以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用の内燃機関を示す。
図1に示す内燃機関101は、2つのバンク(気筒グループ)101a,101bからなるV型6気筒機関である。
但し、内燃機関101は、V型機関の他、水平対向機関などであってもよく、また、気筒数を6気筒に限定するものではなく、4気筒,8気筒,12気筒などであってもよい。
内燃機関101の各気筒の燃焼室102内は、吸気ダクト103、吸気マニホールド104a,104b、吸気ポート105を介して大気側と連通している。
前記燃焼室102(シリンダ)の吸気口102aは、吸気バルブ106で開閉され、ピストン107が降下するときに前記吸気バルブ106が開くと、燃焼室102内に空気が吸引される。
一方、前記吸気バルブ106の上流側の吸気通路である、前記吸気マニホールド104a,104bのブランチ部140a,140bには、各気筒それぞれに燃料噴射弁108が配設されており、この燃料噴射弁108から噴射された燃料が空気と共に燃焼室102内に吸引される。
前記燃料噴射弁108は、その噴霧の中心軸が略吸気バルブ106の傘部(吸気口102a)を指向するように配置されている。
尚、燃料噴射弁108が燃焼室102内に燃料を直接噴射する筒内直接噴射式内燃機関であってもよい。
前記シリンダ102内の燃料は、点火プラグ109による火花点火によって着火燃焼し、これによって発生する爆発力がピストン107を押し下げ、該押し下げ力によってクランクシャフト110が回転駆動される。
また、前記燃焼室102(シリンダ)の排気口102bは、排気バルブ111で開閉され、ピストン107が上昇するときに前記排気バルブ111が開くと、燃焼室102内の燃焼ガスが排気ポート112に排出される。
前記クランクシャフト110の回転駆動力が伝達される吸気カムシャフト131及び排気カムシャフト132が各バンク101a,101bそれぞれに備えられ、前記吸気バルブ106及び排気バルブ111は、前記吸気カムシャフト131及び排気カムシャフト132が回転することで開駆動される。
ここで、前記排気バルブ111は、前記排気カムシャフト132に一体的に設けられたカム132aによって、一定のバルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング(リフト特性)で開駆動される。
尚、本実施形態におけるバルブリフト量とは、吸・排気バルブ(機関バルブ)の開期間での最大値を示すものとする。
一方、前記クランクシャフト110に対する吸気カムシャフト131の回転位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bが、各バンク101a,101bの吸気カムシャフト131それぞれに設けられている。
そして、前記可変バルブタイミング機構133a,133bによって吸気カムシャフト131の回転位相を可変とすることで、吸気バルブ106のバルブ作動角(開期間)の中心位相が連続的に進・遅角変化するようになっている。
また、吸気カムシャフト131と、吸気バルブ106(機関バルブ)のバルブリフタ106aに当接して吸気バルブ106を開駆動する後述の揺動カム4との間には、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量(最大バルブリフト量)と共に連続的に変更するための可変リフト機構134a,134b(可変動弁機構)が各バンク101a,101bそれぞれに設けられている。
前記排気ポート112には、排気マニホールド113a,113bの各ブランチ部が接続され、更に、排気マニホールド113a,113bの各集合部は合流して、排気ダクト114に接続されている。
前記排気ダクト114には、排気を浄化するための三元触媒等の触媒装置を内蔵する触媒コンバータ115が介装されている。
また、前記吸気ダクト103には、モータ等のアクチュエータで開閉駆動される電子制御スロットル116が介装されている。
前記燃料噴射弁108、点火プラグ109、可変バルブタイミング機構133a,133b、可変リフト機構134a,134b、電子制御スロットル116などは、ECM(エンジン・コントロール・モジュール)121から出力される操作量に応じて制御され、これによって、燃料噴射量、点火時期、吸気バルブ106のリフト特性、スロットル開度が調整される。
前記ECM121は、マイクロコンピュータを含んで構成され、各種センサからの信号を入力し、該入力信号を予め記憶されているプログラムに従って演算処理して、前記可変リフト機構134a,134bなどの操作量を演算し、該操作量を出力する。
前記各種センサとしては、アクセル開度ACCを検出するアクセル開度センサ122、内燃機関101の冷却水温度TWを検出する水温センサ123、内燃機関101が搭載される車両の走行速度(車速)VSPを検出する車速センサ124、クランクシャフト110が単位角度だけ回転する毎の単位クランク角信号POSと基準クランク角位置毎の基準クランク角信号REFとをそれぞれに出力するクランク角センサ125、各バンクの排気マニホールド113a,113bの集合部にそれぞれ配置され、排気中の酸素濃度に基づいて各バンクの空燃比AFをそれぞれに検出する空燃比センサ126a,126b、内燃機関101の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ127、前記電子制御スロットル116の開度TVOを検出するスロットル開度センサ128、電子制御スロットル116下流側の吸気通路内の圧力(吸気管圧)PBを検出する圧力センサ129、機関101の潤滑油温度TOを検出する油温センサ130などが設けられている。
そして、前記ECM121は、燃料噴射弁108による燃料噴射の制御においては、前記エアフローセンサ127で検出される吸入空気流量QAと、クランク角センサ125からの出力信号に基づいて算出される機関回転速度NEとから基本燃料噴射パルス幅TPを演算する。
更に、前記基本燃料噴射パルス幅TPを、冷却水温度TWに応じた補正係数や、空燃比センサ126a,126bの出力から検出される実際の空燃比を目標空燃比に近づけるように設定される空燃比フィードバック補正係数などによって補正することで、最終的な燃料噴射パルス幅TIを演算し、各気筒の吸気行程にタイミングを合わせ、各気筒の燃料噴射弁108に対して個別に前記燃料噴射パルス幅TIの噴射パルス信号を出力する。
前記燃料噴射弁108は、前記燃料噴射パルス幅TIに相当する時間だけ開弁し、開弁時間に比例する量の燃料を噴射する。
また、点火プラグ109には、それぞれに点火コイル及び該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを内蔵した点火モジュール138が直付けされており、前記ECM121は、機関運転条件(例えば、機関負荷(基本燃料噴射パルス幅TP)と機関回転速度NE)に基づいて点火時期を算出し、該点火時期及び点火エネルギを得るための通電時間とから、前記点火コイルへの通電開始時期及び通電遮断時期を決定し、該通電開始時期及び通電遮断時期に対応する点火制御信号で前記パワートランジスタのオン・オフを制御し、前記点火時期での火花点火を実行させる。
