JP2012136103A - 索状体の固定構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両用シートに備えられるハーネス等の索状体の固定構造において、取り付け強度の高い索状体の固定構造を提供する。
【解決手段】固定部材30を有する索状体HをシートフレームFに固定する索状体Hの固定構造において、固定部材30は、索状体Hを保持するホルダー部31と、シートフレームFに挿通された後に拡径して嵌合する挿入部32と、を備え、シートフレームは、少なくとも互いの一部が重ねられた第1の板材と第2の板材とを有し、第1の板材には、挿入部32が挿通される第1の固定部材係止孔15eが形成され、第2の板材には、第1の固定部材係止孔15eと重なる位置に、挿入部32が挿通される第2の固定部材係止孔17cが形成され、挿入部32は、第1の固定部材係止孔15eを介して第2の固定部材係止孔17c側に挿入され、第1の固定部材係止孔15eの内径は、第2の固定部材係止孔17cの内径よりも内側に形成される。
【選択図】図5

Description

本発明は、索状体の固定構造に係り、特に取り付け強度の高い索状体の固定構造に関する。
従来、自動車等の車両用シートにおいて電装品が取り付けられることが一般的である。そして、このような電装品に電力を供給したり、電装品によって特定の部材を稼働させたりするため、車両用シートの周囲にはハーネス等の索状体が配設される。
このような電装品の例として、たとえば、リクライニングモータやスライドモータ等のモータ類や、サイドエアバッグ等の安全装置が挙げられる。そして、モータ類や安全装置を稼働させるための電力供給、及び制御信号の送受信を行うため、これらの電装品からは、適当な長さのハーネスが延設される。
そしてこのとき、ハーネスは、外部からの干渉による損傷を防ぐため、適度な撓み部分を備えた状態で、シートフレームに固定されるのが一般的である。ハーネスの適当な位置にはクリップが取り付けられており、そのクリップをシートフレームに予め形成された孔に係止することによって、ハーネスが車両用シートのシートフレームに固定される。
特許文献1には、シートフレームのサイドフレーム(特許文献1では「サイドプレート」と記載されている)に形成された開口のエッジ部よりも、開口の内側に延設されたホルダーアーム部を備えたクリップによって、ハーネスをサイドフレームに固定する技術が開示されている。このとき、ホルダーアーム部は、ハーネスを狭持するホルダー部を備えており、そのホルダー部と対向する位置において備えられた突起部がサイドフレームに貫通することによって固定される。
また、特許文献2には、シートバックフレームの側面に配設されるハーネス(特許文献2では「ケーブル」と記載されている)に第一クリップ、第二クリップ、第三クリップを取り付け、これらクリップを、それぞれ一枚の板状体に嵌合させる技術が開示されている。
特開2001−30819号公報 特開2009−179303号公報
特許文献1において開示された技術では、一枚の板状体からなるサイドフレームに形成された孔に対し、断面楔形に形成された可撓性のクリップの突起部をシートフレームの内側から挿入(圧入)し、孔に挿通された突起部がシートフレームの外側に到達すると突起部が拡径し、クリップがサイドフレームに係止される構成である。
また、特許文献2において開示された技術では、バックフレームに取り付けられた一枚の板片からなるストッパ部材に、第二クリップの挿入部が圧入され、その後挿入部が拡径することにより第二クリップがストッパ部材に係止される。その他、第一クリップ及び第三クリップもまた、それぞれ一枚の板片からなるバックフレームや、ブラケットに嵌合される。
このように、上記特許文献1及び特許文献2において、シートフレームを構成する各部材は一枚の板状体によって構成されており、ハーネス等の索状体を固定するためのクリップを、その板状体に嵌合させることによって固定されることが多かった。
したがって、可撓性のクリップを、シートフレームに形成された孔に圧入して取り付ける構成であるため、簡単な構成であり作業性が高いが、クリップをより強固にシートフレームに取り付ける技術が求められていた。
また、特許文献2では、クリップを取り付けるために、ストッパ部材をさらにバックフレームに取り付けたりするなど、クリップを取り付けるための部材を別途組み付ける作業が生じていた。したがって、ストッパ部材を別途組み付けることにより複数の部材を設けると、接合箇所が増えるため、組み付け工程が複雑化し、製造工程が長くなるという問題点があった。
