JPH0827600A - ステンレス鋼帯の脱スケール方法および装置 - Google Patents

ステンレス鋼帯の脱スケール方法および装置

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JPH0827600A
JPH0827600A JP16245594A JP16245594A JPH0827600A JP H0827600 A JPH0827600 A JP H0827600A JP 16245594 A JP16245594 A JP 16245594A JP 16245594 A JP16245594 A JP 16245594A JP H0827600 A JPH0827600 A JP H0827600A
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aqueous solution
stainless steel
steel strip
descaling
sulfuric acid
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JP16245594A
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Satoshi Shibuya
智 渋谷
Manabu Kudo
学 工藤
Takuji Okiyama
卓司 沖山
Kazuo Sakurai
一生 桜井
Noriyuki Chiyuujiyou
敬之 中乗
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 難脱スケール性ステンレス鋼帯の効率的な脱
スケール方法および装置を提供する。 【構成】 ステンレス鋼帯1の表面に生成している酸化
スケールは、中性塩水溶液電解槽2で中性塩陽極電解処
理された後、硫酸水溶液電解槽3で硫酸陽極電解処理さ
れ、さらに後続する硝酸水溶液電解槽4で硝酸陰極電解
処理されるか、または硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽5で浸
漬処理される。酸化スケールは中性塩陽極電解処理で主
としてクロム酸化物が選択溶解され、硫酸陽極電解処理
で主として鉄酸化物が溶解され、硝酸陰極電解処理また
は硝酸弗酸混合水溶液浸漬処理で最終脱スケール処理さ
れるので、厚いスケールを有する難脱スケール性ステン
レス鋼帯においても短時間で効率的に脱スケール処理を
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス鋼帯の表面
に生成している酸化スケールを、極力高速脱スケールす
ることを可能とし、たとえ難脱スケール性ステンレス鋼
帯であっても短時間で効率的に脱スケールすることがで
きるステンレス鋼帯の脱スケール方法および装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般にステンレス鋼帯は、冷間圧延後に
加工硬化した鋼帯を再結晶や軟化させるために熱処理が
行われる。熱処理は、通常カテナリー炉と称される横型
炉や縦型炉により大気雰囲気中における直火加熱方式で
行われる。該熱処理によりステンレス鋼帯の表面には酸
化スケールが生成する。この酸化スケールは、ステンレ
ス鋼帯の表面品質および最終的には商品価値を著しく損
なうので脱スケールする必要がある。一般に該熱処理と
脱スケールとは同一ライン内の一連の連続焼鈍脱スケー
ル設備で行われる。
【0003】酸化スケールの脱スケール方法に関して、
従来から多数の先行技術が開示されている。最も広く行
われている方法は、ステンレス鋼帯をアルカリ溶融塩に
浸漬した後に硝酸弗酸混合水溶液に浸漬処理するかまた
は硝酸水溶液中で電解処理する方法である。該方法は脱
スケール性に優れており難脱スケール性を有するステン
レス鋼帯の酸化スケールを除去することができる。しか
しながら、アルカリ溶融塩の溶融温度が400〜500
℃と高いため作業性が悪く、ヒュームの発生により環境
が悪化するという問題点を有している。
【0004】特公平5−2758号公報に開示されてい
る方法は、濃度が900〜1250g/lの硫酸水溶液
中でステンレス鋼帯を陽極電解する脱スケール法であ
る。該方法は単一液による脱スケール処理であるので、
工程が大幅に簡素化されるけれども、高濃度硫酸を使用
するためステンレス鋼帯の表面が荒れやすいという問題
点がある。
【0005】特公昭38−12162号公報に開示され
ている方法は、中性塩水溶液中で陽極電解処理した後に
亜硫酸、硝酸、弗化水素酸またはこれらの混合水溶液中
に浸漬する脱スケール法である。ステンレス鋼帯の酸化
スケールはFe34を含む(Fe、Cr)23からなる
鉄、クロムスピネル型酸化物である。中性塩水溶液中で
陽極電解すると酸化スケール中のCr23は酸化されて
Cr27 -2イオンとなって溶解し、表面には鉄酸化物を
主としたスケールが緩められた状態で残る。この残存ス
ケールは酸に浸漬することによって溶解除去される。
【0006】特公昭53−13173号公報に開示され
ている方法は、中性塩水溶液中で陽極電解処理後に硝酸
イオンを含む酸性水溶液中で陰極電解する脱スケール法
である。前述のように中性塩水溶液中で陽極電解された
ステンレス鋼の表面残存酸化スケールは主として鉄酸化
物である。該残存鉄酸化物スケールを硝酸イオンを含む
酸性水溶液中で陰極電解すると、鉄酸化物中の3価の鉄
イオンが溶解しやすい2価の鉄イオンに還元されるの
