JP2012135071A - アクチュエータ用複合導電性薄膜、アクチュエータ素子 - Google Patents

アクチュエータ用複合導電性薄膜、アクチュエータ素子 Download PDF

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健太郎 大和
Kinshi Azumi
欣志 安積
Ken Mukai
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Abstract

【課題】性能の向上したアクチュエータを提供する。
【解決手段】アスペクト比が104以上のカーボンナノチューブ、イオン液体から構成される導電性フィルムと導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエータ用複合導電性薄膜及びアクチュエータ素子、並びにその製造法に関する。ここでアクチュエータ素子は、電気化学反応や電気二重層の充放電などの電気化学プロセスを駆動力とするアクチュエータ素子である。
空気中、あるいは真空中で作動可能なアクチュエータ素子として、カーボンナノチューブとイオン液体とのゲルを導電性があり、かつ伸縮性のある活性層として用いるアクチュエータが提案されている(特許文献1)。
アクチュエータ素子に求められる特性としては、応答性、伸縮特性などの特性が要求される。これらの特性について、さらなる向上が求められていた。
特開2009−33944
本発明は、さらに性能の向上したアクチュエータを提供することを目的とする。
本特許は、長尺カーボンナノチューブとイオン液体による導電性フィルムからなるCNT電極に導電性ポリマーを複合化させることにより、アクチュエータ特性が向上する事を見出した。また、電解質膜と従来の様に、プレス法で接合を行う上で、導電性ポリマーをCNT電極全面に重合したところ接合できなかったが、片面のみに接合したところ(片面をマスクして電解重合法により接合)プレス法で接合できる事がわかった。この方法により、CNT単独の電極より、応答性、伸縮特性とも向上したアクチュエータを構成することに成功した。
本発明は、以下のアクチュエータ用複合導電性薄膜、アクチュエータ素子、またはその製造法を提供するものである。
1. アスペクト比が104以上のカーボンナノチューブ、イオン液体から構成される導電性フィルムと導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
2. 長さが50μm以上のカーボンナノチューブ、イオン液体から構成される導電性フィルムと導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
3. 項1または2に記載のアクチュエータ用複合導電性フィルムにおいて、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
4. 項1〜3のいずれかに記載の複合導電性薄膜層とイオン伝導層を有する積層体からなるアクチュエータ素子。
5. イオン伝導層の表面に、項1〜3のいずれかに記載の複合導電性薄膜を電極とする複合導電性薄膜層が互いに絶縁状態で少なくとも2個形成され、当該導電性薄膜層に電位差を与えることにより変形可能に構成されている項4に記載のアクチュエータ素子。
6. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ用複合導電性薄膜の製造方法:
工程1:カーボンナノチューブ、イオン液体、および溶媒を含む分散液を調製する工程;
工程2:工程1の分散液を用いる導電性フィルムの形成工程;
工程3:工程2の導電性フィルムへの導電性ポリマーの形成工程。
7. 前記カーボンナノチューブが、アスペクト比が10以上のカーボンナノチューブもしくは長さが50μm以上のカーボンナノチューブである、項6に記載の方法。
8. 導電性ポリマーの形成を電解重合法により行う項6に記載の方法。
9. 導電性フィルムの片面をマスクして電解重合することにより、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを電解重合する項6に記載の方法。
10. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ用複合導電性薄膜の製造方法:
工程1:カーボンナノチューブおよび溶媒を含む分散液を調製する工程;
工程2:工程1の分散液を用いるカーボンナノチューブフィルムの形成工程;
工程3:工程2のカーボンナノチューブフィルムへのイオン液体の浸透による導電性フィルムの形成工程;
工程4:導電性フィルムへの導電性ポリマーの形成工程。
11. 前記カーボンナノチューブが、アスペクト比が10以上のカーボンナノチューブもしくは長さが50μm以上のカーボンナノチューブである、項10に記載の方法。
12. 導電性ポリマーの形成を電解重合法により行う項10に記載の方法。
13. 導電性フィルムの片面をマスクして電解重合することにより、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを電解重合する項10に記載の方法。
14. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ用複合導電性薄膜の製造方法:
