JP2012159014A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸気カムシャフトの回転位相を可変とする可変バルブタイミング機構、及び、前記回転位相を中間ロック位相にロックするロック機構を備えたエンジンにおいて、クランク角センサに異常が発生しても、カム角センサの出力からクランクシャフトの回転角を検出して、エンジンの運転を行えるエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】ロック機構による中間ロック位相へのロックが完了したか否かを判定する。そして、クランク角センサに異常が発生したときに、可変バルブタイミング機構の制御を停止し、ロック完了が判定されているか否かを判断する(S601→S602)。ロック完了が判定されている場合には、吸気カムシャフトの回転位相が中間ロック位相であると見なし(S603)、ロック完了が判定されていない場合には、吸気カムシャフトの回転位相が初期位相(最遅角位相)になっているものと見なして(S604)、カム角センサの出力からクランクシャフトの回転角を検出する。
【選択図】図6

Description

本発明は、可変バルブタイミング機構を備えたエンジンの制御装置に関する。
従来、クランク角センサの正常時には、クランク角センサが出力するクランク回転角信号に基づきクランクシャフトの回転角を検出し、クランク角センサの異常時には、カム角センサが出力するカム回転角信号に基づきクランクシャフトの回転角を検出し、検出したクランクシャフトの回転角に基づきエンジン制御タイミングを決定するエンジンの制御装置があった(例えば、特許文献1参照)。
また、エンジンのクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させてエンジンバルブのバルブタイミングを可変とする可変バルブタイミング機構、及び、前記回転位相をその調整可能範囲の中間の中間ロック位相にロックするロック機構を備えた可変バルブタイミング制御装置があった(例えば、特許文献2参照)。
特開2006−220079号公報 特開2010−138699号公報
ところで、クランク角センサに異常が発生したときに、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相が既知の値で一定していれば、カム角センサの出力に基づいてクランクシャフトの回転角を検出することが可能である。
しかし、可変バルブタイミング機構及びロック機構を備えたエンジンの場合、可変バルブタイミング機構による回転位相の制御状態、更に、ロック機構によるロックの有無によって、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相が異なり、また、クランク角センサが異常であると、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を検出することができない。
従って、可変バルブタイミング機構及びロック機構を備えたエンジンでは、クランク角センサに異常が発生すると、カム角センサの出力に基づいてクランクシャフトの回転角を精度良く検出することができず、引いては、エンジン制御タイミングが不明となり、エンジンを運転させることができなくなってしまうという問題があった。
そこで、本願発明は、可変バルブタイミング機構及びロック機構を備えたエンジンにおいて、クランク角センサに異常が発生しても、カム角センサの出力からクランクシャフトの回転角を検出して、エンジンの運転を行えるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
そのため、本願発明は、クランク角センサに異常が生じたときに、可変バルブタイミング機構の制御を停止し、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相がロック機構によって中間ロック位相にロックされているか否かに応じて、カム角センサの出力に基づきクランクシャフトの回転角を検出するようにした。
上記発明によると、クランク角センサに異常が発生しても、そのときのカムシャフトの回転位相に基づきカム角センサの出力からクランクシャフトの回転角を検出でき、以って、エンジン制御タイミングを検出してエンジンの運転を行うことができる。
本願発明の実施形態におけるエンジンの構成図である。 本願発明の実施形態における可変バルブタイミング機構の油圧回路図である。 本願発明の実施形態におけるロック機構を示す断面図である。 本願発明の実施形態におけるクランク回転角信号POS及びカム回転角信号CAMを示すタイムチャートである。 本願発明の実施形態における回転位相のロック制御を示すフローチャートである。 本願発明の実施形態におけるクランク角センサの故障時制御の第1実施形態を示すフローチャートである。 本願発明の実施形態における最遅角位相と中間ロック位相との間の位相ずれによるエンジン制御タイミングのずれを示すタイムチャートである。 本願発明の実施形態におけるクランク角センサの故障時制御の第2実施形態を示すフローチャートである。 本願発明の実施形態におけるクランク角センサの故障時制御の第3実施形態を示すフローチャートである。
以下に本発明に係るエンジンの制御装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る制御装置を適用する車両用エンジン(内燃機関)のシステム構成を示す図である。
図1に示すエンジン101は、直列4気筒ガソリン内燃機関であるが、V型機関や水平対向機関であってもよく、また、気筒数を4気筒に限定するものではない。
エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103を設けてある。吸入空気量センサ103として、例えば、吸気の質量流量を検出する熱線式流量計などを用いることができる。
吸気バルブ105は、各気筒の燃焼室104の吸気口を開閉し、吸気バルブ105の上流側の吸気管102には、気筒毎に燃料噴射弁106を備えている。尚、エンジン101は、燃料噴射弁106が燃焼室104内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式内燃機関であってもよい。
燃料噴射弁106から噴射された燃料は、吸気バルブ105を介して燃焼室104内に空気と共に吸引され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、クランクシャフト109を回転駆動する。
