JP2012174978A - プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 - Google Patents

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ステージ温度変化など運用条件の変更に対応し、突入電流の発生や過剰なESC電流が流れることを防ぎ、なおかつ伝熱用ガスを導入する時点で裏面圧力以上の静電吸着力を発生させる。
【解決手段】被処理基板をプラズマ処理するための処理室と、該処理室内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、処理室内に設けられ被処理基板を保持する静電吸着膜を備えたステージを具備したプラズマ処理装置において、静電吸着膜と被処理基板間に流れるESC電流の電流値を検知し、ESC電流の値で吸着条件を設定し、ESC電流が設定した制御範囲内に収まるようにESC電流を検知しながら吸着電圧を段階的にステージに印加し、ESC電流が制御範囲内に収まったことを検知した後に伝熱用ガスを導入する。
【選択図】図4

Description

本発明は、静電吸着に要する直流電圧を印加した際に発生する突入電流を抑え、プラズマ処理装置を安定に運用し、製品不良の低減およびプロセス性能向上を目的とするものである。
半導体製造工程における薄膜形成やプラズマエッチング等を行うプラズマ処理装置では、シリコンウエハ等の被処理基板をステージに保持する方法として静電吸着が用いられている。静電吸着は、基板への機械的な接触を必要とせず、基板裏面全体に静電吸着力を発生させることが出来る。特にジョンソンラーベック効果を利用した静電吸着は大きな静電吸着力を得ることが出来る。ジョンソンラーベック効果はステージ表面の静電吸着膜と基板の界面に電流(以下、「ESC(Electrostatic Chuck)電流」と呼ぶ。)を流すことで、界面の狭い空間に電荷を蓄えて大きな静電吸着力を得るものである。
ジョンソンラーベック効果による静電吸着は、大きな静電吸着力が得られるものの、強い温度依存性を持つ。これは基板に接触する静電吸着膜が強い温度依存性を持つためである。例えばステージ温度を160℃付近まで上昇させた場合、静電吸着膜の抵抗値は常温での抵抗値と比較して、およそ1000分の1に低下する。よってESC電流もステージ温度の上昇に伴い増大する。
一方、プラズマ着火後に吸着に要する吸着電圧を印加した瞬間、定常時に流れるESC電流より大きなESC電流が流れる現象が発生している。吸着電圧を印加した瞬間に発生する、定常時に流れるESC電流より遥かに大きなESC電流を突入電流と呼ぶ。ステージ温度を上昇させた場合、静電吸着膜の抵抗値が低下するため、発生する突入電流は常温時に流れる突入電流よりも更に大きな値をとる。
処理中に過剰なESC電流が流れることは、装置を運用する上で重大な問題を発生させる。プラズマ着火後、プラズマにESC電流が流入することにより、プラズマの電位が上昇する。過剰なESC電流がプラズマに供給されプラズマ電位が著しく上昇した場合、処理室内部の微小突起にて局所放電が発生する可能性がある。処理室内部での局所放電は異物発生の原因となる。また、基板に過剰なESC電流が流れることにより基板上のデバイス特性に影響を与える可能性が生じる。
図1は、プラズマ処理装置の処理室内部に設置されているステージ4と、ステージ4上に設置された基板3の接触面を拡大した図である。図1にはESC電流に関する静電吸着膜15と基板3の等価回路を図示してある。
図1を用いてジョンソンラーベック効果による静電吸着の原理と、突入電流の発生について説明する。基板を設置するステージ4は、導電体と絶縁性の静電吸着膜15を積層して構成される。静電吸着膜15は誘電体から成る。静電吸着膜15の表面は表面粗さを持つため、実際には微小の凹凸があり、基板と静電吸着膜15の表面の間には空間16が存在する。
