタ218の測定回数は、必要に応じて手動または自動でリセットしてもよい。
一方、更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にない場合(S300のNO)、制御部210は、適応テーブルのアプローチ時間T1を更新しない。
次に、制御部210は、新しく測定された更新用着座時間T2Nを適応テーブルの着座時間T2と比較し、更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にあるか否かを判定する(S320)。これも、上述のように例外的な状況で得られた着座時間T2Nを排除するために行われるものである。
更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にある場合(S320のYES)、制御部210は、更新用着座時間T2Nと適応テーブルの着座時間T2との平均値を、新しい着座時間T2として適応テーブルへ登録する(S330)。尚、新しい着座時間T2の計算方法はこれに限定されず、他の演算により得られた値でもよい。例えば、着座時間T2もアプローチ時間T1と同様に、着座時間T2を得た際の実測回数に基づいて元の着座時間T2と更新用着座時間T2Nとに重み付けをして平均してもよい。
一方、更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にない場合(S320のNO)、制御部210は、適応テーブルの着座時間T2を更新しない。
その後、制御部210は、図9の自動作成フローのステップS210〜S230を実行し、更新されたアプローチ時間T1および更新された着座時間T2に基づいて適応テーブルの加熱電力を更新する。
適応テーブルの更新後、更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nの各実測値は不要となるので、記憶部214から消去する(S340)。暖房便座装置100は、更新された適応テーブルを用いて即暖制御を実行する。
このように、図11の更新フローでは、更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nの測定を継続して実行し、それらの実測値に基づいて適応テーブルの値(加熱電力等)を更新する。このようにして、暖房便座装置100の設置環境の変化に応じて、適応テーブルを更新できる。例えば、季節の移り変わりにより、気温等の環境が変化すると、適切な加熱電力も変化する。このような場合であっても、更新用アプローチ時間T1Nの実測値に基づいて適応テーブルを更新することによって、加熱電力も適切に設定し直すことができる。
[複数の適応テーブルからの選択]
ここでは複数の時間帯に応じてそれぞれ別個の適応テーブルを作成し、即暖制御の際はその時間帯に応じた適応テーブルを用いて即暖制御を行う場合を示す。例えば、ユーザの活動時間帯では、ユーザの活動時に、ユーザは、第1検知領域DR1を通過することが多くなる。一方、ユーザの睡眠時間帯では、ユーザは第1の検知領域DR1を通過することが比較的少ない。
以下、複数の時間帯に応じてそれぞれ個別の適応テーブルを作成する手順を説明する。当該作成の手順は基本的には図9の自動作成フローと同じであるが、一部処理が拡張されている。以下ではその拡張された処理を中心に説明する。
前提として、図2に示すタイマ216は、日時を計る時計機能を有し、記憶部214には、複数の時間帯に対応した複数の判定S/N比が格納されているものとする。本例では、1日の時間帯のうち、午前8時から午後10時までを第1の時間帯とし、午後10時から午前8時までを第2の時間帯とする。そして、記憶部214には、第1の時間帯に対応する第1の判定S/N比と、第2の時間帯に対応する第2の判定S/N比とを予め格納されている。第1の時間帯はユーザの活動時間帯に該当するため、第1の判定S/N比を高めに設定し、第2の時間帯はユーザの睡眠時間帯に該当するため、アプローチ時間を長くとって加熱電力を低くするべく、第2の判定S/N比を低めに設定する。
例えば、第1の時間帯はユーザの活動時間帯であるので、第1の判定S/N比は高めに設定されている。ユーザの活動時に、第1の判定S/N比が低めに設定されていると、第1検知領域DR1を通過するユーザからの反射波と扉107が開く際に生じる反射波との判別が困難となり、電波センサにて誤検知(ユーザが扉107の前に接近しただけで扉107が開いたと判断)する可能性が生じる。従って、誤検知する可能性を抑制するために、第1の判定S/N比は高目に設定される。第1の判定S/N比が高いと、適応テーブルのアプローチ時間T1は短く設定される。従って、制御部210は、ユーザの着座時に目標温度TEMPtrgまで便座140の温度を昇温させるために加熱電力を高めに設定する必要がある。しかし、一方で、誤検知する可能性を抑制することができる。従って、本実施形態によれば、加熱電力を高めにすることによる消費電力の増加と、誤検知する可能性の低減による消費電力の低減とを相殺することによって、全体としての暖房便座装置100の消費電力を低く抑えることが可能である。
