JP2005350578A - 難燃性樹脂組成物および絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベース材料にエチレン系共重合体を主成分として使用し、さらに特定の官能基を有するシランカップリング剤で処理された金属水和物と重質炭酸カルシウムを併用する。
【選択図】無し
Description
このため、有害な重金属やハロゲン系ガスなどの発生がないノンハロゲン難燃材料で電線を被覆する技術の検討が盛んに行われている。
また、水酸化マグネシウムを多量に加えた絶縁組成物が検討されてきたが、絶縁体に傷が付きやすい等の問題が生じることがあった。またさらに水酸化マグネシウムを多量に配合すると、耐水性と耐酸性が著しく低下するという問題が生じることがあった。
本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
(1)エチレン系共重合体を主成分とする樹脂成分(A)100質量部に対して、金属水和物(B)40〜280質量部および重質炭酸カルシウム(C)10〜100質量部を含有していることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(2)上記金属水和物がビニル基、(メタ)アクリロキシ基、およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種を含む化合物で処理されていることを特徴とする(1)に記載の難燃性樹脂組成物。
(3)上記難燃性樹脂組成物に含まれる金属水和物のうち、少なくとも1/2以上がビニル基、(メタ)アクリロキシ基、およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種を含む化合物で処理されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の難燃性樹脂組成物。
(4)上記樹脂成分(A)のエチレン系共重合体がエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体ゴム、エチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を有する不飽和炭化水素との三元系共重合体ゴムのいずれか1種以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体または光ファイバー素線または/および光ファイバー線の外側に被覆したことを特徴とする成形物品。
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体または光ファイバー素線または/および光ファイバー線の外側に被覆し、被覆体が架橋されていることを特徴とする成形物品。
(A)エチレン系共重合体を主成分とする樹脂成分
本発明の難燃性樹脂組成物には、樹脂の少なくとも1成分にエチレン系共重合体が用いられる。本発明に用いることのできるエチレン系共重合体として具体的には例えば、エチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体ゴム(アクリルゴム)、エチレン・α−オレフィン共重合体などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。難燃性および機械特性向上の点からは、この中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
また、エチレン系共重合体のMFR(メルトフローレイト、ASTM D−1238に準拠、L条件、230℃)は、強度の面、樹脂組成物の混練り加工性の面から0.2〜20g/10分、さらに好ましくは0.5〜10g/10分程度が好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレン・プロピレンゴム)、EBR(エチレン・ブタジエンゴム)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
本発明において用いられるシングルサイト触媒の存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体としては、前記成形加工性を改良したものが好ましく、このようなものとしては、Dow Chemical社から、「AFFINITY」「ENGAGE」(商品名)が、日本ポリケム社から、「カーネル」(商品名)、三井住友ポリオレフィン「エボリュー」(商品名)が上市されている。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体としては、MFRが0.5〜30g/10分のものが好ましい。
エチレン系共重合体にこれらの樹脂を添加する場合、その使用量は樹脂成分(A)100質量%中、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下が好ましい。
本発明の樹脂成分(A)に添加することができるスチレン系エラストマー(A1)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物である。スチレン系エラストマーの分子構造は、直鎖上、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
芳香族ビニル化合物含有量は、樹脂成分(A)100質量%中、60質量%以下が好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物含有量が多すぎると柔軟性が著しく低下する。
また、共役ジエン化合物に起因する脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
本発明の樹脂成分(A)に添加することのできるポリプロピレン樹脂(A2)には、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体が挙げられる。
ここでエチレン・プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜4質量%程度のものをいい、エチレン・プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜20質量%程度のものをいう。
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンとは、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンやエチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性した樹脂のことであり、変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などがある。ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸等を有機パーオキサイドの存在下に溶融、混練することにより行うことができる。マレイン酸の変性量は通常0.5〜10質量%程度である。
配合量は樹脂成分(A)100質量%中、2〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%で使用することができる。
本発明の金属水和物には、特に限定はしないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。金属水和物は少なくとも一部がビニル基、または(メタ)アクリロキシ基、またはエポキシ基を末端基に有するシランカップリング剤で処理されていることが好ましいが、表面処理されていない無処理の金属水和物や脂肪酸等他の表面処理剤で処理した金属水和物を用いたり、またシランカップリング剤で処理されたものと適宜併用することができる。
また、上記以外にも、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで表面の一部が前処理された水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに、さらにビニル基、(メタ)アクリロキシ基、エポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。
本発明において、高い強度を保持しつつ、柔軟性に優れた材料を得るためには、金属水和物中1/2以上がビニル基、(メタ)アクリロキシ基、およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種で処理されている金属水和物を使用することが好ましい。