基板の裏面は静電吸着膜15の表面に比べれば面仕上げ精度は良いため、模式的に静電吸着膜15の凹凸と基板3裏面の平面との接触でモデル化することが出来る。等価回路で表すと、静電吸着膜15の抵抗Rbと容量Cbの並列回路、静電吸着膜15の凸部と基板裏面の接触抵抗Rgと静電吸着膜15の凹凸と基板裏面で形成される空間の容量Cgの並列回路、基板3の抵抗Rwと容量Cwの並列回路が、直列につながった回路にモデル化することが出来る。
ジョンソンラーベック効果を利用する静電吸着は、静電吸着膜15の表面と基板3との間に微小なESC電流を流すことが特徴である。静電吸着膜15と基板3にESC電流を流すと、容量Cw、容量Cg、容量Cbに電荷が蓄えられる。特に、静電吸着膜15表面と基板3裏面との空間16は表面粗さで形成される非常に狭いものであるため、容量Cgは多くの電荷を蓄えることが出来る。よって、吸着電圧を数百ボルト印加することで、基板3とステージ4の間にESC電流が流れ吸着力が得られる。
しかし、吸着電圧を印加した直後は、容量Cw、容量Cg、容量Cbのいずれの容量にも電荷が蓄積されていない。もしくは、自己バイアス電圧により電荷が蓄積されているとしても僅かであり、容量Cw、容量Cg、容量Cbには電荷が貯まりきっていない。そのため、吸着電圧を印加した直後は、容量Cw、容量Cg、容量Cbに電荷が貯まるまで大電流が流れる。これが突入電流の原因である。
図1のように抵抗と容量で構成される回路において、回路に流れるESC電流は一般的に(1)式で表される。
Figure 2012174978
(1)式において、Eは直流電源9が出力した電圧、Rは回路の合成インピーダンス、Cは合成容量である。また、直流電源9自身にも時定数がある。直流電源9が出力する電圧Eは(2)式で表される。
Figure 2012174978
(2)式にて、τは直流電源9の時定数、Eは直流電源9の定常電圧である。よって、回路に流れるESC電流は以下のように表される。
Figure 2012174978
突入電流の発生への対策として、特許文献1に記載されている技術がある。これは直流電源9の時定数τをステージ4上の静電吸着膜15の特性に合わせて最適化し、吸着電圧をスロープ状に印加することで突入電流を防止するというものである。
一方、ESC電流の制御について、特許文献2に記載されている技術がある。これは静電吸着に必要なESC電流の値を設定し、処理中に流れるESC電流が、設定した値を維持するように吸着電圧を維持するものである。特許文献2によれば、特許文献2の技術を使用すればステージ温度など処理条件が変更された場合でもESC電流は設定した範囲内で制御されるとしている。
特開平8−181118号公報 特開2007−48986号公報
しかしながら、前記した技術ではステージ温度上昇によるESC電流の上昇、特に突入電流の上昇への対策として不十分である。
特許文献1に記載されている技術は、(3)式における時定数τの最適化により突入電流I(t)の低減を提案している。しかし、静電吸着膜15の抵抗値((3)式におけるRに含まれる)は強い温度依存性があるため、ステージの温度を変更する度に時定数τの最適化が必要になる。また、実際のプラズマ処理装置では、回路の合成インピーダンスRや合成容量Cを正確に測定することは困難である。
特許文献2の技術は、突入電流に対する対策が不十分である。突入電流が特許文献2におけるESC電流の設定値を超えないようにした場合、突入電流発生後の定常状態にて流れるESC電流が小さくなり、処理に必要な静電吸着力が得られない可能性がある。逆に定常時に流れるESC電流が、特許文献2におけるESC電流の設定値を超えないように制御した場合、突入電流がESC電流の設定値を超える可能性がある。吸着電圧を段階的に印加する方法も提案しているが、下に述べるように、伝熱用ガスの導入について検討されていない。
プラズマ処理装置における基板3裏面への伝熱用ガスの導入について述べる。現在運用されているプラズマ処理装置は、処理中の基板3裏面にヘリウムなど伝熱用ガスを導入することでステージ4と基板3の熱伝導を良くし、基板3の温度を制御する方法が採用されている。基板3の裏面に伝熱用ガスを導入することにより、基板3と静電吸着膜15で形成される空間16には圧力が発生する(以下、「裏面圧力」と呼ぶ。)。
