JP2012179712A - ワイヤソーおよびワークの切断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワーク側面のワイヤ切入り部で飛散し、ワーク保持部の側面からの落下してくるスラリによって、切断されてウエーハ状になったワークの部分が蛇腹運動することを防ぎ、スライスされたウエーハのWarpを改善することができるワイヤソーを提供する。
【解決手段】少なくとも、複数の溝付きローラに巻掛けされ、軸方向に往復走行するワイヤと、スラリを供給するノズルと、当て板と該当て板を保持するワークプレートを介して、ワークを保持しつつワイヤへ送るワーク送り装置を具備し、ノズルからスラリを供給しつつ、ワーク送り装置により保持されたワークをワイヤに押し当てて切り込み送りし、ウエーハ状に切断するワイヤソーであって、前記ワーク送り装置はワーク保持部を有し、該ワーク保持部の下端面の最大幅が、切断されるワークの幅よりも大きいワイヤソー。
【選択図】図3

Description

本発明は、ワイヤソーを用いて、ワーク(例えばシリコンインゴット、化合物半導体のインゴット等)から多数のウエーハを切り出すワイヤソーおよびワークの切断方法に関する。
従来、シリコンインゴットや化合物半導体インゴットなどからウエーハを切り出す手段として、ワイヤソーが知られている。このワイヤソーでは、複数のローラの周囲に切断用ワイヤが多数巻掛けられることによりワイヤ列が形成されており、その切断用ワイヤが軸方向に高速駆動され、かつ、スラリが適宜供給されながら前記ワイヤ列に対してワークが切り込み送りされることにより、このワークが各ワイヤ位置で同時に切断されるようにしたものである(特許文献1参照)。
より詳しくは、前記ワークの側面の一部においてワークの軸方向の略全域にわたって当て板が接着され、この当て板を保持するワークプレートがワーク送り装置のワーク保持部によって保持された状態でワーク全体が切り込み送りされ、前記当て板と反対の側から切断用ワイヤにより切り込まれる。この際、ワイヤ列にワークを押圧する方向は、該ワークをワイヤ列に上方から押圧する方法と、下方から押圧する方法が知られているが、半導体シリコンインゴットの切断においては、該ワークをワイヤ列に上方から押圧する方法が主流である。
ここで、図10に、従来の一般的なワイヤソーの一例の概要を示す。
図10に示すように、ワイヤソー101は、主に、ワークを切断するためのワイヤ102、ワイヤ102を巻掛けた溝付きローラ103、ワイヤ102に張力を付与するための機構104、切断されるワークを下方へと送り出す装置105、切断時にスラリを供給する機構106で構成されている。
ワイヤ102は、一方のワイヤリール107から繰り出され、トラバーサ108を介してパウダクラッチ(定トルクモータ109)やダンサローラ(デッドウェイト)(不図示)等からなる張力付与機構104を経て、溝付きローラ103に入っている。ワイヤ102はこの溝付きローラ103に300〜400回程度巻掛けられた後、もう一方の張力付与機構104’を経てワイヤリール107’に巻き取られている。
また、溝付きローラ103は鉄鋼製円筒の周囲にポリウレタン樹脂を圧入し、その表面に一定のピッチで溝を切ったローラであり、巻掛けられたワイヤ102が、駆動用モータ110によって予め定められた周期で往復方向に駆動できるようになっている。
なお、ワークの切断時には、図11に示すようなワーク送り装置105によって、ワークは保持されつつ押し下げられ、溝付きローラ103に巻掛けられたワイヤ102に送り出される。このワーク送り装置105は、ワークを保持するためのワーク保持部111、ワークを下方へ送るためのLMガイド112およびワーク送り本体部113を備えており、コンピュータ制御でLMガイド112に沿ってワーク送り本体部113を駆動させることにより、予めプログラムされた送り速度で、ワーク保持部111により保持されたワークを送り出すことが可能である。
なお、ワークは当て板114に接着されており、また、この当て板114はワークプレート115により保持されている。そして、これらの当て板114、ワークプレート115を介して、ワーク保持部111(この例では、ワークプレート115を保持するクランパ116である)によりワークは保持される。
また、図10に示すように、溝付きローラ103、巻掛けられたワイヤ102の近傍にはノズル117が設けられており、切断時にスラリタンク118からワイヤ102にスラリを供給できるようになっている。また、スラリタンク118にはスラリチラー119が接続されており、供給するスラリの温度を調整できるようになっている。
このようなワイヤソー101を用い、ワイヤ102にワイヤ張力付与機構104を用いて適当な張力をかけて、駆動用モータ110により、ワイヤ102を往復方向に走行させながらワーク送り装置105でワークを切り込み送りすることでスライスする。
しかしながら、上記のような一般的な従来のワイヤソーを用いてワークをウエーハ状に切断し、切断されたウエーハの形状を調べてみると、大きなWarpが生じてしまっていた。Warpは半導体ウエーハの切断における重要品質の一つであり、製品の品質要求が高まるにつれ、一層の低減が望まれている。
特開平9−262826号公報
そこで、本発明者は、切断されたウエーハの形状を詳細に調査したところ、特にワークの両端面の付近でのWarpの悪化が顕著であり、Warpが悪化したウエーハを更に詳細に調査すると、切断後半部でWarp形状が著しく悪化していることを発見した。
このWarp形状の悪化原因を調査するために、切断中のワークの状態を観察した。ワーク切断部へのスラリの供給は、ワイヤ列のワーク側方位置へ、ワイヤ列の上方からスラリを掛けながらワイヤを軸方向に高速で駆動することにより行われる。この際、ワイヤに付着してワーク切断部付近まで運ばれたスラリは、そのほとんどがワークへの切入り部でワークの側面に衝突して、ワーク下方へ落下していることが分かった。