また、排気バルブ110は、燃焼室104の排気口を開閉し、排気バルブ110が開くことで排ガスが排気管111に排出される。排気管111には、三元触媒等を備えた触媒コンバータ112が設置され、触媒コンバータ112によって排気を浄化する。
吸気バルブ105及び排気バルブ110(エンジンバルブ)は、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト115及び排気カムシャフト211の回転に伴って開動作する。
排気バルブ110は、一定のバルブタイミングで開動作するが、吸気バルブ105のバルブタイミングは、可変バルブタイミング機構114によって可変とされる。
可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることで、吸気バルブ105のバルブ作動角の位相(開時期IVO及び閉時期IVC)を連続的に進角方向及び遅角方向に変化させる機構である。
また、点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。点火モジュール116は、点火コイル及び点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを備えている。
エンジン制御装置201は、コンピュータを備え、各種のセンサやスイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従って演算処理を行うことで、燃料噴射弁106、可変バルブタイミング機構114、点火モジュール116などの各種デバイスの操作量を演算して出力する装置であり、本願発明に係る制御装置としての制御機能を、後述するように有している。
また、エンジン制御装置201は、吸入空気量センサ103の出力信号を入力する他、クランクシャフト109の回転角信号POSを出力するクランク角センサ203、アクセルペダル207の踏込み量(アクセル開度ACC)を検出するアクセル開度センサ206、吸気カムシャフト115の回転角信号CAMを出力するカム角センサ204、エンジン101の冷却水の温度TWを検出する水温センサ208、触媒コンバータ112上流側の排気管111に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比AFを検出する空燃比センサ209などからの信号を入力し、更に、エンジン101の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号を入力する。
図2は、可変バルブタイミング機構114の構造を示す。
可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相を、油圧を用いて変化させる機構であり、クランクシャフト109によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット(タイミングスプロケット)51と、吸気カムシャフト115の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54とを備え、更に、カムスプロケット51と回転部材53との回転位相(換言すれば、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相)を、回転位相の調整可能範囲の中間に位置する中間ロック位相で機械的にロックするロック機構60を設けてある。
カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の開口を閉塞するカバー(図示省略)とで構成される。
ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。隔壁部63は、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる。
回転部材53は、吸気カムシャフト115の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、進角側油圧室82と遅角側油圧室83とを形成する。
油圧回路54は、進角側油圧室82に対する作動油の給排を行うための第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対する作動油の給排を行うための第2油圧通路92と、油圧通路91,92を介した作動油の給排を制御する電磁式の油圧制御弁(スプール弁)93と、油圧制御弁93にオイルパン94内の作動油を圧送するエンジン駆動のオイルポンプ95とを有する。
尚、油圧制御弁93のオイル入口ポートと、オイルポンプ95との間には、オイルの逆流を防止する逆止弁96を設けてある。
第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dそれぞれに接続される。
エンジン制御装置201は、油圧制御弁93を操作して、進角側油圧室82及び遅角側油圧室83の油圧を制御することで、吸気カムシャフト115の回転位相を制御する。即ち、進角側油圧室82に作動油を供給し、遅角側油圧室83から作動油を排出することで、回転位相を進角方向に変化させ、進角側油圧室82から作動油を排出し、遅角側油圧室83に作動油を供給することで、回転位相を遅角方向に変化させることができ、油圧制御弁93の操作量を変更することで、最遅角位相から最進角位相までの間の任意の回転位相に、吸気バルブ105のバルブタイミングを変化させることができる。
ここで、隔壁部63間の凹部内で、第1〜第4ベーン78a〜78dが回転できる角度範囲が、回転位相(バルブタイミング)の調整可能範囲であり、図2の位置が最遅角位相で、第1〜第4ベーン78a〜78dが図2の位置から図2における時計回りに回転して隔壁部63に突き当たった位置が最進角位相である。
エンジン制御装置201は、クランク角センサ203の出力信号から検出したクランクシャフト109の基準角度位置と、カム角センサ204の出力信号から検出した吸気カムシャフト115の基準角度位置との間の位相差角度から、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の実際の回転位相を検出する。
そして、エンジン制御装置201は、エンジン運転条件(例えば、エンジン負荷及びエンジン回転速度)に基づいて設定した目標回転位相に実際の回転位相を近づけるように、油圧制御弁93の電磁アクチュエータへの通電を制御するデューティ比(操作量)を制御する。