この裏面圧力は、基板3の裏面と静電吸着膜15に発生する静電吸着力より小さくなければならない。もし裏面圧力が静電吸着力を上回った場合、基板3がステージから剥がれ、基板3のずれ、基板3の破損など重大な不具合が発生する可能性がある。このような不具合を防ぐには、伝熱用ガスを導入する時点で、裏面圧力以上の静電吸着力が発生していることが必須である。しかしながら特許文献1、特許文献2は、基板裏面への伝熱用ガスの導入について検討していない。
特許文献1の技術を使用した場合、吸着電圧がスロープ状に印加されている途中に、伝熱用ガスが基板3裏面に導入される可能性がある。もし伝熱用ガスが導入された時点で、静電吸着に必要な吸着電圧が印加されていなかった場合、発生する静電吸着力が裏面圧力に満たず、基板3がステージ4から剥がれる可能性が高い。
特許文献2の技術では、ESC電流の制御方法として吸着電圧を段階的に印加し、ESC電流を徐々に増加させるという方法を提案している。しかし、吸着電圧を段階的に印加している途中に伝熱用ガスが導入された場合、もし基板3と静電吸着膜15の間に十分な静電吸着力が発生していなければ、基板3が剥がれる可能性が高い。
以上の点から、ステージ温度変化など運用条件の変更に対応し、突入電流の発生や過剰なESC電流が流れることを防ぎ、なおかつ伝熱用ガスを導入する時点で裏面圧力以上の静電吸着力が発生していることを必須とした技術が必要である。
特許文献1及び2では、伝熱ガスが供給開始されるまでの突入電流の抑制については、考慮されていなかった。このため、本発明は、試料の静電吸着力を十分に確保するとともに突入電流を抑制することができるプラズマ処理装置を提供する。
本発明の目的は、上記課題を解決したプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置は、処理室と、該処理室内に設けられ、試料を載置する試料台と、静電吸着膜を介して前記試料を試料台表面に吸着させるための直流電圧を前記試料台に印加する直流電源とを備え、前記試料をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記静電吸着膜を介して前記試料台と前記試料間に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段により測定された電流値が予め設定された範囲内に収まるまで段階的に前記直流電圧を前記試料台に印加するように直流電源を制御する電圧制御手段と、前記測定された電流値が予め設定された範囲に到達した時点で、前記試料台内部に設けられた溝に流される前記試料の温度調整用の冷媒の温度を前記試料に伝熱し、前記試料と前記静電吸着膜に設けられた溝との間に供給される伝熱用ガスを前記試料と前記溝との間に供給開始する制御部とを具備することを特徴とする。
また、本発明のプラズマ処理方法は、処理室と、該処理室内に設けられ、試料を載置する試料台と、静電吸着膜を介して前記試料を試料台表面に吸着させるための直流電圧を前記試料台に印加する直流電源とを備え、前記試料をプラズマ処理するプラズマ処理装置のプラズマ処理方法あって、電流測定手段により前記静電吸着膜を介して前記試料台と前記試料間に流れる電流を測定し、電圧制御手段により前記電流測定手段により測定された電流値が予め設定された範囲内に収まるまで段階的に前記直流電圧を前記試料台に印加するように直流電源を制御し、制御部により前記測定された電流値が予め設定された範囲に到達した時点で、前記試料台内部に設けられた溝に流される前記試料の温度調整用の冷媒の温度を前記試料に伝熱し、前記試料と前記静電吸着膜に設けられた溝との間に供給される伝熱用ガスを前記試料と前記溝との間に供給開始することを特徴とする。
本発明によれば、吸着電圧を印加した時に伝熱ガスが供給開始されるまでに過剰なESC電流が流れることを防ぐことができる。
