従来の技術において、比例制御の場合には、負荷変動を流入量のみと仮定しており、また、内生呼吸に必要な酸素量を考慮していないため、水質変動による負荷変動に対しては適切に対応することができず、有機物及び窒素の除去が不完全となりやすく、そのため、良好な処理水質を安定的に保つことは難しい。また、水質変動を考慮してオペレータが比率を必要以上に高く設定した場合には、曝気に要するエネルギー量が本来必要であるエネルギー量に対して過大となる恐れがあり、その場合には曝気に要するコストが増大することとなる。
さらに、曝気風量の増加に伴って散気装置から放出される気泡が粗大化することから、図21に図示した散気装置の性能曲線の例が示すように曝気風量が増加するに従って散気装置の酸素移動効率は低下するが、比例制御では、このことが考慮されておらず、曝気風量は流入水量に比例して増減するため、酸素供給量に過不足が生じやすい。
一方、DO制御においては、反応タンク末端に設置したDO計からのDO信号に基づいて制御を行うため、下水の流入量や流入水質の変動に対して、制御に時間的な遅れが生じる結果、有機物及び窒素の除去が不完全となりやすく、そのため、良好な処理水質を安定的に保つことは難しい。また、これらの問題を考慮してオペレータがDO目標値を必要以上に高く設定した場合、曝気に要するエネルギー量が本来必要であるエネルギー量に対して過大となる恐れがあり、その場合には曝気に要するコストが増大することとなる。
また、反応タンク内では入口側に近いほど有機物成分濃度や窒素成分濃度が高く、これらを処理するために必要とする酸素量が多くなるため、一般的にはDOは入口側に近いほど低く、出口側に近づくに従って高くなるというようにタンク内の流れ方向に勾配を持って分布している。このDOの勾配は一定ではなく、流入水の水量や水質によって変化しており、負荷が低い場合は勾配が緩く、負荷が高くなるに従って勾配が急となる。そのため、必要な酸素量が充足された状態では反応タンク末端のDOは負荷の程度によって変化することになる。DO制御では、このような反応タンク内のDOの挙動が考慮されておらず、反応タンク末端のDOが一定に保たれるため、負荷の低い状態に合わせてDO目標値を設定した場合には、負荷が高くなったときに有機物及び窒素の除去が不完全となりやすく、そのため、良好な処理水質を安定的に保つことは難しい。逆に、負荷の高い状態に合わせてDO目標値を設定した場合には、負荷が低くなったときに曝気に要するエネルギー量が本来必要であるエネルギー量に対して過大となる恐れがあり、その場合には曝気に要するコストが増大することとなる。
ORP制御についても、DO制御と同様のことがいえる。
さらにいえば、ある時点での最適な比率設定値や最適なDO目標値や最適なORP目標値はわからず、それらは流入水や処理水の水質分析データ等をもとにして、過去の経験や勘に基づいて設定されているため、良好な処理水質を安定的に保つことは難しく、また、下水の流入水量や流入水質の変動を考慮して、ある程度、余裕をみた設定とする必要があることから、曝気に要するコストも過大なものとなることが多い。
一方、式(1)は、標準活性汚泥法の水処理設備を設計する際に、実際に使用されているものであり、設計を行う上での実用性には問題はないが、これを運転に応用する場合には、様々な工夫が必要となる。
たとえば、何らかの理由による曝気風量の不足が生じて硝化反応が不十分となり、反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度が上昇した際に、速やかに曝気風量を増やす計算アルゴリズムが必要である。
また、内生呼吸による酸素消費量は、水温の影響による変化を受けるものと考えられるため、水温をもとにして内生呼吸による酸素消費量を変化させる、といったことが考えられる。
さらに、BODとして測定される有機物のうち、溶解性の有機物は即座に微生物に利用され、浮遊性の有機物は加水分解によって溶解性成分となったのちに微生物に利用されることになるが、式(1)においてはこのことは考慮されてはおらず、ケルダール窒素についても同様のことがいえる。設計においては日単位での曝気風量を算出するために式(1)を使うのであり、このことが問題となることは少ないものと考えられるが、運転において式(1)を利用する場合には時々刻々と変化する水量や水質に応じて、その場その場で必要な曝気風量を算出する必要があるため、反応タンクに流入する下水の成分をBODとケルダール窒素のふたつの成分であらわすだけでは、それぞれの時刻において必要とされる曝気風量は正確には算出できないこととなる。
反応タンクに流入する下水の成分は、すべてが反応タンクの流入部において微生物によって除去されるわけではなく、反応タンクに流入してから、反応タンクを流出するまでの間に、反応タンク全体を反応の場として除去されるため、ある時刻の反応タンクに流入する下水の水量や水質の変化を直接その時刻の曝気風量に反映させる方法によっては曝気風量の反応のタイミングが早すぎるとともに、曝気風量の変化量が過大なものとなる。
一方、特開平10-165976に記載された方法では、脱窒によるBOD除去や、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去が考慮されていないものと推測されるが、これらの影響は通常、無視できない程度に大きいことから、この方法によって、実際に必要となる曝気風量を正確に予測することは難しいと考えられる。
また、この方法では、計測器の誤差や曝気装置・散気装置の経年劣化等を原因として、算出された曝気風量が本来必要である曝気風量に対して過小または過大となることがあるものと予想されるが、式(3)を見る限りにおいては、そのような状況における補正手段は備えられていないものと考えられる。一般的に、このようなフィードフォワード制御においては、何らかのフィードバックによる補正を行うことが必要となる場合が多いということが知られている。
さらに、有機物成分濃度や窒素成分濃度を濃度計により測定し、その計測値に基づいて曝気風量を算出する技術全般にいえることであるが、反応タンクに流入する下水の成分は溶解性成分と浮遊性成分とに分けられるのに対して、有機物成分濃度や窒素成分濃度を測定するために一般的に使用される濃度計では、溶解性成分の測定は可能であるが、浮遊性成分の測定は行えないという問題がある。通常は反応タンクに流入する下水において浮遊性成分が成分全体に占める比率はほぼ一定であると考えられるため、このことによって生じる問題は少ないが、工場排水の影響が大きい場合、汚泥処理返流水の影響が大きい場合、あるいは降雨時などにはこの比率が変化することがあり、そのような場合には溶解性の成分を計測する方法のみによって反応タンクに流入する下水の水質を正確に把握することは困難となる。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は良好な処理水質を安定的に保つとともに、曝気風量を削減することができる下水処理場の運転支援装置及び運転支援方法を提供することにある。
請求項1に示す下水処理場の運転支援装置は、下水を反応タンクと反応タンク内に設置された散気装置と散気装置に接続された曝気装置とを備えた活性汚泥法による水処理設備で処理するうえで必要となる曝気風量を表示する曝気風量表示部を備えた下水処理場の運転支援装置において、反応タンクに流入する下水の水量または処理水の水量を計測する流量計と、反応タンクに流入する下水の有機物成分濃度を計測するCOD濃度計またはBOD濃度計と、反応タンクに流入する下水の窒素成分濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計または全窒素濃度計と、反応タンクのMLSS濃度を計測するMLSS濃度計と、反応タンク末端または最終沈殿池にアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計と硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計のうち少なくともひとつを設け、上記の流量計とCOD濃度計またはBOD濃度計の計測値に基づいて算出したBOD負荷量に反応タンクでのBOD除去率を乗じた値から、反応タンク末端または最終沈殿池に硝酸性窒素濃度計を設置した場合は硝酸性窒素濃度計の計測値に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じ、硝酸性窒素濃度計を設置しない場合は流入ケルダール窒素量や余剰汚泥発生量及び脱窒条件などによって算出した硝酸性窒素濃度に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じて、反応タンクで活性汚泥により酸化されるBOD量を算出し、前記BOD量からBODの酸化に必要な酸素量を算出する第1の算出手段と、上記の流量計とアンモニア性窒素濃度計または全窒素濃度計の計測値に基づき算出したケルダール窒素負荷量から、余剰汚泥によるケルダール窒素除去量を減じ、反応タンク末端または最終沈殿池にアンモニア性窒素濃度計を設置した場合は反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の計測値から反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値を減じた値から算出した反応タンクから流出するアンモニア性窒素量を加え、アンモニア性窒素濃度計を設置しない場合は反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値から算出した反応タンクから流出するアンモニア性窒素量を減じて反応タンクで活性汚泥により酸化されるケルダール窒素量を算出し、前記ケルダール窒素量から硝化反応に必要な酸素量を算出する第2の算出手段と、上記のMLSS濃度計の計測値に基づき、内生呼吸に必要な酸素量を算出する第3の算出手段とを設け、第1の算出手段によって算出したBODの酸化に必要な酸素量と、第2の算出手段によって算出した硝化反応に必要な酸素量と、第3の算出手段によって算出した内生呼吸に必要な酸素量とを合計することにより反応タンクに流入する下水中のBODとケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出する第4の算出手段を設け、第4の算出手段によって算出した必要な酸素量と散気装置の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出する第5の算出手段を設け、第5の算出手段によって算出した必要な曝気風量を曝気風量表示部に表示することを特徴とするものである。
ここで、曝気装置とは微生物による有機物、窒素除去の際に必要となる空気を供給するもので、送風機と送風機により反応タンクに供給される空気の量を調整する風量調整弁とからなるものを意味する。また、散気装置とは送風機から供給された空気を微細化することにより効率よく反応タンクに酸素を供給するものであり、図20に示すようなものが一般的に用いられる。
このように構成された運転支援装置においては、反応タンクに流入する下水の水量と水質からBOD負荷量及びケルダール窒素負荷量を算出し、脱窒によるBOD除去量、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去量、反応タンクから流出するアンモニア性窒素の量などの算出も合わせて行い、これらの算出結果からBOD除去に必要な酸素量とケルダール窒素の除去に必要な酸素量を算出し、これにMLSSの計測値に基づいて算出した活性汚泥の内生呼吸に必要な酸素量を加え、さらに、算出された必要酸素量と散気装置の性能曲線とから必要な曝気風量を算出することができることから、この曝気風量を曝気風量制御装置の曝気風量設定部に入力することで、設定された曝気風量に一致するように曝気風量制御装置が曝気装置を制御することにより有機物及び窒素の処理を効果的に行うことができるため、良好な処理水質を安定的に保つことができる。また、算出された曝気風量はその時点での下水の水量と水質の測定値等に基づいたものであるため、経験や勘による運転設定とは異なり予想外の変動に備えて余裕を見た設定を行う必要がないことから、従来の技術によって運転を行った場合よりも少ない曝気風量での運転が可能となる。
