JP2019214002A - 廃水処理システム - Google Patents

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【課題】膜分離法を用いた生物処理による廃水の処理システムにおいて、散気装置の効率化とMLSSの低減をはかり、もって運転動力を低減させることができる廃水処理システムを提供する。【解決手段】上記課題は、無酸素槽と膜分離槽の間に微好気槽を設けてそこで硝化反応と脱窒反応を行わせるとともに、膜分離槽にはプロペラ式攪拌機を設けて槽内に縦方向の旋回流を生じさせて膜洗浄を行わせることによって解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、生物処理により下水や工場排水などの廃水を膜分離活性汚泥法で処理する廃水処理システムに関するものである。
下水等の膜分離活性汚泥法において運転動力の低減を図ることが求められている。運転動力が大きい要因としては、送風機動力が過大であることである。この送風機動力が過大であることの主な要因としては、膜面洗浄のために粗大気泡による散気が行われていたが、気泡径が大きいため酸素溶解効率が低く、生物処理のために微細気泡等による補助的な酸素供給が必要であることと、微生物濃度(MLSS)が高濃度であるため、微生物活性保持に必要な酸素量が増加することが挙げられていた。これらに対し、従来は、例えば下記のような提案がなされていた。
好気槽を複数に分割し、膜分離装置を設置していない水槽では、高効率な微細気泡型散気装置を設置する(特許文献1)。膜分離槽に担体を投入し、担体に微生物を高濃度に付着させることにより、MLSSを低減可能とする(特許文献2)。第1生物反応槽と第2生物反応槽で生物処理を行い、膜分離槽に導入する(特許文献3)。
特開2012−76081号公報 特開2012−166142号公報 特開2016−2514号公報
上記の先行技術では、膜面洗浄に必要となる粗大気泡量は変わらず、補助的な散気装置の効率化またはMLSS低減による必要空気量の低減のいずれかの対策が提案されているが、効果は限定的であった。
すなわち特許文献1の方法では生物処理には高効率な酸素供給が可能であるが、MLSSは低減できず、膜面洗浄に必要な空気量は変わらない(送風機動力削減効果は限られる)。
特許文献2の方法ではMLSSは低減可能であるが、膜面洗浄に必要となる粗大気泡量は変わらない。粗大気泡では、生物処理に求められる酸素量が供給できないことがほとんどであり、補助的な散気は必要であるため、送風機動力の低減効果はわずかである。
特許文献3の方法では、生物処理には高効率な酸素供給が可能である。ただし、MLSSは低下できないため、膜面洗浄に必要な粗大気泡の散気量および生物処理に必要となる散気量は変わらない(送風機動力削減効果は限られる)。
本発明の目的は、膜分離法を用いた生物処理による廃水の処理システムにおいて、散気装置の効率化とMLSSの低減をはかり、もって運転動力を低減させることができる廃水処理システムを提供することにある。
本発明では、この課題を次のようにして解決した。
生物処理フローを無酸素槽、微好気槽、膜分離槽(好気槽)とし、微好気槽を設置する。
微好気槽では以下により水槽内に好気領域(硝化反応)と無酸素領域(脱窒反応)を形成させて、単一槽での硝化脱窒反応を行わせる。
槽内に整流板を縦方向に設けて槽内を2室に分けるとともに、散気装置の設置高さを有効水深の半分程度とすることで、曝気による旋回流を形成させる。
微好気槽の表層DOを0.7〜1.5mg/Lとすることで、好気領域と無酸素領域の形成状態を適正化し、効率的な単一槽での窒素除去を実施する。
膜分離槽も槽内に整流板を縦方向に設けて槽内を2室に分けるとともに、プロペラ式攪拌機を膜分離装置のない室のほうに設けて旋回流で膜洗浄を行い、風量を生物処理に必要な量とする。
好ましくは、断面方向の散気装置設置場所に応じて、バッフル板を設置することで、旋回流形成を効率的とする。
本発明の微好気槽では、散気装置からの酸素供給および旋回流での微生物による酸素消費により、同一槽での好気領域と無酸素領域を形成させる。好気領域では、アンモニア態窒素を硝酸態窒素とする硝化反応が行われ、無酸素領域では硝酸態窒素を窒素ガスとして窒素除去する脱窒反応が行われる。DO分布および表層DOと窒素除去量の関係の一例を図2、3に示す。
