JP2012134138A - 触媒層、積層体及び膜−電極接合体の製造方法 - Google Patents

触媒層、積層体及び膜−電極接合体の製造方法 Download PDF

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光紀 野殿
Kentaro Masui
建太朗 増井
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Abstract

【課題】従来の触媒層と比較して、燃料電池の発電性能を向上することができる触媒層を提供する。
【解決手段】固体高分子型燃料電池に使用される膜−電極接合体の触媒層であって、当該触媒層が、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)を含有し、触媒層の総質量に対する有機溶媒(A)の含有率X質量%が下記式(α)を満たす、触媒層を提供する。
0.001≦X≦1…(α)
【選択図】なし

Description

本発明は、触媒層、積層体及び膜−電極接合体の製造方法に関する。
固体高分子形燃料電池(以下、場合により「燃料電池」という)は、燃料ガス(例えば、水素が挙げられる。)と酸素との化学的反応により発電させる発電装置であり、次世代エネルギーの一つとして電気機器産業や自動車産業等の分野において大きく期待されている。燃料電池は、2つの触媒層と、これら2つの触媒層に挟まれた高分子電解質膜(隔膜)と、を基本単位として構成されている。このような燃料電池に用いられる触媒層としては、例えば、特定のイオン交換樹脂と水を含む溶媒とを含む分散組成物、及び、触媒粉末、を含む塗工液から形成される触媒層がある(例えば、特許文献1を参照)。
国際公開第09/125695号
ところで、触媒層は、燃料電池として用いた場合に、高い発電性能を有する燃料電池を作製できるものであることが求められる。
そこで、本発明は、発電性能に優れた燃料電池を作製できる触媒層を提供することを目的とする。本発明はまた、当該触媒層を備える積層体及び当該触媒層を備える膜−電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、固体高分子型燃料電池に使用される膜−電極接合体の触媒層であって、当該触媒層が、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)を含有し、上記触媒層の総質量に対する有機溶媒(A)の含有率X質量%が下記式(α)を満たす、触媒層を提供する。
0.001≦X≦1…(α)
このような触媒層は、上記構成を有することにより、燃料電池の材料として用いた場合において、発電性能に優れた燃料電池を作製できる。
本発明の触媒層においては、有機溶媒(A)が、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2012134138
式(1)中、kは1〜5の整数を表す。Rは2価の脂肪族基を表す。当該2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、ヒドロキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。
有機溶媒(A)が、このようなものであると、得られる燃料電池の発電性能がより向上する。
また、本発明の触媒層においては、有機溶媒(A)が、100℃以上300℃未満の沸点を有することが好ましい。
有機溶媒(A)が、このようなものであると、得られる燃料電池の発電性能がさらに向上する。
本発明の触媒層においては、有機溶媒(A)が、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール及びジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
有機溶媒(A)が、このようなものであると、得られる燃料電池の発電性能がさらに一層向上する。
本発明はまた、上記触媒層と、当該触媒層が積層された、支持基材、電解質膜又はガス拡散層と、を備える積層体を提供する。
このような積層体は、上記触媒層を備えるため、燃料電池の材料として用いた場合において、発電性能に優れた燃料電池を作製できる。
本発明はまた、高分子電解質膜上に第一の触媒層を形成し、第一の積層体を得る工程と、ガス拡散層上に、本発明に係る第二の触媒層を形成し、第二の積層体を得る工程と、第一の積層体及び第二の積層体を、第一の積層体の主面のうち第一の触媒層が形成された面とは反対の面と、第二の積層体の主面のうち第二の触媒層が形成された面と、が接触するように積層し、加熱加圧する工程と、を備える、膜−電極接合体の製造方法を提供する。
このような製造方法によれば、発電性能に優れた燃料電池を作製できる膜−電極接合体を容易に製造することができる。
本発明によれば、発電性能に優れる燃料電池を作製できる触媒層を提供することができる。本発明によればまた、当該触媒層を備える積層体及び当該触媒層を備える膜−電極接合体の製造方法を提供することができる。
本実施形態の触媒層を備える固体高分子形燃料電池(燃料電池単セル)の好適な実施形態を示す一部破断斜視図である。 本実施形態の触媒層を備える膜−電極接合体(MEA)の好適な製造方法を説明するための断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
<触媒層>
本実施形態の触媒層は、固体高分子型燃料電池に使用される膜−電極接合体の触媒層であって、当該触媒層が、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)を含有し、上記触媒層の総質量に対する有機溶媒(A)の含有率X質量%が下記式(α)を満たすものである。
0.001≦X≦1…(α)
このような触媒層によれば、燃料電池の材料として用いた場合において、発電性能に優れた燃料電池を作製できる。ここで、当該触媒層がこのような効果を奏する理由の一つを、本発明者らは以下のように推測する。本実施形態の触媒層は、上述のとおり、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)を特定の割合で含有する。これにより、燃料電池を製造した場合における触媒層と電解質膜との接着性が高まり、結果的に、得られる燃料電池の発電性能が向上すると考えられる。このような触媒層と電解質膜との接着性の向上は、本実施形態の触媒層に含まれている上記特定の溶媒が電解質膜を構成している材料の良溶媒となり得るため、触媒層に接している電解質膜がその界面部分において触媒層中の溶媒によって可塑化されることが一因となって生じると考えられる。特に、電解質膜が、後述するような第1又は第2のブロック共重合体型高分子電解質から構成される場合は、触媒層に含まれている溶媒による可塑化が生じ易いので、触媒層と電解質膜との接着性の向上効果、ひいては燃料電池の発電性能の向上効果が特に良好に得られる傾向にある。
以下、各成分について詳細に説明する。
[有機溶媒(A)]
有機溶媒(A)は、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれるものであれば、特に制限はないが、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。有機溶媒(A)がこのようなものであると、得られる燃料電池の発電性能をより向上させることができる。
Figure 2012134138
式(1)中、kは1〜5の整数を表す。Rは2価の脂肪族基を表す。当該2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、ヒドロキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。
式(1)中のRとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数1〜10のアルキレン基、置換基としてアリール基を有する炭素数6〜10のアルキレン基、置換基としてアルコキシ基を有する炭素数6〜10のアルキレン基が挙げられる。
としての炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、シクロペンチレン基、n−ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、2−メチルペンチレン基、2−エチルヘキシレン基、n−ヘプシレン基、n−オクチレン基、ノニレン基、ドデシレン基が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、イソブチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基が更に好ましく、エチレン基が特に好ましい。
また、式(1)中のRとしては、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数1〜10のアルキル基、置換基としてアリール基を有する炭素数6〜10のアルキル基、置換基としてアルコキシ基を有する炭素数6〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、置換基としてヒドロキシ基を有する炭素数6〜10のアリール基、置換基としてアルキル基を有する炭素数6〜10のアリール基、置換基としてアルコキシ基を有する炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
としての炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、ノニル基、ドデシル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、エチル基が特に好ましい。