尚、点火時期は圧縮上死点前に設定され、圧縮上死点からの点火時期までのクランク角度を点火時期(点火進角値)として、そのときの機関負荷及び機関回転速度NEから算出する。
更に、前記可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bの制御においては、例えば目標トルクと機関回転速度NEとから目標中心位相及び目標バルブ作動角(目標バルブリフト量)を演算し、実際の中心位相及び実際のバルブ作動角(実際のバルブリフト量)が前記目標に近づくように、前記可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bの操作量を算出して出力する(制御手段)。
また、前記電子制御スロットル116におけるスロットル開度の制御においては、例えば目標トルクと機関回転速度NEとから目標負圧を算出し、圧力センサ129で検出される実際の吸気管圧PBが、前記目標負圧に近づくように操作量を算出して出力する。
図2は、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変リフト機構134a,134bの構造を示す斜視図である。
前記吸気バルブ106の上方に、前記クランクシャフト110によって回転駆動される吸気カムシャフト131が、各バンクの気筒列方向に沿って図外のシリンダヘッドに回転可能に支持されている。
前記吸気カムシャフト131には、吸気バルブ106のバルブリフタ106aに当接して吸気バルブ106を開駆動する揺動カム4が相対回転可能に外嵌されている。
前記吸気カムシャフト131と揺動カム4との間には、吸気バルブ106のバルブ作動角(バルブ作用角)をバルブリフト量と共に連続的に変更するための可変リフト機構134a,134bが設けられている。
また、前記吸気カムシャフト131の一端部には、クランクシャフト110に対する前記吸気カムシャフト131の回転位相を変化させることにより、吸気バルブ106のバルブ作動角(開期間)の中心位相を連続的に変更する可変バルブタイミング機構133a,133bが配設されている。
前記可変リフト機構134a,134bは、図2及び図3に示すように、吸気カムシャフト131に偏心して固定的に設けられる円形の駆動カム11と、この駆動カム11に相対回転可能に外嵌するリング状リンク12と、吸気カムシャフト131と略平行に気筒列方向へ延びる制御軸13と、この制御軸13に偏心して固定的に設けられた円形の制御カム14と、この制御カム14に相対回転可能に外嵌すると共に、一端がリング状リンク12の先端に連結されたロッカアーム15と、このロッカアーム15の他端と揺動カム4とに連結されたロッド状リンク16と、を有している。
前記制御軸13は、電動モータ17等のアクチュエータによりリンク機構18を介して所定の制御範囲内で回転駆動される。前記電動モータ17としては、ブラシレスモータやDCモータを適用することができる。
前記リンク機構18は、電動モータ17の出力軸17aに形成された雄ねじ18aと、該雄ねじ18aに螺合される雌ねじを備えてなる可動子18bと、前記制御軸13と一体的に設けられ、先端が前記可動子18bに対して回転可能に接続されるリンクアーム18cとから構成される。
そして、前記電動モータ17の出力軸17aが回転すると、回り止めされている可動子18bが、前記出力軸17aの軸方向に平行移動し、該可動子18bの平行移動に伴ってリンクアーム18cが制御軸13を中心に揺動することで、リンクアーム18cと一体の制御軸13が回転する構成である。
ここで、制御軸13の可動角度範囲の一方端が、バルブリフト量が最大となる位置であり、また、他方端が、バルブリフト量が最小となる位置であり、前記一方端から他方端に向けて制御軸13を回転させることでバルブリフト量が漸減し、逆に、前記他方端から一方端に向けて制御軸13を回転させることでバルブリフト量が漸増する。
上記の構成により、クランクシャフト110に連動して吸気カムシャフト131が回転すると、駆動カム11を介してリング状リンク12がほぼ並進移動すると共に、ロッカアーム15が制御カム14の軸心周りに揺動し、ロッド状リンク16を介して揺動カム4が揺動して吸気バルブ106が開駆動される。
また、前記電動モータ17を駆動制御して制御軸13の角度を変化させることにより、ロッカアーム15の揺動中心となる制御カム14の軸心位置が変化して揺動カム4の姿勢が変化する。
前記電動モータ17の駆動制御においては、バルブ作動角・バルブリフト量の増大要求時(正転要求時)であるか、減少要求時(逆転要求時)であるかによって通電の向きを決定する一方、前記制御軸13の実際の角度と目標角度との偏差に応じて、電動モータ17の印加電圧を制御するためのデューティ比を決定し、該デューティ比で電動モータ17の通電を制御する。
これにより、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が略一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角がバルブリフト量と共に連続的に変化する。
尚、バルブ作動角及びバルブリフト量が連続的に変化すると同時、バルブ作動角の中心位相が変化するように構成した可変リフト機構134a,134bであってもよい。
また、前記制御軸13を回転駆動するアクチュエータとして、電動モータ17に代えて油圧アクチュエータなどを用いることができる。
図4は、前記クランクシャフト110に対する吸気カムシャフト131の回転位相を連続的に可変とすることで、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を可変とする前記可変バルブタイミング機構133a,133bの構造を示す。
前記可変バルブタイミング機構133a,133bは、クランクシャフト110によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、各バンクの吸気カムシャフト131の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。
前記回転部材53は、吸気カムシャフト131の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の初期位置において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送する機関駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記ECM121は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、ディザ信号が重畳されたデューティ制御信号(操作量)に基づいて制御する。