特に半導体シリコンインゴットでは、ワークが円柱形状であるために、ワークの切断開始部からワーク中央部にかけて切断しているとき、上記のワーク側面に衝突したスラリはワイヤの切入り部から速やかに下方へ落下する。図12にワークの切断開始部から中央部を切断しているときのスラリの流れを示す。なお、図12において、向かって左側から右側へワイヤ102が走行しているときの例を示している。
しかしながら、ワークの切り込みがさらに進み、ワークの中央部以降を切断するときには、スラリは円柱形状のワークの側面にあたってワークの上方へ向かって飛散し、その後下方へ落下するようになり、ワイヤの下方にある切断されてウエーハ状になったワークの部分が、ワイヤ列と直行する方向に振動する(蛇腹運動)ことが分かった。
ここで、図13に、ワイヤにより切り込まれた箇所にスラリが流れ込んだときの状態を示す。これは、ワイヤ列に沿った方向からワーク側面を見た図である。ワイヤにより切り込まれた箇所に流れ込んだスラリは、切断熱等により移動中に水分が抜け、最初にワイヤに供給されたときよりも粘性が高くなっており、この高粘度のスラリが、特にワーク下端付近(切断開始部付近)(図13のP参照)に溜まって、ワークの既に切り込まれてウエーハ状となった箇所が互いにくっつき合い易くなる。一方で、ワーク中央部付近(図13のQ参照)では、上記のようにウエーハ状に切り込まれてスラリにより互いにくっついたワーク下端付近と、まだ切り込まれていないワーク上端付近を支点にして、切断中に、ワイヤ列と直行する方向に蛇腹運動する。また、この蛇腹運動はワークの端面側に近いほどその振幅も大きいことが分かった。
さらには、ワークの上方へ飛散したスラリが落下する様子について更に詳しく調査を行ったところ、ワーク上方へ飛散したスラリの一部は、ワーク上方でワークプレートを固定支持しているワーク保持部、すなわち、例えば図11ではクランパ116の側面へ衝突し、その後、クランパの側面に沿って流れ落ち、ワークの特定箇所へ滴下していることが分かった。
図14に、ワーク保持部であるクランパの側面へスラリが飛散する様子を示す。図14に示すように、ワークの中央部以降を切断するとき、スラリはワーク上方へと飛散し、一部がクランパ116の側面116sに達する。
ここで、たとえワークの特定箇所に飛散スラリが滴下しても、スラリが滴下したその箇所のワークがまだ切断前のブロック状の状態であれば、切断されるウエーハの品質に特に影響は及ぼさない。
しかしながら、図15に示すように、ワーク保持部であるクランパ116の側面116sからスラリが滴下した位置のワークが既に切断済みでウエーハ状となっている場合には、滴下してきたスラリがウエーハ間に入り易く、それによりウエーハに蛇腹運動が引き起こされ、この結果、切断されたウエーハのWarpが悪化することを本発明者は発見した。
ワークの切断後半位置で特にWarp形状が悪化するのは、切断後半部では、クランパの特に側面から、既に切断済みでウエーハ状となったワークの箇所に集中してスラリが滴下することにより引き起こされる、既に切断されたワークの蛇腹運動のためであり、ワークの両方の端面側で特にWarpが悪化するのは、ワークの蛇腹運動がワークの中心よりも両端面側でより大きくなっているためである。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑みてなされたもので、ワーク側面のワイヤ切入り部で飛散し、ワーク保持部の側面からの落下してくるスラリによって、切断されてウエーハ状になったワークの部分が蛇腹運動することを防ぎ、スライスされたウエーハのWarpを改善することができるワイヤソーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、複数の溝付きローラに巻掛けされ、軸方向に往復走行するワイヤと、該ワイヤにスラリを供給するノズルと、切断されるワークに接着されている当て板と該当て板を保持するワークプレートを介して、ワークを保持しつつ押し下げて前記ワイヤへ送るワーク送り装置を具備し、前記ノズルから前記ワイヤにスラリを供給しつつ、前記ワーク送り装置により保持されたワークを、往復走行するワイヤに押し当てて切り込み送りし、ワークをウエーハ状に切断するワイヤソーであって、
前記ワーク送り装置はワーク保持部を有し、該ワーク保持部により、前記当て板と前記ワークプレートを介してワークを保持するものであり、
前記ワーク保持部の下端面の最大幅が、前記溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークの幅よりも大きいものであることを特徴とするワイヤソーを提供する。
このようなワイヤソーであれば、当て板とワークプレートを介してワークを保持するワーク送り装置のワーク保持部では、その下端面の最大幅が、溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークの幅よりも大きいので、ワークの側面のワイヤの切入り部から飛散したスラリが、ワーク保持部の側面にまで飛散するのを防ぐことができる。また、たとえワーク保持部の側面に飛散したとしても、従来のように、ワーク保持部の側面に飛散したスラリが、該ワーク保持部の側面に沿って流れ落ち、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下することを防止できる。したがって、このスラリの既に切断されたワークへの滴下を起因とするワークの蛇腹運動の発生を抑制することができ、結果として、特に切断後半部において、ウエーハのWarp形状が悪化するのを効果的に防ぎ、Warpが良好なスライスウエーハを得ることが可能となる。
このとき、例えば、前記ワーク保持部は、前記ワークプレートを保持するクランパであり、前記ワーク保持部の下端面は、前記クランパの下面であるものとすることができる。