得られる燃料電池の発電性能を高める観点からは、式(1)において、Rが炭素数1〜10のアルキレン基であり、Rが水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
また、式(1)中のkは、後述の高分子電解質への溶解性の観点からは、1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
得られる燃料電池の発電性能を高める観点からは、式(1)において、Rがエチレン基であり、Rが水素原子又はエチル基であり、kが1又は2であることが特に好ましい。すなわち、本実施形態の触媒層においては、有機溶媒(A)が、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール及びジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
また、得られる燃料電池の発電性能の観点から、有機溶媒(A)は、100℃以上300℃未満の沸点を有することが好ましい。
ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)のうち、100℃以上300℃未満の沸点を有するものとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、エチレングリコール(197℃)、ジエチレングリコール(244℃)が挙げられる。
[その他成分]
本実施形態において、上記触媒層は、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)以外の成分を含むことができる。当該有機溶媒(A)以外の成分としては、例えば、触媒、電解質、低級アルコール系溶媒、水が挙げられる。また、上記触媒層は、目的に応じて、ラジカルを捕捉又は分解する添加剤や、金属粒子、無機材料を含んでもよい。
上記触媒としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はないが、例えば、白金、白金系合金及び錯体系電極触媒等の触媒物質を含有するものが挙げられる。ここで、上記白金系合金としては、例えば、白金−ルテニウム合金、及び白金−コバルト合金が挙げられる。また、錯体系電極触媒としては、例えば、高分子学会燃料電池材料研究会編、「燃料電池と高分子」、103頁〜112頁、共立出版、2005年11月10日発行に記載のものが挙げられる。また、触媒は、触媒層における電子の輸送を容易にするため、上述の例示にあるような触媒物質を、担体の表面に担持させてなる触媒担持体の形態であってもよい。上記担体としては導電性材料を主として含むものが好適であり、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等の導電性カーボン材料、酸化チタン等のセラミックス材料が挙げられる。
上記電解質としては、例えば、高分子電解質が挙げられる。このような高分子電解質としては、イオン交換基として、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基(−OP(O)(OH))、ホスホン基(−P(O)(OH))、スルホニルイミド基(−SO−NH−SO−)等のカチオン交換基(酸性基)が導入された高分子が挙げられる。高分子電解質としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸樹脂等の脂肪族系高分子電解質や、後述の高分子電解質膜に用いられる高分子電解質として例示されるような芳香族系高分子電解質等が挙げられる。
なお、本実施形態の触媒層において、触媒層の総質量に対する有機溶媒(A)の含有率X質量%は、上述のとおり、0.001≦X≦1を満たすものである。電解質膜との接合性の観点からは、上記含有量は、0.01≦X≦1を満たすことがより好ましく、0.05≦X≦0.5を満たすことが更に好ましい。
また、触媒層が、有機溶媒(A)以外の成分を含有する場合の、有機溶媒(A)以外の成分の含有量は用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、触媒の含有量は、触媒層の総質量を基準として、30〜90質量%であることが好ましい。また、電解質の含有量は、触媒層の総質量を基準として、10〜70質量%であることが好ましい。
<積層体>
上記触媒層は、支持基材、電解質膜又はガス拡散層上に積層することにより、上記触媒層と、当該触媒層が積層された、支持基材、電解質膜又はガス拡散層と、を備える積層体とすることができる。このような積層体は、膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池を製造する際の材料として有用である。具体的には、このような積層体は、上記特定の触媒層を備えるため、燃料電池の材料として用いた場合において、発電性能に優れた燃料電池を作製できる。なお、膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池並びにこれらの製造方法については後述する。
<膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池>
次に、本実施形態の触媒層を備える膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池について説明する。
図1は、本実施形態の触媒層を備える固体高分子形燃料電池(燃料電池単セル)の好適な実施形態を示す一部破断斜視図である。図1に示す固体高分子形燃料電池100は、膜−電極接合体(MEA)10、一対のガスケット4及び一対のセパレータ5を備える。膜−電極接合体10は、高分子電解質膜1、高分子電解質膜1の両面においてその面の一部に形成された触媒層2、及び触媒層2の面のうち高分子電解質膜1とは反対の面に形成された一対のガス拡散層3を備える。そして、膜−電極接合体10は、一対のセパレータ5で挟持されており、ガスケット4は、高分子電解質膜1とセパレータ5の間に配されている。そして、2つの触媒層2のうちの少なくとも一方は、本実施形態の触媒層に係る触媒層である。
以下、各層について詳細に説明する。
[触媒層2]
上述のとおり、触媒層2のうちの少なくとも一方は、上述した実施形態の触媒層に係る触媒層である。なお、触媒層2のうちの一方が、本実施形態の触媒層に係るものではない場合、本実施形態の触媒層に係るものではない側の触媒層に特に制限はないが、例えば、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)を含まないこと以外は、本実施形態の触媒層と同様である触媒層や、当該有機溶媒(A)の含有量が上記式(α)を満たすものではない触媒層等が挙げられる。
[高分子電解質膜1]
高分子電解質膜1は、高分子電解質を含有する層である。高分子電解質膜1の形成に用いられる高分子電解質は、高分子電解質としての機能を有する限りにおいて特に制限はない。高分子電解質としては、例えば、イオン交換基を有する高分子電解質が挙げられる。このような高分子電解質としては、Nafion(デュポン社登録商標)、旭化成製のAciplex(旭化成登録商標)、旭硝子製のFlemion(旭硝子登録商標)などのイオン交換基を有するフッ素系高分子電解質や、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素にスルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホン基(−PO32)、スルホニルイミド基(−SO2NHSO2−)、フェノール性水酸基等のイオン交換基を導入した炭化水素系高分子電解質などが用いられる。
上記のうち、炭化水素系高分子電解質は、ラジカル耐性が高い傾向にあるので、高分子電解質が炭化水素系高分子電解質である場合、優れたラジカル耐性を有する高分子電解質膜等が得られ易くなる。また、フッ素系高分子電解質に比して、耐熱性等の観点からも炭化水素系高分子電解質は有利である。
なお、高分子電解質は、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質を組み合わせて含有してもよいが、この場合、上記の効果を良好に得る観点から、高分子電解質の全量(100重量%)に対して、炭化水素系高分子電解質が、51重量%以上であると好ましく、70重量%以上であるとより好ましくは、85重量%以上であるとさらに好ましくは、90重量%以上であると特に好ましい。
ここで、炭化水素系高分子電解質とは、当該高分子電解質を構成する元素重量含有比で表してハロゲン原子が15重量%以下である高分子電解質を意味する。かかる炭化水素系高分子電解質は、前記のフッ素系高分子電解質と比較して安価であるという利点を有するため、より好ましい、特に好適な炭化水素系高分子電解質は、実質的にハロゲン原子を含有していないものであり、このような炭化水素系高分子電解質は燃料電池の作動時に、ハロゲン化水素を発生して、他の部材を腐食させたりする恐れがない。
一方、フッ素系高分子電解質とは、当該高分子電解質を構成する元素重量含有比で表してフッ素原子が15重量%を超える高分子電解質を意味する。具体例としては上記例示の市販のフッ素系高分子電解質などをあげることができる。