請求項2に示す下水処理場の運転支援装置は、請求項1に示す下水処理場の運転支援装置において、反応タンクに流入する下水の浮遊物成分濃度を計測するSS濃度計または濁度計を設け、反応タンクに流入する下水のCOD濃度を計測するCOD濃度計の計測値と上記のSS濃度計または濁度計の計測値から反応タンクに流入する下水中のBOD濃度を算出する手段と、反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計の計測値と上記のSS濃度計または濁度計の計測値から反応タンクに流入する下水中のケルダール窒素濃度を算出する手段を設けたことを特徴とするものである。
このように構成された運転支援装置においては、請求項1に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、反応タンクに流入する下水の浮遊物成分濃度をSS濃度計または濁度計によって計測して、これを曝気風量の算出に用いることができることから、工場排水の影響が大きい場合、汚泥処理返流水の影響が大きい場合、あるいは降雨時など浮遊性成分が成分全体に占める割合が変化するような場合においても良好な処理水質を安定的に保つことができる。
請求項3に示す下水処理場の運転支援装置は、請求項1または請求項2に示す下水処理場の運転支援装置において、反応タンクに流入する下水の水温または反応タンクの水温または最終沈殿池の水温または放流水の水温を計測する温度計を設け、温度計の計測値に基づいて内生呼吸に必要な酸素量を算出する手段を設けたことを特徴とするものである。
このように構成された運転支援装置においては、請求項1に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、温度計の計測値に基づいて内生呼吸に必要な酸素量を算出することができ、これを曝気風量の算出に用いることができることから、季節変動等による水温の変化に的確に対応し有機物及び窒素の処理を効果的に行うことが可能となる。
請求項4に示す下水処理場の運転支援装置は、請求項1〜3に示す下水処理場の運転支援装置のいずれかにおいて、流入負荷を易分解成分と難分解成分に分けて必要酸素量を算出する手段を設けたことを特徴とするものである。
このように構成された運転支援装置においては、請求項1に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、流入成分の構成を考慮して流入負荷を易分解成分と難分解成分に分けてこれらの各成分が分解されるために必要な時間を考慮して必要酸素量を算出することができ、これを曝気風量の算出に用いることができることから、通常の下水に比べて難分解成分が占める割合が高い場合にも有機物及び窒素の処理を効果的に行うことが可能となる。
請求項5に示す下水処理場の運転支援装置は、請求項1〜4に示す下水処理場の運転支援装置のいずれかにおいて、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算する手段を設けたことを特徴とするものである。
反応タンクに流入する下水の成分は、すべてが反応タンクの流入部において微生物によって除去されるわけではなく、反応タンクに流入してから、反応タンクを流出するまでの間に、反応タンク全体を反応の場として除去される。そのため、ある時刻の反応タンクに流入する下水の水量や水質の変化を直接その時点の曝気風量に反映させる方法によっては曝気風量の反応のタイミングが早すぎるとともに、曝気風量の変化量が過大なものとなることになる。そのような事態を避けるためには、反応タンクに流入する下水の水量や濃度の変化によって生じる反応タンク内での濃度変化の時間的な遅れを考慮する必要がある。請求項5に示す下水処理場の運転支援装置においては、この時間的な遅れを必要酸素量の算出に反映させることにより曝気風量が変化するタイミングと変化量を適正なものにすることができる。
このように構成された運転支援装置においては、請求項1に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、流入負荷が実際に処理されるまでの時間的な遅れをも考慮して必要な曝気風量を算出することができることから、曝気風量が変化するタイミングと変化量を適正なものにすることができ、それにより、請求項1に示す運転支援装置よりも、さらに処理水質の安定化を図ることができると共に曝気風量のピークカットをすることにより曝気風量を削減することが可能となる。
請求項6に示す下水処理場の運転支援装置は、請求項1〜5に示す下水処理場の運転支援装置のいずれかにおいて、反応タンク末端または最終沈殿池に設置されたアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差、または、反応タンク末端または最終沈殿池に設置された硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、必要酸素量をフィードバック調整する手段を備えたことを特徴とするものである。
ここで、フィードバック調整とは、出力の結果を入力側に戻し、目標値と比較して調整を行うことをいう。
流入水質を測定する濃度計は汚れによる誤差を生じやすいが、濃度計の誤差によって算出された必要酸素量が本来必要である必要酸素量に対して過大または過小となった場合でも、このフィードバック調整により、補正を行うことができる。
また、散気装置・曝気装置の経年劣化等の原因によって生じる誤差に対しても、このフィードバック調整は有効に機能し、補正を行うことができる。
このように構成された運転支援装置においては、請求項1に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、反応タンク末端または最終沈殿池に設置されたアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差、または、反応タンク末端または最終沈殿池に設置された硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、必要酸素量をフィードバック調整することができることから、流入水質を測定する濃度計の誤差や散気装置・曝気装置の経年劣化等が生じた場合でも、それらの影響を回避することができる。
請求項7に示す下水処理場の運転支援装置は、請求項1〜6に示す下水処理場の運転支援装置のいずれかにおいて、算出した曝気風量を、曝気風量が制御目標値に一致するように曝気装置を制御する曝気風量制御装置の制御目標値として、曝気風量制御装置に転送する手段を備えたことを特徴とするものである。
このように構成された運転支援装置においては、請求項1に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、算出した曝気風量をオペレータを介することなく曝気風量制御装置の曝気風量設定部に出力することができることから、省力化が可能となる。
請求項8に示す下水処理場の運転支援装置は、下水を反応タンクと反応タンク内に設置された散気装置と散気装置に接続された曝気装置とを備えた活性汚泥法による水処理設備で処理するうえで必要となる曝気風量を表示する曝気風量表示部を備えた下水処理場の運転支援装置において、反応タンクに流入する下水の水量を計測する流量計と、反応タンクに流入する下水のCOD濃度を計測するCOD濃度計と、反応タンク末端の硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計を設け、反応タンクに下水が流入する水路と反応タンク末端からポンプを用いて交互に採水を行い、自動洗浄機能を備えた水質測定ユニットに導入し、水質測定ユニットに設置したアンモニア性窒素濃度計とSS濃度計により反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度とSS濃度及び反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度とSS濃度を計測する手段を設け、上記の流量計とCOD濃度計の計測値に基づき、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算することにより算出したBOD負荷量に反応タンクでのBOD除去率を乗じた値から、反応タンク末端に設置された硝酸性窒素濃度計の計測値に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じて反応タンクで活性汚泥により酸化されるBOD量を算出し、前記BOD量からBODの酸化に必要な酸素量を算出する第1の算出手段と、上記の流量計と反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度の計測値に基づき、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算することにより算出したケルダール窒素負荷量から、余剰汚泥による窒素除去量を減じ、反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の計測値から反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値を減じた値から算出した反応タンクから流出するアンモニア性窒素量を加えることにより反応タンクで活性汚泥により酸化されるケルダール窒素量を算出し、前記ケルダール窒素量から硝化反応に必要な酸素量を算出する第2の算出手段と、反応タンク末端のSS濃度の計測値に基づき、内生呼吸に必要な酸素量を算出する第3の算出手段とを設け、第1の算出手段によって算出したBODの酸化に必要な酸素量と、第2の算出手段によって算出した硝化反応に必要な酸素量と、第3の算出手段によって算出した内生呼吸に必要な酸素量とを合計することにより反応タンクに流入する下水中のBODとケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出する第4の算出手段を設け、反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の計測値と反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差及び反応タンク末端に設置された硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、第4の算出手段により算出された必要酸素量をフィードバック調整する第5の算出手段を設け、第5の算出手段によって算出した必要な酸素量と散気装置の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出する第6の算出手段を設け、第6の算出手段によって算出した必要な曝気風量を曝気風量表示部に表示することを特徴とするものである。
このように構成された運転支援装置においては、反応タンクに流入する下水の水量と水質からBOD負荷量及びケルダール窒素負荷量を算出し、脱窒によるBOD除去量、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去量、反応タンクから流出するアンモニア性窒素の量などの算出も合わせて行い、これらの算出結果からBOD除去に必要な酸素量とケルダール窒素の除去に必要な酸素量を算出し、これにMLSSの計測値に基づいて算出した活性汚泥の内生呼吸に必要な酸素量を加え、さらに、算出された必要酸素量と散気装置の性能曲線とから必要な曝気風量を算出することができることから、この曝気風量を曝気風量制御装置の曝気風量設定部に入力することで、設定された曝気風量に一致するように曝気風量制御装置が曝気装置を制御することにより有機物及び窒素の処理を効果的に行うことができるため、良好な処理水質を安定的に保つことができる。また、算出された曝気風量はその時点での下水の水量と水質の測定値等に基づいたものであるため、経験や勘による運転設定とは異なり予想外の変動に備えて余裕を見た設定を行う必要がないことから、従来の技術によって運転を行った場合よりも少ない曝気風量での運転が可能となる。また、水質測定ユニットの活用により、アンモニア性窒素濃度計及びSS濃度計の汚れによる誤差を少なくすることができるとともに、濃度計の設置台数を減らすことができることから、これらの濃度計のメンテナンスにかかるコストや設置コストを縮減することが可能となる。