図1は本発明の実施例にかかるステージの等価回路を説明する図である。 図2は本発明の実施例にかかるプラズマ処理装置の構造を説明する概略図である。 図3は本発明におけるプラズマ着火時のフローチャートである。 図4は本発明におけるプラズマ着火時のタイミングチャートである。 図5は本発明における試験例1の測定系である。 図6は本発明における試験例3の結果である。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
図2は本発明のプラズマ処理方法を実施する時に用いるプラズマエッチング装置を示す図である。本プラズマエッチング装置の処理室内部は、プラズマ生成部を形成する石英もしくはセラミックの非導電性材料でなる放電部2と、被処理基板である基板3と、基板3を静電吸着することが可能な静電吸着膜15を持つステージ4と、処理室内を所定の圧力に真空排気するための排気口5からなる。
放電部は、プラズマ生成用のアンテナ1と、高周波電源6と、整合器7からなる。ステージ4は、高周波電源8と、吸着電圧を出力する直流電源9と、電流センサー10と、基板裏面に伝熱用ガスを供給する伝熱用ガス導入口11と、基板3に印加された高周波バイアス電力のピークトゥピーク値(以下、Vppと呼ぶ)を検知するVppセンサー12と、制御部13を有している。
プラズマエッチングに際しては、まず真空排気により処理室内を所定の圧力に制御する。次に高周波電源6から整合器7とアンテナ1を介して電磁波が処理室内に導入される。導入された電磁波は処理室内のガスをプラズマ化する。このプラズマ14を用いエッチングを行う。基板3を設置するステージ4は、加工形状を制御する目的で高周波電源8から高周波バイアスが印加される。
電流センサー10は、直流電源9、ステージ4、基板3、プラズマ14、処理室の壁で形成される回路を流れるESC電流を計測する。Vppセンサー12は基板3上のVppを検知し、制御部13にデータを送る。制御部13は送られてきたVppの値から(4)式を元にして自己バイアス電圧を計算する。制御部13はESC電流の値、自己バイアス電圧の計算値から判断し、吸着電圧を制御する。
本発明の実施例1について、図3のフローチャート、および図4のタイミングチャート図を用いて説明する。実施例1は、本発明を用いて単層膜をエッチングする場合である。
本装置によるプラズマエッチングを開始する前に、ESC電流の制御範囲、吸着電圧初期値、吸着電圧の変化幅、吸着電圧の変化間隔、自己バイアス比を設定する必要がある。
以上5つの項目についての詳細な説明を以下に述べる。なお、ESC電流の制御範囲、吸着電圧の変化値、吸着電圧の変化間隔の設定は、ステージ温度の変更、エッチングガスの変更、高周波電源の出力値の変更に対して、共通に使用することが可能である。
ESC電流の制御範囲とは、基板3のエッチング中に制御するESC電流値の範囲である。ESC電流は、基板3裏面に導入する伝熱用ガスによる裏面圧力に十分耐えうるだけの静電吸着力が得られるものでなければならない。
吸着電圧初期値とは、プラズマ着火後、最初に出力する吸着電圧の値である。この値は吸着電圧印加時の突入電圧を抑制する目的で印加するため、自己バイアス電圧もしくは0とする。
吸着電圧の変化幅とは、吸着電圧を図4のように段階的に変化させる場合、1回の変化で変化させる吸着電圧の値である。この値が大きいと、吸着電圧を変化させた瞬間、ESC電流値に大きなピークが現れる。このESC電流値にピークが発生しないように、ESC電流の変化幅は極力小さい方が良い。
吸着電圧の変化間隔とは、吸着電圧を図4のように段階的に変化させる場合、吸着電圧の変化から変化までの時間のことを指す。
自己バイアス比とは、基板3上のVppの値から自己バイアス電圧を算出する時に用いる係数である。自己バイアス電圧とVpp,自己バイアス比は(4)式の関係である。
Figure 2012174978
上記設定を終了後、プラズマエッチングを開始する。図3を用い、エッチングに際する吸着電圧の印加および伝熱用ガス導入の制御方法を説明する。