工程1:カーボンナノチューブおよび溶媒を含む分散液を調製する工程;
工程2:工程1の分散液を用いるカーボンナノチューブフィルムの形成工程;
工程3:カーボンナノチューブフィルム上への導電性ポリマーフィルムの形成工程;
工程4:工程3の複合体へのイオン液体を浸透によるアクチュエータ用複合導電性薄膜の形成工程。
15. 前記カーボンナノチューブが、アスペクト比が10以上のカーボンナノチューブもしくは長さが50μm以上のカーボンナノチューブである、項14に記載の方法。
16. 導電性ポリマーの形成を電解重合法により行う項14に記載の方法。
17. 導電性フィルムの片面をマスクして電解重合することにより、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを電解重合する項14に記載の方法。
本発明によれば、導電性ポリマーを複合化することで、電子伝導性、イオン伝導性が向上し、応答が速やかになるとともに、素子の変形をより容易に行なうことができ、効率のよい変形応答のアクチュエータ素子を提供することができるようになった。
本発明の実施例でアクチュエータ素子変位評価法に用いたレーザー変位計を示す。 従来のアクチュエータ素子(3層構造)の一例の構成の概略を示す。図である。 本発明のアクチュエータ素子(5層構造)の一例の構成の概略を示す SG-CNTとEMITFSIからなる導電性フィルムとイオン伝導層からなるアクチュエータ(SG-CNT)、および、導電性フィルムにポリピロールを電解重合したもの(カウンターイオンがCF3SO3,およびTFSI)によるアクチュエータの伸縮率の駆動電圧周波数依存性を示す。
本発明において、アクチュエータ素子の電極層に使用する導電性フィルムには、カーボンナノチューブおよびイオン液体が使用される。すなわち、本発明の導電性フィルムには、ポリマーは含まれない。
本発明に用いられるイオン液体(ionic liquid)とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩であり、例えば0℃、好ましくは−20℃、さらに好ましくは−40℃で溶融状態を呈する塩である。また、本発明で使用するイオン液体はイオン導電性が高いものが好ましい。
本発明においては、各種公知のイオン液体を使用することができるが、常温(室温)または常温に近い温度において液体状態を呈する安定なものが好ましい。本発明において用いられる好適なイオン液体としては、下記の一般式(I)〜(IV)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン、第4級アンモニウムイオン)と、アニオン(X)より成るものが挙げられる。
Figure 2012135071
上記の式(I)〜(IV)において、Rは炭素数1〜12の直鎖又は分枝を有するアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12の直鎖又は分枝を有するアルキル基を示し、式(I)においてRは炭素数1〜4の直鎖又は分枝を有するアルキル基または水素原子を示す。式(I)において、RとRは同一ではないことが好ましい。式(III)および(IV)において、xはそれぞれ1〜4の整数である。
炭素数1〜12の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの基が挙げられる。炭素数は好ましくは1〜8,より好ましくは1〜6である。
炭素数1〜4の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルが挙げられる。
エーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、CH2OCH3、(CH2)p(OCH2CH2)qOR2(ここで、pは1〜4の整数、qは1〜4の整数、R2はCH3又はC2H5を表す)が挙げられる。
アニオン(X)としては、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)、BF3CF3 -、BF3C2F5 -、BF3C3F7 -、BF3C4F9 -、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン((CF3SO2)2N-)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン(CF3SO2)3C-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 -)、ジシアンアミドイオン((CN)2N-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)、有機カルボン酸イオンおよびハロゲンイオンが例示できる。
これらのうち、イオン液体としては、例えば、カチオンが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、[N(CH3)(CH3)(C2H5)(C2H4OC2H4OCH3)]+、アニオンがハロゲンイオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン((CF3SO2)2N-)のものが、具体的に例示でき、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン((CF3SO2)2N-)からなるイオン液体が特に好ましい。なお、カチオン及び/又はアニオンを2種以上使用し、融点をさらに下げることも可能である。
