JP2012164607A - 難燃性ケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 導体又は光ファイバの外周に密度900kg/m3以上のポリエチレンをベース樹脂成分とする樹脂組成物(A)の内層xを被覆し、前記内層xの外周に密度900kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体をベース樹脂成分とする樹脂組成物(B)の中間層yを被覆し、前記中間層yの外周に特定のノンハロゲン難燃性樹脂組成物(C)が被覆されてなる外層zを有することを特徴とする難燃性ケーブルであって、前記内層x及び中間層yがともにシラン架橋されている難燃性ケーブル。
【選択図】図2
Description
特に、電子線架橋や化学架橋で光ファイバケーブルのシースを架橋すると、架橋時の電子線や熱によりファイバが劣化し、伝送損失が増大するという問題がある。
しかし、この方法で金属水和物を高充填したノンハロゲンの難燃性樹脂組成物をシラン架橋すると、金属水和物が架橋反応を阻害し、押出時にゲル化物を発生し、外観に問題が生じるとともに、架橋度を上げることができず、耐熱性に優れたケーブルを製造することが困難な場合が多い。
また、ケーブルとして必要とされる機械特性を確保するためには、ノンハロゲンの難燃性樹脂組成物のベース樹脂成分を、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのエチレン系共重合体を用いる必要がある。しかし、これらの樹脂を用いたのでは、耐熱性が不足する場合が多い。
<1>導体又は光ファイバの外周に密度900kg/m3以上のポリエチレンをベース樹脂成分とする樹脂組成物(A)の内層xを被覆し、前記内層xの外周に密度900kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体をベース樹脂成分とする樹脂組成物(B)の中間層yを被覆し、前記中間層yの外周に下記組成:
(a)ポリプロピレン及び/又はエチレン−αオレフィン 5〜70質量%、
(b)エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種 20〜90質量%、
(c)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した樹脂であって、前記樹脂がポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び構成成分としてエチレンとスチレンを含むスチレン系エラストマーから選ばれた少なくとも1種 0〜30質量%、
(d)スチレン系エラストマー 0〜35質量%、
(e)パラフィン系オイル 0〜20質量%
からなる樹脂成分100質量部に対して、金属水和物120〜280質量部含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物(C)
が被覆されてなる外層zを有することを特徴とする難燃性ケーブルであって、前記内層x及び中間層yがともにシラン架橋されていることを特徴とする難燃性ケーブル、
<2>前記難燃性樹脂組成物(C)の外層zの平均被覆厚さが、前記樹脂組成物(B)の中間層の厚さより薄いことを特徴とする<1>記載の難燃性ケーブル、及び
<3>前記樹脂組成物(A)のベース樹脂成分が密度920kg/m3以上のポリエチレンであることを特徴とする<1>又は<2>記載の難燃性ケーブル、
を提供するものである。
また、図2に示すように、本発明の難燃性ケーブルのほかの一実施態様である電気絶縁ケーブル200は、金属導体60の外周に内層xとして絶縁層70が被覆された絶縁電線80と、金属導体61の外周に内層xとして絶縁層71が被覆された絶縁電線81の外周に、中間層y及び外層zからなるシース50が被覆されている。図2では、2本の絶縁電線を有する電気絶縁ケーブルが示されているが、絶縁電線は1本(単心)でも、3本以上でもよい。
(1)内層を構成する樹脂組成物(A)
内層は、密度900kg/m3以上のポリエチレンをベース樹脂成分とする樹脂組成物(A)で構成されている。樹脂組成物(A)のシラン架橋を阻害しないように、充填材、特に金属水和物を含まないことが好ましい。配合する場合は、樹脂成分100質量部に対して、100質量部以下とすることが好ましい。
本明細書において、ポリエチレンとは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体を含むものとする。
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレンなどがあげられる。内層を構成する樹脂組成物(A)中におけるポリエチレンの密度は、好ましくは、910kg/m3以上、さらに好ましくは920kg/m3以上である。ポリエチレンの密度に上限は特にないが、製造しやすさの点から、好ましくは、965kg/m3以下、さらに好ましくは、962kg/m3以下である。ポリエチレンの密度が小さすぎると、図2に示す内層(絶縁層)と中間層との密着性が高くなり、シース皮むき加工性が著しく悪くなったり、長期浸水の際の絶縁抵抗が悪くなる。
また、後述のとおり、図1に示す、必要に応じて設けられる充填層30を密度900kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体をベース樹脂成分とする樹脂組成物(B)の中間層とし、前記中間層をシラン架橋した場合に、内層xの密度が小さすぎると、高温で使用した場合に中間層との密着性が大きくなり、屈曲性が悪くなる。