可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99にデューティ比(オン時間割合)0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出されるようにしてある。
従って、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99にデューティ比0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、遅角側油圧室83の内圧が高くなる一方で、進角側油圧室82の内圧が低くなり、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ106の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に遅角変化する。
即ち、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99への通電を遮断すると、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相は遅角方向に変化し、最終的には、最遅角位置で停止する。
また、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいて、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
このため、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいて、デューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ106の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に進角変化する。
即ち、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99への通電を継続すると、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相は進角方向に変化し、最終的には、最進角位置で停止する。
尚、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変リフト機構134a,134b、及び、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bは、上記の図2〜図4に示した構造のものに限定されない。
例えば、バルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bとしては、上記のベーン式の他、歯車を用いてクランクシャフト110に対し前記吸気カムシャフト131を相対回転させる機構などを用いることができ、更に、油圧アクチュエータの他、電動モータや電磁ブレーキをアクチュエータとして用いる機構を採用できる。
また、吸気バルブ106のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変リフト機構134a,134bとしては、制御軸の軸方向の変位に応じてバルブ作動角が変化する機構であってもよい。
前記ECM121は、内燃機関101の運転状態(目標トルク・機関回転速度NEなど)に基づいて、前記吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量の目標値に相当する制御軸13の目標角度を演算し、角度センサ135で検出される制御軸13の実際の角度θ(制御量)が前記目標角度に近づくように、可変リフト機構134a,134bの電動モータ17の操作量をフィードバック制御する(制御手段)。
前記制御軸13の角度は、最小バルブ作動角となる角度位置を0degとして、バルブ作動角(バルブリフト量)が増大する方向への回転角で示されるものとする。
また、前記ECM121は、内燃機関101の運転状態(目標トルク・機関回転速度など)に基づいてバルブ作動角の中心位相の目標値を演算し、実際の中心位相(制御量)が、前記目標値に近づくように、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99に出力する操作量をフィードバック制御する。
前記実際の中心位相は、クランク角センサ125で検出されるクランクシャフト110の基準角度位置から、吸気カムセンサ136で検出される吸気カムシャフト131の基準角度位置までの角度を計測することで検出される。
また、前記吸気バルブ106の中心位相は、最遅角位置からの進角量として示すものとする。
図5は、可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bによる吸気バルブ106のリフト特性の変化を示す。
図5に示すように、可変リフト機構134a,134bを動作させると、矢印(イ)に示すように、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が略一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角がバルブリフト量と共に連続的に変化する。
一方、可変バルブタイミング機構133a,133bを動作させると、矢印(ロ)に示すように、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量が一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が進角・遅角変化する。
以下では、バンク毎に設けられる可変リフト機構134a,134bの制御を、詳細に説明する。
図6は、可変リフト機構134a,134bの制御ブロック図であり、この図6に示される、規範モデル301、規範モデル制限部302、第1操作量演算部303、第2操作量演算部304及び最大速度演算部305は、前記ECM121に備えられる演算機能を示す。
図6において、規範モデル301(規範応答変換手段)には、内燃機関101の運転状態(目標トルク・機関回転速度NEなど)に基づいて算出された制御軸13の目標角度θtgが入力され、該目標角度を、理想応答で変化する角度θmoに変換する。
前記規範モデル301とは、理想の応答特性を示す伝達関数であり、入力される目標角度θtgのステップ変化に対して、理想的な応答で追従する目標角度θmoを出力する。
前記規範モデル301の出力θmoは、規範モデル制限部302(制限手段)に出力され、この規範モデル制限部302で規範モデル301の出力値θmoの変化を制限(抑制)する処理が選択的になされる。