ただし、これらの組み合わせに限らず、イオン液体であって、導電率が0.1Sm-1以上のものであれば、使用可能である。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWNT)と多層ナノチューブ(MWNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、およびアームチェア型に分けられるなど、各種のものが知られている。本発明には、このような所謂カーボンナノチューブと称されるものであれば、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができる。
本発明で使用するカーボンナノチューブのアスペクト比は、10以上である。アスペクト比は大きければ大きいほど好ましいが、上限は、例えば10程度である。カーボンナノチューブの長さは、通常1μm以上、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは500μm以上である。カーボンナノチューブの長さの上限は、特に限定されないが、例えば3mm程度である。
実用に供されるカーボンナノチューブの好適な例として、一酸化炭素を原料として比較的量産が可能なHiPco(カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレーテッド社製)が挙げられるが、勿論、これに限定されるものではない。
本発明の導電性フィルムは、カーボンナノチューブとイオン液体から基本的に構成されるが、活性炭素繊維や補強材などを導電性などの特性をあまり損なわない範囲で加えることもできる。
導電性フィルムは、導電性ポリマーと複合化されて複合導電性薄膜を形成する。導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、或いはこれらの2種又は3種の共重合体が挙げられる。導電性ポリマーの製造に使用される導電性モノマーは、アニリン、ピロール、チオフェン、あるいはこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、重合に関与する以外の位置に1〜3個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アミノ、アセチルアミノ、OH、SH、メチルチオ、エチルチオ、トリフルオロメチル、メチレンジオキシなどが挙げられる。
複合導電性薄膜は、常法に従い導電性フィルムを導電性モノマーの溶液に浸漬し、電解重合することにより導電性ポリマーを複合化して得ることができる。導電性ポリマーは、イオン伝導層との密着性が低いため、導電性ポリマーの片面を保護して電解重合を行い、導電性ポリマーが複合化されていない(保護された)面をイオン伝導層と合わせてアクチュエータ素子とすることができる。導電性フィルムの保護は、例えばテープを貼ることにより行うことができる。
電解重合の溶媒としては、安息香酸メチル、フタル酸ジメチルなどの芳香族エステルが好ましく使用できる。支持電解質としては、テトラブチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホネート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
本発明のイオン伝導層は、ポリマーと溶媒、必要に応じてさらにイオン液体を含む溶液を調製し、得られた溶液をキャスト法により製膜し、溶媒を蒸発、乾燥させることによって得ることができる。イオン伝導層の形成は、塗布、印刷、押し出し、キャスト、または、射出などにより行うことができる。ここで、前記溶媒は親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒を用いてもよい。また、イオン伝導層は、ポリマーと溶媒の溶液をキャストして溶媒を除去し、その後イオン液体を含浸させて得ることができる。
親水性溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メタノール、エタノールなどの炭素数1〜3の低級アルコール、アセトニトリル等が挙げられる。疎水性溶媒としては、4−メチルペンタン−2−オンなどの炭素数5〜10のケトン類、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類が挙げられる。
本発明において、イオン伝導層に用いられるポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP)]などの水素原子を有するフッ素化オレフィンとパーフッ素化オレフィンの共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの水素原子を有するフッ素化オレフィンのホモポリマー、パーフルオロスルホン酸(Nafion,ナフィオン)、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(poly-HEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリ(メタ)アクリレート類、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。
