JP2012176094A - 画像処理装置、画像処理方法、画像処理システム、slo装置、およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】 層形状異常の見られる眼に対して固定フォーカスでAO−SLO像を取得すると、部位によって観察対象もしくは解析対象の組織がぼやけて観察しにくくなったり、解析できない場合があった。
【解決手段】 SLO画像取得部110は予めSLO装置により撮影され記憶装置に記憶されたフォーカス位置の異なるSLO画像群を取得する。構造取得部120は、撮影対象である眼底の構造特徴を取得する。対象画像取得部140は特定の構造に応じてSLO画像群から特定の構造の画像を得る。表示制御部160は、対象画像取得部140で得られた特定の構造の画像を表示部に表示させる制御を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は撮影されたSLO画像から所定の画像を取得する画像処理装置、画像処理方法、および当該画像処理を実行するSLO装置に関する。
共焦点レーザー顕微鏡の原理を利用した走査型レーザー検眼鏡(SLO:Scanning Laser OphthalmoScope)は、測定光であるレーザーを眼底に対してラスター走査し、その戻り光の強度から平面画像を高分解能かつ高速に得る装置(以下SLO装置)である。また、被検眼の収差を波面センサでリアルタイムに測定し、被検眼にて発生する測定光やその戻り光の収差を波面補正デバイスで補正する補償光学系(AO:Adaptive Optics)を有するAO−SLO装置が開発され、高横分解能な平面画像の取得を可能にしている。
このような高横分解能な平面画像は、例えば血球動態の観察のための網膜血管や血球の抽出や、神経節細胞の障害を評価するための神経線維束の太さの計測や、視機能の評価や、視細胞の密度分布や配列の計測などに用いられてきた。
これらの組織や細胞、病変等の構造の画像をSLO装置により得る技術として被特許文献1には、SLO装置で信号光の波長などの撮影条件を設定して黄斑部周辺を撮影し、得られた画像に基づいて毛細血管の画像を取得する技術が開示されている。
Johnny Tam, et. al., Noninvasive Visualization and analysis of Parafoveal Capillaries in Humans, Investigative Ophthalmology & Visual Science, March 2010, Vol.51, No.3, pp1691−1698.
フォーカス位置が固定された信号光で対象を走査し得られる1枚のSLO画像には観察対象の構造が写りきらない場合があり、かかる画像からでは目的の構造を観察することができず再設定や再撮影を要する。
本発明はかかる観点からなされたものであり、信号光の光軸方向にフォーカス位置の異なる信号光のそれぞれによりSLO装置が撮影対象を走査して得られる複数のSLO画像を取得するSLO画像取得手段と、前記撮影対象の特定の構造を取得する構造取得手段と、前記特定の構造に応じて前記フォーカス位置の異なる複数のSLO画像のそれぞれから前記特定の構造の画像を取得する対象画像取得手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、異なるフォーカス位置で撮像したSLO画像群から特定の構造にフォーカスが合ったSLO画像を得ることができ、当該特定の構造を容易に観察することができる。
本発明の第1の実施例に係る画像処理装置10の機能構成例を示す図である。 画像処理装置10を含む撮影システム1の構成例を示すブロック図である。 画像処理装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。 画像処理装置10が実行する処理を示すフローチャートである。 実施例1の処理により得られる画像を示す図である。(a)は正常な眼部を撮影したOCT断層画像であり、(b)は構造に異常がある場合の眼部のOCT断層画像であり、(c)はSLO画像群であり、(d)はSLO画像群から生成された特定の構造の画像である。 選択部142によるステップS440の画像選択処理を示すフローチャートである。 パラメータ設定部1421によるステップS620のパラメータ設定処理を示すフローチャートである。 画像生成部143によるステップS450の画像選択処理を示すフローチャートである。 画像処理装置90の構成例を示す図である。 複合装置200のハードウェア構成を示す図である。 複合装置200によるOCT断層画像の取得方法を説明する図である。(a)は被検眼の網膜に入射する信号光を示す図であり、(b)は信号光の走査手段を示す図であり、(c)は取得された断層画像を示す図である。 画像処理装置90が実行する処理を示すフローチャートである。 実施例2の処理により得られる画像を示す図である。(a)は正常な眼部を撮影したOCT断層画像であり、(b)はSLO画像群であり、(c)はSLO画像群から生成された特定の構造の画像である。 実施例3の処理により得られる画像を示す図である。(a)は正常構造を撮影したOCT断層画像であり、(b)はSLO画像群であり、(c)はSLO画像群から生成された特定の構造の静止画像であり、(d)はSLO画像群から生成された動画像である。
以下、添付図面に従い本発明の実施形態を各実施例に分けて説明する。
実施例1に係る画像処理装置は、フォーカス位置を変えて撮影され、記憶装置に記憶されたSLO画像群を用いて、特定の構造に沿ったSLO画像を生成または選択する。対象とする症例は広義の加齢黄斑変性(AMD(Aged Macular Degeneration)やPCV(Polypoidal Choroidal sculopathy))である。観察対象は視細胞とする。
視細胞が分布している範囲(視細胞層)は、外境界膜(ELM、視細胞内節外節接合部(IS/OS)よりわずかに前眼部側(内層側))から網膜色素上皮(RPE)の前眼部側境界までの範囲である。IS/OSは視細胞層のほぼ真ん中(内節と外節の境界)にあたるため、IS/OSに沿った画像を得ることで、視細胞の画像を得ることができる。
図1を用いて本実施例に係る画像処理装置10の機能構成を説明する。図1は画像処理装置10の機能構成を示すブロック図であり、画像処理装置10はSLO画像取得部110、構造取得部120、記憶部130、対象画像取得部140、指示取得部150を有する。
SLO画像取得部110は予めSLO装置により撮影され記憶装置に記憶されたフォーカス位置の異なるSLO画像群を取得する。
ここでフォーカス位置が異なるとは、深さ方向すなわちSLO装置の信号光の光軸方向にフォーカス位置が異なることをいう。なお、撮影対象が眼部である場合固視微動があるため、厳密にはフォーカス位置が同一に設定されていても各画像のフォーカス位置は異なることとなる。本実施例では、フォーカス位置が異なるとはSLO装置によるフォーカス位置の設定が異なることをいい、固視微動による影響を考慮しないものとする。
フォーカス位置の異なる信号光のそれぞれにより撮影対象である眼底を走査して、フォーカス位置が異なる複数のSLO画像が得られる。SLO像撮像装置30またはSLO装置は走査型レーザ検眼鏡を指し、主に眼部で発生する信号光による像の収差を補正するための補償光学系(Adaptive Optics)を有する。眼底とは前眼部に対応する概念であり網膜内部および網膜表面を含む領域を指す。撮影対象は眼底の黄斑部周辺の領域である。補償光学系を用いたSLOは、従来型のフーリエドメインOCTや眼底カメラが撮影対象としている血管よりも微小な黄斑周辺部の毛細血管や、神経線維、視細胞などの画像を得ることができる。
構造取得部120は、撮影対象である眼底の構造特徴として観察対象の画像化に必要な特定の構造の位置や3次元形状等を取得する。本実施例では視細胞が観察対象であるため、視細胞の中でも特に視細胞内節外節接合部(IS/OS)(特定の構造)の位置を特定する。この視細胞内節外節接合部(IS/OS)の位置を用いて視細胞を画像化する。ここで構造特徴とは組織の層構造や病変等である。これら構造特徴の特定は、眼底をOCT撮影装置で撮影した断層画像群を解析することで行われる。なおOCT断層画像を解析は画像処理装置10で行わずとも、予め特定された構造の位置や形状等の情報をデータサーバ50から取得することとしてもよい。
記憶部130は既定のまたは入力された画像処理の各種パラメータ等を格納する。
対象画像取得部140は特定の構造に応じてSLO画像群から特定の構造の画像を得る。対象画像取得部140は位置合わせ部141、選択部142、画像生成部143を備え、選択部142はパラメータ設定部1421、部分画像候補選択部1422、積算部1423、部分画像適合度判定部1424を有する。さらに、画像生成部143は連結部1431、SLO画像適合度判定部1432、補正部1433を有する。視細胞層の形状の正常構造からの変化が小さい場合には、SLO画像群から最も視細胞(境界)層にフォーカスの合った1つのSLO画像を選択する。信号光の光軸方向にフォーカス位置の異なる複数のSLO画像から視細胞を観察しやすい画像を得ることができる。一方で視細胞層の形状が湾曲または屈曲し正常な状態から大きく変化している場合には、フォーカス位置を固定した信号光で撮影した1枚のSLO画像には目的の構造が写らない場合があり、目的の構造を観察することができない。そこでSLO画像から眼底上の各位置において視細胞層境界の近傍にフォーカス位置が設定された部分画像を選択し互いに連結することで、部分画像を貼り合わせた新たなSLO画像を生成する。これにより視細胞層の形状が大きく変形し1枚のSLO画像には構造の一部しか写っていない場合でも、撮像範囲内の視細胞を観察もしくは解析しやすくなる。