油圧制御弁93の制御を停止した状態(油圧制御弁93の電磁アクチュエータへの通電を停止した状態)では、吸気カムシャフト115の回転位相が、調整可能範囲の一方端である最遅角位相(初期位相)に戻るように、換言すれば、進角側油圧室82から作動油を排出し、遅角側油圧室83に作動油を供給するように、油圧制御弁93のポート切替え特性を設定してある。
また、吸気カムシャフト115の回転位相を可変する可変バルブタイミング機構114においては、動弁反力が主に回転位相の遅角方向に作用するため、進角側油圧室82及び遅角側油圧室83の油圧低下状態でエンジン101(吸気カムシャフト115)が回転すると、吸気カムシャフト115の回転位相は遅角方向に変化し、最終的には初期位相である最遅角位相にまで戻る。
次に、可変バルブタイミング機構114に設けたロック機構60を説明する。
ロック機構60は、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相を、その調整可能範囲(最遅角位相から最進角位相までの範囲)の中間に位置する中間ロック位相に機械的にロックする機構であり、中間ロック位相として、エンジン101の始動時に適した回転位相を設定してある。
エンジン101の始動時であって、進角側油圧室82及び遅角側油圧室83の油圧が抜けていて、しかも、オイルポンプ95による吐出量が少なく、進角側油圧室82及び遅角側油圧室83の油圧を上昇させることができない状態では、クランキングによって発生する動弁反力が吸気カムシャフト115に作用すると、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相、引いては、吸気バルブ105のバルブタイミングが大きく変動してしまい、始動性が悪化する。
そこで、エンジン101の始動時(クランキング時)に、吸気カムシャフト115の回転位相(吸気バルブ105のバルブタイミング)が始動に適した位相に保持されるように、ロック機構60によって回転位相を中間ロック位相にロックし、係るロック状態でエンジン101の始動(クランキング)が行われるようにする。
ロック機構60は、図3に示すように、ベーン78dに対して吸気カムシャフト115の軸方向に沿って形成した摺動用孔85と、摺動用孔85内に摺動自在に設けたロックピン84と、カムスプロケット51の内端面に形成された係止穴86と、ロックピン84を係止穴86(カムスプロケット51)に向けて付勢する付勢手段としてのコイルスプリング87とを備える。
そして、ベーン78d(回転部材53)のカムスプロケット51に対する相対角度が、中間ロック位相に相当する角度になったときに、摺動用孔85内と係止穴86とが同一軸上に並んで連続するように形成されている。
ロックピン84は、外端側に弾装されたコイルスプリング87のばね力で係止穴86に向けて付勢されており、回転位相が中間ロック位相になって摺動用孔85内と係止穴86とが同一軸上に並ぶと、ロックピン84は、コイルスプリング87のばね力で係止穴86に挿入され、ベーン78d(回転部材53)のカムスプロケット51に対する相対角度が固定される。
摺動用孔85の後端部には拡径部85aが形成され、ロックピン84の外端側にフランジ部84aが形成されており、フランジ部84aが拡径部85aに嵌挿されることで、摺動用孔85の内周とロックピン84の外周とで囲まれる環状の圧力室88が形成され、圧力室88に対する作動油の給排は、ロック用油圧通路98を介し、ロック用の電磁式油圧制御弁97によって制御される。
ここで、圧力室88の油圧は、コイルスプリング87の付勢力に抗してロックピン84を係止穴86から抜く方向の力としてロックピン84に作用する。従って、ロック状態で圧力室88に油圧を供給すると、コイルスプリング87の付勢力に抗してロックピン84が係止穴86から抜けて、図3に示すようなロック解除状態になり、その後、摺動用孔85内と係止穴86とが同一軸上に並んでもロックピン84が係止穴86に挿入されず、中間ロック位相を通過して回転位相を変化させることができる。
一方、圧力室88の油圧を低下させれば、コイルスプリング87のばね力によって、ロックピン84は、係止穴86が設けられるカムスプロケット51に向けて付勢され、この状態で、摺動用孔85内と係止穴86とが同一軸上に並ぶと、ロックピン84は、コイルスプリング87のばね力で係止穴86に挿入され、回転位相が中間ロック位相に機械的にロックされる。
尚、ロック機構60の構造を上記のものに限定するものではない。また、1つの油圧制御弁によって、ベーン78dで隔成される各油圧室への作動油の給排、及び、ロック機構60への作動油の給排を制御することができる。
図4は、クランク角センサ203が出力するクランク回転角信号(単位クランク角信号)POS、及び、カム角センサ204が出力するカム回転角信号(カム位相信号)CAMの波形を示す。
クランク角センサ203は、クランクシャフト109に軸支したシグナルプレートに設けた被検出部を検出することで、単位クランク角(本実施形態では10deg)毎にパルス信号であるクランク回転角信号POSを出力するセンサであるが、図4に示すように、一部でパルス信号が欠落するように設定されている。
具体的には、クランクシャフト109の1回転当たり、クランク角180deg間隔の2箇所で、パルス信号が2個連続して欠落し、パルス周期がクランク角30degとなる部分を設けてあり、これにより、クランク回転角信号POSは、16パルス連続して出力した後、2パルスだけ欠落する期間があり、その後、再度16パルス連続して出力する出力パターンを繰り返す。
従って、2パルスだけ欠落した後の最初のクランク回転角信号POSから次の欠落期間後の最初のクランク回転角信号POSまでは、クランク角180degになり、このクランク角180degは、本実施形態の4気筒エンジン101における気筒間の行程位相差(点火間隔)に相当する。
また、本実施形態では、クランク回転角信号POSが、各気筒の上死点前60deg(BTDC60deg)及び上死点前70deg(BTDC70deg)の2箇所で欠落するように設定してあり、2パルスだけ欠落した後の最初のクランク回転角信号POSは、各気筒の上死点前50deg(BTDC50deg)のクランク回転角であることを示す。従って、クランク回転角信号POSの欠落箇所を検出することで、欠落箇所を基準角度位置としてクランクシャフト109の回転角、引いては、ピストン位置を検出できるように設定されている。
尚、クランク回転角信号POSの欠落箇所であるか否かは、クランク回転角信号POSの周期変化に基づいて判断できる。
