以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明において、置換基群A’、置換基群J、イオン性親水性基、ハメットの置換基定数σp値について定義する。
(置換基群A’)
炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、オクタデカン)アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(カルボキシル基、スルホ基、4級アンモニウム基など)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群A’から選択される基を挙げることができる。
(置換基群J)
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Jから選択される基を挙げることができる。
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。例えばベンジル基及び2−フェネチル基を挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、トリアジニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリール又はヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
(イオン性親水性基)
スルホ基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、ホスホノ基、ジヒドロキシホスフィノ基、4級アンモニウム基などが挙げられる。特に好ましくはスルホ基、カルボキシル基である。またカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対カチオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、これらの混合塩であってもよい。
本発明の一般式(1)で表される化合物が含有するイオン性親水性基の対カチオン(一価のカウンターカチオン)は主成分としてリチウムイオンを含むことが好ましい。対カチオンはすべてリチウムイオンでなくてもよいが、上記各インク組成物中のリチウムイオン濃度は、各インク組成物中の対カチオン全体に対して、50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%であり、特に好ましくは95質量%以上である。
本発明の一般式(Y)で表される化合物が含有するイオン性親水性基の対カチオン(一価のカウンターカチオン)は主成分としてカリウムイオンを含むことが好ましい。対カチオンはすべてカリウムイオンでなくてもよいが、上記各インク組成物中のカリウムイオン濃度は、各インク組成物中の対カチオン全体に対して、50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%であり、特に好ましくは95質量%以上である。
このような存在比率の条件下において、インク組成物中には、水素イオン、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどを対カチオンとして含むことができる。
上記着色剤の対カチオンの種類及び比率については、日本化学会編“新実験化学講座9
分析化学”(1977年 丸善)及び日本化学会編“第4版 実験化学講座15 分析”(1991年 丸善)に、分析方法や元素についての各論が記載されているので、これを参考にして分析方法を選び、分析及び定量することができる。中でもイオンクロマトグラフィー、原子吸光法、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)などの分析法によって決定することが容易である。
対カチオンがリチウムイオンを含む本発明の着色剤を得る方法としては、いずれの方法を使用してもよい。例えば、(1)イオン交換樹脂を用いて対カチオンを別のカチオンからリチウムイオンに変換する方法、(2)リチウムイオンを含む系から酸析又は塩析する方法、(3)対カチオンがリチウムイオンである原料及び合成中間体を用いて着色剤を形成させる方法、(4)対カチオンがリチウムイオンである反応剤を用いて、各色着色剤の官能基変換によってイオン性親水性基を導入する方法、(5)着色剤中のイオン性親水性基の対カチオンが銀イオンである化合物を合成し、これをリチウムハロゲン化物溶液と反応させ析出したハロゲン化銀を除去することで対カチオンをリチウムイオンにする方法、などが挙げられる。
各色着色剤中のイオン性親水性基としては、イオン性解離基である限りいかなるものであってもよい。好ましいイオン性親水性基としては、スルホ基(塩でもよい)、カルボキシル基(塩でもよい)、水酸基(塩でもよい)、ホスホノ基(塩でもよい)及び4級アンモニウム基、アシルスルファモイル基(塩でもよい)、スルホニルカルバモイル基(塩でもよい)、スルホニルスルファモイル基(塩でもよい)等が含まれる。
好ましくはスルホ基、カルボキシル基、又は水酸基(それらの塩を含む)である。イオン性親水性基が塩の場合、好ましいカウンターカチオンはリチウム又はリチウムを主成分とするアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、及び有機のカチオン(例えばピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジニウム)混合塩を挙げることができ、その中でもリチウム又はリチウムを主成分とするアルカリ金属混合塩が好ましく、特にスルホ基のリチウム塩、カルボキシ基のリチウム塩が、水酸基のリチウム塩が好ましい。
(ハメットの置換基定数σp値)
本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明にかかる化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
[インクセット]
本発明のインクセットは、少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を含むインクセットであって、
前記イエロ−インク組成物が、着色剤として、第1の色材及び第2の色材を含有し、
前記第1の色材が、下記一般式(Y)で表される化合物(以下一般式(Y)で表される化合物を「アゾ染料」、「一般式(Y)で表される水溶性染料」と表記する場合がある)であり、前記第2の色材が、下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物である。
一般式(Y)
(一般式(Y)中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLi+イオン、Na+イオン、K+イオン又はNH4 +イオンを表す。)
(群A中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLi+イオン、Na+イオン、K+イオン又はNH4 +イオンを表す。)
本発明においては特に、第1の色材として、下記式(Y−1)で表される化合物を用い、かつ、第2の色材として、上記群Aにおける化合物1、2、3、5、6又は8を用いることが好ましく、1、2、3、6又は8を用いることがより好ましく、1、2、3又は8を用いることが更に好ましい。
本発明者らは、複数色の各種インク組成物を組み合わせてインクセットを構成し、インク保存安定性と、形成された画像の耐光性・耐オゾン性を向上するための検討を行った。その結果、上記の特定構造を有する着色剤を用いたイエロ−インク組成物を含むインクセットは、インク保存安定性に優れ、該インクセットを用いて画像を記録した場合、記録物の画像が耐光性・耐オゾン性に優れ、かつ、イエロ−と他の色との光・オゾンによる劣化速度の差が小さいために、ある程度光及びオゾンによる画像の劣化が進行しても、観察者が画像全体の劣化を感じにくいインクセットを得ることができることを見出した。
以下、本発明のインクセットに含まれる各インク組成物について説明する。
まず、各インク組成物中に含有される着色剤について、以下に各色のインク組成物ごとに説明する。
(イエロー)
本発明のインクセットを構成するイエローインク組成物に用いられる着色剤について説明する。
本発明に係るイエローインク組成物は、着色剤として、第1の色材及び第2の色材を含有し、
前記第1の色材が、下記一般式(Y)で表される化合物(以下一般式(Y)で表される化合物を「アゾ染料」、「一般式(Y)で表される水溶性染料」と表記する場合がある)であり、前記第2の色材が、下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物である。
〔第1の色材:一般式(Y)で表される化合物、及び、式(Y−1)で表される化合物〕
本発明のイエローインク組成物及びそれを用いたインクは、貯蔵安定性、インクジェット記録画像の着色性及びインクジェット記録画像の保存安定性優れるという特徴を有する、下記一般式(Y)の化合物を、第1の色材として含有することが必要である。
(一般式(Y)中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLi+イオン、Na+イオン、K+イオン又はNH4 +イオンを表す。)
Mは、水素原子、Li+イオン、Na+イオン、K+イオン、又はNH4 +イオンを表し、特にNa+イオン、K+イオン又はNH4 +イオンが好ましく、更にNa+イオン、K+イオンが好ましく、その中でも特にK+イオンが最も好ましい。一般式(Y)で表される染料において、少なくとも1つのMがK+イオンであることが好ましく、Mの主成分であるカウンターカチオンがK+イオンであることがより好ましく、全てのMがK+イオンであることがよりさらに好ましい。
一般式(Y)で表される染料は複数種類のMが存在する混合塩の状態であってもよい。混合塩である場合、インク中に含まれる全式(Y−1)で表される染料が有するMのうち、モル分率で好ましくは50〜100%、更に好ましくは80〜100%、その中でも特に90〜100%のMがK+イオンであることが好ましい。K+イオン以外のMとしては、Na+イオン、NH4 +イオンが好ましく、Na+イオンがより好ましい。
また、混合塩ではなく、イエローインク組成物中に含まれる全ての式(Y−1)で表される染料のMがK+イオンであることが最も好ましい。全てのMがK+イオンであることにより、水溶液又はインク溶液中に溶解した分子分散状態において、イオン性親水性基であるカルボキシ基又はその塩(−CO2M)が解離して−CO2 −とM+にイオン化した状態でカチオン種が交換することにより、より水溶液又はインク溶液に対して溶解性の低い塩の状態を形成して着色剤の塩の状態で析出することを抑制し易いといった効果が得られるためである。
上記一般式(Y)の化合物の中でも特に、下記式(Y−1)の化合物を使用することが好ましい。
式(Y−1)
一般式(Y)及び式(Y−1)で表される染料は、一般的な合成法で合成することが可能であり、例えば特開2004−083903の[0066]及び[0067]の記載の方法と同様に合成することができる。
本発明に用いられる上記イエロー染料は、優れたオゾンガスに対する強制褪色速度定数を有する。オゾンガスに対する強制褪色速度定数の測定は、当該インクのみを反射型受像媒体に印画して得られた画像の該インクの主分光吸収領域の色であってステータスAのフィルターを通して測定した反射濃度が0.90〜1.10の濃度の着色領域を初期濃度点として選択し、この初期濃度を開始濃度(=100%)とする。この画像を5mg/Lのオゾン濃度を常時維持するオゾン褪色試験機を用いて褪色させ、その濃度が初期濃度の80%となるまでの時間を測定し、この時間の逆数[hour−1]を求め、褪色濃度と時間関係が一次反応の速度式に従うとの仮定のもとに、褪色反応速度定数とする。したがって、求められる褪色速度定数は当該インクによって印画された着色領域の褪色速度定数であるが、本明細書では、この値をインクの褪色速度定数として用いる。
試験用の印画パッチは、JISコード2223の黒四角記号を印字したパッチ、マクベスチャートの階段状カラーパッチ、そのほか測定面積が得られる任意の階段濃度パッチを用いることができる。
測定用に印画される反射画像(階段状カラーパッチ)の反射濃度は、国際規格ISO5−4(反射濃度の幾何条件)を満たした濃度計によりステータスAフィルターを透した測定光で求められた濃度である。
オゾンガスに対する強制褪色速度定数測定用の試験チャンバーには、内部のオゾンガス濃度を定常的に5mg/Lに維持可能のオゾン発生装置(例えば乾燥空気に交流電圧を印可する高圧放電方式)が設けられ、曝気温度は25℃に調節される。
なお、この強制褪色速度定数は、光化学スモッグ、自動車排気、家具の塗装面や絨毯などからの有機蒸気、明室の額縁内の発生ガスなどの環境中の酸化性雰囲気による酸化の受け易さの指標であって、オゾンガスによってこれらの酸化性雰囲気を代表させた指標である。
〔群A〕
本発明のインク組成物は、第1の色材として使用する上記で説明した前記一般式(Y)の化合物又は前記式(Y−1)の化合物に加えて、インク組成物の貯蔵安定性、インクの着色性、印画物の画像堅牢性に優れるという特徴を有する第2の色材を含有してなることが必要である。本発明では、第2の色材として、下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物を用いる。下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物の中でも、特に群Aにおける化合物1、2、3、5、6又は8を用いることが好ましく、1、2、3、6又は8を用いることがより好ましく、1、2、3又は8を用いることが更に好ましい。
本発明においては、第2の色材として、群Aから選択される少なくとも1種の化合物は、単独でも、又は複数を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、第2の色材として、1と2と3と5と6と8とを組み合わせて使用することが好ましく、1と2と3と6と8とを組み合わせて使用することがより好ましく、1と2と3と8とを組み合わせて使用することが更に好ましい。
また、下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物は、前記一般式(Y)の化合物と組み合わせて用いることで相乗効果が発揮され、以下のような効果を得ることができる。すなわち、これらの色材を含有させることで、高い着色力を有するイエローインク組成物とすることができるだけではなく、更に耐光性に優れた画像を与え、加えて、インク供給経路の目詰まり防止や保存安定性を十分満足させることができる。以下、これらの一般式について説明する。
群Aから選択される少なくとも1種の化合物におけるMは、水素原子、Li+イオン、Na+イオン、K+イオン、又はNH4 +イオンを表し、Na+イオン、K+イオン、NH4 +イオン、が好ましく、更にNa+イオン、K+イオンが好ましく、K+イオンがより好ましい。群Aから選択される少なくとも1種の化合物において、カウンターカチオンMの主成分がK+イオンであることが好ましく、全てのMがK+イオンであることがより好ましい。
群Aから選択される少なくとも1種の化合物は複数種類のMが存在する混合塩の状態であってもよい。混合塩である場合、インク組成物中に含まれる群Aから選択される化合物が有するMのうち、モル分率で好ましくは50〜100%、更に好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%のMがK+イオンであることが好ましい。K+イオン以外のMとしては、Na+イオン、NH4 +イオンが好ましく、Na+イオンがより好ましい。
また、混合塩ではなく、インク組成物中に含まれる全ての群Aから選択される化合物のMがK+であることが特に好ましい。全てのMがK+イオンであることにより、水溶液又はインク溶液中に溶解した分子分散状態において、イオン性親水性基であるカルボキシ基又はその塩(−CO2M)が解離して−CO2 −とM+にイオン化した状態でカチオン種が交換することにより、より水溶液又はインク溶液に対して溶解性の低い塩の状態を形成して着色剤の塩の状態で析出することを抑制し易いといった効果が得られるためである。
群Aから選択される化合物は、一般的な合成法で合成することが可能であり、例えば特開2004−083903公報中に記載のジアゾ成分及びカップリング成分を変更、種々組み合わせることで一般式(Y)又は式(Y−1)と同様に合成することができる。
本発明においては、一般式(Y)で表される化合物において、カウンターカチオンMの主成分がK+イオンであり、群Aより選択される化合物においても、カウンターカチオンMの主成分がK+イオンであることが好ましい。ここで、カウンターカチオンMの主成分とは、全カウンターカチオンM中、80%以上を占めるイオン、好ましくは90%以上を占めるイオンを意味する。
一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物のイオン性親水性基のカウンターカチオンMの主成分がK+イオンであれば、インク組成物中の溶解性が高くなり、塩の形成・析出を抑制しインク組成物の貯蔵安定性を大幅に向上することができるためである。
また、一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物におけるMが全てK+イオンであることがより好ましい。これによりインク組成物の貯蔵安定性を大幅に向上することができるためである。
〔色材の検証方法〕
本発明で用いる色材がインク組成物中に含まれているか否かの検証には、液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについての最大吸収波長
(3)(1)のピークについてのマススペクトルのm/z(posi)、m/z(nega)
液体クロマトグラフ質量分析の分析条件は、以下に示す通りである。純水で約1,000倍に希釈した液体(インク)を測定用サンプルとした。そして、下記の条件で液体クロマトグラフ質量分析での分析を行い、ピークの保持時間(retention time)、及び、Mass実測値ピークを測定した。
<液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)測定条件>
・装置:Agilent1100(アジレント・テクノロジー社製)
・カラム:YMC AM−312 内径 6.0 mm× 長さ 150 mm(ワイエムシー社製)
・溶離液:A液 超純水+0.1%酢酸、0.2%トリエチルアミン
B液 メタノール+0.1%酢酸、0.2%トリエチルアミン
・移動相及びグラジエント条件:(表1)
表1中、B.Conc.はB液の濃度を表す。
また、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたm/zをposi、negaそれぞれに対して測定する。
・装置:Applied BiosystemsTM QSTAR pulseri(ライフテクノロジー社製)
・イオン化法:ESI(posi)
・キャピラリ電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出法:TOF−MS
・検出範囲:120〜1500
上記の方法及び条件下で、それぞれの色材の代表例として、第1の色材化合物(Y−1)、第2の色材の群A中の化合物1〜8(M=K)について測定を行った。その結果、得られた保持時間、Mass実測値{m/z(posi)}を表2に示した。着色組成物及びインクについて、上記と同様の方法及び条件下で測定を行って、表2に示す値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当すると判断できる。
なお、Mは例えば、イオンクロマトグラフによる測定により検証することができる。
イオンクロマトグラフ測定条件:
装置:パーソナルイオンアナライザPIA−1000(島津製作所製)
カラム:カチオン分析用セミミクロカラムShim−pack IC−C3(S)(内径2mm × 長さ100mm)
移動相:2.5 mMシュウ酸水溶液
カラム温度:35℃
流速:0.2mL/分
〔色材の含有量〕
本発明のインク組成物は、インク原料として、着色剤を高い濃度で含む濃厚水溶液とすることができる。濃厚水溶液の着色剤濃度は15質量%以下、好ましくは12質量%以下であることが染料の経時安定性、取り扱いの容易さ(粘度)の点で好ましく、染料の経時安定性の向上や輸送コストの抑制の観点から、8質量%以上の濃度であることが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、インクジェット用インクとすることもできる。インクジェット用インクの着色剤濃度はインク粘度や、印画物の濃度の点で、1〜12質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、3〜6質量%が特に好ましい。
インク組成物中の第2の色材[群Aから選択される少なくとも1種の化合物]の含有量は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、第2の色材の含有量(質量%)は、インク組成物全質量を基準として、0.001質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上1.1質量%以下であることが更に好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下であることが特に好ましい。
なお、この場合の第2の色材の含有量は、他の色材との関連において、下記のようにすることが、より好ましい。群Aから選択される少なくとも1種の化合物のいずれかを単独で用いる場合はその含有量が、また、これらから選ばれる2種以上を併用する場合はその合計含有量が、それぞれ上記の範囲を満足するように構成することが好ましい。第1の色材及び/又は第2の色材の含有量を上述の範囲とすることで、画像の耐光性と色調を満足させるだけではなく、保存安定性や記録耐久性といった、インク組成物を用いたインクの信頼性の点も満足させることが可能となる。
群A中の化合物1は、インク組成物全質量を基準として、0.01〜1.0質量%含まれることが好ましく、0.1〜1.0質量%含まれることがより好ましい。
群A中の化合物2は、インク組成物全質量を基準として、0.03〜3.0質量%含まれることが好ましく、1.0〜3.0質量%含まれることがより好ましい。
群A中の化合物3は、インク組成物全質量を基準として、0.01〜1.0質量%含まれることが好ましく、0.1〜1.0質量%含まれることがより好ましい。
群A中の化合物4は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物5は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物6は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物7は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物8は、インク組成物全質量を基準として、0.02〜2.0質量%含まれることが好ましく、0.5〜2.0質量%含まれることがより好ましい。
インク組成物全質量を基準とした、第2の色材の含有量(質量%)は、第1の色材の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(第2の色材/第1の色材)=0.001以上1.0以下であることが必要である。
本発明においては更に、第2の色材の含有量(質量%)は、第1の色材の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(第2の色材/第1の色材)=0.001以上0.3以下であることが好ましい。色材の含有量の質量比率を上記範囲となるように構成することで、第1の色材が有する溶解性・耐光性と第2の色材が有する溶解性・耐光性との組み合わせから予測される性能をはるかに上回る高いレベルの耐光性を有する画像を形成することができる。また、より好ましい色調の画像を得ることができる。第2の色材の含有量(質量%)は、第1の色材の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(第2の色材/第1の色材)=0.001以上0.2以下であることがより好ましく、0.01以上0.2以下であることが更に好ましく、0.02以上0.12以下であることがより更に好ましい。色材の含有量の質量比率をこの範囲とすることで、上記の含有量の質量比率においても特に高いレベルの耐光性を有する画像を形成することができる。更には特に好ましい色調の画像を得ることができ、加えて、インクとしての信頼性も十分に満足することが可能となる。
質量比率が0.001以上であると、インク溶液の保存安定性が向上し、1.0以下であれば、インク組成物の水溶液安定性に優れる。色材の含有量の質量比率を上記範囲となるように構成することで、第1の色材が有する溶解性・画像堅牢性と、第2の色材が有する溶解性・画像堅牢性との組み合わせから予測される性能を上回る高いレベルのインク液貯蔵安定性・印画物の画像堅牢性を達成することができる。また、好ましい色調の画像が得られ、インクとしての信頼性も満足できる。
第1の色材と第2の色材とを特定の質量比率で用いることで、相乗効果が発揮され、予測を上回るインクの貯蔵安定性付与と印画物の画像堅牢化を両立できる理由を本発明者らは以下のように推測している。第1の色材は、もともと水性媒体に対する溶解性が低い傾向があるため、これらの化合物を含有するインク組成物を用いたインクを記録媒体に付与すると、その直後から速やかに色材の会合や凝集が起こる。会合や凝集は、画像を形成している記録媒体上の色材の堅牢性を向上させる傾向がある。しかし、その一方で、過度の会合や凝集は、水溶液及びインク溶液への溶解性を低下させる場合がある。これに対し、第1の色材と第2の色材とを共存させることで、記録媒体上で、第1の色材が耐光性に関して最適な会合や凝集の状態を形成し、これにより、画像の耐光性が向上したものと考えられる。
