JP2012187617A - 高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法 - Google Patents

高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性を低下させることなく、ナゲット内部への亀裂の進展を抑えて、破断強度の向上を図った高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法を提供する。
【解決手段】重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部を抵抗溶接によって接合してなる高張力鋼板の接合体である。この高張力鋼板の接合体にあっては、JIS Z2244に準拠した低試験力ビッカース硬さ試験(試験力4.903N)にて測定した、ナゲット13から熱影響部14を経て母材に至るビッカース硬さ分布曲線において、「熱影響部領域においてビッカース硬さが母材の硬さよりも低減した後に母材の硬さにまで上昇するのに要する距離」と定義される熱影響部軟化幅wが、一定幅以上である。
【選択図】図3

Description

本発明は、高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法に関する。
車両軽量化のために、より高張力な鋼板を適用することによって、使用する鋼板の板厚を薄肉化することが行われている。高張力鋼板同士の接合には、一般的に抵抗溶接(スポット溶接)が適用されている。抵抗溶接においては、2枚ないしは3枚の高張力鋼板が重ね合わされた接合部を、一対の電極によって挟み込んでいる。一対の電極は、接合部に付勢する加圧力および通電パターンが変更可能に構成されている。一対の電極によって接合部を挟み込み、加圧しながら電流を所定の時間流すことによって、鋼板間に発生する抵抗熱を利用して鋼板を溶融し、それぞれの鋼板を接合して接合体を得ている。
高張力鋼板は降伏点が非常に高いため、溶接部に剥離方向の力が加わった場合に、ナゲットの方向に力が伝達しやすく、界面破断し、強度が低下するという問題がある。
このような問題に対して、ナゲット周辺の熱影響部を軟化する手法が提案されている(特許文献1、2を参照)。
特許第3710347号 特開2008−229720
しかしながら、ナゲット周辺の熱影響部を軟化させる条件によっては、軟化効果を十分に発揮させられず、ナゲット内部への亀裂の進展を抑えることができない。
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、ナゲット内部への亀裂の進展を抑えて、破断強度の向上を図った高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部を抵抗溶接によって接合してなる高張力鋼板の接合体である。この高張力鋼板の接合体にあっては、JIS Z2244に準拠した低試験力ビッカース硬さ試験(試験力4.903N)にて測定した、ナゲットから熱影響部を経て母材に至るビッカース硬さ分布曲線において、「熱影響部領域においてビッカース硬さが母材の硬さよりも低減した後に母材の硬さにまで上昇するのに要する距離」と定義される熱影響部軟化幅が、一定幅以上である。
また、上記目的を達成する本発明は、上記の高張力鋼板の接合体を得るための高張力鋼板の抵抗溶接方法である。高張力鋼板の抵抗溶接方法は、重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部に通電してナゲットを形成する本通電工程と、前記接合部に前記本通電工程と同じ加圧力を付勢したまま、通電の休止と再通電とを少なくとも1回繰り返す再通電工程とを有している。さらに、前記接合部に前記本通電工程と同じ加圧力を付勢したまま、前記再通電工程の後に通電を停止するホールド工程を有している。
本発明の高張力鋼板の接合体にあっては、熱影響部軟化幅が、一定幅以上であり、熱影響部軟化幅を幅広化することによって、ナゲット周辺の熱影響部が変形し易くなるため、剥離方向に加えられた引張荷重を、板厚方向と板面内方向とに分散することができる。これによって、界面破断が抑制され、高張力鋼板の接合体における接合部の破断強度を向上させることが可能となる。
本発明の高張力鋼板の抵抗溶接方法によれば、本通電工程の後にも加圧したままの状態を保持し、冷却時間を加えた後に最通電をしている。さらに、接合部に本通電工程と同じ加圧力を付勢したまま、再通電工程の後に通電を停止するホールド工程を設けている。これによって、接合部における冷却履歴をコントロールして、熱影響部軟化幅を幅広化することができる。熱影響部軟化幅を幅広化することによって、接合部の破断強度を向上させた高張力鋼板の接合体を得ることが可能となる。
