JP2012154688A - 構造解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定対象試料中に含まれる分析対象元素が極めて微量であっても、その分析対象元素の構造解析を従来よりも正確に行うことができる構造解析方法を提供する。
【解決手段】分析対象元素に関するX線吸収スペクトルを得るための標準試料と、測定対象試料に含まれる分析対象元素の0.1〜10倍の分析対象元素をマトリックス中に含む2次試料とを用意する。次いで、標準試料のX線吸収スペクトル(標準スペクトル)と、2次試料のX線吸収スペクトル(2次スペクトル)とを比較することで、測定対象試料における分析対象元素に関連する蛍光X線のエネルギー範囲である関心領域を決定する。そして、その決定した関心領域に基づいて測定対象試料のX線吸収スペクトルである目的スペクトルを求める。
【選択図】図3

Description

本発明は、X線を用いた構造解析方法に関する。
X線を用いた分析方法の一つとして、測定対象試料に照射する照射X線のエネルギーを変化させ、その変化させたエネルギーに応じて得られるX線吸収スペクトルから測定対象試料に含まれる微量の分析対象元素の化学結合状態や電子の状態、局所的な構造解析を行うXAFS(X線吸収微細構造:X−ray Absorption Fine Structure)法が知られている。そのうち、X線吸収スペクトルを得る手法として、X線の吸収に伴って測定対象試料から放出される蛍光X線の強度を測定する蛍光法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
ここで、測定対象試料がマトリックス中に微量の分析対象元素を含むものであって、そのマトリックスを構成する元素と分析対象元素とで、放出される蛍光X線のエネルギーが近接している場合、マトリックスの元素のXAFS測定結果に分析対象元素のXAFS測定結果が埋もれてしまい、正確な分析対象元素の構造解析が難しい。
蛍光X線のエネルギーが互いに近接する2つの元素の蛍光X線を分離測定するためには、分解能に優れた波長分散型の検出器を利用することが考えられる。しかし、波長分散型検出器は測定感度が低いため、分析対象元素の正確な構造解析には向かない。そこで、分解能では波長分散型に劣るものの、検出感度では波長分散型より優れたエネルギー分散型の検出器を用いた手法が提案されている。
「X線吸収分光法 −XAFSとその応用−」p227−235 太田俊明編 株式会社アイピーシー 2002年6月28日発行
従来手法をより詳細に説明すると、以下の工程α〜δを備える。
[工程α]
分析対象元素に関するX線吸収スペクトルを得るための標準試料を準備する。例えば、測定対象試料からマトリックスを除いたものを標準試料として利用できる。
[工程β]
測定対象試料と標準試料について、照射X線のエネルギーごとの蛍光X線スペクトルを求める。蛍光X線スペクトルは、蛍光X線のエネルギーと、そのエネルギーを持った蛍光X線の検出頻度(強度)と、の相関関係である。
[工程γ]
標準試料について求めた蛍光X線スペクトルに基づいて、分析対象元素に関連する蛍光X線のエネルギーの範囲である関心領域を決定する。関心領域の決定は、コンピューターが自動で行っても良いし、作業者が行っても良い。
[工程δ]
図5は、工程δを模式的に示す図である。図5の上段に例示されるように、測定対象試料について求めた各蛍光X線スペクトルにおいて、工程γで決定した関心領域に対応する部分(図中の斜線部分)を切り出して、図5の下段に示すように、その切り出した部分の面積と照射X線のエネルギーとの対応関係で表されるX線吸収スペクトルを求める。
以上説明したように、関心領域の切り出しを行うことで、測定対象試料に微量含まれる分析対象元素の原子構造に関する情報を持ったX線吸収スペクトルを得ることができる。
