以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る制御装置が適用される車両用エンジンのシステム構成を示す図である。
図1に示すエンジン101は直列4気筒ガソリン内燃機関である。
但し、本願発明を適用するエンジンを、4気筒ガソリン機関に限定するものではない。
前記エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103が設けられている。
前記吸入空気量センサ103としては、例えば、質量流量を検出する熱線式流量計などが用いられる。
各気筒の燃焼室104の吸気口を開閉する吸気バルブ(エンジンバルブ)105が設けられ、該吸気バルブ105の上流側の吸気管102には、気筒毎に燃料噴射弁106が配置される。
前記燃料噴射弁106には、前記燃料噴射弁106の開弁時間に比例する燃料が噴射されるように圧力が調整された燃料が供給される。
前記燃料噴射弁106から噴射された燃料は、吸気バルブ105を介して燃焼室104内に空気と共に吸引され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、前記クランクシャフト109を回転駆動する。
また、前記燃焼室104の排気口を開閉する排気バルブ(エンジンバルブ)110が設けられ、該排気バルブ110が開くことで排ガスが排気管111に排出される。
前記排気管111には、三元触媒等を備えてなる触媒コンバータ112が介装されており、排ガス中の有害成分は、前記触媒コンバータ112によって無害成分に転換され、排出される。
前記吸気バルブ105及び排気バルブ110は、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの回転によって開動作する。
前記排気バルブ110は、一定の開弁特性(バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング)で開動作するが、前記吸気バルブ105の開弁特性(バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング)は、可変バルブリフト機構(VEL)113及び可変バルブタイミング機構(VTC)114によって可変とされる。
前記可変バルブリフト機構113は、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に変化させる機構であり、前記可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する後述の吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることで、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相を進角・遅角変化させる機構である。
また、前記点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。
前記点火モジュール116は、点火コイルと該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタとを含んで構成される。
前記燃料噴射弁106,可変バルブリフト機構113,可変バルブタイミング機構114及び点火モジュール116は、エンジン制御装置201によって制御される。
前記エンジン制御装置201は、マイクロコンピュータを含んで構成され、各種センサ・スイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従った演算処理を行うことで、前記燃料噴射弁106,可変バルブリフト機構113,可変バルブタイミング機構114及び点火モジュール116それぞれの操作量を演算して出力する。
前記燃料噴射弁106による燃料噴射の制御においては、各気筒の吸気行程に合わせて個別に燃料噴射を実行させるシーケンシャル噴射制御が行われる。
図2は、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変バルブリフト機構113の構造を示す斜視図である。
前記吸気バルブ105の上方に、前記クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト115が気筒列方向に沿って回転可能に支持されている。
前記吸気カムシャフト115には、吸気バルブ105のバルブリフタ105aに当接して吸気バルブ105を開駆動する揺動カム4が相対回転可能に外嵌されている。
前記吸気カムシャフト115と揺動カム4との間には、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に変更するための可変バルブリフト機構113が設けられている。
また、前記吸気カムシャフト115の一端部には、クランクシャフト109に対する前記吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることにより、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を連続的に変更する可変バルブタイミング機構114が配設されている。
前記可変バルブリフト機構113は、図2及び図3に示すように、吸気カムシャフト115に偏心して固定的に設けられる円形の駆動カム11と、この駆動カム11に相対回転可能に外嵌するリング状リンク12と、吸気カムシャフト115と略平行に気筒列方向へ延びる制御軸13と、この制御軸13に偏心して固定的に設けられた円形の制御カム14と、この制御カム14に相対回転可能に外嵌すると共に、一端がリング状リンク12の先端に連結されたロッカアーム15と、このロッカアーム15の他端と揺動カム4とに連結されたロッド状リンク16と、を有している。