で、表面残存鉄酸化物は酸性水溶液中に溶解除去され
る。
【0007】特開平2−122099号公報に開示され
ている方法は、中性塩水溶液中での陽極電解処理とアル
カリ水溶液中での陽極電解処理とを行った後、硝酸水溶
液中での陰極電解処理または硝酸弗酸混合水溶液中への
浸漬処理を行う脱スケール法である。アルカリ水溶液中
で陽極電解すると、酸化スケール中のCr23は酸化さ
れてCrO4 -2 イオンとなってアルカリ水溶液中に溶解
する。クロムイオンがCr27 -2イオンではなく、Cr
4 -2 イオンとなるのは水溶液のpHが高いためであ
る。該方法は中性塩水溶液中での陽極電解処理とアルカ
リ水溶液中での陽極電解処理との2工程でCr23の溶
解が進行するので、クロム酸化物はより確実に溶解除去
される。
【0008】特公平5−2758号公報、特公昭38−
12162号公報、特公昭53−13173号公報、お
よび特開平2−122099号公報に開示されている方
法は、いずれもアルカリ溶融塩を使用しないので、高温
作業性やヒュームによる環境問題はない。しかしながら
難脱スケール性ステンレス鋼帯を対象にする場合には、
いずれの方法も脱スケール能力が不足しており、脱スケ
ール時間が長くなるという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述のように難脱スケ
ール性ステンレス鋼帯を脱スケールする場合、先行技術
にはそれぞれ問題点がある。近年、自動車の軽量化、高
性能化にともなって排ガス用にステンレス鋼板が多用さ
れるようになってきた。自動車排ガス用ステンレス鋼帯
には耐熱性、耐酸化性が要求されるので、クロム含有量
が高く炭化物安定化元素を含むフェライト単相系ステン
レス鋼が適用される。該ステンレス鋼帯、たとえばSU
S444(19Cr−2Mo−0.4Nb−low
C)、SUS430LX(18Cr−0.5Nb−lo
wC)等は再結晶温度が高いので、冷間圧延後の熱処理
は高温度で行われる。該ステンレス鋼帯の熱処理温度は
900〜1100℃である。この熱処理温度は、通常の
SUS430を代表とするフェライト系ステンレス鋼帯
に比べると150〜200℃高いので、該ステンレス鋼
帯には厚い酸化スケールが生成する。このため該ステン
レス鋼帯の脱スケール性は極めて悪く、該ステンレス鋼
帯は難脱スケール性ステンレス鋼帯と呼ばれている。
【0010】先行技術のうちアルカリ溶融塩を用いる方
法は、脱スケール能力が高く、前記難脱スケール性ステ
ンレス鋼帯に対しても脱スケールが可能である。しかし
ながら該方法には、前述した高温作業性やヒュームによ
る環境問題のほかにも次のような問題点がある。
【0011】アルカリ溶融塩は粘性が高いので、ステ
ンレス鋼帯に付着してはアルカリ溶融塩槽外へ比較的多
量に持ち出される。該付着溶融塩は該槽内においてワイ
ピング装置によってステンレス鋼帯表面から完全に除去
することが困難であるので、同一ライン内あるいは次工
程ライン内の種々のロールによってステンレス鋼帯表面
に押し込まれロール押し込み疵が発生する。 アルカリ溶融塩の消耗量が多くなるので、コスト高と
なり全く不経済である。 排水に含まれるアルカリの量が増大するので、排水処
理費用が増加する。 上記の問題点はステンレス鋼帯の通板速度を増
大させる程悪化するので、脱スケールの高速化が困難と
なる。 また、その他の先行技術において開示されている脱スケ
ール法は、難脱スケール性ステンレス鋼帯に対しては、
いずれの方法も脱スケール能力が不足しているので、通
板速度を低速にして対応する必要があり、能率や生産性
が大幅に低下するという問題点がある。さらに前記特開
平2−122099号公報に開示されている方法は、本
発明者らの調査では、アルカリ水溶液中での陽極電解処
理条件によってはクロム酸化物の溶解以上に溶解した金
属が酸化スケール上に新たに酸化物として積層し、後続
の硝酸電解処理や硝酸弗酸混合水溶液浸漬処理による脱
スケールを困難にする場合もあることが判明した。
【0012】また、近年生産性を向上させるために、既
存の連続焼鈍脱スケール設備の熱処理能力増や新設設備
の通板速度の高速化が図られるようになってきた。この
ため難脱スケール性ステンレス鋼帯ばかりでなく通常の
ステンレス鋼帯においても高速脱スケール技術の開発が
強く望まれている。
【0013】本発明の目的は、前記先行技術の問題点を
解決し、難脱スケール性ステンレス鋼帯であっても短時
間で効率的な脱スケールが可能なステンレス鋼帯の脱ス
ケール方法およびより高速脱スケールを可能とし生産性
を向上させ得るステンレス鋼帯の脱スケール方法とその
装置を提供することにある。
【0014】
【発明を解決するための手段】本発明は、ステンレス鋼
帯を中性塩水溶液中で陽極電解した後に、硫酸水溶液中
で陽極電解することを特徴とするステンレス鋼帯の脱ス
ケール方法である。
【0015】また本発明は、前記硫酸水溶液中で陽極電
解した後、硝酸弗酸混合水溶液中に弗酸浸漬処理するこ
とを特徴とする。
【0016】また本発明は、前記硫酸水溶液中で陽極電
解した後、硝酸水溶液中で陰極電解処理することを特徴
とする。
【0017】また本発明は、前記中性塩水溶液として、
Na2SO4濃度を100〜400g/l、pHを6〜
8、液温を70〜90℃、クロム酸イオン濃度を15g
/l以下、スラッジ濃度を5g/l以下とする水溶液を
使用することを特徴とする。
【0018】また本発明は、前記硫酸水溶液として、硫
酸濃度を50〜250g/l、溶解鉄イオン濃度を10
g/l以下、液温を20〜90℃、スラッジ濃度を5g