しかし、上述した従来の手法であっても、測定対象試料に含まれる分析対象元素の含有量が小さくなるほど分析対象元素に関する正確なX線吸収スペクトルを得ることが難しく、測定対象試料における十分な分析対象元素の構造解析を行うことができないという問題がある。その代表例として、GaNのマトリックス中にMgを極微量含有させたp型半導体を挙げることができる。Gaの蛍光X線のエネルギーとMgの蛍光X線のエネルギーとが互いに近接する上、p型半導体におけるMgの含有量は、およそ1019(Mgの原子数/半導体の体積cm)オーダー以下という極めて微量な含有量である。このようなp型半導体において従来の手法を用いると、図5に示す関心領域の切り出しの際、下限側でGaの測定結果にMgの測定結果が埋もれてしまい、Mgに関する正確なX線吸収スペクトルを得ることができなくなってしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、測定対象試料中に含まれる分析対象元素が極めて微量であっても、その分析対象元素の構造解析を従来よりも正確に行うことができる構造解析方法を提供することにある。
本発明は、マトリックス中に微量の分析対象元素を含む測定対象試料に、X線のエネルギーを変化させながらX線を照射し、その照射X線のエネルギーに応じて測定対象試料から放出される蛍光X線をエネルギー分散型検出器で検出することで得られるX線吸収スペクトルから分析対象元素の原子構造に関する情報を解析する構造解析方法に関する。この本発明構造解析方法では、まず分析対象元素に関するX線吸収スペクトルを得るための標準試料と、測定対象試料に含まれる分析対象元素の0.1〜10倍の分析対象元素をマトリックス中に含む2次試料とを用意する。次いで、これら標準試料と2次試料のX線吸収スペクトルを比較することで、測定対象試料における分析対象元素に関連する蛍光X線のエネルギー範囲である関心領域を決定する。そして、その決定した関心領域に基づいて測定対象試料のX線吸収スペクトルである目的スペクトルを求める。
本発明構造解析方法で測定する測定対象試料は、そのマトリックス中に含まれる元素と、測定対象となる分析対象元素とが、近接する蛍光X線のエネルギーを持つものであれば特に限定されない。例えば、GaNからなるマトリックス中に、分析対象元素としてMgを極微量含有するp型半導体などを挙げることができる。一般的なp型半導体におけるMgの含有量は、およそ1019(Mgの原子数/半導体の体積cm)オーダー以下と極めて微量である。なお、Mgが1021オーダーであれば、従来方法でもかなり正確なX線吸収スペクトルを得ることができる。
上記本発明構造解析方法によれば、測定対象試料の大部分を占める元素の蛍光X線のエネルギーと、測定対象試料に極微量含まれる分析対象元素のエネルギーとが近接していても、分析対象元素に関するかなり正確なX線吸収スペクトル(目的スペクトル)を得ることができる。そのため、得られた目的スペクトルに基づいて、測定対象試料に極めて微量含まれる分析対象元素の構造解析を行うことができる。また、本発明の方法によれば、従来方法でも解析可能な程度の含有量の分析対象元素を含む測定対象試料に対して、従来方法よりも高精度に分析対象元素の解析を行うことができると考えられる。
以下、本発明の好ましい態様について詳細に説明する。
上記本発明構造解析方法は、以下の工程A〜Gを備えることが好ましい。以下、各工程を詳細に説明する。
[工程A]
工程Aは、分析対象元素に関するX線吸収スペクトルを得るための標準試料を準備する工程である。より具体的には、標準試料は、分析対象元素もしくは分析対象元素の化合物を含むが、分析対象元素のX線吸収スペクトルに重複するX線吸収スペクトルを持つ阻害元素をほぼ含まないか、全く含まない試料である。標準試料に阻害元素が含まれる場合、その阻害元素の原子数は、分析対象元素の1%以下とする。そうすることで、阻害元素のX線吸収スペクトルが、分析対象元素に関する適切なX線吸収スペクトルの把握を妨げない。例えば、GaNのマトリックス中に微量のMgを含むp型半導体が測定対象試料であれば、標準試料は、MgもしくはMg化合物(例えば、MgOなど)を含むものとする。そして、標準試料にGa(阻害元素)が含まれていたとしても、そのGaの原子数は、Mgの原子数の1%以下とする。ここで、標準試料には、分析対象元素のX線吸収スペクトルに重複しないX線吸収スペクトルを有する元素(非関心元素)を含んでいても良く、標準試料の大半が非関心元素で占められていても良い。
[工程B]
工程Bは、測定対象試料と同じマトリックス中に、測定対象試料に含まれる分析対象元素の0.1〜10倍の分析対象元素を含む2次試料を準備する工程である。2次試料の調整は、測定対象試料中の分析対象元素の含有量を測定した上で行うと良い。測定対象試料に含まれる分析対象元素の量(原子数)は、測定対象試料を作製する際の原料の割合から計算で求めても良いし、実際に測定対象試料をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy:2次イオン質量分析法)により分析することで求めても良い。