本発明の目的は、車両用シートに備えられるハーネス等の索状体の固定構造において、取り付け強度の高い索状体の固定構造を提供することにある。また、本発明の他の目的は、車両用シートに備えられるハーネス等の索状体の固定構造において、その構成が簡単であり、作業工程が簡素化可能な索状体の固定構造を提供することにある。
前記課題は、本発明の請求項1に係る索状体の固定構造によれば、固定部材を有する索状体をシートフレームに固定する索状体の固定構造であって、前記固定部材は、前記索状体を保持するホルダー部と、前記シートフレームに挿通された後に拡径して嵌合する挿入部と、を備え、前記シートフレームは、少なくとも互いの一部が重ねられた第1の板材と第2の板材とを有し、前記第1の板材には、前記挿入部が挿通される第1の固定部材係止孔が形成され、前記第2の板材には、前記第1の固定部材係止孔と重なる位置に、前記挿入部が挿通される第2の固定部材係止孔が形成され、前記挿入部は、前記第1の固定部材係止孔を介して前記第2の固定部材係止孔側に挿入され、前記第1の固定部材係止孔の内径は、前記第2の固定部材係止孔の内径よりも内側に形成されてなること、により解決される。
このように、ハーネス等の索状体をシートフレームに固定する構造において、シートフレームの少なくとも一部は、板材(第1の板材、第2の板材)が二枚重ねられた構成を備えている。そして、その部分には、固定部材係止孔として、内径が異なる孔(第1の固定部材係止孔及び第2の固定部材係止孔)がそれぞれ切除されている。
このように、第1の固定部材係止孔及び第2の固定部材係止孔の内径が異なる構成とすると、第1の固定部材係止孔及び第2の固定部材係止孔の内側において、段差が形成される。そして、固定部材の挿入部は、少なくとも第1の固定部材係止孔に挿入部が係合することにより、固定部材がシートフレームに嵌合する。その結果、第1の固定部材係止孔と固定部材の挿入部との係合部分が、第2の固定部材係止孔が形成された板材によって保護されるため、固定部材の固定を強固に行うことができる。
また、第1の固定部材係止孔と第2の固定部材係止孔の内径を上記構成とすることにより、固定部材の挿入部が圧入しやすくなる。さらにまた、上記構成はシートフレームを構成する板材が複数重ねられた部分において孔を形成すればよく、他の部材を別途取り付ける必要がないため、固定部材の取り付け強度が損なわれることなく、また、作業工程を簡素化することができる。
また、請求項2のように、前記挿入部は、前記第1の固定部材係止孔と係合する第1の段差部と、前記第2の固定部材係止孔と係合する第2の段差部と、が形成されてなると好適である。
このように、固定部材において、外径がそれぞれ異なる第1の段差部と第2の段差部とを備えることにより、それぞれの段差部が第1の固定部材係止孔及び第2の固定部材係止孔とそれぞれ係合する。これにより、固定部材と固定部材係止孔とが係合する部分が増えるため、より強固にシートフレームに対して固定部材を固定することができる。
さらに、請求項3のように、前記固定部材は、前記ホルダー部と前記挿入部との間に設けられ前記第1の板材を前記挿入部側へ押圧する付勢部を備えてなると好適である。
このように、固定部材には、付勢部が備えられていると好ましい。この付勢部が第1の板材に当接し、第1の板材を挿入部側へ押圧することにより、固定部材の挿入部は、固定部材係止孔に対して強固に押しつけられる。したがって、より確実に固定部材をシートフレームに固定することができる。
また、請求項4のように、前記シートフレームは、側方に位置する一対のサイドフレームと、該一対のサイドフレームの下方を連結する下部フレームと、を備え、前記第1の板材及び前記第2の板材は、前記一対のサイドフレームのうちのいずれか一方と、前記下部フレームと、であると好ましい。
このように、固定部材の取り付け位置を、シートフレームのサイドフレームと下部フレームの接合部分とすることができる。サイドフレームと下部フレームは、一般に、板材によって構成されると共に、これらは互いにその一部が重ねられて接合されていることが多い。したがって、上記箇所に固定部材を固定する構成とすると、特別な部材を設ける必要が無く、シートフレームの構造が複雑化することがない。
請求項1の索状体の固定構造によれば、固定部材をシートフレームに強固に固定することが可能となり、その結果、索状体の取り付け強度を向上させることができる。さらに、索状体をシートフレームに対して強固に取り付け可能であると共に、複雑な構成とすることなく、作業工程が簡素化された索状体の固定構造とすることができる。