抵抗溶接装置を示す概略構成図である。 図1の要部を示す拡大図である。 接合部の硬さプロファイルの一例を示すグラフである。 図4(A)は、本実施形態における接合部の組織を示す断面写真、図4(B)は、対比例における接合部の組織を示す断面写真である。 本実施形態の高張力鋼板の接合体を得るための通電パターンおよび加圧パターンを示す図である。 再通電工程におけるクール時間と電流値との関係を示すグラフである。 ナゲット径と熱影響部軟化幅との関係を示すグラフである。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
図1および図2を参照して、自動車車体にあっては、通常、プレス部品10、11同士を接合するために抵抗溶接(スポット溶接)を適用している。図示するプレス部品10、11は、高張力鋼板から形成されている。プレス部品10、11にはそれぞれ、接合用のフランジ10a、11aが用意されている。そのフランジ10a、11a同士を重ねた接合部12に、溶接ガン20によって局所的に加圧および通電する。これによって、鋼板間に抵抗熱(ジュール熱)を発生させ、その熱によってプレス部品10、11を構成する高張力鋼板を溶融接合し、車体を組み立ている。図1における符号「15」は、高張力鋼板からなるプレス部品10、11同士を抵抗溶接してなる接合体を示している。
溶接ガン20は、対をなす電極チップ21と、接合部12に電極チップ21を介して加圧力を付勢する加圧シリンダ22とを備えている。電極チップ21は、電流供給装置30に接続されている。電流供給装置30は、電流値および電圧値が調整自在に構成されている。電流供給装置30は、電極チップ21を介して通電するパターンを制御するためのコントローラ40に接続されている。
高張力鋼板は降伏点が非常に高いため、高荷重まで接合部12近辺で変形をしなくなった結果、溶融部端部にかかる荷重が非常に大きくなる。このため、破断時にはナゲット内部に亀裂が進展しやすくなり、強度が安定しないという問題がある。
これに対し、接合部12を溶融した後に十分に冷却した後、再度過熱することによって、ナゲット周辺部の焼きなましを行い、変形を容易にすることによって溶接強度の改善を行うことが公知となっている(前述の特許文献1、2を参照)。これらの技術にあっては、ナゲット周辺を軟化するとき、ナゲットを形成するための電流値よりも小さい弱電流をかけている。
弱電流を長い時間かけてナゲット周辺の熱影響部の温度をコントロールすると、溶接時間が長くなってしまい、同一工程内において溶接可能な打点数が少なくなる。これにより、接合体の生産性が低下してしまう。
また、高張力鋼板は降伏点の高さに加え、生成時に炭素を多く添加するため、溶融部の脆性が高くなる。このため、重ね合わされた高張力鋼板同士を剥離方向に引張荷重を加えた場合(十字引張試験)、ナゲットの周辺部における変形が発生する前に、ナゲット端部に亀裂が達し、応力が集中する。ナゲット内に亀裂が進展し始め、母材が変形して、亀裂が母材側に伝播する。その結果、接合部12が破断する。このように、重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12にあっては、ナゲット周辺部の軟化効果を十分に発揮させなければ、引張強度の改善を十分に図ることができない。このような状態は、特に炭素量が0.15質量%を超える材料について顕著である。
そこで、本実施形態においては、重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部12を抵抗溶接によって接合してなる高張力鋼板の接合体であって、JIS Z2244に準拠した低試験力ビッカース硬さ試験(試験力4.903N)にて測定した、ナゲットから熱影響部(HAZ)を経て母材に至るビッカース硬さ分布曲線において、「熱影響部領域においてビッカース硬さが母材の硬さよりも低減した後に母材の硬さにまで上昇するのに要する距離」と定義される熱影響部軟化幅を、0.8mm以上としてある。この「0.8mm以上」は、後述する表1に記載されるケース1の板組の場合である。
図3には、本実施形態および対比例における接合部12の硬さプロファイルの一例が示される。このグラフの横軸は測定位置(ナゲット中心からの距離)を示し、縦軸はビッカース硬さ(HV0.5)を示している。本実施形態の硬さプロファイルが実線によって示され、対比例の硬さプロファイルが一点鎖線によって示される。本実施形態における高張力鋼板の抵抗溶接手順については後述する。対比例においては、上述したように、接合部12を溶融した後に十分に冷却した後、再度過熱することによって、ナゲット13周辺の熱影響部14の焼きなましを行っている。対比例においては、ナゲット13周辺を軟化するときには、ナゲット13を形成するための電流値よりも小さい弱電流をかけている。