前記制御軸13は、モータ(アクチュエータ)17によりギア列(減速機)18を介して所定の制御範囲内で回転駆動される。
上記の構成により、クランクシャフト109に連動して吸気カムシャフト115が回転すると、駆動カム11を介してリング状リンク12が略並進移動すると共に、ロッカアーム15が制御カム14の軸心周りに揺動し、ロッド状リンク16を介して揺動カム4が揺動して吸気バルブ105が開駆動される。
また、前記モータ17を駆動制御して制御軸13の角度を変化させることにより、ロッカアーム15の揺動中心となる制御カム14の軸心位置が変化して揺動カム4の姿勢が変化する。
これにより、図5の矢印301に示すように、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相SPが略一定のままで、吸気バルブ105のバルブ作動角OAがバルブリフト量VLと共に連続的に変化する。
尚、バルブ作動角が連続的に変化すると同時に、バルブ作動角の中心位相が変化するように、前記可変バルブリフト機構113を構成することも可能である。
図4は、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を可変とする前記可変バルブタイミング機構114の構造を示す。
前記可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、前記吸気カムシャフト115の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。
前記回転部材53は、吸気カムシャフト3の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の初期位置において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送するエンジン駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記エンジン制御装置201は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、ディザ信号が重畳されたデューティ制御信号(操作量)に基づいて制御する。
前記可変バルブタイミング機構114においては、電磁アクチュエータ99にデューティ比(オン時間割合)0%のオフ制御信号を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出されるようにしてある。
従って、電磁アクチュエータ99にデューティ比0%のオフ制御信号を出力すると、遅角側油圧室83の内圧が高くなる一方で、進角側油圧室82の内圧が低くなり、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ105の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に遅角変化する。
即ち、電磁アクチュエータ99への通電を遮断すると、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)は遅角変化し、最終的には、最遅角位置で停止する。
また、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%のオン制御信号を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
このため、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%のオン制御信号を出力すると、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ105の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に進角変化する。
このように、前記可変バルブタイミング機構114は、図5の矢印302に示すように、吸気バルブ105のバルブ作動角OA及びバルブリフト量VLを変えずに、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相SPを進・遅角変化させる機構であり、前記制御信号のデューティ比を変更することで、最遅角位置から最進角位置までの間の任意の位置に、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を変化させることができる。
尚、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変バルブリフト機構113、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構114の構造・形式は、上記の図2〜4に示したものに限定されない。
例えば、可変バルブタイミング機構114は、カムシャフトの回転によってエンジンバルブを開駆動する動弁系であって、カムトルクの変動に影響されてカムシャフトの位相が変化する動弁系に適用されるものであり、上記の油圧ベーン式の他、歯車を用いてクランクシャフト109に対し前記吸気カムシャフト115を相対回転させる機構や、油圧アクチュエータの他、モータや電磁ブレーキをアクチュエータとして用いる機構も、カムトルクの変動に影響されてカムシャフトの位相が変化することから、本願発明の対象に含まれる。
また、本実施形態では、可変バルブタイミング機構114と共に可変バルブリフト機構113を備えるが、可変バルブリフト機構113を備えない構成であっても良く、更には、吸気バルブ105(吸気カムシャフト)と共に、又は、吸気バルブ105(吸気カムシャフト)に代えて、排気バルブ110(排気カムシャフト)に可変バルブタイミング機構114を備えることができる。