このようなものであれば、クランパの側面に、ワークの側面のワイヤの切入り部からスラリが飛散するのを防ぐことができ、スラリが、クランパの側面から、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下するのを防止できる。したがって、ワークの蛇腹運動を抑制し、Warp形状の悪化を抑制することが可能である。
または、前記ワーク保持部は、前記ワークプレートを保持するクランパと、前記ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に前記クランパに接して配設されたカバー状またはブロック状の部材を有するものであり、前記ワーク保持部の下端面は、前記クランパの下面と、前記カバー状またはブロック状の部材の下面が一体となって形成されたものとすることができる。
このように、前記ワーク保持部の下端面が、クランパの下面と、ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側にクランパに接して配設されたカバー状またはプロック状の部材の下面が一体となって形成されたものであるので、たとえクランパの下面の最大幅がワークの幅よりも小さくともスラリがクランパの側面に飛散することもなく、また、カバー状またはブロック状の部材の側面にまで飛散することを防止できる。そのため、これらの側面から、スラリがワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下してワークの蛇腹運動が引き起こされ、Warp形状が悪化するのを抑制できる。
あるいは、前記ワーク保持部は、前記ワークプレートを保持するクランパと、該クランパの下方、かつ、前記ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に配設されたプレート状の部材を有するものであり、前記ワーク保持部の下端面は、前記プレート状の部材の下面であるものとすることができる。
このように、前記ワーク保持部の下端面が、クランパの下方、かつ、ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に配設されたプレート状の部材の下面であるものであれば、クランパにスラリが飛散するのを防止でき、また、プレート状の部材の側面に飛散することも防止できる。したがって、これらの側面から、スラリがワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下してワークの蛇腹運動が引き起こされ、Warp形状が悪化するのを抑制できる。
そして、このとき、前記ワーク保持部の下端面は、水平なものとすることができる。
このように、ワーク保持部の下端面が水平なものであれば、ワークの特定箇所、特にはワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に集中的にスラリが滴下するのを防ぐことができる。
または、前記ワーク保持部の下端面は、前記溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークに対して外側または内側へ向かって低くなるテーパを有するものとすることができる。
ワーク保持部の下端面にまで飛散したスラリは、テーパを有するその下端面に沿って流れ、下端面の縁から滴下する。
このとき、ワーク保持部の下端面が、溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークに対して外側へ向かって低くなるテーパを有するものであれば、ワーク保持部の下端面の最大幅は切断されるワークの幅よりも大きいことから、スラリはワークよりもさらに外側に滴下することになり、ワーク保持部の下端面の縁からワーク上にスラリが滴下するのを防ぐことができる。
一方、切断されるワークに対して内側へ向かって低くなるテーパを有するものであれば、ワーク保持部の下端面に飛散するスラリをワークの外側に向かって反射させることができ、ワーク上にスラリが滴下するのを抑制することができる。また、ワーク保持部の下端面に付着したスラリは、下端面に沿ってワークに対して内側方向に流れ、下端面の内側の縁からワーク上にスラリが滴下しても、滴下する箇所は、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所ではなく、切断前のブロック状の箇所であるので、蛇腹運動を引き起こす原因にはなりにくく、切断されるウエーハのWarpに特に悪影響を与えることもない。
また、本発明は、ワイヤを複数の溝付きローラに巻掛けし、軸方向にワイヤを走行させつつ、該ワイヤにスラリを供給して、切断されるワークに接着されている当て板と該当て板を保持するワークプレートを介して、ワークを保持しつつ押し下げて往復走行するワイヤに押し当てて切り込み送りし、ワークをウエーハ状に切断するワークの切断方法であって、前記切断されるワークを、前記当て板とワークプレートを介してワーク保持部により保持して切断する際に、前記切断されるワークの幅と比較し、前記ワーク保持部の下端面の最大幅が、前記溝付きローラに巻掛けたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークの幅よりも大きくなるようにして切断することを特徴とするワークの切断方法を提供する。