請求項2の索状体の固定構造によれば、第1の段差部と第2の段差部とを固定部材に設けることにより、シートフレームとの接触箇所を増やすことができ、その結果、強固に固定部材をシートフレームに取り付けることができる。したがって、より強固に索状体をシートフレームに固定することが可能である。
請求項3の索状体の固定構造によれば、付勢部を備えることにより、固定部材がより確実にシートフレームに固定される。したがって、より強固に索状体を固定することが可能となる。
請求項4の索状体の固定構造によれば、特別な部材を備えることなく、簡単な構成で固定部材を係止可能であるため、作業工程を簡素化することができる。
本発明の一実施形態に係るシートの概略斜視図である。 本発明の一実施形態に係るシートフレームの概略斜視図である。 本発明の一実施形態に係るシートフレームの背面図である。 本発明の一実施形態に係るシートバックフレームの概略断面説明図である。 図4のA−A線に相当する概略断面図である。 本発明の一実施形態に係るサイドフレームと下部フレームの拡大説明図である。 図6のB−B線に相当する概略断面図である。
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
図1乃至図7は本発明の一実施形態に係るものであり、図1はシートの概略斜視図、図2はシートフレームの概略斜視図、図3はシートフレームの背面図、図4はシートバックフレームの概略断面説明図、図5は図4のA−A線に相当する概略断面図、図6はサイドフレームと下部フレームの拡大説明図、図7は図6のB−B線に相当する概略断面図である。なお、本明細書のシートフレームFの方向に関する説明において、「内側」とは、シートフレームFにおいて乗員が着座する側、すなわち、サイドフレーム15,15によって挟まれ、シートフレームFによって区画される空間が位置する側であり、「外側」とは、シートフレームFにおいて乗員が着座しない側を指すものである。また、「左右方向」とは、シートバックフレーム1の幅方向を指すものである。
図1乃至図7を参照して、本発明の索状体の固定構造を備えた車両用シートSについて説明する。なお、以下の説明において、本発明の索状体の固定構造に関し、サイドエアバッグ40が備えられたサイドフレーム15を「第1の板材」とし、下部フレーム17を「第2の板材」として例に挙げて詳述するが、本発明の索状体の固定構造は、これに限定されず、他の部材において備えることができる。
(車両用シートSの構成)
車両用シートSは、図1で示すように、シートバックS1(背部)、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されており、シートバックS1(背部)及び着座部S2はシートフレームFにクッションパッド1a,2aを載置して、表皮材1b,2bで被覆されている。なお、ヘッドレストS3は、頭部の芯材(不図示)にパッド材3aを配して、表皮材3bで被覆して形成される。また符号19は、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラーである。なお、本実施形態ではシートバックS1とヘッドレストS3が別体となって形成されている例を示したが、シートバックS1とヘッドレストS3が一体となって形成されたバケットタイプとしても良い。
車両用シートSのシートフレームFは、図2で示すように、シートバックS1を構成するシートバックフレーム1、着座部S2を構成する着座フレーム2から構成されている。
着座フレーム2は、上述のようにクッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮材2bによって覆われており、乗員を下部から支持する構成となっている。着座フレーム2は脚部で支持されており、この脚部には、図示しないインナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
また着座フレーム2の後端部は、リクライニング機構11を介してシートバックフレーム1と連結されている。
リクライニング機構11は、少なくともリクライニング機構11の回動軸に沿ったリクライニングシャフト11aを備えており、リクライニングシャフト11aは、シートバックフレーム1(より詳細には、一対のサイドフレーム15,15)の下方に備えられた一対の側方部17a,17a(メンバーサイド)に設けられたシャフト挿通孔(不図示)からシートフレームFの外側に突出するように貫通して配設されている。