また、フォーカス位置を複数の位置で固定して、各フォーカス位置に対応するSLO画像を得ることで、フォーカス位置を特定の構造に沿って変えながらSLO画像を得る場合に比べて、フォーカス位置の変更に伴う走査時間の長期化を抑えることができる。よって固視微動の影響を減らし画像の画質劣化を減らすことができる。
表示制御部160は、対象画像取得部140で得られた特定の構造の画像を表示部に表示させる制御を行う。表示部170は特定の構造の画像を表示する。入力部180はユーザの入力を受け付け画像処理装置10に入力する。
上述の画像処理装置を含む撮影システム1を図2に基づいて説明する。図2は本実施例に係る画像処理装置10を含む撮影診断システムの構成図である。図2に示すように画像処理装置10は、断層像撮像装置20やSLO像撮像装置30、データサーバ50と、光ファイバ、USBやIEEE1394等で構成されるローカル・エリア・ネットワーク(LAN)40を介して接続されている。なおLANによらずシステムの各装置がインターネット等の外部ネットワークを介して接続される構成であってもよい。
断層像撮像装置20は眼底部のボリューム画像を撮像する装置であり、例えばタイムドメイン方式もしくはフーリエドメイン方式の光干渉断層撮像装置(OCT装置)からなる。断層像撮像装置20は不図示の操作者による操作に応じ、被検眼の断層像を3次元的に撮像する。得られたボリューム画像は画像処理装置10、データサーバ50へ送信される。
SLO像撮像装置30は眼底部の平面画像(SLO画像)を撮像する装置であり、フォーカス位置が異なる複数のSLO画像を撮像し、撮像した複数のSLO画像を画像処理装置10、データサーバ50へ送信する。
データサーバ50は被検眼のボリューム画像やSLO画像、後述する眼底部の特徴(以下、眼部特徴)などを保持するサーバである。データサーバ50は断層像撮像装置20が出力する被検眼のボリューム画像やSLO像撮像装置30が出力する複数のSLO像や画像処理装置10が出力する眼部特徴を保存する。また画像処理装置10からの要求に応じて被検眼に関するデータ(ボリューム画像、SLO画像、眼部特徴)や眼部特徴の正常値データを画像処理装置10に送信する。ここで特徴や構造が正常とは、疾患等に罹っていない眼部の構造をいう。網膜の層構造は正常な場合には平坦な複数の層からなるが、正常でない場合には一部の層が盛り上がるなど層構造が乱れることが多い。
上述の機能構成を有する画像処理装置10のハードウェア構成について図3に基づいて説明する。図3において、画像処理装置10は中央演算処理装置(CPU)301、メモリ(RAM)302、制御メモリ(ROM)303、記憶装置304、インターフェース305を有する。画像処理装置10にはモニタ306、キーボード307、マウス308が接続されている。
本実施例に係る画像処理機能を実現するための制御プログラムや、当該制御プログラムが実行される際に用いられるデータは、記憶装置304に記憶されている。これらの制御プログラムやデータは、CPU301による制御のもとバス309を通じて適宜RAM302に取り込まれる。これがCPU301によって実行されることで、上述のハードウェアと協働して上述の各機能が実現される。例えば記憶装置304は図1の記憶部130として、キーボード307またはマウス308は入力部180として、モニタ306は表示部170として機能する。また、下記の画像処理装置10による処理が実現される。
では上述の構成を有する画像処理装置10が実行する処理を図4のフローチャートに従い説明する。
<ステップS410>
ステップS410で構造取得部120は、ボリューム画像から眼部の特徴構造データを取得する。本実施例では撮影対象は眼底であり、特に注目する観察対象は指示取得部150により視細胞内節外節境界と指定されている。
撮影対象である眼底の基本的な構造特徴として内境界膜B1、神経線維層境界B2、内網状層境界B4、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の外側境界B6、網膜血管領域Vの眼部ボリューム画像における位置または形状を取得する。観察対象の視細胞は視細胞内節外節境界B5から得られる。また黄斑部の位置を特定する。なお予め黄斑部付近のボリューム画像を取得することとしてもよい。
さらに構造取得部120は取得した各々の眼部特徴データを記憶部130に格納し、必要に応じてデータサーバ50へ送信する。これら特徴データは後述の視細胞画像を得るためなどに用いられる。
具体的な眼部特徴の取得手順を説明する。まず層の境界検出を行うための画像処理方法について説明する。ここでは処理対象であるボリューム画像を2次元断層画像(Bスキャン像)の集合と考え、各2次元断層画像に対して以下の処理を行う。
まず着目する2次元断層画像に平滑化処理を行い、ノイズ成分を除去する。次に2次元断層画像からエッジ成分を検出し、その連結性に基づいて何本かの線分を層境界の候補として抽出する。そして該候補から一番上の線分を内境界膜B1、上から二番目の線分を神経線維層境界B2、上から三番目の線分を内網状層境界B4として選択する。また、内境界膜B1よりも外層側(図5(a)において、z座標が大きい側)にあるコントラストが最大の線分を視細胞内節外節境界B5として選択する。視細胞層内節外節境界B5よりも外層側にある線分を外網状層境界とする。さらに、該層境界候補群のうち一番下の線分を網膜色素上皮層境界B6として選択する。
さらに、これらの線分を初期値としてSnakesやレベルセット法等の可変形状モデルを適用し、精密抽出を行ってもよい。またグラフカット法により層の境界を検出してもよい。なお可変形状モデルやグラフカットを用いた境界検出はボリューム画像に対し3次元的に実行してもよいし、各々の2次元断層画像に対し2次元的に適用してもよい。なお層の境界を検出する方法は、眼部の断層像から層の境界を検出可能な方法であればいずれの方法を用いてもよい。
次に、網膜内層(非図示)から網膜血管Vを検出する。具体的には、網膜内層に限定して深度方向に画素値を積算することで投影像を生成し、生成した投影像から任意の公知の線強調フィルタを用いることで、網膜血管Vを検出する。血管の情報はOCT断層画像とSLO画像との位置合わせに用いられる。
<ステップS420>
ステップS420でSLO画像取得部110はデータサーバ50に対して所定の被検眼のSLO画像群を要求する。この画像群はSLO像撮像装置30が信号光の光軸方向に異なるフォーカス位置を有する信号光でそれぞれ撮影されたSLO画像群である。信号光による走査面積は同一または重複しているが、撮像面が深さ方向に異なっている。データサーバ50にはかかるフォーカス位置の異なる複数のSLO画像が被検眼ごとに記憶されている。SLO画像取得部110はLAN40を介して当該SLO画像群を取得する。本実施例では図5(b)に示すように撮像中心におけるフォーカス位置を視細胞内節外節境界から20μm間隔で変化させて撮像したSLO画像群(計10枚)を取得する。SLO画像取得部110は取得したSLO画像群を画像処理装置10の記憶部130に格納する。
<ステップS430>
ステップS430で位置合わせ部141は、SLO画像群の座標系と、眼部特徴データとを位置合わせする。各々の座標系において網膜血管Vの位置(x,y)が既に求められているので、これらの点が同一の位置となるように合成位置合わせの並進(x,y)および回転、拡大率のパラメータを求める。位置合わせ手法としては任意の周知の位置合わせ手法を用いてよく、ここではアフィン変換を用いて位置合わせを行う。取得されたSLO画像において血管の位置は特定されているものとする。
<ステップS440>
ステップS440で選択部142は、フォーカス位置の異なる複数のSLO画像から観察対象である視細胞の分布に沿った画像を得る。視細胞内節外節境界の構造が変形している場合には、眼部特徴(層境界及び網膜血管領域V)の分布に基づき、SLO画像の各位置(x,y)において観察対象に適合した部分画像を選択する。本実施例において部分画像は1画素とする。ここで、観察対象に適合する、とは、少なくともフォーカスが合っていることを指し、例えば特定の構造の各位置(x0,y0,z0)からのz方向の距離が少なくとも所定未満であることを意味する。
観察対象に適合する部分画像が複数ある場合には、積算部1423にて部分画像を積算することにより部分画像を取得する。なお、部分画像単体としての適合度を判定する場合には部分画像候補上の画像特徴(眼部特徴の分布、SN比、コントラストなどの輝度分布)を適合度指標として用い、部分画像を選択する。このように部分画像の選択にはフォーカスの位置と画像特徴とに応じて行うことにより、フォーカス位置は近いが固視微動等の影響で画質が悪い画像を選択してしまうことを防ぎ、結果として画質のよい部分画像を得ることができる。
本ステップの処理により、各座標位置(x,y)においていずれかのSLO画像から選択された部分画像が得られる。この処理の詳細については図6のフローチャートを用いて後述する。
<ステップS450>
ステップS450で画像生成部143は、ステップS440にて選択された各x−yにおける部分画像(候補)を連結して新たなSLO画像候補を生成する。ここで、各x−yにおいて部分画像候補が複数ある場合はある部分画像の組み合わせでSLO画像候補を生成し、SLO画像全体としての適合度を判定して最も適合度の高いSLO画像候補を新たなSLO画像として生成する。なお、部分画像が選ばれず選択部142によりSLO画像群から1つのSLO画像が選ばれた場合には、部分画像の連結は行わない。かかる処理の詳細は図7のフローチャートを用いて後述する。