例えば、第1段階として、ビニルオルコキシシランなどのシランカップリング剤を有機パーオキサイドの存在下、ポリエチレンをベース樹脂成分とする樹脂混合物を溶融・混練して、シラングラフトポリエチレンを得た後に、第2段階として触媒存在下で加水分解反応を促進させ、シラン部位を縮合反応させて、シラン架橋を行う方法(2段法のシラン架橋法)を挙げることができる。この方法で使用されるシランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシエトキシシラン、メタクロキシメトキシシランなどを挙げることができる。有機パーオキサイドとしては、 ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどを使用することができる。触媒としては、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテートなどを挙げることができる。
また市販されているシラングラフトポリエチレンを使用してシラン架橋を行ってもよい。シラングラフトポリエチレンとして、例えば、「リンクロン」や「モルデックス」(商品名)で三菱化学(株)より上市されているものを使用することができる。
上記の内層に接する中間層は、密度900kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体をベース樹脂成分とする樹脂組成物(B)で構成されている。樹脂組成物(B)のシラン架橋を阻害しないように、充填剤、特に金属水和物を含まないことが好ましい。配合する場合は、樹脂成分100質量部に対して、100質量部以下とすることが好ましい。
エチレン−αオレフィン共重合体としては、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、構成成分としてエチレンを含むポリオレフィン系エラストマー(例えば、キャタロイ((商品名)、サンアロマー社製)、ニューコン((商品名)、日本ポリプロ社製)、プライムTPO((商品名)、プライムポリマー社製)などがあげられる。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、好ましくは890kg/m3未満である。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度に下限は特にないが、タック性の点から、好ましくは、963kg/m3以上、さらに好ましくは、968kg/m3以上である。樹脂組成物(B)のベース樹脂成分の密度が大きすぎると、柔軟性に乏しくなり、中間層と外層との密着性が低くなる。
シラン架橋は、従来の方法で行うことができ、上記内層を架橋する方法と同様の方法で行うことができる。また、シラングラフトされたエチレン−α−オレフィン共重合体として、「リンクロン」や「モルデックス」(商品名)で三菱化学(株)より上市されているものを使用することができる。
さらに内層と中間層が架橋されていることにより、耐熱性を確保することができる。本発明の難燃性ケーブルについての後述の製造方法で説明するように、該ケーブルの架橋は簡便な装置を用いてシラン架橋で、所望の架橋度を自由に得ることができる。このため、通常、架橋された被覆層の外周に被覆層を設けた場合は、中間層又は外層の押出温度が低いために起こる密着不良や、押出温度が高すぎることによる外観不良の影響を極力避けることができる。
本発明の難燃性ケーブルの中間層(B)の外周は、下記組成の難燃性樹脂組成物(C)層で被覆されている。
難燃性樹脂組成物(C)は、
(a)ポリプロピレン及び/又はエチレン−αオレフィン 5〜70質量%、
(b)エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種 20〜90質量%、
(c)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した樹脂であって、前記樹脂がポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び構成成分としてエチレンとスチレンを含むスチレン系エラストマーから選ばれた少なくとも1種 0〜30質量%、
(d)スチレン系エラストマー 0〜35質量%、
(e)パラフィン系オイル 0〜20質量%
からなる樹脂成分100質量部に対して、金属水和物120〜280質量部を含有する。
難燃性樹脂組成物(C)において用いることのできるポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリプロピレンとエチレン−αオレフィン共重合体ゴムのブロック又はランダム共重合体などがある。
ここでいうエチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものをいう。
エチレン−αオレフィン共重合体ゴムのブロック又はランダム共重合体としてはサンアロマーから製品名:キャタロイ、アドフレックス、日本ポリプロ(株)からニューコン、その他プライムポリマーからも製品名:プライムTPOとして上市されている。
ポリプロピレンのMFR(ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)は、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜15g/10分、さらに好ましくは0.3〜5g/10分である。
エチレン−α−オレフィン共重合体として具体的には、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EBR(エチレン−1‐ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
ポリプロピレン及び/又はエチレン−α−オレフィン共重合体は、難燃性樹脂組成物中の樹脂成分中、5〜70質量%である。この配合量が少なすぎると耐熱性が低下し、ケーブル自体が熱融着しやすくなる。配合量が多すぎると、難燃性が低下する。