シートバックS1は、シートバックフレーム1に、上述のようにクッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮材1bにより覆われており、乗員の背中を後方から支持するものである。本実施の形態において、シートバックフレーム1は、図2で示すように、略矩形状の枠体となっており、サイドフレーム15,15と上部フレーム16と下部フレーム17とを備えている。
2本(一対)のサイドフレーム15,15は、シートバック幅を構成するため、左右方向に離間して配設され、上下方向に延在するように配設されている。サイドフレーム15は、図2で示すように、シートバックフレーム1の側面を構成する延伸部材であり、平板状の側板15aと、この側板15aの前端部(乗物前方側に位置する端部)からU字型に内側へ屈曲し、折り返した前縁部15bと、後端部からL字型に内側へ屈曲した後縁部15cとを有している。
そして、一対のサイドフレーム15の上端部側を連結する上部フレーム16が、サイドフレーム15から上方に延出している。なお、上部フレーム16は、一方のサイドフレーム15から上方に延設された後、屈曲し、他方のサイドフレーム15まで延設されている。
図2で示すように、管状部材としての上部フレーム16は、略矩形状に屈曲されており、上部フレーム16の側面部16aは、サイドフレーム15の側板15aに対して上下方向に沿って一部が重なるように配設され、この重なり部分においてサイドフレーム15に固着接合される。
また、上部フレーム16の上方には、ヘッドレストS3を配設するためのピラー支持部18,18が備えられている。そして、ピラー支持部18,18には、管状部材からなるヘッドレストピラー19,19が挿入され、固定される。このピラー支持部18,18には、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラー19,19がガイドロック(不図示)を介して取り付けられ、ヘッドレストS3が取り付けられるようになっている。
なお、上記シートバックフレーム1の構成は一例であり、ヘッドレストピラー19,19が取り付けられる構成は、その他、公知の構成を用いることができる。
シートバックフレーム1の下部フレーム17は、側方部17a,17a及び中央部17bによって構成されている。中央部17b(メンバーセンター)は、左右方向に離間して配設された一対の側方部17a,17aを連結するように形成され、側方部17a,17aに対して固着接合されている。
本発明の板材としての下部フレーム17の側方部17a,17aは、同じく板材としてのサイドフレーム15,15の側板15a,15aの下側の一部に重ねられ、連結されている。したがって、シートフレームFは、この部分において、二枚の板材が重ねられた構成を有している。そして、二枚の板材(すなわち、サイドフレーム15の側板15a及び下部フレーム17の側方部17a)には、後述のクリップ30を係止する第1の固定部材係止孔としてのクリップ係止孔15e及び第2の固定部材係止孔としてのクリップ係止孔17cが形成されている。なお、クリップ係止孔15e,17c及びクリップ30の詳細は後述する。
側方部17a,17aは、側板15a,15aの下方を延長するように形成されており、着座フレーム2との関係で、支障のない範囲で延長されている。なお、このとき、側方部17a,17aは下部フレーム15,15の側板15a,15aの内側に当接して配設されている。
なお、本実施形態のサイドフレーム15,15、側方部17a,17a及び中央部17bは、それぞれ個別の板片によって別部材として形成されている構成を示したが、一体に形成されていても良い。
また、側方部17aにおいて、リクライニングシャフト11aが貫通して配設される挿通孔の上方には、側方部17aをサイドフレーム15に取り付けるための取り付け孔が複数形成されていてもよい。サイドフレーム15の下方には、側方部17aの一部が重ねられた際に、取り付け孔と整合する位置において孔が設けられており、このサイドフレーム15に形成された孔と側方部17aの取り付け孔とを貫通するようにボルト等の接合手段が貫通され、サイドフレーム15と側方部17aとが接合される構成としても良い。
さらに、一方のサイドフレーム15の側板15aには、サイドエアバッグ40等の安全装置や、電装品が備えられている。そして、これら安全装置又は電装品からは、電力供給及び信号の送受信を行うためのハーネスHが延設されており、シートバックフレーム1に取り付けられる。
(ハーネスHの固定構造)
以下、図3乃至図5を参照して、本発明のハーネスH等の索状体の固定構造について説明する。