高分子電解質が有しているイオン交換基としては、例えば、陽イオン交換基(酸性のイオン交換基、以下、場合により「カチオン交換基」という)、陰イオン交換基(塩基性のイオン交換基、以下、場合により「アニオン交換基」という)が挙げられる。陽イオン交換基としては、例えば、−SOH(スルホ基)、−COOH(カルボキシル基)、−PO(OH)(ホスホン基)、−POH(OH)、−SONHSO−(スルホニルイミド基)、−Ph(OH)(フェノール性水酸基)が挙げられる。なお、ここで、Phはフェニル基を表す。また、陰イオン交換基としては、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等が挙げられる。これらの基におけるR、R’及びR’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す。
イオン交換基としては、カチオン交換基が好ましく、中でも、酸解離定数pKaが2以下の強酸性基がより好ましく、スルホ基又はホスホン基がさらに好ましく、スルホ基(−SOH)が一層好ましい。
ここで、イオン交換基は、部分的に、あるいは全てが、金属イオンや4級アンモニウムイオン等で交換されて塩を形成していてもよい。例えば、上記カチオン交換基は、部分的に又は全てが金属イオン等でイオン交換されて塩を形成していてもよい。しかし、これらのイオン交換基は、実質的に全てが遊離酸の状態であることが好ましい。例えば、実質的に全てのカチオン交換基が遊離酸の状態である親水性ブロックを有するブロック共重合体型高分子電解質によれば、当該高分子電解質を溶媒と混合して高分子電解質組成物とする際の製造安定性に優れる。また、燃料電池用隔膜等として使用する観点からも、実質的に全てのカチオン交換基が遊離酸の状態であることが好ましい。なお、イオン交換基は、高分子電解質の主鎖、側鎖の何れか/又は両方に導入されていてもよいが、好ましくは主鎖へ導入されているものが挙げられる。
本実施形態の高分子電解質においては、イオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表して、0.5meq/g以上が好ましく、1.0meq/g以上がより好ましく、2.0meq/g以上が更に好ましく、2.7meq/g以上が特に好ましい。また、5.5meq/g以下が好ましく、5.0meq/g以下がより好ましい。イオン交換容量が好適な範囲であるほど、燃料電池用高分子電解質として、十分なプロトン伝導性が発現され、比較的耐水性も良好であるという利点が得られる。
好適な炭化水素系高分子電解質の具体例としては、例えば、下記の(A)〜(F)で表される高分子電解質が挙げられる。
(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子に、イオン交換基が導入された高分子電解質;
(B)主鎖が脂肪族炭化水素からなり、主鎖の一部の水素原子がフッ素原子で置換された高分子に、イオン交換基が導入された高分子電解質;
(C)主鎖が芳香環を有する高分子に、イオン交換基が導入された高分子電解質;
(D)主鎖が、シロキサン基やフォスファゼン基等の無機の単位構造を有する高分子にイオン交換基が導入された高分子電解質;
(E)高分子電解質(A)〜(D)の調製に使用する高分子の主鎖を構成する構造単位から選ばれる2種以上の構造単位を組み合わせた共重合体に、イオン交換基が導入された高分子電解質;
(F)主鎖や側鎖に窒素原子を含む炭化水素系高分子に、硫酸やリン酸等の酸性化合物をイオン結合により導入した高分子電解質。
なお、以下においては、これらの炭化水素系高分子電解質として、イオン交換基がスルホ基である高分子電解質を主として例示するが、このスルホ基を別のイオン交換基に置き換えた高分子電解質でもよい。
(A)の高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸等が挙げられる。
(B)の高分子電解質としては、特開平9−102322号公報に記載された炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって製造された高分子を主鎖とし、スルホ基を有する炭化水素鎖を側鎖とし、共重合様式がグラフト重合であるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。また、米国特許第4,012,303号公報又は米国特許第4,605,685号公報に記載された方法により得られる炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合体に、α,β,β−トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホ基を導入して固体高分子電解質としたスルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFEも挙げることができる。
(C)の高分子電解質は、主鎖に酸素原子等のヘテロ原子を含むものであってもよい。このような高分子電解質としては、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれに、スルホ基が導入されたものが挙げられる。具体的には、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報参照)等が挙げられる。前記(C)の高分子電解質は、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されている化合物であってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)が挙げられる。このような高分子電解質は、特開平9−110982号公報、J.Appl.Polym.Sci.,18,1969(1974)にも記載されている。
(D)の高分子電解質としては、例えば、ポリフォスファゼンにスルホ基が導入されたもの等が挙げられる。これらは、Polymer Prep.,41,No.1,70(2000)に記載された方法に準じて容易に製造することができる。
(E)の高分子電解質は、スルホ基が導入されたランダム共重合体、スルホ基が導入された交互共重合体、スルホ基が導入されたブロック共重合体のいずれであってもよい。
(F)の高分子電解質としては、例えば、特表平11−503262号公報に記載されたようなリン酸を含有させたポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
燃料電池用として良好な耐熱性を有する高分子電解質膜を得るためには、芳香族炭化水素系高分子電解質、特に主鎖に芳香環を有するもの(すなわち、上記(C))が好ましい。そのような高分子電解質は、より機械強度に優れ、高耐熱性であることからも好ましい。
また、上記(C)の中でも、さらには主鎖を構成する芳香環を有し、且つこの芳香環に直接結合または他の原子もしくは原子団を介して間接的に結合したイオン交換基を有する炭化水素系高分子電解質が好ましい。特に、主鎖を構成する芳香族を有し、さらに芳香環を有する側鎖を有してもよく、主鎖を構成する芳香環か側鎖の芳香環の、どちらかの芳香環に直接結合したイオン交換基を有する炭化水素系高分子電解質が好ましい。
上述したようなイオン交換基を有する高分子電解質としては、例えば、イオン交換基を有するブロック(以下、「セグメント」ともいう)及びイオン交換基を実質的に有しないブロック(以下、「セグメント」ともいう)を有するブロック共重合体型高分子電解質が挙げられる。このような高分子電解質からなる高分子電解質膜1は、耐水性や機械強度に優れる傾向がある。ブロック共重合体型高分子電解質の共重合様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合の何れでもよい。好ましくは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合であり、より好ましくは、ランダム共重合、ブロック共重合であり、特に好ましくはブロック共重合である。また、これらの共重合様式の組み合わせでもよい。
このようなブロック共重合体型高分子電解質としては、例えば、以下の第1のブロック共重合体型高分子電解質及び第2のブロック共重合体型高分子電解質が挙げられる。以下、各ブロック共重合体型高分子電解質について、それぞれ説明する。
<第1のブロック共重合体型高分子電解質>
第1のブロック共重合体型高分子電解質は、イオン交換基を有するブロックとして下記式(2a)で表されるブロックを有し、イオン交換基を実質的に有しないブロックとして、下記式(2b)、(3b)、又は(4b)で表されるブロックを有することが好ましい。当該高分子電解質がこのようなものであると、イオン伝導性、耐水性、寸法安定性に優れ、且つ燃料電池として使用した際の耐久性が向上する。
Figure 2012134138
式(2a)中、mは2以上の整数を表し、Arは2価の芳香族基を表す。ここで、2価の芳香族基とは、芳香族化合物から、2個の水素原子を取り去った残基である。以降、同様の意味で、「2価の芳香族基」と言う言葉を用いる。2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。式(2a)中のArは、主鎖を構成する芳香環に直接又は主鎖を構成する芳香環に結合した側鎖に結合しているイオン交換基を、Ar1個あたり平均0.5個以上有する。なお、ここで、mは5以上の整数であることが好ましい。
Figure 2012134138
式(2b)、(3b)及び(4b)中、nは2以上の整数を表し、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に2価の芳香族基を表す。ここでこれらの2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜18のアリールオキシ基又は炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。Z及びZ’は、それぞれ独立にカルボニル基(−CO−で示される基)又はスルホニル基(−SO2−で示される基)を表し、X、X’及びX’’は、それぞれ独立にO又はSを表す。Yは直接結合又は下記式(2c)で表される基を表す。p’は0、1又は2を表し、p’が2である場合、2つあるAr及びYは同一でも異なっていてもよい。q’、r’はそれぞれ独立に1、2又は3を表す。q’が2以上の場合、複数のArは同一でも異なっていてもよい。r’が2以上の場合、複数のArは同一でも異なっていてもよい。