まず、真空排気により処理室内を所定の圧力に制御する。その後、電流センサー10とVppセンサー12から、ESC電流の値とVppモニター値を随時、制御部13へ送信する。処理室内が所定の圧力となったことを確認した後、ステップS301において、高周波電源6から、整合器7とアンテナ1を介して電磁波を導入してプラズマを着火させる。プラズマ着火と同時、あるいは着火後に高周波電源8からステージ4へ高周波バイアスを印加する(図4−T1)。
高周波バイアス印加開始後、ステップS302において、Vppセンサー12は高周波バイアス印加後のVppを検知し、制御部13へVppモニター値を送る。ステップS303において、制御部13はVppモニター値から自己バイアス電圧を算出する。算出する計算式は(4)式である。自己バイアス電圧を算出した段階で、ステップS304において、直流電源9から吸着電圧初期値を出力する(図4−T2)。
電流センサー10は、吸着電圧初期値を印加した後、ステップS305において、回路に流れるESC電流の値を検知する。制御部13は電流センサー10からESC電流の値をインプットする。ステップS306において、制御部13は、インプットしたESC電流の値が、予め入力していたESC電流の制御範囲内か、制御範囲外かを判定する。
ステップS306において、ESC電流の値が制御範囲外だった場合(No)、ステップS307において、制御部13は吸着電圧を段階的に印加させるように直流電源9に信号を送る。直流電源9は制御部13からの信号を受け、吸着電圧を段階的に変化させる。例えば、制御部13がインプットしたESC電流の値が、制御範囲を下回るようであれば、ESC電流を増加させるように吸着電圧を段階的に印加させる。逆に、制御部13がインプットしたESC電流の値が、制御範囲を超えるようであれば、ESC電流を減少させるように吸着電圧を段階的に印加させる。(図4−T3〜T5)。
なお、吸着電圧を変化させる際の判定材料となるESC電流値は、吸着電圧を変化させて少なくとも10ms以上経過してから取得したデータであることが望ましい。なぜなら、図4のタイミングチャートに記載したように、吸着電圧を変化させた瞬間に僅かながらもESC電流にピークが発生している可能性があるためである。
ステップS306において、ESC電流が制御範囲内に収まったことを制御部13が確認した(Yes)後、ステップS308において、基板3裏面へ伝熱用ガスの導入を開始する(図4−T6)。この時点で基板3とステージ4上の静電吸着膜15の間には裏面への伝熱用ガスの導入に耐えられるだけの十分な静電吸着力が発生している。そのため、基板3裏面に伝熱用ガスを導入しても基板3が剥がれることはない。
制御部13は、ESC電流が設定範囲内で制御された時点での、吸着電圧と基板3の自己バイアス電圧の電圧差ΔVを記録する。以下のエッチングは、ステップS309において、制御部13が記録した電圧差ΔVを保つように、Vppの変動に合わせて吸着電圧を制御しながら行う。
上記のような制御方法を実行し、吸着電圧を段階的に印加させることで、ESC電流を少しずつ上昇させ、突入電流を軽減させる。なおかつ、ESC電流を検知しながら吸着電圧を印加することで、静電吸着に最適な吸着電圧を自動的に導出することが可能となる。
本発明の有用性を実証するため、発明者らは試験を実施した。なお、以下の試験例では共通して、厚さ0.6mm、表面粗さ0.8μm、抵抗率8.0×1011Ω・cmの静電吸着膜を乗せたステージ上に被処理基板として8インチシリコンウエハを設置して試験を実施している。
試験例1、2は静電吸着力を得るために必要なESC電流を見積もり、本発明におけるESC電流の制御範囲について検討を実施したものである。
[試験例1]
試験例1は十分な静電吸着力を得ることが出来るESC電流の値について検討を行ったものである。図5に試験例1に用いた測定系を示す。真空容器外に試験装置17を用意する。試験装置17から導線18をステージ軸19に繋ぐ。ステージ軸19とステージ4は等電位である。ステージ4上に基板3として8インチシリコンウエハを設置する。基板3の上に導線20をAlテープで貼り付ける。導線20はコネクタ21を通じ真空容器外に出、試験装置17に接続される。試験装置17は吸着電圧を印加すると共に、試験装置17・導線18・ステージ軸19・基板3・導線20で構成される回路に流れるESC電流を検知する。