また、第1の色材と第2の色材とを特定の質量比率で用いることで、相乗効果が発揮され、インク組成物を用いたインクの信頼性が達成される理由を本発明者らは以下のように推測している。上記で述べた通り、インク中には、インクカートリッジやインク供給経路を構成する部材から溶出したと考えられる不純物が混入し、インク供給経路の目詰まりやインク供給特性の低下、インク保存安定性の低下の原因となる場合がある。本発明者らは検討の結果、第一の色材構造に類似の第二の色材をインク中に共存させることにより、インクの着色力を低下させること無く、第一の色材の結晶化抑制を付与することができ、インクの貯蔵安定性を大幅に向上させることができたと考えている。つまり、色材として第1の色材のみを使用することでは達成が困難であったインクの信頼性に関して、第2の色材を併用することにより、予想を上回る効果が得られ、十分な信頼性を達成することができるのである。
また、インク組成物中の第1の色材と、第2の色材との含有量の合計(質量%)が、インク組成物全質量を基準として、1.00質量%以上12.00質量%以下であることが好ましく、特に3.00質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。含有量の合計が1.00質量%以上であれば、耐光性及び発色性が十分に得られ、含有量の合計が12.00質量%以下であれば、インク中に不溶物の析出等が無くインクジェット吐出特性に優れる。
なお、本発明のインク組成物がインクジェット記録用インクのイエローインクである場合、イエローインクとして好ましい色調とは、以下の二つのことを意味する。すなわち、イエローインクのみを用いて形成した画像が赤味や緑味を帯びていないことを意味する。更に、これに加えて、イエローインクを用いて形成する2次色の画像、つまりレッドやグリーンの画像を形成する際に、レッド及びグリーンの色再現範囲をいずれも大きく損失することがない色調を有することを意味する。
更にまた、本発明においては、イエローインク組成物の色調などを調整するために耐光性・耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、前記一般式(Y)で表される染料とは別に、更にその他のイエロー系染料を併用することもできる。
この併用されるイエロー系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、イエローインク組成物中の着色剤の含有量(着色剤を複数種用いる場合には合計量)は、着色剤として用いられる化合物(染料)のカラーバリューにしたがって適宜決定することができるが、イエローインク組成物の総質量に対して1〜20質量%であることが好ましく、1.0〜6.0質量%であることがより好ましい。イエローインク組成物中の着色剤の含有量を1質量%以上にすることによって良好な発色性を得ることができ、また着色剤の含有量を20質量%以下にすることによって、インクジェット記録方法に用いるためのインク組成物として必要とされるノズルからの吐出性等の特性を良好なものにし、インクノズルの目詰まりを防止することができる。
前記一般式(Y)で表される化合物又はその塩である染料は、耐光性・耐オゾン性に非常に優れるので、本発明のシアンインク及びマゼンタインク、更に所望によりブラックインクと組み合わせたインクセットにすることにより、各色の耐光性・耐オゾン性を飛躍的に向上でき、光・オゾン曝露試験後においても画像のカラーバランスが崩れることなく、長期的に画像の良好な画質を維持することができる。
更にイエローインク組成物において、前記一般式(Y)で表される化合物又はその塩である染料と、前述の本発明で使用可能なイエロー系染料(例えば、C.I.ダイレクトイエロー58)を併用することにより、更に好ましいカラーバランスに調節することが可能になり、いっそう長期にわたって印刷物の画質を良好に保つことができる。
(マゼンタ)
次に、本発明のインクセットを構成するマゼンタインク組成物に用いられる着色剤について説明する。
本発明のインクセットにおいて、マゼンタインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性・耐オゾン性とマゼンタインク組成物の耐光性・耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。
上記観点から、本発明においてマゼンタインク組成物に着色剤として用いられるマゼンタ染料は、下記一般式(M−1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。
一般式(M−1):
前記一般式(M−1)中、AMは、5員のヘテロ環基を表す。
B1及びB2は、各々−CR13=、−CR14=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CR13=又は−CR14=を表す。
R11及びR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。但し、R11、R12が同時に水素原子であることはない。
G、R13、R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキル又はアリールスルホニル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、スルファモイル基、ヘテロ環チオ基、又はイオン性親水性基を表す。各基は更にこれらの基で置換されていてもよい。また、R13とR11、又はR11とR12が結合して5又は6員環を形成してもよい。但し、一般式(M−1)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
ここで、イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホ基が好ましく、中でもカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩の中でも、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンが最も好ましい。
一般式(M−1)について説明する。
AMは5員のへテロ環基を表す。該5員のヘテロ環のヘテロ原子の例には、N、O、及びSを挙げることができる。AMとして好ましくは含窒素5員ヘテロ環であり、ヘテロ環に脂肪族環、芳香族環又は他のヘテロ環が縮合していてもよい。AMの好ましいヘテロ環の例には、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、又はベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。各ヘテロ環基は更に置換基を有していてもよい。なかでも、下記一般式(a)から(i)で表されるヘテロ環が好ましい。
一般式(a)〜(i)において、Rm1〜Rm20は一般式(M−1)におけるR13及びR14と同義である。
一般式(a)〜(i)のうち、(a)〜(h)が好ましく、(a)〜(e)、(g)、(h)がより好ましく、(a)が特に好ましい。
Rm1は、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基が好ましく、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、又はハロゲン原子がより好ましく、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が更に好ましく、シアノ基が最も好ましい。
Rm2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又はアシル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基が更に好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
Rm3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、芳香族基又はヘテロ環基が好ましく、電子求引性基で置換された、アリール基又はヘテロ環基がより好ましく、電子求引性基(ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基が好ましい)で置換されたヘテロ環基が更に好ましい。該へテロ環としては、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環が好ましく、ベンゾチアゾール環がより好ましい。これらの各基とも更に置換基を有していてもよい。
Rm4〜Rm20は、水素原子、アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環基が好ましく、水素原子、アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、ヘテロ環基がより好ましい。
一般式(M−1)中、B1及びB2は、各々−CR13=、−CR14=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CR13=又は−CR14=を表す。B1及びB2が、各々−CR13=、−CR14=を表す場合が、より優れた性能を発揮できる点で好ましい。
R11、R12は、各々独立に、水素原子、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基、置換又は無置換のアシル基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基が好ましく、水素原子、置換アリール基、置換ヘテロ環基が更に好ましく、その中でも置換アリール基、置換ヘテロ環基が特に好ましい。但し、R11、R12が同時に水素原子であることはない。前記置換アリールとしては、置換フェニルが好ましく、置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基など)、カルボキシル基、スルホ基等が挙げられる。前記置換ヘテロ環基のへテロ環としては、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環が挙げられ、ベンゾチアゾール環が好ましい。前記置換ヘテロ環基の置換基としては、アルキル基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられ、スルホ基が好ましい。
G、R13、R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、ヘテロ環チオ基、又はイオン性親水性基を表す。各基は更にこれらの基で置換されていてもよい。
G、R13、R14が表すハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキル又はアリールスルホニル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、スルファモイル基、ヘテロ環チオ基としては、前記置換基J記載の置換基がそれぞれ挙げられる。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基又はイオン性親水性基が好ましい。各基は更に置換されていてもよい。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基が更に好ましい。その中でも、水素原子、アリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基(ここで、アリール基としては、フェニル基が好ましい。)、アシルアミノ基が特に好ましく、置換基を有するアリール基で置換されたアミノ基(置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)、アルコキシ基、イオン性親水性基が挙げられる。複数の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい)が最も好ましい。
R13、R14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基が好ましい。各基は更に置換されていてもよい。 R13、R14は、水素原子、アルキル基、シアノ基、カルボキシル基がより好ましく、その中でもR13が水素原子、R14がアルキル基であることが好ましく、特にR13が水素原子、R14がメチル基であることが最も好ましい。
一般式(M−1)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
(イ)AMが表すヘテロ環としては、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、又はベンゾイソチアゾール環が好ましく、更にピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環が好ましく、その中でもピラゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環が好ましく、ピラゾール環が最も好ましい。
(ロ)B1及びB2は、各々、−CR13=、−CR14=を表す場合が好ましく、更にR13が水素原子(B1が無置換炭素原子)、R14が水素原子又はアルキル基(B2が無置換又はアルキル基で置換された炭素原子)が好ましく、特にR13が水素原子(B1が無置換炭素原子)、R14がメチル基(B2がメチル基で置換された炭素原子)が最も好ましい。
(ハ)R11、R12は、各々独立に、水素原子、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基、置換又は無置換のアシル基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基が好ましく、更に水素原子、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、その中でも置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、更にスルホ基で置換されたアリール基、及び、スルホ基で置換されたヘテロ環基が好ましく、スルホ基で置換されたフェニル基及びスルホ基で置換されたベンゾチアゾール基が特に好ましい。
(ニ)Gは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基又はイオン性親水性基が好ましく、更に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基が好ましく、その中でも水素原子、アリール基若しくはヘテロ環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基が特に好ましく、置換基を有するアリール基で置換されたアミノ基が更に好ましく、置換基(メチル基、エチル基、イソプロピル基、スルホ基など)を有するフェニル基で置換されたアミノ基が最も好ましい。
一般式(M−1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明では、上記一般式(M−1)で表される化合物のうち、下記一般式(M−2)で表される化合物が好ましい。
一般式(M−2):
一般式(M−2)中、AM、B1、B2、R11及びR12は、前記一般式(M−1)中のAM、B1、B2、R11及びR12と同義である。
a及びeは各々独立に、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。a及びeが共にアルキル基である時は、そのアルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらは更に置換されていてもよい。
b、c、dは、各々独立にR13、R14と同義であり、aとb、又は、eとdで互いに結合して環を形成してもよい。但し、一般式(M−2)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
一般式(M−2)において、AMは、前記一般式(M−1)中のAMと同義であり、好ましい例も同じである。
B1、B2は、前記一般式(M−1)中のB1、B2と同義であり、好ましい例も同じである。
R11、R12は、前記一般式(M−1)中のR11、R12と同義であり、好ましい例も同じである。
a及びeは各々独立に、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表すが、a及びeが共にアルキル基である時は、そのアルキル基を構成する炭素数の合計が3以上であって、それらは更に置換されていてもよい。
更に好ましくは、a及びeは各々独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、その中でもエチル基、イソプロピル基が好ましく、特にa=b=エチル基又はイソプルピル基が最も好ましい。
b、c、dは、各々独立に前記一般式(M−1)中のR13、R14と同義であり、aとb、又は、eとdで互いに結合して環を形成してもよい。但し、一般式(M−2)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
更に好ましくは、cは、水素原子、アルキル基が好ましく、その中でも水素原子、メチル基が特に好ましい。
b、dは、水素原子、イオン性親水性基が好ましく、その中でも水素原子、スルホ基、カルボキシ基が好ましく、特にbとdの組み合わせが水素原子とスルホ基であるのが最も好ましい。
一般式(M−2)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
(イ)AMのヘテロ環の例には、上記一般式(M−1)中のAMと同義であり、好ましい例も同じである。
(ロ)B1及びB2は、上記一般式(M−1)中のB1及びB2と同義であり、好ましい例も同じである。
(ハ)R11、R12は、上記一般式(M−1)中のR11、R12と同義であり、好ましい例も同じである。
(ニ)a及びeは、アルキル基又はハロゲン原子が好ましく、a及びeが共にアルキル基の時は無置換アルキル基であって、a及びeの炭素数の合計が3以上(好ましくは5以下)であり、b、c、dは、各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、イオン性親水性基(好ましくは各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、イオン性親水性基)の場合が好ましい。更に好ましくは、a及びeは各々独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、その中でもエチル基、イソプロピル基が好ましく、特にa=b=エチル基又はイソプルピル基が最も好ましい。更に、cは、水素原子、アルキル基が好ましく、その中でも水素原子、メチル基が特に好ましい。b、dは、水素原子、イオン性親水性基が好ましく、その中でも水素原子、スルホ基、カルボキシ基が好ましく、特にbとdの組み合わせが水素原子とスルホ基であるのが最も好ましい。
一般式(M−2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明では、前記一般式(M−2)で表される化合物のうち、下記一般式(M−3)で表される化合物が好ましい。
一般式(M−3):
一般式(M−3)中、Z11は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Z12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、芳香族基、ヘテロ環基又はアシル基を表す。R11、R12、a、b、c、d及びeは、各々上記一般式(M−2)の場合と同義である。R13、R14は、上記一般式(M−2)のR13、R14と同義である。Qは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、芳香族基又はヘテロ環基を表す。上記Z11、Z12及びQの各基は、更に置換基を有していてもよい。但し、一般式(M−3)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
一般式(M−3)において、
R13、R14は、前記一般式(M−1)中のR13、R14と同義であり、好ましい例も同じである。
R11、R12は、前記一般式(M−1)中のR11、R12と同義であり、好ましい例も同じである。
a、b、c、d及びeは、前記一般式(M−2)中のa、b、c、d及びeと同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(M−3)において、Z11の上記電子求引性基は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上、好ましくは0.3以上の電子求引性基である。σp値の上限としては、好ましくは1以下である。
σp値が0.2以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルホ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基及びσp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基が挙げられる。
Z11として好ましくはシアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、又はハロゲン原子であり、シアノ基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基がより好ましく、シアノ基が最も好ましい。
Z12としては水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又はアシル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。各置換基は更に置換されていてもよい。
更に詳しくは、Z12としてのアルキル基には、置換基を有するアルキル基及び無置換のアルキル基が含まれる。前記アルキル基は、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。
Z12が有する置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が含まれる。
Z12が表すアルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピル及び4−スルホブチルが含まれ、その中でもメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルが好ましく、特にイソプロピル、t−ブチルが好ましく、特にt−ブチルが最も好ましい。
Z12が表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基及び無置換のシクロアルキル基が含まれる。前記シクロアルキル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
Z12が表すアラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基及び無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アラルキル基の例には、ベンジル基、及び2−フェネチル基が含まれる。
Z12が表すアリール基には、置換基を有するアリール基及び無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、水酸基、エステル基及びイオン性親水性基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニル及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが含まれる。
Z12が表すヘテロ環基には、置換基を有する複素環基及び無置換の複素環基が含まれる。複素環基としては、5員又は6員環の複素環基が好ましい。置換基の例には、アミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、水酸基、エステル基及びイオン性親水性基が含まれる。複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基及び2−フリル基が含まれる。
Z12が表すアシル基には、置換基を有するアシル基及び無置換のアシル基が含まれる。前記アシル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が1〜12のアシル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシル基の例には、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
一般式(M−3)において、Qは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、芳香族基又はヘテロ環基を表す。これら各置換基は更に置換されていてもよい。これらの置換基の詳細は前記R13、R14の場合と同じである。
Qは、電子求引性基で置換された、アリール基又はヘテロ環基が好ましい。Q、の置換基となる電子求引性基は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上、好ましくは0.3以上の電子求引性基である。σp値の上限としては、好ましくは1以下である。
σp値が0.2以上の電子求引性基の具体例としては、上記一般式(M−3)中のZ11と同義である。
更に詳しくは、Qは、電子求引性基で置換されたヘテロ環基が好ましく、その中でもスルホ基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基で置換されたベンズオキサゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましく、特にスルホ基、置換スルファモイル基で置換されたベンゾチアゾール環が最も好ましい。