/l以下とする水溶液を使用することを特徴とする。
【0019】また本発明は、前記中性塩水溶液中で行う
陽極電解の陽極電流密度を1〜10A/dm2とするこ
とを特徴とする。
【0020】また本発明は、前記硫酸水溶液中で行う陽
極電解の陽極電流密度を1〜15A/dm2とすること
を特徴とする。
【0021】また本発明は、前記中性塩水溶液中で行う
陽極電解の電解時間と前記硫酸水溶液中で行う陽極電解
の電解時間との比率を、0.2〜5.0とすることを特
徴とする。
【0022】また本発明は、連続的に通板されるステン
レス鋼帯を主としてNa2SO4水溶液からなる中性塩水
溶液中で陽極電解するための中性塩水溶液電解槽と、中
性塩水溶液電解槽内を通過した該ステンレス鋼帯を主と
してH2SO4水溶液からなる硫酸水溶液中で陽極電解す
るための硫酸水溶液電解槽と、硫酸水溶液電解槽内を通
過した該ステンレス鋼帯をさらに硝酸水溶液中で陰極電
解処理するか硝酸弗酸混合水溶液中に浸漬処理するため
の槽と、これら各槽の前後面にステンレス鋼帯を直列に
通板するために配置されるデフレクタロールとを含むこ
とを特徴とするステンレス鋼帯の脱スケール装置であ
る。
【0023】
【作用】本発明に従えば、ステンレス鋼帯は中性塩水溶
液中で陽極電解された後に、硫酸水溶液中で陽極電解さ
れる。中性塩水溶液中の陽極電解によって、クロム酸化
物と鉄酸化物とから構成される酸化スケール中のクロム
酸化物は、酸化され溶解しやすいクロム酸イオンに変化
するので、酸化スケール中のクロム酸化物は選択的に溶
解される。また、硫酸水溶液中における陽極電解によっ
て、鉄酸化物とクロム酸化物とが同時に溶解するので、
ステンレス鋼帯表面には鉄酸化物からなる酸化スケール
が残存する。該鉄酸化物はクロム酸化物が選択的に溶解
されているので、脱スケールしやすい状態で残存する。
【0024】また本発明に従えば、中性塩水溶液、硫酸
水溶液、硝酸弗酸混合水溶液、硝酸水溶液といった全て
に渡って水溶液を用いるので、前述のアルカリ溶融塩を
用いる場合のように高温作業がなく、熱やヒュームが発
生しないため安全性が確保され、このための環境問題も
解消され、ワイピングして容易に除去できるためステン
レス鋼帯表面に付着してライン内外に持ち去られること
を殆んどなくすことが可能となる。したがって、低コス
トで経済的かつ安定した操業が可能となるだけでなく、
何よりも高速脱スケールが可能となり能率および生産性
を向上することができる。
【0025】また本発明に従えば、ステンレス鋼帯は前
記硫酸水溶液中で陽極電解された後、硝酸弗酸混合水溶
液中に浸漬処理される。これによってステンレス鋼帯表
面に残存していた鉄酸化物が完全に除去されるので、厚
い酸化スケールを有する難脱スケールステンレス鋼帯に
おいても酸化スケールは短時間で完全に脱スケールされ
る。
【0026】また本発明に従えば、ステンレス鋼帯は前
記硫酸水溶液中で陽極電解された後、硝酸水溶液中で陰
極電解される。これによってステンレス鋼帯表面に残存
していた鉄酸化物が還元されて溶解しやすい2価の鉄イ
オンに変化するので、鉄酸化物は完全に除去される。こ
のため厚い酸化スケールを有する難脱スケール性ステン
レス鋼帯においても、酸化スケールは短時間で完全に脱
スケールされる。
【0027】また本発明に従えば、中性塩水溶液はNa
2SO4濃度100〜400g/l、pH6〜8、液温7
0〜90℃、クロム酸イオン濃度15g/l以下、スラ
ッジ濃度5g/l以下で使用される。これによって中性
塩水溶液は最適条件に保持されて使用されるので、ピッ
ティングを発生させないでクロム酸化物の溶解を短時間
で行うことができる。
【0028】また本発明に従えば、硫酸水溶液は硫酸濃
度50〜250g/l、溶解鉄イオン10g/l以下、
液温20〜90℃、スラッジ濃度5g/l以下で使用さ
れる。これによって硫酸水溶液は最適条件に保持されて
使用されるので、ピッティングを発生させないで鉄酸化
物とクロム酸化物の溶解を同時に短時間で行うことがで
きる。
【0029】また本発明に従えば、中性塩水溶液中での
陽極電解は陽極電流密度を1〜10A/dm2として行
われるので、ピッティングを発生させないでクロム酸化
物の溶解を短時間で行うことができる。
【0030】また本発明に従えば、硫酸水溶液中での陽
極電解は陽極電流密度を1〜15A/dm2 として行わ
れるので、ピッティングを発生させないで鉄酸化物およ
びクロム酸化物の溶解を同時に短時間で行うことができ
る。
【0031】また本発明に従えば、中性塩水溶液中で行
う陽極電解の電解時間と硫酸水溶液中で行う陽極電解の
電解時間との比率は0.2〜5.0の範囲内に限定され
る。これによってクロム酸化物と鉄酸化物との溶解量の
バランスを適正に保つことができるので、スケール残や
ピッティングのない完全脱スケール面を得ることができ
る。
【0032】また本発明に従えば、ステンレス鋼帯の脱
スケール装置は、上流側より直列に配設される中性塩水
溶液電解槽、硫酸水溶液電解槽、硝酸水溶液電解槽また
は硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽と、これら各槽の前後面に
配設されるデフレクタロールとを含んで構成される。該
脱スケール装置は、ステンレス鋼帯表面の酸化スケール
を脱スケールするのに好適な処理槽が好適な順序で直列
に配設されているので、ステンレス鋼帯表面の酸化スケ
ールを効率的に脱スケールすることができる。
【0033】
【実施例】図1は本発明に係わる脱スケール装置の一実
施例の簡略化した構成を示す説明図であり、図2は脱ス