逆に、第2の時間帯はユーザの睡眠時間帯であるので、第2の判定S/N比は第1の判定S/N比よりも低く設定されている。ユーザは、睡眠時間帯において、第1検知領域DR1を通過することが比較的少ない。従って、誤検知する可能性が低いと推測できるので、第2の判定S/N比は低めに設定してよい。第2の判定S/N比が低いと、電波センサ160にてより早く扉107が開いたことを検知できるので、適応テーブルのアプローチ時間T1は長く設定される。従って、制御部210は、加熱電力を低く設定することができる。これにより暖房便座装置100の消費電力を低減させることができる。
図9のステップS130の閾値判定において、制御部210は時間帯に応じた閾値(判定S/N比)を用いて判定を行う。そしてステップS160、S180では、測定した時間T1および時間T2を、上記時間帯に分類して記憶する。たとえば午前9時に人体検出されたときは、測定した時間T1および時間T2を第1の時間帯のグループに分類して記憶する。
図9のステップS195では時間帯毎にそれぞれ記憶回数が所定回数(たとえば10回)に達したか否かを判定し、所定回数に達した時間帯について、図9のステップS200〜S240を行う。
この際、ステップS220では図12に示すフローの処理を行う。
まず所定回数に達した時間帯が第1の時間帯および第2の時間帯のいずれであるかを判断する(S500)。
所定回数に達した時間帯が第1の時間帯である場合(S500のYES)、制御部210は、決定されたアプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotalと、第1の判定S/N比とを第1の適応テーブルに格納し、第1の適応テーブルを記憶部214に第1の時間帯と関連づけて記憶する(S510)。そして図9のステップS230で加熱電力を決定して第1の適応テーブルに格納し、さらにステップS240で基準テーブル内の目標温度、待機温度、昇温温度と同一の値を第1の適応テーブルに格納し、これにより第1の適応テーブルが作成される。以降、暖房便座装置100は、図7の即暖フローにおいて、第1の時間帯では、第1の適応テーブルを読み込み(図7のS10)、即暖制御を行う。
一方、所定回数に達した時間帯が第2の時間帯である場合(S500のNO)も同様に、制御部210は、決定されたアプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotalと、第2の判定S/N比とを第2の適応テーブルに格納し、第2の適応テーブルを記憶部に第2の時間帯と関連づけて記憶する(S520)。そして図9のステップS230で加熱電力を決定して第2の適応テーブルに格納し、さらにステップS240で基準テーブル内の目標温度、待機温度、昇温温度と同一の値を第2の適応テーブルに格納し、これにより第2の適応テーブルが作成される。以降、暖房便座装置100は、図7の即暖フローにおいて、第2の時間帯では、第2の適応テーブルを読み込み(図7のS10)、即暖制御を行う。
以上により、暖房便座装置100は、第1の時間帯では第1の適応テーブル、第2の時間帯では第2の適応テーブルのように、時間帯(時期)によって異なる適応テーブルを使い分けて即暖制御を行うことができる。すなわち、第1の時間帯(第1の時期)と第2の時間帯(第2の時期)に応じて異なるアプローチ時間に基づき即暖制御を行う。
上述した例では、1日を2つの時間帯に分けた場合を説明したが、3つ以上の異なる時間帯に分けて、それぞれの時間帯毎に適応テーブルの生成および即暖制御を行ってもよい。
上述した例では時間帯に応じて異なる閾値を用いて適応テーブルを作成したが、季節ごとに異なる目標温度TEMPtrgの適応テーブルを作成しても良い。例えば、制御部210は、タイマ216の時計が6月から9月において目標温度TEMPtrgを比較的低く設定し、10月〜5月において目標温度TEMPtrgを比較的高く設定する。目標温度TEMPtrgを比較的低く設定すれば、その分加熱電力も低く設定することができる。従って、制御部210は、暖房便座装置100の設置環境の変化に応じて暖房便座装置100の消費電力を低減させることができる。
以上のように本実施形態によれば、トータル時間Ttotalまたはアプローチ時間T1の実測値に基づいて、暖房便座装置100の設置環境に適合した加熱電力を設定することにより、ヒーターの加熱電力を可及的に低くしつつ、ユーザの着座時点における便座を適切な温度まで昇温させることができる。これにより消費電力を低減させるとともに、暖房暖房便座装置の安全な使用を図ることができる。