[工程C]
工程Cは、標準試料についてX線吸収スペクトルを得る工程である。標準試料のX線吸収スペクトルは、後述する2次試料や測定対象試料と同様に蛍光法により得ても良いし、透過法や電子収量法により得ても良い。一般的なX線吸収スペクトルでは、横軸に照射X線のエネルギー、縦軸に測定方法に依存した任意量を設定するため、測定方法が異なればX線吸収スペクトルの縦軸の値も変化する。しかし、いずれの方法を選択しても、得られるX線吸収スペクトルの形状は近似している。
[工程D]
工程Dは、測定対象試料と2次試料について、照射X線のエネルギーごとの蛍光X線スペクトルを求める工程である。蛍光X線スペクトルは、既に説明したように、蛍光X線のエネルギーと、そのエネルギーを持った蛍光X線の検出頻度(強度)と、の相関関係である。
[工程E]
工程Eは、工程Dにおいて求めた2次試料に関する各蛍光X線スペクトルにおいて、暫定的に決定した関心領域に対応する部分を切り出して、その切り出した領域の面積と照射X線のエネルギーとの対応関係で表されるX線吸収スペクトルである2次スペクトルを求める工程である。工程Eではさらに、上記関心領域を徐々に狭め、その狭めた関心領域に対応する2次スペクトルを複数求めておく。
暫定的な分析対象元素に関連する蛍光X線のエネルギー範囲である関心領域は、分析対象元素に応じて適宜決定する。分析対象元素からは固有のエネルギーを有する蛍光X線が放出されるため、その固有のエネルギーを含む所定範囲を関心領域として定めれば良い。例えば、関心領域を1000〜1300eVと定めた場合、まずその関心領域に対応する2次スペクトルを求める。そして、関心領域の上限または下限のいずれか一方を固定し、他方を一定値(例えば、10eV)ずつ切り上げることで狭めていき、その狭めた関心領域に基づく2次スペクトルを求めることを繰り返す。関心領域を狭める際、上限と下限のうち、マトリックスの元素の測定結果に分析対象元素の測定結果が埋もれてしまうことが無い方を固定する。例えば、GaとMgを含む測定対象試料において、Mgが分析対象元素となる場合、Mgの蛍光X線のエネルギーがGaの蛍光X線のエネルギーよりも高いため、関心領域の上限側でMgの測定結果にGaの測定結果が埋もれてしまうことは無い。その場合、関心領域の上限を固定し、下限を切り上げていく。
[工程F]
工程Fは、工程Eで得られた複数の2次スペクトルのうち、工程Cで得られた標準スペクトルの形状に類似する形状を有する2次スペクトルを決定する工程である。この2次スペクトルの決定は、あくまで標準スペクトルと2次スペクトルの形状を比較することで行われる。従って、標準スペクトルが蛍光法で得られたものであっても、透過法や電子収量法で得られたものであっても、蛍光法で得られた2次スペクトルと比較することができる。また、工程Fがスペクトルの形状の類似性を比較する工程であるという観点から、2次試料におけるMg含有量が測定対象試料よりも低かったとしても、その2次試料から得られる複数の2次スペクトルの中から標準スペクトルに類似するものを選抜することはできる。このような2次スペクトルの決定は、人為的に行っても良いし、コンピューターが自動で行っても良い。
工程Fで決定した2次スペクトルは、工程Fで選抜から漏れた2次スペクトルよりも、標準試料の標準スペクトルの形状に近い形状を有するスペクトルである。つまり、工程Fで決定した2次スペクトルの関心領域の設定は、マトリックスが大量に存在する状態であっても、そのマトリックスの影響を極力排除した分析対象元素に関するX線吸収スペクトルを得ることができる関心領域の設定であるといえる。そこで、工程Fで決定した2次スペクトルを利用して次の工程Gを行う。
[工程G]
工程Gは、工程Dにおいて求めた測定対象試料に関する各蛍光X線スペクトルにおいて、工程Fで決定した2次スペクトルの関心領域と同一の関心領域に対応する部分を切り出して、その切り出し部分の面積と、照射X線のエネルギーとの対応関係で表されるX線吸収スペクトルである目的スペクトルを求める工程である。上述したように、工程Fで決定した2次スペクトルの関心領域は、マトリックスの影響を極力排除できる関心領域である。従って、工程Gで求めた目的スペクトルは、マトリックス中に極めて微量含まれる分析対象元素の原子構造に関する情報を正確に得ることができるX線吸収スペクトルであるといえる。
