JP2012202455A - 純せん断型エネルギー吸収デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも安価に製造でき、施工性もよく、かつエネルギー吸収メカニズムを簡潔に評価でき、さらには様々な寸法に容易に対応することもできる純せん断型エネルギー吸収デバイスを提供すること。
【解決手段】せん断型エネルギーを吸収する鋼製のせん断パネル部3と、せん断パネル部3と一体であって当該せん断パネル部の上下端部にそれぞれ形成された固定用パネル部4・5と、を有する純せん断型エネルギー吸収デバイス1である。2枚の拘束板6・7でせん断パネル部3を挟み込むとともにその周囲に炭素繊維シート8を巻き付けて、せん断パネル部3に対して拘束板6・7を固定し、せん断パネル部3の面外変形を拘束している。
【選択図】図2

Description

本発明は、地震時などの揺れを吸収することで、建築物の主体構造の損傷を抑える純せん断型エネルギー吸収デバイスに関する。
この種の技術に関して、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。特許文献1に記載されたせん断型エネルギー吸収デバイス(制振部材)は、せん断降伏用鋼板と、当該せん断降伏用鋼板の上下端に溶接されたフランジと、を備え、せん断降伏用鋼板を挟み込むようにその両側に山形鋼(横断面がL字形をした鋼材)を配置してなるものである。
また、特許文献2に記載されたせん断型エネルギー吸収デバイス(ダンパー装置)は、横断面がH字形をした鋼製のダンパー装置本体と、このダンパー装置本体を囲む角形の鋼管と、を備え、鋼管の内部にコンクリートが充填されてなるものである。ダンパー装置本体は、H字形断面のウェブを構成するせん断パネルと、一対のフランジを構成する側部板材と、せん断パネルおよび側部板材の上下に接合された固定用板材と、からなる。
特許文献1、2に記載されたせん断型エネルギー吸収デバイスは、例えば、建築物の間柱の一部として間柱に組み込まれる。地震、風などによる外力を建築物が受けたとき、鋼板(特許文献1ではせん断降伏用鋼板、特許文献2ではせん断パネル)がせん断力を負担して塑性変形することで、すなわち弾塑性の応力−変形関係(履歴ループ)に沿って挙動することで、履歴ループに応じたエネルギーが吸収される(履歴減衰)。特許文献1に記載の山形鋼、特許文献2に記載の鋼管および充填コンクリートにより、せん断力を負担する鋼板の面外変形を拘束している。
特開2000−96867号公報 特開2009−47193号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたせん断型エネルギー吸収デバイス(制振部材)では、せん断降伏用鋼板の上下端にフランジを溶接しているので溶接作業のための工数が必要となり製作コストが高くなる。また、溶接時の熱によってせん断降伏用鋼板の金属組織が変化してしまうので、耐震能力(エネルギー吸収メカニズム)を簡潔に評価できないという短所もある。さらには、山形鋼は規格で寸法が決まっており、せん断降伏用鋼板の高さ寸法に柔軟に対応させることができないという短所もある。寸法の関係上、せん断降伏用鋼板の両側に山形鋼で挟み込めない部分(露出する部分)が生じた場合、その部分の面外変形を拘束することができない。
特許文献2に記載されたせん断型エネルギー吸収デバイス(ダンパー装置)では、鋼管の内部にコンクリートを充填しているが、この作業は施工性が悪い。また、特許文献2に具体的な接合方法は記載されていないが、その構造から、せん断パネルと側部板材、ならびに、せん断パネルおよび側部板材と固定用板材とは、溶接により接合されていると考えられる。この場合、特許文献1に記載の制振部材と同様に、製作コストが高くなる、耐震能力を簡潔に評価できない、という短所がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来よりも安価に製造でき、施工性もよく、かつエネルギー吸収メカニズムを簡潔に評価でき、さらには様々な寸法に容易に対応することもできる純せん断型エネルギー吸収デバイスを提供することである。