ケール特性に及ぼす硫酸水溶液の硫酸濃度および液温の
影響を示す特性図である。図1に示すように、脱スケー
ル装置には上流側より中性塩水溶液電解槽2、硫酸水溶
液電解槽3、硝酸水溶液電解槽4および硝酸弗酸混合水
溶液浸漬槽5が直列に配設されている。またこれら各槽
間および硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽5の出側には、上流
側より洗浄ノズル10および回転ブラシ装置11がそれ
ぞれ配設されている。さらに各槽の前後面には、ステン
レス鋼帯1を直列に通板するためにデフレクタロール9
がそれぞれ配設されている。
【0034】熱処理後の酸化スケールを表面に有するス
テンレス鋼帯1はデフレクタロール9を介して中性塩水
溶液電解槽に通板される。中性塩水溶液電解槽2には、
槽内の入側と出側とにシンクロール8が配設され、シン
クロール8間に陰電極6と陽電極7とが配設されてい
る。陰電極6と陽電極7とはステンレス鋼帯1の表裏面
に対向設置され、上下一対の陰電極6と上下一対の陽電
極7とがステンレス鋼帯1の走行方向に交互に並んで配
設されている。図1には、上流側から上下一対の陰電極
6と上下一対の陽電極7と、上下一対の陰電極6とが交
互に配設されている状態を示している。ステンレス鋼帯
1はシンクロール8によって中性塩水溶液12中に浸漬
されたまま通板される。両電極間に直流電圧を印加すれ
ば、ステンレス鋼帯1は中性塩水溶液12を介して間接
電解される。連続的に走行するステンレス鋼帯1は、上
下一対の陰電極6間においては陽極に分極されて陽極電
解され、上下一対の陽電極7間においては陰極に分極さ
れて陰極電解される。陽極電解領域においては、ステン
レス鋼帯1の酸化スケール中のクロム酸化物は次の反応
式により酸化され、Cr27 -2イオンとなって選択的に
溶解する。
【0035】 Cr23+4H2O→Cr27 -2+8H++6e- …(1) 一方間接電解のため、必然的に生じる陰極電解領域にお
いては、水素発生反応と、鉄酸化物の還元反応とが生じ
るけれども、脱スケールにはほとんど寄与しない。また
中性塩は、上記反応には関与しないけれども、水溶液の
電気伝導度を向上させる電解質として硫酸、硝酸のナト
リウム塩等が使用されている。中性塩水溶液電解槽2に
おける反応は、陽極電解反応に好適な条件設定がされて
いるので、全体的には陽極電解反応が支配的であり、主
としてクロム酸化物が溶解される。
【0036】中性塩水溶液12は、Na2SO4濃度を1
00〜400g/l、クロム酸イオン濃度を15g/l
以下、スラッジ濃度を5g/l以下、pHを6〜8、液
温を70〜90℃に調製維持されることが好ましい。N
2SO4の濃度を100〜400g/lに限定したの
は、濃度が100g/l未満では水溶液の電気伝導度が
低下して、電解電力の増加や脱スケール性の低下を招
き、濃度が400g/lを超えるとNa2SO4が水に溶
解しないおそれが生ずるためである。クロム酸イオン濃
度を15g/l以下に限定したのは、濃度が15g/l
を超えると前記反応式の反応速度が低下し、脱スケール
反応が起こり難くなり、脱スケール不良が発生し易くな
ることによるものである。スラッジ濃度を5g/l以下
に限定したのは、スラッジ濃度が5g/lを超えると中
性塩水溶液12の劣化が著しくなり、脱スケール不良が
発生し易くなることによるものであり、さらに中性塩電
解槽2内のシンクロール8にスラッジが巻き込まれてス
テンレス鋼帯1に押し込み疵を発生させ易くなることに
よるものである。中性塩水溶液のpHを6〜8に限定し
たのは、pHが6未満ではピッティングが発生し、pH
が8を超えると脱スケール不良が発生し易くなることに
よるものである。pH調製は必要に応じて硫酸やNaO
Hを用いて行われる。中性塩水溶液の液温を70〜90
℃に限定したのは、液温が70℃未満では反応速度が低
下して脱スケール不良が発生し易くなり、液温が90℃
を超えると中性塩水溶液中の水分蒸発が大きくなり、濃
度維持が困難になることによるものである。
【0037】中性塩陽極電解の陽極電流密度は、1〜1
0A/dm2 の範囲に管理されることが好ましい。陽極
電流密度が上記範囲に限定されるのは、1A/dm2
満では脱スケール不良が発生し易くなり、10A/dm
2 を超えるとピッティングが発生することによるもので
ある。中性塩陽極電解処理後、ステンレス鋼帯1は中性
塩水溶液電解槽2の下流側に配設された洗浄ノズル10
および回転ブラシ装置11に通板される。ステンレス鋼
帯1は洗浄ノズル10から噴射される水によって洗浄さ
れた後、回転ブラシによって表面の付着物が除去され
る。
【0038】ステンレス鋼帯1は、洗浄後、デフレクタ
ロール9を介して硫酸水溶液電解槽3に通板される。硫
酸水溶液電解槽3には、槽内の入側と出側とにシンクロ
ール8が配設され、シンクロール8間に上流側から上下
一対の陰電極6と上下一対の陽電極7と上下一対の陰電
極6とが交互に配設されている。シンクロール8、陰電
極6および陽電極7の構成は中性塩水溶液電解槽2と全
く同一である。ステンレス鋼帯1はシンクロール8によ
って硫酸水溶液中に浸漬されたまま通板され、上下一対
の陰電極6間では陽極電解され、上下一対の陽極7間で
は陰極電解される。陽極電解領域においては、酸化溶解
反応により鉄酸化物の溶解とクロム酸化物の溶解が同時
に進行する。このため、厚い酸化スケールを有する難脱
スケールステンレス鋼帯において、前記中性塩陽極電解
処理後にクロム酸化物が残存していても該硫酸陽極電解
処理によってクロム酸化物は完全に溶解する。陰極電解