<ステップS460>
ステップS460で指示取得部150は、新たに生成された視細胞の画像をデータサーバ50へ保存するか否かの指示を外部から取得する。この指示は例えばキーボード307やマウス308を介して操作者により入力される。保存が指示された場合はS470へ、保存が指示されなかった場合はS480へと処理を進める。
<ステップS470>
ステップS470で対象画像取得部140は、検査日時、被検眼を同定する情報、新たに生成されたSLO画像を関連付けてデータサーバ50へ送信する。また、表示制御部160は対象画像取得部140により取得された画像を表示部170に表示させる。
<ステップS480>
ステップS480で指示取得部150は画像処理装置10によるSLO画像の生成処理を終了するか否かの指示を外部から取得する。この指示は入力部180を介して操作者により入力される。処理終了の指示を取得した場合は解析処理を終了する。一方、処理継続の指示を取得した場合にはS410に処理を戻し、次の被検眼に対する処理または同一被検眼に対する再処理を行う。
上述の処理により得られる画像を図5を用いて説明する。図5(a)および(b)は断層像撮像装置20により得られた眼底網膜の中心窩C1(黄斑)付近のOCT断層画像である。x方向およびy方向は眼底に沿う方向であり、z方向は眼底の深さ方向で信号光の光軸と略平行な方向である。構造取得部120により内境界膜B1、神経線維層境界B2、内網状層境界B4、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の外側境界B6の位置が特定される。またSLO画像群の撮像位置がF1乃至F10で示されている。図5(a)は黄斑付近が比較的正常な場合の画像であり、図5(b)は黄斑に異常があり視細胞内節外節境界が大きく湾曲している場合の画像である。図5(a)のように湾曲や屈曲がない場合には、選択部142は視細胞内節外節境界B5に近い位置で撮影されたSLO画像(例えばF6)をフォーカス位置の異なるSLO画像群から選択する。
一方で図5(b)のように変形(屈曲または湾曲など)が大きい場合には、選択部142はフォーカス位置の異なるSLO画像群から視細胞内節外節境界B5の写った部分画像を取り出す。図5(c)はこれらF1乃至F10のSLO画像を示しており、図5(c)の左側にあるSLO画像ほどフォーカス位置が表層側にある。これらSLO画像において視細胞内節外節境界にフォーカスが合っている部分領域がS1乃至S10が選択部142により選択される。これら部分領域が画像生成部143により貼り合わせられ、図5(d)のような視細胞の画像が得られる。かかる画像からは毛細血管の走行も確認できる。
次に図6のフローチャートに従い、選択部142が実行するステップS440の処理の詳細を説明する。
<ステップS610>
ステップS610で選択部142は、S410で取得された眼部特徴(内境界膜B1、神経線維層境界B2、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の内側境界B6、網膜血管領域V)を取得する。
<ステップS620>
ステップS620でパラメータ設定部1421は、S410で取得された眼部特徴の分布に基づき各種パラメータの設定を行う。パラメータは以下の5つである。
(i)部分画像を貼り合わせるか、SLO画像をそのまま用いるか
(ii)フォーカスが合っていると判定する範囲
(iii)選択する部分画像候補の枚数
(iv)部分画像候補が複数の場合は、重ね合わせ実施の可否
(v)部分画像ごとに適合度を判定するか否か
これらの設定処理を図7のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS710でパラメータ設定部1421は部分画像の貼り合わせを行うか否かを決める(i)のパラメータを設定する。(i)のパラメータは、観察対象の正常構造からの変形度合いに応じて設定される。本実施例では図5(b)に示すように観察対象(視細胞内節外節境界)の変形が大きいと判定した場合には撮像範囲の各位置(x,y)においてフォーカス位置の異なる部分画像を選択することとする。一方、例えば図5(a)に示すように健常眼の場合には観察対象(視細胞内節外節境界)の変形が小さいと判定して一定のフォーカス位置の部分画像を選択することとする。
なお、層形状の屈曲の程度の判定は、層境界上に複数の制御点を設定し、任意の制御点と隣り合う2つの制御点とをそれぞれ結んでできる線分のなす角度が一定値未満となる場合に層形状が異常であると判定する。
ステップS720でパラメータ設定部1421はフォーカスが合っている範囲を示す(ii)のパラメータを設定する。このパラメータは視細胞層境界からの距離である。この閾値未満であればフォーカスが合っているとする。また、この閾値の範囲内で光軸方向へのフォーカス位置と視細胞内節外節境界との距離がフォーカスの合致度を意味する。視細胞内節外節境界からの距離が当該パラメータ未満の位置にフォーカス位置の中心が設定されたSLO画像から部分画像を選択する。この判定は部分領域毎(本実施例では画素毎)に行う。ここではそのパラメータを50μmに設定する。また、選択する部分画像候補の枚数を示す(iii)のパラメータは、(ii)のフォーカスが合っていると判定する範囲を示すパラメータとSLO画像群のフォーカス位置の間隔により定まる。本実施例では視細胞内節外節境界から上下50μm未満の範囲をフォーカスの合っている範囲とし、フォーカス位置を20μmごとに変化させたSLO画像群を取得しているため、部分画像候補の枚数は最大5枚となる。SLO画像群のフォーカス位置F1〜F10に対して視細胞内節外節境界の位置がF5付近にあれば多くのSLO画像が部分画像の選択候補となるが、F1やF10付近にある場合には、候補のSLO画像は少なくなる。
ステップS730でパラメータ設定部1421は重ね合わせを実施するかを示す(iv)のパラメータを設定する。これは部分画像候補が複数ある場合に重ね合わせを実施するか否かを示すパラメータである。本実施例では予めユーザから指示取得部150に入力された指示によりパラメータが設定される。ただし、重ね合わせ実施可否の指定法はこれに限らず、例えば、部分画像のS/N比の平均値のような指標に基づいて自動で判定してもよい。
このパラメータは選択されたSLO画像群全体に対して設定される。
ステップS740でパラメータ設定部1421は部分領域ごとに適合度を判定するか否かを示す(v)のパラメータを設定する。複数の部分画像候補がある場合、部分画像ごとに適合度を判定して最も適合するものを選んだ上で部分画像の組み合わせに対して適合度を判定するか、部分画像の組み合わせに対して適合度を判定するだけとするかを設定するパラメータである。本実施例では予めユーザが指示取得部150に入力した指示に基づき設定される。別の例としては画像の鮮鋭度やコントラストの値に基づき自動で判定してもよい。本実施例では部分画像の大きさを1画素としているため、かかる部分画像毎に適合度を判定する処理は行わない。部分画像の大きさが1画素よりも大きい場合にかかるパラメータが設定できる。
<ステップS625>
ステップS625で選択部142はステップS710で設定された(i)のパラメータに基づいて構造に異常があるか否かを判定する。異常があると判定された場合にはステップS630に進み、異常なしと判定された場合にはステップS660に進む。
<ステップS630>
ステップS630で部分画像候補選択部1422は、眼底上の各位置で観察対象(視細胞内節外節境界)の近傍にフォーカス位置を設定するために、屈曲した視細胞内節外節境界付近にフォーカス位置を調節した部分画像を選択する。S620の(ii)および(iii)で求めたように、視細胞内節外節境界からの距離が50μm未満の部分画像を部分画像候補として選択する。かかる処理は各SLO画像について画素単位で行われる。
<ステップS635>
ステップS635で選択部142はステップS730で設定された(iv)のパラメータに基づいて選択された部分画像を重ね合わせる処理を行うか否かを判定する。重ね合わせを行うと判定された場合にはステップS640に、行わない場合にはステップS645に進む。
<ステップS640>
ステップS640で積算部1423は、S730の(iv)のパラメータに基づき、S630で選択した部分画像候補を用いて重ね合わせ処理を行う。固視微動等の影響を軽減するために各部分画像候補に対してS430と同様な位置合わせ処理を行い、位置合わせパラメータの値が一定値以上大きい部分画像が含まれる場合には該部分画像を部分画像候補から除外して重ね合わせる。
例えば、フォーカスが合っていると判定された部分画像の枚数が5枚(p1乃至p5)あった場合には、それぞれ位置合わせを行い各対応画素の平均画素値から1枚の画像を得る。
<ステップS650>
部分画像適合度判定部1424は、部分画像候補上の画像特徴に基づいて選択された部分画像が適切な画像であるかどうかの適合度を算出する。部分画像上のコントラストの値を適合度として用い、適合度が一定値以上であれば部分画像として採用する。なお、適合度の指標はこれに限定されず、任意の公知の画質評価指標や画像特徴量を用いてよい。本実施例では部分画像の大きさが1画素であるためかかる処理は行わない。
<ステップS655>
部分画像適合度判定部1424は適合度が閾値を下回った場合に不適合と判定しS630に戻って眼部特徴のパラメータを変更し、適合と判定されるまでS630以下の処理を繰り返す。閾値を上回った場合に適合と判定しステップS420の処理を終える。本実施例では部分画像の大きさが1画素であるため、自動的にステップS440の処理を終える。