本発明は、せん断型エネルギーを吸収する鋼製のせん断パネル部と、前記せん断パネル部と一体であって当該せん断パネル部の上端部に形成された固定用上部パネル部と、前記せん断パネル部と一体であって当該せん断パネル部の下端部に形成された固定用下部パネル部と、前記せん断パネル部を挟み込んで当該せん断パネル部の面外変形を拘束するモルタル製またはコンクリート製の2枚の拘束板と、前記せん断パネル部を挟み込んだ前記2枚の拘束板の周囲に巻き付けて、当該せん断パネル部に対して当該2枚の拘束板を固定するシートと、を備える純せん断型エネルギー吸収デバイスである。
この構成によると、せん断パネル部と固定用上部パネル部と固定用下部パネル部とが一体であるので相互の接合が不要である。すなわち、溶接作業などを要さないので従来よりも安価に製造することができる。また、溶接作業を要さないので、せん断パネル部などの金属組織が変化せず、その結果、エネルギー吸収メカニズムを簡潔に評価することができる。
また、モルタル製またはコンクリート製の拘束板でせん断パネル部を挟み込み、その周囲にシートを巻き付けるという簡単な作業で純せん断型エネルギー吸収デバイスを形成することができるので施工性にも優れる。また、せん断パネル部の面外変形を拘束するのに、溶接、ボルト接合などといった手段を用いていない。そのために、デバイス全体のエネルギー吸収を純粋にせん断のみで取り扱うことが可能となる。したがって、せん断パネル部の評価(エネルギー吸収メカニズム)を簡潔にすることができる。さらには、モルタル製またはコンクリート製の拘束板は様々な寸法のものを容易に作ることができるので、本発明の純せん断型エネルギー吸収デバイスは、様々な寸法に容易に対応することができる。
また本発明において、前記固定用上部パネル部は、前記せん断パネル部の上端から当該せん断パネル部と同一平面で延在するように形成されており、前記固定用下部パネル部は、前記せん断パネル部の下端から当該せん断パネル部と同一平面で延在するように形成されていることが好ましい。この構成によると、エネルギー吸収メカニズムをより簡潔に評価することができる。
さらに本発明において、前記拘束板がモルタル製であることが好ましい。モルタルは、セメント、細骨材(例えば砂)、および水を混ぜ合わせてできるものであり、コンクリートは、セメント、粗骨材(例えば砂利)、および水を混ぜ合わせてできるものである。すなわち、モルタル製の拘束板とすることで、コンクリート製のものよりも、厚みの薄い拘束板を作りやすく、拘束板の寸法の適用範囲が広がる。
さらに本発明において、前記シートが炭素繊維シートであることが好ましい。この構成によると、炭素繊維シートは強度が高いので、せん断パネル部と拘束板とを強固に固定することができるとともに、シートが破損しにくい。
本発明によれば、せん断パネル部と固定用上部パネル部および固定用下部パネル部とを一体成形し、モルタル製またはコンクリート製の拘束板でせん断パネル部を挟み込み、その周囲にシートを巻き付けてなるという構成とすることで、従来よりも安価に製造でき、施工性もよく、かつエネルギー吸収メカニズムを簡潔に評価でき、さらには様々な寸法に容易に対応することもできる純せん断型エネルギー吸収デバイスとすることができる。