また、時間帯毎にそれぞれ異なる判定S/N比を設定して複数の適応テーブルを作成し、時間毎にそれぞれ応じた適応テーブルを用いて即暖制御を行うことによって、加熱電力を可及的に低くしつつ、非入室推定の頻度を低減させて、低消費電力を図ることができる。
本実施形態では、トータル時間またはアプローチ時間に基づいて暖房便座装置100を制御、より詳細に暖房便座装置100が備えるヒーターの加熱電力を制御する例を示したが、本発明の制御対象は暖房便座装置に限定されず、トイレルーム内に設けられる衛生装置であればどのような装置であってもよい。たとえば電気温水器(図2の洗浄部200でもよい)、空調装置(換気装置)等の装置であってもよい。これらの場合、トータル時間またはアプローチ時間に応じて、当該装置の動作を制御、たとえば当該装置内のヒーターの加熱電力を制御することで、当該電気温水器の使用時にユーザにとって快適な温度の温水を出し、またユーザの入室時にトイレルーム内の温度を快適な状態にすることが可能である。
(第2の実施形態)
図13(A)は、本発明に係る第2の実施形態に従った暖房便座装置100、トイレルーム105の構造およびユーザの進入方向を示す概念図である。
第2の実施形態では、ユーザまたは施工業者が、トイレルーム105の扉の位置、ユーザの進入方向等の、暖房便座装置100の設置環境に基づいて閾値を選択する。暖房便座装置100は、選択された閾値を用いて図9に示す自動作成フローを実行し、適応テーブルを自動作成する。なお第2の実施形態による暖房便座装置100のブロック図は第1の実施形態と同様である。
図13(A)の例では、暖房便座装置100の環境として代表的にトイレルーム105の扉の位置およびユーザの進入方向を示すが、本発明で対象とする環境はこれに限定されず、前述したような他の環境を含んでもよい。たとえば扉の開閉の形態、扉の材質、ユーザの年齢、ユーザの老若男女、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯を含んでよい。このように、より多くの環境を考慮することによって、より適した適応テーブルの生成および即暖制御が可能となる。
図13(A)に示すように、扉は、トイレルーム105の正面(暖房便座装置100の前方の面)または側面(暖房便座装置100の側方の面)のいずれかに設けられている。破線の矢印は、扉の開閉方向を示す。
扉107がトイレルーム105の正面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の前方(正面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境(I))と、トイレルーム105の側方(正面に対してほぼ平行方向)から接近する場合(環境(II))とに分けることができる。尚、図1(B)に示すように、第1検知領域DR1が暖房便座装置100に関して左右対称に広がっている限りにおいて、閾値は、ユーザがトイレルーム105の右側方から進入する場合と左側方から進入する場合とにおいて同じでよい。
扉107がトイレルーム105の側面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の前方から接近する場合(環境(III))と、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境(IV))と、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境(V))と、に分けることができる。尚、第1検知領域DR1は、暖房便座装置100に関して前後方向に非対称に広がっているので、トイレルーム105の前方から接近する場合(環境(III))と、トイレルーム105の後方から接近する場合(環境(V))とにおいて、閾値は相違させることが好ましい。
トイレルーム105の出入り口に設置される扉107の位置がトイレルーム105の正面に設けられている場合と側面に設けられている場合では、ユーザが扉107を開けたときの反射波の変化(振幅電圧や周波数)および反射波の変化推移が異なる。これは、電波センサ160からみた扉107の移動距離(位置)、電波の進行(偏波)方向に対し扉面における電波の入射角が関係する。トイレルーム105の正面に扉107が設けられている場合、扉107が開き始めるのとほぼ同時に反射波から得られる振幅電圧が増加しユーザの反射波から得られる振幅電圧よりも高くなる。さらに扉107が開くにつれ反射波から得られる振幅電圧は減少するとともに、電波センサ160からみた扉107の移動距離が短くなるため反射波から得られる周波数が低下する。一方、トイレルーム105の側面に扉107が設けられている場合、扉107の開き始めは反射波から得られる振幅電圧は低くいが、ある程度扉107が開くと反射波から得られる振幅電圧は増加しユーザの反射波から得られる振幅電圧より高くなる。