前記エンジン制御装置201には、前記制御軸13の角度に応じたレベルの信号を出力するポテンショメータからなる角度センサ202の出力信号が入力され、角度センサ202の出力信号に基づき前記制御軸13の角度を検出する一方で、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)に応じて目標バルブ作動角(目標バルブリフト量)に対応する制御軸13の目標角度を演算し、制御軸13の実際の角度が前記目標角度に近づくように、前記モータ17への通電をフィードバック制御する。
また、前記エンジン制御装置201は、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)に基づいて吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相の目標進角量(目標位相)を演算し、クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際の進角量(位相)が前記目標進角量(目標位相)に近づくように、前記実際の進角量(位相)と目標進角量(目標位相)との偏差に基づいて、電磁アクチュエータ99に出力する制御信号のデューティ比(操作量)をフィードバック制御する。
前記クランク角センサ203は、図6に示すように、クランクシャフト109に軸支したシグナルプレート203aの周縁にクランク角10deg毎に形成される被検出部203bを、センサ素子203cで検出する構成であり、図7に示すように、各気筒の上死点を起点としてクランク角10deg毎に立ち上がるパルス信号である単位クランク角信号POSを出力する。
ここで、前記単位クランク角信号POSが、各気筒の上死点前60deg及び70degのクランク角位置で連続して抜けを生じるように、前記被検出部203bが形成されている。
換言すれば、前記単位クランク角信号POSは、エンジン101における気筒間の行程位相差(点火間隔)であるクランク角180deg毎に、連続して2パルスの歯抜けを生じるようになっている。
尚、クランク角センサ203が、歯抜けなしにクランク角10deg毎の単位クランク角信号POSを出力すると共に、行程位相差毎の基準クランク角信号REFを出力する構成とすることができる。
また、前記カム位相センサ204は、図6に示すように、吸気カムシャフト115に軸支したシグナルプレート204aの周縁にカム角15deg(クランク角30deg)毎に形成される被検出部204bを、センサ素子204cで検出する構成であり、図7に示すように、クランク角30deg毎に、吸気カムシャフト115の位相検出に用いるパルス信号であるカム位相信号CAMを出力する。
ここで、前記カム位相信号CAMが、吸気カムシャフト115の1回転当たり、1パルスだけ抜けを生じるように、前記被検出部204bを1箇所だけ欠落させてある。
そして、前記被検出部204bの欠落箇所204dを、カム位相信号CAMの周期変化に基づいて検出することで、欠落箇所204dを基点に各カム位相信号CAMを識別でき、具体的には、カム位相信号CAMが発生する毎に、欠落箇所204dから何番目のカム位相信号CAMであるかを判別するようにしてある。
更に、気筒判別センサ210が設けられており、この気筒判別センサ210は、図6に示すように、排気カムシャフト211に軸支したシグナルプレート210aの周縁に90deg間隔位置毎に相互に異なる数だけ設けられる被検出部210bをセンサ素子210cで検出する構成であり、図7に示すように、気筒間の行程位相差(点火間隔)に相当するクランク角180deg毎に、基準ピストン位置にある気筒のナンバーをパルス数で示す気筒判別信号PHASEを出力する。
尚、気筒判別信号PHASEが、そのパルス幅で気筒を示すように構成することができる。
また、本実施形態におけるエンジン101の点火順は、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順であるものとする。
前記エンジン制御装置201は、前記単位クランク角信号POSの発生周期を計測することで、単位クランク角信号POSの歯抜け部分を検出し、更に、歯抜け直後に単位クランク角信号POSの出力位置をBTDC50degの位置として識別し、単位クランク角信号POSが3パルス入力される毎にカウントアップされるカウンタCRACNT1の値を、前記BTDC50deg毎に零にクリアする。
更に、単位クランク角信号POSが3個入力される毎にカウントアップされるカウンタCRACNT2の値を、前記カウンタCRACNT1の値が4になる毎(BTDC110deg毎)にクリアさせる。
そして、前記カウンタCRACNT2がクリアされる周期の間、即ち、BTDC110degから次のBTDC110degまでの間で、前記気筒判別信号PHASEの発生数をカウントし、前記気筒判別信号PHASEの発生数に基づいて次の1周期に含まれる上死点がどの気筒の圧縮上死点であるかを判別し、該判別結果に従って気筒判別値CTYLCNTを更新する。
例えば、前記カウンタCRACNT2がクリアされる周期の間で、気筒判別信号PHASEが3パルス出力されたときには、次に圧縮上死点となる気筒は#4気筒であると判断して、前記カウンタCRACNT2がクリアされるタイミング(BTDC110degであって基準クランク角位置)において気筒判別値CTYLCNTを、#4気筒に対応する「4」に切り換える。
気筒別の燃料噴射時期や点火時期の制御においては、前記気筒判別値CTYLCNTに基づいて燃料噴射・点火を行わせる気筒を特定し、前記基準クランク角位置から要求の燃料噴射時期・点火時期までの角度を設定する。
そして、基準クランク角位置から要求の燃料噴射時期・点火時期までの角度を、単位クランク角信号POSのカウント、及び、10deg以下の角度については時間換算して検出し、燃料噴射させる気筒の燃料噴射弁131に噴射パルス信号を出力し、点火する気筒の点火コイルの通電を制御するパワートランジスタに点火制御信号を出力する。
