JP2012136794A - 剥離紙用原紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い目止め性能を有することに加えて、優れた印刷適性及び印刷時の搬送適性を有する剥離紙用原紙を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基紙と、この基紙の少なくとも片面に形成され、顔料及びバインダーを含む目止め塗工層とを有する剥離紙用原紙であって、上記顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有することを特徴とする。上記顔料全体の体積平均粒子径が0.5μm以上5μm以下であるとよい。また、上記平板顔料の粒度分布において、粒径が0.5μm未満の粒子の含有量と、粒径が0.5μm以上の粒子の含有量との比が、質量基準で1:9以上4:6以下であるとよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、剥離紙用原紙に関する。
従来、剥離紙は、トルエン等の有機溶媒で希釈されたシリコーン樹脂等の剥離剤を、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クリアコート紙等の剥離紙用原紙に塗工して製造されている。
剥離紙用原紙に対する要求特性としては、シリコーン樹脂が非常に高価であることから、少量のシリコーン溶液を均一に塗工し得ることが挙げられる。この要求を満たすためには、シリコーン溶液の原紙内部への浸透を極力抑えることが重要であり、このため上記ポリエチレンラミネート紙を基材として用いることが有効な手段とされている。しかしながらポリエチレンラミネート紙は、紙表面に疎水性が高い連続被膜が形成されている。このため、剥離紙として使用が終了した後に古紙として回収し、製紙原料として用いることが困難である。一方、グラシン紙、クリアコート紙等を剥離紙用原紙として用いた剥離紙の場合は、耐浸透性がポリエチレンラミネート紙に比べて不足するので、充分な剥離性能を得ることができないという不都合がある。
そこで、ポリエチレンをラミネートすることなく直接シリコーン溶液を効果的に塗工することが可能な剥離紙用原紙として、無機顔料と有機バインダーとを主成分とする塗料の塗工により形成される目止め層を備える剥離紙用原紙(特公平1−35959号公報及び特開平4−23876号公報参照)や、アスペクト比等を限定した平板顔料を目止め層(顔料塗工層)に含む剥離用原紙(特開2000−282397号公報参照)が提案されている。このような剥離紙用原紙は、平板顔料が目止め層に積層されることで基紙表面の空隙を埋める効果を有するため、この平板顔料によってシリコーン溶液が目止めされ、シリコーン樹脂の基紙内部への浸透を抑えることができるとされている。
一方、近年の各種紙への高付加価値化の要請にともない、剥離紙用原紙においても、目止め層表面への各種情報等の印刷が試みられている。しかしながら、上述のように改善された目止め層表面はインクの乾燥性、セット性等の印刷適性が優れず、汎用性の高いオフセット印刷方式や凸版印刷方式で印刷することが困難である。さらには、従来の目止め層表面においては、高速印刷時に滑りが生じ、搬送適性が悪いという不都合も有している。
特公平1−35959号公報 特開平4−23876号公報 特開2000−282397号公報
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、高い目止め性能を有することに加えて、優れた印刷適性及び印刷時の搬送適性を有する剥離紙用原紙を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
基紙と、
この基紙の少なくとも片面に形成され、顔料及びバインダーを含む目止め塗工層と
を有する剥離紙用原紙であって、
上記顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有することを特徴とする。
当該剥離紙用原紙は、目止め塗工層において、顔料としてアスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有する。このため、当該剥離紙用原紙の目止め塗工層においては、平板顔料が表面を被覆するとともに、非平板顔料が表面に微細な凹凸形状を形成している。従って、当該剥離紙用原紙によれば、この平板顔料によって剥離剤の基紙内部への浸透が抑えられることで目止め性に優れる。また、当該剥離紙用原紙によれば、非平板顔料によって形成される微細な凹凸形状によって、インクの乾燥性が高まることなどにより印刷適性が向上し、かつ、滑り防止効果により搬送適性を向上させることができる。