このため、トイレルーム105の正面に扉107が設けられている場合とトイレルーム105の側面に扉107が設けられている場合で、ユーザが扉107を開けてからトイレルーム105に入室するまでのアプローチ時間T1を比較したとき、電波センサにて扉107の開動が検知されるタイミングが異なり、トイレルーム105の正面に扉が設けられている方がアプローチ時間T1は長くなる。
また、アプローチ時間T1はユーザがトイレルーム105に接近する方向と扉107の開閉方向により変化する。例えば、トイレルーム105の正面に扉107が設けられている場合、ユーザが扉107を開けてからトイレルーム105内に入室する行動パターンをみると、ユーザがトイレルーム105の右側方から接近しトイレルーム内に入室するとき、ユーザの体の向き(歩く方向)は大きく変わらない。一方、ユーザがトイレルーム105の左側方から接近しトイレルーム内に入室するとき、ユーザは体の向き(歩く方向)を少なくとも90度回転する。従って、ユーザがトイレルーム105の右側方から接近する場合とトイレルーム105の左側方から接近する場合の移動経路から移動距離を比較すると、ユーザがトイレルーム105の右側方から接近する場合の方が移動距離は短い。このように、ユーザがトイレルームに接近する方向と扉の開閉方向によりユーザの移動距離が変わるためアプローチ時間T1は変化し、ユーザがトイレルーム105の右側方から接近する場合、トイレルーム105の前方から接近する場合、トイレルーム105の左側方から接近する場合、の順にアプローチ時間T1は長くなる。
トイレルーム105に設置された扉107が開く際に生じる反射波から得られる振幅電圧は、扉107の設置位置や開閉方向、扉の材質等により異なる。図13(B)は、暖房便座装置100の環境情報(I)〜(V)と閾値との対応関係を示す閾値選択テーブルである。閾値選択テーブルは、様々な環境に適合する閾値と、便座140が実際に設置される予め想定された環境情報とを対応させた複数の組合せからなるテーブルであり、予め記憶部214に格納されている。第2の実施形態では、制御部210は、暖房便座装置100が実際に設置される環境に応じて閾値を閾値選択テーブルから選択し、その選択された閾値を図4に示す基準テーブルに適用する。そして、制御部210は、その基準テーブルを用いて、図8を参照して説明したようにアプローチ時間T1またはトータル時間Ttotalを決定し、適応テーブルを自動作成する。その手順については、第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
本第2の実施形態での適応テーブルの自動作成フローは基本的に図9と同様であるが一部処理が拡張されている。以下拡張された処理を中心に説明を行う。
まず制御部210は、暖房便座装置100が実際に設置される環境に応じて閾値(判定S/N比)を閾値選択テーブルから選択し、これらの選択された閾値を図4に示す基準テーブルに書き込む。そして、制御部210は、その基準テーブルを読み込んで(図7のS10)、図7の即暖フローを行う。一方、図9の自動作成フローでは、ステップS120〜S240の処理により、トータル時間Ttotalを決定し、さらに加熱電力を決定して、適応テーブルを作成する。図7のステップS13(図9のステップS130)でのユーザが扉107を開けたことを検知した時刻t0は判定S/N比の閾値が両方とも満たされた時刻である。
尚、第1の実施形態で述べた[適応テーブルの自動設定]、[適応テーブルの更新]、および、[複数の適応テーブルからの選択]は、第2の実施形態に組み合わせてもよい。これにより、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また第2の実施形態では、閾値(判定S/N比)を暖房便座装置100の設置環境に応じて選択することによって、ユーザを早い時点で検知して(トータル時間Ttotalを長くして)便座140の加熱電力を可及的に低下させつつ、消費電力を低減させることができる。
その結果、暖房便座装置100は、上記第1の目的を達成させつつ、実際の設置環境の変化や使用環境に対して消費電力を低減するように加熱部142の加熱電力を決定することができる。
(第3の実施形態)
図14は、本発明に係る第3の実施形態に従った暖房便座装置100の環境(I)〜(V)と、閾値(判定S/N比)と、時間T1,T2,Ttotalの推定値と、加熱電力との対応関係を示すアプローチ時間選択テーブルを示す。目標温度は29℃、待機温度は26℃で固定であるとする。環境(I)〜(V)は、便宜的に、第2の実施形態の図13の環境(I)〜(V)に対応している。アプローチ時間選択テーブルは環境毎に閾値、各時間、待機温度、加熱電力間の適正な値を、非入室推定、消費電力等の観点から、事前に見積もって登録したものである。第3の実施形態による暖房便座装置100のブロック図は、第1の実施形態のそれと同様である。図14のアプローチ時間選択テーブルは予め記憶部214に格納されている。