Figure 2012134138
式(2c)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表し、RとRが連結して、それらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。RとRとが連結して形成される環を有する式(2C)の基としては、シクロヘキシリデン基などの炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基が挙げられる。
ここで、「イオン交換基を有するブロック(以下、場合により「親水性ブロック」という)」とは、当該ブロックを構成する構造単位1個に対して平均0.5個以上のイオン交換基を有するブロックを意味する。発電性能の観点からは、イオン交換基を有するブロックは、構造単位1個に対して平均1.0個以上のイオン交換基を有することが好ましい。
一方、「イオン交換基を実質的に有しないブロック(以下、場合により「疎水性ブロック」という)」とは、当該ブロックを構成する構造単位1個に対して平均0.1個未満のイオン交換基を有するブロックを意味する。耐水性や吸水寸法安定性の観点からは、イオン交換基を実質的に有しないブロックは、イオン交換基が構造単位1個に対して平均0.05個以下であるブロックであることが好ましく、イオン交換基を全く有しないブロックであることがより好ましい。
なお、本明細書において「ブロック共重合体」とは、イオン交換基を有するブロックとイオン交換基を実質的に有しないブロックとが主鎖構造を形成しているような共重合様式のものに加え、一方のブロックが主鎖構造を形成し、他方のブロックが側鎖構造を形成しているような、グラフト重合の共重合様式の共重合体も含む概念である。また、本実施形態において、ブロック共重合体は、ジブロック型であっても、トリブロック型であっても、それ以上連結されたものであってもよい。
上述のとおり、式(2a)におけるArは2価の芳香族基を表す。当該2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環式芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮合環式芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等の複素環式芳香族基が挙げられる。好ましくは2価の単環式芳香族基である。また、上述のとおり、当該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。
該アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、デシル基等が例示される。これらのアルキル基は、直鎖でも、分岐していても、環状であってもよい。また、該アルキル基に、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が結合して、その総炭素数が1〜10のアルキル基であってもよい。
該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等が例示される。これらのアルコキシ基は、直鎖でも、分岐していても、環状であってもよい。また、該アルコキシ基に、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が結合して、その総炭素数が1〜10のアルコキシ基も含む概念である。
該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が例示される。また、これらのアリール基に、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子等が結合して、その総炭素数が6〜18のアリール基であってもよい。
該アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が例示される。また、これらのアリールオキシ基に、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子等が結合して、その総炭素数が6〜18のアリールオキシ基であってもよい。
該アシル基としては、アセチル基、ブチリル基、デシルカルボキシル基、ベンゾイル基等が例示される。また、該アシル基に、シアノ基、ハロゲン原子等が結合して、その総炭素数が2〜20のアシル基であってもよい。
式(2a)で表されるブロックにおけるArは、当該ブロックに[0.5×m]個以上のイオン交換基を有するものであり、式(1a)で表されるブロックにある全ての構造単位のArがイオン交換基を有することが好ましい。そして、Arには、当該ブロックの主鎖を構成する芳香環に少なくとも一つのイオン交換基を有していることがより好ましい。
上述のとおり、式(2b)、(3b)及び(4b)におけるAr、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に2価の芳香族基を表す。当該2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。中でも、2価の単環性芳香族基が好ましい。
また、上述のとおり、これらの2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜18のアリールオキシ基又は炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基としては、例えば、上述のものを用いることができる。
また、上述のとおり、式(2c)におけるR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表し、RとRが連結して、それらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。ここで、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基としては、例えば、上述のものを用いることができる。
本実施形態の固体高分子形燃料電池においては、上記第1のブロック共重合体型高分子電解質が、イオン交換基を有するブロックとして、式(2a)で表されるブロックを有し、かつ、このブロックのArが、主鎖を構成している芳香環にイオン交換基が直接結合している2価の芳香族基であることがより好ましい。このような第1のブロック共重合体型高分子電解質は、本発明の触媒層との接合性により優れ、燃料電池として使用した際の発電性能が優れる。
また、触媒層2との接合性を更に向上させる観点及び燃料電池として使用した際の耐久性や、プロトン伝導度等の発電特性がより向上する観点からは、イオン交換基を有するブロックが、下記式(5a)、なかでも下記式(5aa)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2012134138
式(5a)及び(5aa)中、mは上記と同義である。すなわち、mは2以上の整数であり、5以上の整数であることが好ましい。Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる置換基を表す。pは0以上3以下の整数であり、qは1〜4の整数であり、p+qは1〜4の整数である。Rが複数存在する場合、それぞれ互いに同一でも異なってもよい。なおここで、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基としては、例えば、上述のものを用いることができる。
なお、ここで、式(2a)、(5a)、(5aa)中のm及び式(2b)、(3b)及び(4b)中のnは、それぞれ5〜1000の範囲であることが好ましく、10〜500の範囲であることがより好ましい。n及びmがこの範囲であるブロック共重合体型高分子電解質は、イオン伝導性と機械強度とのバランスに優れ、各々のブロックの製造自体も容易である。また、n及びmの比は、m/nで表して、10/90〜90/10の範囲であることが好ましい。
上記第1のブロック共重合体型高分子電解質の中では、式(2a)で表される親水性ブロックと、式(2b)で表される疎水性ブロックと、からなるブロック共重合体型高分子電解質、又は式(2a)で表される親水性ブロックと一般式(3b)で表される疎水性ブロックとからなるブロック共重合体型高分子電解質が好ましい。
第1のブロック共重合体型高分子電解質としては、より具体的には、例えば、疎水性ブロックとして下記式(101a)〜(113a)のいずれかを有し、親水性ブロックとして下記式(201)を有するものが好適である。なお、これらの式中のn及びmは、いずれも上記と同義である。
Figure 2012134138
このような第1のブロック共重合体型高分子電解質において、好適な疎水性ブロックと親水性ブロックとの組み合わせとしては、以下の表1の<a1>〜<m1>に示す組み合わせが挙げられる。
Figure 2012134138
上記の組み合わせの条件を満たす第1のブロック共重合体型高分子電解質としては、例えば、下記式(1)〜(13)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2012134138