以上の回路を組んだ後、試験装置17を起動させ、吸着電圧を印加する。吸着電圧を印加して基板3を静電吸着させた後、伝熱用ガスを伝熱用ガス導入口11から流量5ml/minで導入する。なお、伝熱用ガスはヘリウムを用いた。この時の、伝熱用ガスを導入する配管内および静電吸着膜15と基板3の間の空間16に発生する裏面圧力を、圧力計22で測定する。伝熱用ガスを導入するにつれ、裏面圧力は上昇する。
しかし、静電吸着力よりも裏面圧力が大きくなったとき、基板3はステージ4から剥がれ、その瞬間裏面圧力は急に低下する。裏面圧力の低下が発生する直前の裏面圧力から基板3の自重分を引いた値が、基板3と静電吸着膜15の間に発生している静電吸着力である。基板3の自重分は、発明者らの試験によると0.5kPaほどである。
表1は、試験例1の吸着電圧を印加した時に発生するESC電流と静電吸着力の関係を示したものである。なお、本試験において自己バイアス電圧は発生していないため、電圧差ΔVは吸着電圧と同一である。ステージ4の温度は90℃に制御している。なお、試験例1では裏面圧力が2.5kPaに達した時点で十分な静電吸着力が発生していると見なし、測定を停止している。
表1から、静電吸着力を2.5kPa以上得るためには、ESC電流は0.05mA以上必要であることがわかる。
Figure 2012174978
[試験例2]
試験例2は、ESC電流とステージ温度の関係を示したものである。試験例2の試験条件を表2、試験例2の結果を表3に示す。本試験における電圧差ΔVを600Vとしたのは、試験例1の結果を反映し、2.5kPa以上の静電吸着力を得ることができる電圧差ΔVである300Vから2倍の安全率をとったものである。
表3の結果に示す通り、ステージ温度が高いほどESC電流が大きくなる。表2から、ステージ温度40℃で最適なESC電流が得られる条件をステージ温度180℃で使用した場合、過剰なESC電流が流れることになる。逆に、ステージ温度180℃で最適なESC電流が得られる条件をステージ温度40℃で使用した場合、十分な静電吸着力が発生しない可能性が高い。この結果から、ステージ温度を変更する度、最適なESC電流が流れる条件を再設定する必要があることがわかる。
Figure 2012174978
Figure 2012174978
試験例1、2の結果からESC電流の制御範囲の1例として、最小値0.05mA、最大値0.3mAが考えられる。最小値0.05mAとは試験例1において2.5kPaの静電吸着力が得られるESC電流値である。最大値0.3mAとは、表3の試験結果において、ステージ温度140℃の時に流れるESC電流0.26mAを元に検討したものである。
[試験例3]
次に試験例3を記載する。試験例3は、吸着電圧を印加した瞬間に突入電圧が発生することと、突入電圧は吸着電圧を段階的に印加することで低減することが可能であることを検証するものである。試験条件を表4に、試験結果を図6に示す。試験例3では基板3をステージ4に設置した状態で、プラズマ14を維持しながら吸着電圧を変化させ、その瞬間のESC電流の様子を観測した。これは本発明における吸着電圧の印加方法を模擬したものである。
本試験では、電圧差ΔVが300Vから600Vへ変化するように吸着電圧を制御した。試験例3では基板3裏面に伝熱用ガスを導入しながら試験を実施する。伝熱用ガスは裏面圧力1.0kPaを保つように制御されている。もし吸着電圧を印加して発生する静電吸着力が、裏面圧力より小さかった場合、基板3がステージ4から剥がれてしまい試験ができない。そこで電圧差ΔVが300V以上になるように吸着電圧を制御し、基板3とステージ4の間に常に2.5kPa以上の静電吸着力が発生するようにした。この設定により、基板3がステージ4から剥がれて正確な測定が出来なくなることを防ぐ。