上記顔料全体(平板顔料と非平板顔料とを合わせた全体)の体積平均粒子径が0.5μm以上5μm以下であるとよい。当該剥離紙用原紙によれば、顔料の体積平均粒子径を上記範囲とすることで、基紙表面が有する空隙を均一に被覆しつつ、かつ、適度なサイズの凹凸を形成することができる。
上記平板顔料の粒度分布において、粒径が0.5μm未満の粒子の含有量と、粒径が0.5μm以上の粒子の含有量との比が、質量基準で1:9以上4:6以下であるとよい。上記粒度分布を有する平板顔料を用いることで、粒径が0.5μm未満の比較的小さい粒子が基紙表面の空隙に入り込むため、目止め性能をより高めることができる。また、この比較的小さい平板顔料と非平板顔料とにより、表面に微細かつ複雑な凹凸形状が形成され、印刷適性及び搬送適性をさらに向上することができる。
上記平板顔料と非平板顔料との含有比が質量基準で70:30以上98:2以下であるとよい。平板顔料と非平板顔料との含有比を上記範囲とすることで、目止め性と印刷適性等とを好適に両立させることができる。
以上説明したように、本発明の剥離紙用原紙によれば、優れた目止め性能を有することに加え、印刷適性及び印刷時の搬送適性にも優れる。従って、当該剥離紙用原紙によれば、目止め塗工層表面への印刷を容易にすることができる。
以下、本発明の剥離紙用原紙の実施の形態について詳説する。
本発明の剥離紙用原紙は、基紙と、この基紙の少なくとも片面に形成され、顔料及びバインダーを含む目止め塗工層とを有する。
<基紙>
上記基紙としては、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とするものであれば特に制限はなく、上質紙、中質紙や包装用途などで使用されている晒、又は未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)や、純白ロール紙等が任意に使用できる。
<顔料>
上記顔料としては、アスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有する。このため、当該剥離紙用原紙の目止め塗工層においては、平板顔料が表面を被覆するとともに、非平板顔料が表面に微細な凹凸形状を形成している。従って、当該剥離紙用原紙によれば、この平板顔料によって剥離剤の基紙内部への浸透が抑えられることで目止め性に優れる。また、当該剥離紙用原紙によれば、非平板顔料によって形成される微細な凹凸形状によって、インクの乾燥性及びセット性が向上することで印刷適性が高まり、さらに印刷時の滑りが抑制されることで搬送適性を高めることができる。
ここで、アスペクト比とは、顔料の粒子径(フェレー径)をその厚さで除した値をいう。また、この各粒子種におけるアスペクト比は、電子顕微鏡で拡大観測し、任意に抽出した20個の粒子の平均値をいう。
上記顔料全体(平板顔料と非平板顔料とをあわせた全体)の体積平均粒子径としては、0.5μm以上5μm以下が好ましく、1μm以上4μm以下がさらに好ましい。当該剥離紙用原紙によれば、顔料の体積平均粒子径を上記範囲とすることで、基紙表面が有する空隙を均一に被覆しつつ、かつ、適度なサイズの凹凸を形成することができる。
この体積平均粒子径が0.5μm未満の場合は、主に平板顔料による目止め塗工層における均一被覆及び多層積層化が困難になり、目止め性能が十分に発揮されないおそれがある。逆に、この体積平均粒子径が5μmを超える場合は、基紙表面の空隙を埋めにくくなり、また、凹凸のサイズが大きくなるため、目止め性能が低下するおそれがある。顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有することに加え、顔料全体の体積平均粒子径が0.5μm以上5μm以下とされていることで、より高い目止め性能を有することに加えて、優れた印刷適性及び印刷時の搬送適性を有する剥離紙用原紙となる。
ここで、体積平均粒子径とは、光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値をいう。このような測定装置としては、日機装社製レーザー回折粒度分布測定装置〔マイクロトラック/型番:MT−3300〕、コールター社製レーザー回折・光散乱粒度測定装置LS230,LS200,LS100、また島津製作所製レーザー回折式粒度分布装置SALD2000,SALD3000、堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布装置LA910,LA700,LA600などが挙げられる。