以上説明した本発明構造解析方法の一形態として、工程Eの2次スペクトルおよび工程Gの目的スペクトルは、差分スペクトルから求めても良い。差分スペクトルとは、照射X線の各エネルギーに応じた蛍光X線スペクトルから、照射X線のエネルギーが特定値のときの蛍光X線スペクトルを引いたものである。例えば、特定値を1290eVに設定した場合、照射X線のエネルギーが1291,1292,1293…eVのときの各蛍光X線スペクトルから1290eVの蛍光X線スペクトルを引いた複数の差分スペクトルを求め、これら差分スペクトルにおいて関心領域の切り出しを行って、2次スペクトルや目的スペクトルを作成する。
本発明構造解析方法によれば、測定対象試料に極めて微量含まれる分析対象元素の構造解析を行うことができる。
本発明構造解析方法において、標準試料の測定結果から標準スペクトルを求める手順を模式的に示す説明図である。 本発明構造解析方法において、2次試料の測定結果から2次スペクトルを求める手順を模式的に示す説明図である。 標準試料のX線吸収スペクトルと、関心領域を変化させたときの測定対象試料のX線吸収スペクトルとを対比する説明図である。 差分スペクトルの求め方を示す説明図である。 従来の構造解析方法において、測定対象試料の測定結果から測定対象試料のX線吸収スペクトルを求める手順を模式的に示す説明図である。
<実施例>
以下、本発明構造解析方法を用いてp型半導体におけるMgのX線吸収スペクトルを求める手法を図1〜3に基づいて説明する。この構造解析方法は、作製したp型半導体におけるMgの状態を解析することで、より品質に優れるp型半導体を作製する参考とするために行うものである。
測定対象試料であるp型半導体は、GaNからなるマトリックス中に、微量のMg(分析対象元素)が分散されたものである。GaとMgは、吸収する照射X線のエネルギーも近接するし、放射される蛍光X線のエネルギーも近接する点で、従来の手法では分析困難な組み合わせといえる。
p型半導体中のMg含有量は3×1019(Mgの原子数/半導体の体積cm)である。Mg含有量は、p型半導体の作製の際に使用した材料比から予想したものである。なお、Mg含有量は、SIMSで実測しても良い。
上記p型半導体に対して、以下の工程A〜Gを行い、p型半導体におけるMgのX線吸収スペクトル(目的スペクトル)を求める。
[工程A]
まず、標準試料として、p型半導体の分析対象元素であるMgの化合物であるMgOの粉体(薄板でも良い)を準備した。標準試料の準備量は、特に限定されない。なお、標準試料は、Mgに関する適切なX線吸収スペクトルを得ることを妨げる量のGaを含まないMg化合物であれば何でも良い。具体的には、標準試料におけるGaの原子数が、Mgの原子数の1%以下であれば良い。実質的にMg化合物からなるものが標準試料として好ましい。
[工程B]
2次試料として、GaNとMgOとの粉体混合物を準備した。この2次試料におけるMgの含有量は、1.26×1020(Mg原子数/粉体混合体の体積cm)とした。2次試料におけるMg含有量は、p型半導体におけるMg含有量の0.1〜10倍の範囲である。下限値を下回ると、2次試料から適切なスペクトルを得るために必要な時間が長くなってしまう。また、上限値を超えると、2次試料から得られるスペクトルを用いて適切な関心領域を設定することが難しくなる。いずれにせよ、2次試料を準備した意味がなくなる恐れがある。2次試料における好ましいMg含有量は、p型半導体におけるMg含有量の0.8〜1.2倍、より好ましくは同程度である。
[工程C]
本例では、標準試料について蛍光法によりX線吸収スペクトルを求めた。具体的には、まず標準試料に、X線のエネルギーを変化させながらX線を照射した。標準試料からはX線のエネルギーに対応した蛍光X線が放出されるので、その蛍光X線を、エネルギー分散型検出器で検出した。検出器は、蛍光X線の検出頻度(強度)も計測する。
次いで、得られた検出結果から、照射X線のエネルギーごとの蛍光X線スペクトルを求めた(図1の上段を参照)。蛍光X線スペクトルとしては、例えば、横軸に蛍光X線のエネルギーを、縦軸に蛍光X線の検出頻度を設定したものを挙げることができる。