図6の4つのグラフは横軸に時間、縦軸に吸着電圧およびESC電流をとっている。それぞれの測定について吸着電圧を、図6(a)は300V間隔、図6(b)は100V間隔、図6(c)は50V間隔、図6(d)は10V間隔で変化させた。
図6(a)では、吸着電圧を変化させた瞬間にESC電流が瞬間的に増加している。しかし図6(b)(c)(d)からわかる通り、ESC電流の瞬間的な増加は、吸着電圧を段階的に印加することで軽減できる。また、吸着電圧の変化幅が小さければ、ESC電流の瞬間的な増加に対して効果が高い。
Figure 2012174978
本試験の結果から吸着電圧の変化幅と変化間隔の一例を検討する。吸着電圧の変化幅を10V、変化間隔を40msとした場合、吸着電圧初期値を出力してから、およそ1.5秒後に吸着電圧300Vを得ることが出来る。当然、吸着電圧の変化幅は、小さければ小さいほど突入電流に対する対策として有効である。吸着電圧の変化幅と変化間隔は、処理時間や直流電源9の性能等を考慮して設定することが望ましい。
本発明は、吸着電圧を図6(b)(c)(d)の試験例の様に段階的に印加することにより、突入電圧の発生を抑える。また、ESC電流を検知しながら最適な吸着電圧を自動的に求める機構を持つことで、ステージ4の温度変化に対応して突入電流の発生を防ぎ、基板3の静電吸着に必要なだけのESC電流を流すことが出来る。本発明を用いて過剰なESC電流が流れることを防ぐことで、局所放電の発生による異物や、基板3上のデバイスへのダメージを防ぐことが可能である。
本発明を用いた実施例2は、多層膜をエッチングする場合である。多層膜のエッチングでは、各処理層をエッチングする毎に一旦プラズマ14を停止する。プラズマ14を停止して、処理ガス、高周波電力、ステージ温度などの処理条件を変更し、再びプラズマ14を着火してエッチングを実施する。このようなエッチングを実施する場合、処理層や処理条件の違いにより、基板3上のVppが変動する場合がある。よって、静電吸着に要するESC電流の値、吸着電圧も変化する。また、このようなエッチングでは、プラズマを停止する際に伝熱用ガスの導入や吸着電圧の印加を停止している。
この場合、プラズマ14を着火する度に、吸着電圧がステージに印加されていない状態で伝熱用ガスが導入され基板がステージから剥がれるという危険性がある。よって、プラズマを着火する際に、必ず本発明の制御方法を実施する。プラズマを着火する時に必ず本発明の制御方法を実施することで、各処理層における最適な吸着電圧を求めながらエッチングを実施することが可能な上、伝熱用ガスを導入した際に基板3がステージ4から剥がれることを防ぐことが出来る。
本発明を用いた実施例3は、多層膜を一括してエッチングする場合である。多層膜のエッチングにおいて、実施例2で述べた方法と異なり、プラズマを停止させずに各処理層をエッチングする方法がある。この場合、プラズマが着火し各処理層をエッチングし終わってプラズマが停止するまで、吸着電圧は常にステージ4に印加されている。伝熱用ガスもプラズマが着火してから停止するまで、裏面圧力を設定した範囲内で制御するように断続的に流れている。このようなエッチングを実施する場合の、本発明の実施例は以下の通りである。
プラズマ着火前の真空排気から伝熱用ガスを導入する時点までの制御方法は、本発明の実施例1と同様である。この時に求めた電圧差ΔVを、以後の全ての処理層について維持するように吸着電圧を制御する。これは、吸着電圧がステージ4に印加されていない状態で伝熱用ガスが導入され、基板3がステージ4から剥がれるという危険性があるのが、着火時のみだからである。
この実施例の場合、処理層や処理条件が変化する時に、ESC電流の値が増減する現象が発生しうる。しかし多くの場合、静電吸着に要するESC電流および処理層や処理条件の変化によるESC電流の増減は、異物の発生や基板3上のデバイス特性に影響を与える可能性のあるESC電流の値より小さいため問題にならない。また、処理層や処理条件の変化によるESC電流の増減を抑えるには、Vppの変動に対する吸着電圧の追従の遅れを軽減させることが有効である。