本発明の一実施形態に係る純せん断型エネルギー吸収デバイスを建築物の間柱の一部として間柱に組み込んだ状態を示す図である。 図1に示す純せん断型エネルギー吸収デバイスの製作手順を示す図である。 実験で用いた純せん断型エネルギー吸収デバイスの各部寸法を示すための図である。 本実施形態の純せん断型エネルギー吸収デバイスと、面外変形を拘束する拘束板および炭素繊維シートを設けていないせん断型エネルギー吸収デバイスと、の比較実験結果を示すグラフである。 本実施形態の純せん断型エネルギー吸収デバイスと、面外変形を拘束する拘束板および炭素繊維シートを設けていないせん断型エネルギー吸収デバイスと、の比較実験結果を示すグラフである。 図4、5に示した本実施形態の純せん断型エネルギー吸収デバイスを構成する拘束板の高さ寸法を大きくした場合(拘束部を広げた場合)の実験結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明に係る純せん断型エネルギー吸収デバイスは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建築物における間柱(耐震間柱)の一部として用いたり、木造建築物の基礎と臥梁との間に直接挿入して用いたりするものである。図1は、本発明の一実施形態に係る純せん断型エネルギー吸収デバイスを建築物の間柱の一部として間柱に組み込んだ状態を示す図である。
建築物は、複数の柱50、柱50間に架設された複数の梁51・52、および梁51・52に支持された床(不図示)などを具備してなるものである。ここで、複数の柱50間のうち所定の箇所には上下の梁51・52間に間柱53が設置される。本発明の一実施形態に係る純せん断型エネルギー吸収デバイス1(以下、「デバイス」と呼ぶ)を、この間柱53と梁52間に組み込んだ例を図1に示している。地震、風などに起因する水平力が建築物に作用した場合、上下の梁51・52が互いに図1の左右にずれるような相対運動(揺れ)が生じる。デバイス1は、この相対運動のエネルギーを吸収する(相対運動を減衰させる)ように機能する。
(純せん断型エネルギー吸収デバイスの構成)
図2、図3を参照しつつ本実施形態のデバイス1について説明する。なお、図3に関して、図3(b)および図3(c)は、それぞれ、図3(a)に示したデバイス1の側面図および底面図である。デバイス1は、鋼製のI形のパネル2と、パネル2のせん断パネル部3の面外変形を拘束する拘束部(拘束板6・7および炭素繊維シート8)とで構成されている。
(鋼製のパネル)
パネル2は、例えばSS400(JIS規格に規定される一般構造用圧延鋼材(引張強さ:400〜510N/mm))材の板厚tの1枚の鋼板から製作される。このパネル2は、せん断型エネルギーを吸収する矩形のせん断パネル部3と、せん断パネル部3の上端部に形成された固定用上部パネル部4と、せん断パネル部3の下端部に形成された固定用下部パネル部5とからなる。固定用上部パネル部4および固定用下部パネル部5には、それぞれ、複数の取付用孔4aおよび複数の取付用孔5aが設けられている。なお、SS400材よりも降伏点が低い低降伏点鋼(極軟鋼)材などでパネル2を製作してもよい。本実施形態では純粋なせん断のみによってエネルギーを吸収する構成としているために、SS400材などの安価な一般鋼材を用いることができる。
固定用上部パネル部4および固定用下部パネル部5は、デバイス1を所定の箇所に固定するための部分である。例えば図1に示した位置にデバイス1を固定する場合、まず、間柱53の下端部、および間柱53に対向する梁52の上面部に、それぞれ2枚の山形鋼を高力ボルトで仮固定する。その後、デバイス1の固定用上部パネル部4および固定用下部パネル部5を、それぞれ2枚の山形鋼の間に挿入し、高力ボルトを用いて両固定用パネル部4・5を山形鋼に締め付けて本固定を行う。
前記したように、せん断パネル部3と固定用パネル部4・5とからなるパネル2は、1枚の鋼板から製作される。すなわち、固定用パネル部4・5は、せん断パネル部3と一体である。パネル2の製作に関して溶接作業を要さないので、従来よりも安価にデバイス1を製作することができる。また、溶接作業を要さないので、せん断パネル部3の金属組織が変化せず、エネルギー吸収メカニズムを簡潔に評価することができる。