領域においては、鉄酸化物が還元され溶解し易い二価の
鉄イオンに変化するので、鉄酸化物の溶解が進行する。
硫酸水溶液電解槽3における反応は陽極電解反応に好適
な条件設定がされているので全体的には陽極反応が支配
的であり、主として鉄酸化物が溶解される。硫酸水溶液
電解処理後、ステンレス鋼帯1の表面に残存する酸化ス
ケールは、鉄酸化物であり、クロム酸化物が選択溶解さ
れているので脱スケールし易い状態になっている。
【0039】硫酸水溶液13は硫酸濃度を50〜250
g/l、溶解鉄イオン濃度を10g/l以下、液温を2
0〜90℃、スラッジ濃度を5g/l以下に調製維持さ
れることが好ましい。図2に脱スケール特性に及ぼす硫
酸水溶液の硫酸濃度および液温の影響を示す。図2にお
いて使用したステンレス鋼帯1の鋼種は、SUS444
である。ステンレス鋼帯1は、中性塩陽極電解処理、硫
酸陽極電解処理、硝酸陰極電解処理を連続的に施された
後、表面観察によって脱スケール性の評価が行われる。
中性塩陽極電解処理条件は、Na2SO4濃度200g/
l、電流密度5A/dm2 であり、硝酸陰極電解処理条
件は硝酸濃度100g/l、電流密度2A/dm2であ
り、硫酸陽極電解処理条件は電流密度5A/dm2で硫
酸濃度と液温とは図2中に示す条件である。図2におい
て、○印は光学顕微鏡の倍率400倍の視野に残存酸化
スケールが認められない脱スケール性の良好な条件を示
す記号であり、×印は該視野に残存酸化スケールが10
点を超えて認められる脱スケール性が不良の条件を示す
記号であり、△印は脱スケールは可能であるがピッティ
ングを発生する条件を示す記号である。したがって、○
印を実線で結んだ範囲内が脱スケール性が良好な領域で
ある。図2から硫酸水溶液の硫酸濃度は50〜250g
/l、液温は20〜80℃が最適条件であることがわか
る。硫酸水溶液13中の溶解鉄イオン濃度を10g/l
以下に限定したのは、濃度が10g/lを超えると鉄酸
化物の溶解反応速度が低下し、脱スケール不良が発生し
易くなることによるものである。硫酸水溶液13中のス
ラッジ濃度を5g/l以下に限定したのは、中性塩水溶
液12のスラッジ濃度限定と全く同一の理由によるもの
である。硫酸陽極電解の陽極電流密度は、1〜15A/
dm2 の範囲に管理されることが好ましい。陽極電流密
度が上記範囲に限定されるのは、1A/dm2 未満では
脱スケール不良が発生し易くなり、15A/dm2 を超
えるとピッティングを発生することによるものである。
【0040】また前記中性塩水溶液中で行う陽極電解の
電解時間と該硫酸水溶液中で行う陽極電解の電解時間と
の比率は0.2〜5.0の範囲に管理されることが好ま
しい。前述のように中性塩陽極電解においては主として
クロム酸化物が溶解され、硫酸陽極電解においては主と
して鉄酸化物が溶解される。このため、該比率を適正範
囲に管理することによってクロム酸化物と鉄酸化物との
溶解量のバランスを適正に保つことができる。該比率範
囲を0.2〜5.0に限定したのは、該比率が0.2未
満ではピッティングを発生し、該比率が5.0を超える
と脱スケール不良が発生し易くなることによるものであ
る。硫酸陽極電解処理後、ステンレス鋼帯1は硫酸陽極
電解槽3の下流側に配設された洗浄ノズル10および回
転ブラシ装置11に通板され、水洗ならびにスマット除
去が行われる。
【0041】ステンレス鋼帯1は洗浄後、デフレクタロ
ール10を介して硝酸水溶液電解槽4に通板される。硝
酸水溶液電解槽4には、前記中性塩水溶液電解槽2およ
び前記硫酸水溶液電解槽3と全く同一の構成でシンクロ
ール8、上下一対の陰電極6および上下一対の陽電極7
が配設されている。ステンレス鋼帯1はシンクロール8
によって硝酸水溶液14中に浸漬通板され、上下一対の
陰電極6間では陽極電解され、上下一対の陽電極7間で
は陰極電解される。陽極電解領域においては、酸化溶解
反応により鉄酸化物の溶解と鋼素地の溶解が進行する。
陰極電解においては、鉄酸化物が還元され溶解し易い二
価の鉄イオンに変化するので、鉄酸化物の溶解が進行す
る。陰極電解領域においては、鋼素地の溶解は生じな
い。硝酸水溶液電解槽4における反応は、陰極電解反応
に好適な条件設定がされているので、全体的には陰極電
解反応が支配的であり、主として鉄酸化物が溶解され、
鋼素地の溶解はほとんど生じない。前述のように、ステ
ンレス鋼帯1の表面に残存している鉄酸化物は脱スケー
ルし易い状態になっているので、該硝酸陰極電解処理に
よって完全に脱スケールされる。また鋼素地の溶解はほ
とんど生じないので、ステンレス鋼帯1の表面は平滑で
光沢があり美麗な鏡面を呈する。該硝酸陰極電解処理
は、陰極電解反応に好適な一般的な条件、たとえば硝酸
水溶液の硝酸濃度100g/l、電流密度2A/dm2
で行われる。硝酸陰極電解処理後、ステンレス鋼帯1は
硝酸陰極電解槽4の下流側に配設された洗浄ノズル10
および回転ブラシ装置11に通板され、水洗ならびにス
マット除去が行われる。
【0042】ステンレス鋼帯1は洗浄後、デフレクタロ
ール9を介して硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽5に通板され
る。硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽5には、槽内の入側と出
側とに昇降可能なシンクロール8が配設されている。シ
ンクロール8を上昇させれば、ステンレス鋼帯1は硝酸
弗酸混合水溶液15中に浸漬されることなくバイパス通
板される。シンクロール8を下降させれば、ステンレス