(a)成分のうち、ポリプロピレン単独又はエチレン−α−オレフィン共重合体単独でもよいが、ポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体を併用することが好ましい。難燃性樹脂組成物中の樹脂成分中、ポリプロピレン0〜50質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体3〜70質量%とすることが好ましい。さらに好ましくは、ポリプロピレン0〜45質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体20〜70質量%である。この範囲内とすることにより、外観が良好で柔軟性に優れたケーブルを得ることができる。
難燃性樹脂組成物(C)において(b)成分として用いることのできるエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、エバフレックス(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)、ウルトラセン(商品名、東ソー(株)製)などが挙げられる。
また、(b)成分のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えばエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体(EMMA)などが挙げられる。具体的には、例えば、エバルロイ(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などが挙げられる。
(b)成分のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体を挙げることができる。具体的には例えば、ニュクレル(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)を挙げることができる。
(b)成分におけるエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたものは含まれない。
この量が少なすぎると難燃性や伸び特性が低下する。またこの量が多すぎると、耐熱性が低下したり、外層が中間層に接している場合には、中間層との密着性が悪くなり、加工性に問題が発生する。
(b)成分中のエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体中の酸エステル含有量は難燃性の点から高い方が好ましい。これらの含有量は、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。(b)成分のうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
(c)成分は、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、及び構成成分としてエチレンとスチレンを含むスチレン系エラストマーから選ばれた少なくとも1種を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性することにより、不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフトされた樹脂である。
ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、構成成分としてエチレンとスチレンを含むスチレン系エラストマーの変性は、例えば、これらの樹脂と不飽和カルボン酸またはその誘導体を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸等による変性量は、通常、樹脂100質量部に対して0.5〜15質量部である。
樹脂成分(c)にはこれらの樹脂1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。
この不飽和カルボン酸で変性された樹脂は、難燃性樹脂組成物(C)中の樹脂成分中、0〜30質量%である。この樹脂の配合量が多すぎると、押出負荷が著しく高くなって外を押出被覆して難燃性ケーブルを製造するのが困難となったり、伸びが著しく低くなり、機械特性が不十分となる。
(d)成分として用いられるスチレン系エラストマーは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及び/又はランダム構造を含む共重合体もしくはその水素添加物である。(d)成分には、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたものは含まない。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエンが好ましい。
スチレン系エラストマーとしてはスチレン含有量が30質量%以上のスチレン系エラストマーが好ましい。このスチレン含有量が30質量%より少ないと耐油性が著しく低下したり、耐摩耗性が低下する。
このスチレン系エラストマーは、難燃性樹脂組成物(C)中の樹脂成分中、0〜35質量%である。この量が多すぎると難燃性が著しく低下したり、押出負荷が高くなり、外層を押出被覆することが困難になる。
難燃性樹脂組成物(C)中に、パラフィン系オイルを0〜20質量%配合することができる。
ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。本発明に用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系のものである。
パラフィン系オイルの配合量が多すぎると、難燃性が著しく低下したり、強度が低下する。