また、固定用上部パネル部4は、せん断パネル部3の上端から当該せん断パネル部3と同一平面で延在するように形成されており、同様に、固定用下部パネル部5は、せん断パネル部3の下端から当該せん断パネル部3と同一平面で延在するように形成されている。また、せん断パネル部3の面外変形を拘束するようにしているため、エネルギー吸収メカニズムをより簡潔に評価することができる。例えば、デバイス1の初期剛性K、降伏せん断力Q、限界せん断力Qは、次式を用いて簡単に求めることができる。
Figure 2012202455
H:水平力、δ:水平変位、E:縦弾性係数、G:横弾性係数、κ:断面形状係数、
h、b、t:せん断パネル部3の各部寸法(図3参照)
Figure 2012202455
σ:降伏応力、 b、t:せん断パネル部3の各部寸法(図3参照)
Figure 2012202455
σ:降伏応力、 b、t:せん断パネル部3の各部寸法(図3参照)
(拘束部)
せん断パネル部3の面外変形を拘束する拘束部は、せん断パネル部3をその両側から挟み込むモルタル製の矩形板状の2枚の拘束板6・7と、せん断パネル部3を挟み込んだ2枚の拘束板6・7の周囲に巻き付けてせん断パネル部3に対して当該2枚の拘束板6・7を固定する帯状の炭素繊維シート8とからなる。
炭素繊維シート8の損傷を防止するために(応力集中を緩和するために)モルタル製の拘束板6・7の角部は、R=20mmのアーチ形とされている。なお、拘束板6・7をコンクリート製のものとしてもよい。また、せん断パネル部3を挟み込んだ2枚の拘束板6・7の周囲に、炭素繊維シート8を少なくとも二巻き、巻き付けることが好ましい。
モルタル製またはコンクリート製の拘束板6・7でせん断パネル部3を挟み込み、その周囲に炭素繊維シート8を巻き付けるという簡単な作業でせん断パネル部3の面外変形を拘束することができる。そのため、本実施形態のデバイス1は施工性(製作性)に優れる。また、せん断パネル部3の面外変形を拘束するのに、溶接、ボルト接合などといった手段を用いないので、せん断パネル部3の評価(エネルギー吸収メカニズム)を簡潔にすることができる。さらには、モルタル製またはコンクリート製の拘束板6・7は様々な寸法のものを容易に作ることができるので、本実施形態のデバイス1は、様々な寸法のものに容易に対応することができる。
なお、モルタルは、セメント、細骨材(例えば砂)、および水を混ぜ合わせてできるものであり、コンクリートは、セメント、粗骨材(例えば砂利)、および水を混ぜ合わせてできるものである。本実施形態のように、モルタル製の拘束板6・7とすることで、コンクリート製のものよりも、厚みの薄い拘束板を作りやすく、拘束板の寸法の適用範囲が広がる。
また、本実施形態では、炭素繊維シート8を用いているが、他の素材製のシートを用いてもよい。なお、炭素繊維シートは強度が高いので、炭素繊維シートを用いることで、せん断パネル部3と拘束板6・7とを強固に固定することができるとともに、当該シートが破損しにくい。
(実施例1)
次に、デバイス1のエネルギー吸収性能比較実験結果について図3〜図6を参照しつつ説明する。
まず、図4に結果を示した比較実験について説明する。図4(a)は、本実施形態のデバイス1のエネルギー吸収性能評価試験結果を示すグラフであり、図4(b)は、面外変形を拘束する拘束板・炭素繊維シートを設けていない以外は、図4(a)で用いたデバイス1と同条件のデバイスのエネルギー吸収性能評価試験結果を示すグラフである。
ここで、図4(a)、図4(b)は、実験により得られたせん断力Qとせん断変形角γとの関係を示すグラフであり、縦軸にせん断力Q、横軸にせん断変形角γを示す。前記した「数2」、「数3」の数式から計算した計算降伏せん断力Qおよび計算限界せん断力Qを、それぞれ、点線および実線で図中に示している(図5、図6についても同様)。
[デバイス1の仕様]
せん断パネル部3
素材:SS400(板厚t:2.3mm)、幅b:176mm、高さh:176mm