ハーネスHは、サイドエアバッグ40等の安全装置や、リクライニングモータ、スライドモータ等の電装品にその一端が接続されており、これらの安全装置または電装品に電力及び操作信号を送受信するためのケーブルを備えている。そして、そのケーブルは、他の部材との摩擦による損傷を防止するため、適当な強度及び可撓性を備えた材料で被覆されている。
ハーネスHは、固定部材としてのクリップ30が複数取り付けられており、下部フレーム17の長手方向(より詳細には、中央部17bの長手方向)に沿って固定される。また、ハーネスHは、サイドエアバッグ40から延出されているものもあり、このように、複数のハーネスHがシートフレームFに取り付けられる。
このとき、下部フレーム17を構成する中央部17bには複数のクリップ係止孔17d,17e、側方部17a,17aにはクリップ係止孔17cがそれぞれ形成されており、これらのクリップ係止孔17c,17d,17eに対し、ハーネスHに取り付けられたクリップ30がそれぞれ圧入されることにより、ハーネスHが下部フレーム17等のシートフレームFの構成部材に取り付けられる。このとき、クリップ30は、シートフレームFの後方から圧入され、内側にクリップ30が突出する構成となる。
なお、下部フレーム17の中央部17bに形成されるクリップ係止孔17e,17eは、後方へ突出した凸部上に形成されている。これにより、クリップ係止孔17e,17e近傍の強度が向上するため、クリップ30の取り付けを安定して行うことができる。
そして、ハーネスHの一部は、下部フレーム17からサイドフレーム15,15の外側に回り込むように屈曲して延設されている。サイドフレーム15の外側に配設される部分のハーネスHに係止されたクリップ30は、側板15aに形成された第1の固定部材係止孔としてのクリップ係止孔15eを介して、さらに下部フレーム17の側方部17aに形成された第2の固定部材係止孔としてのクリップ係止孔17cに挿入される。すなわち、クリップ30は、サイドフレーム15の側板15aと、下部フレーム17の側方部17aとが密着して重ねられた部分において貫通し、固定される。
サイドフレーム15に形成されたクリップ係止孔15e及び下部フレーム17の側方部17aに形成されたクリップ係止孔17cは、略同心円状に切除された孔であり、クリップ係止孔15eの内径は、クリップ係止孔17cの内径よりも内側に形成されている。なお、図4は、説明のため、クリップ係止孔15e,17cにおいてクリップ30が取り付けられていない状態を説明するものである。
つまり、クリップ係止孔15eの直径は、クリップ係止孔17cの直径よりも小さく形成されている。換言すると、クリップ30が差し込まれる側に形成されたクリップ係止孔15eは、クリップ30の挿入部32が配設される側のクリップ係止孔17cよりもその直径が小さく形成されている。
次に、図5を参照して、クリップ30の構成について説明する。
クリップ30は、ハーネスHを保持するホルダー部31と、ホルダー部31から延設され、シートフレームFに挿通され、上記のクリップ係止孔15e,17cに嵌合して係止される可撓性の挿入部32と、ホルダー部31と挿入部32との間に設けられる付勢部33とを備えている。なお、クリップ30は、他のクリップ係止孔17d,17eに固定可能であり、汎用性が高いが、特にクリップ係止孔15e,17cに係止された状態のクリップ30について説明する。
クリップ30のホルダー部31は、ハーネスHが挿通可能であり、且つハーネスHとクリップ30が位置ずれすることのないように、適度な開口径を備えている。したがって、ハーネスHは、ホルダー部31に嵌合する構成である。また、ホルダー部31はC字形状に形成されており、ハーネスHを狭持する構成としても良い。その他、ハーネスHを保持することが可能であれば、公知の構成を適宜用いることができる。
そして、ホルダー部31から延設される挿入部32は、略円錐台の先細り形状に形成されている。この挿入部32は、拡径、縮径が可能な可撓性を備えており、クリップ係止孔15e,17cに圧入する際に縮径が容易となるように、適宜、空洞部34が形成されている。空洞部34は、挿入部32を撓みやすくするため、先端部37側から、後述の第2の段差部36までの範囲において形成されていると好ましい。
このように、挿入部32において適当な可撓性を備える必要があるため、クリップ30は、合成樹脂等によって形成されていると好ましい。