上記平板顔料と非平板顔料との含有比としては、質量基準で70:30以上98:2以下が好ましく、80:20以上90:10以下がさらに好ましい。平板顔料と非平板顔料との含有比を上記範囲とすることで、目止め性と印刷適性等とを好適に両立させることができる。
上記平板顔料の平板顔料と非平板顔料との合計に対する含有比が70質量%未満の場合は、この平板顔料による平面状の表面被覆能が低下し、剥離剤が基紙内部へ浸透しやすくなるため、目止め性を十分に発揮することができない。逆に、上記平板顔料の平板顔料と非平板顔料との合計に対する含有比が98質量%を超える場合は、目止め塗工層に非平板顔料による微細な凹凸形状を十分に形成することができず、印刷適性及び搬送適性を十分に高めることができない。さらに、平板顔料の含有比が98質量%を超える場合は、目止め層が溶剤系シリコーン等の塗工の際に、溶剤によりゲル化することで、目止め塗工層自体にベタツキが生じ、粘着性が生じる場合がある。顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料とアスペクト比が5未満の非平板顔料とを質量基準で70:30以上98:2以下含有し、顔料全体の体積平均粒子径を0.5μm以上5μm以下とすることで、さらに高い目止め性能と優れたオフセット・凸版印刷時のインクの乾燥性、セット性などの印刷適性及び印刷時の搬送適性を両立させた剥離紙用原紙となる。
上記平板顔料のアスペクト比は5以上であるが、5以上25以下が好ましく、8以上15以下がより好ましく、9以上12以下がさらに好ましい。また、上記非平板顔料のアスペクト比は5未満であるが、1以上4以下がさらに好ましい。平板顔料及び非平板顔料のアスペクト比を上記範囲とすることで、目止め性と印刷適性及び搬送適性とを共により高めることができる。平板顔料のアスペクト比が25を超えると、顔料粒子の配向がとり難く立体障害を起こし、溶剤の目止め性が低下するおそれがある。また、平板顔料のアスペクト比が5未満では配向性が低下し溶剤の目止め性が弱く塗布量が増えるおそれがある。また、非平板顔料のアスペクト比が5以上では紙表面に微細な凹凸形状を形成することができず、セット性などの印刷適性、搬送適性や目止め性が低下するおそれがある。
上記平板顔料の粒度分布において、粒径が0.5μm未満の粒子の含有量と、粒径が0.5μm以上の粒子の含有量との比が、質量基準で1:9以上4:6以下が好ましく1:9以上3:7以下がより好ましく、1:9以上2:8以下がさらに好ましい。上記粒度分布を有する平板顔料を用いることで、粒径が0.5μm未満の比較的小さい粒子が基紙表面の空隙に入り込むため、目止め性能をより高めることができる。また、この比較的小さい平板顔料と非平板顔料とにより、表面に微細かつ複雑な凹凸形状が形成され、印刷適性及び搬送適性をさらに向上することができる。顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料とアスペクト比が5未満の非平板顔料とを質量基準で70:30以上98:2以下含有し、顔料全体の体積平均粒子径が0.5μm以上5μm以下であり、さらに平板顔料の粒度分布において、粒径が0.5μm未満の粒子の含有量と、粒径が0.5μm以上の粒子の含有量との比が、質量基準で1:9以上4:6以下となるようにすることで、特に高い目止め性能と優れたオフセット・凸版印刷時のインクの乾燥性、セット性などの印刷適性及び印刷時の搬送適性を両立させた剥離紙用原紙となる。
上記平板顔料がクレーであり、上記非平板顔料が炭酸カルシウムであるとよい。当該剥離紙用原紙によれば、平板顔料としてクレーを用い、非平板顔料として炭酸カルシウムを用いることで、より優れた目止め性と印刷適性等とを発揮することができる。上記平板顔料としては、アスペクト比が5以上のものであれば特に限定されないが、例えばクレー(クレー鉱物)、雲母族、脆雲母族、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイト等の中で上記アスペクト比を有するものを挙げることができるが、これらの中でも、クレーが好ましい。また、上記非平板顔料としては、アスペクト比が5未満であるものであれば特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の中で上記アスペクト比を有するものを挙げることができ、これらの中でも、炭酸カルシウムが好ましい。