但し、クランク角センサ203が、単位クランク角毎に欠落することなく単位クランク角信号POS(パルス信号)を出力するセンサと、クランク角180deg間隔の2箇所(例えば、各気筒のBTDC50deg)で、基準クランク角信号REF(パルス信号)を出力するセンサとを備えることができる。
一方、カム角センサ204は、吸気カムシャフト115に軸支したシグナルプレートに設けた被検出部を検出することで、カム角90deg(クランク角180deg)毎に、気筒ナンバーに対応する数のカム回転角信号CAM(カムパルス信号)を出力するセンサである。但し、可変バルブタイミング機構114によって、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相が可変とされるので、クランク回転角信号POSに対するカム回転角信号CAMの位相は、可変バルブタイミング機構114の制御状態で変化する。
本実施形態の4気筒エンジン101における点火は、第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順に行われるため、係る点火順に対応させて、カム回転角信号CAM(パルス信号)は、カム角90deg(クランク角180)毎に、1パルス、3パルス、4パルス、2パルスだけ出力されるようになっている。尚、複数連続して出力されるカム回転角信号CAMの間隔は、クランク角で30degに設定してある。
従って、エンジン制御装置201は、カム回転角信号CAMの連続発生数を計数することで、例えばどの気筒が次に圧縮上死点になる気筒であるかを判断する一方、前述のように、クランク回転角信号POSの欠落箇所(又は基準クランク角信号REF)を基準とするクランク回転角信号POSの発生数からピストン位置(クランク回転角)を検出する。
そして、エンジン制御装置201は、各気筒における点火タイミングや燃料噴射タイミングなどのエンジン制御タイミングを、各気筒の行程及びピストン位置(クランク回転角)に基づき検出し、点火モジュール116や燃料噴射弁106などへの操作信号を出力する。
前記エンジン制御タイミングとしての点火制御タイミングは、点火コイルへの通電を開始させるクランク回転角と、点火コイルへの通電を遮断して放電火花を発生させるクランク回転角とを含み、係る点火コイルへの通電を制御するクランク回転角になったか否かを、クランク回転角信号POSの歯抜け箇所を基準とするクランク回転角信号POSの計数値に基づき判断し、点火コイルへの通電を制御する。
一方、燃料噴射タイミングは、燃料噴射弁106に対して噴射パルス信号を出力して噴射を開始させるタイミングであり、クランク回転角信号POSの歯抜け箇所を基準とするクランク回転角信号POSの計数値に基づいて、噴射開始タイミングであるクランク回転角になったか否かを判断して、噴射パルス信号の出力を制御する。
また、エンジン制御装置201は、クランク回転角信号POSに対するカム回転角信号CAMの位相を検出することで、可変バルブタイミング機構114によって可変とされる回転位相を検出する。
具体的には、エンジン制御装置201は、クランク回転角信号POSに基づき検出した基準クランク角位置から、カム角90deg毎に出力されるカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)までのクランク角を検出することで、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相(詳細には、最遅角位相からの進角角度)を検出する。
そして、エンジン制御装置201は、吸気カムシャフト115の回転位相の検出値(進角角度)が、運転条件(例えば、エンジン負荷及びエンジン回転速度)に応じて設定した目標回転位相(目標進角角度)に近づくように、油圧制御弁93の電磁アクチュエータへの通電を制御するデューティ比(操作量)を制御する。
また、上記の回転位相の制御中に、回転位相を中間ロック位相にロックする要求が発生すると、ロックピン84を係止穴86に挿入して、実際の回転位相を中間ロック位相に機械的にロックするロック制御を実行する。
ここで、エンジン制御装置201によるロック制御(ロック機構60の制御)を、図5のフローチャートに従って説明する。
ステップS501では、ロック機構60によって中間ロック位相にロックする要求があるか否かを判断し、ロック要求があれば、ステップS502へ進む。例えば、エンジン101の停止指令が発生し、次のエンジン始動に備えて中間ロック位相にロックする場合にロック要求が出力され、ステップS502に進むようになる。
ステップS502では、油圧制御弁97を制御して、圧力室88の油圧をドレンさせ、ロック動作が可能な状態とする。
次のステップS503では、吸気カムシャフト115の回転位相の目標を、ロック機構60がロックする中間ロック位相を通り過ぎるような目標に設定し、当該目標に基づき油圧制御弁93を制御する。
前述のように、ステップS502において圧力室88の油圧をドレンさせてあり、ロックピン84は、コイルスプリング87のばね力によって、係止穴86が設けられるカムスプロケット51に向けて付勢されるから、中間ロック位相を通り過ぎるように回転位相を変化させれば、その途中で中間ロック位相になったときに、ロックピン84がコイルスプリング87のばね力で係止穴86に挿入され、回転位相が中間ロック位相に機械的にロックされることになる。
そこで、ステップS504では、実際の回転位相が中間ロック位相付近で動かなくなっているか否かを、前述のように、クランク回転角信号POSに対するカム回転角信号CAMの位相の検出結果に基づき判断する。
そして、実際の回転位相が中間ロック位相付近で動かなくなっていれば、ステップS505へ進み、中間ロック位相になっていない場合、即ち、中間ロック位相を通り過ぎてしまった場合には、ステップS503に戻ることで、ロック機構60による中間ロック位相を通り過ぎるように回転位相を変化させる制御を繰り返す。
回転位相が中間ロック位相付近で動かなくなっていると判断して、ステップS505へ進むと、最終的にロック完了と判断して良いか否かを確認するために、油圧制御弁93の制御デューティを、回転位相を中間ロック位相から変化させる方向に更に変化させ、中間ロック位相から脱するトルクを発生させる。
そして、次のステップS506では、実際の回転位相が、中間ロック位相を保持しているか否かを判断し、回転位相が中間ロック位相から変化しなかった場合には、ステップS507へ進み、ロック機構60によるロック完了を判定し、ロック完了を示すフラグの設定を行う。
一方、一旦中間ロック位相付近で動かなくなったものの、更に、制御デューティを変化させた結果、回転位相が中間ロック位相からずれてしまった場合には、ロックが不完全であったものと推定し、ステップS503へ戻るようにする。
