JP2012201953A - ステンレス鋼帯の脱スケール方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
硫酸水溶液中での電解酸洗により、焼鈍後のステンレス鋼帯の脱スケールを行うに際し、脱スケール作用に伴ってステンレス鋼帯から溶出した金属イオンによる酸洗能力の低下を抑制し、硫酸水溶液中での電解酸洗による脱スケール能力を向上させる。
【解決手段】
硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素などの酸化剤を用いて酸洗液中のFe2+をFe3+に酸化させ、液中のFe2+濃度を5g/l以下に管理する。
【選択図】 図2
硫酸水溶液中での電解酸洗により、焼鈍後のステンレス鋼帯の脱スケールを行うに際し、脱スケール作用に伴ってステンレス鋼帯から溶出した金属イオンによる酸洗能力の低下を抑制し、硫酸水溶液中での電解酸洗による脱スケール能力を向上させる。
【解決手段】
硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素などの酸化剤を用いて酸洗液中のFe2+をFe3+に酸化させ、液中のFe2+濃度を5g/l以下に管理する。
【選択図】 図2
Description
本発明はステンレス鋼帯の脱スケール法に関するものであり、酸性水溶液中において陽極電解を行うことにより、焼鈍後のステンレス鋼帯の脱スケールを行う方法に関し、連続生産による硫酸水溶液の酸洗能力低下を抑制し、効率的に脱スケールを行う技術である。
冷間圧延後のステンレス鋼帯に対して行われる焼鈍処理方法の1つとして、大気雰囲気炉内で燃料をバーナー燃焼させて熱処理を行う大気焼鈍方法がある。この焼鈍方法では、大気中の酸素および燃焼によって生じた水蒸気により、ステンレス鋼帯の表面に金属酸化物が生成するので、これを除去し、良好な品質のステンレス鋼帯を製造するために、焼鈍処理後に脱スケール処理が行われる。
脱スケール処理方法として、酸性水溶液中に浸漬する方法、中性塩水溶液あるいは酸性水溶液中で陽極電解を行う方法(以下、単に電解酸洗と言う)、苛性ソーダと硝酸ソーダとの混合溶融塩中での浸漬処理を行う方法があり、これらを組み合わせてステンレス鋼帯の脱スケールが行われている。
組合せの1つとして、特許文献1に中性塩水溶液中での電解酸洗を行った後、硫酸水溶液中で電解酸洗を行い、さらに弗硝酸水溶液への浸漬または硝酸水溶液中での電解酸洗によって脱スケールを行う方法が開示されている。これは、まず中性塩水溶液での電解酸洗によって表層のCr酸化物を溶解し、続いて酸性水溶液中での電解酸洗によって金属素地を溶解させることで残存した酸化物を除去する脱スケール方法である。
酸性水溶液中を用いた場合、脱スケールが進行するにつれて酸洗液中のH+濃度が低下し、酸洗能力が低下することから、安定して脱スケールを行うために、定期的に酸を補充して生産が行われている。
さらに、脱スケール作用に伴ってステンレス鋼帯から溶出した金属イオンによっても酸洗能力が低下することが知られている。特に硫酸電解においてその影響が顕著であり、その対策として特許文献2ではFeイオン濃度がモル比で硫酸濃度の0.5以下に維持する脱スケール技術が開示されている。
硫酸水溶液での電解酸洗について、特許文献2の技術によって金属イオンによる酸洗能力の低下を抑制することは可能であるが、金属イオン濃度を低下させるための液交換の頻度が多くなることが課題であった。そのため、酸の補充や液交換以外の手段で酸洗能力の低下を抑制する方法が求められていた。
本発明に係る脱スケール法は、硫酸水溶液中での陽極電解によって焼鈍後のステンレス鋼帯の脱スケールを行う方法に関し、酸化剤を用いて酸洗液中のFe2+をFe3+に酸化させ、液中のFe2+濃度を5g/l以下に管理することにより連続生産による硫酸水溶液の酸洗能力低下を抑制した、ステンレス鋼帯の脱スケール方法である。
第2の発明は、硫酸水溶液として50〜200g/lのH2SO4を含む水溶液を用いることを特徴とするステンレス鋼帯の脱スケール方法である。
更には、酸化剤として硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素のいずれか1種以上を用いることを特徴とするステンレス鋼の脱スケール方法である。
第2の発明は、硫酸水溶液として50〜200g/lのH2SO4を含む水溶液を用いることを特徴とするステンレス鋼帯の脱スケール方法である。
更には、酸化剤として硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素のいずれか1種以上を用いることを特徴とするステンレス鋼の脱スケール方法である。