なお、応力集中を緩和するために、せん断パネル部3の四隅はR=20mmのアーチ形とした。
固定用パネル部4・5
素材:SS400(板厚t:2.3mm)、幅W:380mm、高さh1:82mm(パネル2の全高さh2:340mm)、取付用孔4a・5aの径:φ22mm
拘束板6・7
素材:モルタル、幅d:226mm、高さf:160mm、板厚:20mm
炭素繊維シート8:二巻き
[実験方法]
固定用パネル部4・5を、試験機に取り付けたそれぞれ2枚の山形鋼の間に挿入し、それぞれ4本の高力ボルト(M20、F10T)を用いて両固定用パネル部4・5を山形鋼に締め付け固定した。そして、試験機のアクチュエータによりデバイス1に正負交番繰返し水平力を載荷した。水平力載荷の制御は、せん断パネル部3のせん断変形角(パネル上部水平方向変位/パネル高さ)により変位制御で行った。水平力載荷プログラムは、せん断変形角が0.005rad、0.01radでそれぞれ2回ずつ、0.02rad、0.04rad、0.06rad、および0.08radで(一部実験は0.06radまで)それぞれ3回ずつ、繰返し載荷するプログラムとした(図5、図6に結果を示した実験についても同様)。
[実験結果]
モルタル製の拘束板で拘束されていないデバイスには、明瞭な早期面外変形が見られたのに対して、モルタル製の拘束板6・7で拘束されたデバイス1においては、当該デバイス1をせん断変形角が±0.06radとなるまで(一部実験は0.08radとなるまで)変形させたにもかかわらず、せん断パネル部3の面外座屈が完全に止められ(面外座屈が生じなかった)、鋼板の上下端部の引っ張り淵に鋼材の破断が生じるまでエネルギー吸収を安定的に行った(図5(a)、図6に示した実験結果においても同様)。これより、本実施形態のデバイス1は、鋼材のもつ強さを限界まで発揮させることができる、すなわちエネルギー吸収効率の極めて高い耐震デバイスであることがわかる。
また、拘束板で拘束されていないデバイスは、小さい変形段階で鋼板の面外座屈が発生し、図4(b)からわかるように、計算降伏せん断力までせん断力が上昇しなかった。すなわち、小さい変形段階で鋼板の抵抗力が急激に低下した。それに対して、拘束板6・7および炭素繊維シート8でせん断パネル部3が拘束されてなる本実施形態のデバイス1においては、せん断変形角が±0.06radに達するまで安定した履歴ループを描き、計算降伏せん断力を超えるまでせん断力が上昇した。
(実施例2)
次に、図5に結果を示した比較実験について説明する。図5(a)は、本実施形態のデバイス1のエネルギー吸収性能評価試験結果を示すグラフであり、図5(b)は、面外変形を拘束する拘束板・炭素繊維シートを設けていない以外は、図5(a)で用いたデバイス1と同条件のデバイスのエネルギー吸収性能評価試験結果を示すグラフである。
本実験のデバイス1の仕様は、パネル2の板厚tを3.2mmとしていることを除いて、図4に結果を示したデバイスの仕様とすべて同じである。
[実験結果]
図5(a)と図5(b)とを比較するに、拘束板で拘束されていないデバイスは、拘束板および炭素繊維シートで拘束されてなる本実施形態のデバイス1よりも、明らかに早い変形段階でせん断力の上昇が停止および下降している。それに対して、本実施形態のデバイス1においては、せん断変形角が±0.06radに達するまで安定した履歴ループを描き、計算降伏せん断力を十分に超えるまでせん断力が上昇した。
(実施例3)
次に、図6に結果を示した比較実験について説明する。図6(a)および図6(b)は、いずれも、拘束板および炭素繊維シートで拘束されてなる本実施形態のデバイス1のエネルギー吸収性能評価試験結果を示すグラフである。
図6(a)に実験結果を示したデバイス1の仕様は、拘束板6・7のそれぞれの高さfを170mm、幅dを240mmとしていることを除いて、図4(a)に結果を示したデバイス1の仕様とすべて同じである。また、図6(b)に実験結果を示したデバイス1の仕様は、パネル2の板厚tを3.2mmとしていることを除いて、図6(a)に結果を示したデバイス1の仕様とすべて同じである。