請求項9に示す下水処理場の運転支援方法は、下水を活性汚泥法による水処理設備で処理するうえで必要となる曝気風量を算出する下水処理場の運転支援方法において、反応タンクに流入する下水の水量または処理水の水量を流量計により計測し、反応タンクに流入する下水の有機物成分濃度をCOD濃度計またはBOD濃度計により計測し、反応タンクに流入する下水の窒素成分濃度をアンモニア性窒素濃度計または全窒素濃度計により計測し、反応タンクのMLSS濃度をMLSS濃度計により計測し、反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度と硝酸性窒素濃度のうち少なくともひとつをアンモニア性窒素濃度計または硝酸性窒素濃度計により計測し、上記の流量計とCOD濃度計またはBOD濃度計の計測値に基づいて算出したBOD負荷量に反応タンクでのBOD除去率を乗じた値から、反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度を計測する場合は硝酸性窒素濃度計の計測値に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じ、硝酸性窒素濃度を計測しない場合は流入ケルダール窒素量や余剰汚泥発生量及び脱窒条件などによって算出した硝酸性窒素濃度に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じて、反応タンクで活性汚泥により酸化されるBOD量を算出し、前記BOD量からBODの酸化に必要な酸素量を算出し、上記の流量計とアンモニア性窒素濃度計または全窒素濃度計の計測値に基づき算出したケルダール窒素負荷量から、余剰汚泥によるケルダール窒素除去量を減じ、反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度を計測する場合は反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の計測値から反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値を減じた値から算出した反応タンクから流出するアンモニア性窒素量を加え、アンモニア性窒素濃度を計測しない場合は反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値から算出した反応タンクから流出するアンモニア性窒素量を減じて反応タンクで活性汚泥により酸化されるケルダール窒素量を算出し、前記ケルダール窒素量から硝化反応に必要な酸素量を算出し、上記のMLSS濃度計の計測値に基づき、内生呼吸に必要な酸素量を算出し、BODの酸化に必要な酸素量と、硝化反応に必要な酸素量と、内生呼吸に必要な酸素量とを合計することにより反応タンクに流入する下水中のBODとケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、前記の必要な酸素量と散気装置の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出することを特徴とするものである。
請求項9に示す運転支援方法においては、反応タンクに流入する下水の水量と水質からBOD負荷量及びケルダール窒素負荷量を算出し、脱窒によるBOD除去量、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去量、反応タンクから流出するアンモニア性窒素の量などの算出も合わせて行い、これらの算出結果からBOD除去に必要な酸素量とケルダール窒素の除去に必要な酸素量を算出し、これにMLSSの計測値に基づいて算出した活性汚泥の内生呼吸に必要な酸素量を加え、さらに、算出された必要酸素量と散気装置の性能曲線とから必要な曝気風量を算出することができることから、有機物及び窒素の処理を効果的に行うことができるため、良好な処理水質を安定的に保つことができる。また、算出された曝気風量はその時点での下水の水量と水質の測定値等に基づいたものであるため、経験や勘による運転設定とは異なり予想外の変動に備えて余裕を見た設定を行う必要がないことから、従来の技術によって運転を行った場合よりも少ない曝気風量での運転が可能となる。
請求項10に示す下水処理場の運転支援方法は、請求項9の下水処理場の運転支援方法において、反応タンクに流入する下水の浮遊物成分濃度をSS濃度計または濁度計により計測し、反応タンクに流入する下水のCOD濃度を計測するCOD濃度計の計測値と上記のSS濃度計または濁度計の計測値から反応タンクに流入する下水のBOD濃度を算出し、反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計の計測値と上記のSS濃度計または濁度計の計測値から反応タンクに流入する下水のケルダール窒素濃度を算出することを特徴とするものである。
請求項10に示す運転支援方法においては、請求項9に示す運転支援方法と同様な効果が得られる他、反応タンクに流入する下水の浮遊物成分濃度をSS濃度計または濁度計によって計測して、これを曝気風量の算出に用いることができることから、工場排水の影響が大きい場合、汚泥処理返流水の影響が大きい場合、あるいは降雨時など浮遊性成分が成分全体に占める割合が変化するような場合においても良好な処理水質を安定的に保つことができる。
請求項11に示す下水処理場の運転支援方法は、請求項9または10の下水処理場の運転支援方法において、反応タンクに流入する下水の水温または反応タンクの水温または最終沈殿池の水温または放流水の水温を温度計により計測し、温度計の計測値に基づいて内生呼吸に必要な酸素量を算出することを特徴とするものである。
請求項11に示す運転支援方法においては、請求項9に示す運転支援方法と同様な効果が得られる他、温度計の計測値に基づいて内生呼吸に必要な酸素量を算出することができ、これを曝気風量の算出に用いることができることから、季節変動等による水温の変化に的確に対応し有機物及び窒素の処理を効果的に行うことが可能となる。
請求項12に示す下水処理場の運転支援方法は、請求項9〜11のいずれかに記載の下水処理場の運転支援方法において、流入負荷を易分解成分と難分解成分に分けて必要酸素量を算出することを特徴とするものである。
請求項12に示す運転支援方法においては、請求項9に示す運転支援方法と同様な効果が得られる他、流入成分の構成を考慮して流入負荷を易分解成分と難分解成分に分けてこれらの各成分が分解されるために必要な時間を考慮して必要酸素量を算出することができ、これを曝気風量の算出に用いることができることから、通常の下水に比べて難分解成分が占める割合が高い場合にも有機物及び窒素の処理を効果的に行うことが可能となる。
請求項13に示す下水処理場の運転支援方法は、請求項9〜12のいずれかに記載の下水処理場の運転支援方法において、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算することを特徴とするものである。
請求項13に示す運転支援方法においては、請求項9に示す運転支援方法と同様な効果が得られる他、流入負荷が実際に処理されるまでの時間的な遅れをも考慮して必要な曝気風量を算出することができることから、曝気風量が変化するタイミングと変化量を適正なものにすることができ、それにより、請求項9に示す運転支援方法よりも、さらに処理水質の安定化を図ることができると共に曝気風量のピークカットをすることにより曝気風量を削減することが可能となる。
請求項14に示す下水処理場の運転支援方法は、請求項9〜13のいずれかに記載の下水処理場の運転支援方法において、反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度をアンモニア性窒素濃度計により計測し、これと反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差、または、反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度を硝酸性窒素濃度計により計測し、これと反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、必要酸素量をフィードバック調整することを特徴とするものである。
請求項14に示す運転支援方法においては、請求項9に示す運転支援方法と同様な効果が得られる他、反応タンク末端または最終沈殿池に設置されたアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差、または、反応タンク末端または最終沈殿池に設置された硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、必要酸素量をフィードバック調整することができることから、流入水質を測定する濃度計の誤差や散気装置・曝気装置の経年劣化等が生じた場合でも、それらの影響を回避することができる。
図29は本発明により構成した図15に示す運転支援装置を用いた場合と、図19に示す従来の運転支援装置(ORP制御)を用いた場合の最終沈殿池透視度の比較図である。本発明により構成した運転支援装置を用いた実験は平成22年1月から実施しており、図29には平成22年6月までの最終沈殿池透視度の月平均値を示している。また、従来の運転支援装置を用いた場合の最終沈殿池透視度として、平成19年と平成20年の同月のデータをあわせて図29に示した。平成19年2月から平成22年6月までの間、下水の流入水量と流入水質はほぼ同等であった。また、平成19年1月と平成21年の1月から6月までは実験を行った系列は休止していたためデータが存在しない。最終沈殿池透視度の月平均値は平成19年と平成20年は40度前後で推移しているが、平成22年には大きく上昇し、80度前後となっている。これにより、本発明により構成した運転支援装置を用いることにより、良好な処理水質を安定的に保つことができることが実証された。
図30は本発明により構成した図15に示す運転支援装置を用いた場合と、図19に示す従来の運転支援装置(ORP制御)を用いた場合の曝気に要した電力量の比較図である。本発明により構成した運転支援装置を用いた実験は平成22年1月から実施しており、図30には平成22年6月までの曝気に要した電力量の月平均値を示している。また、従来の運転支援装置を用いた場合の曝気に要した電力量として、平成19年と平成20年の同月のデータをあわせて図30に示した。平成19年2月から平成22年6月までの間、下水の流入水量と流入水質はほぼ同等であった。また、平成19年1月と平成21年の1月から6月までは実験を行った系列は休止していたためデータが存在しない。曝気に要した電力量の月平均値は平成19年と平成20年は1700kWh/日前後で推移しているが、平成22年には大きく減少し、1500kWh/日前後となっている。これにより、本発明により構成した運転支援装置を用いることにより、曝気風量を削減することができ、それにより曝気に要する電力量を削減できることが実証された。
以上のように本発明によれば、反応タンクに流入する下水の水量と水質からBOD負荷量及びケルダール窒素負荷量を算出し、脱窒によるBOD除去量、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去量、反応タンクから流出するアンモニア性窒素の量などの算出も合わせて行い、これらの算出結果からBOD除去に必要な酸素量とケルダール窒素の除去に必要な酸素量を算出し、これにMLSSの計測値に基づいて算出した活性汚泥の内生呼吸に必要な酸素量を加え、さらに、算出された必要酸素量と散気装置の性能曲線とから必要な曝気風量を算出することができることから、この曝気風量を曝気風量制御装置の曝気風量設定部に入力することで、設定された曝気風量に一致するように曝気風量制御装置が曝気装置を制御することにより有機物及び窒素の処理を効果的に行うことができるため、良好な処理水質を安定的に保つことができる。また、算出された曝気風量はその時点での下水の水量と水質の測定値等に基づいたものであるため、経験や勘による運転設定とは異なり予想外の変動に備えて余裕を見た設定を行う必要がないことから、従来の技術によって運転を行った場合よりも少ない曝気風量での運転が可能となる。