<ステップS660>
ステップS625で構造に異常がないと判定された場合には、選択部142はフォーカス位置が視細胞内節外節境界の位置に最も近いSLO画像を選択する。ここで別の例としてはステップS720で設定した(ii)のフォーカスが合っている範囲を示すパラメータを用いて、この範囲でSLO画像を選択し、重ね合わせを行ってもよい。
次に図8を参照して、S450で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップS810>
ステップS810で連結部1431は、ステップS650で選択された眼底上の各位置における部分画像同士をx−y方向において連結してSLO画像候補を生成する。
なお、前節で説明したようにステップS640もしくはステップS650を省略して本ステップに進んだ場合には、各眼底間で部分画像をある組み合わせで選択して部分画像同士をx−y方向に連結する。
<ステップS820>
SLO画像適合度判定部1432は、ステップS810で生成された画像が観察(解析)に適合した画像であるかどうかを示す指標値を算出する。本実施例では、部分画像間での観察(解析)条件のばらつきの程度を判定するために部分画像間でのS/N比および鮮鋭度を計測し、両者の値とも部分画像間での二乗誤差の和が一定値未満であれば適合していると判定してステップS830に進む。反対に、量計測値の少なくとも一方が一定値以上であれば不適合と判定してステップS810に戻り、部分画像候補の組み合わせを変えて適合するまで再度S820の判定を行う。
<ステップ830>
ステップS830で補正部1433は、ステップS720で選択されたSLO画像のうち、選択された各部分領域の境界領域における画素値変化やエッジ形状の滑らかさを計算する。ここでは、境界領域に垂直な方向での画素値の変化量と、エッジ形状の滑らかさとして例えば任意の公知のエッジ検出処理を行った上でエッジを構成する制御点間の角度の分散値を用いる。もし前記濃度もしくは形状の変化量が一定値以上であれば境界領域内での輝度調整を行う。
視細胞層の形状が大きく変形している場合でも撮像範囲内の視細胞が観察もしくは解析しやすい画像が得られる。
以上述べた構成によれば、画像処理装置10は、加齢黄斑変性により視細胞層が大きく変形した眼底上の各位置において視細胞層境界の近傍にフォーカス位置が設定されたSLO部分画像群を選択し、重ね合わせ後に連結することで新たなSLO画像を生成する。これにより、視細胞層の形状が大きく変形している場合でも撮像範囲内の視細胞を観察もしくは解析しやすくする。また視細胞層の変形の度合いを示す指標値を算出し、変形度合が大きくない場合には最もフォーカスの合っているSLO画像を選択する。これにより、観察対象の構造を観察しやすくすることができる。
実施例2は、実施例1のように記憶装置からSLO画像を読み出して新たなSLO画像を生成するのではなく、眼部撮像装置(補償光学SLOとOCTの複合装置200)から直接SLO画像を取得して画像生成を行う場合について説明する。また、近視の緑内障症例において視神経乳頭部の神経線維束を観察(解析)対象とする場合を説明する。
具体的には、被検眼の光学収差を空間光変調器を用いて補正して平面画像を取得するSLO装置と、断層画像を取得するフーリエドメイン方式のOCT装置の複合装置200から直接SLO画像およびOCTのボリューム画像を取得する。さらに、OCTのボリューム画像から取得した網膜内層境界の情報に基づき、異なるフォーカス位置で撮影したSLO画像から眼底上の各位置において網膜内層境界の近傍にフォーカス位置が設定された部分画像を選択し、互いに連結することで新たなSLO画像を生成する。これにより、近視および緑内障で内境界膜や網膜内層境界の形状が大きく変形している場合でも撮像範囲内の神経線維束の分布を観察もしくは解析しやすくなる。
以下、実施例1と異なる部分について説明し、同様の部分については説明を省略する。
本実施例に係る画像処理装置10の機能ブロック図を図9に示す。SLO画像取得部110と眼部ボリューム画像取得部111とから構成され複合装置200を持ち、眼部ボリューム画像取得部111によって撮像された眼部ボリューム画像から構造取得部120が直接眼部特徴を取得する点が実施例1と異なる。またSLO画像取得部110が収差補正部1101およびフォーカス調整部1102を有し、SLO画像を撮像する点が実施例1と異なる。
またSLO画像取得部に対して撮像を指示する指示部190を有しており、対象画像取得部140によって得られた画像に基づいて撮影の指示を行う。またフォーカス位置やフォーカスの間隔などの撮影条件を設定または補正する設定部または補正部として機能する。この点で画像処理装置90は撮影制御装置(撮影指示装置)または撮影装置としても機能する。
複合装置200は図10に示すような概略構成である。
<全体>
光源201から出射した光は光カプラー231によって参照光205と測定光206とに分割される。測定光206は、シングルモードファイバー230−4、空間光変調器259、XYスキャナ219、Xスキャナ221、球面ミラー260−1〜9等を介して、観察対象である被検眼207に導かれる。
被検眼207によって反射あるいは散乱された戻り光208となり、ディテクター238あるいはラインセンサ239に入射される。
ディテクター238は戻り光208の光強度を電圧に変換し、その信号を用いて、被検眼207の平面画像が構成される。さらに、取得された複数の平面画像を用いて、血流速が算出される。また、ラインセンサ239には参照光205と戻り光208とが合波されて入射され、被検眼207の断層画像が構成される。さらに、複数の取得された断層画像を用いて、血管の3次元的な走行が描出される。
ここでは、波面収差を補正するデバイスとして空間光変調器を用いたが、波面収差を補正できればよく、可変形状ミラー等を用いることもできる。
<光源>
光源201は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super LumineScent Diode)である。波長は830nm、バンド幅50nmである。ここでは、スペックルノイズの少ない平面画像を取得するために、低コヒーレント光源を選択している。また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified SpontaneouS EmiSSion)等も用いることができる。波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに波長は、得られる平面画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは830nmとする。観察対象の測定部位によっては、他の波長を選んでも良い。また、低コヒーレント光源であるSLDは断層画像の撮像にも適する。
<参照光路>
次に、参照光205の光路について説明する。光カプラー231にて分割された参照光205はシングルモードファイバー230−2を通して、レンズ235−1に導かれ、ビーム径4mmの平行光になるよう、調整される。
次に、参照光205は、ミラー257−1〜4によって、参照ミラーであるミラー214に導かれる。参照光205の光路長は、測定光206の光路長と略同一に調整されているため、参照光205と測定光206とを干渉させることができる。
次に、ミラー214にて反射され、再び光カプラー231に導かれる。ここで、参照光205が通過した分散補償用ガラス215は被検眼207に測定光206が往復した時の分散を、参照光205に対して補償するものである。ここでは、日本人の平均的な眼球の直径として代表的な値を想定し、L1=23mmとする。
さらに、217−1は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、参照光205の光路長を、調整・制御することができる。また、電動ステージ217−1はパソコン225からドライバ部281内の電動ステージ駆動ドライバ283を介して制御される。
<測定光路>
次に、測定光206の光路について説明する。
光カプラー231によって分割された測定光206はシングルモードファイバー230−4を介して、レンズ235−4に導かれ、ビーム径4mmの平行光になるよう調整される。また、偏光コントローラ253−1または2は、測定光206の偏光状態を調整することができる。ここでは、測定光206の偏光状態は紙面に平行な方向の直線偏光に調整されている。
測定光206は、ビームスプリッタ258、可動式ビームスプリッタ261を通過し、球面ミラー260−1、260−2を介し、空間光変調器259にて入射・変調される。ここで、空間光変調器259は、液晶の配向性を利用して変調を行う変調器であり、紙面に平行な方向の直線偏光(P偏光)の位相を変調する向きに配置され、測定光206の偏光の向きと合わせている。
さらに、測定光206は偏光板273を通過し、球面ミラー260−3、260−4を介し、Xスキャナ221のミラーに入射される。ここで、偏光板273は戻り光208のうち紙面に平行な方向の直線偏光のみを空間光変調器259に導く役割がある。また、ここで、Xスキャナ221は測定光206を紙面に平行な方向に走査するXスキャナであり、ここでは共振型スキャナを用いている。駆動周波数は約7.9kHzである。