Figure 2012134138
Figure 2012134138
なお、上記式(1)〜(13)は、括弧内の構造単位からなるブロックを有し、その共重合様式がブロック共重合であり、Gは2つのブロックを連結する結合、原子又は2価の原子団を表す。具体的に、Gを例示すると、直接結合、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、2価の芳香族基又はこれらの組み合わせによる2価の基が挙げられる。また、式(1)〜(13)のn及びmは上記と同義である。
上記式(1)〜(13)で表されるブロック共重合体型高分子電解質の中では、式(3)、(5)、(9)〜(13)で表されるブロック共重合体型高分子電解質が好ましく、(3)、(5)、(9)、(10)、(11)、(12)で表されるブロック共重合体型高分子電解質がより好ましい。
ブロック共重合体型高分子電解質の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量で、5000〜1000000であることが好ましく、15000〜400000であることがより好ましい。分子量がこの範囲であるブロック共重合体型高分子電解質を用いると、溶液キャスト法に使用するような溶液組成物(高分子電解質溶液)を得たとき、実用的な粘度の溶液組成物を得ることができる。
このようなブロック共重合体型高分子電解質は、例えば国際公開番号WO2007/043274に開示されたようなブロック共重合体の製造方法により製造できる。
なお、高分子電解質がブロック共重合体型高分子電解質である場合、ブロック共重合体型高分子電解質以外の他の高分子電解質を含むこともできる。
<第2のブロック共重合体型高分子電解質>
第2のブロック共重合体型高分子電解質としては、下記式(11a)、(12a)、(13a)又は(14a)[以下、「式(11a)〜(14a)」と呼ぶことがある]で表されるイオン交換基を有する構造単位と、下記式(11b)、(12b)、(13b)又は(14b)[以下、「式(11b)〜(14b)」と呼ぶことがある。]で表されるイオン交換基を有しない構造単位とを有し、その共重合様式がランダム共重合、ブロック共重合、ブロック共重合又はグラフト共重合のいずれか、もしくはこれらの共重合様式を組合わせた高分子電解質が例示される。
Figure 2012134138

Figure 2012134138
式(11a)〜(14a)中、Ar11〜Ar19は、それぞれ独立に、主鎖に芳香環を有し、さらに芳香環を有する側鎖を有してもよい2価の芳香族基を表す。この主鎖の芳香環か側鎖の芳香環の少なくとも1つが、それらの芳香環に直接結合したイオン交換基を有する。Z、Z’はそれぞれ独立にカルボニル基(−CO−で示される基)又はスルホニル基(−SO−で示される基)を表し、X、X’、X”は、それぞれ独立に、O又はSを表す。Y11は直接結合もしくは下記式(15)で表される基を表す。pは0、1又は2を表し、q、rは、それぞれ独立に1、2又は3を表す。)
また、式(11b)〜(14b)中、Ar21〜Ar29は、それぞれ独立に、側鎖としての置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。Z、Z’は、それぞれ独立にカルボニル基(−CO−で示される基)又はスルホニル基(−SO−で示される基)を表し、X、X’、X”は、それぞれ独立に、O又はSを表す。Y11は直接結合もしくは下記式(15)で表される基を表す。p’は0、1又は2を表し、q’、r’はそれぞれ独立に1、2又は3を表す。)
Figure 2012134138
式(15)中、Raa及びRbbは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基を表す。また、RaaとRbbとが連結して環を形成していてもよい。RaaとRbbとが連結して形成される環を有する式(15)の基としては、シクロヘキシリデン基などの炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基が挙げられる。
式(11a)〜(14a)におけるAr11〜Ar19は、2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル、ピロール、2H−ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、3H−インドール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,3,5−トリアジン、ブリン、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、フェナルサジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種から芳香環上の水素原子を2個取り去って得られるヘテロ芳香族基や、下記式(N−01)〜(N−07)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含むヘテロ芳香族基等が挙げられる。なかでも、好ましくは2価の単環性芳香族基又は2価の縮環系芳香族基であり、より好ましくは2価の単環性芳香族基である。
Figure 2012134138
また、式(11a)〜(14a)におけるAr11〜Ar19で表される芳香族基の芳香環上の水素原子は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基で置換されていてもよい。
式(11a)〜(14a)におけるAr11〜Ar19で表される芳香族基は、芳香環に少なくとも一つのイオン交換基を有する。これらのイオン交換基は、高分子電解質の主鎖、側鎖の何れか/又は両方に導入されていてもよい。なかでも、主鎖を構成する芳香環に少なくとも一つのイオン交換基が結合していると好ましい。イオン交換基としては、上述のような酸性のイオン交換基(カチオン交換基)が好ましく、酸性のイオン交換基の中でも、スルホ基又はホスホン基がより好ましく、スルホ基が特に好ましい。
ここで、式(14a)で表されるイオン交換基を有する構造単位の例の一つとして、下記式(14a−1)で表される構造単位を挙げることができる。
Figure 2012134138
式(14a−1)中、Ar110、Ar120、Ar130は、それぞれ独立に、2価の芳香族基を示し、それらの芳香族基中の芳香環の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Y000は、−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CFU000−(U000は1〜10の整数である)、−C(CF−、又は直接結合を示す。Z000は、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO−、−SO−、−(CHL000−(L000は1〜10の整数である)、又は−C(CH−を示す。R110は、直接結合、−O(CHP000−、−O(CFP000−、−(CHP000−、又は−(CFP000−を示す(P000は、1〜12の整数を示す)。R120及びR130は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子又は炭化水素基を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR120及びR130のうち少なくとも1個は水素原子である。x100は、0〜4の整数を示し、x200は、1〜5の整数を示し、a000は、0〜1の整数を示し、b000は、0〜3の整数を示す。)
式(14a−1)におけるAr110、Ar120及びAr130は、2価の芳香族基を表す。このような2価の芳香族基としては、式(11a)〜(14a)におけるAr11〜Ar19と同様の2価の芳香族基があげられる。
120、R130は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子または炭化水素基を示す。アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ルビジウムが挙げられる。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンタンメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]へプチル基、ビシクロ[2.2.1]へプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらのなかでも、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、ネオペンチル基がより好ましい。なお、R120、R130は、水素原子であることが好ましい。
上記式(14a−1)で表される構造単位は、さらに下記式(14a−2)で表される構造単位であることが好ましい。
Figure 2012134138
式(14a−2)中、Y001は、−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF−(ここでのLは1〜10の整数である)、及び−C(CF−からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を示し、Z001は、直接結合又は−(CH−(ここでのLは1〜10の整数である)、−C(CH−、−O−、−S−、−CO−、−SO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を示し、Ar001は、−SOH、−O(CHSOH、又は−O(CFSOHで表される置換基を有する芳香族基を示す(ここでのPは、1〜12の整数である)。m001は0〜10の整数を示し、n001は0〜10の整数を示し、k001は1〜4の整数を示す。