一般式(M−3)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ヘ)を含むものである。
(イ)Z11は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上、好ましくは0.3以上の電子求引性基である。σp値の上限としては、好ましくは1以下である。Z11として更に好ましくはシアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、又はハロゲン原子であり、シアノ基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基がより好ましく、その中でもシアノ基が最も好ましい。
(ロ)Z12としては水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又はアシル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。各置換基は更に置換されていてもよい。更に詳しくは、Z12としてのアルキル基には、置換基を有するアルキル基及び無置換のアルキル基が含まれる。前記アルキル基は、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が含まれる。その中でもメチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピル及び4−スルホブチルが好ましく、特にイソプロピル、t−ブチルが好ましく、t−ブチルが最も好ましい。
(ハ)Qは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、芳香族基又はヘテロ環基を表す。これら各置換基は更に置換されていてもよい。更にQは、電子求引性基で置換された、アリール基又はヘテロ環基が好ましい。Qの置換基となる電子求引性基は、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上、好ましくは0.3以上の電子求引性基である。σp値の上限としては、好ましくは1以下である。更に詳しくは、Q電子求引性基で置換されたヘテロ環基が好ましく、その中でもスルホ基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基で置換されたベンズオキサゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましく、特にスルホ基、置換スルファモイル基で置換されたベンゾチアゾール環が最も好ましい。
(ニ)a、b、c、d及びeは、上記一般式(M−2)中のa、b、c、d及びeと同義であり、好ましい例も同じである。
(ホ)R13及びR14は、上記一般式(M−2)中のR13及びR14と同義であり、好ましい例も同じである。
(ヘ)R11、R12は、上記一般式(M−2)中のR11、R12と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(M−3)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)で表される化合物(アゾ色素)は、その分子内にイオン性親水性基を少なくとも1つ(好ましくは3つ以上6つ以下)有する。
イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホ基が好ましく、中でもカルボキシル基、スルホ基が好ましい。特に少なくとも1つはスルホ基である事が最も好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩の中でも、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオンが好ましく、リチウムイオンが最も好ましい。特に、溶解性向上及びインクジェット印刷におけるブロンズ抑制の観点から、イオン性親水性基がスルホ基で、かつその対イオンがリチウムイオンの組み合わせが最も好ましい。
一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)で表される化合物はその分子内にイオン性親水性基を3つ以上6つ以下有することが好ましく、スルホ基を3つ以上6つ以下有することがより好ましく、スルホ基を3つ以上5つ以下有することが更に好ましい。
以下に前記一般式(B−11)、(B−12)、(B−13)、(B−14)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。
本発明に係るマゼンタインク組成物は、前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)で表される化合物及びその塩から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含むことが好ましい。
本発明のインクセットには、マゼンタインク組成物として色濃度の異なるインク、例えば、濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含めることができる。濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物の両者をインクセットに含める場合、両者の少なくとも一つが一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物又はその塩を着色剤として含むことが好ましく、淡マゼンタインク組成物が一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物又はその塩を着色剤として含むことが更に好ましい。淡マゼンタインク組成物の耐光性・耐オゾン性を向上することによって、記録物全体の画像の耐光性・耐オゾン性が向上できる。最も好ましいのは、濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物の両者が前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物又はその塩を着色剤として含むことである。
本発明のインクセットにおいては、マゼンタインク組成物中におけるマゼンタ染料の含有量は、用いられる一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物(染料)のカラーバリューに基づいて適宜定めることができる。インクセットに1種類のマゼンタインク組成物のみを含める場合、一般的にはマゼンタインク組成物中の一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物又はその塩の含有量が2.0〜10質量%であることが好ましい。マゼンタインク組成物中の前記染料の含有量を2.0質量%以上とすることにより、インクとして充分な発色性を確保でき、更に前記含有量を10質量%以下にすることによってインクジェット記録方法に用いるインク組成物として、ノズルからの吐出性を確保することやノズル目詰まりを防止すること等が容易となる。
また、インクセットに濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含める場合、淡マゼンタインク組成物中における着色剤の含有量は、着色剤として用いられる一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物(染料)のカラーバリューにしたがって適宜選択することができるが、一般的には淡マゼンタインク組成物中の一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物又はその塩の含有量は0.5〜3.5質量%であることが好ましく、1.0〜3.0質量%であることが更に好ましい。淡マゼンタインク組成物中の前記染料の含有量を0.5質量%以上にすることによって淡マゼンタインク組成物として必要な発色性を確保することができ、かつ前記含有量を3.5質量%以下にすることによって淡マゼンタインク組成物を用いて記録された記録物の画像における粒状感を低減又は防止することができる。
また、インクセットに濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含める場合、濃マゼンタインク組成物中における着色剤の含有量は、着色剤として用いられる一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物(染料)のカラーバリューにしたがって適宜選択することができるが、一般的には濃マゼンタインク組成物中の一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物又はその塩の含有量は3〜10質量%であることが好ましい。濃マゼンタインク組成物中の前記染料の含有量を3質量%以上にすることによって濃マゼンタインク組成物として必要な発色性を確保することができ、かつ前記含有量を10質量%以下にすることによって淡マゼンタインク組成物を用いて記録された記録物の画像における粒状感を低減又は防止することができる。
インクセットに濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含める場合、淡マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の含有量(質量%)と濃マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の含有量(質量%)との比を1:2〜1:8にすることが好ましい。着色剤の含有量をこのような比率で構成することにより、これらのインク組成物を用いて記録された画像の粒状感を低下させることができる。更に上記着色剤比率とし、かつ着色剤の濃度を上述した範囲に入るインク組成物にすることにより、濃マゼンタインク組成物と淡マゼンタインク組成物との間に良好なカラーバランスを実現でき、しかもインクジェットノズルが目詰まりすることを防止できる。
本発明のインクセットにおいては、マゼンタインク組成物、濃マゼンタインク組成物、又は淡マゼンタインク組成物中における一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる着色剤の含有量は、一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)における各置換基の種類、溶媒成分の種類等により決められるが、そのインク組成物中に含まれる一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)の化合物及びその塩から選ばれる少なくとも一種の染料を含め、そのインク組成物中に含まれる全着色剤の合計量が、そのインク組成物の総質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲であることが更に好ましい。インク組成物中の着色剤の量を0.1質量%以上とすることで、記録媒体上での発色性又は画像濃度を確保でき、10質量%以下とすることで、インク組成物の粘度調整が容易となり吐出信頼性や耐目詰まり性等の特性が容易に確保できる。
本発明のインクセットのマゼンタインク組成物、濃マゼンタインク組成物、又は淡マゼンタインク組成物においては、一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる染料とは別に、他のマゼンタ染料を併用することができる。併用できるマゼンタ染料としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドレッド35,42,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,151,154,158,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,336,337,361,396,397、C.I.アシッドバイオレット5,34,43,47,48,90,103,126、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48等を例示できるほか、更に、カップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有する、ヘテリル若しくはアリールアゾ染料(以下一般式(M−11)で表される化合物);例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料(以下一般式(M−12)で表される化合物)(例えばUS2004/0239739A1明細書記載のTable 1中のNo.20の化合物や、国際公開第04/104108号パンフレット記載の化合物(13)など)が例示できる。
一般式(M−11):
式中、Yは、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、又はOH、SO3H、COOMで置換されたフェニル基、又はナフチル基を表す。更にBは、水素原子又は次式を表す。
式中、R1はH、OH、又はCOOHで置換された炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2は、OH、OCH3、OC2H5、SO3M、COOMで置換された炭素数1〜4のアルキル基を表し、Mは、H、Li、Na、K、アンモニウム、又は有機アミン類を表す。R3は置換基を表す。
一般式(M−12):
式中、Zは含窒素5〜6員ヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。R1、R2、R3はそれぞれ独立に置換基を表し、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。m1は0〜3の整数を表し、m2は0〜4の整数を表し、m3は0〜2の整数を表すが、m1、m2及びm3が同時に0を表すことはない。m1が2以上のときは複数のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。m2が2以上のときは複数のR2は互いに同じでも異なっていてもよく、m3が2以上のときは複数のR3は互いに同じでも異なっていてもよい。nは、1〜4の整数を表す。nが2以上の場合は、R1、R2、R3を介して染料母核が2量体、3量体、4量体を形成してもよい。
(シアン)
以下に、本発明のインクセットを構成するシアンインク組成物に用いられる着色剤について説明する。
本発明のインクセットにおいて、シアンインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性・耐オゾン性とシアンインク組成物の耐光性・耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。
上記観点から、本発明においてシアンインク組成物に着色剤として用いられるシアン染料は、下記一般式(C−1)で表されるフタロシアニン化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。
一般式(C−1):
前記一般式(C−1)中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NV1V2、−CO2NV1V2、−CO2Z、−CO−Z又はスルホ基を表す。ここで、Zは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。V1、V2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。。各基は更に置換基を有していてもよい。
Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基は更に置換基を有していてもよい。
a1〜a4及びb1〜b4は、それぞれX1〜X4及びY1〜Y4の置換基数を表す。そして、a1〜a4は、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、すべてが同時に0になることはない。b1〜b4は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Mは、金属原子又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物である。
但し、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4の内の少なくとも1つは、イオン性親水性基であるか又はイオン性親水性基を置換基として有する基である。
一般式(C−1)について説明する。
a1、a2、a3及びa4は0又は1が好ましい。a1、a2、a3及びa4が0又は1で、a1、a2、a3及びa4のうち2つ以上が1であり、更にb1、b2、b3及びb4がそれぞれa1、a2、a3及びa4との和が4となる整数であることが好ましい。
X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NV1V2、−CO2NV1V2、−CO2Z、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。
Zは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。複数あるZは同一でも異なっていてもよい。
Zは、好ましくは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。
V1、V2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。
V1、V2は、好ましくは水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が最も好ましい。
Z、V1及びV2が有することができる置換基としては、前記置換基群A’に記載の置換基が挙げられる。
Z、V1、V2が表す置換若しくは無置換のアルキル基としては、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
Z,V1,V2が表す置換若しくは無置換のシクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
Z,V1,V2が表す置換若しくは無置換のアルケニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルケニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
Z,V1,V2が表す置換若しくは無置換のアルキニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルキニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
Z,V1,V2が表す置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
Z,V1,V2が表す置換若しくは無置換のアリール基としては、炭素原子数が6〜30のアリール基が好ましい。置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、中でも染料の酸化電位を貴とし堅牢性を向上させるので電子求引性基が特に好ましい。
Z,V1,V2が表すヘテロ環基としては、5員又は6員環のものが好ましく、それらは更に縮環していてもよい。また、芳香族ヘテロ環であっても非芳香族ヘテロ環であっても良い。以下にZ,V1,V2で表されるヘテロ環基を、置換位置を省略してヘテロ環の形で例示するが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。中でも芳香族ヘテロ環基が好ましく、その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられる。それらは置換基を有していても良く、置換基の例については前述のZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができるが、好ましい置換基は前記アリール基の置換基と、更に好ましい置換基は、前記アリール基の更に好ましい置換基とそれぞれ同じである。
Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基は更に置換基を有していてもよい。
その中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホスホリル基、アシル基又はイオン性親水性基が好ましく、更に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、イオン性親水性基が好ましく、特に水素原子が最も好ましい。
Y1、Y2、Y3及びY4は可能な場合には置換基を有していてもよく、置換基の例については前述の一般式(C−1)におけるZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができる。
本発明のフタロシアニン染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は染料の溶解性を高めインク安定性を向上させるため特に好ましい。最も好ましいイオン性親水性基はスルホ基のリチウム塩である。
イオン性親水性基の数としては、本発明のフタロシアニン染料1分子中少なくとも2個以上有するものが好ましく、特にスルホ基及び/又はカルボキシル基を少なくとも2個以上有するものが特に好ましい。
一般式(C−1)において、Mとして好ましいくは、水素原子、又は金属原子として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。また、水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が挙げられる。更に、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。なかでもMとしは、特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
また、2価の連結基Lを介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L-M−Pc)又は3量体を形成してもよく、その時のMはそれぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO2−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH2−、及びこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
本発明に係るフタロシアニン染料の化学構造としては、スルフィニル基(−SO−Z);スルホニル基(−SO2−Z);スルファモイル基(−SO2NV1V2);カルバモイル基(−CONV1V2);アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基(−CO2Z);アシル基(−CO−Z);スルホ基のような電子求引性基を、フタロシアニンの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ、フタロシアニン骨格全体の置換基のσp値の合計で1.2以上となるように導入することが特に好ましい。その中でも、スルフィニル基(−SO−Z);スルホニル基(−SO2−Z);スルファモイル基(−SO2NV1V2)が好ましく、更にスルホニル基(−SO2−Z);スルファモイル基(−SO2NV1V2)が好ましく、スルホニル基(−SO2−Z)が最も好ましい。
前記一般式(C−1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明において上記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−2)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。
一般式(C−2):
一般式(C−2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基又はイオン性親水性基を表す。これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。これらの基は、更に置換基を有していてもよく、Z1、Z2、Z3、及びZ4のうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
l、m、n、p、q1、q2、q3、q4は、それぞれ独立に、1又は2の整数を表す。
Mは、一般式(C−1)の場合と同義である。
本発明においては、上記一般式(C−2)中、l、m、n、及びpは、それぞれ独立に、1又は2の整数であり、その中でもl、m、n、及びpのうち2つ以上が1であるのが好ましく、l=m=n=p=1が最も好ましい。
一般式(C−2)中、q1、q2、q3、及びq4は、それぞれ独立に、1又は2の整数であり、その中でもq1、q2、q3、及びq4のうち2つ以上が2であるのが好ましく、q1=q2=q3=q4=2が最も好ましい。
一般式(C−2)中、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。これらの基は、更に置換基を有していてもよく、Z1、Z2、Z3、及びZ4のうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。Z1、Z2、Z3、及びZ4は、好ましくは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。置換基の例については前述の一般式(C−1)におけるZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができる。