また、前記カウンタCRACNT2がクリアされるタイミング(基準クランク角位置)から、各カム位相信号CAMまでの角度FAを、単位クランク角信号POS及び時間計測によってそれぞれ検出する。
そして、前記角度FAから実際の吸気カムシャフト115の位相(バルブタイミングの進角量)を求め、これが、目標位相に近づくように、前記可変バルブタイミング機構113をフィードバック制御する。
ここで、欠落箇所204dから何番目のカム位相信号CAMであるかが判別されるので、前記角度FAのデータが、何番目のカム位相信号CAMまでの角度であるかを判断でき、これによって、吸気カムシャフト115の位相変化によってカム位相信号CAMの出力位置がクランク角に対して変化しても、吸気カムシャフト115の位相を検出できる。
例えば、図7において、最遅角時には、基準クランク角位置REF1の直後に出力されるのは21番目のカム位相信号CAMであるのに対し、最進角時には、基準クランク角位置REF1の直後に出力されるのは22番目のカム位相信号CAMである。
従って、基準クランク角位置REFから最初のカム位相信号CAMまでの角度を計測しても、最初のカム位相信号CAMを識別しないと、位相を誤検出することになってしまう。
しかし、前述のように、位相検出の対象としたカム位相信号CAMが何番目のものであるかを判別できれば、カム位相信号CAMの出力位置が、基準クランク角位置REFを跨いで変化しても、位相を正しく検出できる。
可変バルブタイミング機構114における位相の変更幅は、180degよりも小さい角度(例えば40〜60deg程度)であるため、例えば、最遅角時における21番目のカム位相信号CAMの出力位置が基準クランク角位置の直後であれば、この最遅角時における21番目のカム位相信号CAMと直前の基準クランク角位置との間の角度を超える角度が検出された場合には、21番目のカム位相信号CAMの出力位置が基準クランク角位置REFを跨いで変化したと判断でき、これに基づいてそのときの位相を正しく検出できる。
上記構成によると、欠落箇所204dを除いて、クランク角30deg毎に吸気カムシャフト115の位相が検出されることになる。
上記では、カム位相信号CAMに欠落箇所204dを設けることで、欠落箇所204dを基点に各カム位相信号CAMを特定できるようにしたが、例えば、気筒判別センサ210と同様なセンサを吸気カムシャフト115に設け、気筒判別信号PHASEと前記カム位相信号CAMとの相関から、カム位相信号CAMを個々に特定させることができ、この場合、カム位相信号CAMを一部で欠落させる必要がなくなり、クランク角30deg毎に吸気カムシャフト115の位相を検出できることになる。
上記のカム位相信号CAM毎に位相を検出するエンジン制御装置201の機能が、本実施形態における位相検出手段に相当する。
但し、吸気カムシャフト115の位相の検出周期を、クランク角30deg毎に限定するものではなく、点火間隔(気筒間の行程位相差であり、4気筒エンジンで180deg)よりも短い周期であれば良く、また、一定間隔でなくても良い。そして、必要な検出周期に応じて、前記カム位相センサ204の被検出部204bを形成すれば良い。
前記クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際のバルブタイミングの進角量(位相)のデータは、前記エンジン制御装置201において、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いられる他、点火時期の補正制御にも用いられる。
例えば、特許第3967555号公報に開示されるように、バルブタイミングの変更によるバルブオーバーラップの減少によって、内部EGR量(残留排気量)が減少し、圧縮温度が低下する場合には、着火遅れを抑制するために点火時期を進角補正する。
更に、前記クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際のバルブタイミングの進角量(位相)のデータは、前記エンジン制御装置201において、燃料噴射量の補正制御にも用いられる。
例えば、特許第3910801号公報に開示されるように、目標バルブオーバラップ量に対して、前記バルブタイミングの進角量(位相)の検出データに基づく実際のバルブオーバラップ量が大きい場合は、燃料の過渡補正量を減量する方向に修正し、目標バルブオーバラップ量に対して実際のバルブオーバラップ量が小さい場合は、前記過渡補正量を増量する方向に修正する。
前記エンジン制御装置201には、上記吸入空気量センサ103,角度センサ202,クランク角センサ203,カム位相センサ204及び気筒判別センサ210の出力信号が入力される他、エンジン101の運転・停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号、アクセルセンサ206からのアクセルペダル207の開度信号ACC、水温センサ208からの冷却水温度信号TW、空燃比センサ209からの空燃比信号AFなどが入力される。
前記空燃比センサ209は、排気管111に設けられ、エンジン101の空燃比と密接な関係にある排気中の酸素濃度に感応して出力が変化するセンサ(酸素濃度センサ)である。
前述のように、本実施形態の場合、クランク角で30deg毎に吸気カムシャフト115の位相(吸気バルブ105のバルブタイミング)を検出できるが、このように、点火間隔(気筒間の行程位相差)よりも短い周期で位相を検出させた場合、カムトルクの変動に伴う位相の変動を検出値が拾い、図8に示すように、位相検出値に振れ(周期的な変動)が生じる。
前述のように位相検出値が振れると、例えば、吸気カムシャフト115の位相を、バルブオーバラップを増大させる方向である進角方向に変化させているときに、カムトルクの変動に影響されて位相検出値が一時的に位相検出値の遅角変化を検出することで、本来、位相を遅角させてバルブオーバラップが減少するときに要求される点火時期の進角補正が実行されてしまう。