尚、ステップS503における処理を設定回数だけ繰り返しても、ロック完了の判定に至らなかった場合には、ロック機構60の異常を判定し、ロック制御を停止させることができる。また、ロック完了を示すフラグは、油圧制御弁97によって圧力室88に油圧を供給したときに、リセットする。
ところで、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相の検出には、クランク角センサ203及びカム角センサ204を用いるため、クランク角センサ203が故障すると実際の回転位相が不明となる。
このため、エンジン制御装置201は、クランク角センサ203の故障時には、可変バルブタイミング機構114の制御(油圧制御弁93の電磁アクチュエータへの通電)を停止する。可変バルブタイミング機構114の制御を停止すると、ロック機構60によるロック状態でなければ、回転位相は、最遅角位相である初期位相(デフォルト位置)に向けて変化し、最遅角位相(調整可能範囲の一方端)を保持することになる。
尚、クランク角センサ203の異常の有無は、例えば、カム回転角信号CAMが発生している状態、換言すれば、カム回転角信号CAMの出力ラインにおける信号レベルが、ハイレベルとローレベルとの間での切り替わっている状態で、クランク回転角信号POSが発生しない場合(ハイレベル又はローレベルに張り付いている場合)に、クランク角センサ203に異常が発生していると判断することができる。
一方、点火タイミングや燃料噴射タイミングなどのエンジン制御タイミング(クランク回転角)の検出にもクランク角センサ203を用いるが、クランク角センサ203が故障しても、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相が既知であれば、カム角センサ204のカム回転角信号CAMからクランクシャフト109の回転角を検出することが可能である。
即ち、クランク角センサ203が故障した場合には、カム回転角信号CAMに基づき、点火コイルへの通電を制御するクランク回転角や、燃料噴射を開始させるクランク回転角を検出し、点火コイルへの通電制御や燃料噴射弁106に対する噴射パルス信号の出力制御を行う。
例えば、点火制御タイミングとして、点火コイルへの通電を開始させるクランク回転角と、点火コイルへの通電を遮断して放電火花を発生させるクランク回転角とを設定する場合、図7に示すように、カム角90deg毎のカム回転角信号CAMの立下りを時間計測の基準点とし、この基準点から点火コイルへの通電を開始させるクランク回転角までの角度を時間に換算し、当該時間が経過した時点で点火コイルへの通電を開始させる。また、前記基準点から点火コイルへの通電を遮断させるクランク回転角までの角度を時間に換算し、当該時間が経過した時点で点火コイルへの通電を遮断させ、火花点火を行わせる。
尚、エンジン制御タイミングは、点火制御タイミングや燃料噴射タイミングに限定されず、クランク回転角で制御タイミングが設定される公知の種々の制御が含まれる。
但し、本実施形態のエンジン101は、ロック機構60を備え、ロック機構60によって中間ロック位相にロックされているか否かによって、吸気カムシャフト115の回転位相が異なるので、エンジン制御装置201は、クランク角センサ203が故障した場合に、以下のようにして、カム角センサ204のカム回転角信号CAMに基づいてクランクシャフト109の回転角を検出する。
尚、エンジン制御装置201は、クランク角センサ203の異常を検知したことに基づき、可変バルブタイミング機構114の制御を停止した時点から、一時的に点火及び燃料噴射の制御を停止し、その後、カム角センサ204のカム回転角信号CAMに基づいてクランクシャフト109の回転角を検出して点火及び燃料噴射を制御する故障時制御を起動させる。
図6のフローチャートは、故障時制御の第1実施形態であり、まず、ステップS601では、クランク角センサ203の異常を判定しているか否かを判断し、異常発生時であれば、ステップS602へ進む。
クランク角センサ203の異常診断は、具体的には、カム角センサ204からカム回転角信号CAMが出力されているのに、クランク角センサ203が、クランク回転角信号POSを出力しない場合に、クランク角センサ203が異常であると判定する。
但し、クランク角センサ203における異常の有無を判定する方法を、上記のものに限定するものではなく、例えば、クランク角センサ203の信号出力ラインの断線やショートを検出することができる。
クランク角センサ203の異常には、クランク角センサ203自体の故障の他、クランク角センサ203の信号出力ラインの異常や、エンジン制御装置201におけるクランク回転角信号POSの入力回路の異常などが含まれる。
また、クランク角センサ203の異常には、クランク回転角信号POSが出力されなくなる異常(ハイレベル又はローレベルに張り付く異常)の他、クランク回転角信号POSが本来出力される位置で抜けを生じるような異常も含まれ、係る異常の有無は、クランク回転角信号POSの発生周期などから判定できる。
ステップS602では、ロック完了フラグを判定することで、ロック機構60による中間ロック位相へのロックが行われているか否かを判断する。
ロック完了フラグがオン状態であって中間ロック位相にロックされていると判断した場合には、ステップS603へ進み、カム角センサ204のカム回転角信号CAMの出力基準位置を、中間ロック位相に対応して予め設定されている上死点前70deg(BTDC70deg)に設定し、この出力基準位置=BTDC70degに基づきカム回転角信号CAMからクランク回転角を検出するようにする。
本実施形態では、吸気カムシャフト115の回転位相がロック機構60によって中間ロック位相にロックされている場合、カム角90deg毎に出力されるカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)の位置が、各気筒の上死点前70degの位置に対応するように設定してある。
従って、ロック機構60によるロック状態であれば、カム角90deg毎のカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)が出力された位置を、上死点前70degのクランク回転角として検出する。
一方、中間ロック位相にロックされていない場合は、吸気カムシャフト115の回転位相が初期位相である最遅角位相になっているものと推定し、ステップS604へ進む。