一般式(C−2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基又はイオン性親水性基を表す。その中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホスホリル基、アシル基又はイオン性親水性基が好ましく、更に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、イオン性親水性基が好ましく、特に水素原子が最も好ましい。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は可能な場合には置換基を有していてもよく、置換基の例については前述の一般式(C−1)におけるZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができる。
一般式(C−2)中、Mは上記一般式中(C−1)中のMと同義であり好ましい例も同じである。
一般式(C−2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明において上記一般式(C−2)で表される化合物は、下記一般式(C−3)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。
一般式(C−3):
一般式(C−3)中、Z1、Z2、Z3、Z4、l、m、n、p及びMは、一般式(C−2)中のZ1、Z2、Z3、Z4、l、m、n、p及びMと同義である。
一般式(C−3)中、l、m、n、及びpは、それぞれ独立に、1又は2の整数であり、その中でもl、m、n、及びpのうち2つ以上が1であるのが好ましく、l=m=n=p=1が最も好ましい。
上記一般式(C−3)中、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。これらの基は、更に置換基を有していてもよく、Z1、Z2、Z3、及びZ4のうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。Z1、Z2、Z3、及びZ4は、好ましくは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。置換基の例については前述の一般式(C−1)におけるZ、V1、V2が有していてもよい置換基を挙げることができる。
更に詳しくは、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に、Z11(前記Z11は、−(CH2)3SO3M2を表し、ここでM2はアルカリ金属原子を表す。)又はZ12(前記Z12は、−(CH2)3SO2NHCH2CH(OH)CH3を表す。)であることが好ましい。
シアンインク組成物中の一般式(C−3)で表されるシアン染料は、前記Z11及び前記Z12のモル比が、Z11/Z12=4/0、3/1、2/2、1/3なる染料の混合物が好ましく、その中でもZ11/Z12=3/1が主成分となる染料混合物、及び/又はZ11/Z12=2/2が主成分となる染料混合物が最も好ましい。ここで、「主成分」とは、染料混合物中での割合が最も多い成分を指す。
前記Z11で表される−(CH2)3SO4M2中、M2はアルカリ金属原子が好ましく、その中でもリチウム、ナトリウム、カリウムイオンが好ましく、特にリチウムイオンが最も好ましい。
一般式(C−3)中、Mは上記一般式中(C−2)中のMと同義であり好ましい例も同じである。
一般式(C−3)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
以下に前記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。
なお、化合物No.146〜192のM−Pc(Xp1)m(Xp2)n(MはCuを表し、Yq及びYq’は水素原子を表し、n+m≒2〜4である。)で示されるフタロシアニン化合物の構造は下記の通りである。
前記フタロシアニン染料は、公知の方法に従って合成することが可能である。また、前記した合成方法の他に、特開2001−226275号、同2001−96610号、同2001−47013号、同2001−193638号の各公報に記載の方法により合成することができる。また、出発物質、染料中間体および合成ルートについてはこれらに限定されるものでない。
本発明において、前記フタロシアニン染料は単独で用いることができるが、その他の染料、特にその他のフタロシアニン染料と併用して使用することができる。
本発明において、シアンインク組成物中に含まれるシアン染料の含有量は、用いられる一般式(C−1)におけるX1〜X4及びY1〜Y4の種類、及びインク組成物を製造するために用いる溶媒成分の種類等により決められるが、シアンインク組成物中の一般式(C−1)で表される化合物又はその塩の含有量が、シアンインク組成物の総質量に対して1〜10質量%含まれることが好ましく、2〜6質量%含まれることが更に好ましい。
シアンインク組成物中に含まれる式(C−1)の染料の含有量を1質量%以上にすることで、印刷したときの記録媒体上におけるインクの発色性を良好にでき、かつ必要とされる画像濃度を確保できる。また、シアンインク組成物中に含まれる式(C−1)の染料の合計量を10質量%以下にすることで、インクジェット記録方法に用いた場合にシアンインク組成物の吐出性を良好にでき、しかもインクジェットノズルが目詰まりしにくい等の効果が得られる。
本発明のインクセットにおいては、シアンインク組成物として色濃度の異なるシアンインク組成物、例えば、色濃度の高いシアンインク組成物(濃シアンインク組成物)及び色濃度の低いシアンインク組成物(淡シアンインク組成物)をインクセットに含めることができる。
濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を本発明のインクセットに含める場合、濃シアンインク組成物又は淡シアンインク組成物の少なくとも一つが前記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)の化合物又はその塩の少なくとも一種を着色剤として含むことが好ましい。
前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、低い色濃度を有するシアンインク組成物が、前記一般式(C−2)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種において、Z1、Z2、Z3、及びZ4がそれぞれ独立してZ11(前記Z11は、−(CH2)3SO3M2を表し、ここでM2はアルカリ金属原子を表す。)及び/又はZ12(前記Z12は、−(CH2)3SO2NHCH2CH(OH)CH3を表す。)から選ばれた混合物であることが好ましく、特に前記一般式(C−3)で表されるシアン染料全体に含まれる前記Z11及び前記Z12のモル比が、Z11/Z12=4/0、3/1、2/2、1/3なる染料混合物が好ましく、その中でもZ11/Z12=2/2を主成分となる染料混合物が最も好ましい。
一方、前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、低い色濃度を有するシアンインク組成物が、下記一般式(C−4)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物を少なくとも一種用いることも好ましい。
一般式(C−4):
一般式(C−4)中、Q1〜Q4、P1〜P4、W1〜W4、R1〜R4は、それぞれ独立に、(=C(J1)−又は−N=)、(=C(J2)−又は−N=)、(=C(J3)−又は−N=)、(=C(J4)−又は−N=)を表す。J1〜J4はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)を含む環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つのうち、少なくとも1つはヘテロ環である。Mは金属原子又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物である。
一般式(C−4)について説明する。
(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)を含む環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つのうち、少なくとも1つのヘテロ環が含窒素ヘテロ環であるであることが好ましく、その中でもヘテロ環がピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環が好ましく、更にヘテロ環がピリジン環、ピラジン環が好ましく、特にピリジン環が最も好ましい。
更に好ましくは、上記一般式(C−4)で表されるシアンインク組成物において、(Q1、P1、W1、R1)、(Q2、P2、W2、R2)、(Q3、P3、W3、R3)、(Q4、P4、W4、R4)を含む環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つのうち、芳香族環を表す場合に、下記一般式(I)であることが好ましい。
一般式(I):
一般式(I)中、*はフタロシアニン骨格との結合位置を表す。Gは−SO−Z1、−SO2−Z1、−SO2NZ2Z3、−CONZ2Z3、−CO2Z1、−COZ1、又はスルホ基を表す。tは、1〜4の整数を表す。
Z1は、同一又は異なっていても良く、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
好ましいZ1は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換のアルキル基、置換のアリール基が好ましく、特に置換のアルキル基が最も好ましい。
Z2、Z3は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
好ましいZ1、Z2は、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が挙げられ、その中でも水素原子、置換のアルキル基、置換のアリール基が好ましく、特にZ1、Z2の一方が水素原子を表し、他方が置換のアルキル基、置換のアリール基を表す場合が最も好ましい。
Gは、好ましくは、−SO−Z1、−SO2−Z1、−SO2NZ2Z3、−CONZ2Z3、−CO2Z1、−COZ1であり、その中でも−SO−Z1、−SO2−Z1、−SO2NZ2Z3がより好ましく、特に−SO2−Z1が最も好ましい。
tは、1〜3の整数が好ましく、その中でも1〜2の整数がより好ましく、特にt=1が最も好ましい。
更に詳しくは、上記一般式(C−4)で表されるシアンインク組成物において、A環、B環、C環、D環の任意の環が芳香族環である場合には、少なくとも1つの芳香族環が下記一般式(II)であることが好ましい。
一般式(II):
一般式(II)中、*はフタロシアニン骨格との結合位置を表す。Gは、上記一般式(I)と同義であり、好ましい例も同じである。t1は、1又は2であり、特にt1=1が好ましい。
本発明のインクセットにおいて、濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物の両者が前記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)の染料の少なくとも一種を着色剤として含むことが特に好ましい。
上記のとおり、インクセットに濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を含める場合、淡シアンインク組成物中の着色剤の濃度は、着色剤として用いられる染料の種類に応じて、淡シアンインク組成物を濃シアンインク組成物と組み合わせたときに好ましいカラーバランスを有するよう適宜決定することができる。
一般には、淡シアンインク組成物中に、淡シアンインク組成物の総質量に対し、前記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)の化合物又はその塩が合計で0.4〜3.0質量%含まれることが好ましい。淡シアンインク組成物中の含有量を0.4質量%以上にすることにより、発色性を優れたものにすることができ、かつ着色剤の濃度を3.0質量%以下にすることによって、その淡シアンインク組成物を用いて記録された画像の粒状感を低下させることができる。
一方、濃シアンインク組成物中には、濃シアンインク組成物の総質量に対し、前記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)の化合物又はその塩が合計で2.0〜10.0質量%含まれることが好ましい。
更に、淡シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(質量%)と濃シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(質量%)との比が、1:2〜1:8であることが好ましい。
このような条件を満足させることによって、淡シアンインク組成物と濃シアンインク組成物との間に良好なカラーバランスが実現され、しかも、インクジェットノズルが目詰まりすることを防止することができる。
上述したとおり、本発明のインクセットにおけるシアンインク組成物、又は濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物においては、インクの色調の調整等のため、耐光性・耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、例えば下記一般式(C−5)で表される染料又は染料混合物に代表させる、他のシアン染料を併用することができる。
一般式(C−5):
式中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基は更に置換基を有していてもよい。aは0〜5の整数を表す。bは0〜5の整数を表す。cは0〜5の整数を表す。
更に、本発明に用いる他のシアン染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー1,10,15,22,25,55,67,68,71,76,77,78,80,84,86,87,90,98,106,108,109,151,156,158,159,160,168,189,192,193,194,199,200,201,202,203,207,211,213,214,218,225,229,236,237,244,248,249,251,252,264,270,280,288,289,291、C.I.アシッドブルー9,25,40,41,62,72,76,78,80,82,92,106,112,113,120,127:1,129,138,143,175,181,205,207,220,221,230,232,247,258,260,264,271,277,278,279,280,288,290,326、C.I.リアクティブブルー2,3,5,8,10,13,14,15,17,18,19,21,25,26,27,28,29,38、C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,22,26,41,45,46,47,54,57,60,62,65,66,69,71等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明のインクセットにおいては、シアンインク組成物、濃シアンインク組成物、又は淡シアンインク組成物中に含まれる全着色剤の合計量が、そのインク組成物の総質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲であることが更に好ましい。インク組成物中の着色剤の量を0.1質量%以上とすることで、記録媒体上での発色性又は画像濃度を確保でき、10質量%以下とすることで、インク組成物の粘度調整が容易となり吐出信頼性や耐目詰まり性等の特性が容易に確保できる。
(ブラック)
本発明のインクセットは所望によりブラックインク組成物を含んで構成することができる。本発明のインクセットにブラックインク組成物を含めることにより、良好なコントラストを有する画像を記録媒体上に形成することができる。
以下に、本発明のインクセットを構成するブラックインク組成物に用いる着色剤について説明する。
本発明のインクセットにおいて、ブラックインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性・耐オゾン性とブラックインク組成物の耐光性・耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。
上記観点から、本発明ブラックインク組成物に着色剤として用いられるブラック系染料は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。
〔一般式(1)で表される染料〕
本発明のインク組成物において使用するアゾ染料は、一般式(1)で表される。以下に、一般式(1)で表されるアゾ染料(ブラック染料)(以下「一般式(1)で表されるアゾ化合物」と称する場合がある)について説明する。
(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y2、Y3及びY4はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3及びY4は、互いに結合して環を形成しても良い。Y2、Y3及びY4の全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(1)におけるGは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基が置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基(メチル基、エチル基)、アリール基(フェニル基)を挙げることができる。
Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3、及びY4はいずれか少なくとも1つが置換基を表す。Y2、Y3、及びY4が置換基を表す場合の置換基としては、それぞれ独立に前記置換基群Jを挙げることができる。
一般式(1)において、Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に、水素原子、イオン性親水性基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが好ましい。置換若しくは無置換のアミノ基である場合、ヘテロ環アミノ基であることが好ましい。
Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に、水素原子、イオン性親水性基、置換若しくは無置換のヘテロ環アミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、置換若しくは無置換のヘテロ環アミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが特に好ましい。
Y2、Y3、及びY4が表すヘテロ環アミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アシルアミノ基が置換基を有する場合の置換基としては、それぞれ独立に、イオン性親水性基(例えば、−CO2M、−SO3M:Mは一価のカウンターカチオン)であることより好ましい。
Y2、Y3、及びY4は更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、水酸基、置換若しくは無置換のアミノ基又はイオン性親水性基を有していてもよいアリール基、イオン性親水性基を有していてもよいヘテロ環基を挙げることができ、置換若しくは無置換のアミノ基であることが好ましい。該置換アミノ基の置換基としては、例えば、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
ヘテロ環アミノ基としては、置換若しくは無置換のトリアジニルアミノ基が好ましく、置換基を有するトリアジニルアミノ基がより好ましい。
トリアジニルアミノ基が有する置換基としては、置換若しくは無置換のアミノ基が好ましく、置換若しくは無置換のアミノ基であることが特に好ましい。
該置換アミノ基の置換基としては、上述の例が好適に用いられる。ここで、イオン性親水性基で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。イオン性親水性基で置換されたアリール基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールカルボニルアミノ基が好ましい。該アルキルカルボニルアミノ基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。該アリールカルボニルアシル基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
Y2、Y3及びY4の全てが同時に水素原子を表すことはない。Y2、Y3、及びY4は、互いに結合して環を形成しても良く、Y2、Y3、及びY4が互いに結合して形成する環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられ、ベンゼン環であることが好ましい。
Y2、Y3及びY4のなかでも、Y3が置換基を表すことが好ましく、Y2、及びY4が水素原子を表し、Y3が置換基を表すことがより好ましい。
特に、Y2、及びY4は水素原子を表し、Y3は置換若しくは無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、又はイオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
Y2、Y3及びY4が表す置換基としてより具体的には、下記の置換基(A1)を挙げることができる。
(置換基(A1)中、*はY2〜Y4としての結合手を表す。L1は単結合、カルボニル基、スルホニル基を表す。R1は置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。)
R1は置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であることが好ましく、置換基を有する場合の置換基は、イオン性親水性基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基が挙げられる。
前記置換基(A1)は、下記置換基(A2)又は(A3)であることが好ましい。
(置換基(A2)及び(A3)中、*はY2〜Y4としての結合手を表す。L2はカルボニル基、又はスルホニル基を表す。RA2は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。RA3は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。)
RA2は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。置換基を有する場合の置換基は、イオン性親水性基であることが好ましい。
L2はカルボニル基であることが好ましい。
RA3は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、置換基を有する場合の置換基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基であることが好ましく、アルキルアミノ基又はアリールアミノ基であることがより好ましく、これらは更に置換基を有していてもよくイオン性親水性基により置換されていることが好ましい。
前記置換基(A3)は、下記置換基(A4)であることが好ましい。
(置換基(A4)中、*はY2〜Y4としての結合手を表す。RA4はそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、又は置換若しくは無置換のアリールアミノ基を表す。)
RA4はそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、または置換若しくは無置換のアリールアミノ基を表し、置換基を有する場合の置換基は、イオン性親水性基であることが好ましい。
前記置換基(A1)〜(A4)におけるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基アルキルアミノ基、アリールアミノ基、及びイオン性親水性基の具体例はY2、Y3及びY4におけるものと同様である。
前記置換基(A1)〜(A4)の具体例を以下に示すが、下記の例に限定されるものではない。*はY2〜Y4としての結合手を表す。
Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。アリール基としては、置換若しくは無置換のアリール基が含まれる。更に詳しくは、置換基群Jを有するアリール基が挙げられる。
Aが表すアリール基は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のフェニル基がより好ましい。置換基の例としては、前述の置換基群Jの項で述べた基が挙げられ、前記イオン性親水性基又は前記ハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基が好ましい。
Aが表す含窒素ヘテロ環基は、置換若しくは無置換の含窒素へテロ環基が含まれる。Aが表すヘテロ環基としては、5員の、置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のへテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基が好ましく、炭素数2〜4の5員の芳香族へテロ環基がより好ましい。置換基の例としては、前述の置換基群Jの項で述べた基が挙げられる。前記含窒素5員ヘテロ環基としては、置換位置を限定しないで表すと、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。
Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するフェニル基であることが更に好ましい。