鋼帯1は硝酸弗酸混合水溶液15に浸漬通板される。ス
テンレス鋼帯1には通常脱スケールの最終処理として前
記硝酸陰極電解処理または該硝酸弗酸混合水溶液浸漬処
理が行われる。前記硝酸陰極電解処理を脱スケールの最
終処理として行う場合、ステンレス鋼帯1はシンクロー
ル8を上昇させて該硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽5をバイ
パス通板させる。硝酸弗酸混合水溶液浸漬処理を脱スケ
ールの最終処理として行う場合、ステンレス鋼帯1はシ
ンクロール8を下降させて硝酸弗酸混合水溶液15中に
浸漬通板される。この場合前記硝酸陰極電解槽4におい
ては通電が行われないのでステンレス鋼帯1は電解され
ないで硝酸水溶液14中に浸漬通板される。ステンレス
鋼帯1の表面に残存している鉄酸化物は脱スケールし易
い状態になっているので、硝酸弗酸混合水溶液中への浸
漬通板によって完全に脱スケールされる。硝酸弗酸混合
水溶液の濃度は一般的な濃度、たとえば硝酸濃度100
g/l、弗酸濃度10g/lが選定される。
【0043】脱スケールの最終処理はステンレス鋼帯1
の表面仕上げによって選定される。硝酸陰極電解処理
は、たとえばNo.2BC仕上げステンレス鋼帯に対し
て適用され、硝酸弗酸混合水溶液浸漬処理は、たとえば
No.2BDおよびNo.2D仕上げステンレス鋼帯に
対して適用される。なお硝酸陰極電解処理と硝酸弗酸混
合水溶液浸漬処理とを連続して行うこともできる。硝酸
弗酸混合水溶液浸漬処理後、ステンレス鋼帯1は硝酸弗
酸混合水溶液浸漬槽5の出側に配設された洗浄ノズル1
0および回転ブラシ装置11に通板され、水洗ならびに
スマット除去が行われる。
【0044】本発明は、以上述べたように各処理槽とも
全て扱いやすい水溶液を用いて脱スケールを行ってい
る。したがって前述のアルカリ溶融塩を用いる場合のよ
うに高温作業がなく、熱やヒュームが発生しないので安
全性が確保され、それに伴う環境問題も解消される。さ
らに本発明法で用いている水溶液は、ワイピング性に問
題のあるアルカリ溶融塩に比べて、ワイピングによって
容易に除去できるので、ステンレス鋼帯表面に付着して
ライン内外に持ち去られることも殆んどなくなる。この
ため、高速脱スケールが可能となり、能率および生産性
を大幅に向上することができる。
【0045】以下に本発明にかかわるステンレス鋼帯の
脱スケール方法の優れた脱スケール性を実施例1から実
施例4により説明する。実施例1は、本発明法の脱スケ
ール性と先行技術の脱スケール性とを比較したものであ
る。先行技術としては、特開平2−122099号公報
に開示されているアルカリ陽極電解処理を含む脱スケー
ル法を用いた。実施例1において使用したステンレス鋼
帯1は、板厚1.0mmの冷延済ステンレス鋼帯であ
り、鋼種は難脱スケール性を有するSUS444であ
る。熱処理は、大気開放型の直火熱処理炉で行われ、熱
処理条件は材料温度1000℃、在炉時間90秒であっ
た。本発明法は図1に示す脱スケール装置を用いて実施
され、先行技術による脱スケール法は本発明法の硫酸水
溶液をNaOH水溶液に交換して実施された。脱スケー
ルの最終処理は、硝酸陰極電解処理が実施された。表1
に脱スケール条件および脱スケール性評価結果を示す。
脱スケール時間は、本発明法および先行技術による脱ス
ケール法とも同一に設定した。脱スケール性評価は、最
終処理後光学顕微鏡を用いて行った。表1に示す脱スケ
ール性評価において、○印は、光学顕微鏡の倍率400
倍の視野に残存酸化スケールが認められない脱スケール
性良好の評価を示す記号であり、×印は該視野に残存酸
化スケールが10点を超えて多数認められる脱スケール
性不良の評価を示す記号である。表1より、先行技術に
よる脱スケール法を適用した比較例では、いずれも脱ス
ケール性不良の評価であるのに対して、本発明法を適用
した実施例ではいずれも脱スケール性良好の評価である
ことがわかる。すなわち本発明法は先行技術による脱ス
ケール法に比べ、難脱スケール性ステンレス鋼帯に対し
ても効率的な脱スケールが可能な脱スケール法である。
【0046】実施例2は、硫酸陽極電解処理溶液中の鉄
イオン濃度およびスラッジ濃度に関して、本発明法の濃
度条件を満たす実施例の脱スケール性と本発明法の濃度
条件を外れる比較例の脱スケール性とを比較したもので
ある。実施例2におけるステンレス鋼帯1の鋼種、板厚
および熱処理条件は実施例1と同一である。実施例2
は、図1に示す脱スケール装置を用いて実施され、脱ス
ケールの最終処理は硝酸陰極電解処理が行われた。表2
に脱スケール条件および脱スケール評価結果を示す。脱
スケール時間は実施例および比較例とも同一に設定し
た。脱スケール性評価は、実施例1と同様の方法で行っ
た。表2に示す脱スケール性評価において、△印は光学
顕微鏡の倍率400倍の視野に残存酸化スケールが10
点以下認められる脱スケール性がやや不良の評価を示す
記号である。前記本発明法の濃度条件は、鉄イオン濃度
10g/l以下、スラッジ濃度5g/l以下であるの
で、表2に示すように比較例はいずれも本発明法の濃度
条件から外れている。表2から本発明法の濃度条件を外
れる比較例の脱スケール性は、いずれも脱スケール性不
良または脱スケール性やや不良の評価であるのに対し
て、本発明法の濃度条件を満たす実施例の脱スケール性
はいずれも脱スケール性良好の評価であることがわか
る。すなわち本発明法は、難脱スケール性ステンレス鋼
帯に対しても効率的な脱スケールが可能な優れた脱スケ
ール法である。