そこで、本実施形態では、クランク角で30deg毎の吸気カムシャフト115の位相検出タイミングのうちの一部を、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出タイミングとして選択し、選択した検出タイミングでの位相検出値に基づいて点火時期・燃料噴射量の補正制御を行うようになっている。
以下では、前記位相検出タイミングの選択処理を詳細に説明する。
図9のフローチャートに示すルーチンは、エンジン制御装置201が実行する前記選択処理及び選択結果に基づく制御を示す。
尚、前記図9のフローチャートにおいて、ステップS501〜ステップS506は、前記カム位相信号CAMが入力される毎に割り込み実行されるルーチンを示し、ステップS601及びステップS602は、一定時間毎に割り込み実行されるルーチンを示す。
ステップS501では、可変バルブタイミング機構(VTC)114のフィードバック制御に用いる位相(VTC角度)の検出タイミングであるか否かを判断する。
ここで、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御用の位相検出タイミングを、カム位相信号CAMの発生毎として、カム位相信号CAMが出力される毎(クランク角30deg毎)に、最近の基準クランク角位置から今回のカム位相信号CAMまでのクランクシャフト109の回転角に基づいて位相を算出し、該算出結果を、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御用として用いることができる。
これは、可変バルブタイミング機構114の制御においては、カムトルクの変動影響による位相検出値の振れが生じても、これによって、可変バルブタイミング機構114の制御性が大きく低下することはないのに対し、位相の検出周期が長いと、位相変化の応答性が大きく低下してしまうためである。
但し、位相制御の応答性が確保される範囲内であれば、カム位相信号CAMの発生毎の位相検出タイミングを間引くことが可能であり、具体的には、カム位相信号CAMの何回n(n≧2)かに1回の割合で、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御用としての位相を検出させることができる。
ここで、前記回数nを2とすれば、クランク角で60deg毎の位相検出値が、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御(VTC制御)に用いられることになり、回数nを3とすれば、クランク角で90deg毎の位相検出値がVTC制御に用いられることになり、回数nを6とすれば、クランク角で180deg毎の位相検出値がVTC制御に用いられることになる。
但し、可変バルブタイミング機構114の制御においては、前述のように、位相検出値の更新周期を短くし、位相のフィードバック制御の応答性を高くすることが望まれるので、前記回数nとしては、1,2,3のいずれかの値とすることが好ましい。
また、エンジン回転速度が低いほど、前記回数nをより小さい値にして(間引く回数を減らして)、制御に用いる位相検出値を更新させる角度周期を小さくし、低回転域において位相検出値が更新される時間周期が長くなることを抑制することができる。
更に、後述の位相検出タイミングの選択学習に基づいて、どの角度位置(カム位相信号CAM)での検出結果を、VTC制御用として用いるかを決定させることができるが、この点については後で詳細に説明する。
ステップS501で、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いる位相の検出タイミングであると判断されると、ステップS502へ進んで、最近の基準クランク角位置から今回のカム位相信号CAMまでのクランクシャフト109の回転角に基づいて位相を算出し、これをVTC制御用としての位相検出値に設定する。
一定時間毎に割り込み実行されるステップS601では、最近にステップS502で算出されたVTC制御用の位相検出値を読み込み、読み込んだ位相検出値とそのときの目標位相との比較に基づいて可変バルブタイミング114の操作量(電磁アクチュエータ99に対する通電を制御するデューティ比)を演算して出力し、実際の位相を目標に近づけるフィードバック制御を実行する。
一方、ステップS503では、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相検出タイミングの学習条件が成立しているか否かを判断する。
具体的には、可変バルブタイミング114の制御目標が一定で、かつ、エンジン回転速度NEが一定である場合に、学習条件が成立していると判断する。
従って、学習途中に、可変バルブタイミング114の制御目標が変化したり、エンジン回転速度NEが変化した場合には、学習を中止するものとする。
尚、制御目標やエンジン回転速度NEが一定とは、制御目標やエンジン回転速度NEの変動が、学習精度の低下を招かない許容レベル内であることを示すものとする。
更には、エンジン回転速度NEが所定速度領域内であることや、エンジン温度(冷却水温度)が所定温度領域内であることや、1トリップに1回の学習条件を満たしていることなどを学習条件とすることができる。
前記トリップとは、イグニッションスイッチをオンしてエンジン101を始動してから、イグニッションスイッチをオフしてエンジン101を停止させるまでの間を示し、1トリップに1回の学習条件とは、イグニッションスイッチをオンしてエンジン101を始動した後に、1回学習を行うと、その後エンジン101が停止されるまでの間、学習を禁止することを示す。
学習条件が成立している場合には、ステップS504へ進んで、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相検出タイミングの学習を実行する。