一般式(1)におけるイオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられる。リチウムイオン以外の対カチオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオンがより好ましい。
形成される塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
一般式(1)で表されるアゾ化合物が混合塩である場合、水に対する溶解性、水溶液の粘度、表面張力、高濃度水溶液の貯蔵安定性の観点から、リチウム塩とナトリウム塩の混合塩であることが好ましく、複数のMの一部がリチウムイオンを表し残りのMがナトリウムイオンを表す態様であっても、一般式(1)中の全てのMがリチウムイオンを表す染料と、一般式(1)中の全てのMがナトリウムイオンを表す染料とを混合した態様であってもよい。
Mがリチウム塩とナトリウム塩の混合塩である場合、リチウム塩とナトリウム塩のモル比(Li:Na)は99:1〜25:75であることが好ましく、特に99:1〜50:50が好ましく、更に99:1〜55:45が好ましくその中でも特に99:1〜65:35であることが最も好ましい。この範囲であれば、水に対する溶解度・溶解速度が良好で、高濃度水溶液の粘度、表面張力の調整が容易となり、更に高濃度水溶液の貯蔵安定性に優れる傾向となるため、例えば水溶性インク組成物特にインクジェット用水溶性インクのインク組成物の構成要件の処方設計が容易となり、インクジェット用水溶性インクの要求性能を高いレベルで満たす優れた原料(高濃度水溶液、インク組成物)を提供できるという効果を奏する。
該混合塩のカチオンの比は、イオンクロマト分析により測定することができる。
一般式(1)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)Gは窒素原子又は−C(R2)=を表し、−C(R2)=であることが好ましい。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH2基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
(ロ)Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基を2個有するフェニル基であることが更に好ましい。
(ハ)Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基のいずれかであることが特に好ましい。アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアシル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルカルボニルアシル基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールカルボニルアシル基が好ましい。該アルキルカルボニルアシル基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。該アリールカルボニルアシル基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
Y2、及びY4は水素原子を表し、Y3は置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、又はイオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
(ニ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
(ホ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)のアゾ化合物の水溶性が向上し、良好な色相と着色力及び高い保存安定性を両立することができるアゾ色素構造を電子的・立体的に付与することができることが挙げられる。
その結果、インク組成物としての貯蔵安定性が向上し、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2−1)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(2−1)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(2−1)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(2−1)中のG、A、R2及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のG、A、R2及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2−1)中のR11、R12、R13、及びR14が表す1価の置換基としては、それぞれ独立に、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基(炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基がより好ましく、n−プロピル基が更に好ましい。)、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基(炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。)であることがより好ましい。
上記一般式(1)、(2−1)で表される化合物は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(3−1)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(3−1)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(3−1)中のG、R2、R11、R12、R13、R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−1)中のG、R2、R11、R12、R13、R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(3−1)において、X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5が置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基群Jを挙げることができる。
X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
一般式(3−1)において、X2及びX4はそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましい。X1、X3、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X1、X3及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基である。
X1、X3、及びX5の少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X2、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X1、X3及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X1、X3、及びX5が水素原子であって、X2、及びX4がイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1(M1は水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−CO2M1がより好ましく、−CO2Liが特に好ましい。
一般式(3−1)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)X2及びX4はそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましく、X1、X3及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましく、シアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基であり、更に好ましくはシアノ基であり、X1、X2、X3及びX4が、水素原子であってX5がシアノ基であることが特に好ましい。
(ロ)Gは窒素原子又は−C(R2)=を表し、−C(R2)=であることが好ましい。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH2基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
(ハ)R11、R12、R13、及びR14が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
(ニ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
(ホ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(3−1)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
上記一般式(1)、(2−1)又は(3−1)で表される化合物は、下記一般式(4−1)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(4−1)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(4−1)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(4−1)中のR11、R12、R13、R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−1)中のR11、R12、R13、R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(4−1)中のX1、X2、X3、X4、及びX5の例は、それぞれ独立に上記一般式(3−1)中のX1、X2、X3、X4、及びX5の例と同義であり、好ましい例も同じである。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)におけるGを含む環が含窒素5員へテロ環ではなくチオフェン環となることで本発明のインク組成物を用いた印画物の画像堅牢性の保存性(例えば、オゾンガス堅牢性、光堅牢性)、変色(色変化)、褪色(消色)をより高いレベルで改良でき、変褪色の変化が小さいことを要求される、グレイ〜ブラックインクとしての適性が向上する。
上記一般式(1)、(2−1)、(3−1)又は(4−1)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(5)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(5)中、M1、M2、M3、M4、及びM5はそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、M1、M2、M3、M4、及びM5が一価のカウンターカチオンを表す場合は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンを表す。)
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2−2)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(2−2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(2−2)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R3は、1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(2−2)中のA、G、R2及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のA、G、R2及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2−2)中のR3が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はアリール基であることがより好ましく、特に好ましくは、イオン性親水性基で置換されたアルキル基である。
上記イオン性親水性基で置換されたアルキル基において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基、が好ましく、エチル基が特に好ましい。イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1(M1は水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−CO2M1がより好ましく、−CO2Liが特に好ましい。
上記一般式(1)、(2−2)で表される化合物は、下記一般式(3−2)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(3−2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(3−2)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R3は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(3−2)中のG、R2、R3及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−2)中のG、R2、R3及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(3−2)において、X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5が置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基群Jを挙げることができる。
X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基(−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−CO2M1がより好ましく、−CO2Liが特に好ましい。)、又はシアノ基であることが特に好ましい。
一般式(3−2)において、X2及びX4はそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましい。X1、X3、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X1、X3及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基である。
X1、X3、及びX5の少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X2、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X1、X3、及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X1、X3、及びX5が水素原子であって、X2、及びX4がイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1(M1は水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−CO2M1がより好ましく、−CO2Liが特に好ましい。
一般式(3−2)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
(イ)X2、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X1、X3及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X1、X3、及びX5が水素原子であって、X2、及びX4がイオン性親水性基であることがより好ましい。
(ロ)R3が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
(ハ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−CO2M1がより好ましく、−CO2Liが特に好ましい。
(ニ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(3−2)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
上記一般式(1)、(2−2)又は(3−2)で表される化合物は、下記一般式(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(4−2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(4−2)中、R3は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(4−2)中のR3、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−2)中のR3、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(4−2)において、X1、X2、X3、X4、及びX5は上記一般式(3−2)中のX1、X2、X3、X4、及びX5の例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(4)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
(イ)一般式(1)におけるAが置換基を有するアリール基であり、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基を2個有するフェニル基であることが更に好ましい。
(ロ)R3が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましく、特に好ましくは、イオン性親水性基で置換されたアルキル基(メチル基、エチル基、又はn−プロピル基、が好ましく、n−プロピル基が特に好ましい)である。
(ハ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−CO2M1がより好ましく、−CO2Liが特に好ましい。
(ニ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられる。形成される塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)におけるGを含む環が含窒素5員へテロ環ではなくチオフェン環となることで本発明のインク組成物を用いた印画物の画像堅牢性の保存性(例えば、オゾンガス堅牢性、光堅牢性)、変色(色変化)褪色(消色)をより高いレベルで改良でき、変褪色の変化が小さいことを要求される、グレイ〜ブラックインクとしての適性が向上する。
上記一般式(1)、(2−2)、(3−2)又は(4−2)で表される化合物は、下記一般式(5−2)で表される化合物であることが好ましい。
(M2はそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、M2が一価のカウンターカチオンを表す場合は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンを表す。)
一般式(5−2)中のM2の例は、それぞれ独立に上記一般式(2−2)中のMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
また、本発明は一般式(1)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いた水溶液及び水溶性インク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1−3)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(1−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(1−3)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3、及びY4は、互いに結合して環を形成しても良い。Y2、Y3及びY4の全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(1−3)中のG、R2、Y2、Y3、Y4及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のG、R2、Y2、Y3、Y4及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(1−3)において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、及びX7はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6、及びX7が置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基Jを挙げることができる。
X1、X2、X3、X4、X5、X6、及びX7はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
一般式(1−3)において、X1、X3、X5及びX7はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。
X2、X4、及びX6の少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
X2、X4、及びX6はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
更に、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましく、ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基であり、X2、及びX6がイオン性水酸基であって、X4がハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことがより好ましい。
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X3がハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X2、及びX6がイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1(M1は水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
一般式(1−3)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)Gは窒素原子又は−C(R2)=を表し、−C(R2)=であることが好ましい。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH2基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
(ロ)Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換基として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換基として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基のいずれかであることが特に好ましい。アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールカルボニルアミノ基が好ましい。該アルキルカルボニルアミノ基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。該アリールカルボニルアミノ基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
Y2、及びY4は水素原子を表し、Y3は置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、又はイオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
(ハ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1(M1は水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
(ニ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