さらに、測定光206は球面ミラー260−5〜6を介し、XYスキャナ219のミラーに入射される。ここで、XYスキャナ219は一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置されるものである。また、測定光206の中心はXYスキャナ219のミラーの回転中心と一致するように調整されている。XYスキャナ219の駆動周波数は〜50OHzの範囲で可変できる。
球面ミラー260−7〜9は網膜227を走査するための光学系であり、測定光206を角膜226の付近を支点として、網膜227をスキャンする役割がある。
ここで、測定光206のビーム径は4mmであるが、より高分解能な断層画像を取得するために、ビーム径はより大径化してもよい。
また、217−2は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、付随する球面ミラーである球面ミラー260−8の位置を、調整・制御することができる。電動ステージ217−2は電動ステージ217−1と同様に、電動ステージ駆動ドライバ283によって制御される。
球面ミラー260−8の位置を調整することで、被検眼207の網膜227の所定の層に測定光206を合焦し、観察することが可能になる。初期状態では、測定光206は平行光の状態で、角膜226に入射するように、球面ミラー260−8の位置が調整されている。また、被検眼207が屈折異常を有している場合にも対応できる。
測定光206は被検眼207に入射すると、網膜227からの反射や散乱により戻り光208となり、再び光カプラー231に導かれ、ラインセンサ239に到達する。
戻り光208の一部は可動式ビームスプリッタ261で反射され、レンズ235−5を介して、ディテクター238に導かれる。ここで、272はピンホールを有する遮光板であり、戻り光208の内、網膜227に合焦していない不要な光を遮断する役割がある。また、遮光板272はレンズ235−5の合焦位置に共役に配置される。また、遮光板272のピンホールの直径は例えば50μmである。ディテクター238は例えば高速・高感度な光センサであるAPD(Avalanche Photo Diode)が用いられる。
また、ビームスプリッタ258にて分割される戻り光108の一部は、波面センサ255に入射される。波面センサ255はシャックハルトマン方式の波面センサである。ここで、XYスキャナ219、Xスキャナ221、角膜226、波面センサ255、空間光変調器259は光学的に共役になるよう、球面ミラー260−1〜9が配置されている。波面センサ255と空間光変調器259により補償光学系が構成される。波面センサ255は被検眼207の収差を測定することが可能になっている。また、空間光変調器259は被検眼207の収差を補正することが可能になっている。さらに、得られた収差に基づいて、空間光変調器259をリアルタイムに制御することで、被検眼207で発生する収差を補正し、より高横分解能な断層画像の取得を可能にしている。
<測定系の構成>
次に、測定系の構成について説明する。複合装置200は、断層画像(OCT像)および平面画像(SLO像)を取得することができる。
まず、断層画像の測定系について説明する。戻り光208は光カプラー231によって合波される。合波された光242は、シングルモードファイバー230−3、レンズ235−2を介して、透過型グレーティング241に導かれ、波長ごとに分光され、レンズ235−3を介してラインセンサ239に入射される。
ラインセンサ239は位置(波長)ごとに光強度を電圧に変換し、その電圧信号はフレームグラバー240にてデジタル値に変換されて、パソコン225にて、被検眼207の断層画像が構成される。ここでは、ラインセンサ239は1024画素を有し、合波された光242の波長毎(1024分割)の強度を得ることができる。
次に、平面画像(SLO画像)の測定系について説明する。戻り光208の一部は、可動式ビームスプリッタ261で反射される。反射された光は遮光板272によって不要な光が遮断された後、ディテクター238に到達し、光の強度が電気信号に変換される。得られた電気信号に対して、パソコン225にてXスキャナ221とXYスキャナ219との走査信号と同期したデータ処理が行われ、平面画像が生成される。
ビームスプリッタ258にて分割される戻り光208の一部は、波面センサ255に入射され、戻り光208の収差が測定される。波面センサ255にて得られた画像信号は、パソコン225に取り込まれ、収差が算出される。得られた収差はツェルニケ多項式を用いて表現され、これは被検眼207の収差を示している。ツェルニケ多項式は、チルト(傾き)の項、デフォーカス(defocus)の項、アスティグマ(非点収差)の項、コマの項、トリフォイルの項等からなる。
<OCT像の取得方法>
次に、複合装置200を用いた断層画像(OCT像)の取得方法について図11(a)〜(c)を用いて説明する。複合装置200は、XYスキャナ219を制御し、Xスキャナ221を固定ミラーとして用いて、ラインセンサ239で干渉縞を取得することで、網膜227の断層画像を取得することができる。戻り光208がディテクター238に導光されないように可動式ビームスプリッタ261を制御する。また、Xスキャナ221、XYスキャナ219は、パソコン225からドライバ部281内の光スキャナ駆動ドライバ282を介して制御される。ここでは、網膜227の断層画像(光軸に平行な面)の取得方法について説明する。
図11(a)は被検眼207の模式図であり、複合装置200によって観察されている様子を示している。図11(a)に示すように、測定光206は角膜226を通して、網膜227に入射すると様々な位置における反射や散乱により戻り光208となり、それぞれの位置での時間遅延を伴って、ラインセンサ239に到達する。ここでは、光源201のバンド幅が広くコヒーレンス長が短いために、参照光路の光路長と測定光路の光路長とが略等しい場合に、ラインセンサ239にて、網膜の各層を経由した光と参照ミラーを経由した光による干渉縞が検出できる。上述のように、ラインセンサ239で取得されるのは波長軸上のスペクトル領域の干渉縞となる。次に、波長軸上の情報である干渉縞を、ラインセンサ239と透過型グレーティング241との特性を考慮して、光周波数軸の干渉縞に変換する。さらに、変換された光周波数軸の干渉縞を逆フーリエ変換することで、深さ方向の情報が得られる。
さらに、図11(b)に示すように、XYスキャナ219を駆動しながら干渉縞を検知すれば、各X軸の位置ごとに干渉縞が得られ、各X軸の位置ごとの深さ方向の情報を得ることができる。結果として、XZ面での戻り光208の強度の2次元分布が得られ、それはすなわち断層画像232である(図11(c))。本来は、断層画像232は上記説明したように、該戻り光208の強度をアレイ状に並べたものであり、例えば該強度をグレースケールに当てはめて、表示されるものである。X方向の長さは700μmである。
ここでは得られた断層画像の境界のみ強調して表示している。ここで、246は網膜色素上皮層、247は視神経線維層である、278は血管である。また、各Y軸の位置ごとに複数の断層画像を取得すれば、血管の3次元的な走行を描出できる。
<SLO像の取得方法>
次に、複合装置200を用いた平面画像(SLO像)の取得方法について説明する。
複合装置200は、XYスキャナ219のY軸方向のみとXスキャナ221とを動作・制御し、XYスキャナ219のX軸方向を固定し、ディテクター238で戻り光208の強度を取得することで、網膜227の平面画像を取得することができる。Xスキャナ221とXYスキャナ219は、パソコン225からドライバ部281内の光スキャナ駆動ドライバ282を介して制御される。また、複合装置200は、波面センサ255で測定した被検眼207の収差を用いて空間光変調器259を制御し、被検眼207等にて生じる収差を補正しながら平面画像を取得することができる。また、空間光変調器259をリアルタイムに制御しながら平面画像を取得することができる。
なお、本実施例ではSLO画像の取得の際に図11(b)に示すように球面ミラー260−8を矢印の方向に移動させてフォーカス位置を調整する。具体的には、球面ミラー260−8を移動させることにより、網膜色素上皮の外側境界B6の輝度が最も高い位置に合わせる。これにより、フォーカス位置がB6に合わせることができる。そして、球面ミラーを所定量ずつ移動させることにより異なる位置にフォーカス位置を合わせることができる。例えば、球面ミラーの移動量が1mmの場合、フォーカス位置が5μm動くように装置を設計しておく。ただしフォーカス調整の方法はこれに限定されるものではなく、例えば空間光変調器259を用いてフォーカスを調整してもよい。
あるいは収差補正を可変形状ミラーによって行い、可変形状ミラーを用いてフォーカスを調整してもよい。あるいは光学系の全体を球面ミラーの代わりにレンズを用いた屈折光学系によって構成し、フォーカスレンズを移動させることによって調整してもよい。
また本実施例での画像生成フローは図12に示す通りであり、S1200、S1210、S1220、S1240、S1280以外は実施例1の場合と同様である。そこで、本実施例ではS1230、S1250、S1260、S1270における処理の説明は省略する。
<ステップS1200>
眼部ボリューム画像取得部111は、眼部ボリューム画像を撮像して構造取得部120に対し眼部ボリューム画像を送信する。本実施例で取得される眼部ボリューム画像は図12(a)に示すように視神経乳頭部を含み、近視および緑内障で内境界膜および網膜内層境界が変形しているものとする。
<ステップS1210>