また、微好気槽で窒素が硝化脱窒されることにより、無酸素槽での脱窒必要量や膜分離槽での硝化必要量は低減される。この効果として、従来は、脱窒必要量や硝化必要量を確保するために必要であったMLSSを低くすることが可能となる。従来では、8,000〜10,000mg/L程度必要であったMLSSが本発明のシステムでは5,000〜7,000mg/Lまで低減可能であった。MLSS低減による酸素溶解効率の向上効果の一例として、図4のグラフが公開されている(花野勝則、藤岡哲雄、丸野紘史;第49回下水道研究発表会講演集 平成24年度p.250〜252)。図中、α値は清水での酸素移動効率に対する汚泥中での酸素移動効率の比を表す。汚泥中の酸素溶解効率はα値に比例するため、MLSSの低減は送風機動力の削減に有効である。例えば、図4からは、MLSS 10,000mg/Lではα値が0.4〜0.6に対して、MLSSを5,000mg/Lとできることによって、α値は0.65〜0.8に向上する。
上記のMLSS低減効果により、酸素移動効率が向上する。プロペラ式攪拌機を用いた水流洗浄方式では、粗大気泡による膜面洗浄を必要としないため、膜分離槽における散気風量を削減でき、一層の送風機動力の低減が期待できる。
特許文献1〜3のシステムと本発明のシステムの送風機動力関係のイメージを図5に示す。
一方、膜分離法以外では、無酸素槽と好気槽の間に中間反応槽を設けることは公知である(特開2000−279993号公報)。しかしながら、この中間反応槽は、窒素除去率を高めるために嫌気的条件あるいは好気的条件に変えて運転するものであり、散気装置を効率化させるとともにMLSSを低減させて運転動力を低減させるものではない。
本発明により、MLSSを低減することによって酸素溶解効率が高まり、微好気槽および膜分離槽の散気量を削減できる。
また、以下の理由により必要空気量は低減される。
まず、微好気槽の散気量は、従来の好気槽の散気量より小さくなる。これは、従来の好気槽風量は、有機物やアンモニアの完全処理を前提としていたが、本発明の微好気槽は流入水の窒素の10〜20%程度を硝化脱窒できるようにしているためである。
次に、膜分離槽の散気量は、従来の膜分離槽散気量より小さくなる。これは、従来の膜分離槽風量は膜面洗浄に必要な量(生物処理に必要な量に対して過大)であったが、本発明では、微好気槽で未処理の有機物や窒素を生物処理するために必要な空気量となるからである。
本発明の一実施態様の概略構成を示す図である。 その微好気槽における溶存酸素の分布を2例示した微好気槽の縦断面図である。 その表面溶存酸素濃度と窒素除去量の関係を示すグラフである。 MLSS濃度と液中の酸素移動効率の関係を示すグラフである。 従来法と本発明システムの送風機動力を模式的に示したグラフである。
本発明の廃水処理システムの生物反応槽は、無酸素槽、微好気槽および膜分離槽よりなる。
無酸素槽は溶存酸素のない状態で微生物がNOxの酸素を利用するのを利用し、循環水中のNOxを窒素まで還元して水中の窒素を除去する槽である。槽内は通常酸素が溶け込まないような撹拌を行う。
微好気槽は無酸素槽と膜分離槽の間に設けられ、槽内に好気領域と無酸素領域を形成させて1つの槽内で硝化反応と脱窒反応を行わせる槽である。この槽内は縦方向に設けられた整流板で2室に分けられており、その一方の室の中位、水深の40〜60%程度のところに散気装置が設けられている。散気装置は、槽内を好気的条件にするものであり、通常は散気板を用いて空気を槽内の水に吹込む。吹出す気泡は、酸素の水への溶解性を高めるため超微細気泡とするのがよい。そして、整流板は、上縁と水面の間および下縁と水槽の底の間が開放されており、この吹出す気泡の上昇により槽内全体として縦方向の旋回流を起こさせる。吹出す空気の量によって槽内の溶存酸素(DO)濃度を変えることができ、例えば図2の左図のように表層のDOを0.8mg/Lにしたり、同右図のように1.5mg/Lにすることができる。好気領域は0.7〜1.5mg/Lの領域で、そこではアンモニア態窒素の硝化反応が行われる。DOが0.2mg/L以下の領域は無酸素領域であり、そこでは脱窒反応が行われる。