アクチュエータ素子の電極層に使用される導電性フィルム層は、カーボンナノチューブとイオン液体から構成される。導電性フィルム層中のこれらの成分の好ましい配合割合は:
カーボンナノチューブ:
6〜90重量%、好ましくは9〜66重量%、より好ましくは20〜50重量%;
イオン液体:
10〜94重量%、好ましくは34〜91重量%、より好ましくは50〜80重量%;
である。
導電性フィルムの調製は、CNTとイオン液体を任意の割合で混合して実施することが可能である。一方、得られた導電性フィルム層の強度の問題から、CNTは一定以上含まれるのがよい。
CNTとイオン液体を任意の割合で攪拌などにより混合し、超音波処理を行うのが好ましい。超音波処理時間は、30分から15時間程度、好ましくは1時間〜7時間程度が挙げられる。
導電性フィルムの形成は、CNTとイオン液体の混合液を、塗布、印刷、押し出し、キャスト、または、射出などの方法により行なうことができ、好ましくはキャストにより実施される。
導電性フィルムは、カーボンナノチューブと溶媒の分散液をキャストし、溶媒を蒸発させてカーボンナノチューブのフィルムを形成し、その後にイオン液体を含浸させて製造することもできる。また、導電性フィルムについて電解重合を行い、その後さらにイオン液体を含浸させることもできる。複合導電性薄膜は導電性ポリマーを複合化することで硬くなるが、イオン液体を含浸させることで柔らかくなり、加工性を向上させることができる。
本発明の方法で製造するアクチュエータ素子としては、例えば、イオン伝導層1を、その両側から、導電性フィルム層(電極層)2,2で挟み、導電性フィルム層の外側に導電性ポリマー層3,3を有する5層構造のものが挙げられる(図3) 。
イオン伝導層の表面に導電性フィルム層を密着してアクチュエータ素子を得るには、イオン伝導層の表面に複合導電性薄膜(2+3)の導電性フィルム(2)側を合わせて熱圧着すればよい。
イオン伝導層の厚さは、5〜200μmであるのが好ましく、10〜100μmであるのがより好ましい。導電性フィルム層の厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、50〜300μmであるのがより好ましい。また、各層の製膜にあたっては、スピンコート、印刷、スプレー等も用いることができる。さらに、押し出し法、射出法等も用いることができる。導電性ポリマー層の厚さは、5〜100μmであるのが好ましく、10〜40μmであるのがより好ましい。
導電性フィルムは、CNTとイオン液体から構成される複数のフィルムを熱圧着などにより積層することもでき、1枚のフィルムからなっていてもよい。1枚のフィルム若しくは複数のフィルムを熱圧着した後の導電性フィルムについて必要に応じて片面を保護した後に電解重合を行うことにより、本発明の複合導電性薄膜を得ることができる。
このようにして得られたアクチュエータ素子は、電極間(電極は導電性フィルム層に接続されている)に0.5〜4Vの直流電圧を加えると、数秒以内に素子長の0.5〜1倍程度の変位を得ることができる。また、このアクチュエータ素子は、空気中あるいは真空中で、柔軟に作動することができる。
上記の方法で得ることのできるアクチュエータ素子によれば、カーボンナノチューブとイオン液体とのゲルの界面有効面積が極めて大きくなることから、界面電気二重層におけるインピーダンスが小さくなり、カーボンナノチューブの電気伸縮効果が有効に利用される効果に寄与する。また、機械的には、界面の接合の密着性が良好となり、素子の耐久性が大きくなる。その結果、空気中、真空中で、応答性がよく変位量の大きい、且つ耐久性のある素子を得ることができる。しかも、構造が簡単で、小型化が容易であり、小電力で作動することができる。
本発明のアクチュエータ素子は、空気中、真空中で耐久性良く作動し、しかも低電圧で柔軟に作動することから、安全性が必要な人と接するロボットのアクチュエータ(例えば、ホームロボット、ペットロボット、アミューズメントロボットなどのパーソナルロボットのアクチュエータ)、また、宇宙環境用、真空チェンバー内用、レスキュー用などの特殊環境下で働くロボット、また、手術デバイスやマッスルスーツなどの医療、福祉用ロボット、さらにはマイクロマシーンなどのためのアクチュエータとして最適である。
特に、純度の高い製品を得るために、真空環境下、超クリーンな環境下での材料製造において、純度の高い製品を得るために、試料の運搬や位置決め等のためのアクチュエータの要求が高まっており、全く蒸発しないイオン液体を用いた本発明のアクチュエータ素子は、汚染の心配のないアクチュエータとして、真空環境下でのプロセス用アクチュエータとして有効に用いることができる。
このような素子により、蠕動運動による運搬や、マイクロマニピュレータなどを実現可能である。また、本発明のアクチュエータ素子の形状は、平面状とは限らず、任意の形状の素子が容易に製造可能である。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。