構造取得部120は、眼部ボリューム画像取得部111で取得された眼部ボリューム画像から眼部特徴を取得する。本実施例では、指示取得部150より予め観察(もしくは解析)対象として神経線維束が指示されているものとする。眼部特徴としては内境界膜B1、神経線維層境界B2、内網状層境界(非図示)、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の外側境界B6、網膜血管(非図示)を抽出する。層境界および網膜血管の抽出法は実施例1におけるS410で説明した手法と同様である。
<ステップS1220>
SLO画像取得部110は、ステップS1210で構造取得部120により取得された層境界に基づいてフォーカス位置を調整し、収差補正SLO画像群を撮影する。ここでは、内境界膜B1および神経線維層境界B2のz座標の変動範囲に基づいてフォーカス位置の中心の変動範囲を図13(a)にFiで示すように設定し、変動間隔を20μmと設定する。
<ステップS1240>
ステップS1240における選択部142の処理は後述する。
<ステップS1280>
ステップS1280は表示部170に表示された画像を観察者が観察し、撮影位置に問題がある場合等の写損の場合には入力部180を介して再撮影をする旨の入力がされ、ステップS1200以下の処理が繰り返される。この際入力されたフォーカス位置やフォーカス位置の間隔、撮影枚数の入力に応じて指示部190は再撮影を複合装置200に対して指示する。複合装置200は指示に応じて撮影を行う。
また別の例では、画像生成部143により生成された画像の画質指標値が閾値よりも低いと対象画像取得部140に判定された場合、指示部190はフォーカス位置の間隔を前回の撮影よりも小さい値に補正し、撮影枚数を増やす設定をする。また、フォーカス位置の間隔は変えずに、同一フォーカス位置のSLO画像を複数枚撮影するようにして撮影枚数を増やすように設定する。
更にまた別の例では、撮影位置が適切でなく観察対象の組織構造の付近を撮像した画像が少ない場合には、指示部190は撮影位置を設定しなおす。例えば選択する部分候補の枚数が最大5枚であるときに、撮影位置がずれているために閾値以下の枚数の画像しか候補とならないと対象画像取得部140が判定した場合に、指示部190は撮影位置の設定を変更する。このようにすることで、前に撮影された画像に基づいて再撮影のパラメータを設定することができる。
図13に基づいて上述の処理により得られる画像について説明する。図13(a)は複合装置200により撮影された視神経乳頭部のOCT断層画像である。またSLO画像の撮像位置がFi(F1乃至F10)で示されている。図13(b)は選択部142により選択されたSLO画像を示し、各画像には撮影対象である神経線維層境界B2にフォーカスが合っている部分領域Siが示されている。これら部分領域Siが画像生成部143によりまとめて貼り合わせられ、図13(c)に示す神経線維束の画像が得られる。
図6に示すフローチャートを参照しながら、ステップS1240で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップS610>
選択部142は、ステップS1210で取得された眼部特徴(内境界膜B1、神経線維層境界B2、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の内側境界B6、網膜血管領域V)を取得する。
<ステップS620>
パラメータ設定部1421は、S610で取得された眼部特徴の分布に基づき、SLO部分画像の選択方法に関する以下のパラメータを設定する。
(i) 部分画像を貼り合わせるか、SLO画像をそのまま用いるか
(ii) 部分画像の選択に用いるパラメータ
(iii) 選択する部分画像候補の枚数
(iv) 部分画像候補が複数の場合は、重ね合わせ実施の可否
(v) 部分画像ごとに適合度を判定するか否か
(i)に関して、本実施例では図13(a)に示すように観察対象(神経線維層境界)の変形が大きいと判定して撮像範囲の各位置(x,y)においてフォーカス位置の異なる部分画像を選択するためS630に進む。 層形状の屈曲の程度を判定する方法は実施例1の場合と同様であるため省略する。本実施例では、部分領域の大きさは4×4画素の16画素からなる領域とする。なお部分領域の大きさは変形の程度が大きい場合には小さく、変形の程度が小さい場合には大きく定めることとすれば、処理効率と精度を両立させることができる。
(ii)に関して、本実施例では神経線維層境界からの距離が一定値未満の位置にフォーカス位置の中心が設定された画像を部分画像の選択に用いる。ここでは該パラメータを神経線維層境界からの距離とし、その値を30μmに設定する。
(iii)に関して、本実施例ではフォーカス位置を20μmごとに変化させたSLO画像群を取得しているため、部分画像候補の枚数は計3枚となる。
(iv)に関して、部分画像候補が複数ある場合に重ね合わせを実施するか判定する。本実施例では予めユーザから指示取得部150に入力された指示により重ね合わせを実施するものとする。
(v)に関して、本実施例では予めユーザが指示取得部150に入力した指示に基づき適合度の判定を行う。
<ステップS630>
部分画像候補選択部1422は、眼底上の各位置で観察対象(神経線維層境界)の近傍にフォーカス位置を設定するために、屈曲した神経線維層境界付近にフォーカス位置を調節した部分画像を選択する。S620の(ii)および(iii)で求めたように、神経線維層境界からの距離が30μm未満の部分画像3枚を部分画像候補として選択する。
<ステップS640>
積算部1423は、S620の(iv)における判定結果に基づき、S630で選択した部分画像候補を用いて重ね合わせ処理を行う。
<ステップS650>
部分画像適合度判定部1424は、部分画像候補上の画像特徴に基づいて選択された部分画像が適切な画像であるかどうかを示す適合度を算出する。本実施例では、部分画像上の鮮鋭度の値を適合度として用い、適合度が一定値以上であれば部分画像として採用する。もし不適合と判定された場合には適合と判定されるまでS630に戻って眼部特徴のパラメータを変更し、再度S640およびS650の処理を繰り返す。
以上述べた構成より、画像処理装置10は、近視により網膜内層が大きく変形した眼底上の各位置において網膜内層境界の近傍にフォーカス位置が設定されたSLO部分画像群を選択し、重ね合わせ後に互いに連結することで新たなSLO画像を生成する。これにより、近視で網膜内層境界の形状が大きく変形している場合でも撮像範囲内の神経線維束の分布を観察もしくは解析しやすくする。
実施例3は糖尿病網膜症例において網膜(毛細)血管を観察(解析)対象とする。具体的には、OCTのボリューム画像から取得した網膜内層境界の情報に基づき、異なるフォーカス位置で撮影した同一のSLO画像群から、眼底上の各位置において網膜内層境界の近傍にフォーカス位置が設定された部分画像を各々選択して連結する。これにより網膜血管にフォーカスが合ったSLO静止画像を生成する。
さらに、前記SLO静止画像上の毛細血管の任意の位置を指定すると、指示した位置の近傍領域における部分動画像を表示し、血流動態を観察/解析しやすいようにする。
これにより、糖尿病性黄斑浮腫により網膜内層境界の形状が大きく変形している場合でも網膜血管の分布および血流動態を観察もしくは解析しやすくする。
本実施例に係る画像処理装置10の機能ブロック図は実施例2の場合と同様(図9)である。また、画像生成フローは実施例2の場合と同様(図12)であり、S1200、S1210、S1220、S1240、S1250以外は実施例1の場合と同様である。そこで、本実施例ではS1230、S1260、S1270、S1280における処理の説明は省略する。
<ステップS1200>
眼部ボリューム画像取得部111は、眼部ボリューム画像を撮像して構造取得部120に対し眼部ボリューム画像を送信する。本実施例で取得される眼部ボリューム画像は図14(a)に示すように黄斑部を含み、黄斑浮腫により網膜内層境界が変形しているものとする。
<ステップS1210>
構造取得部120は、眼部ボリューム画像取得部111で取得された眼部ボリューム画像から眼部特徴を取得する。本実施例では、指示取得部150より予め観察(もしくは解析)対象として毛細血管が指示されているものとする。眼部特徴としては内境界膜B1、神経線維層境界B2、内網状層境界B4、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の外側境界B6、網膜血管(非図示)を抽出する。層境界および網膜血管の抽出法は実施例1におけるS410で説明した手法と同様とする。
<ステップS1220>
SLO画像取得部110は、S1210で構造取得部120により取得された層境界に基づいてフォーカス位置を調整し、収差補正SLO画像群を撮影する。ここでは、神経線維層境界B2および内網状層境界B4のz座標の変動範囲に基づいてフォーカス位置の中心の変動範囲を図14(a)に示すように設定し、変動間隔を5μmと設定する。
図14に基づいて上述の処理により得られる画像について説明する。図14(a)は複合装置200により撮影された黄斑部のOCT断層画像である。またSLO画像の撮像位置がFi(F1乃至F20)で示されている。図14(b)は選択部142により選択されたSLO画像を示し、図14(b)の左側にあるSLO画像ほどフォーカス位置が表層側にあり、フォーカス位置が適切に設定された観察(計測)対象領域が部分画像Siとして選択されている。これら部分領域Siが画像生成部143によりまとめて貼り合わせられ、図14(c)に示す神経線維束の画像が得られる。網膜内層の形状が大きく変形している場合でも撮像範囲内の毛細血管形状を観察もしくは解析しやすいSLO静止画像が得られる。