微好気槽の容積は無酸素槽に対する容積比で1:3〜3:1程度、好ましくは1:2〜2:1程度が適当である。
膜分離槽は、硝化菌を含む汚泥を分離する膜分離装置を備えた槽であり、膜には、精密ろ過膜や限外ろ過膜が用いられる。膜の形状は、平膜、中空糸などである。
この膜分離槽も縦方向に設けられた整流板で2室に分けられ、一方の室には膜分離装置が設けられ、他方の室にはプロペラ式攪拌機が設けられている。プロペラ式攪拌機は下降流を形成して、槽内全体として縦方向の旋回流を起こさせ、この旋回流で膜分離装置の膜面洗浄を行う。この旋回流を効率よく起こさせるために、膜分離装置と槽壁および整流板の間の隙間並びにプロペラ式攪拌機のプロペラ回転領域と槽壁および整流板の隙間を塞ぐバッフル板を設けることが好ましい。
膜分離槽は好気槽であるから内部に散気装置を設ける。散気装置は、旋回流を妨げないよう膜分離装置の下に設けるのがよい。
微好気槽と膜分離槽の合計となる風量は、流入下水の水質や設備条件、運転条件をもとに以下の計算式により概算される。合計風量計算値と微好気槽に供給した風量値の差分より、おおよその膜分離槽に供給する空気量は概算される。
(必要酸素量AOR) = D+ D+ D + D
;BOD酸化に必要な酸素量(kg-O/d)
;硝化反応に必要な酸素量(kg-O/d)
;内生呼吸に必要な酸素量(kg-O/d)
;溶存酸素濃度の維持に必要な酸素量(kg-O/d)
Figure 2019214002
A;単位BOD除去に必要な酸素量 0.6(g-O/gBOD)
BOD,IN;反応タンク流入水BOD(mg/L)
BOD,OUT;処理水BOD目標値(mg/L)
IN;反応タンク流入水量(m/d)
NOX,DN;無酸素槽流入NO−N負荷量(kg-N/d)=
処理水NO−N(mg-N/L)×流入水量(m/d)×返送汚泥比
NOX,A;微好気槽での除去NO−N量(kg-N/d)=
β値×流入T−N濃度(mg-N/L)×流入水量(m/d)
K;単位NO−Nあたり脱窒に必要なBOD量 2.0(kg-BOD/kg-NO−N)
Figure 2019214002
a;流入窒素中の硝化に関わる窒素の比(0.72)
TN,IN;流入T−N濃度(mg-N/L)
in;流入水量(m/d)
4.57;単位アンモニア性窒素の硝化に必要な酸素量(kg-O/kg-NH−N)
Figure 2019214002
X;MLSS濃度(mg/L),V;好気槽容積(m
;微好気槽容量(m),微好気槽容積の半分が好気条件で内生呼吸に寄与とした
0.1;単位MLSSあたりの内生呼吸による酸素消費量(g-O/g-MLSS/d)
Figure 2019214002
O,A;好気槽末端のDO濃度(mg/L)
(微好気タンクの末端DOを0(mg/L)と仮定)
in;流入水量(m/d),Qc;返送汚泥量(m/d)
(必要酸素供給量SOR)
SOR=AOR×CS1×γ/(1.024^(T−T)×α×(β×CS2×γ−CO,A))×101.3/P
:散気装置の前提となる清水温度(℃)、T:反応槽水温(℃)
S1:清水中T℃での飽和酸素濃度(mg/L)、CS2:清水中T℃での飽和酸素濃度(mg/L)
P:処理設備における大気圧(kPa)、α:KLaの補正係数
β:酸素飽和濃度の補正係数、γ:散気水深によるCS2の補正係数
(必要空気量)
必要空気量=SOR/EA×100/ρ/O×(273+T)/273
EA:酸素移動効率、ρ:0℃、1atmの空気密度(1.293kg/m
:空気中の酸素濃度(0.232kg-O/kg-Air)
分離膜の閉塞物質としては、細胞外高分子や溶解性微生物産物等であり、曝気風量が不十分の場合にDOが低下することで微生物から多く排出されると考えられる。実験データとして、低DO条件においてろ紙ろ過速度が低下する傾向が得られた。つまり、膜分離槽への流入汚濁負荷が増加した場合には、曝気風量やDO制御値を変更しなければ、分離膜の閉塞物質が増加することが懸念される。
また、流入下水中の有機物が高濃度の場合には、NH−Nも高濃度となることが通常である。そこで、無酸素槽出口もしくは微好気槽流入口においてNH−N濃度を連続モニタリングして、モニタリング値に応じて微好気槽DO値を制御することで、微好気槽で処理する汚濁物量をコントロールする。微好気槽DO値を高くすることで、微好気槽に供給する酸素量が増加および微生物反応速度が向上し、活性汚泥による汚濁物処理量を増加させられる。