式(14a−2)で表されるイオン交換基を有する構造単位の具体例としては、後述の式(4a−13)〜(4a−20)で表される構造単位を挙げることができる
一方、式(11b)〜(14b)におけるAr21〜Ar29は、それぞれ独立に、2価の芳香族基を表す。このような2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル、ピロール、2H−ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、3H−インドール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,3,5−トリアジン、ブリン、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、フェナルサジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香環上の水素原子を2個取り去って得られるヘテロ芳香族基、及び下記式(N−01)〜(N−07)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含むヘテロ芳香族基等が挙げられる。なかでも、好ましくは2価の単環性芳香族基又は2価の縮環系芳香族基であり、より好ましくは2価の単環性芳香族基である。
Figure 2012134138
また、Ar21〜Ar29で表される芳香族基の芳香環上の水素原子は、フッ素原子、ホルミル基、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基で置換されていてもよい。なお、ここでいう「置換基を有していてもよい」の置換基は、イオン交換基を包含するものではない。
ここで、式(11a)〜(14a)におけるAr11〜Ar19で表される芳香族基及び式(11b)〜(14b)におけるAr21〜Ar29で表される芳香族基が有することができる置換基について、以下に例示する。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及び、これらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアルキル基が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ペントキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、シクロペントキシ基、n−ヘキソキシ基、シクロヘキソキシ基、2−メチルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、ドデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基、イコシロキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及び、これらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアルコキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアリール基が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアリールオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が21以下であるアシル基が挙げられる。
上述したなかでも、Ar11〜Ar19及びAr21〜Ar29で表される芳香族基が有している置換基が、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基や、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、又は、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の芳香環を有するアシル基であると好ましい。これらの置換基を有する場合、ポリマーの耐熱性が良好となる傾向があり、より実用的な燃料電池用部材が得られる傾向にある。
Ar11〜Ar19やAr21〜Ar29で表される芳香族基が置換基として芳香環を有するアシル基を有する芳香環を有するアシル基を芳香環置換基として有する第2のブロック共重合体型高分子電解質においては、アシル基を有する2つの構造単位が隣接し、それらの2つの構造単位にあるアシル基同士が結合したり、また、アシル基同士が結合した後、転位反応を生じたりする場合がある。このように置換基同士が結合したり、結合後に転位反応を生じたりするような反応が生じたか否かは、例えば13C−核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
上述した構造単位により構成される第2のブロック共重合体型高分子電解質は、炭化水素系高分子電解質であり、イオン交換基を有する構造単位と、イオン交換基を有しない構造単位とを有するが、特に、イオン交換基を有する構造単位による密な相が、膜厚方向に連続相を形成することができれば、よりプロトン伝導性に優れる高分子電解質膜が得られるといった利点があるので好ましい。
第2のブロック共重合体型高分子電解質は、式(11a)〜(14a)で表される構造単位からなるイオン交換基を有する構造単位と、式(11b)〜(14b)で表される構造単位からなるイオン交換基を有しない構造単位とを有するものである。好適なイオン交換基を有する構造単位とイオン交換基を有しない構造単位の組み合わせとしては、下記の表2の<a2>〜<m2>に示す構造単位の組み合わせが挙げられる。
Figure 2012134138
これらのなかでも、<b2>、<c2>、<d2>、<g2>、<h2>、<i2>、<j2>、<l2>、又は<m2>の組み合わせが好ましく、<g2>、<h2>、<l2>、又は<m2>の組み合わせがより好ましく、<g2>、<h2>、又は<l2>の組み合わせが更に好ましい。
より好適な第2のブロック共重合体型高分子電解質の例として、以下に示すイオン交換基を有する構造単位の群から選ばれる1種又は2種以上の構造単位と、以下に示すイオン交換基を有しない構造単位の群から選ばれる1種又は2種以上の構造単位と、から構成される共重合体を挙げることができる。第2のブロック共重合体型高分子電解質において、これらの構造単位同士は、直接結合で結合されているか、適当な原子又は原子団で結合されていてもよい。構造単位同士を結合する原子又は原子団の典型的な例としては、2価の芳香族基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はこれらを組み合わせてなる2価の基を挙げることができる。
イオン交換基を有する構造単位の好適例としては、下記式(4a−1)〜(4a−20)、(4a−121)及び(4a−122)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2012134138
Figure 2012134138
イオン交換基を有しない構造単位の好適例としては、下記式(4b−1)〜(4b−32)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2012134138
Figure 2012134138
Figure 2012134138
式(4b−15)〜(4b−32)中、r000は、0又は1以上の整数を示す。r000は、好ましくは100以下であり、より好ましくは1以上80以下である。
上述した好適例の中でも、イオン交換基を有する構造単位としては、(4a−1)、(4a−2)、(4a−3)、(4a−4)、(4a−5)、(4a−6)、(4a−7)、(4a−8)、(4a−9)、(4a−10)、(4a−11)及び(4a−12)のうちの少なくとも1種が好ましく、(4a−10)、(4a−11)及び(4a−12)のうちの少なくとも1種がより好ましく、(4a−11)及び/又は(4a−12)が更に好ましい。
また、イオン交換基を有しない構造単位としては、(4b−1)、(4b−2)、(4b−3)、(4b−4)、(4b−5)、(4b−6)、(4b−7)、(4b−8)、(4b−9)、(4b−10)、(4b−11)、(4b−12)、(4b−13)及び(4b−14)のうちの少なくとも1種が好ましく、(4b−2)、(4b−3)、(4b−9)、(4b−10)、(4b−13)及び(4b−14)のうちの少なくとも1種がより好ましく、(4b−2)、(4b−3)、(4b−13)及び(4b−14)のうちの少なくとも1種がさらに好ましく、(4b−2)、(4b−3)及び(4b−14)のうちの少なくとも1種が特に好ましい。
好適な第2のブロック共重合体型高分子電解質は、上記式(11a)〜(14a)で表される構造単位からなる、イオン交換基を有するセグメント(ブロック)と、上記式(11b)〜(14b)で表される構造単位からなる、イオン交換基を実質的に有しないセグメント(ブロック)とを有するものである。そして、好適なイオン交換基を有するセグメントを構成する構造単位と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを構成する構造単位との組み合わせとしては、下記の表3の<a3>〜<m3>に示すセグメントの組み合わせを挙げることができる。
Figure 2012134138