このようなワークの切断方法であれば、切断されるワークを、当て板とワークプレートを介してワーク保持部により保持して切断する際に、切断されるワークの幅と比較し、ワーク保持部の下端面の最大幅が、溝付きローラに巻掛けたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークの幅よりも大きくなるようにして切断するので、ワークの側面のワイヤの切入り部から飛散したスラリが、ワーク保持部の側面にまで飛散するのを防ぐことができるし、たとえワーク保持部の側面に飛散したとしても、ワーク保持部の側面に沿って流れ落ち、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下することを防止できる。このため、ワークの蛇腹運動の発生を抑制でき、ウエーハのWarp形状の悪化を効果的に防止し、Warpが良好なスライスウエーハを得ることができる。また、切断されるワークの幅と比較することで、確実にワーク保持部の下端面の最大幅が切断されるワークの幅よりも大きくなるようにして切断することができる。
このとき、前記ワーク保持部を、前記ワークプレートを保持するクランパにより構成し、前記ワーク保持部の下端面を、前記クランパの下面とすることができる。
このようにすれば、クランパの側面に、ワークの側面のワイヤの切入り部からスラリが飛散するのを防ぐことができ、スラリが、クランパの側面から、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下するのを防止できる。これにより、ワークの蛇腹運動を抑制し、Warp形状の悪化を抑制することが可能である。
または、前記ワーク保持部を、少なくとも、前記ワークプレートを保持するクランパと、前記ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に前記クランパに接して配設したカバー状またはブロック状の部材により構成し、前記ワーク保持部の下端面を、前記クランパの下面と、前記カバー状またはブロック状の部材の下面が一体となって形成されたものとすることができる。
このようにすれば、たとえクランパの下面の最大幅がワークの幅よりも小さくともスラリがクランパの側面に飛散することもなく、また、カバー状またはブロック状の部材の側面にまで飛散することを防止できる。そのため、これらの側面から、スラリがワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下してワークの蛇腹運動が引き起こされ、Warp形状が悪化するのを抑制できる。
あるいは、前記ワーク保持部を、少なくとも、前記ワークプレートを保持するクランパと、該クランパの下方、かつ、前記ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に配設したプレート状の部材により構成し、前記ワーク保持部の下端面を、前記プレート状の部材の下面とすることができる。
このようにすれば、クランパにスラリが飛散するのを防止でき、また、プレート状の部材の側面に飛散することも防止でき、これらの側面から、スラリがワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下してワークの蛇腹運動が引き起こされ、Warp形状が悪化するのを抑制できる。
そして、このとき、前記ワーク保持部の下端面を、水平にすることができる。
このように、ワーク保持部の下端面を水平にすれば、ワークの特定箇所、特にはワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に集中的にスラリが滴下するのを防ぐことができる。
または、前記ワーク保持部の下端面を、前記溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークに対して外側または内側へ向かって低くなるテーパを有するものとすることができる。
このように、切断されるワークに対して外側へ向かって低くなるテーパを有するものとすれば、ワーク保持部の下端面の最大幅を切断されるワークの幅よりも大きくして切断するので、スラリはワークよりもさらに外側に滴下することになり、ワーク保持部の下端面の縁からワーク上にスラリが滴下するのを防ぐことができる。
逆に、切断されるワークに対して内側へ向かって低くなるテーパを有するものとすれば、ワーク保持部の下端面に飛散するスラリをワークの外側に向かって反射させることができ、ワーク上にスラリが滴下するのを抑制することができる。また、ワーク保持部の下端面に付着したスラリは、下端面に沿ってワークに対して内側方向に流れ、下端面の内側の縁からワーク上にスラリが滴下しても、滴下する箇所は、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所ではなく、切断前のブロック状の箇所であるので、蛇腹運動を引き起こす原因にはなりにくく、切断されるウエーハのWarpに特に悪影響を与えることもない。
そして、前記切断されるワークを、該ワークの幅が300mm以上のものとすることができる。
このように、切断されるワークを比較的大きなものとしても、ワーク保持部の側面にスラリが飛散することや、ワーク保持部の側面から、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所にスラリが滴下するのを防止でき、ワークの蛇腹運動の発生や、Warp形状の悪化を抑制することができる。
このとき、前記切断されるワークを切断し、全数においてWarpが9μm未満のウエーハ群を切り出すことができる。
このように、本発明のワークの切断方法であれば、全数においてWarpが9μm未満のウエーハ群を切り出すことができ、Warpが良好なスライスウエーハを得ることが可能である。
本発明のワイヤソーおよびワークの切断方法であれば、切断中にワークのワイヤの切入り部から飛散するスラリが、ワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に滴下することを防ぐことができ、その滴下したスラリによって引き起こされるワークの蛇腹運動を原因として、切断されるウエーハのWarp形状が悪化するのを防止し、Warpが良好なスライスウエーハを得ることができる。