本発明の難燃性ケーブルの外層は、上記(a)〜(e)を含有する樹脂成分100質量部に対して金属水和物120〜280質量部含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物(C)で被覆されている。
金属水和物としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等があげられるが、中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、特に水酸化マグネシウムが好ましい。
金属水和物としては、通常市販されているものを使用することが可能である。金属水和物は、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としてはたとえば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などがあげられる。難燃性樹脂組成物(C)中の樹脂成分と作用しやすいという点から、本発明においては、金属水和物としては、無処理のものか、シランカップリング剤で表面処理されたものを用いるのが好ましい。
さらに、金属水和物は1種類でも、異なるものを併用してもよい。無処理の金属水和物や、表面処理を行った金属水和部をそれぞれ単独で使用するのは勿論、両者を併用してもよい。さらに、異なる表面処理を行った金属水和物を併用することも可能である。
金属水和物をシランカップリング剤で処理をする場合には、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、たとえばキスマ5(商品名、協和化学(株))、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株))などがあげられる。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2O3
・3.5H2O)、アルカネックスFRC−600(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。また、スズ酸亜鉛(ZnSnO3)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6)として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
この光ファイバ心線10と、繊維強化プラスチック(FRP)などからなる抗張力繊維20と、ポリエチレンテレフタレート製のテープ(PETテープ)などのスペーサ30の外周に、押え巻きテープ40を介して、中間層yを被覆する。中間層yを形成後、樹脂組成物(B)を湿熱等(例えば、温水中に浸漬、湿熱雰囲気下に置くなど)によって、樹脂組成物(B)のシラン架橋を促進させてもよいし、そのまま放置してもよい。放置する場合は、架橋を進行させるため、室温に置くことが好ましい。その後、難燃性樹脂組成物(C)を通常の条件で中間層に被覆して、光ファイバケーブル100を得ることができる。
難燃性樹脂組成物(C)の外層zの平均被覆厚さを、前記樹脂組成物(B)の中間層の厚さより薄くすることにより、耐熱性と柔軟性の効果を奏することができる。外層zの平均被覆厚さを0.2〜10mm、中間層の厚さを0.2〜10mmとし、この範囲内で、外層zの平均被覆厚さを、前記樹脂組成物(B)の中間層の厚さより薄くすることが好ましい。
図1の光ファイバケーブル100におけるスペーサ30に樹脂組成物を充填して、充填層を形成する場合には、前記の樹脂組成物(B)を充填し、上記と同様にシラン架橋することが望ましい。
絶縁電線80、81は、金属導体60、61の外周に、密度900kg/m3以上のポリエチレンをベース樹脂成分とする前記の樹脂組成物(A)を被覆して内層xを形成後、樹脂組成物(A)をシラン架橋する。その場合、内層xに湿熱等を加え(例えば、温水中に浸漬、湿熱雰囲気下に置くなど)、樹脂組成物(A)の架橋を促進させてもよいし、そのまま放置してもよい。放置する場合は、架橋を進行させるため、室温で7日程度置くことが好ましい。このようにして絶縁電線80、81を得る。
これらの絶縁電線80、81の外周に、樹脂組成物(B)を被覆して中間層yを形成する。中間層yを形成後、樹脂組成物(B)を湿熱等(例えば、温水中に浸漬、湿熱雰囲気下に置くなど)によって、樹脂組成物(B)のシラン架橋を促進させてもよいし、そのまま放置してもよい。放置する場合は、架橋を進行させるため、室温で 7 日程度放置することが好ましい。その後、難燃性樹脂組成物(C)を通常の条件で中間層に被覆して、電気絶縁ケーブルを得ることができる。
難燃性樹脂組成物(C)の外層zの平均被覆厚さを、前記樹脂組成物(B)の中間層の厚さより薄くすることにより、耐熱性の効果を奏することができる。外層zの平均被覆厚さを0.2〜10mm、中間層の厚さを0.2〜10mmとし、この範囲内で、外層zの平均被覆厚さを、前記樹脂組成物(B)の中間層の厚さより薄くすることが好ましい。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
予め、密度922kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(UE320(商品名、日本ポリエチレン社製))100質量部にオクチル酸スズ2質量部を加えて、バンバリーミキサーで溶融混練し、触媒マスターバッチ(Q)を得た。次に、表1に示す各成分を、押出温度180℃で、65mmΦのストレーナーを用いて、スクリュー回転数30rpmで溶融混練して、A−1a〜A−4aを得た。その後、A−1a〜A−4aのそれぞれに対して、前記触媒マスターバッチ(Q)を質量比19:1で配合した樹脂混合物を用いて、樹脂組成物A−1〜A−4を得て、導体0.75SQ導体(30/0.18TA)外径1.14mmの外側に、肉厚0.8mm(外径2.72mm)で樹脂組成物A−1〜A−4を被覆し、表3−1〜3−3に記載の内層の絶縁電線を得た。押出温度はヘッド温度180℃で行った。