(ホ)X1、X2、X3、X4、X5、X6、及びX7はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。X1、X3、X5及びX7はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましく、X4がハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X2、及びX6がイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1(M1は水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1−3)のアゾ化合物の水溶性が向上し、良好な色相と着色力及び高い保存安定性を両立することができるアゾ色素構造を電子的・立体的に付与することができることが挙げられる。
その結果、インク組成物としての貯蔵安定性が向上し、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
上記一般式(1−3)で表される化合物は、下記一般式(2−3)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(2−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(2−3)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(2−3)中のG、R2、X1〜X7、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1−3)中のG、R2、X1〜X7、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2−3)中のR11、R12、R13、及びR14が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
R11、R12において、一方が水素原子、他方が水素原子又はイオン性親水性基を有するアルキル基、アリール基が好ましい。R13、R14においても、一方が水素原子、他方が水素原子又はイオン性親水性基を有するアルキル基、アリール基が好ましい。
特に、s-トリアジン環上のアミノ基の置換基(R11とR12)の一方が水素原子、他方がイオン性親水性基を有するアルキル基、又はアリール基で、(R13とR14)の一方が水素原子、他方がイオン性親水性基を有するアルキル基、又はアリール基の組み合わせとなることで、染料の水溶性と水溶性中での染料の会合性向上(染料分子の相互作用が向上)することで、着色組成物及びインクジェット用水溶性インクに要求される、水溶性インクの貯蔵安定性(色素の析出防止・色素の分解抑制)を大幅に向上させることができる点から好ましい。
上記一般式(1)、(2−3)で表される化合物は、下記一般式(3−3)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(3−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(3−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(3−3)中のX1〜X7、R11〜R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−3)中のX1〜X7、R11〜R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
上記一般式(1)、(2−3)で表される化合物は、下記一般式(4−3)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(4−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(4−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(4−3)中のX1〜X7、R11〜R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−3)中のX1〜X7、R11〜R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2−3)、(3−3)及び(4−3)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
(イ)R11〜R14が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
(ロ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
(ハ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。(ニ)X2、X4、及びX6の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X4がハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X2、及びX6がイオン性親水性基であることがより好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(2−3)、(3−3)、(4−3)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
上記一般式(1−3)で表される化合物は、下記一般式(2−4)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(2−4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(2−4)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R3は、1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(2−4)中のG、X1〜X7、R2及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1−3)中のG、X1〜X7、R2及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2−4)中のR3が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
上記一般式(1−3)、(2−4)で表される化合物は、下記一般式(3−4)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(3−4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(3−4)中、R3は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(3−4)中のM、R3、及びX1〜X7の例は、それぞれ独立に上記一般式(2−4)中のM、R3、及びX1〜X7の例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(2−4)及び(3−4)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
(イ)R3が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
(ロ)イオン性親水性基としては、−SO3M1又は−CO2M1が好ましく、−SO3M1がより好ましく、−SO3Liが特に好ましい。
(ハ)前記M1及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。(ニ)X2、X4、及びX6の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X2、X4、及びX6の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X4がハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X2、及びX6がイオン性親水性基であることがより好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(2−4)及び(3−4)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
上記一般式(1−3)又は(2−4)で表される化合物は、下記一般式(4−4)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(4−4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
(一般式(4−4)中、R3は、1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(4−4)中のR3、X1〜X7及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−4)中のR3、X1〜X7及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
また、本発明は一般式(1)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いたインク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y2、Y3及びY4はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3及びY4は、互いに結合して環を形成しても良い。Y2、Y3及びY4の全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(1)中のG、A、R2、Y2、Y3、Y4及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(1)中のG、A、R2、Y2、Y3、Y4及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−1)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
(一般式(3−1)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(3−1)中のG、R2、R11、R12、R13、R14、X1、X2、X3、X4、X5及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(3−1)中のG、R2、R11、R12、R13、R14、X1、X2、X3、X4、X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(3−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−1)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
(一般式(4−1)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(4−1)中のR11、R12、R13、R14、X1、X2、X3、X4、X5及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(4−1)中のR11、R12、R13、R14、X1、X2、X3、X4、X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(4−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(5)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
(一般式(5)中、M1、M2、M3、M4、及びM5はそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、M1、M2、M3、M4、及びM5が一価のカウンターカチオンを表す場合は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンを表す。)
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(6)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
(一般式(6)中、X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3、及びY4は、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y2、Y3及びY4の全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(6)中のX1、X2、X3、X4、X5及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(3−1)中のX1、X2、X3、X4、X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(6)中のY2、Y3、及びY4の例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のY2、Y3、及びY4の例と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(7)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
(一般式(7)中、X1、X2、X3、X4、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y2、Y3、Y4は、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y2、Y3及びY4の全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(7)中のY2、Y3、Y4、X1〜X5及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(6)中のY2、Y3、Y4、X1〜X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(1)及び(7)で表されるアゾ化合物は、下記式(8)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
また、本発明は一般式(2−3)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いたインク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
(一般式(2−3)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(2−3)中のG、R2、R11、R12、R13、R14、X1〜X7及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(2−3)中のG、R2、R11、R12、R13、R14、X1〜X7及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
前記一般式(2−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−3)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
(一般式(4−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(4−3)中のR11、R12、R13、R14、X1〜X7及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(4−3)中のR11、R12、R13、R14、X1〜X7及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
また、本発明は一般式(2−4)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いたインク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
(一般式(2−4)中、Gは窒素原子又は−C(R2)=を表す。R2は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R3は、1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
前記一般式(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−4)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
(一般式(3−4)中、R3は1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
前記一般式(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−4)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
(一般式(4−4)中、R3は、1価の置換基を表す。X1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表される化合物は、水を溶媒として測定した吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が550nm以上700nm以下であることが好ましく、更に580nm〜650nmであることが特に好ましい。
また、本発明では、一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表される化合物は少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することが好ましい。より好ましくはイオン性親水性基を3〜6個有し、更に好ましくはイオン性親水性基を4〜5個有する。これにより本発明のアゾ化合物の水溶性、水溶液貯蔵安定性が向上し、インクジェット記録黒インク用水溶性染料としての要求性能を高いレベルで満足し更にインクジェット記録用インクとして使用した際のインクジェット印画物の画質を更に向上できる点という効果を奏する。
一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表されるアゾ化合物において、少なくとも1つのMがリチウムイオンであることが好ましい。
また、本発明では、一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していても適用できる。
以下に前記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオン)を表す。
一般式(1)で表される染料は複数種類のMが存在する混合塩の状態であってもよい。混合塩である場合、インク中に含まれる一般式(1)で表される染料が有するMのうち、モル分率で好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、その中でも特に90〜100%のMがLi+イオンであることが好ましい。Li+イオン以外のMとしては、Na+イオン、NH4 +イオンが好ましく、Na+イオンがより好ましい。
また、混合塩ではなく、インク中に含まれる一般式(1)で表される染料の全てのMがLiであることも好ましい。全てのMがLiであることにより、水溶液又はインク溶液中に溶解した分子分散状態において、イオン性親水性基であるカルボキシ基又はその塩(−CO2M)が解離して−CO2 −とM+にイオン化した状態でカチオン種が交換することにより、より水溶液又はインク溶液に対して溶解性の低い塩の状態を形成して着色剤の塩の状態で析出することを抑制し易いといった効果が得られるためである。
一般式(1)で表される染料は、一般的な合成法で合成することが可能であり、例えば、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができる。具体的には、特開2003−306623号公報や特開2005−139427号公報に記載の方法により合成することができる。
更にまた、本発明においては、ブラックインク組成物の色調などを調整するために耐光性・耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、下記の式(B−11)で表される化合物、更にその他のイエロー系染料を併用することもできる。
この併用されるイエロー系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,及び40等を挙げることができるが、これらに限定されない。
一般式(B−11):
一般式(B−11)において、G1、G2は各々独立に、置換されていてもよいアリ−ル基又は置換されていてもよいヘテロ基を表し、Kは任意の置換基を表す。Lは2価の連結基を表す。但し、一般式(B−11)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
アリール基の例としてはベンゼン環やナフタレン環をあげることができ、ヘテロ環のヘテロ原子としてはN、O、及びSをあげることができる。ヘテロ環に脂肪族環、芳香族環又は他のヘテロ環が縮合していてもよい。置換基としてはアリールアゾ基又はヘテロ環アゾ基であってもよい。
一般式(B−11)で表される化合物は、下記一般式(B−12)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(B−12):
一般式(B−12)においてG1、G2,G3及びG4は、各々独立に置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。L1は2価の連結基を表す。但し、一般式(B−12)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
一般式(B−12)で表される化合物は、下記一般式(B−13)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(B−13):
一般式(B−13)においてE1、E2、E3及びE4は、各々独立に置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。L11は2価の連結基を表す。但し、一般式(B−13)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。
一般式(B−13)で表される化合物は、下記一般式(B−14)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(B−14):
一般式(B−14)において、A環,B環,C環は、それぞれ独立に置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。A1、A2、A3、A4、A5、A11、A12、A13、A14、A15、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B11、B12、B13、B14、B15、B16、C1、C2、C3、C4、C11、C12、C13、C14はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。但し、一般式(B−14)は、少なくとも一つのイオン性親水性基を有する。Q1、Q2は、それぞれ独立に水素原子、又は、置換基を表す。L12は2価の連結基を表す。
一般式(B−14)について説明する。
A1、A2、A3、A4、A5、A11、A12、A13、A14、A15、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B11、B12、B13、B14、B15、B16、C1、C2、C3、C4、C11、C12、C13、C14は、それぞれ独立に水素原子、置換基を表す。置換基の好ましい例としてはイオン性親水性基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアシルアミノ基、置換又は無置換のスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のカルバモイル基が挙げられ、この中でもイオン性親水性基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアシルアミノ基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、置換又は無置換のスルファモイル基が好ましく、更にイオン性親水性基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアシルアミノ基、置換又は無置換のアルキル基が好ましく、特にイオン性親水性基が最も好ましい。
Q1、Q2は各々独立に、好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
L12は2価の連結基を表し、好ましくは、置換または無置換の炭素数1〜6のアルキレン基、置換または無置換のフェニレン基、カルボニル基、置換または無置換の1,3,5−トリアジン-2,4−ジイル基であり、より好ましくはカルボニル基、置換または無置換の1,3,5−トリアジン-2,4−ジイル基であり、特に好ましくはカルボニル基である。
以下に前記一般式(B−11)、(B−12)、(B−13)、(B−14)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。
本発明のブラックインク組成物中の前記一般式(1)で表される化合物又はその塩の含有量は、ブラックインク組成物の総質量に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、1.0〜9.0質量%であることがより好ましい。