なお、以下に示す実施の形態を示す図面においては、水処理設備を1系列のみ示しているが、水処理設備の系列が複数存在する場合にも本技術は適用可能である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
図1に示すように、下水処理場の水処理設備10は下水が流入する最初沈殿池11と、反応タンク12と、最終沈殿池15とを備え、反応タンク内には散気装置17が設置されるとともに、散気装置17には曝気装置16が接続されている。
反応タンク入口には反応タンク12に流入する下水の水量を計測する流量計41と、反応タンク12に流入する下水のCOD濃度を計測するCOD濃度計42と、反応タンク12に流入する下水中のアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計43を設けるとともに、反応タンク内に硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計46とアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計47を設ける。
反応タンク内には、反応タンク12のMLSS濃度を計測するMLSS濃度計45を設ける。
また、必要な曝気風量を算出するために必要なパラメータを設定するパラメータ設定部21と、反応タンク入口に設置した流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、反応タンク12に設置した硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47及びMLSS濃度計45からの信号に基づいて、反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する曝気風量演算部22と必要な曝気風量を表示する曝気風量表示部23を持つ運転支援装置20を設ける。
一方、曝気風量設定部31と曝気風量制御部32を持つ曝気風量制御装置30が曝気装置16に接続されており、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御するようになっている。
ここで、曝気風量アンサー値とは、曝気装置によって散気装置に実際に供給された曝気風量のことである。
図1において、最終沈殿池15と反応タンク12との間に、返送汚泥ポンプ19を有する返送ラインが設けられている。
図2は図1における信号の流れを示すブロック図である。
図2に示すように、運転支援装置20はパラメータ設定部21と、曝気風量演算部22と、曝気風量表示部23を有している。また、曝気風量制御装置30は曝気風量設定部31と曝気風量制御部32を有している。
以下、パラメータ設定部21と、曝気風量演算部22と、曝気風量表示部23について説明する。
パラメータ設定部21では、曝気風量演算に必要となる、除去BODあたりに必要な酸素量、流入BODの除去率、脱窒により消費される下水のBOD量、汚泥返送比、硝化反応により消費される酸素量、流入ケルダール窒素の硝化率、内生呼吸係数、好気部分の反応タンク容積、MLVSS/MLSS比、COD濃度計の計測値からBODを算出するための乗数及び定数、アンモニア性窒素濃度計の計測値からケルダール窒素濃度を算出するための乗数及び定数、散気装置の性能曲線などのパラメータがオペレータにより設定される。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47の計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量から必要な曝気風量を算出する。
曝気風量演算部22で算出された曝気風量は、曝気風量表示部23に表示され、オペレータがこの曝気風量表示部23に表示された曝気風量を、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力する。
曝気風量制御装置30の曝気風量制御部32では曝気風量設定部31に入力された曝気風量と曝気装置16からの曝気風量アンサー値との偏差に基づき、曝気風量アンサー値が曝気風量設定部31に入力された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
下水は最初沈殿池11において、比較的粗大な浮遊物が沈殿除去される。反応タンク12では、下水が活性汚泥と混合されて曝気装置16から散気装置17を介して送られる空気によって曝気され、活性汚泥に含まれる微生物の代謝作用により有機物が除去される。活性汚泥混合液は最終沈殿池15において、活性汚泥が沈降することによって浄化される。
下水の窒素除去のため、反応タンク12は好気槽14と無酸素槽13とに分けられ、好気槽14では下水中のアンモニア等の窒素化合物が酸化されて硝酸となる。好気槽14で生成された硝酸は好気槽14から返送汚泥を通じて無酸素槽13に送られ、無酸素槽13において、活性汚泥の硝酸呼吸の結果、窒素ガスとなり、大気中に除去される。
この間、運転支援装置20の曝気風量演算部22では、オペレータにより運転支援装置20のパラメータ設定部21に設定された各種のパラメータと、反応タンク入口に設置した流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、反応タンク12に設置した硝酸性窒素濃度計46及びMLSS濃度計45からの信号に基づいて、有機物及び窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量から必要な曝気風量を算出する。
必要な曝気風量を算出するための方法についてさらに述べる。
曝気風量演算部22は、BODの酸化に必要な酸素量を算出する第1の算出手段と、硝化反応に必要な酸素量を算出する第2の算出手段と、内生呼吸に必要な酸素量を算出する第3の算出手段と、反応タンクに流入する下水中の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出する第4の算出手段と、第4の算出手段によって算出した必要な酸素量と散気装置17の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出する第5の算出手段を備えている。
第1の算出手段では、流量計41とCOD濃度計42の計測値に基づき算出したBOD負荷量に反応タンクでのBOD除去率を乗じた値から、硝酸性窒素濃度計46の計測値に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じて、反応タンク12で活性汚泥により酸化されるBOD量を算出し、前記BOD量からBODの酸化に必要な酸素量を算出する。
第2の算出手段では、流量計41とアンモニア性窒素濃度計43の計測値に基づき算出したケルダール窒素負荷量から、余剰汚泥によるケルダール窒素除去量を減じ、アンモニア性窒素濃度計47の計測値から反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値(例えば、0.5mg/L等)を減じた値から算出した反応タンク12から流出するアンモニア性窒素量を加えることにより反応タンク12で活性汚泥により酸化されるケルダール窒素量を算出し、前記ケルダール窒素量から硝化反応に必要な酸素量を算出する。
第3の算出手段では、MLSS濃度計45の計測値に基づき、内生呼吸に必要な酸素量を算出する。
第4の算出手段では、第1の算出手段によって算出したBODの酸化に必要な酸素量と、第2の算出手段によって算出した硝化反応に必要な酸素量と、第3の算出手段によって算出した内生呼吸に必要な酸素量とを合計することにより反応タンクに流入する下水中の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出する。
第5の算出手段では、第4の算出手段によって算出した必要な酸素量と散気装置17の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出する。
このうち、第1から第4までの算出手段は次式によって示すことができる。
ここで、添え字「in」は反応タンク12への流入を意味する。また、各記号は次のように定義される。
OR:反応タンクに流入する下水中の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量
[kg-O2/時間]
A:除去BODあたりに必要な酸素量[kg-O2/kg-BOD]
F:反応タンクに流入する下水の水量 [m3/時間]
YB:反応タンクでのBOD除去率。水処理設備の処理能力を考慮して設定する[−]
BODin:反応タンクに流入する下水のBOD濃度 [mg/L]
K:脱窒により消費されるBOD量[kg-BOD/kg-N]
RN:汚泥返送比 [−]
NO:反応タンク末端に設置された硝酸性窒素濃度計の計測値[mg/L]
C:硝化反応により消費される酸素量[kg-O2/kg-N]
YN:流入ケルダール窒素の硝化率(流入ケルダール窒素量から余剰汚泥によるケルダ
ール窒素除去量を減じ、これを流入ケルダール窒素量で除した値)。実績値を利
用するか、流入水質・流入水量やMLSSなどを考慮して設定する[−]
KjNin:反応タンクに流入する下水のケルダール窒素濃度 [mg/L]
B:内生呼吸係数(単位MLVSSあたりの内生呼吸による酸素消費量)
[kg-O2/(kg-MLVSS・時間)]
VA:好気部分の反応タンク容積[m3]
MLVSS:反応タンクに設置されたMLSS濃度計の計測値に、MLVSS/MLSS比を乗じ
て算出する[mg/L]
F_out:反応タンク末端から流出する水量で、返送汚泥量などを含む[m3/時間]
NH:反応タンク末端に設置されたアンモニア性窒素濃度計の計測値 [mg/L]
NH_sv:反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値[mg/L]
式(4)において、BOD濃度BODinは、図22に示すようにCOD濃度計の計測値とBODの分析結果が高い相関を示すことを根拠として、BOD分析値とCOD濃度計計測値との相関関係をもとにして、COD濃度計計測値CODinから次式により算出する。
ただし、
c_BC:CODinに係るBODin換算乗数
d_B:BODin換算定数
であり、これらの値は下水処理場によって、また、同じ下水処理場においても季節変動等により変化するものであることから、反応タンクに流入する下水の水質分析を行い、図22の例に示すような相関式を算出することにより定める。
また、ケルダール窒素濃度KjNinは、図23に示すようにアンモニア性窒素濃度計計測値とケルダール窒素分析値が高い相関を示すことを根拠として、ケルダール窒素分析値とアンモニア性窒素濃度計計測値との相関関係をもとにして、アンモニア性窒素濃度計計測値NHinから次式により算出する。
ただし、
c_KNN:NHinに係るKjNin換算乗数
d_KNH:KjNin換算定数
であり、これらの値は下水処理場によって、また、同じ下水処理場においても季節変動等により変化するものであることから、反応タンクに流入する下水の水質分析を行い、図23の例に示すような相関式を算出することにより定める。
式(4)では反応タンク末端に設置した硝酸性窒素濃度計46の計測値を用いて、脱窒によるBOD除去量を算出している。これにより図24に示すように、このような計算を行わない場合に比べ、算出される曝気風量が減少することになる。
また、何らかの理由による曝気風量の不足が生じて硝化反応が不十分となり、反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度が上昇した際に、反応タンク末端に設置したアンモニア性窒素濃度計47の計測値の変化に応じて曝気風量が増加するため、図25に示すように早期に反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度を低下させ、水質を安定させることができる。
このようにして必要酸素量を算出したうえで、第5の算出手段により、この必要酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。その算出手段は次式によって示される。
ここで
OR:必要酸素量