上述したイオン交換基を有するセグメント及びイオン交換基を実質的に有しないセグメントの組み合わせのなかでも、<b3>、<c3>、<d3>、<g3>、<h3>、<i3>、<j3>、<l3>、又は<m3>の組み合わせが好ましく、<g3>、<h3>、<l3>、又は<m3>の組み合わせがより好ましく、<g3>、<h3>又は<l3>の組み合わせが更に好ましい。
第2のブロック共重合体型高分子電解質の好ましい形態の一つとして、イオン交換基を有するセグメントの主鎖が、複数の芳香環が直接連結してなるポリアリーレン構造を有する形態があげられる。そのようなセグメントを構成するための構造単位として、好ましくは前述の(4a−10)、(4a−11)、(4a−12)、(4a−13)、(4a−14)、(4a−15)、(4a−16)、(4a−17)、(4a−18)、(4a−19)及び(4a−20)のうちの少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは(4a−10)、(4a−11)及び(4a−12)のうちの少なくとも1種が挙げられ、更に好ましくは(4a−11)及び/又は(4a−12)が挙げられる。
このような構造単位を繰り返し単位を含むセグメント(すなわち、イオン交換基を有するセグメント)を有する高分子電解質、特に、このような繰り返し単位からなるセグメントを有する高分子電解質は、優れたイオン伝導性を発現できるものであり、また、当該セグメントがポリアリーレン構造となるため、化学的安定性も比較的良好となる傾向がある。
ここで「ポリアリーレン構造」とは、主鎖を構成している芳香環同士が直接結合で結合されている形態である。具体的には、芳香環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であると好ましく、90%以上の構造であるとより好ましく、95%以上の構造であるとさらに好ましい。なお、直接結合で結合されている形態以外の形態とは、芳香環同士が2価の原子又は2価の原子団で結合している形態である。
また、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有しないセグメントとは、直接結合している形態でもよく、適当な原子又は原子団で連結している形態でもよい。ここでいうセグメント同士を結合する原子又は原子団の典型的な例としては、2価の芳香族基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はこれらを組み合わせてなる2価の基をあげることができる。
上述の如く、好適な第2のブロック共重合体型高分子電解質は、上記のイオン交換基を有する構造単位の群から選ばれる1種又は2種以上の構造単位を含むセグメント(すなわち、イオン交換基を有するセグメント)と、上記のイオン交換基を有しない構造単位の群から選ばれる1種又は2種以上の構造単位を含むセグメント(すなわち、イオン交換基を実質的に有しないセグメント)とから構成される。この場合のブロック共重合体は、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有しないセグメントとが直接結合で結合されているか、適当な原子又は原子団で結合された形態を有する。イオン交換基を有するセグメント及びイオン交換基を実質的に有しないセグメントの定義は、上述した親水性ブロック及び疎水性ブロックとそれぞれ同様である。
上記式(11a)〜(14a)で表される構造単位から選ばれる1種以上の構造単位からなるセグメントの重合度は2以上であると好ましく、3以上であるとより好ましく、5以上であると更に好ましく、10以上であると一層好ましい。また、かかるセグメントの重合度は1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。この重合度が2以上、好ましくは5以上であると、第2のブロック共重合体型高分子電解質は、燃料電池用の高分子電解質として、十分なプロトン伝導度を発現し易くなる傾向にあり、この重合度が1000以下であると、第2のブロック共重合体型高分子電解質の製造がより容易となる傾向にある。
また、式(11b)〜(14b)で表される構造単位から選ばれる構造単位からなるセグメントの重合度は1以上であると好ましく、2以上であるとより好ましく、3以上であると更に好ましい。また、このセグメントの重合度は100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。このような範囲内であれば、第2のブロック共重合体型高分子電解質は、燃料電池用の高分子電解質として、十分な機械強度を有し易く、また製造が容易となり易い傾向にある。
また、第2のブロック共重合体型高分子電解質の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して、5000〜1000000であることが好ましく、10000〜800000であることがより好ましく、10000〜600000であることが更に好ましく、15000〜400000であることが特に好ましい。このような範囲の分子量を有する第2のブロック共重合体型高分子電解質を用いることにより、高分子電解質膜は、その膜の形状を安定的に維持できる傾向がある。この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
以上、高分子電解質膜1を構成するための好適な高分子電解質について説明したが、高分子電解質膜1としては、例えば、上記高分子電解質と溶媒とを混合して作製した高分子電解質組成物を用いて、後述の溶液キャスト法及び含浸法により形成した膜等が挙げられる。
ここで、高分子電解質と混合する溶媒としては、高分子電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであれば特に制限はないが、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン、NMP)、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルは溶解性が高く好ましい。
また、上記高分子電解質組成物は、高分子電解質膜としての性能を損なわない限りにおいて、高分子電解質及び溶媒以外の成分を含むこともできる。高分子電解質及び溶媒以外の成分としては、例えば、水、添加剤が挙げられる。該添加剤としては、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等や、保水剤として添加される、無機又は有機の微粒子が挙げられる。このような添加剤を使用する際には、得られる高分子電解質膜の特性が著しく低下しない範囲で、その種類及び使用量を選択することが好ましい。
なお、溶液キャスト法で高い生産性を維持する観点からは、本実施形態の高分子電解質組成物における上記高分子電解質の含有量は、高分子電解質組成物全体を基準として、1質量%〜40質量%であることが好ましく、2質量%〜30質量%であることがより好ましく、3質量%〜20質量%であることが特に好ましい。
以下、溶液キャスト法及び含浸法について更に詳細に説明する。
(溶液キャスト法)
まず、上記高分子電解質組成物から溶液キャスト法を用いて、燃料電池用隔膜(高分子電解質膜)を製造する方法について説明する。
溶液キャスト法とは、上記高分子電解質組成物を、ガラス基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持基材上に流延塗布(キャスト製膜)して塗膜を形成させて、該塗膜から溶媒等の揮発成分を除去することにより支持基材上に高分子電解質膜を製膜する方法である。そして、高分子電解質膜が形成された支持基材を、高分子電解質膜から剥離等によって除去することで、高分子電解質膜を得ることができる。
高分子電解質膜は、上記高分子電解質組成物を支持基材上に塗布して塗膜を製造し、上記溶媒が塗膜中に残存するようにして該塗膜を乾燥させる乾燥工程と、該乾燥工程の後の塗膜から、残存している上記溶媒を、洗浄溶媒によって洗浄除去する洗浄工程と、を有する製造方法により製造されることが好ましい。
なお、乾燥工程を経て得られた塗膜に上記溶媒を残存させるために、温度等の乾燥条件を調整することが好ましい。
このようにして得られる高分子電解質膜の厚みは、特に制限はないが、燃料電池用隔膜として実用的である点で5〜300μmが好ましく、7〜100μmであればより好ましい。膜厚が5μm以上であると、実用的な強度の高分子電解質膜が得られるため好ましく、300μm以下であると、膜抵抗自体が小さくなる高分子電解質膜が得られやすいので好ましい。膜厚は、高分子電解質組成物における高分子電解質の濃度及び支持基材上の塗膜の塗布厚により制御できる。
(含浸法)
次に、含浸法により高分子電解質膜を形成する方法について説明する。
高分子電解質膜は、例えば、高分子電解質組成物を多孔質基材に含浸させ複合化することにより、複合膜として形成することができる。このような方法によれば、膜の強度や柔軟性、耐久性を更に向上することができる。
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布、フィブリル等が挙げられ、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系高分子、芳香族系高分子、または含フッ素高分子が好ましい。
この場合、多孔質基材の膜厚は、1〜100μmが好ましく、3〜30μmがより好ましく、5〜20μmが更に好ましい。また、多孔質基材の孔径は、0.01〜100μmが好ましく、0.02〜10μmがより好ましい。さらに、多孔質基材の空隙率は、20〜98%が好ましく、40〜95%がより好ましい。