本発明のワイヤソーの一例を示す概略図である。 本発明のワイヤソーにおけるワーク送り装置の一例を示す概略図である。 本発明におけるワーク保持部の一例を示す概略図である。 本発明におけるワーク保持部の別の例を示す概略図である。(A)カバー部材を備えた場合、(B)ブロック部材を備えた場合。 本発明におけるワーク保持部の別の一例を示す概略図である。 本発明におけるワーク保持部の別の一例を示す概略図である。 実施例1における切断されたウエーハ全数のWarpの測定結果を示すグラフである。 比較例1における切断されたウエーハ全数のWarpの測定結果を示すグラフである。 実施例1、比較例1におけるWarp断面形状の測定結果を示すグラフである。 従来のワイヤソーの一例を示す概略図である。 従来のワイヤソーにおけるワーク送り装置の一例を示す概略図である。 従来のワイヤソー装置を用いて、ワークの切断開始部から中央部を切断しているときのスラリの流れの様子を示す説明図である。 ワイヤにより切り込まれた箇所にスラリが流れ込んだ状態を示す説明図である。 ワーク保持部の側面へスラリが飛散する様子を示す説明図である。 ワーク保持部の側面から、ワークの既に切断済みでウエーハ状となっている箇所にスラリが滴下する様子を示す説明図である。
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明のワイヤソーの一例を示す概略図である。
図1に示す本発明のワイヤソー1は、切断されるワークを下方のワイヤへと送りだすワーク送り装置5以外の他の構成、例えばワークを切断するためのワイヤ2、ワイヤ2を巻掛けた溝付きローラ3、ワイヤ2に張力を付与するための機構4、切断時にスラリを供給する機構6(ノズル17を含む)等は特に限定されず、従来と同様のものとすることができる。
次に、図2に本発明のワイヤソーにおけるワーク送り装置の一例を示す。
このワーク送り装置5は、ワークを保持するためのワーク保持部11、ワークを下方へ送るためのLMガイド12およびワーク送り本体部13を備えており、コンピュータ制御でLMガイド12に沿ってワーク送り本体部13を駆動させることにより、予めプログラムされた送り速度で、ワーク保持部11により保持されたワークを送り出すことが可能である。
ワークは、従来と同様に、当て板14およびワークプレート15を介して、上記ワーク保持部11により保持される。
以下では、このワーク送り装置5のワーク保持部11について、より具体的に構成例を挙げて説明する。ただし、このワーク保持部11に関して、切断されるワークに面する下端面11uの最大幅が、溝付きローラに巻掛けされたワイヤ2のワイヤ列と平行な方向において、ワークの幅よりも大きければよく、本発明のワイヤソー1は以下の例に限定されるものではない。
(ワーク保持部がクランパである場合)
まず、ワーク保持部11の下面を構成するものが、ワークプレート15を保持することによってワークを保持するクランパだけである場合について、図3を参照して説明する。
この場合、図3に示すように、クランパ16Aとしては、その下面16Au(図2のワーク保持部11の下端面11uに相当する)の最大幅が、ワイヤ列と平行な方向においてワークの幅よりも大きいものを用意する。
このような幅広のクランパ16Aを有するワーク送り装置を備えたワイヤソーであれば、ワークの中央部以降を切断するとき、スラリがワークの側面にあたってワークの上方へ向かって飛散しても、クランパ16Aの側面16Asに飛散するのを防ぐことができる。図3に示すように、クランパ16Aの下面16Auの最大幅がワークの幅よりも大きいため、ワークの側面のワイヤ切入り部から、クランパ16Aの側面16Asにまでスラリが飛散することはない。
したがって、本発明では、当然、図14、15に示す従来のワーク保持部を備えたワイヤソーを用いたときのように、スラリがクランパ116の側面116sに飛散し、その側面116sに沿って流れ落ち、ワークの切断済のウエーハ状となった箇所に集中して滴下するようなこともない。また、本発明では、たとえクランパの側面にスラリが飛散したとしても、クランパの最大幅がワークよりも大きいので、ワークの切断された部分に集中してスラリが流れ落ちることはない。
このため、切断後半部(特に切断終了部付近)において、ワークの切断済のウエーハ状となった箇所へのスラリの滴下によって引き起こされるワークの蛇腹運動を従来に比べて十分に抑制することができ、切断されるウエーハのWarp形状が悪化するのを著しく抑えることが可能になる。
次に、ワーク保持部の別の例について説明する。なお、ここでは、下面の最大幅がワークの幅よりも小さいクランパを有する場合を例に挙げて述べるが、以下の例は、下面の最大幅がワークの幅よりも大きいクランパを有する場合であっても適用することが可能である。
(ワーク保持部が、クランパと、クランパに隣接するカバー状またはブロック状の部材を有する場合)
図4(A)に示すように、クランパ16Bの下面16Buの最大幅がワークの幅よりも小さい場合、例えば、クランパ16Bと接して、ワイヤ2がワークに切入る側と切出す側の両側にカバー状の部材20を配設する。このとき、カバー状部材20の下面20uを、クランパ16Bの下面16Buと同じ高さになるように配設することで、これらの下面20u、16Buが一体となっている。
すなわち、この場合、クランパ16Bとカバー状の部材20によってワーク保持部11が構成されており、これらの一体となった下面20uおよび16Buがワーク保持部11の下端面11uに相当する(図2参照)。
なお、このカバー状部材20は、それらの下面20uとクランパ16Bの下面16Buを合わせた幅が、ワークの幅よりも大きくなるようなサイズのものであれば良く、その都度決定することができる。
また、図4(B)に示すように、カバー状部材20の代わりにブロック状部材21が配設されたものとすることもできる。この場合、ブロック状部材21の下面21uを、クランパ16Bの下面16Buと同じ高さになるように配設することで、これらの下面21u、16Buが一体となる。