アスペクト比が5未満の炭酸カルシウムとしては、紡錘状軽質炭酸カルシウム、立方体状軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等が挙げられるが、表面に微細な凹凸形状を形成し搬送適性を向上し、かつ適度なインキ吸収性、セット性が得られることから紡錘状軽質炭酸カルシウムが特に好ましい。アスペクト比が5以上の例えば柱状炭酸カルシウムでは、非平板顔料による適度なインキ乾燥性とセットを有する微細な凹凸形状が得られず、搬送適性の向上も得られないおそれがある。当該剥離紙用原紙によれば、平板顔料としてアスペクト比が5以上のクレーを用い、非平板顔料としてアスペクト比が5未満の炭酸カルシウムを用いることで、より優れた目止め性と印刷適性等とを発揮することができる。
上記顔料(顔料全体)とバインダーとの配合比率(固形比)は、100:20〜100:40が好ましい。このような配合比率とすることで、目止め剤の基紙への浸み込み(選択吸収)を防止でき、また、このような目止め塗工層を設けることによって、表面形状を好ましい範囲に好適に形成することができる。
<バインダー>
上記バインダーとしては、合成樹脂製のラテックス等、塗工紙における塗工層を形成する際に用いられる公知のものを用いることができる。
上記ラテックスに用いられる合成樹脂としては、例えばスチレン−ブタジエン系共重合体、アクリル−スチレン系共重合体、メタクリレート−ブタジエン系共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ポリエステル系共重合体、ポリウレタン系共重合体などが挙げられるが、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体単位を主原料として重合された重合接着剤を含むものが好ましく、さらに芳香族ビニル単量体を組み合わせるとともに水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含むものが好ましい。上記水溶性高分子化合物としてはポリビニルアルコールが好ましい。
上記重合接着剤として好適なものとしては、例えば脂肪族共役ジエン系単量体単位20〜60質量部、エチレン系不飽和ニトリル単量体単位5〜60質量部、芳香族ビニル単量体単位0〜10質量部、及びこれらと共重合可能なその他の単量体単位0〜75質量部からなる重合体、並びに水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤であって、上記重合体100質量部に対して、上記水溶性高分子化合物が1〜20質量部結合又は吸着している重合接着剤があげられる。このような重合接着剤としては、日本ゼオン社製のPPT7561等を挙げることができる。
顔料としてアスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有した目止め塗工層のバインダーとして、上記重合接着剤を含むラテックス(バインダー)を用いると目止め適性が損なわれることなく、印刷適性、特にオフセット印刷適性がさらに良好となる。
<多分岐高分子>
上記目止め塗工層は、末端に極性基を有する多分岐高分子、好ましくは末端に水酸基を有する多分岐ポリエステルアミドを含有することが好ましい。上記多分岐高分子は、塗工の際の顔料の分散性を高め、その結果、目止め塗工層において微細な顔料の基紙の背員環への充填性を高めることができる。具体的に説明すると、このような多分岐高分子を使用することで顔料及びラテックス等のバインダーの水酸基に作用し、凝集している超微粒子をミクロ分散させることで、基紙に塗布後不動化する前に基紙表面の毛細管を微粒子で充填し基材への浸透防止を行うことができ、塗料粘度の減粘作用と高保水性を同時に発揮しレベリング速度を速め、かつカレンダーを施さなくとも平坦な目止め塗工層を形成できる。このようにカレンダー処理されていない目止め塗工層は、高密度化されていないため、インクの乾燥性やセット性等が特に高く、より優れた印刷適性等を発揮することができる。顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有することに加え、目止め塗工層に多分岐高分子を含有させることで、溶剤バリヤー性を持った目止め性とインキセット性とを同時に持った凹凸を形成し、高い目止め性能と優れたオフセット・凸版印刷時のインクの乾燥性、セット性などの印刷適性及び印刷時の搬送適性を両立させた剥離紙用原紙となる。