ステップS604では、カム角センサ204のカム回転角信号CAMの出力基準位置を、初期位相(最遅角位相)に対応して予め設定されている上死点前50deg(BTDC50deg)に設定し、この出力基準位置=BTDC50degに基づきカム回転角信号CAMからクランク回転角を検出するようにする。
本実施形態では、吸気カムシャフト115の回転位相が最遅角位相である場合、カム角90deg毎に出力されるカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)の位置が、各気筒の上死点前50degの位置に対応するように設定してある。
従って、ロック機構60による非ロック状態であって、吸気カムシャフト115の回転位相が初期状態の最遅角位相になっていると推定される場合には、カム角90deg毎のカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)が出力された位置を、上死点前50degの位置として検出する。
上記のようにして、ロック機構60によるロック状態であるか否かによって、カム回転角信号CAMの出力基準位置を、予め記憶した2つのクランク角位置のいずれかに設定すれば、カム角90deg毎のカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)が出力されたときにそのときのクランク回転角を検知でき、その後に連続して出力されるカム回転角信号CAMは、各気筒の行程を示すことになる。
更に、カム角90deg毎に出力されるカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)の周期はエンジン回転速度を示し、このエンジン回転速度に基づきクランク角度を時間に変換できる。
従って、エンジン制御タイミングである点火タイミングや燃料噴射タイミングに相当するクランク角位置(クランクシャフト109の回転角)は、カム角90deg毎に出力されるカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)を起点とした時間計測で検出することができ、クランク角センサ203が故障しても、エンジン制御タイミングの検出精度は低下するものの、点火や燃料噴射の制御を充分に行え、エンジン101の運転、換言すれば、車両の走行を継続させることが可能である。
図7は、吸気カムシャフト115の回転位相が最遅角位相である場合と、中間ロック位相にロックしてある場合との双方で、カム角90deg毎に出力されるカム回転角信号CAMから同じ時間で点火コイルへの通電を開始し、通電を遮断する例を示す。
この図7に示すように、吸気カムシャフト115の回転位相が最遅角位相である場合と、中間ロック位相にロックしてある場合とでは、カム回転角信号CAMの発生タイミングにずれが生じる。
図7に示した例では、双方共に、3パルス連続するカム回転角信号CAMの先頭パルスの立下りを起点に、点火コイルへの通電を開始するまでの時間、及び、通電を遮断して点火火花を発生させるまでの時間を計測しているが、最遅角位相と中間ロック位相とのずれ分だけ、点火制御タイミングがずれ、中間ロック位相にロックされている場合には、最遅角位相である場合に比べてより進角した位置で点火してしまう。
従って、例えば一律に吸気カムシャフト115の回転位相が最遅角位相であるとして、カム回転角信号CAMからクランク回転角を検出し、その結果に基づいて点火制御タイミングや燃料噴射タイミングを決定すると、実際には中間ロック位相にロックされている場合、点火制御タイミングや燃料噴射タイミングが目標からずれ、失火などを生じさせることになってしまう。
これに対し、図6のフローチャートに示すように、ロック機構60によって中間ロック位相にロックされているか否かに応じて、カム角センサ204のカム回転角信号CAMの出力基準位置を切り替えて設定すれば、中間ロック位相にロックされている場合と、中間ロック位相にロックされておらず初期位相(最遅角位相)まで戻っている場合との双方で、カム回転角信号CAMに基づきクランク回転角を充分な精度で検出でき、点火や燃料噴射を適切なタイミングで行わせることができる。
従って、エンジン101の運転中にクランク角センサ203が故障した場合に、故障発生時にロックされていたか否かに関わらずに、エンジン101の運転を継続することが可能であり、また、エンジン101始動時にクランク角センサ203の故障を検出した場合には、エンジン停止時に中間ロック位相にロックしていたか否かに関わらずに、エンジンを始動させることができる。
図8のフローチャートは、故障時制御の第2実施形態を示す。
まず、ステップS701では、クランク角センサ203の異常を判定しているか否かを判断し、異常発生時であれば、ステップS702へ進む。
ステップS702では、ロック完了フラグを判定することで、ロック機構60による中間ロック位相へのロックが行われているか否かを判断する。
ロック完了フラグがオフで中間ロック位相にロックされていない場合は、吸気カムシャフト115の回転位相が初期位相である最遅角位相になっているものと推定し、ステップS706へ進む。
ステップS706では、カム角センサ204のカム回転角信号CAMの出力基準位置を、最遅角位相(初期位相)に対応して予め設定されている上死点前50deg(BTDC50deg)に設定し、カム角90deg毎のカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)の出力位置が、BTDC50degであるものとしてクランク回転角を検出するようにする。
一方、ロック完了フラグがオンで中間ロック位相にロックされている場合には、ステップS703へ進み、ロック機構60によるロックを解除する制御、即ち、油圧制御弁97を制御して圧力室88に油圧を供給する制御を実施する。
そして、ステップS704では、実際に中間ロック位相へのロックが解除され、更に、吸気カムシャフト115の回転位相が、中間ロック位相から初期位相である最遅角位相にまで変化するのに充分な時間PTが経過したか否かを判断する。
ロック解除判定時から時間PTが経過する前であれば、吸気カムシャフト115の回転位相は、中間ロック位相から最遅角位相(初期位相)にまで戻る過渡状態であり、吸気カムシャフト115の回転位相を特定できず、カム回転角信号CAMからクランク回転角を精度良く検出できないので、ステップS705へ進み、燃料噴射及び点火の制御を禁止する。