EA1:混合液に対する酸素移動効率
ρ:空気の密度
OW:空気中の酸素の重量比
混合液に対する酸素移動効率EA1は図21の散気装置の性能曲線の例に示すように曝気風量が増加するに従って低下する。そのため、混合液に対する酸素移動効率EA1の値は固定した値ではなく、曝気風量によって変化する値として次式によって算出する。
ここで
c_E:酸素移動効率算出乗数[%・(時間/Nm3) d_E]
AR:曝気風量、ここでは必要な曝気風量と等しい[Nm3/時間]
d_E:酸素移動効率算出指数[−]
このようにして算出された曝気風量は運転支援装置20の曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
このように本実施の形態によれば、反応タンクに流入する下水の水量と水質からBOD負荷量及びケルダール窒素負荷量を算出し、脱窒によるBOD除去量、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去量、反応タンクから流出するアンモニア性窒素の量などの算出も合わせて行い、これらの算出結果からBOD除去に必要な酸素量とケルダール窒素の除去に必要な酸素量を算出し、これにMLSSの計測値に基づいて算出した活性汚泥の内生呼吸に必要な酸素量を加え、さらに、算出された必要酸素量と散気装置の性能曲線とから必要な曝気風量を算出することができることから、この曝気風量を曝気風量制御装置の曝気風量設定部に入力することで、設定された曝気風量に一致するように曝気風量制御装置が曝気装置を制御することにより有機物及び窒素の処理を効果的に行うことができるため、良好な処理水質を安定的に保つことができる。また、算出された曝気風量はその時点での下水の水量と水質の測定値等に基づいたものであるため、経験や勘による運転設定とは異なり予想外の変動に備えて余裕を見た設定を行う必要がないことから、従来の技術によって運転を行った場合よりも少ない曝気風量での運転が可能となる。
(変形例1)図1の反応タンク12に流入する下水の流入水量を測定する流量計41に代えて、最終沈殿池15に流入する処理水の流量や放流水の放流流量を測定する流量計を用いることもできる。また、最初沈殿池11より上流に流量計を設置して、この流量計の計測値をもとにして、反応タンク12に流入する下水の流入水量を算出することもできる。あるいは、汚水ポンプの運転時間と回転数から算出する、汚水ポンプ井に設置された水位計の水位計測値と汚水ポンプ吐出量とから算出する、など流量計を用いずに反応タンク12に流入する下水の流入水量を算出することも可能である。
(変形例2)図1のCOD濃度計42に代えて、BOD濃度計やTOC濃度計、あるいはUV計など有機物成分濃度を計測することが可能な濃度計を用いることもできる。
(変形例3)図1の反応タンク12に流入する下水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計43に代えて、全窒素濃度計を用いることもできる。全窒素濃度計を用いる場合にはケルダール窒素濃度KjNinは全窒素濃度計計測値とケルダール窒素濃度分析値との相関関係をもとにして、全窒素濃度計計測値TNinから次式により算出する。
ただし、
c_ KNT:TNinに係るKjNin換算乗数
d_KNT:KjNin換算定数
であり、これらの値は下水処理場によって、また、同じ下水処理場においても季節変動等により変化するものであることから、反応タンクに流入する下水の水質分析を行い、相関式を算出することにより定める。
(変形例4)式(5)、式(6)及び式(9)においては一次式(線形)で近似した場合の相関式を用いているが、対数近似、指数近似など、相関関係を表すことができる方法であれば、これ以外のどのような方法を用いてもよい。
(変形例5)同様に、式(8)においては累乗近似で近似した場合の相関式を用いているが、これについても、相関関係を表すことができる方法であれば、これ以外のどうのような方法を用いてもよい。
(変形例6)流入水または最初沈殿池流入水、あるいは最初沈殿池流入部の有機物成分濃度または窒素成分濃度を測定し、最初沈殿池11での除去率を考慮して反応タンクに流入する下水の水質を算出する方法によることもできる。
(変形例7)図1では反応タンク12に硝酸性窒素濃度を測定する硝酸性窒素濃度計46を設置しているが、硝酸性窒素濃度は反応タンクを流出した後、放流水路に至るまで変化しないと考えられることから、これを最終沈殿池流入水路や最終沈殿池15、あるいは、塩素混和池や放流水路等に設置しても同じ効果が得られる。
(変形例8)同様に、図1に示すアンモニア性窒素濃度計47は最終沈殿池流入水路や最終沈殿池15、あるいは、塩素混和池や放流水路等に設置しても同じ効果が得られる。
(変形例9)図1では反応タンク12に硝酸性窒素濃度を測定する硝酸性窒素濃度計46を設置しているが、これを設置せず、流入ケルダール窒素量や余剰汚泥発生量及び脱窒条件などによって算出した硝酸性窒素濃度を用いることも可能である。
(変形例10)図1では、反応タンク12にアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア窒素濃度計47を設置しているが、これを省略することも可能である。この場合は、第2の算出手段において、流量計41とアンモニア性窒素濃度計43の計測値に基づき算出したケルダール窒素負荷量から、余剰汚泥によるケルダール窒素除去量を減じ、反応タンク12から流出するアンモニア性窒素濃度の目標値(例えば、0.5mg/L等)から算出した反応タンク12から流出するアンモニア性窒素量を減じて反応タンク12で活性汚泥により酸化されるケルダール窒素量を算出し、このケルダール窒素量から硝化反応に必要な酸素量を算出する。
(変形例11)また、図1ではMLSSはMLSS濃度計45の指示値により計測しているが、MLSSは流入水量、返送汚泥流量、返送汚泥濃度の計測値から算出することもできる。
(変形例12)図1では、濃度計を計測対象箇所に設置しているが、計測対象箇所からポンプ等を用いて採水を行い、自動洗浄機能を備えた水質測定ユニットに導入し、水質測定ユニットに設置した濃度計により計測を行うこととしてもよい。このようにすることにより、濃度計が定期的に水で洗浄されるため、濃度計の汚れによる誤差を小さくすることができる。
(変形例13)また、複数の採水箇所からバルブの切り替えによって、交互または順番に採水を行い、自動洗浄機能を備えた水質測定ユニットに設置した濃度計により計測を行うこともできる。このようにすることにより、濃度計の設置台数を減らすことが可能となり、設置コストやメンテナンスコストを節減することができる。
(変形例14)式(4)では、返送比を設定しているが、返送汚泥流量を測定する流量計を設け、この流量計の計測値と反応タンク12に流入する下水の流量を測定する流量計41の計測値との比から返送比を算出するようにしてもよい。
次に図3により本発明の第2の実施の形態について説明する。
図3に示す第2の実施の形態は反応タンク12に流入する下水中の浮遊物成分濃度を計測するSS濃度計44を設置したものであり、他は図1に示す第1の実施の形態と同一である。
図3において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図4は図3における信号の流れを示すブロック図であり、SS濃度計44からの信号が追加されている。
図4において、図2に示す図1における信号の流れを示すブロック図と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
パラメータ設定部21では、COD濃度計の計測値とSS濃度計の計測値からBODを算出するための乗数及び定数、アンモニア性窒素濃度計の計測値とSS濃度計の計測値からケルダール窒素濃度を算出するための乗数及び定数などのパラメータが本実施形態に特有なパラメータとしてオペレータにより設定される。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、SS濃度計44、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47の計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。
本実施形態においては、COD濃度計42の計測値CODinとSS濃度計44の計測値SSinに基づいて次式により反応タンク12に流入する下水中のBOD濃度BODin1を算出する。
ただし、
c_BC1:CODinに係るBODin換算乗数
c_BSS1:SSinに係るBODin換算乗数
d_B1:BODin換算定数
であり、これらの値は反応タンクに流入する下水の水質分析により定める。
また、アンモニア性窒素濃度計43の計測値NHinとSS濃度計44の計測値SSinに基づいて次式により反応タンク12に流入する下水中のケルダール窒素濃度KjNin1を算出する。
ただし、
c_KNN1:NHinに係るKjNin換算乗数
c_KNSS1:SSinに係るKjNin換算乗数
d_KNH1:KjNin換算定数
であり、これらの値は反応タンクに流入する下水の水質分析により定める。
本実施形態においては、式(10)により算出されたBOD濃度BODin1を式(4)のBOD濃度BODinの代わりに、また、式(11)により算出されたケルダール窒素濃度KjNin1を式(4)のケルダール窒素濃度KjNinの代わりに用いることにより、必要酸素量を算出する。
このようにして反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
こうして算出された曝気風量は運転支援装置20の曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
反応タンク12に流入する下水の成分は溶解性成分と浮遊性成分とに分けられる。一般的に、COD濃度計42やアンモニア性窒素濃度計43などの濃度計では浮遊性成分の濃度は測定できないが、通常は反応タンク12に流入する下水において浮遊性成分が成分全体に占める比率はほぼ一定であると考えられるため、COD濃度計42の計測値からBOD濃度を算出することや、アンモニア性窒素濃度計43の計測値からケルダール窒素濃度を算出することが可能となる。ただし、工場排水の影響が大きい場合、汚泥処理返流水の影響が大きい場合、あるいは降雨時などにこの比率が変化することがある。そのような場合にはこの浮遊性成分が成分全体に占める比率を把握して濃度の算出に使用する必要が生じる。本実施形態は、そのような場合を想定して考案されたものであり、反応タンク12に流入する下水における浮遊性成分が成分全体に占める割合の変化を反映するために、反応タンク12に流入する下水のSS濃度を測定するSS濃度計44の計測値を用いて、BOD濃度及びケルダール窒素濃度の補正を行う。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、反応タンクに流入する下水の浮遊物成分濃度をSS濃度計によって計測して、これを曝気風量の算出に用いることができることから、工場排水の影響が大きい場合、汚泥処理返流水の影響が大きい場合、あるいは降雨時など浮遊性成分が成分全体に占める割合が変化するような場合においても良好な処理水質を安定的に保つことができる。
(変形例1)図3のSS濃度計44に代えて、濁度計など浮遊物成分濃度を計測することが可能な濃度計を用いることもできる。
(変形例2)流入水または最初沈殿池流入水、あるいは最初沈殿池流入部での浮遊物成分濃度を測定し、最初沈殿池11での除去率を考慮して反応タンクに流入する下水の水質を算出する方法によることもできる。
(変形例3)式(10)及び式(11)においては一次式(線形)で近似した場合の相関を用いているが、対数近似、指数近似など、相関関係を表すことができる方法であれば、これ以外のどのような方法を用いてもよい。
次に図5により本発明の第3の実施の形態について説明する。
図5に示す第3の実施の形態は反応タンク12に温度計48を設置したものであり、他は図1に示す第1の実施の形態と同一である。
図5において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図6は図5における信号の流れを示すブロック図であり、温度計48からの信号が追加されている。