これらのように、クランパ16Bの両側に適切な大きさのカバー状部材20やブロック状部材21が配設されたものの場合、たとえクランパ16Bの下面16Buの最大幅がワークの幅よりも小さくとも、両側のカバー状部材20やブロック状部材21を組み合わせることで、全体として、ワークの幅よりも最大幅が大きい下端面11uが形成されたものとすることができる。
そして、図4(A)(または図4(B))から判るように、クランパ16Bとカバー状部材20(またはブロック状部材21)は接しているので、当然クランパ16Bの側面16Bsにスラリが飛散することはない。
また、カバー状部材20の下面20u(またはブロック状部材21の下面21u)とクランパ16Bの下面16Buが一体となって形成された面(ワーク保持部11の下端面11uに相当する)の最大幅はワークの幅よりも大きいので、カバー状部材20の側面20s(ブロック状部材21の側面21s)にまでスラリが飛散することも防止できる。このため、ワークの切断済の箇所に、このクランパの側面16Bsやカバー状部材の側面20s(ブロック状部材の側面21s)からスラリが滴下することを防ぎ、このスラリの滴下によって発生するワークの蛇腹運動、さらには切断されるウエーハのWarp形状を著しく抑制することが可能である。
(ワーク保持部が、クランパと、クランパ下方に位置するプレート状の部材を有する場合)
さらに他の例として、図5に示すように、クランパ16Bの下方、かつ、ワイヤ2がワークに切入る側と切出す側の両側に、プレート状の部材22が配設されたものとすることができる。
すなわち、この場合、クランパ16Bとプレート状部材22によってワーク保持部11が構成されており、プレート状の部材22の下面22uがワーク保持部11の下端面11uに相当する。なお、プレート状部材22の下面22uによる最大幅が、ワークの幅よりも大きいものであれば良く、その都度適切なものを用意することができる。
そして、これらのプレート状部材22の下面22uによる最大幅は、ワークの幅よりも大きくなっているため、プレート状部材22の側面22sやクランパ16Bにスラリが飛散することを防止でき、したがって該側面22s等からワークの切断済の箇所へスラリが滴下するのを防ぐことができる。これによって、ワークの蛇腹運動を抑制し、切断されるウエーハのWarp形状が悪化するのを著しく抑制することが可能である。
以上のように、ワーク保持部11の構成について例を挙げて述べてきたが、特に図4、5に示したような、カバー状部材20やブロック状部材21、またはプレート状部材22を構成に含む形態であれば、既存のワークの幅よりも小さいクランパを有するものでも、ワークの幅よりも大きい下端面11uを形成するように、適切な大きさの上記各部材をクランパ等に取り付けるだけで良いので簡便である。
また、ここで、ワーク保持部11の下端面11uの形状についてさらに詳しく述べる。
このワーク保持部11の下端面11uとしては、例えば図3、図4に示すように(図3ではクランパ16Aの下面16Au、図4では一体となったクランパ16Bの下面16Buとカバー状部材20の下面20uに相当する)、水平なものとすることができる。このとき、ワーク側面の切入り部から飛散したスラリが、ワーク保持部の下端面11uに達し、その後に滴下するとしても、ワークの特定箇所、特にはワークの既に切断されてウエーハ状になった箇所に集中的にスラリが滴下するのを防ぐことができる。
また、図5に示すように、ワーク保持部11の下端面11u(図5ではプレート状部材22の下面22uに相当する)が、ワイヤ2のワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークに対して外側へ向かって低くなるテーパを有する場合、スラリが下端面11uに沿って流れて縁から滴下しても、ワーク保持部11の下端面11uの最大幅は切断されるワークの幅よりも大きいので、スラリはワークよりもさらに外側を通って滴下することになり、ワーク上にスラリが滴下するのを防ぐことができる。
これに対し、図6に示すように、ワーク保持部11の下端面11u(図6では、プレート状部材22’の下面22’uに相当する)が、ワイヤ2のワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークに対して内側へ向かって低くなるテーパを有する場合、飛散するスラリをワークの外側に向かって反射することができるし、また、ワーク保持部の下端面に付着したスラリが、下端面に沿ってワークに対して内側方向に流れ、下端面の縁からワーク上にスラリが滴下しても、ワークの切断前のブロック状の箇所に滴下するので、蛇腹運動を発生させる原因にはなりにくく、切断されるウエーハのWarpに特に悪影響を与えることはない。
なお、この場合のワーク保持部11の下端面11uのテーパ角は特に限定されず、例えば、使用するスラリの種類や切断されるワークとの距離等に応じて適宜決定することができる。
次に、本発明のワークの切断方法について述べる。
本発明のワークの切断方法では、一旦、切断されるワークの幅と比較して、確実に、ワーク保持部の下端面の最大幅が、ワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークの幅よりも大きくなるようにしてワークの切断を行う。これ以外は、例えば、従来と同様の手順でワークを切断することができる。
このとき、より具体的には、一例として、図3の本発明のワイヤソーのように、ワーク保持部を、下面16Auの最大幅が、ワイヤ列と平行な方向においてワークの幅よりも大きいクランパ16Aで構成してワークを切断することができる。
また、図4(A)、図4(B)の本発明のワイヤソーのように、ワーク保持部を、クランパ16Bの他、カバー状部材20やブロック状部材21をさらに用いて構成することができる。