硫酸水溶液中での電解酸洗は、上述の通り金属素地を溶解させることである。そこで、金属イオンを含む硫酸水溶液中でSUS436Lを電解し、金属素地の溶解速度に及ぼす金属イオンの影響を詳細に調査した。硫酸水溶液はH2SO4濃度85g/l、電流密度は500A/m2、金属イオンはFe2+、Fe3+、Cr3+を用いた。なお金属イオンはいずれも硫酸塩として添加した。得られた結果を図1に示す。
Fe3+、Cr3+に関しては、金属イオン濃度が高くなっても金属素地の溶解速度に変化は認められなかった。一方、Fe2+に関しては、金属イオン濃度が高くなるにつれて、金属素地の溶解速度が低下した。
Fe2+の存在によって金属素地の溶解速度が低下する原因は、通電電流が金属素地の溶解のみでなく、Fe2+→Fe3+の反応にも使用されるためであると考えた。そこで、20g/lのFe2+を含む硫酸水溶液に、酸化剤としてNa2Cr2O7を添加し、同様の実験によって金属素地の溶解速度を求めた。得られた結果を図2に示す。
Na2Cr2O7量の増加とともに金属素地の溶解量は増加し、一定量を添加することにより、金属イオンを含まない硫酸水溶液中と同等の溶解量まで回復した。この添加量は、Fe2+をFe3+に酸化させるために必要な理論量とほぼ等しい。またこのときのFe2+濃度は5g/l以下であった。Na2Cr2O7以外にも、硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素などの種々の酸化剤を用いてFe2+をFe3+に酸化させることで、同様の効果を得ることができる。
またステンレス鋼帯の脱スケールを行うために一般的に利用される中性塩水溶液(Na2SO4水溶液)での電解酸洗において、スケールの溶解によってクロム酸塩を生じることから、酸化剤として脱スケールに使用した後の中性塩水溶液を用いても良い。
以上の結果を元に本発明をなした。本発明は硫酸水溶液中での電解酸洗により、焼鈍後のステンレス鋼帯の脱スケールを行う方法に関し、硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素などの酸化剤を用いて酸洗液中のFe2+をFe3+に酸化させ、液中のFe2+濃度を5g/l以下に管理することによって、効率的に脱スケールを行う方法である。
本発明により、液交換を行うことなく、脱スケール作用に伴ってステンレス鋼帯から溶出した金属イオンによる酸洗能力の低下を抑制し、硫酸水溶液中での電解酸洗による脱スケール能力を向上させることができる。
脱スケール設備の一例を図3に示す。通板するステンレス鋼帯の上下に、鋼帯から一定の距離を取った位置に陽極および陰極を配置する。このような通電方法は間接通電法と言われ、ステンレス鋼帯の脱スケール方法として一般的に利用されるものである、電解電圧とコストを考慮すると、陽極は白金族金属あるいは白金属酸化物を被覆した電極を使用し、陰極はステンレス鋼などの鉄系合金を使用することが好ましい。
図1のような電極配置を1組として、1槽内に2組以上設置しても良い。
酸洗液濃度
H2SO4濃度が50g/lよりも低い場合、脱スケール能力が不十分であり、濃度が200g/lを超えると表面肌荒れが生じることから、本発明におけるH2SO4濃度は50〜200g/lとする。
H2SO4濃度が50g/lよりも低い場合、脱スケール能力が不十分であり、濃度が200g/lを超えると表面肌荒れが生じることから、本発明におけるH2SO4濃度は50〜200g/lとする。
酸洗液温度
液温が30℃よりも低い場合、脱スケール能力が不十分であり、液温が80℃を超えると表面肌荒れが生じることから、本発明における酸洗液温度は30〜80℃とする。
液温が30℃よりも低い場合、脱スケール能力が不十分であり、液温が80℃を超えると表面肌荒れが生じることから、本発明における酸洗液温度は30〜80℃とする。
通電量
通電量は酸洗設備の規模に応じて設定すればよい。ただし、電極表面の電流密度として100A/m2よりも電流密度が低いと脱スケール能力が不十分であり、2000A/m2を超えるとガス発生量が増加し脱スケール以外に不要の電力を使用することになる。したがって、本発明における電極表面の電流密度は100〜2000A/m2とする。
通電量は酸洗設備の規模に応じて設定すればよい。ただし、電極表面の電流密度として100A/m2よりも電流密度が低いと脱スケール能力が不十分であり、2000A/m2を超えるとガス発生量が増加し脱スケール以外に不要の電力を使用することになる。したがって、本発明における電極表面の電流密度は100〜2000A/m2とする。