前記ステップS504における学習処理の詳細は、ステップS701〜ステップS704に示してある。
まず、ステップS701では、学習の開始条件が成立しているか否かを判断する。
具体的には、前記学習条件の成立状態が所定時間以上継続している場合に、学習開始条件が成立していると判断する。
前記所定時間は、可変バルブタイミング114の制御目標の変化に対して、実際の位相が収束するのに要する時間とする。
学習開始条件が成立していると、ステップS702へ進み、位相検出値の平均値を演算させる。
前記平均値の演算においては、まず、カム位相信号CAMの発生毎(クランク角30deg毎)に位相を算出させ、該位相検出値を順次記憶させる。
そして、吸気カムシャフト115の1回転分の位相検出値の平均値、即ち、最新の検出値から吸気カムシャフト115の1回転前の検出値までの検出値の平均値を、全ての検出値の総和をサンプル数で除算して求める。
尚、1回転分の位相検出値の平均値を、異なるサンプルについて複数求め、これら複数の平均値の平均を求めることができる。
ステップS703で平均値演算が終了したことを判断すると、ステップS704へ進み、平均値を含む所定範囲内の位相を検出した吸気カムシャフト115の角度位置を、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相検出タイミングとして抽出して記憶する学習を行う。
本実施形態のカム位相信号CAMは、欠落箇所204dを基準に個々に識別することが可能であるから、平均値を含む所定範囲内の位相を検出したときのカム位相信号CAMを、制御に用いる位相の検出タイミングとして学習し、カム位相信号CAMが発生すると、そのカム位相信号CAMが位相検出を行う信号として記憶された信号であるか否かを判断し、位相検出を行う信号として学習されている場合に、位相を算出させるようにする。
又は、カム位相信号CAMが発生する毎に位相を算出させ、そのときのカム位相信号CAMが位相検出を行う信号として記憶された信号である場合、算出した位相に基づいて制御用の位相検出値を更新させる。
前記位相検出タイミングの抽出においては、吸気カムシャフト115の1回転分の位相検出値の中から、前記平均値+上限閾値と、前記平均値−下限閾値とで挟まれる領域内に含まれる位相を求め、前記領域内に含まれる位相を検出した吸気カムシャフト115の角度位置(カム位相信号CAM)を求めて、これを、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出タイミングとして記憶する。
前記上限閾値と下限閾値とは同一の値であっても良いし、異なる値であっても良い。
ここで、前記上限閾値及び下限閾値の値を小さくすれば、それだけ1回転当たりの平均値に近い位相を検出する角度位置に限定して、制御に用いる位相検出を行わせることになり、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減して、位相検出値に基づく制御を行わせることができる。
逆に、前記上限閾値及び下限閾値の値を大きくすれば、それだけ制御に用いる位相検出を行わせる回数(吸気カムシャフト115の1回転当たりの位相検出回数)が増え、位相検出値の更新周期が短くなるが、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を受けることになる。
前記上限閾値及び下限閾値は、前記平均値と、吸気カムシャフト115の1回転分の位相検出値のうちで前記平均値に最も近い値との偏差の絶対値を下回らないように制限され、これによって、最低でも1つの角度位置が、前記領域内の位相を検出した角度位置として求められるようにする。
図10は、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減できるように、前記上限閾値及び下限閾値を設定した場合における、クランク角30deg毎の位相検出値と、平均値+上限閾値及び平均値−下限閾値との相関を示す。
この図10に示すように、クランク角30deg毎の位相検出値は、カムトルクの変動の影響を受けて大きく周期的に変動するものの、平均値+上限閾値と平均値−下限閾値とで挟まれる領域内の位相(図10において点線で囲まれるタイミングでの位相検出値)のみを抽出すると、クランク角180degの周期で変動する実際の位相の中心値付近の値を抽出することになり、抽出された位相検出値は、クランク角で90deg毎に更新される値となって、かつ、カムトルクの変動に大きく影響されることなく微小な変動で推移することになる。
以上のように、前記上限閾値及び下限閾値の大きさは、位相検出値の更新周期を決定し、また、カムトルク変動による位相振れの影響をどれだけ抑制するかを決定することになり、位相検出値を用いる制御の要求から設定される。
点火時期・燃料噴射量の補正制御においては、位相検出値の更新周期は比較的長くても良いが、例えば位相の進角変化中にカムトルクの変動による遅角変化に基づいて補正制御を行うと、点火時期・燃料噴射量を誤った方向に補正することになってしまうため、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を抑制することが要求される。
そこで、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相を検出させる角度位置の学習においては、前記位相検出値の振れの影響を充分に抑制でき、点火時期・燃料噴射量が誤った方向に補正されることを抑制できるように、前記上限閾値及び下限閾値を比較的小さい値に設定し、平均値に近い位相が検出される角度位置に限定して位相検出を行わせる。
これにより、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出を行う角度位置の数は少なくなり、位相の更新周期が長くなるものの、カムトルクの変動による位相振れの影響を抑制し、点火時期・燃料噴射量が位相検出値に基づいて誤った方向に補正されてしまうことを抑制できる。