炭酸カルシウムとしては重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムが挙げられるが、本発明に用いられるものとしては重質炭酸カルシウムが好ましい。軽質炭酸カルシウムを用いた場合は耐外傷性が劣り、成形時に押出機に多大な負荷がかかる。重質炭酸カルシウムを加えることにより、難燃性を維持しつつ耐酸性を大幅に向上させることが可能となる。同時に重質炭酸カルシウムの添加により耐水性を向上させることが可能となる。
特にこの効果はベース材料がエチレン系共重合を使用した場合において効果があり、また金属水和物として少なくとも一部がビニル基、(メタ)アクリロキシ基、およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種で処理された水酸化マグネシウムを使用した場合に効果が大きい。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、例えばMCA−0、MCA−1(いずれも商品名、三菱化学社製)や、Chemie Linz Gmbhより上市されているものがある。また脂肪酸で表面処理したメラミンシアヌレート化合物、シラン表面処理したメラミンシアヌレート化合物としては、MC610、MC640(いずれも商品名、日産化学社製)などがある。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートがある。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2 O3 ・3.5H2 O)、FRC−600(いずれも商品名、水澤化学社製)などがある。またスズ酸亜鉛(ZnSnO3 )、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6 )として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学社製)などがある。
本発明の絶縁電線及びケーブルは、導体に、上記の本発明の難燃性樹脂組成物が被覆されたものである。さらに本発明の絶縁電線及びケーブルは、被覆層を架橋体とすることにより、耐熱性の向上のみならず、難燃性も向上させることができ、その場合には、本発明の難燃性樹脂組成物を通常の電線製造用押出成形機を用いて導体周囲に押出被覆し、その後、その被覆層を架橋することにより製造することができる。
電子線架橋法で行う場合、電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。
化学架橋法の場合は樹脂組成物に、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシエステル、ケトンペルオキシドなどの有機過酸化物を架橋剤として配合し、押出成形被覆後に加熱処理により架橋をおこなう。
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径2mmφの軟銅線)上に、予め溶融混練した樹脂組成物を押出法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は3.6mm(被覆層の肉厚0.8mm)とした。表3に示した電線については樹脂組成物を導体上に被覆後、8Mradで電子線照射して架橋を行った。
得られた各絶縁電線及びシートについて以下の試験を行った。結果を表1〜3に示した。なお、表1と表2の組成の電線の難燃性はJIS C 3005に規定される60度傾斜難燃試験の結果、表3の組成の電線の評価はUL1581に規定されるVW−1試験の結果からそれぞれ評価した。
シート(幅15mm×長さ50mm)をPH2に調整した塩酸水に投入し、7日間保持した後、重量変化率を測定した。
重量変化率の値が、表1と表2の組成については±5%以内、表3の組成については±10%以内であれば耐酸性は良好である。
2)耐外傷性1
シート(幅8mm×長さ40mm)をNEMA型スクレープ摩耗試験器に取り付け、荷重7Nで5回こすった後の外観を確認した。スクレープの刃の先端角度は0.45mmφのものを使用した。
○:ほとんど白くなっていない、又は外傷がない
△:うっすらと白くなっている、又は外傷がうっすらとある
×:白くなっている、又は外傷がある
3)難燃性
表1および表2の電線についてはJIS C 3005に規定される60度傾斜難燃試験を行い、合否を確認した。
また表3の電線についてはUL1581に規定されるVW−1試験を行い、合否を確認した。
4)耐外傷性2
電線をNEMA型スクレープ摩耗試験器に取り付け、60度傾斜対応電線の場合は荷重5Nで5回こすった後の外観を、VW−1対応電線の場合は3Nで3回こすった後の外観を確認した。スクレープの刃の先端角度は0.45mmφのものを使用した。
○:ほとんど白くなっていない、又は外傷がない
△:うっすらと白くなっている、又は外傷がうっすらとある
×:白くなっている、又は外傷がある
(1) EV360:エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、酢酸ビニル(VA)成分含有量25質量%、三井デュポンポリケミカル(株)製
(2) EV180:EVA、VA成分含有量33質量%、三井デュポンポリケミカル(株)製
(3) V−527−4:EVA、VA成分含有量17質量%、三井デュポンポリケミカル(株)製
(4) OE−5625:EMA、MA成分含有量25質量%、ボレアリス製
(5) NUC6510:エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチルアクリレート(EA)成分含有量22%、日本ユニカー(株)製
(6) アドマーXE070:マレイン酸変性ポリエチレン、三井化学(株)製
(7) キスマ5P:(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤処理された水酸化マグネシウム、協和化学(株)製
(8) キスマ5A:脂肪酸処理水酸化マグネシウム、協和化学(株)製
(9) 水酸化マグネシウム1:ビニルシラン+ステアリン酸処理水酸化マグネシウム
(10) 水酸化マグネシウム2:アミノシラン処理水酸化マグネシウム
(11)イルガノックス1010:ヒンダートフェノール系酸化防止剤、チバスペシャリティケミカルズ(株)
(12)PE−WAX:滑剤、ACポリエチレンNo.6、ヘキスト合成(株)製
(13)アーモスリップCP:滑剤、オレイン酸アミド、ライオン・アクゾ(株)製
高難燃の材料においても重質炭酸カルシウムを用いることにより、耐酸性の大きな改善が見られる。
Claims (6)
- エチレン系共重合体を主成分とする樹脂成分(A)100質量部に対して、金属水和物(B)40〜280質量部および重質炭酸カルシウム(C)10〜100質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 上記金属水和物がビニル基、(メタ)アクリロキシ基、およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種を含む化合物で処理されていることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 上記難燃性樹脂組成物に含まれる金属水和物のうち、少なくとも1/2以上がビニル基、(メタ)アクリロキシ基、およびエポキシ基の群から選ばれた少なくとも1種を含む化合物で処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 上記樹脂成分(A)のエチレン系共重合体がエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体ゴム、エチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を有する不飽和炭化水素との三元系共重合体ゴムのいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体または光ファイバー素線または/および光ファイバー線の外側に被覆したことを特徴とする成形物品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体または光ファイバー素線または/および光ファイバー線の外側に被覆し、被覆体が架橋されていることを特徴とする成形物品。
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