ナゲット13から熱影響部14を経て母材に至るビッカース硬さ分布曲線は、JIS Z2244に準拠した低試験力ビッカース硬さ試験(試験力4.903N)にて測定したものである。本実施形態および対比例ともに、ナゲット13中心から外方に向かうビッカース硬さは、熱影響部14に達した位置で低下し始め、熱影響部領域において母材の硬さよりも一旦低減した後に母材の硬さにまで再び上昇する分布を示している。図中の破線aは母材の硬さの平均値を示している。このようなビッカース硬さ分布曲線において、「熱影響部領域においてビッカース硬さが母材の硬さよりも低減した後に母材の硬さにまで上昇するのに要する距離」と定義される熱影響部軟化幅wは、本実施形態は、対比例に比べて幅広となっている。
熱影響部軟化幅wを幅広化することによって、ナゲット13周辺の熱影響部14に対する軟化効果が十分に発揮され、ナゲット13内への亀裂の進展を効果的に抑制することができ、重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12における引張強度を実用上十分に改善することができる。ナゲット13周辺の熱影響部14が変形し易くなるため、剥離方向に加えられた引張荷重を、板厚方向と板面内方向とに分散することができ、高張力鋼板の接合体における接合部12の破断強度が向上すると考えられる。
実験によれば、対比例においては熱影響部軟化幅wが0.6mmであったが、本実施形態においては熱影響部軟化幅wを0.8mm以上とすることによって、重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12における引張強度を実用上十分に改善することができた。
本実施形態における高張力鋼板の接合体15にあっては、さらに、ナゲットの結晶粒径を、傾角15度以上の大傾角粒界が30μmより小さい微細粒径、好ましくは、20μmより小さい微細粒径としてある。
図4(A)には、本実施形態における接合部12の組織が示され、図4(B)には、対比例における接合部12の組織が示されている。図中の破線L1は、ナゲット13とその周辺の熱影響部14との境界を示し、破線L2によって囲まれる矩形は、ナゲット13の結晶粒径を測定した範囲を示している。
対比例においては、ナゲット13の結晶粒径は、傾角15度以上の大傾角粒界が30μm程度の粒径であった(図4(B)を参照)。一方、本実施形態においては、ナゲット13の結晶粒径は、傾角15度以上の大傾角粒界が20μmより小さい微細粒径であった(図4(A)を参照)。熱影響部軟化幅wの幅広化によってナゲット13周辺の熱影響部14に対する軟化効果を十分に発揮させたのに加えて、ナゲット13内の組織を微細化することによって、ナゲット13内への亀裂の進展をより一層効果的に抑制することができ、重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12における引張強度をより一層十分に改善することができる。ナゲット13内部を微細化した上で、熱影響部14を軟化することによって、ナゲット界面方向への亀裂の進展が無い状況下でナゲット13周辺の熱影響部14が変形し易くなるため、剥離方向に加えられた引張荷重を、板厚方向と板面内方向とにより好適に分散することができ、高張力鋼板の接合体における接合部12の破断強度が一層向上すると考えられる。
熱影響部軟化幅wの幅広化、およびナゲット13内の組織を微細化した本実施形態の高張力鋼板の接合体は、以下のようにして得ることができる。
図5は、本実施形態の高張力鋼板の接合体を得るための通電パターンおよび加圧パターンを模式的に示す図である。
図5を参照して、熱影響部軟化幅wの幅広化、およびナゲット13内の組織を微細化した本実施形態の高張力鋼板の接合体を得るための高張力鋼板の抵抗溶接方法は、重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部12に通電してナゲット13を形成する本通電工程(S1)と、接合部12に本通電工程(S1)と同じ加圧力を付勢したまま通電の休止と本通電工程における電流値以上の電流をかける再通電とを少なくとも1回繰り返す再通電工程(S2)と、接合部12に本通電工程(S1)と同じ加圧力を付勢したまま再通電工程(S2)の後に通電を停止するホールド工程(S3)と、を有している。
下記の表1は、再通電工程(S2)における合計板厚ごとの代表的な通電パターンを示す表である。