図6において、図2に示す図1における信号の流れを示すブロック図と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
パラメータ設定部21では、参照温度における内生呼吸係数、水温補正係数などのパラメータが本実施形態に特有なパラメータとしてオペレータにより設定される。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47、温度計48の計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
反応タンク12に設置された温度計48の計測値Tに基づき、次式により、微生物の内生呼吸に必要な酸素量を算出するための内生呼吸係数B1を算出する。
ここで、各記号は次のように定義される。
B(T0):参照温度T0における内生呼吸係数[kg-O2/(kg-MLVSS・時間)]
k_BT:水温補正係数[−]
本実施形態においては、この内生呼吸係数B1を式(4)の内生呼吸係数Bの代わりに用いることにより、必要酸素量を算出する。
このようにして反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
こうして算出された曝気風量は運転支援装置20の曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、温度計の計測値に基づいて内生呼吸に必要な酸素量を算出することができ、これを曝気風量の算出に用いることができることから、水温の変化に的確な対応ができるため有機物及び窒素の処理を効果的に行うことが可能となる。
(変形例1)図5においては、温度計48を反応タンク12に設置しているが、水温は、反応タンクを流出した後、放流水路に至るまで、ほとんど変化しないものと考えられるため、この温度計48を最終沈殿池流入水路や最終沈殿池15、あるいは、塩素混和池や放流水路等に設置しても同じ効果が得られる。
(変形例2)また、水温の年間変動のパターンが既知である場合には、温度計を設置することなく、過去の水温の測定結果をもとにして、式(12)におけるT項の値を設定することも可能である。
次に図7により本発明の第4の実施の形態について説明する。
図7に示す第4の実施の形態は流入負荷を易分解成分と難分解成分に分けて必要酸素量の算出を行う流入水質分画部24を追加したものであり、他は図1に示す第1の実施の形態と同一である。
図7において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図8は図7における信号の流れを示すブロック図であり、流入水質分画部24が追加されている。
図8において、図2に示す図1における信号の流れを示すブロック図と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
パラメータ設定部21では、流入水質分画に必要となる易分解成分が占める割合、易分解成分の分解に要する時間、難分解成分の分解に要する時間などのパラメータが本実施形態に特有なパラメータとしてオペレータにより設定される。
流入水質分画部24では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43からの計測値に基づいて、反応タンク12に流入する下水の水質が易分解成分と難分解成分とに分画される。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流入水質分画部24において分画された反応タンク12に流入する下水の水質と、流量計41、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47の計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
流入負荷は、易分解性有機物やアンモニア性窒素などの直ちに酸素を必要とする易分解成分と、難分解性有機物やそれに含まれる窒素などの長時間かけて徐々に酸素を消費する成分に分けられる。
そのため、本実施形態では、流入水質分画部24において、有機物成分と窒素成分のそれぞれについて、易分解成分が占める割合(α_S)と、難分解成分が占める割合(α_L =1−α_S)をあらかじめ設定することにより分画し、さらに、易分解成分の分解に要する時間(t_S)及び難分解成分の分解に要する時間(t_L)をそれぞれ設定することで、これらの各成分が分解されるために必要な時間を考慮して必要酸素量の算出を行う。
すなわち、ある時刻の必要酸素量は内生呼吸に必要な酸素量に、t_L時間前から残存する難分解成分の除去に必要な酸素量と、t_S時間前から残存する易分解成分の除去に必要な酸素量とを加えたものとなる。
このようにして反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
こうして算出された曝気風量は曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、流入負荷を易分解成分と難分解成分に分けてこれらの各成分が分解されるために必要な時間を考慮して必要酸素量を算出することができ、これを曝気風量の算出に用いることができることから、通常の下水に比べて難分解成分が占める割合が高い場合にも有機物及び窒素の処理を効果的に行うことが可能となる。
次に図9により本発明の第5の実施の形態について説明する。
図9に示す第5の実施の形態は反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算するタイムラグ演算部25を追加したものであり、他は図1に示す第1の実施の形態と同一である。
図9において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図10は図9における信号の流れを示すブロック図であり、タイムラグ演算部25が追加されている。
図10において、図2に示す図1における信号の流れを示すブロック図と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
パラメータ設定部21では、タイムラグ演算に必要な緩衝タンク容積などのパラメータが本実施形態に特有なパラメータとしてオペレータにより設定される。
タイムラグ演算部25では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43からの計測値に基づいて、流入水濃度のタイムラグ演算を行う。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、タイムラグ演算部25においてタイムラグ演算された流入水濃度と、流量計41、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47の計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
タイムラグ演算部25では反応タンクに流入する下水の濃度を測定する場所から各好気槽14の指定位置(入口から流れ方向で25〜75%の範囲内で指定する)までの濃度変化の時間的な遅れを演算する。
反応タンクに流入する下水の成分は、すべてが反応タンク12の流入部において微生物によって除去されるわけではなく、反応タンク12に流入してから、反応タンク12を流出するまでの間に、反応タンク全体を反応の場として除去される。本実施形態ではタイムラグ演算部25での演算により、反応タンクに流入する下水の濃度の変動に対する反応タンク内での濃度変化の遅れを、必要酸素量の算出に反映させることができる。
ここで、図26を用いて、反応タンクに流入する下水の濃度変化と、それによって反応タンクの内部で生じる濃度変化の関係を説明する。
好気槽14の前段に、好気槽14の容量に対して一定の容量(好気槽14の容量の25〜75%の範囲内で指定する)を持つ生物学的な反応が生じない緩衝タンクを仮想し、ここでの滞留時間内に生じる濃度変化の遅れと平準化の作用により、反応タンクに流入する下水の濃度変化と、反応タンク内で生じる濃度変化の関係が表現できる。
タイムラグ演算部においては、次式によって、ステップn時刻における緩衝タンクから流出する下水のBOD濃度を算出する。
ここで、
BODv(n):ステップnにおける緩衝タンクから流出する下水のBOD濃度[mg/L]
BODv(n-1):ステップn-1における緩衝タンクから流出する下水のBOD濃度[mg/L]
dt:一定の時間間隔[時間]
Vv:緩衝タンクの容積[m3]
RN:汚泥返送比[−]
F(n):ステップnにおける反応タンクに流入する下水の量[m3/時間]
BODin(n):ステップnにおける反応タンクに流入する下水のBOD濃度[mg/L]
また、次式によって、ステップnにおける緩衝タンクから流出する下水のケルダール窒素濃度を算出する。
ここで、
KjN(n):ステップnにおける緩衝タンクから流出する下水の
ケルダール窒素濃度[mg/L]
KjNv(n-1):ステップn-1における緩衝タンクから流出する下水の
ケルダール窒素濃度[mg/L]
dt:一定の時間間隔[時間]
Vv:緩衝タンクの容積[m3]
RN:汚泥返送比[−]
F(n):ステップnにおける反応タンクに流入する下水の量[m3/時間]
KjNin(n):ステップnにおける反応タンクに流入する下水の
ケルダール窒素濃度[mg/L]
式(13)によって算出された緩衝タンクから流出する下水のBOD濃度BODv(n)を式(4)における反応タンクに流入する下水のBOD濃度BODinの代わりに、また、式(14)によって算出された緩衝タンクから流出する下水のケルダール窒素濃度KjN(n)を式(4)における反応タンクに流入するケルダール窒素濃度KjNinの代わりに用いることにより、式(4)によって反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
こうして算出された曝気風量は運転支援装置20の曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、流入負荷が実際に処理されるまでの時間的な遅れをも考慮して必要な曝気風量を算出することができることから、曝気風量が変化するタイミングと変化量を適正なものにすることができ、それにより、第1の実施の形態に示す運転支援装置よりも、さらに曝気風量を削減することが可能となる。
(変形例1)反応タンクに流入する下水の濃度変化について、移動平均計算を行うことで、図27に示すように反応タンク内での濃度変化を表現し、これをもとにしてタイムラグ演算を行うこともできる。
(変形例2)また、より簡易な方法として、反応タンク内での滞留時間をもとにして、図28に示すように、反応タンクに流入する下水の濃度変化と、反応タンク内で生じる濃度変化の関係を単純な遅れとして捉えてタイムラグ演算を行ってもよい。
次に図11により本発明の第6の実施の形態について説明する。
図11に示す第6の実施の形態は反応タンク末端に設置したアンモニア性窒素濃度計47の計測値に基づいて必要酸素量の補正を行うフィードバック演算部26を追加したものであり、他は図1に示す第1の実施の形態と同一である。
図11において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図12は図11における信号の流れを示すブロック図であり、フィードバック演算部26が追加されている。
図12において、図2に示す図1における信号の流れを示すブロック図と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
パラメータ設定部21では、フィードバック演算に必要となる曝気係数の初期値、比例ゲイン、積分定数、反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値などのパラメータが本実施形態に特有なパラメータとしてオペレータにより設定される。