一方、ステップS704で、ロック解除判定時から時間PTが経過したと判断した場合には、吸気カムシャフト115の回転位相は、初期位相である最遅角位相になっているものと推定できるので、ステップS706へ進んで、カム角センサ204のカム回転角信号CAMの出力基準位置を、最遅角位相(初期位相)に対応して予め設定されている上死点前50deg(BTDC50deg)に設定し、カム角90deg毎のカム回転角信号CAM(複数パルスが連続して出力される場合の先頭パルス)の出力位置が、BTDC50degであるものとしてクランク回転角を検出するようにする。
このように、図8のフローチャートに示す故障時制御においては、クランク角センサ203に異常が発生したことを検出した時点で、中間ロック位相にロックしていれば、係るロックを強制的に解除することで、クランク角センサ203の異常状態での吸気カムシャフト115の回転位相を一律に最遅角位相(初期位相)とする。そして、吸気カムシャフト115の回転位相が最遅角位相(初期位相)になっているものとして、カム回転角信号CAMからクランク回転角を検出し、点火制御タイミングや燃料噴射タイミングを検出する。
従って、ロック機構60を備えたエンジン101において、クランク角センサ203に異常が発生しても、カム角センサ204のカム回転角信号CAMに基づきクランク回転角を検出して、エンジン101を運転させることができる。
また、図8のフローチャートに示す故障時制御では、カム回転角信号CAMの出力基準位置(基準角度位置)の切り替えが不要であり、また、クランク角センサ203の異常状態での吸気カムシャフト115の回転位相を一律に最遅角位相(初期位相)とするので、故障時制御を行っている状態での吸気バルブ105のバルブタイミングが一定となり、バルブタイミングの違いに対応するために燃料噴射タイミングなどを変更する必要がなく、故障時制御を簡易に行える。
また、ロック機構60により中間ロック位相にロックされていた場合に、ロック解除の開始から待ち時間PTが経過してから、カム回転角信号CAMに基づくクランク回転角の検出を行うので、吸気カムシャフト115の回転位相が中間ロック位相から最遅角位相(初期位相)に戻る過渡状態で、カム回転角信号CAMに基づきクランク回転角が誤って検出され、これによって、誤ったタイミングで点火や燃料噴射が行われることを抑制できる。
ここで、吸気カムシャフト115の回転位相が中間ロック位相から最遅角位相(初期位相)に戻るまでの時間は、油温やエンジン回転速度などのエンジン運転条件によって変化し、油温が高いほど最遅角位相(初期位相)に戻るまでの時間が短く、エンジン回転速度が高くオイルポンプ95の吐出量が多いほど最遅角位相(初期位相)に戻るまでの時間が短くなる。
そこで、前記時間PTをエンジン101の運転条件に応じて可変に設定することができ、具体的には、可変バルブタイミング機構114の作動油の温度(若しくは作動油温度に相関するエンジン冷却水温度など)が高いほど前記時間PTをより短い時間に設定したり、エンジン回転速度が高いほど前記時間PTをより短い時間に設定したり、作動油の温度が高くかつエンジン回転速度が高い場合に前記時間PTをより短い時間に設定したりすることができる。
このように、吸気カムシャフト115の回転位相が中間ロック位相から最遅角位相(初期位相)に戻るまでの時間(換言すれば、回転位相の応答性)に相関するエンジン運転条件(油温やエンジン回転速度など)に応じて時間PTを可変に設定すれば、点火及び燃料噴射の停止期間が必要以上に長くなることを抑制しつつ、回転位相の過渡状態でカム回転角信号CAMに基づきクランク回転角を誤って検出することを抑制できる。
図9のフローチャートは、故障時制御の第3実施形態を示す。
まず、ステップS801では、クランク角センサ203の異常を判定しているか否かを判断し、異常発生時であれば、ステップS802へ進む。
ステップS802では、ロック機構60による中間ロック位相へのロックを解除する制御、即ち、油圧制御弁97を制御して圧力室88に油圧を供給する制御を実施する。
尚、ステップS802のロック解除制御は、ロック完了フラグの判定を行わずに実施される処理であり、実際には、中間ロック位相にロックされてなく、吸気カムシャフト115の回転位相が初期位相(最遅角位相)に戻っている状態で、ロック解除処理を実行する場合がある。
ロック解除制御を実施すると、次のステップS803では、実際に中間ロック位相へのロックが解除され、更に、吸気カムシャフト115の回転位相が、中間ロック位相から初期位相である最遅角位相にまで変化するのに充分な時間PTが経過したか否かを判断する。
尚、前記時間PTは、第2実施形態と同様に、エンジン運転条件(油温やエンジン回転速度など)に応じて可変に設定することができる。
時間PTが経過する前であれば、吸気カムシャフト115の回転位相は、中間ロック位相から最遅角位相(初期位相)に戻る過渡状態であり、吸気カムシャフト115の回転位相を特定できず、従って、カム回転角信号CAMからクランク回転角を精度良く検出できないので、ステップS804へ進み、燃料噴射及び点火制御を禁止する。
一方、ステップS804で時間PTが経過したと判断した場合には、吸気カムシャフト115の回転位相は、初期位相である最遅角位相になっているものと推定できるので、ステップS805へ進んで、カム角センサ204のカム回転角信号CAMの出力基準位置を、最遅角位相(初期位相)に対応して予め設定されている上死点前50deg(BTDC50deg)に設定し、この出力基準位置=BTDC50degに基づきカム回転角信号CAMからクランク回転角を検出するようにする。
上記第3実施形態によると、実際にロック機構60によって中間ロック位相にロックされているか否かを判断せずに、ロック解除制御を実施し、クランク角センサ203の故障時における吸気カムシャフト115の回転位相を一律に初期位相(最遅角位相)に設定して、カム角センサ204のカム回転角信号CAMからクランク回転角を検出する。
従って、吸気カムシャフト115の回転位相が、中間ロック位相にロックされているか否かが不明であっても、カム回転角信号CAMからクランク回転角を検出して、エンジン101を運転させることができ、中間ロック位相へのロック完了を判定する処理の実施を省略することができる。
尚、可変バルブタイミング機構が、排気カムシャフト211の回転位相を可変とすることで、排気バルブ110のバルブタイミングを変化させ、カム角センサ204を、排気カムシャフト211に設けたエンジン101においても、上記実施形態と同様にして、クランク角センサ203の故障時に排気カムシャフト211の回転角信号からクランクシャフト109の回転角を検出することができる。ここで、可変バルブタイミング機構が、排気カムシャフト211の回転位相を可変とする場合、可変バルブタイミング機構の初期位相を最進角位相とし、中間ロック位相を最進角位相よりも遅角側の中間の回転位相とすることができる。