<実験法の共通の説明>
1. 使用した薬品、材料
使用したイオン液体(IL):
エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMITFSI)
Figure 2012135071
使用したカーボンナノチューブ:
実施例および比較例で用いたアスペクト比10以上のカーボンナノチューブは、独立行政法人産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センターで作製された、平均長約600μmの単層カーボンナノチューブ(SG-CNT)である。
使用したイオン伝導体用ベースポリマー:ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF(HFP)) (III)
Figure 2012135071
使用した溶媒
N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)
プロピレンカーボネート(PC)
メチルペンタノン(MP)
使用した導電性モノマー
ピロール
2.ゲル電解質キャスト液の一般的作製方法
IL 100mg、PVDF(HFP) 100mg、PC 360mg、MP 3mlを、80℃に液温を上げて30分以上撹拌し、作製したキャスト液0.3mlを25mmx25mmのキャスト枠中にキャストし、溶媒を蒸発させて、ゲル電解質フィルム(イオン伝導層)を得る。厚みは約20μm程度である。
3.電極/電解質ゲル/電極の3層構造からなるアクチュエータ素子の変位測定方法
図1に示す様にレーザー変位計を用い、素子を1mmx15mmの短冊状に切り取り、電圧を加えた時の10mmの位置の変位を測定した。
4.電極導電率測定法
電極の導電率は、電極の両端、および、表面の2点間に金ペーストで直径50μmの金線を接合し、両端の金線に定電流源で一定電流を流し、表面に接続した接点間の電圧を測定することで、電極の抵抗を測定した。この時の電極の厚みd、電極の幅をbとすると断面積S=bdである。流した電流がI、測定した電圧がV、電圧測定端子間距離がLとすると、
コンダクタンス G=I/V[S]
導電率=GL/S[Scm-1
となる。
5.ヤング率測定法
引張り試験機を用い、応力−歪み特性から、電極フィルムのヤング率をもとめた。また、フィルムが破断する点の応力を破断強度とした。
6.電極、ゲル電解質、アクチュエータ素子フィルム厚測定
作成した電極フィルム、ゲル電解質フィルム、およびそれらの積層体からなるアクチュエータ素子フィルムの厚みは、マイクロメーターを用いて測定した。
実施例1
SG-CNT 5mg, EMITFSI 40mgを試料瓶にとり、溶媒DMAc1mlを入れマグネティックスターラーで撹拌を1時間行う。試料瓶を逆さまにしても流れない程度に固化した。SG-CNTが分散し、ネットワークを作ることによってゲル状になり、固化したものと思われる。これをさらに超音波洗浄器内で超音波を30分照射し、DMAcを2ml加えてスターラーで撹拌を2時間行い、キャスト液を得た。テフロン(登録商標)テープで作成した25mm角のキャスト枠内に上記キャスト液をそれぞれ2.4mlキャストし、温度50℃で減圧乾燥一昼夜、その後、温度を80℃にして減圧乾燥一昼夜行い、導電性フィルムを得た。
次に表1に記載の条件で、CF3SO3をカウンターイオンとしてポリピロールを導電性フィルム上に電解重合した。その導電率、ヤング率、破断強度を測定した結果は表2の通りである。
Figure 2012135071
Figure 2012135071
実施例2
SG-CNT 5mg, EMITFSI 40mgを試料瓶にとり、溶媒DMAc1mlを入れマグネティックスターラーで撹拌を1時間行う。試料瓶を逆さまにしても流れない程度に固化した。SG-CNTが分散し、ネットワークを作ることによってゲル状になり、固化したものと思われる。これをさらに超音波洗浄器内で超音波を30分照射し、DMAcを2ml加えてスターラーで撹拌を2時間行い、キャスト液を得た。テフロン(登録商標)テープで作成した25mm角のキャスト枠内に上記キャスト液をそれぞれ2.4mlキャストし、温度50℃で減圧乾燥一昼夜、その後、温度を80℃にして減圧乾燥一昼夜行い、導電性フィルムを得た。次に表3に記載の条件で、TFSIをカウンターイオンとしてポリピロールを導電性フィルム上に電解重合した。その導電率、ヤング率、破断強度を測定した結果は表4の通りである。
Figure 2012135071
Figure 2012135071
実施例3
SG-CNT 5mg, EMITFSI 40mgを試料瓶にとり、溶媒DMAc1mlを入れマグネティックスターラーで撹拌を1時間行う。試料瓶を逆さまにしても流れない程度に固化した。SG-CNTが分散し、ネットワークを作ることによってゲル状になり、固化したものと思われる。これをさらに超音波洗浄器内で超音波を30分照射し、DMAcを2ml加えてスターラーで撹拌を2時間行い、キャスト液を得た。テフロン(登録商標)テープで作成した25mm角のキャスト枠内に上記キャスト液をそれぞれ2.4mlキャストし、温度50℃で減圧乾燥一昼夜、その後、温度を80℃にして減圧乾燥一昼夜行い、導電性フィルムを得た。