フィードバック演算部26では、アンモニア性窒素濃度計47の計測値と反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、曝気係数を算出する。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46、アンモニア性窒素濃度計47の計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、これにフィードバック演算部26で算出された曝気係数を乗じることによりフィードバック補正を行い、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
追加した演算部では、次式によって反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値SV_N(t)と反応タンク末端に設置したアンモニア性窒素濃度計47の指示値PV_N(t)の偏差e(t)に基づいて、必要酸素量OR(t)の補正を行う。
ここで、
OR(t)_補正:補正後の必要酸素量[kg-O2/時間]
k_OS(t):曝気係数[−]
k_OS_0:曝気係数の初期値[−]
g_OS_N:比例ゲイン [1/(mg-N/L)]
T_I:積分定数[hr]
e(t):反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の計測値と目標値との偏差[mg-N/L]
PV_N(t):反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の計測値[mg-N/L]
SV_N(t):反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値[mg-N/L]
である。
式(4)により算出した反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量をこの方法によって補正し、この補正後の必要酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。必要な曝気風量の算出には式(7)及び式(8)を用いるが、本実施形態においては式(7)の必要酸素量ORの代りに補正後の必要酸素量OR(t)_補正を用いる。
こうして算出された曝気風量は曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
流入水質を測定する濃度計は汚れによる誤差を生じやすいが、算出された必要酸素量が濃度計の誤差によって本来必要である必要酸素量に対して過大または過小となった場合でも、このフィードバック調整により、補正を行うことができる。
また、散気装置17・曝気装置16の経年劣化等の原因によって生じる誤差に対しても、このフィードバック調整は有効に機能し、補正を行うことができる。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、反応タンク末端または最終沈殿池に設置されたアンモニア性窒素濃度を計測するアンモニア性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差、または、反応タンク末端または最終沈殿池に設置された硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端または最終沈殿池の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、必要酸素量をフィードバック調整することができることから、流入水質を測定する濃度計の誤差や散気装置・曝気装置の経年劣化等が生じた場合でも、それらの影響を回避することができる。
(変形例1)図11では反応タンク12にアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計47を設置しているが、アンモニア性窒素濃度は反応タンクを流出した後、放流水路に至るまで変化しないものと考えられるため、このアンモニア性窒素濃度計47を最終沈殿池流入水路や最終沈殿池15、あるいは、塩素混和池や放流水路等に設置しても同じ効果が得られる。
(変形例2)図11では、反応タンク12にアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計47を設置しているが、これに代えて、反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の目標値と反応タンク末端に設置した硝酸性窒素濃度計46の指示値との偏差に基づいてフィードバック演算を実施してもよい。この場合、e(t)は反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の計測値と目標値との偏差、PV_N(t)は反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の計測値、SV_N(t)は反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の目標値となる。
(変形例3)また、上記変形例1で述べたことと同様にこの硝酸性窒素濃度計46は最終沈殿池流入水路や最終沈殿池15、あるいは、塩素混和池や放流水路等に設置しても同じ効果が得られる。
(変形例4)上記の実施例では、フィードバック演算の手段としてPI(比例積分)制御を用いているが、フィードバック演算の手段としては、これに限らずP(比例)制御、PID(比例積分微分)制御など、他の制御を用いることもできる。
次に図13により本発明の第7の実施の形態について説明する。
図13に示す第7の実施の形態は、曝気風量演算部22で算出した曝気風量を、電気的な信号を介して曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に転送する曝気風量出力部27を曝気風量表示部23に代えて設けたものであり、他は図1に示す第1の実施の形態と同一である。
図13において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図14は図13における信号の流れを示すブロック図であり、曝気風量表示部23に代えて曝気風量出力部27が備えられている。
図14において、図2に示す図1における信号の流れを示すブロック図と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
曝気風量演算部22で算出された曝気風量は、曝気風量出力部27を通じて、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に出力される。
次に、本実施形態における作用について説明する。
曝気風量演算部22では式(4)により反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
こうして算出された曝気風量は、曝気風量出力部27を通じて、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に出力され、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す運転支援装置と同様な効果が得られる他、算出した曝気風量をオペレータを介することなく曝気風量制御装置の曝気風量設定部に出力することができることから、省力化が可能となる。
図15は本発明の第8の実施の形態を示す図である。
図15に示すように、下水処理場の水処理設備10は下水が流入する最初沈殿池11と、反応タンク12と、最終沈殿池15とを備え、反応タンク内には散気装置17が設置されるとともに、散気装置17には曝気装置16が接続されている。
反応タンク入口には反応タンク12に流入する下水の水量を計測する流量計41と、反応タンク12に流入する下水のCOD濃度を計測するCOD濃度計42を設けるとともに、反応タンク内に硝酸性窒素濃度を計測する硝酸性窒素濃度計を設ける。
さらに、反応タンク流入水路と反応タンク末端からサンプリングポンプ66を用いて交互に採水を行い、自動洗浄機能を備えた水質測定ユニット60に導入し、水質測定ユニット60に設置したアンモニア性窒素濃度計43とSS濃度計44により反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度とSS濃度及び反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度とSS濃度を計測する。
ここで、上記の水質測定ユニットについて説明する。
水質測定ユニット60は自動洗浄機能を備えたサンプリング装置であり、内部にアンモニア性窒素濃度計43とSS濃度計44を設置したものである。水質測定ユニット60には反応タンク12に流入する下水を採水するための流入水採水用電動弁61を備えた流入水採水配管と、反応タンク末端から採水を行うための反応タンク採水用電動弁62を備えた反応タンク採水配管と、水質測定ユニット内のサンプルを排水するための排水用電動弁63を備えた排水配管と、水質測定ユニット内部を洗浄するための洗浄用電動弁65を備えた洗浄水配管が接続されており、流入水採水配管及び反応タンク採水配管にはサンプリングポンプ56が接続されている。
流入水採水用電動弁61、反応タンク採水用電動弁62、排水用電動弁63、洗浄用電動弁65、サンプリングポンプ66は運転支援装置20の水質測定ユニット制御部67からの指令に基づいて動作し、反応タンクに流入する下水のサンプリング、水質測定ユニット内のサンプルの排水、水質測定ユニット内の洗浄水による洗浄、反応タンク末端からのサンプリング、水質測定ユニット内のサンプルの排水、水質測定ユニット内の洗浄水による洗浄が順次行われる。これにより、反応タンク12に流入する下水のアンモニア性窒素濃度とSS濃度及び反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度とSS濃度が計測される。
また、必要な曝気風量を算出するために必要なパラメータを設定するパラメータ設定部21と、反応タンク入口に設置した流量計41、COD濃度計42、反応タンク12に設置した硝酸性窒素濃度計46、MLSS濃度計45、水質測定ユニット60に設置したアンモニア性窒素濃度計43、SS濃度計44からの信号に基づいて、反応タンク12に流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する曝気風量演算部22と必要な曝気風量を表示する曝気風量表示部23を持つ運転支援装置20を設ける。
なお、本実施形態においては、パラメータ設定部21には、水質測定ユニット60を制御するためのパラメータも入力される。
一方、曝気風量設定部31を持つ曝気風量制御装置30が曝気装置16に接続されており、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御するようになっている。
図15において、最終沈殿池15と反応タンク12との間に、返送汚泥ポンプ19を有する返送ラインが設けられている。
図16は図15における信号の流れを示すブロック図である。
図16に示すように、運転支援装置20はパラメータ設定部21と、タイムラグ演算部25と、フィードバック演算部26と、曝気風量演算部22と、曝気風量表示部23と、水質測定ユニット制御部67を有している。また、曝気風量制御装置30は曝気風量設定部31と曝気風量制御部32を有している。
以下、パラメータ設定部21と、タイムラグ演算部25と、フィードバック演算部26と、曝気風量演算部22と、曝気風量表示部23と、水質測定ユニット制御部67について説明する。
パラメータ設定部21では、曝気風量演算に必要となる、除去BODあたりに必要な酸素量、流入BODの除去率、脱窒により消費される流入水のBOD量、汚泥返送比、硝化反応により消費される酸素量、流入ケルダール窒素の硝化率、内生呼吸係数、好気部分の反応タンク容積、MLVSS/MLSS比、COD濃度計の計測値からBODを算出するための乗数及び定数、アンモニア性窒素濃度計の計測値からケルダール窒素濃度を算出するための乗数及び定数、散気装置の性能曲線などのパラメータと、タイムラグ演算に必要な緩衝タンク容積などのパラメータと、フィードバック演算に必要となる曝気係数の初期値、比例ゲイン、積分定数、アンモニア性窒素濃度の目標値などのパラメータがオペレータにより設定される。