そして、前記規範モデル制限部302の出力は前記規範モデル301に対して前回値として入力される一方、最終的な制御目標値θtgfとして、第1操作量演算部303及び第2操作量演算部304に出力される。
前記第1操作量演算部303では、前記規範モデル制限部302から出力される最終的な目標値θtgfと、可変リフト機構134aに設けられる角度センサ135で検出される制御軸13の実際の角度θ(制御量)との偏差に基づいて、前記実際の角度θを前記目標値θtgfに近づけるように、第1バンク101aに備えられる可変リフト機構134aの操作量(デューティ比)を演算して出力する。
また、前記第2操作量演算部304では、前記規範モデル制限部302から出力される最終的な目標値θtgfと、可変リフト機構134bに設けられる角度センサ135で検出される制御軸13の実際の角度θ(制御量)との偏差に基づいて、前記実際の角度θを前記目標値θtgfに近づけるように、第2バンク101bに備えられる可変リフト機構134bの操作量(デューティ比)を演算して出力する。
前記第1操作量演算部303及び第2操作量演算部304における操作量(デューティ比)の演算においては、例えば、前記偏差(制御エラー)に基づく比例・積分・微分動作によって、操作量(デューティ比)が算出される。
各角度センサ135で検出された制御軸13の角度θは、各可変リフト機構134a,134bの操作量と共に、最大速度演算部305(最大速度演算手段)に入力される。
前記最大速度演算部305は、各可変リフト機構134a,134bの作動応答(最大動作速度)を検出し、それぞれの作動応答の遅い方を、可変リフト機構134a,134bの双方で実現可能な最大の作動応答(最大速度RM)として選択し、この最大の作動応答を超える応答で目標値θtgfが変化することがないように、換言すれば、前記最大応答RMで追従可能な目標値θtgfが出力されるように、前記規範モデル制限部302における制限特性を決定する。
即ち、可変リフト機構134a,134bの間には作動応答のばらつきがあり、例えば、可変リフト機構134aが可変リフト機構134bよりも作動応答が速い場合、可変リフト機構134a側では、前記規範モデル出力θmoに対して実際の角度θを追従変化させることができても、可変リフト機構134b側では、規範モデル出力θmoに対して実際の角度θの変化が遅れてしまい、過渡的に両バンクでのバルブ作動角・バルブリフト量に偏差が生じてしまうことになる。
そこで、可変リフト機構134a,134bのうち作動応答が遅い側が追従することができる目標値θtgfが、規範モデル制限部302から出力されるように、規範モデル制限部302における規範モデル出力θmoの制限特性を設定するようにしてある。
換言すれば、前記規範モデル制限部302は、前記規範モデル出力θmoを、各バンクの可変リフト機構134a,134bが追従できる目標に変換する処理を行うものであり、作動応答が遅い方のバンクが追従できる目標値θtgfが設定されれば、両バンクのリフト特性が共に目標値θtgfに沿って変化することで、両バンク間でリフト特性のばらつきが生じることがなく、過渡的な燃焼性の悪化を抑制できる。
図6において、最大速度演算部305に入力される環境条件とは、可変リフト機構134a,134bの作動応答に影響を与える条件であり、例えば、機関のバルブ駆動系や可変リフト機構134a,134bのフリクションの大きさを示す、機関や可変リフト機構134a,134bの温度条件であり、該温度条件は潤滑油温度TOや機関冷却水温度TWなどで代表させることができる。
そして、前記最大速度演算部305では、前記最大速度RMを算出すると、そのときの環境条件(温度条件)毎にテーブル値として記憶し、前記テーブルを参照して、前記規範モデル制限部302に出力する最大速度RMを決定する。
以下では、前記最大速度演算部305における処理の内容(作動応答の検出、最大速度RMの算出)を、フローチャートを参照しつつ説明する。
図7のフローチャートは、定時割り込みによって実行される、各バンクの可変リフト機構134a,134bの作動応答R3R,R3Lをそれぞれに検出するルーチンであって、このルーチンは、各バンクについて個別に行われる同一の処理を示すものとする。
まず、ステップS401では、可変リフト機構134a,134bの電動モータ17が最大デューティ比(例えば100%ONデューティ)で駆動されているか否か、換言すれば、最大の動作速度になる操作量(最大電圧)が電動モータ17に与えられているか否かを判断し、最大デューティ比(最大電圧)以外で駆動されている場合には、そのまま本ルーチンを終了させる。
尚、電動モータ17の最大デューティ比には、正転方向に回転駆動する最大デューティ(+100%)と、逆転方向に回転駆動する最大デューティ(−100%)とがあり、それぞれについて作動応答を検出するものとする。
即ち、可変リフト機構134aについて、モータ正転方向(例えばバルブ作動角の増大方向)の作動応答と、モータ逆転方向(例えばバルブ作動角の減少方向)の作動応答とを求め、可変リフト機構134bについても、モータ正転方向(例えばバルブ作動角の増大方向)の作動応答と、モータ逆転方向(例えばバルブ作動角の減少方向)の作動応答とを求める。
電動モータ17が最大デューティ比で駆動されている場合には、ステップS402へ進み、デューティ比が最大である状態が所定時間T1(>0)になっているか否かを判断する。
前記所定時間T1とは、制御量(制御軸13の角度)の変化方向の反転に要する時間に基づき設定され、前記所定時間T1以上経過していれば、そのときの操作量に対応する方向に制御量(制御軸13の角度)が変化していると判断できるように、予め適合されている。
ステップS402で、最大デューティ比の継続時間が所定時間T1になっていると判断されると、ステップS403へ進み、所定時間T1の時点での角度センサ135による制御軸13の検出角度θ(制御量)を、検出値D1にセットする。
一方、ステップS402で、最大デューティ比の継続時間が所定時間T1ではないと判断されると、ステップS403を迂回してステップS404へ進む。
ステップS404では、最大デューティ比の継続時間が所定時間T2になっているか否かを判断する。
前記所定時間T2は、所定時間T1よりも長い時間であり(T2>T1>0)、最大デューティ比の継続時間が所定時間T2になっている場合には、所定時間T1と所定時間T2との差の時間だけ、最大デューティ比によって制御軸13が一定方向に回転駆動されていることになる。
ここで、所定時間T2が短く所定時間T1との差が小さいと、作動応答の検出精度が低下し、また、逆に、所定時間T2が長く所定時間T1との差が大きいと、所定時間T2に達する前にデューティ比が低下してしまって学習機会が低下することになってしまうので、検出精度と学習機会とを両立できるように、前記所定時間T2は予め適合される。
ステップS404で、最大デューティ比の継続時間が所定時間T2になっていると判断されると、ステップS405へ進み、所定時間T2の時点での角度センサ135による制御軸13の検出角度θ(制御量)を、検出値D2にセットする。