あるいは、図5、図6のような本発明のワイヤソーのように、ワーク保持部を、クランパ16Bの下方に、プレート状部材22、22’をさらに配設することにより構成することができる。
いずれの場合も、ワーク保持部の下端面の最大幅が切断されるワークの幅よりも大きな状態で切断する。
なお、カバー状部材20等は、切断されるワークをクランパにより保持した後で配設しても良いし、クランパに保持する前に予め配設しても良い。ワークの切断時にワーク保持部の下端面の最大幅が切断されるワークの幅よりも大きくなっていれば良い。
また、ワーク保持部の下端面を、例えば、図3、図4(A)、図4(B)のように水平なものとすることができるし、図5、図6のようにワイヤ列と平行な方向において、切断されるワークに対して外側または内側へ向かって低くなるテーパを有するものとすることができる。このようなワーク保持部の下端面の角度については、その都度、他の条件等に応じて適宜決めれば良い。
また、切断されるワークの大きさは特に限定されないが、特にはワークの幅が300mm以上のものとすることができる。このような比較的大きなものであっても、本発明であれば、確実に、飛散したスラリがワーク保持部の側面に沿って流れ落ちてワークの切断済みの箇所に滴下するのを防止でき、その結果、Warpが良好なスライスウエーハを得ることができる。
特には、Warpが9μm未満のスライスウエーハ群を得ることができる。たとえWarpが悪化しやすいワークの端面側から切り出されたスライスウエーハであっても、Warpを比較的小さな値に抑制することができ、例えば9μm未満という良好な値でウエーハ全数を切りだすことが可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
図5に示すような、クランパの下方に、外側へ向かって低くなるテーパを有するプレート状部材を備えた本発明のワイヤソー装置を用い、直径300mm、軸方向長さ180mmのシリコンインゴットをウエーハ状に切断し、165枚のスライスウエーハを得る。
なお、幅(直径)が300mmの上記シリコンインゴットに対して、ワーク保持部の構成として、幅が260mmのクランパ16Bと、幅が388mmでシリコンインゴットの幅よりも大きい一組のプレート状部材22からなるものを用意した。
そして、直径160μmのワイヤを使用し、2.5kgfの張力をかけて、500m/minの平均速度で60s/cのサイクルでワイヤを往復方向に走行させるとともに、ノズルからワイヤに向かってスラリを供給し、ワーク送り装置によってシリコンインゴットをワイヤ列に押し当てて切断を行い、スライスウエーハを得た。
このようにして、本発明のワークの切断方法を実施した。
そして、切断中にスラリの流れについて観察を行った。
切断開始時からシリコンインゴットの中央部切断時までは、ワイヤの切入り部からシリコンインゴットの下方へ落下した。
一方、中央部以降を切断しているときは、スラリはワイヤの切入り部からシリコンインゴットの上方へ飛散した。このとき、プレート状部材の下面22uまで飛散したスラリは、その大部分が、下面22uに沿って流れ落ち、下面22uの外側の縁から滴下していた。そして、縁から滴下したスラリは、切断中のシリコンインゴット上にかかることなくさらに下方へと落下した。
また、下方にプレート状部材22が配設されているため、クランパ16Bにまでスラリは飛散せず、当然、従来のようにクランパ16Bの側面からスラリが滴下することはなかった。
また、シリコンインゴットについて観察を行ったところ、シリコンインゴットの中央部以降を切断中、既に切断済みでウエーハ状になった箇所において、後述する比較例1に比べて、蛇腹運動の発生は著しく抑制されていた。
ここで、図7に、切断されたウエーハ全数のWarpの測定結果を示す。Warpの平均値は4.67μmであり、従来のワイヤソーを用いた場合(比較例1:7.72μm)に比べて6割程度に抑えられていることが判る。本発明のワイヤソーによって、従来に比べて、スライスウエーハのWarpの大きさを抑制でき、優れた品質のものを得ることが判る。
(比較例1)
図11のようなワーク送り装置を有する従来のワイヤソーを用いる以外は実施例と同様にしてシリコンインゴットをウエーハ状に切断した。
ここで用いたワイヤソーは、ワーク保持部がクランパのみからなるものであり、その幅は260mmで、シリコンインゴットの幅よりも小さかった。
本発明者が切断中にスラリの流れについて観察を行ったところ、実施例1とは異なり、シリコンインゴットの中央部以降を切断中、幅がシリコンインゴットよりも小さいクランパの側面にまでスラリが飛散し始め、飛散したスラリはその後にクランパの側面に沿って流れ落ちていた。そして切断がさらに進むと、クランパの側面からのスラリは既に切断済でウエーハ状になった箇所に滴下していた。
また、シリコンインゴットについて観察すると、シリコンインゴットのウエーハ状に切断された箇所において、蛇腹運動が頻繁に発生していた。
ここで、図8に、切断されたウエーハ全数のWarpの測定結果を示す。Warpの平均値は7.72μmであり大きな値となった。
実施例1と比較例1のそれぞれにおいてシリコンインゴットをウエーハ状に切断し、各々、切断されたウエーハのうち、新線供給側から1枚目のウエーハを抜き出して、Warp形状を測定した。測定結果を図9に示す。
図9に示すように、本発明のワイヤソーを用いて切断を行った実施例1と、従来のワイヤソーを用いて切断を行った比較例1では、特に、切断終了部付近(切り込み位置が270mmから300mm)において、Warp形状に大きな差が見られる。
比較例1では、クランパの側面にまで飛散したスラリが、そこからシリコンインゴットの特定箇所(ウエーハ状に切断されている箇所)に集中して滴下しており、それによって、蛇腹運動が引き起こされやすく、Warp形状が悪化したと考えられる。