IL 100mg、PVDF(HFP) 100mg、PC 360mg、MP 3mlを、80℃に液温を上げて30分以上撹拌し、作製したキャスト液0.3mlを25mmx25mmのキャスト枠中にキャストし、溶媒を蒸発させて、ゲル電解質フィルム(イオン伝導層)を得た。厚みは約20μm程度である。
得られた導電性フィルムでイオン伝導層をサンドイッチにした従来のアクチュエータを作製(図2)した。また、導電性フィルムの片面をマスクして実施例1と2の方法で導電性フィルムの片面のみ導電性ポリマーを電解重合し、その後、イオン液体に再度浸漬し、導電性フィルムの面をイオン伝導層に接触させる図3の構成でアクチュエータを作製した。上記方法で変位測定を行い、変位の値から、電極層の伸縮率を算出し、印加した電圧の周波数に対してプロットした図を図4に示す。導電性ポリマーを付けることにより、伸縮率が大きく、かつ、応答性も向上している事がわかる。
1 イオン伝導層
2 導電性フィルム(CNT、イオン液体)
3 導電性ポリマー

Claims (17)

  1. アスペクト比が104以上のカーボンナノチューブ、イオン液体から構成される導電性フィルムと導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
  2. 長さが50μm以上のカーボンナノチューブ、イオン液体から構成される導電性フィルムと導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
  3. 請求項1または2に記載のアクチュエータ用複合導電性フィルムにおいて、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを複合化したアクチュエータ用複合導電性薄膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の複合導電性薄膜層とイオン伝導層を有する積層体からなるアクチュエータ素子。
  5. イオン伝導層の表面に、請求項1〜3のいずれかに記載の複合導電性薄膜を電極とする複合導電性薄膜層が互いに絶縁状態で少なくとも2個形成され、当該導電性薄膜層に電位差を与えることにより変形可能に構成されている請求項4に記載のアクチュエータ素子。
  6. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ用複合導電性薄膜の製造方法:
    工程1:カーボンナノチューブ、イオン液体、および溶媒を含む分散液を調製する工程;
    工程2:工程1の分散液を用いる導電性フィルムの形成工程;
    工程3:工程2の導電性フィルムへの導電性ポリマーの形成工程。
  7. 前記カーボンナノチューブが、アスペクト比が10以上のカーボンナノチューブもしくは長さが50μm以上のカーボンナノチューブである、請求項6に記載の方法。
  8. 導電性ポリマーの形成を電解重合法により行う請求項6に記載の方法。
  9. 導電性フィルムの片面をマスクして電解重合することにより、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを電解重合する請求項6に記載の方法。
  10. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ用複合導電性薄膜の製造方法:
    工程1:カーボンナノチューブおよび溶媒を含む分散液を調製する工程;
    工程2:工程1の分散液を用いるカーボンナノチューブフィルムの形成工程;
    工程3:工程2のカーボンナノチューブフィルムへのイオン液体の浸透による導電性フィルムの形成工程;
    工程4:導電性フィルムへの導電性ポリマーの形成工程。
  11. 前記カーボンナノチューブが、アスペクト比が10以上のカーボンナノチューブもしくは長さが50μm以上のカーボンナノチューブである、請求項10に記載の方法。
  12. 導電性ポリマーの形成を電解重合法により行う請求項10に記載の方法。
  13. 導電性フィルムの片面をマスクして電解重合することにより、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを電解重合する請求項10に記載の方法。
  14. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ用複合導電性薄膜の製造方法:
    工程1:カーボンナノチューブおよび溶媒を含む分散液を調製する工程;
    工程2:工程1の分散液を用いるカーボンナノチューブフィルムの形成工程;
    工程3:カーボンナノチューブフィルム上への導電性ポリマーフィルムの形成工程;
    工程4:工程3の複合体へのイオン液体を浸透によるアクチュエータ用複合導電性薄膜の形成工程。
  15. 前記カーボンナノチューブが、アスペクト比が10以上のカーボンナノチューブもしくは長さが50μm以上のカーボンナノチューブである、請求項14に記載の方法。
  16. 導電性ポリマーの形成を電解重合法により行う請求項14に記載の方法。
  17. 導電性フィルムの片面をマスクして電解重合することにより、導電性フィルムの片面に導電性ポリマーを電解重合する請求項14に記載の方法。
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