挿入部32の外周には、第1の固定部材係止孔としてのクリップ係止孔15eに係合する第1の段差部35と、第2の固定部材係止孔としてクリップ係止孔17cに係合する第2の段差部36とがテーパー状に形成されている。第1の段差部35は、ホルダー部31側に形成されており、第1の段差部35の外径は、クリップ係止孔15eの内径と略等しいか、またはクリップ係止孔15eの内径が若干大きく形成されている。
第2の段差部36は、第1の段差部35と先端部37との間に形成されており、第2の段差部36の外径は、第1の段差部35の外径よりも大きく形成されている。また、第2の段差部36の外径は、クリップ係止孔17cの内径と略等しいか、またはクリップ係止孔17cの内径が若干大きく形成されている。
そして、第1の段差部35と、第2の段差部36とは、その高さが、それぞれクリップ係止孔15e及びクリップ係止孔17cの高さ、すなわちサイドフレーム15の側板15a及び下部フレーム17の側板17aの板厚と略等しくなるように形成されている。
したがって、第1の段差部35は、クリップ係止孔15eに、第2の段差部36は、クリップ係止孔17cに対して係合しやすくなり、クリップ30がさらに強固にシートフレームFに取り付けられる。
このように、二枚の板材が重ねられた部分においてクリップ30を挿通し、さらにクリップ係止孔15eとクリップ係止孔17cとの内径を上記関係とすることにより、クリップ30は、挿入部32の挿通後、挿入部32が拡径しやすく、強固に取り付けられる。さらに、内側のクリップ係止孔17cの内側においてクリップ係止孔15e及び第1の段差部35が物理的に保護されるため、より取り付け強度を向上させることができる。
一方、二枚の板材にそれぞれ形成されるクリップ係止孔15e,17cの内径を、互いに同じ大きさとすると、クリップ30が押し込みにくくなるため好ましくない。また、クリップ30が押圧される側(すなわち、ハーネスHがホルダー部31によって保持されている側)に形成されるクリップ係止孔と、挿入部32が押し込まれる側に形成されるクリップ係止孔の大きさが、本実施形態と逆である場合は、クリップ係止孔が小さく形成されている部分でのみ(すなわち、一箇所でのみ)クリップ30が係合する。したがって、クリップ30の取り付け強度を向上させることができない。
そして、クリップ30を強固に取り付けるため、クリップ30には、さらに付勢部33が備えられている。付勢部33は、挿入部32の何れの部分よりもその径が大きくなるように形成された皿状の部分であり、ホルダー部31と挿入部32との間に形成されている。付勢部33はクリップ係止孔15eの周囲、すなわちサイドフレーム15の側板15aを挿入部32側へ押圧する。これにより、クリップ30の挿入部32はシートフレームFの外側(図5の下方側)、すなわちクリップ30が抜き取られる方向に付勢されるため、第1の段差部35及び第2の段差部36が、クリップ係止孔15e及びクリップ係止孔17cに対して係合しやすくなる。
また、付勢部33によって、クリップ係止孔15e及び第1の段差部35が外側から覆われて物理的に保護されるため、より強固にクリップ30を固定することができる。
その結果、クリップ30はシートフレームFに対し、強固に取り付け可能である。
以下、クリップ30の取り付け方法を説明する。まず、クリップ30の先端部37をシートフレームFの内側(すなわち、下部フレーム17側)に向けて、外側(すなわち、サイドフレーム15側)から押圧し、挿入部32を、クリップ係止孔15e,17cに圧入する。なお、クリップ係止孔15eの内径は、少なくともクリップ30の先端部37の外径よりも大きく形成されている必要がある。
このように、クリップ30の挿入部32がクリップ係止孔15e,17cを通過し、クリップ係止孔15e,17cに挿通される際、挿入部32は先端部37から第2の段差部36にかけて形成された傾斜部が縮径する。そして、挿入部32をクリップ係止孔15e,17cに対して十分に深く差し込んだとき、クリップ係止孔15eと比して十分に大きな径をもって形成された付勢部33がストッパの役割を果たし、クリップ30の挿入が押し止められる。
このとき、挿入部32がクリップ係止孔15e,17cを通過した後、縮径した挿入部32は拡径して通常の状態に戻り、第1の段差部35及び第2の段差部36がそれぞれクリップ係止孔15e及びクリップ係止孔17cに係合する。したがって、第1の段差部35及び第2の段差部36の二箇所によってシートフレームFに係止されるため、クリップ30がより強固に係止される。さらに、クリップ係止孔15e,17cは、従来、二枚の板材(サイドフレーム15の側板15a及び下部フレーム17の側方部17a)が重ねられた部分であるため、クリップ30を固定するための部材を別途作成する必要が無く、また、クリップ30を押し込むだけでよいので、その構成が簡単であり、作業工程が煩雑となることがない。