さらに、SLO静止画像内の毛細血管上の任意の位置をユーザが入力部180に対して入力すると、指示取得部150は位置を指定する旨の指示を取得する。画像生成部143は図14の(d)に示すように、指定位置の近傍(図14(c)のP1)における部分画像候補群を動画像として表示させる。該部分動画像からは、図14(d)のように白血球L1が移動する様子を観察することができる。なお、ここで表示される動画像はS630およびS650で取得された部分画像群であり、各部分画像候補は撮像タイミングが異なっているため動画像として用いることができるものである。
次に図6に示すフローチャートおよび図14を参照しながら、S1240で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップS610>
選択部142は、S410で取得された眼部特徴(内境界膜B1、神経線維層境界B2、内網状層境界B4、視細胞内節外節境界B5、網膜色素上皮の内側境界B6、網膜血管領域V)を取得する。
<ステップS620>
パラメータ設定部1421は、S610で取得された眼部特徴の分布に基づき、SLO部分画像の選択方法に関する以下のパラメータを設定する。
(i) 部分画像を貼り合わせるか、SLO画像をそのまま用いるか
(ii) 部分画像の選択に用いるパラメータ
(iii) 選択する部分画像候補の枚数
(iv) 部分画像候補が複数の場合は、重ね合わせ実施の可否
(v) 部分画像ごとに適合度を判定するか否か
(i)に関して、本実施例では図14(a)に示すように観察対象(内網状層境界B4)の変形が大きいと判定して撮像範囲の各位置(x,y)においてフォーカス位置の異なる部分画像を選択するためS630に進む。 層形状の屈曲の程度を判定する方法は実施例1の場合と同様であるため省略する。
(ii)に関して、本実施例では内網状層境界B4からの距離が一定値未満の位置にフォーカス位置の中心が設定された画像を部分画像の選択に用いる。ここでは該パラメータを神経線維層境界からの距離とし、その値を50μmに設定する。
(iii)に関して、本実施例ではフォーカス位置を5μmごとに変化させたSLO画像群を取得しているため、部分画像候補の枚数は計20枚となる。
(iv)に関して、部分画像候補が複数ある場合に重ね合わせを実施するか判定する。本実施例では予めユーザから指示取得部150に入力された指示により重ね合わせを実施するものとする。
(v)に関して、本実施例では予めユーザが指示取得部150に入力した指示に基づき適合度の判定を行う。
<ステップS630>
部分画像候補選択部1422は、眼底上の各位置で観察対象(内網状層境界B4)の近傍にフォーカス位置を設定するために、屈曲した内網状層境界付近にフォーカス位置を調節した部分画像を選択する。S620の(ii)および(iii)で求めたように、内網状層境界B4からの距離が50μm未満の部分画像20枚を部分画像候補として選択する。
なお、フォーカス位置を合わせる対象は層境界に限定されるものではなく、網膜血管でもよいし、あるいは網膜内に含まれる病変でもよい。
<ステップS640>
積算部1423は、S620の(iv)における判定結果に基づき、S630で選択した部分画像候補を用いて重ね合わせ処理を行う。
<ステップS650>
部分画像適合度判定部1424は、部分画像候補上の画像特徴に基づいて選択された部分画像が適切な画像であるかどうかを示す適合度を算出する。本実施例では、部分画像上の鮮鋭度の値を適合度として用い、適合度が一定値以上であれば部分画像として採用する。もし不適合と判定された場合には適合と判定されるまでS630に戻って眼部特徴のパラメータを変更し、再度S640およびS650の処理を繰り返す。
なお、本実施例では2種類の画像を部分画像として選択する。すなわち、SLO静止画像生成用としてS640で重ね合わせた部分画像と、SLO部分動画像生成用としてS630およびS650で取得した部分画像群を選択する。
なお、実施例1または2の場合と同様にS650を省略してS450に進んでもよい。
次に図8に示すフローチャートおよび図14を参照しながら、S1150で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップS810>
連結部1431は、S650で選択された眼底上の各位置における部分画像同士をx−y方向において連結してSLO静止画像候補を生成する。
なお前節で説明したようにS640もしくはS650を省略して本ステップに進んだ場合には、各眼底間で部分画像をある組み合わせで選択して部分画像同士をx−y方向に連結する。
<ステップS820>
SLO画像適合度判定部1432は、ステップS810で生成されたSLO画像候補が観察(解析)に適合した画像であるかどうかを判定する。本実施例では、部分画像間での観察(解析)条件のばらつきの程度を判定するために部分画像間でのS/N比および鮮鋭度を計測し、両者の値とも部分画像間での二乗誤差の和が一定値未満であれば適合していると判定してS730に進む。反対に、量計測値の少なくとも一方が一定値以上であれば不適合と判定してS710に戻り、部分画像候補の組み合わせを変えて適合するまで再度S720の判定を行う。
<ステップS830>
補正部1433は、S820で選択されたSLO画像のうち、選択された各部分領域の境界領域における画素値変化やエッジ形状の滑らかさを計算する。ここでは、境界領域に垂直な方向での画素値の変化量と、エッジ形状の滑らかさとして例えば任意の公知のエッジ検出処理を行った上でエッジを構成する制御点間の角度の分散値を用いる。もし前記濃度もしくは形状の変化量が一定値以上であれば境界領域内での輝度調整を行う。
以上述べた構成より、画像処理装置10は糖尿病網膜症例において網膜毛細血管を観察(解析)対象としている。糖尿病網膜症により網膜内層が大きく変形した眼底上の各位置において網膜内層の近傍にフォーカス位置が設定されたSLO部分画像群を選択し、重ね合わせ後に互いに連結することで新たなSLO静止画像を生成する。さらに、前記SLO静止画像上の毛細血管の任意の位置を指定すると、指示した位置の近傍領域における部分動画像を表示し、血流動態を観察/解析しやすいようにする。
これにより、糖尿病性黄斑浮腫により網膜内層境界の形状が大きく変形している場合でも撮像範囲内の網膜血管の分布および血流動態を観察もしくは解析しやすいSLO画像を生成することができる。
上述の実施例では予め撮影した網膜の静止画像および動画像を取得することとしているが、これに限らず撮影中にリアルタイムで静止画像および動画像を取得し表示することとしてもよい。この場合には、SLO像撮像装置30は定められたフォーカス位置でSLO画像を繰り返し取得し画像処理装置90による画像処理を定期的に行う。
また、動画像をより観察しやすい画像とするため、定められた各フォーカス位置において複数回撮影し、SLO画像を得ることとしてもよい。表示制御部160はかかる画像を順に表示部170に表示させることにより動画像表示を実現できる。
実施例4では、上述の実施例1乃至3のそれぞれにおいて観察対象とされた構造(特定の構造)をいずれも解析可能となっており、これらの1つを指定するユーザの入力に応じて撮影のパラメータまたは画像処理のパラメータが設定され、撮影が行われる。ハードウェアおよび機能構成は実施例2と同様であるが、実施例1の構成にも適用可能である。
ユーザは入力部180を介して観察対象を選択する。これに応じて指示取得部150は選択された観察対象を指定する。指定された観察対象に応じて指示部190はフォーカス位置やフォーカス間隔等の撮影パラメータを設定する。また対象画像取得部140は指定された観察対象に応じて画像処理のパラメータを設定する。例えば観察対象が実施例1に示す黄斑部の視細胞であるとすると、SLO画像の撮影位置は黄斑部の視細胞内節外節境界付近、フォーカス位置の間隔は20μmと設定される。観察対象が実施例2に示す視神経乳頭部の神経線維束である場合には、SLO画像の撮影位置は視神経乳頭部付近、フォーカス位置の間隔は5μmと設定される。OCTの撮影パラメータも同様にして設定することとしてもよい。
実施例1の構成に適用する場合、撮影済みの画像を処理する場合には、画像処理のパラメータのみ設定する。
かかる処理により、ユーザの入力に応じて観察対象の部位を指定され自動的に撮影パラメータまたは画像処理のパラメータが設定されるため、作業効率を向上させることができる。
[その他の実施例]
上述の画像処理装置10、90はCPUを含む電子計算機(コンピュータ)とソフトウェアとの協働によって実現されるが、画像処理装置10、90の各機能ブロックをそれぞれ回路として実装してもよい。回路のまとまりは機能ブロック単位に限定されることはなく、機能の一部のみを回路として実装することとしてもよい。
また、画像処理装置10、90を複数の装置で構成されている画像処理システムとすることも可能である。
画像処理装置10、90の構造取得部120はOCTの断層画像から特徴を取得する実施例が示されているが、これに限らずその他の画像または診断装置によって構造を特定することとしてもよい。例えば、複数のSLO画像のそれぞれを解析することにより観察対象の組織構造を特定し、部分画像を選択して貼り合わせまたはいずれかのSLO画像を選択することとしてもよい。あるいは別のモダリティ(撮影装置または計測装置)によって組織構造を特定することとしてもよい。
実施例1の画像処理装置10では予め撮像されデータサーバ50に記録されたSLO画像を用いて特定の構造の画像を取得することとしたがこれに限らず、実施例2、3のようにSLO像撮像装置30から直接画像を取得し処理することとしてもよい。また、画像処理装置10から各撮像装置に対して撮影条件の設定、補正や撮影指示を行うこととしてもよい。