そして、複数の蛍光X線スペクトルから、特にMgに関連すると考えられる領域(関心領域)を切り出して、標準試料に関するX線吸収スペクトル(標準スペクトル)を得る。この段階における関心領域は、任意に決定すると良い。本実施形態では、分析対象元素はMgであって、その場合、およそ1200〜1300eVの範囲を関心領域とすることが一般的である。なお、本実施形態で使用した検出器では、蛍光X線のエネルギーを無次元のchannel数で記憶しており、上述した関心領域は図1中の450〜600channelに相当する。
複数の蛍光X線スペクトルから標準スペクトルを得る手法を図1に基づいて説明する。まず、図1の上段に例示する標準試料の各蛍光X線スペクトルについて450〜600channelに対応する部分の面積(斜線部)を算出した。そして、図1下段に示すように、横軸を照射X線のエネルギー(eV)、縦軸を450〜600channelに対応する部分の面積(蛍光収量:Fluorescence Yield)とした標準試料の標準スペクトルを作成した。
[工程D]
次いで、測定対象試料と2次試料について、標準試料と同様に蛍光法により測定データを取得し、その測定データに基づいて測定対象試料と2次試料の蛍光X線スペクトルを得た。
[工程E]
工程Dで求めた2次試料に関する複数の蛍光X線スペクトルから、工程Cで暫定的に定めた関心領域を用いて2次試料のX線吸収スペクトル(2次スペクトル)を求めた。具体的には、まず、図2上段に例示する2次試料の各蛍光X線スペクトルについて450〜600channelに相当する部分の面積(斜線部)を算出した。そして、図2下段に示すように、横軸を照射X線のエネルギー(eV)、縦軸を450〜600channelに対応する部分の面積(蛍光収量)とした2次試料の2次スペクトルを作成した。さらに、この工程Eでは、図2上段の白抜き矢印に示すように、channel数を切り上げることで関心領域を狭めていき、その狭めた関心領域に応じた2次スペクトルを作成した。関心領域の下限値は、450,460,470,480,490,500channelの6つ、上限値は600channelに固定した。つまり、作成した2次スペクトルは全部で6つである。
[工程F]
次に、工程Eで得た6つの2次スペクトルと、工程Cで得た標準スペクトルとを比較し、6つの2次スペクトルのなかから最も標準スペクトルに類似する形状のものを決定した。標準スペクトルと、関心領域の下限値が450,470,500channelである3つの2次スペクトルとの比較状態を図3に示す。この図3から明らかなように、500channelを下限値とする2次スペクトルが、最も標準スペクトルの形状を類似するスペクトルであることがわかった。特に、標準スペクトルにおける1300〜1310eVにかけての傾斜や、1310eV付近の谷の状態を、500channelを下限値とする2次スペクトルが良く再現していることがわかる。
上記決定は自動で行っても良いし、人為的に行っても良い。自動で行う場合、例えば、標準スペクトルにおいて標準スペクトルの形状を決定する何点かの特徴点を設定しておき、その特徴点に対する2次スペクトルのズレの合計が所定値以下となった2次スペクトルを標準スペクトルに類似する2次スペクトルとすると良い。この決定方法で複数の2次スペクトルが選択された場合、関心領域が最も大きいものを選択するなどすれば良い。
なお、2次試料のMg含有量が測定対象試料の10倍超であると、得られる6つの2次スペクトルの間にあまり形状の変化が認められなくなる。その結果、工程Fで標準スペクトルの形状に類似する形状を有する2次スペクトルを選択することが困難になる恐れがある。
[工程G]
最後に、工程Fで決定した2次スペクトルの関心領域を、測定対象試料の関心領域として設定し、測定対象試料であるp型半導体のX線吸収スペクトル(目的スペクトル)を作成する。目的スペクトルの作成手順は、図2を参照した工程Eの2次スペクトルの作成と同様である。
以上説明した工程を経て得られた目的スペクトルは、p型半導体におけるMgの原子構造に関する情報を得ることに好適なX線吸収スペクトルであると考えられる。その理由は、工程Fを経て決定された関心領域の設定範囲が、マトリックスの影響を極力排除することができる設定範囲であるからである。
<変形例>
上記実施例において、2次スペクトルと目的スペクトルの作成の際に、差分スペクトルを用いても良い。差分スペクトルを用いることで実施例の手法よりも優れたMgの原子構造に関する情報を得ることができる目的スペクトルを得られる可能性がある。以下、図4を参照して、差分スペクトルの作成方法の一例を説明する。