本発明において、装置に予めESC電流と電圧差ΔVの相関を入力しておくことも可能である。この場合、装置の操作者はエッチング前に、ESC電流の代りに電圧差ΔVを入力することになる。
本発明は、被処理基板と被処理基板を設置するステージに発生する静電吸着力が、被処理基板と被処理基板を設置するステージの間に流れる電流に強く依存した静電吸着方法に適用する。
本発明の適用範囲は、被処理基板が、被処理基板と被処理基板を設置するステージの間に流れる電流に強く依存した静電吸着方法で設置されているのであれば、被処理基板の種類、被処理基板の厚さ・面積、ステージ温度、処理圧力、高周波電源の周波数・出力、直流電源の出力、処理ガスの種類などは問わない。
1 アンテナ
2 放電部
3 基板
4 ステージ
5 排気口
6 高周波電源
7 整合器
8 高周波電源
9 直流電源
10 電流センサー
11 伝熱用ガス導入口
12 Vppセンサー
13 制御部
14 プラズマ
15 静電吸着膜
16 空間
17 試験装置
18 導線
19 ステージ軸
20 導線
21 コネクタ
22 圧力計

Claims (4)

  1. 処理室と、該処理室内に設けられ、試料を載置する試料台と、静電吸着膜を介して前記試料を試料台表面に吸着させるための直流電圧を前記試料台に印加する直流電源とを備え、
    前記試料をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、
    前記静電吸着膜を介して前記試料台と前記試料間に流れる電流を測定する電流測定手段と、
    前記電流測定手段により測定された電流値が予め設定された範囲内に収まるまで段階的に前記直流電圧を前記試料台に印加するように直流電源を制御する電圧制御手段と、
    前記測定された電流値が予め設定された範囲に到達した時点で、前記試料台内部に設けられた溝に流される前記試料の温度調整用の冷媒の温度を前記試料に伝熱し、前記試料と前記静電吸着膜に設けられた溝との間に供給される伝熱用ガスを前記試料と前記溝との間に供給開始する制御部と
    を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
    前記電圧制御手段は、前記伝熱用ガス供給開始後は、前記試料の前記試料台への静電吸着力が予め設定された値を維持するように直流電源を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
  3. 処理室と、該処理室内に設けられ、試料を載置する試料台と、静電吸着膜を介して前記試料を試料台表面に吸着させるための直流電圧を前記試料台に印加する直流電源とを備え、
    前記試料をプラズマ処理するプラズマ処理装置のプラズマ処理方法において、
    電流測定手段により前記静電吸着膜を介して前記試料台と前記試料間に流れる電流を測定し、
    電圧制御手段により前記電流測定手段により測定された電流値が予め設定された範囲内に収まるまで段階的に前記直流電圧を前記試料台に印加するように直流電源を制御し、
    制御部により前記測定された電流値が予め設定された範囲に到達した時点で、前記試料台内部に設けられた溝に流される前記試料の温度調整用の冷媒の温度を前記試料に伝熱し、前記試料と前記静電吸着膜に設けられた溝との間に供給される伝熱用ガスを前記試料と前記溝との間に供給開始する
    ことを特徴とするプラズマ処理方法。
  4. 請求項3に記載のプラズマ処理方法において、
    前記電圧制御手段により、前記伝熱用ガス供給開始後は、前記試料の前記試料台への静電吸着力が予め設定された値を維持するように直流電源を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
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