[実験結果]
図6(a)からわかるように、せん断パネル部3の拘束高さを、160mmから170mmへ変更することによって、デバイス1は、せん断変形角が±0.08radに達するまで安定した履歴ループを描き、計算限界せん断力に達するまでせん断力が上昇した。また、図6(b)から、パネル2の板厚tを2.3mmから3.2mmへ変更しても、せん断パネル部3の高さ全体にわたって拘束板6・7および炭素繊維シート8でせん断パネル部3が拘束されているため、図6(a)に示した結果と同様、デバイス1は、せん断変形角が±0.08radに達するまで安定した履歴ループを描き、ほぼ計算限界せん断力に達するまでせん断力が上昇した。図6に示した結果から、せん断パネル部3のできる限り広い範囲を拘束板6・7で拘束することが好ましいことがわかる。なお、本実施形態のデバイス1は、2枚の拘束板6・7でせん断パネル部3をその両側から挟み込み、その周囲に炭素繊維シート8を巻き付けたという構成としているため、拘束部(拘束板6・7および炭素繊維シート8)の取り換えが極めて容易である、という長所もある。
図4〜図6に、仕様が異なる4のデバイス1のエネルギー吸収性能評価試験結果を示したが、いずれの結果においても、本デバイス1の履歴ループには、従来の純せん断型エネルギー吸収デバイスにおいて、せん断変形角0(ゼロ)付近でよく見られる抵抗力低下(せん断力低下)現象が見られなかった。このことは、既存建築物の耐震補強デバイスとして本デバイス1を利用する際に、現行の設計体系の枠組みの中で設計できることを示唆している。本デバイス1を建築物の構造躯体に組み込めば、地震時などのエネルギーの大半が本デバイス1によって吸収され、構造躯体の負担を大きく低減できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
1:デバイス(純せん断型エネルギー吸収デバイス)
2:パネル
3:せん断パネル部
4:固定用上部パネル部
5:固定用下部パネル部
6、7:拘束板
8:炭素繊維シート

Claims (4)

  1. せん断型エネルギーを吸収する鋼製のせん断パネル部と、
    前記せん断パネル部と一体であって当該せん断パネル部の上端部に形成された固定用上部パネル部と、
    前記せん断パネル部と一体であって当該せん断パネル部の下端部に形成された固定用下部パネル部と、
    前記せん断パネル部を挟み込んで当該せん断パネル部の面外変形を拘束するモルタル製またはコンクリート製の2枚の拘束板と、
    前記せん断パネル部を挟み込んだ前記2枚の拘束板の周囲に巻き付けて、当該せん断パネル部に対して当該2枚の拘束板を固定するシートと、
    を備える、純せん断型エネルギー吸収デバイス。
  2. 請求項1に記載の純せん断型エネルギー吸収デバイスにおいて、
    前記固定用上部パネル部は、前記せん断パネル部の上端から当該せん断パネル部と同一平面で延在するように形成されており、
    前記固定用下部パネル部は、前記せん断パネル部の下端から当該せん断パネル部と同一平面で延在するように形成されていることを特徴とする、純せん断型エネルギー吸収デバイス。
  3. 請求項1または2に記載の純せん断型エネルギー吸収デバイスにおいて、
    前記拘束板がモルタル製であることを特徴とする、純せん断型エネルギー吸収デバイス。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の純せん断型エネルギー吸収デバイスにおいて、
    前記シートが炭素繊維シートであることを特徴とする、純せん断型エネルギー吸収デバイス。
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