しかも、前述のように、エンジン運転中に、位相検出値の平均値に基づいて位相検出を行わせるタイミングを学習させるようにすれば、カムトルクの変動の影響を抑制できる位相検出位置を予め適合させる手間が省け、また、カムトルクの変動による位相変動の特性が経時的に変化しても、これに対応して適切な位相検出位置を選択させることができる。
但し、学習を行わせずに、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出を行う角度位置を予め記憶させておくこともできる。
図11は、可変バルブタイミング機構114の目標位相が進角方向変化している状態での位相検出値の変化及び該位相検出値を用いた点火時期・燃料噴射量の補正制御を示している。
尚、図11では、クランク角60deg毎に点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相を検出させた場合を示している。
図11に示すように、クランク角60deg毎の位相検出値は、カムトルクの変動に影響されて変動する実際の位相変化を拾い、周期的に遅角方向への変化を示しながら、進角方向に向けて変化するが、遅角方向への変化を検出することで、点火時期・燃料噴射量の補正制御においては、制御目標としては徐々に進角しているのに、遅角方向への変化が検出されたときに、係る遅角変化に対応する補正を誤って行ってしまうことになる。
例えば、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相の遅角変化によるバルブオーバーラップの減少に対して点火時期を進角補正する場合、前述のようなトルク変動による位相の遅角変化に対しては、点火時期を進角補正すべきではないが、クランク角60deg毎の位相検出値は、カムトルクの変動の影響を受けて変動するために、点火時期を誤って補正することになってしまう。
これに対し、平均値に近い値を示す角度位置として、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出を行う角度位置を学習させ、図12に示すように、学習した角度位置での検出値を点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いるようにすれば、学習した角度位置での検出値は、カムトルクの変動の影響を受けず、制御目標の進角変化に対応して進角変化のみを示すから、点火時期・燃料噴射量が誤って補正されることはない。
上記のように、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相検出値は、更新周期よりもカムトルクの変動の影響を避けることが要求されるのに対し、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御においては、カムトルクの変動の影響を避けようとして、位相検出値の更新周期が長くなると、位相変化の応答が低下してエンジン性能に悪影響を与えることになるが、特に本実施形態の油圧ベーン式の可変バルブタイミング機構114では位相変化の応答が比較的遅いため、カムトルクの変動による位相の振れに対しては大きな影響を受けない。
そこで、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いる位相検出値は、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相検出値よりも更新周期が短くなるようにすることが好ましく、位相の検出を行う角度位置の学習を行わせる場合には、点火時期・燃料噴射量の補正制御用の検出タイミングの学習で用いた値よりも大きな上限閾値及び下限閾値を用いて学習させる。
前記上限閾値及び下限閾値をより大きな値にすれば、平均値+上限閾値と平均値−下限閾値とで挟まれる領域の幅を広がり、前記領域内に含まれる位相検出値の数が増える結果、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いる位相の検出の行わせる角度位置の数が増え、短い周期で位相を検出させて可変バルブタイミング機構114を制御させることができる。
従って、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出を行う角度位置の学習時と、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いる位相の検出の行わせる角度位置の学習時とで、前記上限閾値及び下限閾値の値、即ち、平均値を含む位相範囲の幅を切り替え、それぞれの制御対象について、位相検出を行わせる角度位置を学習させることができる。
但し、可変バルブタイミング機構114が電動式の場合には、油圧式に比べて位相変化の応答が高く、カムトルクの変動による位相検出値の振れに過敏に応答して位相を変化させてしまう場合があるため、前記上限閾値及び下限閾値(平均値を含む位相範囲の幅)を油圧式の場合よりも小さくし、フィードバック制御に用いる位相検出値の更新周期をより長くすることが好ましい。
また、エンジン101の運転条件によって、カムトルクの変動による位相検出値の振れの大きさが異なるので、エンジン101の運転条件に応じて前記上限閾値及び下限閾値(平均値を含む位相範囲の幅)を可変とすることができる。
具体的には、図13に示すように、エンジン負荷(トルク)とエンジン回転速度NEとに基づいて前記上限閾値及び下限閾値(平均値を含む位相範囲の幅)を記憶したマップを備えるようにし、位相検出値の振れが大きくなる低負荷・低回転域では、高負荷・高回転域に比べて前記上限閾値及び下限閾値(平均値を含む位相範囲の幅)をより小さい値に設定する。