そして、ステップS406では、前記所定時間T1,T2及び検出値D1,D2に基づき、最大デューティ比で制御した場合での単位時間当たりの制御軸角度θの変化量を、各バンクの作動応答R3R,R3Lを示す値(応答の特性値)として算出する。
R3R,R3L=(D2−D1)/(T2−T1)
尚、作動応答R3Rは、第1バンク101aの作動応答を示し、作動応答R3Lは、第2バンク101bの作動応答を示すものとする。
また、前記作動応答R3R,R3Lは、その値が大きいほど、制御量の変化(制御軸の回転速度)が速いこと、換言すれば、応答速度(動作速度)が速いことになり、かつ、応答速度(動作速度)が最も速くなる操作量を与えたときの値であるので、各バンクで実現できる最大の応答速度(最大の動作速度)である。
上記のようにして、各バンクの可変リフト機構134a,134bそれぞれについて求められる作動応答R3R,R3Lは、図8のフローチャートに示すルーチンで読み込まれて、作動応答R3R,R3Lの遅い方(小さい方)を選択する処理がなされる。
図8のフローチャートに示すルーチンは定時割り込みで実行され、まず、ステップS501では、作動応答R3R,R3Lが計測済みであるか否かを判断し、作動応答R3R,R3Lが計測されていない場合には、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、作動応答R3R,R3Lが計測済みであれば、ステップS502へ進み、作動応答R3R,R3Lの値を読み込む。
次のステップS503では、第1バンク101a(可変リフト機構134a)の作動応答R3Rと、第2バンク101b(可変リフト機構134b)の作動応答R3Lとを比較する。
そして、作動応答R3Rが作動応答R3L以上である場合、即ち、第1バンク101a(可変リフト機構134a)の作動応答R3Rが、第2バンク101b(可変リフト機構134a)の作動応答R3Lと同じであるか、より速い(大きい)場合には、ステップS504へ進み、遅い方の第2バンク101b(可変リフト機構134b)の作動応答R3Lを、作動応答αにセットする。
一方、作動応答R3Rが作動応答R3L未満である場合、即ち、第2バンク101b(可変リフト機構134b)の応答速度R3Lが、第1バンク101a(可変リフト機構134a)の作動応答R3Rよりも速い(大きい)場合には、ステップS505へ進み、遅い方の第1バンク101a(可変リフト機構134a)の作動応答R3Rを、作動応答αにセットする。
従って、作動応答αは、第1バンク101a(可変リフト機構134a)の作動応答R3Rと、第2バンク101b(可変リフト機構134b)の作動応答R3Lとのうち、遅い側の作動応答を選択した結果となる。
ステップS506では、今回ステップS504又はステップS505で設定された作動応答αと、作動応答αの最小値である作動応答R2の前回値とを比較する。
そして、今回求めた作動応答αが、作動応答R2の前回値以下である場合には、ステップS507へ進み、作動応答αの値を、作動応答R2にセットする。
従って、作動応答αは、作動応答R3R,R3Lの最新計測値について遅い方を選択した値であり、作動応答R2は、作動応答αの時系列データのうちの最小値を示すことになり、前記作動応答R2は、可変リフト機構134a,134bが共通して実現可能な最大の動作速度を示す。
例えば、可変リフト機構134aの作動応答R3Rが、可変リフト機構134bの作動応答R3Lよりも速い場合に、可変リフト機構134aは追従できるが、可変リフト機構134bは追従することができない目標値を設定すると、両バンク間のバルブ作動角・バルブリフト量が過渡的にばらつくことになってしまう。
これに対して、作動応答が遅い方の可変リフト機構134bが追従することができる目標値を設定すれば、作動応答が速い方の可変リフト機構134aも目標変化に実際の制御量を追従変化させることができるから、両バンクで目標変化に実際の制御量を追従させることができ、両バンク間にバルブ作動角・バルブリフト量の過渡的なばらつきが生じることを抑制できる。
そこで、上記のように、可変リフト機構134a,134bのうちの遅い方の作動応答を示す作動応答R2を求め、これを、両バンク間での過渡的なリフト特性のばらつきを生じさせない最大速度RMとして、後述するように、目標値の過渡応答の制限に用いる。
即ち、前記最大速度RMに基づき、図6の規範モデル制限部302が目標値変化を抑制する処理を行うことで、最大速度RMで追従することができる目標値に補正する。
目標値の過渡応答の制限に用いる最大速度RMは、前記作動応答R2に基づき、図9のフローチャートに示すルーチンに従って設定される。
図9のフローチャートに示すルーチンは定時割り込み実行され、まず、ステップS601では、作動応答R2が計測済みであるか否かを判断し、作動応答R2が計測済でない場合には、ステップS605へ進み、予め記憶されている既定の作動応答R1を最大速度RMに設定する。
前記作動応答R1は、設計上での作動応答の標準値(下限値)であり、該作動応答R1で前記規範モデル301から出力される目標角度θmoに実際の角度を追従変化させることができるように、規範モデルが設定されている。
一方、ステップS601で作動応答R2が計測済みであると判断されると、ステップS602へ進み、図8のフローチャートに示すルーチンに従って計測された作動応答R2を読み込む。
そして、次のステップS603では、前記作動応答R1と作動応答R2とを比較し、作動応答R1が作動応答R2以上である場合、即ち、実際の作動応答R2が、設計上の作動応答R1と同じかより低い場合には、ステップS604へ進み、最大速度RMに前記作動応答R2を設定する。
即ち、作動応答R2が作動応答R1よりも小さい場合(遅い場合)、作動応答R1に基づいて目標値の応答変化を決定したのでは、少なくも作動応答が遅い側のバンクで目標に追従させることができなくなるので、実際の作動応答R2を最大速度RMに設定し、実際の作動応答R2で追従させることができる目標値が設定されるようにする。
一方、作動応答R1よりも作動応答R2が大きく、設計上の作動応答R1よりも実際の作動応答R2が速い場合には、ステップS605へ進んで、遅い方の作動応答R1を最大速度RMに設定する。
上記のように、作動応答R1と作動応答R2との遅い方を、最大速度RMに設定するものであり、これにより確実に実現可能な作動応答を、最大速度RMに設定することができる。
例えば、検出誤差によって作動応答R2が作動応答R1よりも高くなっても、より低い作動応答R1に基づいて目標変化を制限させるようにすれば、両バンク間での過渡的なリフト特性のばらつきを生じることを抑制できる。
一方、検出誤差によって作動応答R2が作動応答R1よりも低い値になった場合には、この実力よりも遅い作動応答R2に基づいて目標変化を制限すれば、過剰に応答が遅くなってしまうが、一方のバンクが目標に追従できずに、両バンク間での過渡的なリフト特性のばらつきを生じることを抑制できる。