タイムラグ演算部25では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、流量計41、COD濃度計42、反応タンク流入水採水時のアンモニア性窒素濃度計43からの計測値に基づいて、式(13)及び式(14)を用いて流入水濃度のタイムラグ演算を行う。
フィードバック演算部26では、反応タンク採水時のアンモニア性窒素濃度計43の計測値と反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、式(15)〜式(17)を用いて曝気係数を算出する。
曝気風量演算部22では、パラメータ設定部21で設定されたパラメータと、タイムラグ演算部25においてタイムラグ演算された流入水濃度と、流量計41、COD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、MLSS濃度計45、硝酸性窒素濃度計46からの計測値に基づいて、流入水の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出し、これにフィードバック演算部26で算出された曝気係数を乗じることによりフィードバック補正を行い、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。
曝気風量演算部22で算出された曝気風量は、曝気風量表示部23に表示され、オペレータがこの曝気風量表示部23に表示された曝気風量を、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力する。
曝気風量制御装置30の曝気風量制御部32では曝気風量設定部31に入力された曝気風量と曝気装置16からの曝気風量アンサー値との偏差に基づき、曝気風量アンサー値が曝気風量設定部31に入力された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
水質測定ユニット制御部67はパラメータ設定部21に設定されたパラメータに基づき、流入水採水用電動弁61、反応タンク採水用電動弁62、排水用電動弁63、洗浄用電動弁65、サンプリングポンプ66を制御する。
次にこのような構成からなる本実施形態の作用について説明する。
下水は最初沈殿池11において、比較的粗大な浮遊物が沈殿除去される。反応タンク12では、下水が活性汚泥と混合されて曝気装置16から散気装置17を介して送られる空気によって曝気され、活性汚泥に含まれる微生物の代謝作用により有機物が除去される。活性汚泥混合液は最終沈殿池15において、活性汚泥が沈降することによって浄化される。
下水の窒素除去のため、好気槽14と無酸素槽13とに分けられ、好気槽14では下水中のアンモニア等の窒素化合物が酸化されて硝酸となる。好気槽14で生成された硝酸は好気槽14から返送汚泥を通じて無酸素槽13に送られ、無酸素槽13において、活性汚泥の硝酸呼吸の結果、窒素ガスとなり、大気中に除去される。
この間、運転支援装置20の曝気風量演算部22では、オペレータにより運転支援装置20のパラメータ設定部21に設定された各種のパラメータと、反応タンク入口に設置した流量計41、反応タンクに流入する下水の水質を測定するCOD濃度計42、アンモニア性窒素濃度計43、反応タンク末端の水質を測定するアンモニア性窒素濃度計43、SS濃度計44、硝酸性窒素濃度計46からの信号に基づいて、反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて必要な曝気風量を算出する。
必要な曝気風量を算出するための方法についてさらに述べる。
曝気風量演算部22は、BODの酸化に必要な酸素量を算出する第1の算出手段と、硝化反応に必要な酸素量を算出する第2の算出手段と、内生呼吸に必要な酸素量を算出する第3の算出手段と、反応タンクに流入する下水中の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出する第4の算出手段と、第4の算出手段によって算出した必要な酸素量をフィードバック調整する第5の算出手段と、第5の算出手段によって算出した必要な酸素量と散気装置17の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出する第5の算出手段を備えている。
第1の算出手段では、流量計41とCOD濃度計42の計測値に基づき、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算することにより算出したBOD負荷量に反応タンクでのBOD除去率を乗じた値から、硝酸性窒素濃度計46の計測値に基づいて算出した脱窒により消費されるBOD量を減じて、反応タンク12で活性汚泥により酸化されるBOD量を算出し、前記BOD量からBODの酸化に必要な酸素量を算出する。
第2の算出手段では、流量計41と反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度の計測値に基づき、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響を演算することにより算出したケルダール窒素負荷量から、余剰汚泥によるケルダール窒素除去量を減じ、反応タンクから流出するアンモニア性窒素濃度の計測値から反応タンクから流出するアンモニア性窒素濃度の目標値を減じた値から算出した反応タンク12から流出するアンモニア性窒素量を加えることにより反応タンク12で活性汚泥により酸化されるケルダール窒素量を算出し、前記ケルダール窒素量から硝化反応に必要な酸素量を算出する。
第3の算出手段では、反応タンク末端採水時のSS濃度計44の計測値に基づき、内生呼吸に必要な酸素量を算出する。
第4の算出手段では、第1の算出手段によって算出したBODの酸化に必要な酸素量と、第2の算出手段によって算出した硝化反応に必要な酸素量と、第3の算出手段によって算出した内生呼吸に必要な酸素量とを合計することにより反応タンクに流入する下水中の有機物と窒素を除去するために必要な酸素量を算出する。
第5の算出手段では、水質測定ユニットに設置されたアンモニア性窒素濃度計により計測した反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度と反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差及び反応タンク末端に設置された硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいて、第4の算出手段により算出された必要酸素量をフィードバック調整する。
第6の算出手段では、第5の算出手段によって算出した必要な酸素量と散気装置17の性能曲線とに基づいて必要な曝気風量を算出する。
このうち、第1から第4までの算出手段は次式によって示すことができる。
ここで、添え字「in」は反応タンク12への流入を意味する。また、各記号は次のように定義される。
A:除去BODあたりに必要な酸素量[kg-O2/kg-BOD]
F:反応タンクに流入する下水の水量 [m3/時間]
YB:反応タンクでのBOD除去率。処理場の処理能力を考慮して設定する[−]
BODin:反応タンクに流入する下水のBOD濃度 [mg/L]
K:脱窒により消費されるBOD量[kg-BOD/kg-N]
RN:汚泥返送比 [−]
NO:反応タンク末端に設置された硝酸性窒素濃度計の測定値 [mg/L]
C:硝化反応により消費される酸素量[kg-O2/kg-N]
YN:流入ケルダール窒素の硝化率(流入ケルダール窒素量から余剰汚泥によるケルダ
ール窒素除去量を減じ、これを流入ケルダール窒素量で除した値)。実績値を利
用するか、流入水質・流入水量やMLSSなどを考慮して設定する[−]
KjNin:反応タンクに流入する下水のケルダール窒素濃度 [mg/L]
B:内生呼吸係数(単位MLVSSあたりの内生呼吸による酸素消費量)
[kg-O2/(kg-MLVSS・時間)]
VA:好気部分の反応タンク容積[m3]
MLVSS:水質測定ユニットに設置されたSS濃度計で測定した反応タンクの
MLSSの測定値に、MLVSS/MLSS比を乗じて算出する[mg/L]
ここで、BOD濃度BODinは、式(5)により算出する。
また、ケルダール窒素濃度KjNinは、式(6)により算出する。
上記の式(18)を用いて、必要酸素量を算出するが、その際、反応タンクに流入する下水の濃度変化に対して、反応タンク内で生じる濃度変化の時間的な遅れの影響をタイムラグ演算部での演算により必要酸素量の算出に反映する。
また、算出された必要酸素量は、第5の算出手段により、水質測定ユニットに設置されたアンモニア性窒素濃度計により計測した反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度と反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度の目標値との偏差及び反応タンク末端に設置された硝酸性窒素濃度計の計測値と反応タンク末端の硝酸性窒素濃度の目標値との偏差に基づいてフィードバック補正される。
このようにして反応タンクに流入する下水中のBOD及びケルダール窒素を除去するために必要な酸素量を算出したうえで、第6の算出手段により、この酸素量と散気装置17の性能曲線に基づいて式(7)及び式(8)を用いて必要な曝気風量を算出する。
こうして算出された曝気風量は運転支援装置20の曝気風量表示部23に表示される。
曝気風量表示部23に表示された曝気風量は、オペレータを介して、曝気風量制御装置30の曝気風量設定部31に入力され、曝気風量制御装置30は曝気風量アンサー値が設定された曝気風量に一致するように曝気装置16を制御する。
本実施形態においては反応タンク流入水路と反応タンク末端からサンプリングポンプ66を用いて交互に採水を行い、自動洗浄機能を備えた水質測定ユニット60に導入し、水質測定ユニット60に設置したアンモニア性窒素濃度計43とSS濃度計44により反応タンクに流入する下水のアンモニア性窒素濃度とSS濃度及び反応タンク末端のアンモニア性窒素濃度とSS濃度を計測しているが、このようにすることにより、濃度計が定期的に水で洗浄されるため、汚れによる誤差を小さくすることができる。
また、濃度計の設置台数を減らすことが可能となり、設置コストやメンテナンスコストを節減することができる。
このように本実施の形態によれば、反応タンクに流入する下水の水量と水質からBOD負荷量及びケルダール窒素負荷量を算出し、脱窒によるBOD除去量、余剰汚泥によるケルダール窒素の除去量、反応タンクから流出するアンモニア性窒素の量などの算出も合わせて行い、これらの算出結果からBOD除去に必要な酸素量とケルダール窒素の除去に必要な酸素量を算出し、これにMLSSの計測値に基づいて算出した活性汚泥の内生呼吸に必要な酸素量を加え、さらに、算出された必要酸素量と散気装置の性能曲線とから必要な曝気風量を算出することができることから、この曝気風量を曝気風量制御装置の曝気風量設定部に入力することで、設定された曝気風量に一致するように曝気風量制御装置が曝気装置を制御することにより有機物及び窒素の処理を効果的に行うことができるため、良好な処理水質を安定的に保つことができる。また、算出された曝気風量はその時点での下水の水量と水質の測定値等に基づいたものであるため、経験や勘による運転設定とは異なり予想外の変動に備えて余裕を見た設定を行う必要がないことから、従来の技術によって運転を行った場合よりも少ない曝気風量での運転が可能となる。また、水質測定ユニットの活用により、アンモニア性窒素濃度計及びSS濃度計の汚れによる誤差を少なくすることができるとともに、濃度計の設置台数を減らすことができることから、これらの濃度計の設置コストやメンテナンスにかかるコストを縮減することが可能となる。
(その他の実施例)上述した各実施例は無酸素槽13と好気槽14をそれぞれひとつずつ有し、反応タンクに流入する下水は全量が無酸素槽13に流入するプロセスについて示したが、無酸素槽13と好気槽14の組み合わせを複数有し、それぞれの無酸素槽13に反応タンクに流入する下水を分割して流入させるプロセス、無酸素槽13の前段に嫌気槽を有し反応タンクに流入する下水は全量が嫌気槽に流入するプロセス、さらに、このプロセスにおいて、好気槽14から無酸素槽13に硝化液を循環させるプロセスなど、曝気を行う下水処理プロセスであればどのようなプロセスにも適用することができる。