前記と同様に、予め、100質量部のUE320にオクチル酸スズ2質量部を加えて、バンバリーミキサーで溶融混練し、触媒マスターバッチ(Q)を得た。また、100質量部のUE320にラウリル酸スズ1.5質量部を加えて、バンバリーミキサーで溶融混練し、触媒マスターバッチ(R)を得た。
次に、表2に示す各成分を、押出温度180℃で、65mmΦのストレーナーを用いて、スクリュー回転数30rpmで溶融混練して、B−1b〜B−5bを得た。
その後、B−1b〜B−3b、B−5bのそれぞれに対して、前記触媒マスターバッチ(Q)を質量比19:1で配合した樹脂混合物を用いて、樹脂組成物(B−1〜B−3、B−5)を得て、1.で製造した絶縁電線の被覆層上に、ヘッド温度180℃で押出被覆して、表3−1〜3−3に記載の中間層を形成し、さらに室温で7日間置き、内層と中間層にシラン架橋を施した。
また、同様に、B−4bに対して、前記触媒マスターバッチ(R)を19:1で配合して得た樹脂組成物(B−4)を、前記1.で製造した絶縁電線の被覆層上に、ヘッド温度180℃で押出被覆して、表3−1〜3−3に記載の中間層を形成し、さらに室温で7日間置き、内層と中間層にシラン架橋を施した。
その後、表3−1〜3−3に示す各成分をバンバリーミキサーで溶融混練して得られた難燃性樹脂組成物の外層を、上記の被覆層がシラン架橋された絶縁電線に押出機で押出被覆して、表3−1〜3−3に示す電気絶縁ケーブルを得た。
(実施例15)
1.光ファイバ心線の作製
予め、密度922kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(UE320(商品名、日本ポリエチレン社製))100質量部にラウリル酸スズ2質量部を加えて、バンバリーミキサーで溶融混練し、触媒マスターバッチ(Q)を得た。次に、表1に示す各成分を、押出温度180℃で、65mmΦのストレーナーを用いて、スクリュー回転数30rpmで溶融混練して、A−1aを得た。その後、A−1aに対して、前記触媒マスターバッチ(Q)を質量比19:1で配合した樹脂混合物を用いて、樹脂組成物A−1を得て、直径0.4mmの光ファイバ心線の外周に、肉厚0.6mm(外径1.6mm)で樹脂組成物A−1を被覆し、表3−4に記載の内層の光ファイバ心線を得た。押出温度はヘッド温度180℃で行った。
表2に示す各成分を、押出温度180℃で、65mmΦのストレーナーを用いて、スクリュー回転数30rpmで溶融混練して、B−1bを得た。
その後、B−1bに対して、前記触媒マスターバッチ(Q)を質量比19:1で配合した樹脂混合物(B−1)を得て、樹脂組成物B−1を1.で製造した光ファイバ心線の被覆層上に、ヘッド温度180℃で押出被覆して、表3−4に記載の中間層を形成し、さらに室温で7日間置き、内層と中間層にシラン架橋を施した。
その後、表3−4に示す各成分をバンバリーミキサーで溶融混練して得られた難燃性樹脂組成物の外層を、上記の中間層に押出機で押出被覆して、表3−4の実施例15に示す光ファイバケーブルを得た。
予め、密度922kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(UE320(商品名、日本ポリエチレン社製))100質量部にラウリル酸スズ2質量部を加えて、バンバリーミキサーで溶融混練し、触媒マスターバッチ(Q)を得た。
次に、表2に示す各成分を、押出温度180℃で、65mmΦのストレーナーを用いて、スクリュー回転数30rpmで溶融混練して、B−1bを得た。
その後、表3−4記載の比較例8の外層に用いられる樹脂混合物と、前記B−1bと、前記Qを、質量比10:9:1で溶融混練して得た樹脂組成物を、内層と中間層に押出被覆し、その後、表3−4に示す外層の難燃性樹脂組成物を被覆することにより、光ファイバケーブルを製造することを計画した。しかし、内層と外層の押出被覆時にゲル化物を発生し、外観に問題が生じて、光ファイバケーブルを得ることができなかった。
(1)引張試験
JIS C 3005に基づき、絶縁、シースの引張試験を行った。標線間は20mm、引張速度は200mm/分で試験を行った。
引張強さは10MPa以上、伸びは200%以上で合格である。
IEC60332−1の試験で難燃性を確認した。試験はn=3で行い、全て合格のものが合格である。
JIS C 3005に規定されている60度傾斜難燃試験を行った。試験はn=3で行い、全て合格のものが合格である。なお難燃性2に適合すれば、必ずしも難燃性1に合格する必要はない。
シース部位のホットセット試験を行った。ホットセット試験は200℃15分間20N/cm2の力の荷重で管状片を引張り、管状片の伸び、及び荷重を取り除いたときの伸びを測定した。伸びが100%以下、荷重を取り除いた際伸びが25%以下で合格である。
サンシャインウエザロメータでブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨で4000hrシース管状片を暴露し、暴露後1)の方法で引張試験を行った。
引張強さ残率75%以上、伸び残率75%で合格である。
得られたケーブルをストリッパーで外層の皮むきを行い、中間層又は内層に傷を入れることなく外層を伸ばさずに加工ができるかについて評価した。全く外層を伸ばさずに加工できたものを○、少し外層を伸ばしたが影響なく皮むきができたものを△、外層が伸び、又は中間層若しくは内層に傷が入って加工ができなかったものを×とした。△及び○のものを端末性合格とした。
(表1記載の各成分)
(1)UE320(商品名、日本ポリエチレン社製)(直鎖状低密度ポリエチレン)、密度922kg/m3
(2)ユメリット0540F(商品名、宇部丸善石油化学社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度905kg/m3