ところで、図9のフローチャートに示す処理では、作動応答R2が計測済みである場合、作動応答R1と作動応答R2との遅い方を最大速度RMに設定したが、作動応答R2の更新回数が多くなれば、それだけ作動応答R2の信頼性が高まり、作動応答R2をそのまま最大速度RMに設定することができ、係る構成とした最大速度RMの設定処理を、図10のフローチャートに従って説明する。
図10のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込みで実行され、まず、ステップS701では、作動応答R2の更新回数(検出回数)が所定値未満であるか否かを判断する。
前記所定値は、更新回数から作動応答R2の信頼性を判断するための閾値であり、予め実機又はシミュレーションによって、更新回数と信頼性(作動応答R2の検出誤差)との相関を求め、係る相関から設定される。
作動応答R2の更新回数が所定値未満である場合には、作動応答R2の信頼性が低いので、前記ステップS601〜ステップS605と同様に、ステップS702〜ステップS706で、作動応答R2が計測済みでなければ、作動応答R1を最大速度RMに設定し、計測済みであれば、作動応答R1と作動応答R2との遅い方を、最大速度RMに設定する処理を実行する。
一方、ステップS701で、作動応答R2の更新回数が所定値以上であると判断されると、ステップS707へ進み、それまでに計測された作動応答R2の時系列データを平滑化する処理を行う。
前記平滑化処理では、作動応答R2の加重平均演算や、作動応答R2の計測値の最近のN個について、単純平均又は加重平均演算させる。
ステップS707で、作動応答R2を平滑化処理すると、次のステップS708では、ステップS707で平滑化された作動応答R2を最大速度RMに設定する。
このように、作動応答R2の更新回数(検出回数)が所定値よりも多くなった場合には、作動応答R2の信頼性が高くなり、実際よりも高い応答に検出されることはないものと判断し、平滑化処理した値を最大速度RMに設定する。
但し、平滑処理を行うことなく、作動応答R2の最新値を最大速度RMに設定させることができる。
ところで、前記作動応答R2や、該作動応答R2に基づいて算出される最大速度RMは、フリクションなどによって変化するため、フリクションの大きさを示す温度条件などに応じて前記作動応答R2や最大速度RMを更新記憶して、そのときの温度条件に対応する作動応答R2や最大速度RMを読み出して用いる学習制御を行わせることが好ましく、また、前記作動応答R1もフリクション(温度条件)によって異なるので、予め温度条件毎に求めた作動応答R1をテーブルに記憶させておき、そのときの温度条件に対応する作動応答R1を前記テーブルから検索して用いることが好ましい。
上記のようにフリクション(温度条件)毎に作動応答を設定すれば、作動応答が遅くなる低温時に検出した作動応答R2に基づき、完暖後(暖機後)に目標変化が過剰に小さく制限され、バルブ作動角・バルブリフト量の変化が過剰に遅くなってしまうことを抑制できる。
図11のフローチャートに示すルーチンは、前記学習制御の様子を示すものであり、定時割り込みによって実行される。
図11のフローチャートにおいて、ステップS801では、油温センサ130で検出された潤滑油温度TOを読み込む。
尚、フリクションに相関する温度条件として、潤滑油温度TOに代えて機関冷却水温度TWを用いることができる。
次のステップS802では、前記最大速度RMの演算を、前記図8〜図10のフローチャートに示すルーチンのいずれかによって行う。
そして、次のステップS803では、ステップS802で算出された最大速度RM及び該最大速度RMの算出に用いた作動応答R2を、ステップS801で読み込んだ油温に対応する値として更新記憶させる。
前記最大速度演算部305では、前述のように、油温毎に記憶されている最大速度RM及び作動応答R2を用いて、前記規範モデル制限部302における制限特性を決定する。
油温毎の作動応答R2の記憶値は、例えば、図10のフローチャートにおけるステップS707における平滑化演算に用いられる。
また、油温毎に最大速度RM及び作動応答R2の設計値を予め記憶させておき、実際に求めた最大速度RM及び作動応答R2に基づき、前記設計値を一律に書き換えることで、経験していない油温条件での値を実際の作動応答に対応する値に書き換えるようにすることもできる。
尚、油温条件毎の最大速度RM及び作動応答R2の記憶テーブルは、可変リフト機構134a,134b毎、更に、電動モータ17の回転方向毎(制御量の変化方向毎)に個別に設定され、機関の停止中(キーオフ中)も記憶が保持されるバックアップRAM若しくはEEPROMに記憶させる。
ところで、規範モデル制限部302で目標値の変化が抑制される結果、実際の制御軸13の角度θを目標値θtgfに近づけるために設定されるデューティ比が最大値(100%)になる機会が減少し、新たな作動応答R3R,R3Lの計測機会を十分に得られなくなってしまう可能性がある。
一方、作動応答R3R,R3Lの計測は、1トリップ(機関の運転開始から停止までの間)に1回程度行えれば十分である。
そこで、機関始動後(キースイッチオン後)から作動応答R3R,R3Lが計測されるまでの間、前記規範モデル制限部302による制限を停止させ、最終的な目標値θtgfを理想応答目標値θmoに一致させるか、又は、前記規範モデル制限部302による制限を緩めて、最終的な目標値θtgfを理想応答目標値θmoに近づける補正を行うことで、デューティ比が最大値(100%)に設定され易くすることができる。
上記の制限停止又は制限緩和の処理を行えば、最終的な目標値θtgfの応答変化が速まる結果、実際の制御軸13の角度θを目標値θtgfに近づけるために設定されるデューティ比が最大値(100%)になる機会が増え、作動応答R3R,R3Lを計測させることができる。
図12のフローチャートに示すルーチンは、作動応答R3R,R3Lを計測させるために、規範モデル制限部302における制限停止又は制限緩和の処理を行うものであり、定時割り込みによって実行される。
ステップS901では、機関始動後(キースイッチオン後)、作動応答R3R,R3Lの計測が未だ行われていない状態であるか否かを判断する。
そして、作動応答R3R,R3Lの計測が未だ行われていない状態であれば、ステップS902へ進み、規範モデル制限部302における制限を停止させるか又は制限を緩和させる。
前記制限の停止とは、規範モデル301の出力θmoを、規範モデル制限部302がそのまま最終的な目標値θtgfとして出力させる状態であり、制限の緩和とは、最終的な目標値θtgfを理想応答目標値θmoに近づける補正であり、例えば、制限特性の決定に用いる最大速度RMをより大きく(より速い方向に)補正することで実行される。