本実施形態の再通電工程(S2)にあっては通電の休止と再通電とを2回繰り返しており、本通電工程(S1)における1回の通電と合わせて、合計3回の通電を行っている。以下では、説明の便宜上、本通電工程(S1)における通電を「第1通電」といい、再通電工程(S2)における1回目の通電を「第2通電」といい、再通電工程(S2)における2回目の通電を「第3通電」という。
高張力鋼板は、例えば、炭素量が0.18質量%の1.2GPa級鋼である。表1のケース1は、板厚が1.6mmの上記高張力鋼板を重ね合わせて接合部12を構成してある。2枚の合計板厚は3.2mmである。ケース2は、板厚が1.4mmの上記高張力鋼板を重ね合わせ、さらに板厚が0.75mmのGA軟鋼(合金化溶融亜鉛めっき鋼板)を重ね合わせて接合部12を構成してある。3枚の合計板厚は3.55mmである。ケース2のような高張力鋼板と軟鋼との板組は、自動車車体のパネル部品、例えばボディサイドなどに広く適用されている。
本通電工程(S1)では、安定した溶接強度が得られる限界ナゲット径を得るため、本通電工程(S1)における加圧力、第1通電における通電時間、第1通電における電流値、および電極チップ21の先端径などは、限界ナゲット径以上の大きさのナゲット13が生成される条件にて設定してある。
再通電工程(S2)では、接合部12に本通電工程(S1)と同じ加圧力を付勢したまま、通電の休止と再通電とを少なくとも1回(図示例では2回)繰り返す。通電の休止つまりクールは、ナゲット13における溶融金属が十分に冷却される前に第2通電、第3通電を行い得る時間だけ行う。例えば、通電の休止は4サイクル(0.08秒)である。第2通電および第3通電における通電時間、および第2通電および第3通電における電流値は、ナゲット13を再度溶融させることなく急冷と後加熱とを行い得る通電時間および電流値に設定されている。第2通電および第3通電における通電時間は、ケース1、2ともに3サイクル(0.06秒)である。第2通電および第3通電における電流値は、ケース1では8.5kA、ケース2では10.5kAである。
再通電工程(S2)における急冷・後加熱の程度は、材料の合計板厚に依存している。すなわち、ナゲット径が等しい場合、合計板厚によって溶融金属の体積が変化することから、ほぼ同一の初期通電パターン(第1通電)であっても、再加熱の入熱量を大きくする必要がある。
そこで、再通電工程(S2)においては、ナゲット13における溶融金属の単位体積当たりの再通電による入熱量が定められ、ナゲット13における溶融金属の体積が単位体積に対して増減するのに応じて、再通電による入熱量を増減変化させることが好ましい。さまざまな板組においても、ナゲット13内の組織の微細化を促進でき、引張強度を実用上十分に改善した高張力鋼板の接合体を得ることができるからである。
表1に示すように、合計板厚が3.2mmのケース1では、後加熱の入熱量は8.5kAであるのに対し、合計板厚が3.55mmのケース2では、引張強度の同程度の改善を得るためには、後加熱の入熱量として10.5kAが必要になる。
図6は、再通電工程(S2)におけるクール時間と電流値との関係を示すグラフである。グラフの「○」は重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12における引張強度を実用上十分に改善できたことを示し、「×」は引張強度を改善できなかったことを示している。「○」のエリアは、2点鎖線によって囲んで示されるように、冷却を一定にしているので右上がりの特性となる。このグラフより、クール時間が長くなると、電流値を若干増加させる必要があることがわかる。したがって、上記の再通電による入熱量については、クール時間も考慮したものである。
本実施形態では、第3通電の完了と同時に加圧力を解除していない。つまり、ホールド工程(S3)では、接合部12に本通電工程(S1)と同じ加圧力を付勢したままの状態を、通電を停止した後、短時間(ホールド時間)だけ維持する。ホールド時間は、急冷が完了する短時間でよく、例えば、ケース1、2ともに1サイクル(0.02秒)である。
ホールド工程(S3)が終了すると、加圧力を解除する。
図7は、ナゲット径と熱影響部軟化幅wとの関係を示すグラフである。グラフの「○」は重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12における引張強度を実用上十分に改善できたことを示し、「×」は引張強度を改善できなかったことを示している。
高張力鋼板は、炭素量が0.18質量%の1.2GPa級鋼である。板厚が1.6mmの上記高張力鋼板を重ね合わせて接合部12を構成してある。ナゲット径を制御する因子は、本通電工程(S1)における加圧力、第1通電における通電時間、第1通電における電流値、および電極チップ21の先端径である。一方、熱影響部軟化幅wを制御する因子は、表1に示したように、再通電工程(S2)におけるクールの時間、第2、第3通電における通電時間、第2、第3通電における電流値、およびホールド工程(S3)におけるホールド時間である。