【0047】実施例3は、本発明法の脱スケール性と先
行技術の脱スケール性とを脱スケール時間を評価基準と
して比較したものである。また中性塩陽極電解時間と硫
酸陽極電解時間との比率に関して、本発明法の定める比
率範囲を満たす実施例の脱スケール性と、本発明法の定
める比率範囲を外れる比較例の脱スケール性とについて
も合わせて比較したものである。先行技術としては、実
施例1と同一のアルカリ陽極電解処理を含む脱スケール
法を用いた。実施例3において使用したステンレス鋼帯
1は、板厚1.0mmの冷延済ステンレス鋼帯であり、
鋼種はSUS430である。熱処理は、大気開放型の直
火熱処理炉で行われ、熱処理条件は材料温度850℃、
在炉時間90秒であった。実施例3における脱スケール
装置、脱スケール方法、脱スケール評価方法は実施例1
と同一である。表3に脱スケール条件および脱スケール
性評価結果を示す。表3より本発明法は、先行技術によ
る脱スケール法と比べて短時間で脱スケールが可能であ
り、高速処理に適した脱スケール法であることがわか
る。本発明法の定める中性塩陽極電解時間と、硫酸陽極
電解時間との比率範囲は、0.2〜5.0であるので、
表3に示すように比較例No.1およびNo.2は該比
率範囲から外れている。表3より該比率範囲から外れて
いる比較例No.1およびNo.2の脱スケール性は、
脱スケール性不良またはピッティング発生の評価である
のに対して、該比率範囲を満たす実施例の脱スケール性
はいずれも脱スケール性良好の評価であることがわか
る。
【0048】実施例4は、本発明法の脱スケール性なら
びに光沢性と、先行技術の脱スケール性ならびに光沢性
とを比較したものである。先行技術としては、実施例1
と同一のアルカリ陽極電解処理を含む脱スケール法を用
いた。実施例4において使用したステンレス鋼帯1は、
板厚1.0mmの冷延済ステンレス鋼帯であり、鋼種は
SUS304である。熱処理は大気開放型の直火熱処理
炉で行われ、熱処理条件は材料温度1050℃、在炉時
間90秒であった。実施例4における脱スケール装置お
よび脱スケール性評価方法は、実施例1と同一である。
脱スケールの最終処理は、硝酸弗酸混合水溶液浸漬処理
が実施された。表4に脱スケール条件、脱スケール性評
価結果および光沢評価結果を示す。光沢評価は、目視観
察で行った。硝酸および弗酸濃度は、先行技術を適用し
た比較例の方が本発明法を適用した実施例より高濃度に
設定されている。脱スケール時間は、実施例No.4お
よび比較例No.4が他の実施例および比較例よりも短
時間に設定されている。表4より本発明法は、先行技術
による脱スケール法と比べて光沢の優れた脱スケール面
が得られ、かつ硝酸および弗酸濃度を低減しても短時間
で脱スケールが可能な優れた脱スケール法であることが
わかる。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ステンレ
ス鋼帯は中性塩水溶液中の陽極酸化によってクロム酸化
物が選択的に溶解された後に、硫酸水溶液中の陽極酸化
によって鉄酸化物とクロム酸化物とが同時に溶解される
ので、ステンレス鋼帯表面には鉄酸化物が脱スケールし
易い状態で残存する。このため、厚い酸化スケールを有
する難脱スケール性ステンレス鋼帯においても、後続す
る最終処理で残存スケールを容易に脱スケールすること
ができるので、最終処理の負荷が軽減される。
【0054】また本発明によれば、ステンレス鋼帯は最
終処理として硝酸弗酸混合水溶液中に浸漬される。これ
によってステンレス鋼帯表面の残存スケールは難脱スケ
ール性ステンレス鋼帯においても短時間で完全脱スケー
ルされる。このため脱スケール処理の通板速度を増大す
ることができ、能率および生産性が大幅に向上する。ま
た硝酸および弗酸の濃度を低下させることができる。
【0055】また本発明によれば、ステンレス鋼帯は最
終処理として硝酸水溶液中で陰極電解される。これによ
ってステンレス鋼帯表面の残存スケールは難脱スケール
性ステンレス鋼帯においても短時間で完全脱スケールさ
れる。このため脱スケール処理の通板速度を増大するこ
とができ、能率および生産性が向上する。また硝酸水溶
液中の陰極電解においては、鋼素地の溶解がほとんど生
じないので、ステンレス鋼帯の表面は平滑で光沢があ
り、美麗な鏡面を呈している。また本発明法はアルカリ
溶融塩法と比べて高温作業がなく、熱やヒュームが発生
しないため安全性が確保され、環境性に優れており、全
処理槽とも扱い易い水溶液を使用するので、アルカリ溶
融塩よりも作業性が良好であり、さらにワイピングして
容易に除去できるので、ステンレス鋼帯表面に付着して
ライン内外に持ち去られることも殆んどなくなる。した
がって、低コストで経済的かつ安定した操業が可能とな
るだけでなく、高速脱スケールが可能となり、能率およ
び生産性を大幅に向上することができる。
【0056】また本発明によれば、中性塩水溶液は最適
条件に保持されて使用されるのでピッティングを発生さ
せないで、クロム酸化物の溶解を高速で行うことができ
る。これによって脱スケール処理の通板速度を増大する
ことができ、能率および生産性が大幅に向上する。
【0057】また本発明によれば、硫酸水溶液は最適条
件に保持されて使用されるので、ピッティングを発生さ
せないで鉄酸化物とクロム酸化物の溶解を高速で行うこ
とができる。これによって脱スケール処理の通板速度を
増大することができるので、能率および生産性が大幅に
向上する。また硫酸は安価であり、かつ硫酸濃度が低い
ので製造コストの低減に寄与することができる。
【0058】また本発明によれば、中性塩水溶液中での