上記多分岐高分子は、例えば環状無水物又はジカルボン酸とアルカノールアミン、好ましくは、ジアルカノールアミンとを公知の方法にて重合させることにより得ることができる。また、このような末端に水酸基を有する多分岐ポリエステルアミドの市販品としては日本DMS社製のトップブレインS−1等を挙げることができる。
上記環状無水物としては、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水(メチル)コハク酸、無水グルタル酸等を挙げることができる。また、上記ジカルボン酸としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸等を挙げることができる。
上記ジアルカノールアミンとしては、ジ−β−アルカノールアミンが好ましく、ジイソブタノールアミン及びジイソプロパノールアミンがさらに好ましい。
上記多分岐高分子の数平均モル質量としては、800g/mol以上16,000g/mol以下が好ましい。このような範囲の数平均モル質量を有する多分岐高分子を用いることで、顔料等のミクロ分散機能等を効果的に発揮することができる。
目止め塗工層中の多分岐高分子の含有量としては、0.2〜10質量%が好ましく、1.0〜5.0質量%がより好ましい。この含有量が0.2質量%未満になると多分岐高分子の特徴であるミクロ分散、減粘作用、高保水性等を得られない場合がある。他方、10質量%を超えると効果が頭打ちになりコスト競争力を悪化させる。
<目止め塗工層>
上記目止め塗工層表面の3次元表面粗さRaとしては、0.6μm〜6μmが好ましく、2μm〜5μmがさらに好ましい。3次元表面粗さRaを上記範囲とすることで、目止め性と印刷適性及び搬送適性とを好適に両立させることができる。3次元表面粗さRaが6μmを超えると、目止め性が低下するおそれがあり、0.6μm未満となると印刷適性や搬送適性が低下するおそれがある。
3次元表面粗さRaをコントロール(調節)する方法は、特に限定されず、例えば、カレンダー処理を用いた方法を採用することもできるが、上述のように顔料として非平板顔料を含有させることや、上記多分岐高分子を塗工層に含有させることで、カレンダー処理を行わなくとも、好適な平坦状態を達成することができる。
ここで、3次元表面粗さRaは、JIS−B0601にて定義される中心線平均粗さ(μm)である。この中心線平均粗さ(Ra)とは、触針式の粗さ測定器にて計測した基材の断面波形を粗さ曲線とし、この粗さ曲線をある一定範囲で抜き取った部分(基準長さ)において、当該基準長さ方向で、かつ粗さ曲線で囲まれる面積を二等分するような平均線を、この断面波形の中心線とした場合に、この抜き取り部分における中心線と粗さ曲線f(x)に囲まれた面積の総和を、基準長さで除した数値をマイクロメートル(μm)表示した値をいう。
当該目止め塗工紙は、S.H.O法による耐溶剤性値が、25cm当りピンホールが15個以下であることが好ましく、0個〜10個以下であることがさらに好ましい。S.H.O法でピンホールの個数を25cm中に15個以下にすることで、目止め性を高め、低塗工量で安定した塗工膜を形成できる。
上記S.H.O法とは、トルエン9質量部と染料1質量部とを混ぜた有機溶剤試験液1mLを、ピペットにて採取し、目止め塗工紙の塗工層表面上に滴下したのち、25cm以上の範囲になるように、前記有機溶剤試験液をヘラで満遍なくのばし広げ、3分後、上記有機溶剤試験液が反対面側に滲み生じた斑点(ピンホール)の個数を目視確認し評価する試験方法を云う。
ピンホールの個数をコントロール(調節)する方法は、例えば、後述する目止め塗工層の塗工処方を用いながら、塗工量を増やす方法、ソフトカレンダー等の密度を上げることなく表面を平坦化する平坦化処理手段にて塗工層表面を平坦化する方法、予め、澱粉やPVA、アクリル樹脂等のクリアーコート剤をアンダー塗工することで、塗工層の含浸を制御する方法等を例示することができる。
上記目止め塗工層は、上記各成分を含有した塗工液を基紙に塗工することで形成することができる。形成装置(塗工装置)は特に限定されず、例えば、ブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター等の公知の装置を用いることができる。これらの中でも、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター等の塗工表面をスクレイプする塗工方式が、平板顔料の配向を促す傾向があるので好ましい。より好ましくは、ロッド型塗工装置を使用するとよく、この場合、塗工量調整を基紙とロッド間の隙間で行うことができ、低シェア条件で平面塗工ができ、さらには同じ平面塗工を行うブレードコーターより低シェア条件で塗工でき、シェア圧が加わることでの水分・ラテックス成分の含浸による不動化・レベリング不良を防止できる。