上記の2点から、アンモニアセンサを微好気槽流入口や無酸素槽出口に設置して、そのNH−N濃度に応じて微好気槽のDO値を制御することで、膜分離槽に流入する汚濁物負荷を一定とすることは分離膜の閉塞防止に効果がある。
本発明の一実施態様を図1に示す。この廃水処理システムは、無酸素槽、微好気槽および膜分離槽からなっている。
廃水はまず無酸素槽に流入し、それから微好気槽、膜分離槽の順に流入する。そして、膜分離槽内の活性汚泥でBOD成分などが硝化されるとともにそこに含まれている硝化菌によってアンモニア態窒素が硝酸態窒素に変えられる。膜分離槽からは循環ポンプによって無酸素槽に返送され、そこで硝酸態窒素が脱窒菌によって窒素に変えられて大気に放出される。無酸素槽から微好気槽に送られた水はそこで硝化反応と脱窒反応が行われて生成した窒素が大気に放出され、次いで膜分離槽で残存しているアンモニア態窒素が硝化される。この循環を繰返すことによって廃水中のアンモニア態窒素が窒素ガスに変わって大気中に放出される。そして、循環されている水の一部が吸引ポンプで吸引されて膜分離装置を通って系外に出される。
下水の初沈越流水を用いて、冬季と春季に処理水量40m/日にて下水処理実験を実施した。反応槽の容量は無酸素槽5m、微好気槽3.5m、好気槽(膜分離槽)5mとした。膜透過フラックスは0.5m/日、循環流量は60m/日(流入水量の1.5倍)にて運転した。散気装置は水深2.1mにゴムメンブレン式超微細気泡散気装置を設置した。
冬季には、水温は14℃から17℃にて推移した。流入水質の平均値は、SS 66mg/L、BOD 110mg/L、T−N 29mg/Lであった。これを膜分離槽MLSS 6,000mg/L、引抜汚泥量380L/日、風量330L/分(微好気槽60L/分、膜分離槽270L/分)、微好気槽DO1.0mg/L、好気槽2.0mg/Lにて運転した。その結果、処理水質はBOD 2.7mg/L、T−N 8.5mg/L、NH−N 0.2mg/L、NO−N 7.5mg/Lと良好な処理結果が得られた。
続いて、春季には、水温は19℃から22℃で推移した。流入水質の平均値は、SS
57mg/L、BOD 78mg/L、T−N 26mg/Lであった。これを膜分離槽MLSS 5,500mg/L、引抜汚泥量380L/日、風量280L/分(微好気槽50L/分、膜分離槽230L/分)、微好気槽DO0.7mg/L、好気槽1.0mg/Lにて運転した。その結果、処理水質はBOD 1.5mg/L、T−N 6.1mg/L、NH−N 0.1mg/L未満、NO−N 5.3mg/Lと良好な処理結果が得られた。
本発明のシステムは、運転動力を節減できるので、都市下水処理場、その他の廃水処理場で幅広く利用できる。

Claims (3)

  1. 無酸素槽、微好気槽、膜分離槽よりなり、微好気槽は槽内が上下に間隔をおいて縦方向に設けられた整流板で2室に分けられるとともにその一方の室の中位に散気装置が設けられて全槽内を縦方向に旋回する水流が形成されるようになっており、膜分離槽も槽内が上下に間隔をおいて縦方向に設けられた整流板で2室に分けられるとともにその一方の室には膜分離装置とその下に散気装置が設けられ、他方の室には下降流を形成するプロペラ式攪拌機が設けられて、やはり全槽内を縦方向に旋回する水流が形成されるようになっている廃水処理装置を用い、微好気槽では表層の溶存酸素濃度を0.7〜1.5mg/Lにして槽内に好気領域と無酸素領域を形成させて微好気槽内では硝化反応と脱窒反応を行わせることを特徴とする廃水処理システム。
  2. 膜分離槽には、膜分離装置の周囲を閉止するバッフル板とプロペラ式攪拌機のプロペラ回転領域の外側を閉止するバッフル板が設けられている請求項1記載の廃水処理システム。
  3. 微好気槽入口又は無酸素槽出口にアンモニアセンサを設置し、アンモニアセンサ出力値に応じて微好気槽DO値を変更することで膜分離槽の流入汚濁物負荷が均一となるように調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃水処理システム。
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