陽極電解は、最適電流密度で行われるので、ピッティン
グを発生させないでクロム酸化物の溶解を高速で行うこ
とができる。これによって脱スケール処理の通板速度を
増大することができるので、能率および生産性が大幅に
向上する。
【0059】また本発明によれば、硫酸水溶液中での陽
極電解は、最適電流密度で行われるので、ピッティング
を発生させないで、鉄酸化物およびクロム酸化物の溶解
を高速で行うことができる。これによって脱スケール処
理の通板速度を増大することができるので、能率および
生産性が大幅に向上する。
【0060】また本発明によれば、、中性塩陽極電解時
間と硫酸陽極電解時間との比率は適正範囲に限定され
る。これによってクロム酸化物と鉄酸化物との溶解量の
バランスを適正に保つことができるので、スケール残や
ピッティングのない完全脱スケール面を得ることができ
る。また脱スケール後のステンレス鋼帯の表面は平滑で
光沢性も良好なので、ステンレス鋼帯の付加価値を高め
ることができる。
【0061】また本発明によれば、ステンレス鋼帯の脱
スケール装置は、ステンレス鋼帯表面の酸化スケールを
脱スケールするのに好適な処理槽が好適な順序で直列に
配設されているので、ステンレス鋼帯表面の酸化スケー
ルを効率的に脱スケールすることができる。またワイピ
ング性に問題のあるアルカリ溶融塩を使用していないの
で、高速脱スケールが可能となり、能率および生産性が
大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかわる脱スケール装置の一実施例の
簡略化した構成を示す説明図である。
【図2】脱スケール特性に及ぼす硫酸水溶液の硫酸濃度
および液温の影響を示す特性図である。
【符号の説明】
1 ステンレス鋼帯 2 中性塩水溶液電解槽 3 硫酸水溶液電解槽 4 硝酸水溶液電解槽 5 硝酸弗酸混合水溶液浸漬槽 6 陰電極 7 陽電極 8 シンクロール 9 デフレクタロール 10 洗浄ノズル 11 回転ブラシ装置 12 中性塩水溶液 13 硫酸水溶液 14 硝酸水溶液 15 硝酸弗酸混合水溶液
フロントページの続き (72)発明者 桜井 一生 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社周南製鋼所内 (72)発明者 中乗 敬之 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社周南製鋼所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステンレス鋼帯を中性塩水溶液中で陽極
    電解した後に、硫酸水溶液中で陽極電解することを特徴
    とするステンレス鋼帯の脱スケール方法。
  2. 【請求項2】 前記硫酸水溶液中で陽極電解した後、硝
    酸弗酸混合水溶液中に浸漬処理することを特徴とする請
    求項1記載のステンレス鋼帯の脱スケール方法。
  3. 【請求項3】 前記硫酸水溶液中で陽極電解した後、硝
    酸水溶液中で陰極電解処理することを特徴とする請求項
    1記載のステンレス鋼帯の脱スケール方法。
  4. 【請求項4】 前記中性塩水溶液として、Na2SO4
    度を100〜400g/l、pHを6〜8、液温を70
    〜90℃、クロム酸イオン濃度を15g/l以下、スラ
    ッジ濃度を5g/l以下とする水溶液を使用することを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス
    鋼帯の脱スケール方法。
  5. 【請求項5】 前記硫酸水溶液として、硫酸濃度を50
    〜250g/l、溶解鉄イオン濃度を10g/l以下、
    液温を20〜90℃、スラッジ濃度を5g/l以下とす
    る水溶液を使用することを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれかに記載のステンレス鋼帯の脱スケール方法。
  6. 【請求項6】 前記中性塩水溶液中で行う陽極電解の陽
    極電流密度を1〜10A/dm2とすることを特徴とす
    る請求項1〜5のいずれかに記載のステンレス鋼帯の脱
    スケール方法。
  7. 【請求項7】 前記硫酸水溶液中で行う陽極電解の陽極
    電流密度を1〜15A/dm2とすることを特徴とする
    請求項1〜6のいずれかに記載のステンレス鋼帯の脱ス
    ケール方法。
  8. 【請求項8】 前記中性塩水溶液中で行う陽極電解の電
    解時間と前記硫酸水溶液中で行う陽極電解の電解時間と
    の比率を、0.2〜5.0とすることを特徴とする請求
    項1に記載のステンレス鋼帯の脱スケール方法。
  9. 【請求項9】 連続的に通板されるステンレス鋼帯を主
    としてNa2SO4水溶液からなる中性塩水溶液中で陽極
    電解するための中性塩水溶液電解槽と、 中性塩水溶液電解槽内を通過した該ステンレス鋼帯を主
    としてH2SO4水溶液からなる硫酸水溶液中で陽極電解
    するための硫酸水溶液電解槽と、 硫酸水溶液電解槽内を通過した該ステンレス鋼帯をさら
    に硝酸水溶液中で陰極電解処理するか硝酸弗酸混合水溶
    液中に浸漬処理するための槽と、これら各槽の前後面に
    ステンレス鋼帯を直列に通板するために配置されるデフ
    レクタロールとを含むことを特徴とするステンレス鋼帯
    の脱スケール装置。
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