図4の下段には、点線で示される1290eVの照射X線に対する蛍光X線スペクトルと、実線で示される1320eVの照射X線に対する蛍光X線スペクトルが示されている。そして、図4の上段には、後者の蛍光X線スペクトルから前者の蛍光X線スペクトルを引いた差分スペクトルが示されている。
実際に差分スペクトルから2次スペクトルや目的スペクトルを作成する際は、例えば照射X線が1290eVのときの蛍光X線スペクトルを基準スペクトルとし、他のエネルギー値の蛍光X線スペクトルから基準スペクトルを引いた複数の差分スペクトルを作成する。そして、これら差分スペクトルにおいて関心領域に対応する部分の切り出しを行って、2次スペクトルや目的スペクトルを作成する。差分スペクトルにおいても、関心領域に対応する部分の面積を2次スペクトルや目的スペクトルの蛍光収量として扱うと良い。
ここで、差分スペクトルを用いる場合は、適宜な補正を行うことが好ましい。補正としては、例えば、照射X線強度変動の補正を行うことが考えられる。
なお、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは言うまでもない。
本発明構造解析方法は、測定対象試料のマトリックスに極微量含有される分析対象元素の原子構造の同定に好適に利用可能である。

Claims (5)

  1. マトリックス中に微量の分析対象元素を含む測定対象試料に、X線のエネルギーを変化させながらX線を照射し、その照射X線のエネルギーに応じて測定対象試料から放出される蛍光X線をエネルギー分散型検出器で検出することで得られるX線吸収スペクトルから前記分析対象元素の原子構造に関する情報を解析する構造解析方法であって、
    前記分析対象元素に関するX線吸収スペクトルを得るための標準試料と、前記測定対象試料に含まれる分析対象元素の0.1〜10倍の分析対象元素を前記マトリックス中に含む2次試料と、を用意し、
    これら標準試料と2次試料のX線吸収スペクトルを比較することで、前記測定対象試料における分析対象元素に関連する蛍光X線のエネルギー範囲である関心領域を決定し、
    その決定した関心領域に基づいて前記測定対象試料のX線吸収スペクトルである目的スペクトルを求めることを特徴とする構造解析方法。
  2. 前記標準試料を準備する工程Aと、
    前記2次試料を準備する工程Bと、
    前記標準試料についてX線吸収スペクトルである標準スペクトルを求める工程Cと、
    照射X線のエネルギーに対応した前記2次試料および測定対象試料に関する複数の蛍光X線スペクトルを求める工程Dと、
    工程Dにおいて求めた2次試料に関する各蛍光X線スペクトルにおいて、暫定的に決定した関心領域に対応する部分を切り出して、その切り出した領域の面積と照射X線のエネルギーとの対応関係で表されるX線吸収スペクトルである2次スペクトルを求めることを、前記関心領域を徐々に狭めながら繰り返す工程Eと、
    工程Eで得られた複数の2次スペクトルのうち、工程Cで得られた標準スペクトルの形状に類似する形状を有する2次スペクトルを決定する工程Fと、
    工程Dにおいて求めた測定対象試料に関する各蛍光X線スペクトルにおいて、工程Fで決定した2次スペクトルの関心領域と同一の関心領域に対応する部分を切り出して、その切り出し部分の面積と、照射X線のエネルギーとの対応関係で表される目的スペクトルを求める工程Gと、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の構造解析方法。
  3. 前記分析対象元素がMgであり、かつ、
    前記測定対象試料のマトリックスにGaが含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の構造解析方法。
  4. 前記測定対象試料のマトリックスに含まれるMgは、1019(原子数/cm)オーダー以下であることを特徴とする請求項3に記載の構造解析方法。
  5. 前記2次スペクトルおよび目的スペクトルは、照射X線の各エネルギーに応じた蛍光X線スペクトルから、照射X線のエネルギーが特定値のときの蛍光X線スペクトルを引いた差分スペクトルから得ることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の構造解析方法。
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