また、ブラックインク組成物中に含まれる全着色剤の合計量は、ブラックインク組成物の総質量に対して0.5〜12質量%であることが好ましく、1.0〜9.0質量%であることが更に好ましい。
ブラックインク組成物中に含まれる着色剤の合計量が0.5質量%以上の場合、そのインク組成物を用いて記録媒体に画像等を記録したときに、充分良好な発色や高い画像濃度を得ることができる。また、着色剤の合計量を12質量%以下にすることにより、そのインク組成物の粘度を好ましい値に調節することができ、またインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出量を安定化することができ、更にインクジェットヘッドの目詰まりを防止することができる。
(インク組成物)
以上、本発明の各インク組成物に用いる着色剤及びそのインク組成物中における着色剤の含有量について説明したが、以下、各インク組成物に含まれる他の成分について説明する。
本発明における各インク組成物は、上述した着色剤(染料)を適当な溶媒に溶解して得ることができる。上記各インク組成物において着色剤を溶解するための溶媒としては、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液を主溶媒として用いることが好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を用いることができる。また、長期保存の観点から、紫外線照射や過酸化水素添加などの各種化学滅菌処理を施した水を用いることが好ましい。
本発明のインクセットを構成する各インク組成物における水の含有量は、インク組成物の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることが更に好ましい。
本発明における各インク組成物は、上述のとおり、溶媒として水とともに水溶性有機溶剤を用いることができる。この水溶性有機溶剤としては、染料を溶解する能力を有するものが好ましく、かつ蒸気圧が純水よりも小さいものが好ましい。
本発明において用いる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アセトニルアセトン等のケトン類、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール等が好ましいが、これらに限定されるものではない。水とともに水溶性有機溶剤をインク組成物の溶媒として用いることによって、インクヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させること、及び他の特性をほとんど変化させずにインク組成物の粘度を下げる等の調節を容易に行うことができる。
また、糖類から選ばれる少なくとも一種の保湿剤を、本発明の各インク組成物に含有させることができる。インク組成物に保湿剤を含有させることにより、インクジェット記録方法にインク組成物を用いた場合、インクからの水分の蒸発を抑制してインクを保湿することができる。本発明に用いる糖類としては、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等が好ましい。なお、上述した水溶性有機溶剤も保湿剤として働く場合がある。
上記水溶性有機溶剤及び/又は保湿剤は合計で、インク組成物中に5〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%含有させることができる。これらの含有量を5質量%以上にすることによって良好なインクの保湿性が得られ、かつ50質量%以下にすることによって、インク組成物の粘度をインクジェット記録方法に用いるための好ましい粘度に調整することができる。
本発明のインクセットは、各色インク組成物中に必要に応じてベタイン化合物を含有することが好ましく、その中でも、特に油溶性基を有するベタイン型界面活性剤であることが好ましい。
本発明で好ましく使用されるベタイン化合物は、界面活性能を有するベタイン型界面活性剤であることが好ましい。ここで言うベタイン化合物とは、分子中にカチオン性の部位とアニオン性の部位を両方とも有する化合物を表す。
カチオン性の部位としてはアミン性の窒素原子、ヘテロ芳香族環の窒素原子、炭素との結合を4つ有するホウ素原子、リン原子などを挙げることができる。この中で好ましくはアミン性の窒素原子又はヘテロ芳香族環の窒素原子である。中でも特に第4級の窒素原子であることが好ましい。
アニオン性の部位としては、水酸基、チオ基、スルホンアミド基、スルホ基、カルボキシル基、イミド基、リン酸基、ホスホン酸基などを挙げることができる。この中でも特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。分子全体としての荷電は、カチオン、アニオン、中性のいずれでもよいが、好ましくは中性である。
ベタイン化合物としては、特開2005−298744号公報の段落0033〜0043に記載の化合物や特開2006−56916号記載のベタイン化合物を好ましく用いることができる。
ベタイン化合物の好ましい添加量は発明の効果を奏する範囲であればいずれでもよいが、好ましくはインク組成物中の0.001〜50質量%、更に好ましくは0.01〜20質量%である。また、ベタイン化合物を2種以上併用することができるが、好ましくは、一般式W−1、W−2又はW−3で表される化合物の併用であり、特に一般式W−1、W−2又はW−3において、Rが炭素数14であるアルキル基である化合物を含むことが好ましい。また、これを用いる場合、C14のアルキル基を有する化合物が、純度(例えばLC−Massで測定可能)90%以上のものが好ましく、特に好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
また、2種以上を併用する場合、最大使用量の化合物は最小使用量の化合物に対して、質量比で1〜10000倍の質量比で使用することができる。
特に本発明においては、ベタイン化合物(特にベタイン界面活性剤)などからインク中に混入する無機イオンの合計質量をインク総質量に対して2質量%以下に抑えることが好ましい。
ここでいう無機イオンとは、染料のカウンターイオンの無機イオン、ベタイン界面活性剤に含まれる不純物である無機塩由来の無機イオン、ベタイン化合物のイオン当量からはずれたイオン成分のカウンターイオンとなる無機イオン、pH調節に使用する無機塩類から導入される無機イオン、キレート剤、防腐剤などのインク添加剤から導入される無機イオンの総和を表す。ただし、本発明においては、アンモニウムイオンを揮発性の化合物として取り扱い、この無機イオンから除外する。
無機イオン総量としては、インクの2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは、0.5質量%以下である。例えば、NaCl、Na2SO4由来のCl−,SO4 2−は、20wt%aq換算濃度、100ppm、好ましくは、30ppm、更に好ましくは10ppmである(例えば、イオンクロマト分析で定量可能)。
無機イオンのインク中の含有量を極力低減させるためには、種々の手法を用いることができ、例えば、特開2004−285269号公報、段落番号32、33に記載の方法を用いることができる。
第一に、インクに使用する素材(例えば、ベタイン化合物)に含有される無機イオンを素材合成時に除去する方法を挙げることができる。水溶性インク素材の場合、特に水溶性を向上させる目的でイオン解離性基を数多く導入する場合が多い。このとき、素材合成時に多量の無機物を含んだり、カウンターイオンとして必然的に無機イオンが含まれてきたりする。前者のイオンを除くためには、イオン選択性透過膜を用いた電気分解透析法による脱塩精製法や、イオン交換樹脂による方法、ゲル濾過法による脱塩精製などを行うことができる。
また、合成時に積極的にイオン交換する方法も使用することができる。たとえば、過剰のアンモニアや有機アミン類を添加して金属イオンと交換する方法や、アニオンの場合ならば有機カルボン酸と交換する方法を挙げることができる。また、合成時における脱塩法として有機溶媒により積極的に塩を析出させ濾過により除去する方法も利用できる。
第二に、この脱塩精製を、インク原材料の状態、すなわち各種素材を水などの溶媒に溶解した濃厚な水溶液(インク原液)で行うことも好ましい。場合によっては、完成インクでの脱塩精製も可能である。
本発明のインクセットに使用するインクは、染料を水並びに水溶性有機溶媒に溶解若しくは分散してなるインクである。中でも水溶性染料による水溶液タイプのインクであることが好ましい。またインクセット中、ベタイン化合物を有するインクは何色のものであってもよく、特に色を有さないインクをベタイン化合物のために用意してもよい。
本発明のベタイン化合物を使用した場合、インクにおいて気泡が発生する場合がある。この気泡は、インクジェット記録において印字欠陥を生じさせることがあるため、インクに泡を消す作用を有する化合物(=消泡剤)を添加することにより、この問題を解決することができる。
消泡剤としては、プルロニック系消泡剤(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型消泡剤)、やシリコーン型消泡剤など、種々のものを使用することができる。
次に、本発明のインクセットにおいて、シアン及び/又はマゼンタインク組成物中に、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物又はその塩から選ばれる少なくとも一種を含有させることも好ましい。2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を添加することによって、シアンインク組成物のブロンズ現象の発生を防止することができ、またマゼンタインク組成物の耐湿性を向上させることができる。上記ブロンズ現象とは、一般に、シアン系染料を含有したインク組成物を用いてインクジェット専用記録媒体(特に光沢系記録媒体)等にベタ印刷などの高Duty印刷を行った部分に赤浮きがみられる現象として知られている。ブロンズ現象が発生した場合、画像全体のカラーバランスが不均一になり画質が低下するため、良好な画像が得られなくなる。
本発明で用いられる上記の2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物のうち、特に好ましいものとしては、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物のアルカリ金属塩があげられる。更に前記アルカリ金属塩の中でも特にリチウム塩を用いることが好ましい。リチウム塩を用いた場合、上記ブロンズ現象の発生を防止できるだけでなく、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなるという効果が得られる。
上記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物又はその塩としては、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−メトキシ−2−ナフトエ酸、3−エトキシ−2−ナフトエ酸、3−プロポキシ−2−ナフトエ酸、6−メトキシ−2−ナフトエ酸、6−エトキシ−2−ナフトエ酸、及び6−プロポキシ−2−ナフトエ酸等、並びにそれらの塩、特にリチウム塩を例示できる。特に好ましいものは、2−ナフトエ酸及びそのリチウム塩である。
2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物の塩をインク組成物中に添加する場合、塩の形態でインク中に添加する方法、又は相当する2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びそれと塩を形成しうる塩基とを別々にインク組成物中に添加する方法のいずれの方法を用いることもできる。更に本発明においては2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができ、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物とその塩の両者を併用することもできる。
本発明のシアンインク組成物及び/又はマゼンタインク組成物に上記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群(以下、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等という)から選ばれる少なくとも一種を添加する場合、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等がこれらのインク組成物中に合計量で0.1〜10質量%含まれることが好ましく、0.5〜5質量%含まれることが更に好ましい。インク組成物中に含まれる2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の量は、それ自身の種類、インク組成物中に含まれる染料の種類、インク組成物に用いられる溶媒の種類等によって、適宜好ましい量を定めることができる。
2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等をシアンインク組成物中に添加する場合、インク組成物中に含まれるシアン染料の量(質量%)と2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の量(質量%)の比が1:0.1〜1:10であることが好ましく、1:0.3〜1:6であることが更に好ましい。シアンインク組成物中のシアン染料の含有量を1とした場合、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族カルボン酸等の含有量を0.1よりも多くすることで、ブロンズ現象の発生を低減することができ、更に2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の含有量を10よりも少なくすることで、インクジェットノズルの目詰まりを防止することができる。
一方、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等をマゼンタインク組成物中に添加する場合は、インク組成物中に含まれるマゼンタ染料の量(質量%)と2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の量(質量%)の比が1:0.5〜1:10であることが好ましく、1:1〜1:6であることが更に好ましい。マゼンタインク組成物中のマゼンタ染料の含有量を1とした場合、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の含有量を0.5よりも多くすることで、高湿度環境下における画像の滲みによる画質の劣化を低減することができ、更に2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の含有量を10よりも少なくすることで、インクジェットノズルの目詰まりを防止することができる。
本発明のインクセットを構成するインク組成物には、ノニオン系界面活性剤を含有させることが好ましい。ノニオン系界面活性剤を添加することによって、インク組成物の記録媒体への浸透性が優れたものになり、印刷時にインク組成物が記録媒体上に速やかに定着されうる。更に記録媒体上にインク組成物によって記録された1つのドットができるだけ真円に近いことが好ましいが、ノニオン系界面活性剤をインク組成物中に含有させることにより、1ドットによって形成される像の真円度を高めることができ、得られる画像の画質を向上できるという効果が得られる。
本発明に用いるノニオン界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤が好ましいが、これに限定されるものではない。
このアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール465(商標)、サーフィノール104PG50(商標)(以上商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)、オルフィンPD001(商標)、オルフィンE1010(商標)(以上商品名、日信化学工業株式会社製)アセチレノールE100(商品名、川研ファインケミカル社製)を例示することができ、これらから選ばれる少なくとも一種を本発明のインクセットを構成するインク組成物に添加することが好ましい。
本発明においては、インク組成物中にノニオン系界面活性剤が、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%含まれるように、インク組成物にノニオン系界面活性剤を添加するのがよい。インク組成物中にノニオン系界面活性剤を0.1質量%以上含有させることによって、記録媒体に対する各インク組成物の浸透性を高くすることができる。またインク組成物中のノニオン系界面活性剤の含有量を5質量%以下にすることにより、記録媒体上にインク組成物によって形成された画像がにじみにくいという効果が得られる。
更に、ノニオン系界面活性剤に加えて、浸透促進剤として、グリコールエーテル類をインク組成物に添加することにより、記録媒体に対するインク組成物の浸透性が向上するとともに、カラー印刷を行った場合に隣り合うカラーインクどうしの境界において、インクのブリード(ブリーディング)が減少し、非常に鮮明な画像を得ることができる。したがって、本発明のインクセットを構成するインク組成物には浸透促進剤を添加することが好ましい。
浸透促進剤として本発明に用いる上記グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が好ましいが、これらに限定されるものではない。これらのグリコールエーテル類は、インク組成物中に3〜30質量%、更に好ましくは5〜15質量%含まれることが好ましい。グリコールエーテル類の添加量を3質量%以上にすることにより、カラー印刷時の隣り合うインク間のブリード(ブリーディング)を有効に防止でき、更にこの添加量を30質量%以下にすることにより、画像のにじみが発生することを防止しやすくなり、かつインクの保存安定性を高めることができる。
更に、本発明におけるインク組成物には、トリエタノールアミンやアルカリ金属水酸化物等のpH調整剤、アルギン酸ナトリウム等の水溶性ポリマー、水溶性樹脂、フッ素系界面活性剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤、溶解助剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤等から選ばれる材料を所望により添加することができる。これらの成分は、各種別に一種又は二種以上を混合して用いることができる。また、添加する必要がなければ添加しなくてもよい。当業者は本発明の効果を損なわない範囲で、選択された好ましい添加剤を好ましい量で用いることができる。なお、上記溶解助剤とは、インク組成物から不溶物が析出する場合に、その不溶物を溶解し、インク組成物を均一な溶液に保つための添加剤である。
上記溶解助剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどのピロリドン類、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、上記酸化防止剤の例としては、L−アスコルビン酸及びその塩類等が例示できるが、これらに限定されない。
上記防腐剤又は防カビ剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及び1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL2、及びプロキセルTN(以上商品名)等を例示できるが、これらに限定されない。
上記pH調整剤しては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類及びそれらの変性物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの金属水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム等)等のアンモニウム塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩類などが例示できるがこれらに限定されない。
本発明のインクセットを構成するインク組成物は、上述した成分から適宜選ばれた成分を含んで調製されるが、得られるインク組成物の粘度が20℃において10mPa・s未満であることが好ましい。更に、本発明においてはインク組成物の表面張力を20℃において45mN/m以下にすることが好ましく、25〜45mN/mの範囲にすることが特に好ましい。粘度及び表面張力をこのように調整することによって、インクジェット記録方法に用いるために好ましい特性を有するインク組成物を得ることができる。この粘度及び表面張力の調整は、インク組成物に含有させる溶剤及び各種添加剤の添加量、並びにそれらの種類等を適宜調節及び選択することによって行うことができる。
なお、本発明のインクセットを構成するインク組成物は、そのpHが20℃において7.0〜10.5であることが好ましく、7.5〜10.0であることが更に好ましい。20℃におけるインク組成物のpHを7.0以上にすることによってインクジェットヘッドの共析メッキが剥離することを防止することができ、かつインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出特性を安定化することができる。また、インク組成物のpHを20℃において10.5以下にすることによって、インク組成物が接触する各種の部材、例えばインクカートリッジやインクジェットヘッドを構成する部材が劣化されることを防ぐことができる。
本発明におけるインク組成物の調製方法としては、例えば、インク組成物に含有される各種成分を充分に混合してできるだけ均一に溶解した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターで加圧濾過し、更に得られた溶液を真空ポンプを用いて脱気処理して調製する方法が例示できるが、これに限定されない。
[インクカートリッジ、インクジェットプリンター]
本発明のインクセットは、これらを一体的に若しくは独立に収容したインクカートリッジとして用いることができ、取り扱いが便利である点等からも好ましい。インクセットを含んで構成されるインクカートリッジは当技術分野において公知であり、公知の方法を適宜用いてインクカートリッジにすることができる。
また、本発明のインクジェットプリンターは上記インクカートリッジを含む。
本発明のインクセット又はインクカートリッジは一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することができるが、インクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクセット又はインクカートリッジを用いることができるインクジェット記録方法は、インク組成物を細いノズルから液滴として吐出させ、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる記録方法も含む。本発明のインク組成物を用いることができるインクジェット記録方法の具体例を以下に説明する。
第一の方法は静電吸引方式とよばれる方法である。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又は、インク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの静電吸引方式による記録方法に用いることが好ましい。
第二の方法は、小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法である。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることも好ましい。
第三の方法は、インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることも好ましい。
第四の方法は、印刷信号情報に従って微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射させて記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることも好ましい。
本発明のインクセット又はインクカートリッジは、上述した4つの方法を含むインクジェット記録方式による画像記録方法を用いて記録媒体上に画像を記録する場合に用いるインク組成物として特に好ましい。
[記録物]
本発明のインクセットを用いて記録された記録物は色バランスが良い優れた画質を有し、更に、耐光性、耐オゾン性に優れている。
好ましい被記録材と記録方式の組み合わせは、支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法である。
以下に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本発明の式(Y−1)で表される染料は、例えば下記合成ルートから誘導することができる。
以下の実施例において、λmaxは吸収極大波長であり、εmaxは吸収極大波長におけるモル吸光係数を意味する。また、単に%と記載しているものは質量%を表す。
(合成例1)
DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)450mLと1,2−ジクロロエタン24.75g中に、室温で化合物(a)(2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール(和光純薬工業(株)製/カタログ番号019−11125))76.5gを加え、炭酸カリウム79.5gを添加後に70℃まで昇温して同温度で30分間撹拌した。引き続き、80℃の温水375mLを上記反応液中に10分間かけて滴下し、内温25℃まで冷却した。析出した結晶をろ別し、イオン交換水250mL、引き続きメタノール150mLで洗浄後70℃にて一晩乾燥して化合物(b)65.1gを得た。
(合成例2)