第3の実施形態では、ユーザまたは施工業者が、遠隔操作装置300の機能設定部132を用いて環境(I)〜(V)のいずれかを選択することによって、閾値だけでなく、アプローチ時間T1、待機時間T2、トータル時間Ttotal、加熱電力も選択する。本実施形態では、このようなユーザまたは業者のマニュアルの選択作業に基づいて適応テーブルを作成する。尚、図14の例では、着座時間T2は所定の時間(例えば、5秒)に固定されており、従ってアプローチ時間T1の選択は、実質的にトータル時間Ttotalの選択と同じである。
図15は、第3の実施形態に従った適応テーブルの設定手順を示すフロー図である。
暖房便座装置100は、暖房便座装置100の実際の設置環境がまだ選択されていない場合(S400のNO)、記憶部214に予め格納されている基準テーブルを選択する(S410)。制御部210は、基準テーブルを記憶部214から読み出し、基準テーブルを用いて即暖制御(図7参照)を開始する。
一方、暖房便座装置100の実際の設置環境が選択された場合(S400のYES)、制御部210は、選択された環境に対応する閾適、アプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotal、加熱電力をアプローチ時間選択テーブルから得る(S420)。
次に、制御部210は、アプローチ時間選択テーブルから得た閾値、アプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotal、および加熱電力を用いて適応テーブルを作成する(S430)。
例えば、環境(III)を選択した場合、判定S/N比1.3、アプローチ時間T1として2秒、着座時間T2として5秒、トータル時間Ttotalとして7秒、加熱電力350Wの情報を含む適応テーブルが作成される。この際、適応テーブルには、目標温度TEMPtrgとして29℃、待機温度TEMPstbとして26℃と、昇温温度として4℃を含める。目標温度TEMPtrgおよび待機温度TEMPstbは上述の通り予め固定されており、昇温温度は目標温度TEMPtrgから待機温度TEMPstbを減算することより計算する。なお昇温温度もアプローチ時間選択テーブルに含めてもよく、この場合昇温温度の計算を省略できる。記憶部214は、作成された適応テーブルを記憶し、制御部210は、記憶された適応テーブルを読み出して即暖制御(図7参照)を行う。
なおアプローチ時間選択テーブルを目標温度別かつ待機温度別に用意しておき、ユーザが所望の目標温度および所望の待機温度を指定し、該当するアプローチ時間選択テーブルを用いるようにしてもよい。
ここで図14のアプローチ時間選択テーブルにおける環境と閾値等との関係について具体的に説明する。
例えば、暖房便座装置100の正面方向に扉107が設けられており、かつ、ユーザが暖房便座装置100の正面方向から接近する場合、電波センサ160は、ユーザの動きに対し扉107の開く動きを比較的検出しやすい。一方、暖房便座装置100の側面方向に扉107が設けられており、かつ、ユーザが暖房便座装置100の正面方向から接近する場合、電波センサ160は、ユーザの動きに対し扉107の開く動きを比較的検出し難い。従って、環境情報に対する閾値を比較すると、前者よりも後者の判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を高く設定する必要がある。
後者の場合、判定S/N比を小さくすることで、扉の開く動きをできるだけ早く検知し、トータル時間Ttotalを長くしようとしている。しかし、暖房便座装置100の設置環境によって、トータル時間Ttotalは、比較的短い。一方、加熱電力を高く設定しているので、暖房便座装置100の消費電力が増加するものの、制御部210は、短いトータル時間Ttotalで便座140の温度を目標温度TEMPtrgまで昇温させることができる。この場合、暖房便座装置100の消費電力の増加は、ユーザの快適性を確保するために必要なものである。つまり、環境情報(V)における適応テーブルは、ユーザの着座時点における便座の温度を適切な温度まで昇温させること(第1の目的)と、待機温度TEMPstbの低減(第2の目的)とのバランスを、実際の暖房便座装置100の設置環境に適合させた結果として得られたものである。
図14では、環境として代表的にトイレルーム105の扉の位置およびユーザの進入方向を含めている。しかし、環境は、第2の実施形態と同様により多くの他の環境を含んでもよい。他の環境としては、例えば、扉の開閉の形態、扉の材質、ユーザの年齢、ユーザの老若男女、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯等がある。これにより、さらに、暖房便座装置100の設置環境により適した適応テーブルを得ることができる。