本実施形態では、サイドフレーム15及び下部フレーム17が重ねられた位置においてクリップ係止孔15e、17cがそれぞれ設けられた構成を例示したが、二枚の板材が重ねられた部分であれば、その他の部材に対して径が異なるクリップ係止孔をそれぞれ形成し、上記構成のクリップ30を固定しても良いのは勿論である。
ただし、シートフレームFのサイドフレーム15,15の近傍、さらにはサイドフレーム15,15の下方部分には、サイドエアバッグ40等の安全装置や電装品等が取り付けられることが多いため、サイドフレーム15,15と下部フレーム17とが重ねられた部分には、ハーネスH等の索状体が最も多く配置される。そして、サイドフレームと下部フレームとが重ねられた部分は、ハーネスH等の索状体が屈曲して集中しやすい部分であるため、上記構成により、クリップ30を強固に取り付け可能であると信頼性の高い車両用シートSを提供することができる。
(ハーネス挿通孔15dの構成)
また、サイドフレーム15には、図6及び図7に示すように、索状体挿通孔としてのハーネス挿通孔15dが形成されている。なお、図6及び図7は、簡略化のため、クリップ30を省略して図示している。
ハーネス挿通孔15dは、ハーネスHをシートフレームFに挿通させるための孔であり、板材としてのサイドフレーム15に形成されている。
ハーネス挿通孔15dの周縁は、サイドフレーム15の側板15aが、シートフレームFの外側から内側に向かって略垂直に折り曲げられた折曲部15fを備えており、折曲部15fの折り曲げられた幅は、少なくとも、サイドフレーム15の側板15aの板厚よりも幅広に形成されている。なお、この折曲部15fは、ハーネス挿通孔15dの周縁の全てに形成されている必要はなく、少なくとも、ハーネスHが当接する部分、例えばシートフレームFの下方側の周縁に形成されていればよい。
ハーネス挿通孔15dの内側にハーネスHが挿通された際、ハーネスHはその縁部分に擦れることがあるが、単に板材を切除して形成された孔とするのではなく、幅広の折曲部15fを形成することによって、ハーネスHが損傷するのを防止することができる。
そして、ハーネス挿通孔15dは、ハーネスHの外径よりもその内径(幅)が大きく形成されている。このように、ハーネス挿通孔15dの幅を、ハーネスHの外径よりも大きく形成することにより、両者を略等しくなるように形成した場合と比較して、摩擦によりハーネスHにかかる不可がより低減する。
そして、ハーネス挿通孔15dを介してハーネスHをシートフレームFの外側から内側、または内側から外側に挿通させることができるため、ハーネスHを無理に折り曲げる必要がなく、配線がより行いやすくなる。なお、図6及び図7においては、ハーネスHをサイドフレーム15の外側から内側へ挿通させた例を示している。
さらに、ハーネス挿通孔15dは、略円形状に形成されているため、矩形上に形成されたものと比較して、ハーネスHにかかる負荷を小さくすることができる。一般に、ハーネスHは断面円形状に形成されることが多いため、円形のハーネス挿通孔15dとすることにより、ハーネスHとの接触面積が大きくなるため、負荷を軽減しやすい。
また、ハーネス挿通孔15dの折曲部15fは、シートフレームFの内側に向かって折り曲げられている。このように、シートフレームFの内側に向かって側板15aを折り曲げることにより、シートフレームFの外側に折曲部15fが突出することない。一般に、シートフレームFの外側には、クッションパッド1a,2aが載置されるため、ハーネスHは、クッションパッド1a,2aによりシートフレームF側に押圧される構成となる。このとき、折曲部15fが内側に形成されることにより、サイドフレーム15の外側の面において、ハーネス挿通孔15dの周縁が滑らかな面で形成されているため、ハーネスHが押圧されても、ハーネスHは損傷しにくい。したがって、折曲部15fが内側に折り込まれていると、ハーネスHが保護されやすい。
上記のように、折曲部15fを備えたハーネス挿通孔15dを備えることにより、ハーネスHの保護のために設けられる被覆部材を簡素化することが可能であるため、より軽量な車両用シートSを提供することができる。さらに、ハーネスHをハーネス挿通孔15dに挿通させる際、折曲部15fによって縁部分が丸められているため、作業者はより安全、且つ容易にハーネスHを挿通させて配索することが可能となる。