更に、上記のように、エンジン101の運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度)に応じて前記上限閾値及び下限閾値(平均値を含む位相範囲の幅)を変更する場合には、制御に用いる位相を検出させる角度位置が異なることになるので、図14に示すように、エンジン101の運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度)毎に、制御に用いる位相を検出させる角度位置のデータを記憶させ、そのときの運転条件に対応する角度位置を検索し、検索した角度位置になったときに、制御に用いる位相を検出させることができる。
ステップS505では、今回の角度位置が、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相の検出を行う角度位置であるか否かを判断し、位相検出を行うべく選択された角度位置である場合には、ステップS506へ進み、最近の基準クランク角位置から今回のカム位相信号CAMまでのクランクシャフト109の回転角に基づいて位相を算出し、該算出結果を、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相検出として設定する。
上記ステップS505の判断が、本実施形態における角度位置選択手段に相当する。
一定時間毎に割り込み実行されるステップS602では、最近にステップS502で算出された点火時期・燃料噴射量の補正制御用の位相を読み込み、読み込んだ位相検出値に基づいて点火時期・燃料噴射量の補正制御を行う。
ステップS602における点火時期・燃料噴射量の補正制御が、本実施形態における操作量演算手段に相当する。
尚、ステップS504における学習が未経験で、点火時期・燃料噴射量の補正制御に用いる位相を検出する角度位置が未定である場合には、カム位相信号CAMの発生毎に算出させた位相検出値や、カム位相信号CAMが所定回数だけ発生する毎に算出させた位相検出値を用いて点火時期・燃料噴射量の補正制御を行わせることができる。
また、点火時期・燃料噴射量の補正制御用の位相を検出するタイミングを学習させた後に、目標位相が進角方向(遅角方向)に変化しているのに、学習した検出タイミング毎の検出値が周期的に遅角変化(進角変化)を示す場合に、カムトルク変動の影響が残っているものと判断して、上限閾値及び下限閾値(平均値を含む位相範囲の幅)をより小さく変更した上で、再度学習を行わせることができる。
更に、本実施形態では、位相検出値を用いる制御として、可変バルブタイミング機構114の制御の他、点火時期・燃料噴射量を例示したが、点火時期・燃料噴射量以外の制御に、前記平均値に基づく位相検出位置の抽出学習を適用することができる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項1記載のエンジンの制御装置において、
前記角度位置選択手段が、前記位相検出手段によって前記一定角度位置毎に検出される位相の平均値を演算し、該平均値に基づいて角度位置を選択して記憶し、前記操作量演算手段が、記憶されている角度位置における位相の検出結果に基づいて前記エンジンの操作量を演算することを特徴とするエンジンの制御装置。
上記発明によると、平均値に近い位相を検出する角度位置に基づいて、制御に用いる位相検出を行わせる角度位置を選択するので、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減して、位相検出値に基づく制御を行わせることが可能となる。
(ロ)請求項(イ)記載のエンジンの制御装置において、
前記角度位置選択手段が、前記平均値を含む所定範囲内の位相を検出した角度位置を選択して記憶することを特徴とするエンジンの制御装置。
上記発明によると、平均値に近い位相を検出する角度位置を選択して、制御に用いる位相検出を行わせることが可能となり、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減して、位相検出値に基づく制御を行わせることができる。
(ハ)請求項(ロ)記載のエンジンの制御装置において、
前記角度位置選択手段が、前記選択した角度位置を、前記エンジンの運転条件毎に記憶することを特徴とするエンジンの制御装置。
上記発明によると、平均値に近い位相を検出する角度位置を、エンジンの運転条件毎に記憶することで、エンジン運転条件が変化しても、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減して、位相検出値に基づく制御を行わせることができる。
(ニ)請求項(ロ)又は(ハ)記載のエンジンの制御装置において、
前記角度位置選択手段が、前記操作量演算手段で演算する操作量の制御対象に基づいて、前記所定範囲の幅を設定することを特徴とするエンジンの制御装置。
上記発明によると、前記所定範囲の幅を狭くすれば、平均値に近い位相を検出させることができ、また、前記所定範囲の幅を広くすれば、位相検出を行わせる回数(頻度)が増える(検出周期が短くなる)ので、位相検出値の更新周期が短いことを優先するか、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減することを優先するかを、制御対象毎に設定できる。
(ホ)請求項(ニ)記載のエンジンの制御装置において、
前記角度位置選択手段が、前記操作量演算手段で演算する操作量の制御対象が点火時期及び/又は燃料噴射量である場合には、前記操作量演算手段で演算する操作量の制御対象が前記可変バルブタイミング機構である場合に比べて、前記所定範囲の幅を狭く設定することを特徴とするエンジンの制御装置。
上記発明によると、前記可変バルブタイミング機構の制御においては、位相検出値の更新周期が短いことを優先することで制御の応答性を確保し、点火時期及び/又は燃料噴射量の制御においては、平均値に近い位相を検出させることで、カムトルクの変動による位相検出値の振れの影響を低減できる。