扉107の材質が、樹脂等の電波透過性の良い材料である場合、電波センサ160は、扉107の開く動きに対しユーザの動きを比較的検出し易い。一方、扉107の材質が、金属等の電波透過性の悪い材料である場合、電波センサ160は、扉107の開く動きに対しユーザの動きを比較的検出し難い。従って、従って、環境情報に対する閾値を比較すると、後者よりも前者の判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を高く設定する必要がある。しかし、この場合の適応テーブルも、ユーザの着座時点における便座を適切な温度まで昇温させること(第1の目的)と、待機温度TEMPstbの低減(第2の目的)とのバランスを、実際の暖房便座装置100の設置環境に適合させた結果として得られたものである。
またユーザが若い場合、ユーザの歩行(移動)速度は比較的速い。即ち、アプローチ時間T1が短い。従って、ユーザの年齢が低い場合には、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を低く設定する。
さらに、ユーザの睡眠時間帯においては、暖房便座装置100を利用する頻度が少なく、かつ、ユーザが暖房便座装置100の使用という目的以外の目的でトイレルーム105に接近することも少ない。よって、ユーザが非入室のまま通過することは稀であると推測できる。従って、ユーザの睡眠時間帯においては、他の時間帯と比較して、判定S/N比を小さくし、加熱電力を低く設定する。
以上のように第3の実施形態によれば、暖房便座装置100の設置環境に対応した閾値およびアプローチ時間T1等を選択する。これにより、暖房便座装置100は、暖房便座装置100の設置環境に対応して加熱電力の低減し、消費電力を可及的に低減させることができる。
(第4の実施形態)
本実施形態は、ユーザの着座時までに便座140を目標温度TEMPtrgまで高めることができないと見込まれる場合に、ヒーター142の加熱電力を上昇させようとするものである。
本実施形態に係る即暖フローは第1の実施形態で示した即暖フローを拡張したものである。より詳細には、本実施形態に係る即暖フローは、図7の即暖フローのステップS15のブロックと、ステップS17のブロックとの間に、図16のフローを追加したものに相当する。
前述したように図7のステップS15ではユーザが扉107を開けたことを検知した後、第1の制限時間内にユーザ入室が検知されたか否かを判断する。第1の制限時間内にユーザ入室が検知された場合に(S15のYES)、図16のステップS31では、制御部210が、ユーザが扉107を開けたこと検知してからユーザの入室検知までに要した時間(以下時間Sと記述する)が、アプローチ時間T1より小さいか否かを検査する(S31)。
上記時間Sがアプローチ時間T1以上のときは(S31のNO)、ユーザがアプローチ時間T1以上の時間を要してトイレルームに入室したと判断し、特に特別な処理を行うことなく、図7のステップS17に進む。
一方、上記時間Sがアプローチ時間T1より小さいときは(S31のYES)、ユーザがアプローチ時間T1よりも短い時間でトイレルームに入室したと判断して、制御部210は、ヒーター142による加熱電力を上昇させる(S32)。すなわち、基準テーブルまたは適応テーブルに設定された加熱電力は、アプローチ時間T1でユーザがトイレルームに入室することを想定しているため、時間Sが、アプローチ時間T1より小さい場合、ユーザが着座するまでに便座を目標温度TEMPtrgまで高められない可能性が大きくなる。そこで本ステップでは、時間Sがアプローチ時間T1より短い場合に当該テーブルに設定された加熱電力よりも大きな値に加熱電力を変更することで、このような問題を防止する。
加熱電力を大きくする具体的な構成としては、たとえばアプローチ時間T1と時間Sとの差分値を計算し、差分値が大きいほど、電力の上昇幅を大きくすることが可能である。この場合、差分値の範囲毎にそれぞれ電力の上昇値Δを対応づけた上昇テーブルをあらかじめ記憶部214に格納しておき、計算した差分値に対応する上昇値Δだけ加熱電力を上昇させてもよい。
また上述の上昇テーブルは待機温度毎に用意してもよい。この場合、基準テーブルまたは適用テーブルに設定された待機温度をもつ上昇テーブルを選択し、選択した上昇テーブルを用いて上昇幅Δを取得する。
または、上述の上昇テーブルを加熱電力毎に用意してもよい。この場合、基準テーブルまたは適用テーブルに設定された加熱電力をもつ上昇テーブルを選択し、選択した上昇テーブル用いて上昇幅Δを取得する。
以上のように、本実施形態によれば、ユーザが扉107を開けたこと検知してから入室検知までに要した時間Sがアプローチ時間T1より短いときは、加熱電力を上昇させるようにしたことにより、ユーザが着座するまでに便座140を目標温度TEMPtrgまで上昇させる可能性を高めることができる。