ロッド型塗工装置においては、塗工量の調整や顔料の含有率が高い場合に生じやすい塗工ムラの是正に対し、ロッドの溝深さが25μm以下、この溝のピッチが50μm以下、この溝の山の長さが10μm以下とされている溝を有するロッドが用いられるが、顔料の突出を抑え顔料の平坦化を促進し、塗工層表面の粗さを抑えることが出来ると共に、平板顔料の平坦な緻密な表面構成を確保でき、ピンホールの改善や印刷適性を向上させることができることから、より好ましくは、ロッドが溝を有さないプレーンロッドを用いて塗工することが好ましい。
上記目止め塗工層を形成するための塗工量としては、好ましくは3g/m〜10g/m、より好ましくは4g/m〜8g/mである。塗工量が3g/m未満であると、基紙表面の被覆性に劣り、基紙表面の表面性の影響を受けやすく、表面平坦性や印刷適性低下やピンホール発生問題が生じ、S.H.O法によるピンホールが、ピンホール15個以下を満たすことが出来ない場合がある。他方、塗工量が10g/mを超えると、塗工層の割れや目止め塗工紙に硬さが生じ作業性が低下すると共に、コストアップになり、塗工層のベタツキや古紙原料としてリサイクルする際の水離解性に悪影響を与えるおそれがある。
以下、合成例及び実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例における各測定は以下の方法にて行った。
[体積平均粒子径及び粒度分布]
日機装社製のレーザー回折粒度分布測定装置〔マイクロトラック/型番:MT−3300〕により測定した。
[アスペクト比]
電子顕微鏡で拡大観測し、任意に抽出した20個の粒子の平均値を算出した。
[表面粗さ]
レーザー顕微鏡(カラーレーザー顕微鏡 高解像度タイプVK-9700型 キーエンス社製)を使用して3次元表面粗さ(Ra)を測定した。ここで、3次元表面粗さRaは、JIS−B0601にて定義される中心線平均粗さ(μm)である。この中心線平均粗さ(Ra)とは、触針式の粗さ測定器にて計測した基材の断面波形を粗さ曲線とし、この粗さ曲線をある一定範囲(1,491μm×1,119μm)で抜き取った部分において、この基準長さ方向で、かつ粗さ曲線で囲まれる面積を二等分するような平均線を、この断面波形の中心線とした場合に、この抜き取り部分における中心線と粗さ曲線f(x)に囲まれた面積の総和を、基準長さで除した数値をマイクロメートル(μm)表示した値である。
[ピンホール]
上述したS.H.O法によりトルエン9質量部と染料1質量部とを混ぜた有機溶剤試験液を1mLピペットで採取し、目止め塗工層上に25cm以上になる塗布型(かた)を乗せて、試験液をまんべん無く塗布し、塗布後反対面より、ピンホールの個数を目視確認した。このピンホールの少なさが、目止め性の指標となる。
[摩擦係数]
定速引張試験機、水平板及びおもりからなる摩擦係数試験装置(TR-2型)を使用した。巾9cm、長さ16cmの試験片をスレッド、テーブルそれぞれに貼り付け、テーブル速度10mm/分、摩擦距離50mmの条件で摩擦試験を実施し、その際の引張試験機での荷重を測定する。測定の組合せは、紙の表と裏とで実施した。
[印刷適性]
RI印刷試験器(石川島播磨重工業社製 RI−II型)を使用し、TV(タック)−16のインキを試験片にベタ印刷を実施した。
(1)乾燥性:印刷後1分・3分・5分・10分後に上質紙(白紙)を印刷面に接触させ、インキの転写状況より乾燥性を以下の基準にて比較した。
◎:印刷後1分・3分・5分・10分後いずれも転写なし。
○:印刷後1分では僅かに転写が見られるが、使用に差し支えなし。
×:10分後においても転写する。
(2)セット性:印刷後3日間静置後の印刷上がりを以下の基準にて目視評価した。
◎:インキの着肉ムラ、光沢ムラとも無い。
○:若干、着肉ムラ、光沢ムラが見られるが、使用に差し支えなし。
×:着肉ムラ、光沢ムラが見られ、使用に差し支え有り。
[搬送適性]
A4サイズのカット紙をオフセット印刷機に1,000枚連続通し、紙詰まり、重送及び見当ズレの状態を以下の基準にて確認した。
◎:紙詰まり、重送、見当ズレとも無い。
○:紙詰まり、重送、見当ズレが10枚未満発生するが、使用に差し支えなし。
×:紙詰まり、重送、見当ズレが10枚以上ある。