上記のように、最終的な目標値θtgfを理想応答目標値θmoに近づければ、目標値θtgfの応答が速くなる結果、デューティ比が最大値に設定される機会が増え、作動応答R3R,R3Lの計測を行わせることができるようになる。
但し、規範モデル制限部302における制限を停止させるか又は制限を緩和させる処理を行うと、両バンクのうち可変リフト機構134の応答が遅いバンクでは、制御軸13の実際の角度を目標値θtgfに追従変化させることができなくなって、両バンク間にリフト特性のばらつきが生じてしまう可能性がある。
そこで、次のステップS903では、操作量(デューティ比)の補正によって、各バンクのバルブ作動角・バルブリフト量の変化を同期させる応答合わせ制御を実行する。
前記応答合わせ制御とは、応答の速い側の操作量(デューティ比)を減少補正し、及び/又は、応答の遅い側の操作量(デューティ比)を増大補正させるものである。
より具体的には、制御目標に対する追従が遅れる側のデューティ比が高い領域(例えば80%以上であって、増大補正代が確保できない領域)であれば、応答が速い方のデューティ比を減少補正させ、また、制御目標に対する追従が遅れる側のデューティ比が低い領域(例えば80%未満であって、増大補正代が確保できる領域)であれば、応答が遅い方のデューティ比を増大補正して、相互の応答が近づくようにする。
上記のような操作量(デューティ比)の補正によって両バンク間でのリフト特性の応答変化を合わせる制御を行わせながら、デューティ比として最大値(100%)が出力されるまで待機し、最大値(100%)が出力されるようになれば、作動応答R3R,R3Lの計測を行わせる。
尚、前記両バンク間でのリフト特性の応答変化を合わせる制御における応答が速い方の可変リフト機構は、デューティ比が減少補正され、デューティ比が最大値(100%)となる機会が減少するが、応答の遅い方の可変リフト機構は、デューティ比が最大値(100%)となる機会を得ることができるので、作動応答R3RないしR3Lの計測、即ち、最大速度RMの設定に影響を与えることはない。
そして、作動応答R3R,R3Lの計測が実施されると、ステップS904へ進んで、計測結果に基づき規範モデル制限部302での制限を行わせ、次のステップS905では、ステップS903で行われる操作量補正を停止させる。
次に、前記規範モデル制限部302における制限処理を、図13のフローチャートに従って説明する。
図13のフローチャートに示すルーチンは、定時割り込みで実行され、ステップS1001では、前回の規範モデル制限部302の出力(制御目標値θtgf)と、今回の規範モデル301の出力(角度θmo)との偏差Aを算出する。
A=前回の目標値θtgf−今回の目標角度θmo
そして、次のステップS1002では、前記偏差Aの絶対値が、「最大速度RM×制御周期T(ms)」以下であるか否かを判断する。
前記偏差Aの絶対値が「最大速度RM×制御周期T」に一致する場合、作動応答の遅い側のバンクにおいて最大速度RMとなる最大デューティ比(100%)を出力することで、制御周期T後には、今回の規範モデル301の出力(角度θmo)に到達することができることになる。
また、前記偏差Aの絶対値が「最大速度RM×制御周期T」未満であれば、作動応答が遅い側のバンクにおいても、最大デューティを下回るデューティ比を与えることで、制御周期T後には今回の規範モデル301の出力(角度θmo)に到達することができることになり、いずれの場合も、作動応答が遅い側のバンクで、今回の規範モデル301の出力(角度θmo)に実際の制御量を追従変化させることができることになる。
従って、前記偏差Aの絶対値が「最大速度RM×制御周期T」以下であれば、ステップS1003へ進み、規範モデル制限部302が、今回の規範モデル301の出力(角度θmo)に制限を加えることなく、そのまま制御目標値θtgfとして出力するようにする。
一方、前記偏差Aの絶対値が「最大速度RM×制御周期T」よりも大きい場合には、作動応答の遅いバンク側では、たとえ最大デューティ比(100%)を与えたとしても、制御周期T後に、今回の規範モデル301の出力(角度θmo)に到達させることができないことになり、実際に到達できるのは、前回の規範モデル制限部302の出力(制御目標値θtgf)から、「最大速度RM×制御周期T」だけ変化した位置である。
そこで、前記偏差Aの絶対値が「最大速度RM×制御周期T」よりも大きいと判断された場合には、ステップS1004へ進み、前回の規範モデル制限部302の出力(制御目標値θtgf)から「最大速度RM×制御周期T」だけ変化した角度を、制御目標値θtgfとして出力させるようにする。
尚、目標角度θtgの増大変化時であれば、前回の規範モデル制限部302の出力(制御目標値θtgf)から「最大速度RM×制御周期T」だけ大きな角度を、今回の制御目標値θtgfとし、目標角度θtgの減少変化時であれば、前回の規範モデル制限部302の出力(制御目標値θtgf)から「最大速度RM×制御周期T」だけ小さい角度を、今回の制御目標値θtgfとする。
また、目標角度θtgの増大変化時であるか、減少変化時であるかによって、最大速度RMを個別に求める場合には、そのときの目標角度θtgの変化方向に対応する最大速度RMを用いるようにする。
上記のように、最大速度RMで追従できるように、制御目標値θtgfの変化を制限すれば、作動応答が遅い側のバンクにおいても、実際の角度θを制御目標値θtgfに追従変化させることができる。
従って、作動応答の違いによって、両バンク間で過渡的に吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量の違いが生じて燃焼ばらつきが発生することを抑制でき、過渡時の運転性を向上させることができる。
前記規範モデル制限部302における制限処理としては、図13のフローチャートに示した処理の他、図14のフローチャートに示す処理を行わせることができる。
図14のフローチャートに示すルーチンは定時割り込みによって実行され、ステップS1101では、目標値θtgと該目標値θtgの変化に対して最大速度RMで追従する角度との偏差Bの絶対値と、目標値θtgと規範モデル出力角度θmoとの偏差Cの絶対値とを比較する。
そして、前記偏差Bの絶対値が偏差Cの絶対値以上である場合、換言すれば、目標値θtgに対して最大速度RMで追従する角度よりも角度θmoの方が、目標値θtgに近い場合には、ステップS1102へ進み、目標値θtgの変化に対して最大速度RMで追従する角度を、今回の目標値θtgfに設定することで、規範モデル出力角度θmoよりも応答の遅い角度に目標値θtgfを制限する。
即ち、前記偏差Bの絶対値が偏差Cの絶対値以上であるということは、最大速度RMによる応答では、規範モデル出力角度θmoに実際の角度を追従変化させることができないことを示すので、目標値θtgの変化に対して最大速度RMで追従する角度を目標値θtgfに設定することで、目標値θtgfを実際の角度を追従させることができる値に制限する。