一方、実施例1では、クランパの下方に配設されたプレート状部材22の下面にスラリが飛散するものの、その飛散スラリの大部分は、インゴットよりも幅広のプレート状部材の下面の縁から滴下し、シリコンインゴットのウエーハ状に切断された箇所にかかることもなく、蛇腹運動が発生するのを抑制することができた。そして、これによってWarp形状が悪化するのを格段に抑えることができた。
(実施例2)
図3に示すような本発明のワイヤソー装置を用い、直径300mm、軸方向長さ180mmのシリコンインゴットをウエーハ状に切断し、165枚のスライスウエーハを得る。
なお、幅(直径)が300mmの上記シリコンインゴットに対して、ワーク保持部の構成として、幅が360mmのクランパ16Aからなるものを用意した。
他の切断条件は実施例1と同様とした。
このようにして、本発明のワークの切断方法を実施した。
切断されるシリコンインゴットよりも幅広のクランパを用いたため、シリコンインゴットのワイヤの切入り部から飛散したスラリはクランパの側面に達することはなく、従来のようにクランパの側面をつたってスラリが滴下することはなかった。
蛇腹運動の発生も抑制されており、切断したウエーハのWarpの値も実施例1と同様に小さく、優れた品質のスライスウエーハを得ることができた。
(実施例3)
図4(A)に示すような本発明のワイヤソー装置を用い、直径300mm、軸方向長さ180mmのシリコンインゴットをウエーハ状に切断し、165枚のスライスウエーハを得る。
なお、幅が300mmの上記シリコンインゴットに対して、ワーク保持部の構成として、幅が260mmのクランパ16Bと、幅がそれぞれ100mmの2つのカバー部材20からなるものを用意した。クランパ16Bの下面16Buとカバー部材20の下面20uの高さ方向の位置を一致させ、クランパ16Bの両側にカバー部材20を各々接して配設した。このようにして一体となって形成された面の幅は460mmであった。
このようにして、本発明のワークの切断方法を実施した。
切断されるシリコンインゴットに面する、上記の一体となって形成された面は、シリコンインゴットよりも幅広であるため、シリコンインゴットのワイヤの切入り部から飛散したスラリは両側のカバー部材20の側面20sに達することはなく、該側面をつたってスラリが滴下することはなかった。
蛇腹運動の発生も抑制されており、切断したウエーハのWarpの値も実施例1と同様に小さく、優れた品質のスライスウエーハを得ることができた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
たとえば、実施例ではワークの幅が300mmのものを用いたが、本発明はこれに限定されず、300mmよりも大、たとえば400mm以上のものに適用することもできる。本発明であれば、このような幅がさらに大きなワークであっても、Warpが良好(例えば9μm未満)なスライスウエーハ群を得ることが可能である。

Claims (4)

  1. 少なくとも、複数の溝付きローラに巻掛けされ、軸方向に往復走行するワイヤと、該ワイヤにスラリを供給するノズルと、切断されるワークに接着されている当て板と該当て板を保持するワークプレートを介して、ワークを保持しつつ押し下げて前記ワイヤへ送るワーク送り装置を具備し、前記ノズルから前記ワイヤにスラリを供給しつつ、前記ワーク送り装置により保持されたワークを、往復走行するワイヤに押し当てて切り込み送りし、ワークをウエーハ状に切断するワイヤソーであって、
    前記ワーク送り装置は前記ワークプレートを保持するクランパと、該クランパの下方、かつ、前記ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に配設されたプレート状の部材を有し、該クランパにより、前記当て板と前記ワークプレートを介してワークを保持するものであり、
    前記プレート状の部材の下面は、前記溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークに対して外側へ向かって低くなるテーパを有するものであり、かつ、
    前記プレート状の部材の下面の最大幅が、前記溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークの幅よりも大きいものであることを特徴とするワイヤソー。
  2. ワイヤを複数の溝付きローラに巻掛けし、軸方向にワイヤを走行させつつ、該ワイヤにスラリを供給して、切断されるワークに接着されている当て板と該当て板を保持するワークプレートを介して、ワークを保持しつつ押し下げて往復走行するワイヤに押し当てて切り込み送りし、ワークをウエーハ状に切断するワークの切断方法であって、
    前記切断されるワークを、前記ワークプレートを保持するクランパにより、前記当て板とワークプレートを介して保持して切断する際に、
    前記クランパの下方、かつ、前記ワイヤがワークに切入る側と切出す側の両側に配設したプレート状の部材の下面を、前記溝付きローラに巻掛けされたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークに対して外側へ向かって低くなるテーパを有するものとし、かつ、
    前記切断されるワークの幅と比較し、前記プレート状の部材の下面の最大幅が、前記溝付きローラに巻掛けたワイヤのワイヤ列と平行な方向において、前記切断されるワークの幅よりも大きくなるようにして切断することを特徴とするワークの切断方法。
  3. 前記切断されるワークを、該ワークの幅が300mm以上のものとすることを特徴とする請求項2に記載のワークの切断方法。
  4. 前記切断されるワークを切断し、全数においてWarpが9μm未満のウエーハ群を切り出すことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のワークの切断方法。
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