[目止め塗工層のベタツキ]
溶剤系シリコーンを塗工し、その後乾燥して得られた剥離紙表面を触診する官能試験を以下の基準にて実施した。
◎:全くベタツキがない。
○:若干のベタツキであり、使用に支障なし。
×:ベタつき、使用に支障有り。
<実施例1〜18及び比較例1〜3>
上質紙(大王製紙株式会社製、坪量64g/m)からなる基紙の両面に表1に示すように各種条件を変化させた目止め塗工層を設け、各剥離紙用原紙を得た。また、得られた剥離紙用原紙の両面に溶剤系シリコーンを塗工し、その後乾燥して剥離紙を得た。なお、表1中の小粒子と大粒子との質量比とは、粒度分布において粒径が0.5μm未満の粒子と、粒径が0.5μm以上の粒子との質量比をいう。
なお、使用した各成分等は以下のとおりある。
[クレー(平板顔料)]下記6種の粒子を適宜混合して用いた。
実施例1〜7、11、14、16〜18、比較例1、3では下記aとbの粒子を適宜混合して用い、実施例8ではbとf、実施例9では、bとe、実施例10ではa、実施例12、13ではbとd、実施例15ではbとcの粒子を適宜混合して用いた。
a.カオグロス90(Tiele社製)
体積平均粒子径2.25μm、アスペクト比10
b.カオファイン90(Tiele社製)
体積平均粒子径0.36、アスペクト比10
c.Nuclay(エンゲルハード社製)
体積平均粒子径1.4、アスペクト比14
d.Nusurf(エンゲルハード社製)
体積平均粒子径6.3、アスペクト比16
e.カピムNP(イメリスミネラルズ・ジャパン社製)
体積平均粒子径2.0、アスペクト比20
f.カオグロス(Tiele社製)上記a.を湿式粉砕機で調整した。
体積平均粒子径1.2、アスペクト比5
[炭酸カルシウム(非平板顔料等)]下記3種の粒子を適宜混合して用いた。
実施例1〜14、実施例16〜18、比較例1では下記gを用い、実施例15、比較例2では下記hを用い、比較例3では下記iを用いた。
g.タマパールTP121M7(奥多摩工業社製)
紡錘形状、体積平均粒子径1.62μm、アスペクト比3
h.タマパールTP1217C(奥多摩工業社製)
紡錘形状、体積平均粒子径0.80μm、アスペクト比3
i.タマパールTP123(奥多摩工業社製)
柱状形状、体積平均粒子径1.6μm、アスペクト比10
[ラテックス]
PPT7561(日本ゼオン社製)
ポリビニルアルコールを付加重合させた重合接着剤(全顔料100質量部に対し、30質量部配合した。)
[多分岐高分子]
トップブレイン S−1(日本DMS社製)
末端に水酸基を有する多分岐ポリエステルアミド(無水コハク酸とジイソプロパノールアミンとの共重合体)
(目止め塗工層中に表1に示す量(質量%)を含有させた。)
[シリコーン]
溶剤型 KS−3561(信越化学工業社製)
<評価>
各剥離紙用原紙について、表面粗さ、摩擦係数、ピンホール数、印刷適性及び搬送適性について上記方法にて評価した。また、各剥離紙について、目止め層のベタツキを評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2012136794
上記表1に示すように、本発明の剥離紙用原紙は、高い目止め性を有することに加え、優れた印刷適性及び搬送適性を発揮することができることがわかる。
本発明の剥離紙用原紙は、目止め塗工層上に剥離剤層や粘着剤層が設けられて剥離紙やタック紙などとして用いられる目止め塗工紙として好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 基紙と、
    この基紙の少なくとも片面に形成され、顔料及びバインダーを含む目止め塗工層と
    を有する剥離紙用原紙であって、
    上記顔料として、アスペクト比が5以上の平板顔料と、アスペクト比が5未満の非平板顔料とを含有することを特徴とする剥離紙用原紙。
  2. 上記顔料全体の体積平均粒子径が0.5μm以上5μm以下である請求項1に記載の剥離紙用原紙。
  3. 上記平板顔料の粒度分布において、粒径が0.5μm未満の粒子の含有量と、粒径が0.5μm以上の粒子の含有量との比が、質量基準で1:9以上4:6以下である請求項1又は請求項2に記載の剥離紙用原紙。
  4. 上記平板顔料と非平板顔料との含有比が質量基準で70:30以上98:2以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
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