一方、前記偏差Bの絶対値が偏差Cの絶対値よりも小さい場合、即ち、角度θmoよりも、目標値θtgに対して最大速度RMで追従する角度が、目標値θtgにより近い場合には、ステップS1103へ進み、今回の規範モデル出力角度θmoをそのまま目標値θtgfに設定し、前記規範モデル制限部302で制限されないようにする。
即ち、前記偏差Bの絶対値が偏差Cの絶対値よりも小さい場合、規範モデル出力角度θmoよりも速い応答で実際の角度を変化させることができることを示すが、規範モデル出力角度θmoは理想の変化応答であり、規範モデル出力角度θmoよりも速い応答で実角度を変化させることはオーバーシュートなどを発生させる可能性があって好ましくないので、規範モデル出力角度θmoをそのまま目標値θtgfに設定する。
図13のフローチャートに示すルーチンと、図14のフローチャートに示すルーチンとは、同一条件で同じ目標値θtgfに制限することになるが、最大速度RMで追従できる規範モデル出力角度θmoが設定されているか否かを判断する手段が異なる。
図15(A)は、規範モデル制限部302による制限を停止させた場合(規範モデル制限部302を備えない場合)の目標値θtgf(規範モデル)の変化を、目標値θtg及び該目標値θtgに対して最大速度RMで追従する実角度θと共に示すタイムチャートであり、図15(B)は、規範モデル制限部302が制限を行う場合(規範モデル制限部302を備える場合)の目標値θtgfの変化を、目標値θtg及び該目標値θtgに対して最大速度RMで追従する実角度θと共に示すタイムチャートである。
図15(A)に示すように、両バンクのうちの遅い側の作動応答である最大速度RMが、目標値θtgfの変化速度よりも遅いと、応答が遅い側の制御量の変化は、前記最大速度RMで律速されることになり、例えば、応答が速い側の制御量が目標値θtgf(規範モデル)に追従変化すると、両バンク間には、図15(A)の最大速度RMで変化する実角度θと目標値θtgfとの差に対応するバルブ作動角・バルブリフト量の差を生じることになる。
これに対し、図15(B)に示すように、規範モデル制限部302による制限動作が行われた場合には、最大速度RMで追従できるように、目標値θtgfの変化が制限されるから、応答が遅い側の制御量も目標値θtgfに追従変化させることができ、両バンクのバルブ作動角・バルブリフト量が共に目標値θtgfの変化に沿って変化し、バンク間でバルブ作動角・バルブリフト量に差が生じることが抑制されるから、バンク間で燃焼ばらつきが発生することを抑制でき、過渡時の運転性を向上させることができる。
尚、上記実施形態では、内燃機関を2つのバンクによって構成される機関としたが、W型機関のような3つのバンクによって構成される機関であってもよく、その場合は、3つのバンクに備えられる可変動弁機構それぞれについて作動応答を検出し、これらの中で最も遅い作動応答を最大速度RMとして、該最大速度RMに基づいて目標値θtgfの変化を制限すればよい。
また、上記実施形態では、作動応答を検出する可変動弁機構を可変リフト機構134a,134bとしたが、可変バルブタイミング機構133a,133bそれぞれについて作動応答を検出して最大速度RMを求め、バルブタイミング(中心位相)の目標変化を、前記最大速度RMによって制限させることができる。
また、可変動弁機構は、排気バルブ111(排気カムシャフト132)に備えられる機構であってもよい。
また、可変動弁機構の作動応答の検出においては、制御量を一定の方向に変化させる操作量のうちの応答が最も速くなる操作量を出力させればよく、例えば、前記可変バルブタイミング機構133a,133bのように、デューティ比50%でそのときのバルブタイミングを保持し、デューティ比100%で進角方向に最大速度で変化し、デューティ比0%で遅角方向に最大速度で変化する場合には、デューティ比100%を与えたときの単位時間当たりの進角変化量を作動応答として検出すると共に、デューティ比0%を与えたときの単位時間当たりの遅角変化量を作動応答として検出すればよい。
また、デューティ比の最大値が、100%未満に制限される場合には、出力し得る最大デューティ比の出力状態で、作動応答を計測させればよい。
また、各バンクにおける作動応答を検出するために、作動応答が最大となる操作量を強制的に出力させることができ、前記作動応答が最大となる操作量の強制出力は、減速燃料カット状態などの運転性に影響を与えない条件で行わせることが好ましい。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項1又は2記載の可変動弁機構の制御装置において、
機関運転状態に基づいて設定したリフト特性の目標値θtgを、規範モデルに従って規範応答の目標値θmoに変換する規範応答変換手段と、
前記選択された作動応答に基づいて前記規範応答の目標値θmoに制限を加えて、最終的な目標値θtgfとして出力する制限手段と、
を含む可変動弁機構の制御装置。
上記発明によると、選択された作動応答が、規範応答の目標値θmoに追従できる場合には、規範応答の目標値θmoに沿ってリフト特性を変化させ、選択された作動応答が、規範応答の目標値θmoに追従できない場合には、規範応答の目標値θmoに制限を加えることで、最終的な目標値θtgfを実現可能な作動応答に近づける。
(ロ)請求項(イ)記載の可変動弁機構の制御装置において、
前記規範応答の目標値θmoが、前記選択された作動応答を上回る応答を示す場合に、前記選択された作動応答で、前記目標値θtgに追従する目標値θtgfを出力する可変動弁機構の制御装置。
上記発明によると、規範応答の目標値θmoに追従変化させることができないバンクが存在する場合には、規範応答の目標値θmoよりも応答変化が遅く、選択された作動応答で追従することができるように制限し、複数バンクが追従変化できる目標値θtgfを設定する。
(ハ)請求項1又は2記載の可変動弁機構の制御装置において、
最大の作動応答となる操作量が前記可変動弁機構に出力されている状態の継続時間が、所定時間T1に達してから所定時間T2(T2>T1>0)になるまでの間でのリフト特性の変化量を、作動応答を示すデータとして検出する可変動弁機構の制御装置。
上記発明によると、最大の作動応答となる操作量が出力されるようになった初期においては、例えば、リフト特性の変化方向の反転などが生じている可能性があり、係る期間を含めて作動応答を検出させると、作動応答の検出精度が低下するので、最大の作動応答となる操作量が出力されるようになった初期の期間を除外して、作動応答の検出を行わせる。
(ニ)請求項1又は2記載の可変動弁機構の制御装置において、
前記選択された作動応答を、温度条件毎に記憶し、そのときの温度条件に対応して記憶されている作動応答に基づいて前記操作量の演算を行う可変動弁機構の制御装置。
上記発明によると、温度条件による作動応答の違いを学習するので、温度条件が変化しても、実現可能な作動応答に沿ってリフト特性を変化させることができ、バンク間でのリフト特性のばらつきを抑制できる。