画像処理装置10、90の入力部180はユーザの入力を受け付けるものとしたが、これに限らず、例えば検査オーダーの管理システムからの入力を受け付けるものでも、または検査オーダー管理システムそのものであってもよい。要は画像処理装置10、90の画像処理パラメータまたは画像処理装置90の撮影パラメータを設定するための情報を入力するものであればよい。
画像処理装置10、90では撮影対象の変形具合に応じて部分画像を選択し貼り合わせるか、SLO画像を選択するかを判定することとしていたが、かかる判定を行わずいずれか一方のみを行うこととしてもよい。例えば、変形具合のいかんに関わらす、図6のステップS630以下の処理を行い、部分画像を貼り合わせて特定の構造の画像を得ることとしてもよい。
上述の実施例ではフォーカスが合っているか否かを特定の構造からの範囲で指定することとしていたが、これに限らず、当該特定の構造の各位置において最も特定の構造に近いSLO画像から部分画像を取得することとしてもよい。
また、上述の実施例ではステップS440でフォーカスが合っていると判定された画像のうちから画質のよい部分画像を選択することとしていたが、これに限らず、フォーカスの合致度と画質とを合わせた適合度の指標が最も高い部分画像を全てのSLO画像から選択することも可能である。
上述の実施例はあくまで実施形態を例示したものであり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1 撮影システム
10 画像処理装置
110 SLO画像取得部
120 構造取得部
140 対象画像取得部

Claims (21)

  1. 信号光の光軸方向にフォーカス位置の異なる信号光のそれぞれによりSLO装置が撮影対象を走査して得られる複数のSLO画像を取得するSLO画像取得手段と、
    前記撮影対象の特定の構造を取得する構造取得手段と、
    前記特定の構造に応じて前記フォーカス位置の異なる複数のSLO画像のそれぞれから前記特定の構造の画像を取得する対象画像取得手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記対象画像取得手段は、前記フォーカス位置の異なる複数のSLO画像から前記特定の構造に沿った画像を生成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 前記対象画像取得手段は、前記複数のSLO画像のそれぞれから前記特定の構造にフォーカスが合っている部分画像を取得し、該部分画像を貼り合わせて前記特定の構造の画像を生成する
    ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
  4. 前記対象画像取得手段は、前記特定の構造の部分領域のそれぞれについて、該部分領域から所定の閾値未満の距離にフォーカス位置がある前記複数のSLO画像に基づき、該部分領域に対応する部分画像を取得する
    ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
  5. 前記対象画像取得手段は、前記部分領域から所定の閾値未満の距離にフォーカス位置があるSLO画像が複数ある場合には、該複数のSLO画像を合成して前記部分領域に対応する部分画像を生成する
    ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
  6. 前記対象画像取得手段は、前記特定の構造に対するフォーカスの合致度が最も大きいSLO画像を前記複数のSLO画像から選択する選択手段と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  7. 前記対象画像取得手段は、前記特定の構造の屈曲の度合いが大きい場合には前記特定の構造の部分領域のそれぞれに対応する部分画像を前記複数のSLO画像から取得して貼り合わせた画像を生成し、前記屈曲の度合いが小さい場合には前記特定の構造に最も適合するSLO画像を前記複数のSLO画像から選択する
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  8. 前記取得されたSLO画像と前記特定の構造とに基づいて、前記SLO装置が発する信号光のフォーカス位置またはフォーカス位置の間隔を補正する補正手段と、
    前記補正されたフォーカス位置が設定された信号光により前記撮影対象のSLO画像の撮影を指示する指示手段と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  9. 前記特定の構造の画像を表示させる表示制御手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  10. 特定の構造の静止画像における所定の位置を指定する指定手段を更に有し、
    前記表示制御手段は前記指定された位置の動画像を表示させる
    ことを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
  11. 特定の構造を指定する指定手段と、
    前記指定された構造に応じて、前記フォーカス位置の異なる複数のSLO画像から前記特定の構造の画像を取得する際のパラメータを設定する設定手段と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  12. SLO装置が撮影対象に信号光を入射させ該撮影対象を走査し得られるSLO画像を処理する画像処理装置であって、
    信号光の光軸方向にフォーカス位置が異なる信号光のそれぞれによりSLO装置が前記撮影対象を走査して得られる前記撮影対象の複数のSLO画像を取得するSLO画像取得手段と、
    OCT撮影装置により撮影された撮影対象の断層画像に基づいて前記撮影対象の特定の構造を取得する構造取得手段と、
    前記複数のSLO画像のそれぞれのフォーカス位置に応じて、前記特定の構造の部分領域のそれぞれに対応する部分画像を前記複数のSLO画像から選択する選択手段と、
    前記部分画像を貼り合わせて前記特定の構造の画像を生成する生成手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  13. SLO装置が撮影対象に信号光を入射させ該撮影対象を走査し得られるSLO画像を処理する画像処理装置であって、
    前記撮影対象の特定の構造を取得する構造取得手段と、
    前記特定の構造に沿って信号光の光軸方向へのフォーカス位置が異なる画像を取得する取得手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  14. 前記構造取得手段は、OCT撮影装置により撮影された撮影対象の断層画像に基づいて前記撮影対象の特定の構造を取得する
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  15. 前記SLO装置は、収差を補正する補償光学系を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  16. 前記SLO画像取得手段は、信号光の光軸方向にフォーカス位置の設定が異なる信号光のそれぞれによりSLO装置が撮影対象を走査して得られる複数のSLO画像を取得する
    ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  17. 撮影対象に信号光を入射させ該撮影対象を走査することで得られるSLO画像を生成するSLO装置であって、
    前記撮影対象の特定の構造を取得する構造取得手段と、
    前記特定の構造に応じて前記SLO装置の信号光の光軸方向に対する該信号光のフォーカス位置を設定する設定手段と、
    前記設定されたフォーカス位置での前記撮影対象の撮影を指示する指示手段と、
    を有することを特徴とするSLO装置。
  18. 前記信号光による像の収差を補正する補償光学系を有する
    ことを特徴とする請求項16に記載のSLO装置。
  19. 請求項1乃至15のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
    前記画像処理装置により取得された前記特定の構造の画像を表示する表示手段と、
    を有することを特徴とする画像処理システム。
  20. 信号光の光軸方向にフォーカス位置の異なる信号光のそれぞれによりSLO装置が撮影対象を走査して得られる複数のSLO画像を取得するステップと、
    前記撮影対象の特定の構造を取得するステップと、
    前記特定の構造に応じて前記フォーカス位置の異なる複数のSLO画像のそれぞれから前記特定の構造の画像を取得するステップと、
    を有することを特徴とする画像処理方法。
  21. 信号光の光軸方向にフォーカス位置の異なる信号光のそれぞれによりSLO装置が撮影対象を走査して得られる複数のSLO画像を取得する処理と、
    前記撮影対象の特定の構造を取得する処理と、
    前記特定の構造に応じて前記フォーカス位置の異なる複数のSLO画像のそれぞれから前記特定の構造の画像を取得する処理と、
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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