アミノイソフタル酸((和光純薬工業(株)製/カタログ番号322−26175))(A)181.2gをイオン交換水1000mlに懸濁後、濃塩酸257mLを添加し、氷浴で5℃に保った。そこへ亜硝酸ナトリウム69.7gの水溶液116mlを滴下した(反応液A)。亜硫酸ナトリウム378.1gの水溶液1300mlを内温25℃で攪拌し、そこへ上記反応液Aを注入した。この状態で30分攪拌した後、内温を30℃まで加熱して、60分攪拌した。この反応液に塩酸500mLを添加し、すぐに内温50℃まで昇温した(反応液B)。この状態で90分攪拌した後に、ピバロイルアセトニトリル(東京化成(株)製/カタログ番号P1112)125.2gとイソプロパノール100mLを上記反応液Bに添加後、内温を93℃まで昇温し、240分間攪拌した。室温まで冷却後、析出した結晶(C)を吸引濾過し、結晶をイオン交換水1500mL、続いてイソプロパノール1000mLで洗浄後乾燥した。単離収率223.5g。収率73.7%。
(合成例3)
メタンスルホン酸100mL、酢酸120mL、プロピオン酸180mL中に、室温で化合物(b)29.2gを添加し、内温を45℃まで昇温して均一溶液にした後に内温0℃まで冷却した。引き続き、NaNO214.7gとイオン交換水27mLの溶液を上記均一溶液中に内温0〜10℃を保ちながら滴下し、内温5℃で15分間撹拌して、ジアゾニウム塩を調製した。合成例2で作成したカプラー成分(C)60.6g、メタノール600mL、エチレングリコール600mLから予め作成した溶液に、内温0〜10℃を保つ速度で上記ジアゾニウム塩溶液を滴下した。引き続き、内温25℃で30分間撹拌した。析出した結晶をろ過し、メタノール250mLで洗浄後、粗結晶を650mLの水に分散し、その後内温80℃で30分間撹拌後室温まで冷却し、ろ過、水300mLで洗浄後、60℃で一晩乾燥して、64.47gの色素(D)を得た。
(合成例4)
予め調製したKOH(錠剤)16.5gとイオン交換水414.9mLの溶液中に、内温20〜30℃で上記合成例3で作成した色素(D)46.1gを添加して溶解した。
引き続き、酢酸カリウム40.0gとメタノール200mLの溶液を上記色素水溶液中に内温25℃で滴下し、引き続き同温で10分間撹拌した。その後、IPA(イソプロパノール)2488mLを滴下して造塩し、同温度で30分間撹拌後にろ過、IPA500mLで洗浄、70℃で一晩乾燥して、44gの式(Y−1)で表される水溶性染料の粗結晶を得た。
(合成例5)
イオン交換水78.3mLに式(Y−1)で表される水溶性染料の粗結晶8.7gを室温で溶解後、0.1N塩酸を用いて水溶液のpH値を8.5に調整し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過後、ろ液中にIPA391.5mLを内温25℃で滴下した。析出した結晶をろ過、IPA100mLで洗浄後、80℃で一晩乾燥して、7.8gの式(Y−1)で表される水溶性染料の精結晶を得た。{λmax:428nm(H2O)、εmax:4.20×104}
(合成例6)
合成例4のKOHをNaOHに、酢酸カリウムを酢酸ナトリウムに変更した以外は、合成例4及び合成例5と同様の操作を行い、7.7gの水溶性染料(Y−2:一般式(Y)中のM=Na+)の精結晶を得た。
(合成例7)
合成例4のKOHをLiOHに、酢酸カリウムを酢酸リチウムに変更した以外は、合成例4及び合成例5と同様の操作を行い、7.4gの水溶性染料(Y−3:一般式(Y)中のM=Li+)の精結晶を得た。
(合成例8)
合成例4のKOHをNH4OHに、酢酸カリウムを酢酸アンモニウムに変更した以外は、合成例4及び合成例5と同様の操作を行い、7.3gの水溶性染料(Y−4:一般式(Y)中のM=NH4 +)の精結晶を得た。
(合成例9)
BLACK−11(M:Li/Na≒70/30(mol/mol))の合成スキームを下記に示す。
(1)中間体(B−5)の合成:
アミノアセトフェノン(a−2)8.5g、マロノニトリル4.9g、トルエン26.5mL、酢酸アンモニウム5.0g及び酢酸5.9gを室温で添加後、内温を100℃まで昇温して同温度で3時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却後メタノール31.8mLを注加し、20分撹拌後に反応液を濾過した。イソプロピルアルコール42.4mLで洗浄し60℃で8時間乾燥した。(B−5)11.1gを得た。
(2)中間体(C−5)の合成:
(B−5)8.0g、硫黄2.8g、炭酸水素ナトリウム7.4g、ジメチルアセトアミド160mL、アセトニトリル80mL及び水80mLを室温で混ぜた後、内温40℃まで昇温、同温度で1時間撹拌した。反応液を25℃まで冷却後、不溶物をろ過し、(C−5)を溶液状態で得た。
(3)中間体(T−1)の合成:
アセトン100mLを内温0℃に冷却し塩化シアヌル18.4gを添加した。次に2,5−ジスルホアニリン27.5g、炭酸ナトリウム10.6gを95gの水に溶解させ、内温0以上4℃以下で30分かけて滴下した。内温0〜5℃で2.5時間撹拌後、メタノール200mL、イソプロピルアルコール200mLを内温5℃以下で滴下し、析出した不溶物をろ過した後、(T−1)の溶液状態で得た。
(4)中間体(T−2)の合成:
上記(3)で得られた(T−1)を内温20℃に維持したまま(C−5)240.0gを滴下した。滴下後内温を30℃まで昇温して2.0時間撹拌した。イソプロピルアルコール2.3Lを内温30〜35℃で1時間かけて滴下した後、同温度で30分撹拌した。反応液をろ過、イソプロピルアルコールで洗浄、乾燥して(T−2)を24.0gで得た。
(5)中間体(T−3)の合成:
タウリン8.0g及び炭酸ナトリウム6.8gを水650mLに室温で完溶させ、その溶液の中に(T−2)24.0gを粉体で添加した。内温を100℃まで昇温して同温度で1.5時間撹拌した。反応液を内温25℃まで冷却し、中間体(T−3)を溶液状態で得た。
(6)中間体(f−6)の合成:
2−アミノベンゾニトリル(e−1)4.4gに水58mLを加え室温で撹拌し、12M塩酸水10.5mLを滴下後、反応液を内温0℃まで冷却した。内温を0〜4℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム2.8gの25%水溶液を滴下し内温0〜5℃で1.5時間撹拌した。その後、尿素0.4gを加え15分撹拌しジアゾニウム塩溶液を得た。上記ジアゾニウム塩溶液とは別に、中間体(T−3)に水300mLを加え内温2℃まで冷却後、先ほど調整したジアゾニウム塩溶液を内温2〜4℃で15分かけて滴下した。内温を2〜4℃に保ち2時間撹拌後、(f−6)を溶液状態で得た。
(7)BLACK−11の合成:
上記(6)で得られた(f−6)を室温で撹拌し、中間体(G)17.7gを水60mLに完溶させ滴下した。亜硝酸イソアミル4.5gを内温22℃で滴下し、同温度で30分撹拌した。その後更に亜硝酸イソアミル0.2gを滴下し内温22℃で2時間撹拌した。反応液を除塵ろ過し不溶物を除いた後、反応液にジメチルアセトアミド183mLを加え更にイソプロピルアルコール1.1Lを30分かけて滴下した。スラリー状の反応液をろ過しメタノール2Lで洗浄し粗(BLACK−11)を得た。
この粗体に水220mLを加え溶解しイソプロピルアルコール370mLを滴下し再度ろ過しウェットケーキを得た。このウェットケーキを水220mLに完溶させ、1N―水酸化リチウム水溶液を加えpH値を8.3(25℃)に調整した後、メタノール100mLを加え除塵ろ過をした。この溶液を内温40℃に昇温し同温度で、飽和LiClイソプロピルアルコール溶液300mLを滴下し、析出した結晶を濾過しウェット結晶を得た。得られたウェット結晶に水170mL、メタノール100mLを加え内温40℃で撹拌しながら飽和LiClイソプロピルアルコール溶液430mLを滴下し析出した結晶をろ別した。イソプロピルアルコール500mLで洗浄後、40℃で12時間乾燥し、精(BLACK−11)M:Li/Na≒70/30(mol/mol)を11.3gで得た。
また上述のようにして得られたBLACK−11(M:Li/Na≒70/30(mol/mol))を、Li塩型イオン交換樹脂(オルガノ社製、IR−120BをLi型にしたもの)を用いてBLACK−11(M:Li(すなわち、Mは全てLi))を得た。
〔合成例2〕
BLACK−32(M:Li)の合成スキームを下記に示す。
(合成例10)
BLACK−32(M:Li)の合成スキームを下記に示す。
(1)中間体(B−11)の合成:
チオ尿素12.5gと水120mlの中に原料(A−11;和光純薬品)40gを添加し、70℃で5時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、5%NaOH溶液400mlを加え、室温で3時間攪拌した後、濾過し、中間体(B−11)の黄色結晶を35.5g得た。
(2)中間体(C−11)の合成:
還元鉄57.0g、塩化アンモニウム5.0g、水35ml及びイソプロピルアルコール250mlを30分還流し、中間体(B−11)22.0gを添加し、1時間還流攪拌した。濾過した後、濃縮し、中間体(C−11)の黄色結晶を15.0g得た。
(3)中間体(D−11)の合成
中間体(C−11)9.6gをアセトン125mLに加え内温50℃で攪拌し溶解させた。氷浴で内温を4℃まで冷却後無水酢酸5.6gを15分で滴下した。室温まで昇温後、水50mLを添加し、アセトンを減圧下で留去した。結晶を濾別後50mLの水で2回洗浄し、80℃で6時間乾燥させ中間体(D−11)の白色結晶を9.9g得た。
(4)中間体(F−11)の合成
中間体(E−11) 4.3gを水 43mLに添加し室温で攪拌した。12N塩酸 4.0mLを滴下後、内温4℃まで冷却した。そこへ亜硝酸ナトリウム 0.9gの水溶液 3mLを滴下し5℃以下で2時間攪拌した。その後、尿素 0.1gを加え内温4℃で15分撹拌しジアゾニウム溶液を得た。別途、中間体(D−11) 2.4gと酢酸リチウム 8.6gをメタノール55mLとジメチルアセトアミド 3.5mLに溶かし内温5℃以下まで冷却した。ジアゾニウム溶液を内温5℃以下で5分かけて滴下した。1.5時間撹拌した後、塩化リチウム 15.0gを添加し、続いてイソプロピルアルコール150mLを滴下した。結晶を濾別後イソプロピルアルコール100mLで洗浄した。80℃で乾燥後、中間体(F−11)の茶色結晶を5.4g得た。
(5)BLACK−32の合成
中間体(F−11) 5.0g、(G) 3.8g及び水 50mLの溶液を12N塩酸でpH2以下に調整し、内温35から40℃で亜硝酸イソアミル 1.5gを滴下した。内温40℃で4時間撹拌後、塩化リチウム 20gを添加し、続いてイソプロピルアルコール 25mL滴下した。内温25℃まで冷却し、結晶を濾別後、イソプロピルアルコール 50mLで洗浄した。この結晶を水60mLを添加し、内温40℃まで昇温後、イソプロピルアルコール 100mLを滴下した。内温25℃まで冷却後結晶を濾別した。得られた結晶を水 35mLに加え、pHが8.3となるように4mol/L水酸化リチウム水溶液を加えた。この溶液にイソプロピルアルコール 250mLを滴下し析出した結晶を濾別した。イソプロピルアルコール30mLで洗浄後、80℃で乾燥して(BLACK−32)(M:Li)の黒色結晶 2.7gを得た。
(合成例11)
BLACK−31(M:Li)の合成スキームを下記に示す。
(1)中間体(B−12)の合成:
p−アミノアセトフェノン(A−12;東京化成品) 20.3gをアセトニトリル 150mLに添加し、室温で攪拌することで完溶させた。続いて、ピリジン 13.4mLを添加し、氷浴下で内温を4℃に保った。無水酢酸 11.8gを滴下し、内温4℃で15分攪拌した。反応液に水 300mL、続いて12N塩酸を5mL添加し、結晶を濾別した。結晶を水 100mLで洗浄後、80℃で乾燥し中間体(B−12)の白色結晶を18.6g得た。
(2)中間体(C−12)の合成:
ディーンスタークトラップを装着した100mL三つ口フラスコに、中間体(B−12)17.7g、マロノニトリル 7.3g、酢酸 4.6mL、酢酸アンモニウム 1.5gとトルエン 20mLを投入し、125℃のオイルバスで還流させた。1時間攪拌後、酢酸 4.6mLと酢酸アンモニウム 1.5gを追添し、還流条件で2時間攪拌した。放冷後、メタノール 30mL添加し、氷浴で30分攪拌した。結晶を濾別後、冷メタノール20mLで洗浄し乾燥させた。中間体(C−12)の白色結晶を12.1g得た。
(3)中間体(D−12)の合成
中間体(C−12) 11.3gとエタノール 20mLの溶液に硫黄 1.5gを添加し、続いてトリエチルアミン6.6mLを滴下した。内温50℃で30分攪拌後、酢酸エチル500mLと水300mLを加え、振盪後、分液を実施した。有機層に食塩水200mLを加え振盪後分液し、有機層に硫酸マグネシウムを添加し乾燥させた。有機溶媒を留去後、イソプロパノールを50mL添加し、懸濁攪拌後に結晶を濾別した。80℃で乾燥後、中間体(D−12)の白色結晶 8.1gを得た。
(4)中間体(F−12)の合成
中間体(E−11) 6.0gを水 60mLに加え室温で撹拌し、12N塩酸 5.6mLを滴下後、内温4℃まで冷却した。内温5℃以下で亜硝酸ナトリウム 1.3gの水溶液 4mLを滴下した。内温5℃以下で2時間攪拌した後に、尿素 0.1gを加え、15分撹拌しジアゾニウム溶液を得た。
別途、中間体(D−12) 3.4gと酢酸リチウム 12.0gをメタノール 90mLとジメチルアセトアミド 10mLに室温で溶解し、内温4℃まで冷却後、先のジアゾニウム溶液を内温5℃以下で15分滴下した。内温4℃以下で1.5時間撹拌した後、塩化リチウム 20.0g添加し、アセトニトリル 75mLを滴下した。結晶を濾別後、アセトニトリルで洗浄した。単離結晶をイソプロピルアルコール 75mLを用いて内温50℃で懸濁洗浄した。結晶を濾別後イソプロピルアルコールで洗浄した。80℃で乾燥後、中間体(F−12)の茶色結晶を6.4g得た。
(5)BLACK−31の合成
中間体(F−12) 5.0gと(G) 3.7g及び水 50mLの溶液を12N塩酸水でpH2以下に調整し、内温35〜40℃で亜硝酸イソアミル 1.2gを滴下した。内温40℃で3時間撹拌後、塩化リチウム 50.0gを加え内温25℃まで冷却した。結晶を濾別後、イソプロピルアルコール 150mLで洗浄した。単離結晶をメタノール 200mLに加え内温40℃まで昇温後、アセトニトリル 800mLを滴下した。滴下後15分撹拌し、内温25℃まで冷却した。結晶を濾別後、水 150mLに加え、室温でイソプロピルアルコール 450mLを滴下した。結晶を濾別後、水 50mLに加え、pH8.3になるまで4mol/L水酸化リチウム水溶液を加えた。この溶液にイソプロピルアルコール 150mLを滴下し析出した結晶を濾別した。イソプロピルアルコール 50mLで洗浄後、80℃で乾燥し(BLACK−31)(M:Li)の黒色結晶4.3gを得た。
[各インク組成物の調製]
上記合成例5,6で得られた色材1である化合物(Y−1)〜(Y−4)及び色材2である群A中の1〜8、C.I.ダイレクトイエロー86並びにC.I.ダイレクトイエロー132を用いて、下記のようにしてインクをそれぞれ調製した。先ず、下記表3〜7に示した各成分をそれぞれ混合して、十分撹拌した。その後、ポアサイズ0.2μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、実施例及び比較例の各インクを調製した。また、インク中における第1の色材の含有量(質量%)に対するインク中における第2の色材の含有量(質量%)の質量比率(〔群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量〕/〔一般式(Y)、又は式(Y−1)の化合物の含有量〕)を「色材2/色材1」として下記表3〜7に示した。
更に、以下の表3〜12に示した組成に基づき、各成分を常温において30分間攪拌した後、得られた溶液を目開き1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより各インク組成物を得た。なお表3〜12中において、各成分の数値はインク組成物の質量を100%とした場合の各成分の質量%を示し、更に水の量を示す「残」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
各インク組成物に用いた化合物の詳細を以下に示す。
・TEGmBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
・DEGmBe:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・アセチレノールE100:アセチレングリコール系界面活性剤、川研ファインケミカル社製
・オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学株式会社製
・オルフィンPD001:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学株式会社製
・サーフィノール104PG50: アセチレングリコール系界面活性剤、Air Products and Chemicals Inc.製
・プロキセルXL2:1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン、Arch社製
・C.I.Acid Red 289:東京化成社製
・C.I.Acid Blue 9:東京化成社製
次に調製した各インク組成物を用いて表13に示す組み合わせで、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(Cy)及びブラック(Bk)からなる実施例1〜29及び比較例1、2の各インクセットを作成した。なお、表13及び14に示した組み合わせのインクセットはライトインク組成物、すなわち淡マゼンタ(Light Magenta)インク組成物及び淡シアン(Light Cyan)インク組成物を含まない。
表13、及び14に示したインクセットについて、該インクセット中の各インク組成物のインク保存安定性の評価を以下のように行った。
また、インクジェットプリンター Stylus Color 880(商標)(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を使用し、更に表13、及び14に示したインクセットを用いて、インクジェット専用記録媒体{写真用紙<光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}にイエロー、マゼンタ、及びシアンからなり、それぞれの色のOD値が0.7〜1.8になるように階段状に濃度が変化した各色単色画像パターン並びにグリーン、レッド、グレーの画像パターンを印字させた。
[インク保存安定性]
インク組成物を密閉容器に保管して室温(18〜20℃)で1ヶ月間の保存安定性を確認した。保存前後のインク中の色素含有量(染料含有量)を高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製 LC20)にて測定し、色素残存率として評価した。色素残存率が90%以上をA、80%以上90%未満をB、80%未満をCとして三段階で評価した。色素残存率が高いほど、インク保存安定性に優れる。評価結果を表15、及び16に示す。
[耐光性]
画像を形成した光沢紙に、キセノン光(10万ルックス)を28日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、各色単色画像のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D0)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた(式中、Dは光照射後のOD値、D0は光照射前のOD値を表す。)
何れの濃度でもRODが85%以上の場合をA、何れか1点の濃度のRODが85%未満の場合をB、何れか2点の濃度のRODが85%未満をC、全ての濃度のRODが85%未満の場合をDとして四段階で評価した。
光に長時間曝露してもRODの低下が少ないほど耐光性に優れる。評価結果を表15、及び16に示す。
また、各色の耐光性評価の結果から、以下の判定基準を用い、それぞれのインクセットとしての耐光性のランク付けを行った。得られた評価結果を表17、及び18にインクセットの「耐光性」として示した。
A:耐光性評価が、4色について全てAである。
B:耐光性評価が、4色のうち1色以上についてBであり、残りの色については全てAである。
C:耐光性評価が、4色のうち1色以上についてCであり、残りの色については全てA又はBである。
D:耐光性評価が、4色のうち1色以上についてDである。
更に、光に曝露したことによって生じた、印刷物の各色間のROD変化の差(色バランス)について、インクセットごとに以下の判定基準を用いて評価した。
A:光照射開始から28日以降でも、各色のRODのなかの最大値と最小値との差(以下、この評価法の説明において単に「RODの差」という。)が15ポイント(15%)未満である。
B:光照射開始から15〜28日に、RODの差が15ポイントになる。
C:光照射開始から8〜14日に、RODの差が15ポイントになる。
D:光照射開始から7日以内に、RODの差が15ポイントになる。
本評価においてはRODの差の小さなものが記録物として優れる。表17、及び18に「色バランス1」として得られた評価結果を示した。
[耐オゾン性]
画像を形成した光沢紙をオゾンガス濃度5pm(25℃、60%RH)に設定された条件下で14日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、各色単色画像のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D0)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた(式中、Dはオゾンガス下放置後のOD値、D0はオゾンガス下放置前のOD値を表す。)
何れの濃度でもRODが85%以上の場合をA、何れか1点の濃度のRODが85%未満の場合をB、何れか2点の濃度のRODが85%未満をC、全ての濃度のRODが85%未満の場合をDとして四段階で評価した。
オゾンガスに長時間曝露してもRODの低下が少ないほど耐オゾン性に優れる。評価結果を表15、及び16に示す。
また、各色の耐オゾン性評価の結果から、以下の判定基準を用い、それぞれのインクセットとしての耐オゾン性のランク付けを行った。得られた評価結果を表17、及び18に「インクセットの耐オゾン性」として示した。
A:耐オゾン性評価が、4色について全てAである。
B:耐オゾン性評価が、4色のうち1色以上についてBであり、残りの色については全てAである。
C:耐オゾン性評価が、4色のうち1色以上についてCであり、残りの色については全てA又はBである。
D:耐オゾン性評価が、4色のうち1色以上についてDである。
更に、オゾンに曝露したことによって生じた、印刷物の各色間のROD変化の差(色バランス)について、インクセットごとに以下の判定基準を用いて評価した。
A:オゾンガス下放置開始から15日以降でも、各色のRODのなかの最大値と最小値との差(以下、この評価法の説明において単に「RODの差」という。)が15ポイント(15%)未満である。
B:オゾンガス下放置開始から8〜14日に、RODの差が15ポイントになる。
C:オゾンガス下放置開始から4〜7日に、RODの差が15ポイントになる。
D:オゾンガス下放置開始から3日以内に、RODの差が15ポイントになる。
本評価においてはRODの差の小さなものが記録物として優れる。表17、及び18に「色バランス2」として得られた評価結果を示した。
[濃色及び淡色混合系インクによる記録物の作成]
表3〜12に示した組成を有するインク組成物を用いて、以下の表19に示す、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(Cy)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、及びブラック(Bk)インク組成物の組み合わせに基づき71〜90及び比較例6〜8のインクセットを作成した。
実施例71〜90及び比較例6〜8のインクセット中の各インク組成物の評価を行った。
各インクセット、及びインクジェットプリンタPM930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、インクジェット専用記録媒体{写真用紙<光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(Cy)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、及びブラック(Bk)からなり、それぞれの色のOD値が0.7〜1.8になるように階段状に濃度が変化した各色単色画像パターン並びにグリーン、レッド、グレーの画像パターンを印字させた。
各色単色画像について耐オゾン性と耐光性の評価(色バランスを含む)を実施例1〜8、比較例1及び2と同様の方法にて行った。ただし、耐光性と耐オゾン性の評価基準については以下のとおりとした。
評価結果は表20〜21に示す。
[耐光性]
A:耐光性評価が、6色について全てAである。
B:耐光性評価が、6色のうち1色以上についてBであり、残りの色については全てAである。
C:耐光性評価が、6色のうち1色以上についてCであり、残りの色については全てA又はBである。
D:耐光性評価が、6色のうち1色以上についてDである。
[耐オゾン性]
A:耐オゾン性評価が、6色について全てAである。
B:耐オゾン性評価が、6色のうち1色以上についてBであり、残りの色については全てAである。
C:耐オゾン性評価が、6色のうち1色以上についてCであり、残りの色については全てA又はBである。
D:耐オゾン性評価が、6色のうち1色以上についてDである。
以上の結果から、本発明のインクセットは、インク保存安定性に優れ、色バランスが良く、耐光性・耐オゾン性を優れた画像(記録物)が得られることが分かる。特に実施例65〜70、及び86〜90(染料化合物としてBLACK−11(M:Li)を使用したインク)は、予想外にもその他のものと比較して、印画濃度が一段高く、より鮮明な黒色を呈した。