なお、本実施形態において、折曲部15fを備えたハーネス挿通孔15dは、サイドフレーム15に形成された例を示したが、その他の板材によって形成された部材(例えば、下部フレーム17等)に設けられていても良い。また、図6及び図7では、クリップ30を省略して図示したが、ハーネス挿通孔15dの近傍において、ハーネスHがクリップ30によってサイドフレーム15、または下部フレーム17に固定されていると、折曲部15fとハーネスHとの接触部分にかかる負荷が小さくなるため、好ましい。
また、本実施形態において、ハーネスHは、下部フレーム17近傍に取り付けられる例を示したが、その他の部分において取り付けられていても良い。
このように、上記で説明した索状体の固定構造は、挿入部32に第1の段差部35及び第2の段差部36が備えられたクリップ30を、二枚の板材(サイドフレーム15の側板15a及び下部フレーム17の側方部17a)において径が異なるように形成されたクリップ係止孔15e,17cに圧入して係止することにより、ハーネスHをシートフレームFに対して強固に固定することができる。さらに、このクリップ係止孔15e,17cは、互いの径が異なるように形成するだけでよいので、クリップ30を取り付けるための部材を別途組み付ける必要が無く、簡単な構成である。したがって、複雑な構成となることなく、作業工程が煩雑となることがない。
なお、上記実施形態では、具体例として、自動車のフロントシートのハーネスHの固定構造について説明したが、これに限らず、後部座席のシートバックについても、同様の構成を適用可能であることは勿論である。
S 車両用シート
S1 シートバック
S2 着座部
S3 ヘッドレスト
F シートフレーム
H ハーネス(索状体)
1 シートバックフレーム
2 着座フレーム
1a,2a,3a クッションパッド(パッド材)
1b,2b,3b 表皮材
11 リクライニング機構
11a リンクライニングシャフト
15 サイドフレーム(第1の板材)
15a 側板
15b 前縁部
15c 後縁部
15d ハーネス挿通孔
15e クリップ係止孔(第1の固定部材係止孔)
15f 折曲部
16 上部フレーム(管状部材)
16a 側面部
17 下部フレーム(第2の板材)
17a 側方部
17b 中央部
17c クリップ係止孔(第2の固定部材係止孔)
17d,17e クリップ係止孔
18 ピラー支持部
19 ヘッドレストピラー
30 クリップ(固定部材)
31 ホルダー部
32 挿入部
33 付勢部
34 空洞部
35 第1の段差部
36 第2の段差部
37 先端部
40 サイドエアバッグ

Claims (4)

  1. 固定部材を有する索状体をシートフレームに固定する索状体の固定構造であって、
    前記固定部材は、前記索状体を保持するホルダー部と、前記シートフレームに挿通された後に拡径して嵌合する挿入部と、を備え、
    前記シートフレームは、少なくとも互いの一部が重ねられた第1の板材と第2の板材とを有し、
    前記第1の板材には、前記挿入部が挿通される第1の固定部材係止孔が形成され、
    前記第2の板材には、前記第1の固定部材係止孔と重なる位置に、前記挿入部が挿通される第2の固定部材係止孔が形成され、
    前記挿入部は、前記第1の固定部材係止孔を介して前記第2の固定部材係止孔側に挿入され、
    前記第1の固定部材係止孔の内径は、前記第2の固定部材係止孔の内径よりも内側に形成されてなることを特徴とする索状体の固定構造。
  2. 前記挿入部は、前記第1の固定部材係止孔と係合する第1の段差部と、前記第2の固定部材係止孔と係合する第2の段差部と、が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の索状体の固定構造。
  3. 前記固定部材は、前記ホルダー部と前記挿入部との間に設けられ前記第1の板材を前記挿入部側へ押圧する付勢部を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の索状体の固定構造。
  4. 前記シートフレームは、側方に位置する一対のサイドフレームと、該一対のサイドフレームの下方を連結する下部フレームと、を備え、
    前記第1の板材及び前記第2の板材は、前記一対のサイドフレームのうちのいずれか一方と、前記下部フレームと、であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の索状体の固定構造。
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