また、可変バルブタイミング機構114と共に、バルブ作動角の中心位相を変化させることなく、エンジンバルブの最大バルブリフト量及びバルブ作動角を可変とする可変バルブリフト機構を備えることができる。
また、本実施形態のカム角センサ204は、連続して出力するパルス信号の数が、特定行程の気筒番号に対応するが、例えば、カム角センサ204が、気筒番号に対応するパルス幅のカム回転角信号を出力することができる。
また、吸気カムシャフト115の回転位相が中間ロック位相にロックされているか否かによって、吸気バルブ105のバルブタイミングが異なり、これによって充填効率が変化するので、吸気カムシャフト115の回転位相による充填効率の違いに応じて燃料噴射量を変更することができる。但し、充填効率の違いを考慮して設定した燃料噴射量を、更に、吸気ポート壁面に付着する液状燃料(壁流分)などを考慮して補正した結果、略同等の燃料噴射量となることがあり得る。
また、信号待ちなどの自動停止条件でエンジン101を自動的に停止させるアイドルストップ制御機能を備えた車両において、クランク角センサ203が故障した場合には、アイドルストップ制御を禁止したり、アイドルストップ制御の実施頻度を低下させる制限を行ったりすることが好ましい。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2記載のエンジンの制御装置において、
前記ロック機構のロック解除を開始してから判定時間が経過するまで、エンジンにおける点火及び/又は燃料噴射を禁止するエンジンの制御装置。
上記発明によると、中間ロック位相へのロックが解除され、回転位相が初期位相にまで戻るまでの過渡状態で、回転位相が初期位相であると見なし、クランクシャフトの回転角が誤検出されることを抑制できる。
(ロ)請求項(イ)記載のエンジンの制御装置において、
前記判定時間をエンジンの運転条件に応じて可変に設定するエンジンの制御装置。
上記発明によると、回転位相が中間ロック位相から初期位相まで戻るのに要する時間が、エンジンの運転条件によって変化するのに対応して、点火及び/又は燃料噴射を禁止する時間を設定できる。従って、初期位相に復帰する前に、誤検出したクランクシャフトの回転角に基づき点火や燃料噴射のタイミングが制御されることを抑制しつつ、過剰に長い期間、点火及び/又は燃料噴射を禁止してしまうことを抑制できる。
(ハ)請求項(イ)記載のエンジンの制御装置において、
前記ロック機構が油圧で動作する機構であり、前記判定時間を前記ロック機構の作動油の温度に応じて可変に設定するエンジンの制御装置。
上記発明によると、作動油の温度に応じて回転位相の応答時間が変化することに対応して、点火及び/又は燃料噴射を禁止する時間を可変に設定するので、作動油の温度ばらつきによって、回転位相が初期位相に戻る過渡状態でクランクシャフトの回転角を誤検出することを抑制しつつ、過剰に長い期間点火及び/又は燃料噴射を禁止してしまうことを抑制できる。
(ニ)請求項3記載のエンジンの制御装置において、
前記ロック機構が、ロックピンと、前記ロックピンをロック方向に向けて付勢する付勢手段と、前記ロックピンをロック解除方向に駆動する油圧の供給を制御する油圧回路とを含み、
ロック要求が発生したときに、前記油圧回路によって前記ロックピンをロック解除方向に駆動する油圧の供給を行うと共に、前記回転位相が前記中間ロック位相を通過するように前記可変バルブタイミング機構を制御し、前記中間ロック位相付近で回転位相が動かなくなったときに、前記中間ロック位相から回転位相を動かす方向に前記可変バルブタイミング機構を制御し、係る制御でも回転位相が前記中間ロック位相から動かない場合に、ロックの完了を判定するエンジンの制御装置。
上記発明によると、ロック機構によって中間ロック位相にロックされたか否かを精度良く判定でき、カム角センサの出力からクランクシャフトの回転角を精度よく検出することができる。
(ホ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置において、
前記エンジンバルブが吸気バルブであり、前記回転位相の初期位相が最遅角位相であるエンジンの制御装置。
上記発明によると、回転位相が中間ロック位相にロックされているか否か、換言すれば、中間ロック位相であるか初期位相である最遅角位相であるかに応じて、カム角センサの出力に基づいてクランクシャフトの回転角を精度良く検出できる。
60…ロック機構、101…エンジン(内燃機関)、105…吸気バルブ、106…燃料噴射弁、107…点火プラグ、109…クランクシャフト、114…可変バルブタイミング機構、115…吸気カムシャフト、115…点火モジュール、201…エンジン制御装置、203…クランク角センサ、204…カム角センサ

Claims (3)

  1. エンジンのクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させてエンジンバルブのバルブタイミングを可変とする可変バルブタイミング機構と、
    前記回転位相をその調整可能範囲の中間の中間ロック位相にロックするロック機構と、
    前記クランクシャフトの回転角信号を出力するクランク角センサと、
    前記カムシャフトの回転角信号を出力するカム角センサと、
    を備えたエンジンの制御装置であって、
    前記クランク角センサに異常が生じたときに、前記可変バルブタイミング機構の制御を停止し、前記回転位相が前記中間ロック位相にロックされているか否かに応じて、前記カム角センサの出力に基づき前記クランクシャフトの回転角を検出するエンジンの制御装置。
  2. 前記クランク角センサに異常が生じたときに、前記ロック機構による中間ロック位相へのロックを解除し、前記回転位相が、前記調整可能範囲の一方端である初期位相になっているものとして、前記カム角センサの出力に基づき前記クランクシャフトの回転角を検出する請求項1記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記ロック機構による前記中間ロック位相へのロックの完了を判定し、
    前記ロック完了判定の有無に基づき、前記カム角センサの出力に基づく前記クランクシャフトの回転角の検出における基準角度位置の切り替え、又は、前記ロック機構によるロックを解除するか否かの判断を行う請求項1又は2記載のエンジンの制御装置。
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