(3)ハイゼックス5305E(商品名、プライムポリマー社製)(高密度ポリエチレン)、密度951kg/m3
(4)エンゲージ8842(商品名、ダウ社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度857kg/m3
(5)ノバテックBC8A(商品名、日本ポリプロ社製)(ブロックPP樹脂)
(1)エンゲージ7256(商品名、ダウ社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度885kg/m3
(2)エンゲージ8842(商品名、ダウ社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度857kg/m3
(3)カーネルKF360T(商品名、日本ポリエチレン社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度898kg/m3
(4)ユメリット2525F(商品名、宇部丸善石油化学社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度925kg/m3
(5)ノバテックBC8A(商品名、日本ポリプロ社製)(ブロックポリプロピレン)
(6)NUC6520(商品名、ダウ社製)(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、EA含有量22%
(1)ノバテックBC8A(商品名、日本ポリプロ社製)(ブロックポリプロピレン)
(2)カーネルKS240T(商品名、日本ポリエチレン社製)(商品名、日本ポリエチレン社製)(エチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン))、密度880kg/m3
(3)アドマーXE070(商品名、三井化学社製)(マレイン酸変性ポリエチレン)密度893kg/m3
(4)アドマーQE810(商品名、三井化学社製)(マレイン酸変性ホモポリプロピレン)、
(5)エバフレックスEV180(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、VA含有量33%
(6)YX−21K(商品名、東ソー社製)(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、VA含有量41%
(7)SEPS4077(商品名、クラレ社製)(スチレン系エラストマー)
(8)ダイアナプロセスオイルPW−380(商品名、出光社製)(パラフィンオイル)(9)キスマ5P(商品名、協和化学社製)(シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム)
これに対して、比較例1では、シラン架橋された層をまったく有しないため、ホットセット試験に不合格となり、耐熱性が不足した。また、比較例2では、シラン架橋された層1層のみであるため、耐熱性は合格するが、端末加工性が不合格であった。比較例3、5では、中間層にシラン架橋層を用いていないため、耐熱性が不足し、端末加工性に劣る結果となった。比較例6では、外層の樹脂組成物中の金属水和物の配合量が少なすぎるため、難燃性が不足し、比較例7では、外層の樹脂組成物中の金属水和物の配合量が多すぎるため、機械特性が不足した。比較例8では、内層と中間層に金属水和物を含むシラン架橋性の樹脂組成物を用いて、内層と中間層をシラン架橋させようとしても、ゲル化が進行し、内層と中間層がシラン架橋された難燃性ケーブルを得ることができなかった。
10 光ファイバ心線
20 抗張力繊維
30 スペーサ
40 押え巻きテープ
50 シース
60、61 金属導体
70、71 絶縁層
80、81 絶縁電線
100 光ファイバケーブル
200 電気絶縁ケーブル
x 内層
y 中間層
z 外層
Claims (3)
- 導体又は光ファイバの外周に密度900kg/m3以上のポリエチレンをベース樹脂成分とする樹脂組成物(A)の内層xを被覆し、前記内層xの外周に密度900kg/m3未満のエチレン−α−オレフィン共重合体をベース樹脂成分とする樹脂組成物(B)の中間層yを被覆し、前記中間層yの外周に下記組成:
(a)ポリプロピレン及び/又はエチレン−αオレフィン 5〜70質量%、
(b)エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種 20〜90質量%、
(c)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した樹脂であって、前記樹脂がポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、及び構成成分としてエチレンとスチレンを含むスチレン系エラストマーから選ばれた少なくとも1種 0〜30質量%、
(d)スチレン系エラストマー 0〜35質量%、
(e)パラフィン系オイル 0〜20質量%
からなる樹脂成分100質量部に対して、金属水和物120〜280質量部含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物(C)
が被覆されてなる外層zを有することを特徴とする難燃性ケーブルであって、前記内層x及び中間層yがともにシラン架橋されていることを特徴とする難燃性ケーブル。 - 前記難燃性樹脂組成物(C)の外層zの平均被覆厚さが、前記樹脂組成物(B)の中間層の厚さより薄いことを特徴とする請求項1記載の難燃性ケーブル。
- 前記樹脂組成物(A)のベース樹脂成分が密度920kg/m3以上のポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性ケーブル。
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