図7に示すように、ナゲット径がamm以上、かつ、熱影響部軟化幅wが0.8mm以上の領域A1において、重ね合わされた高張力鋼板同士を含む接合部12における引張強度を実用上十分に改善できた。
このように、本実施形態にあっては、第1通電の後にも加圧したままの状態を保持し、冷却時間を加えた後、ナゲット13における溶融金属が十分に冷却される前に最通電している。また、接合部12に本通電工程(S1)と同じ加圧力を付勢したまま、再通電工程(S2)の後に通電を停止するホールド工程(S3)を設けている。接合部12における冷却履歴をコントロールして、熱影響部軟化幅wを0.8mm以上とすることができる。熱影響部軟化幅wの幅広化を図ることによって、ナゲット13周辺の熱影響部14に対する軟化効果を十分に発揮させ、ナゲット13界面方向への亀裂の進展が進み難くなる。これによって、界面破断が抑制され、高張力鋼板の接合体における接合部12の破断強度を向上させることが可能となる。接合部12における冷却履歴をコントロールして、ナゲット13内の組織の微細化を促進することもできる。熱影響部軟化幅wの幅広化によってナゲット13周辺の熱影響部14の軟化効果を十分に発揮させたのに加えて、組織を微細化することによって、ナゲット13界面方向への亀裂の進展が一層進み難くなる。これによって、界面破断が一層抑制され、高張力鋼板の接合体における接合部12の破断強度をより一層向上させることが可能となる。
よって、本実施形態によれば、ナゲット13内部への亀裂の進展を抑えて、破断強度の向上を図った高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法を提供することができる。
なお、最通電は、本通電工程(S1)における電流値以上の電流を接合部12にかけてもよい。再通電工程(S2)においては本通電工程(S1)における電流値以上の電流を短時間かける再通電を行って、ナゲット13周辺の熱影響部14の温度をコントロールすることによって、溶接時間が長くなることがない。したがって、同一工程内において溶接可能な打点数が少なくならず、接合体の生産性が低下することがない。この場合には、生産性を低下させることなく、ナゲット13内部への亀裂の進展を抑えて、破断強度の向上を図った高張力鋼板の接合体、および高張力鋼板の抵抗溶接方法を提供することができる。
10、11 プレス部品(高張力鋼板)、
12 接合部、
13 ナゲット、
14 熱影響部、
15 高張力鋼板の接合体、
20 溶接ガン、
21 電極チップ、
22 加圧シリンダ、
30 電流供給装置、
40 コントローラ、
S1 本通電工程、
S2 再通電工程、
S3 ホールド工程、
w 熱影響部軟化幅。

Claims (5)

  1. 重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部を抵抗溶接によって接合してなる高張力鋼板の接合体であって、
    JIS Z2244に準拠した低試験力ビッカース硬さ試験(試験力4.903N)にて測定した、ナゲットから熱影響部を経て母材に至るビッカース硬さ分布曲線において、「熱影響部領域においてビッカース硬さが母材の硬さよりも低減した後に母材の硬さにまで上昇するのに要する距離」と定義される熱影響部軟化幅が、一定幅以上である高張力鋼板の接合体。
  2. 前記ナゲットの結晶粒径は、傾角15度以上の大傾角粒界が30μmより小さい微細粒径、好ましくは、20μmより小さい微細粒径である請求項1に記載の高張力鋼板の接合体。
  3. 前記熱影響部軟化幅の前記一定幅は、0.8mmである請求項1または請求項2に記載の高張力鋼板の接合体。
  4. 請求項1または請求項2に記載の高張力鋼板の接合体を得るための高張力鋼板の抵抗溶接方法であって、
    重ね合わされた高張力鋼板同士を少なくとも含む接合部に通電してナゲットを形成する本通電工程と、
    前記接合部に前記本通電工程と同じ加圧力を付勢したまま、通電の休止と再通電とを少なくとも1回繰り返す再通電工程と、
    前記接合部に前記本通電工程と同じ加圧力を付勢したまま、前記再通電工程の後に通電を停止するホールド工程と、を有する高張力鋼板の抵抗溶接方法。
  5. 前記再通電工程においては、前記ナゲットにおける溶融金属の単位体積当たりの再通電による入熱量が定められ、前記ナゲットにおける溶融金属の体積が前記単位体積に対して増減するのに応じて、再通電による入熱量を増減変化させる請求項4に記載の高張力鋼板の抵抗溶接方法。
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