SUS436Lの板厚1mmのステンレス鋼帯を用い、適正な材料特性が得られる条件での焼鈍を行った。焼鈍後のステンレス鋼帯をまずNa2SO4濃度200g/lの中性塩水溶液中での電解酸洗を行い、続いて連続生産に利用した後の、H2SO4濃度85g/lであって45g/lのFe2+、20g/lのFe3+が含まれる、酸洗能力が低下した硫酸水溶液にクロム酸塩を加えて硫酸水溶液中のFe2+濃度を2g/lとして電解酸洗と行った。さらにHNO3濃度85g/lの硝酸水溶液中での電解酸洗を行った。酸洗設備の構成および電解条件は従来技術とし、通板速度を30m/minから55m/minに変化させて脱スケールを行った。脱スケールを行った。クロム酸塩としては中性塩水溶液の廃液を用いた。脱スケール後のステンレス鋼帯の表面を顕微鏡により拡大観察し、スケール残の有無を確認した結果、通板速度によらずスケール残は認められなかった。通板速度が55m/minを超えた場合はスケール残が発生するため、55m/minが本設備、条件での上限通板速度である。
その結果、通板速度が35m/minを超えてもスケール残は認められず、新液を用いた場合と同様、通板速度55m/minまで良好な表面性状のステンレス鋼帯を得ることができた。
その結果、通板速度が35m/minを超えてもスケール残は認められず、新液を用いた場合と同様、通板速度55m/minまで良好な表面性状のステンレス鋼帯を得ることができた。
[比較例1]
焼鈍後のステンレス鋼帯をまずNa2SO4濃度200g/lの中性塩水溶液中での電解酸洗を行い、続いてH2SO4濃度85g/lの硫酸水溶液中での電解酸洗を行った。硫酸水溶液は新液に交換した後の金属イオンを含まない水溶液を用いた。さらにHNO3濃度85g/lの硝酸水溶液中での電解酸洗を行った。他の製造条件は上記実施例と同様である。
焼鈍後のステンレス鋼帯をまずNa2SO4濃度200g/lの中性塩水溶液中での電解酸洗を行い、続いてH2SO4濃度85g/lの硫酸水溶液中での電解酸洗を行った。硫酸水溶液は新液に交換した後の金属イオンを含まない水溶液を用いた。さらにHNO3濃度85g/lの硝酸水溶液中での電解酸洗を行った。他の製造条件は上記実施例と同様である。
[比較例2]
比較例1において、連続生産に利用した後の、45g/lのFe2+、20g/lのFe3+が含まれる硫酸水溶液をそのまま用い、他は同条件として脱スケールを行った。その結果、通板速度が35m/min以上の場合にスケール残が認められた。金属イオン濃度の上昇により、酸洗能力が低下しているためである。したがって、本発明の方法によらずに新液と同等の通板速度で生産するためには、従来技術であれば液の交換が必要であることになる。
比較例1において、連続生産に利用した後の、45g/lのFe2+、20g/lのFe3+が含まれる硫酸水溶液をそのまま用い、他は同条件として脱スケールを行った。その結果、通板速度が35m/min以上の場合にスケール残が認められた。金属イオン濃度の上昇により、酸洗能力が低下しているためである。したがって、本発明の方法によらずに新液と同等の通板速度で生産するためには、従来技術であれば液の交換が必要であることになる。
Claims (3)
- 硫酸水溶液中での陽極電解によって焼鈍後のステンレス鋼帯の脱スケールを行う方法に関し、酸化剤を用いて酸洗液中のFe2+をFe3+に酸化させ、液中のFe2+濃度を5g/l以下に管理することにより連続生産による硫酸水溶液の酸洗能力低下を抑制した、ステンレス鋼帯の脱スケール方法。
- 請求項1に記載の脱スケール方法において、硫酸水溶液として50〜200g/lのH2SO4を含む水溶液を用いることを特徴とするステンレス鋼帯の脱スケール方法。
- 請求項1又は2に記載の脱スケール方法において、酸化剤として硝酸、硝酸塩、クロム酸、クロム酸塩、過酸化水素のいずれか1種以上を用いることを特徴とするステンレス鋼の脱スケール方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011069124A JP2012201953A (ja) | 2011-03-28 | 2011-03-28 | ステンレス鋼帯の脱スケール方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2011069124A Withdrawn JP2012201953A (ja) | 2011-03-28 | 2011-03-28 | ステンレス鋼帯の脱スケール方法 |
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2011
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