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が固体高分子型燃料電池のイオン伝導膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明の共重合体の充填がより容易となり、100μm以下であると、共重合体への補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、イオン伝導性の抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
[ガス拡散層3]
ガス拡散層3は、固体高分子形燃料電池のガス拡散層としての機能を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。中でも、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
ガス拡散層3の厚みについては特に制限はないが、ガス拡散性の観点から、10〜1000μmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。
[ガスケット4]
ガスケット4には固体高分子形燃料電池のガスケットとしての機能を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。ガスケット4を形成する材料としては、例えば、アクリル変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。なお、ガスケット4の厚みは、高分子電解質膜1とセパレータ5の間を確実にシールできる程度のものであることが好ましい。
[セパレータ5]
セパレータ5は固体高分子形燃料電池のセパレータとしての機能を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。セパレータ5を形成する材料としては、例えば、カーボン系材料、金属系材料が挙げられる。中でも、電子伝導性が高く、電気化学反応で生じる電圧のロスが極力抑制できるものが好ましい。また、燃料電池の運転開始から定常運転までの起動性を高める観点から、高い熱伝導率を有する材料が好ましく、燃料ガスの散逸を防止するため、高いガスバリア性を有する材料が好ましい。
以上説明した固体高分子形燃料電池100は、本実施形態の触媒層を備えるため、発電性能に優れる。なお、固体高分子形燃料電池100は、燃料として水素ガス又は改質水素ガスを使用する形式はもとより、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
<膜−電極接合体10及び固体高分子型燃料電池100の製造方法>
次に、膜−電極接合体10及び固体高分子型燃料電池100の製造方法の好適な例について、膜−電極接合体10及び固体高分子型燃料電池100中の触媒層2の一方のみが本実施形態の触媒層に係るものである場合を例として説明する。
[膜−電極接合体の製造方法]
図2は、本実施形態の触媒層を備える膜−電極接合体(MEA)の好適な製造方法を説明するための断面図である。
本実施形態の触媒層を備える膜−電極接合体10は、例えば、高分子電解質膜1上に第一の触媒層6を形成し、第一の積層体20を得る工程(図2の(a)を参照)と、ガス拡散層3上に、本実施形態の触媒層に係る第二の触媒層2を形成し、第二の積層体30を得る工程(図2の(a)を参照)と、第一の積層体20及び第二の積層体30を、第一の積層体20の主面のうち第一の触媒層6が形成された面とは反対の面と、第二の積層体30の主面のうち第二の触媒層2が形成された面と、が接触するように積層し、加熱加圧する工程(図2の(b)を参照)と、を備える方法により製造できる。
このような製造方法によれば、発電性能に優れた燃料電池を作製できる膜−電極接合体10を容易に製造することができる。
以下、各工程について更に詳細に説明する。
高分子電解質膜1上に第一の触媒層6を形成し、第一の積層体20を形成する工程においては、まず、高分子電解質膜を準備する。なお、高分子電解質膜は、例えば上述の方法により作製することができる。また、触媒層塗布時の膨潤による皺発生防止の観点から、高分子電解質膜が別の支持基材上と貼り合わされた状態であるのも好適な態様である。この場合、第一の触媒層6を形成後に支持基材から剥離して使用すればよい。
次に、触媒並びに必要に応じ高分子電解質及び溶媒等の所望の成分を混合し、これらを含有する触媒インク(β)を調整する。なお、当該溶媒としては、例えば、水、1級〜3級のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられるが、中でも水又は水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。
そして、得られた触媒インク(β)を、高分子電解質膜1上に塗布し、乾燥させることで、触媒層6が形成された高分子電解質膜1、すなわち、図2の(a)に示すような積層体20を得る。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.:Electrochemical Science and Technology,1988,135(9),2209に記載されている方法等が挙げられる。また、高分子電解質膜1上への触媒インクの塗布方法に特に制限はないが、例えば、スプレー法、ダイコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、転写法等の方法が挙げられる。高分子電解質膜1と触媒層6との接着性の観点からは、スプレー法、ダイコート法により塗布することが好ましい。
ガス拡散層3上に、本実施形態の触媒層に係る第二の触媒層2を形成し、第二の積層体30を得る工程においては、まず、ガス拡散層3を準備する。
そして、上記同様に触媒インク(β)を準備し、当該触媒インク(β)を、ガス拡散層3上に塗布し、乾燥させることで、触媒層が形成されたガス拡散層3を得る。なお、ここで、塗布方法及びその好ましい例等は、触媒層6の形成方法と同様である。
次に、触媒層が形成されたガス拡散層3を、有機溶媒(A)を含有する溶液中に浸漬後、取出し、付着溶液を拭き取ることにより、上記触媒層中に有機溶媒(A)を特定の割合で含有させ、本実施形態に係る触媒層を得る。すなわち、これにより、図2の(a)に示すような、本実施形態に係る触媒層2と、当該触媒層2が積層された第二の積層体30を得ることができる。
ここで、有機溶媒(A)を含有する溶液としては、例えば、有機溶媒(A)を含有する水溶液が挙げられる。なお、溶液中の有機溶媒(A)の含有量は、溶液の全質量に対して、1〜75質量%であることが好ましく、3〜60質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましい。また、浸漬時間は、1〜60分であることが好ましく、2〜30分であることがより好ましく、3〜15分であることが生産性の観点からも更に好ましい。浸漬時の溶液温度は、5〜50℃であることが好ましく、10〜40℃であることがより好ましい。
第一の積層体20及び第二の積層体30を、第一の積層体20の主面のうち第一の触媒層6が形成された面とは反対の面と、第二の積層体30の主面のうち第二の触媒層2が形成された面と、が接触するように積層し、加熱加圧する工程においては、まず、図2の(b)に示すように、第一の積層体20及び第二の積層体30を、第一の積層体20の主面のうち第一の触媒層6が形成された面とは反対の面と、第二の積層体30の主面のうち第二の触媒層2が形成された面と、が接触するように積層する。
ここで、必要に応じて、図2の(b)に示すように、第一の積層体20の主面のうち第一の触媒層6が形成された面にガス拡散層3を積層してもよい。
そして、積層方向から、加熱加圧することにより、第一の積層体20、第二の積層体30及び必要に応じて積層したガス拡散層3が接合され、膜−電極接合体10を得ることができる。
このような方法によれば、加熱加圧により高分子電解質膜1と接着される触媒層2が、本実施形態に係る触媒層であることから、加熱加圧によって接合する場合であっても、触媒層2と高分子電解質膜1との接着性に優れ、結果として、発電特性に優れる固体高分子型燃料電池を製造できる膜−電極接合体10を得ることができる。
ここで、加熱加圧の際の温度及び圧力は、50〜250℃及び1〜100MPaであることが好ましく、80〜200℃及び3〜70MPaであることがより好ましく、100〜180℃、3〜50MPaであることが更に好ましい。
また、上述の方法においては、触媒層2が本実施形態に係る触媒層である場合について説明したが、触媒層2及び触媒層6の両方が本実施形態に係る触媒層であってもよい。この場合、得られた第一の積層体20を、第二の積層体30を作製する場合と同様に、有機溶媒(A)を含有する溶液に浸漬させればよい。
また、上述の方法においては、触媒層を形成した後、有機溶媒(A)を含有する溶液に浸漬させることにより、本実施形態に係る触媒層を作製しているが、例えば、触媒インク(β)にあらかじめ所定量の有機溶媒(A)を含有させる方法により、本実施形態に係る触媒層を形成させてもよい。
さらに、あらかじめ有機溶媒(A)を含有させた高分子電解質1を用いて第一の積層体20を準備するとともに、有機溶媒(A)を含有させない状態の第二の積層体30、すなわち、上述した触媒層が形成されたガス拡散層3を準備し、それらを上記と同様に積層して加熱加圧することにより、高分子電解質膜1に含まれている有機溶媒(A)を、加熱加圧時等の際に触媒層に移行させることによって、本実施形態に係る触媒層を形成させることもできる。この方法においては、高分子電解質膜1は、触媒層への移行が可能な程度の有機溶媒(A)を含むようにする。
以上、本実施形態の触媒層を備える膜−電極接合体(MEA)の好適な製造方法を説明したが、膜−電極接合体10の製造方法はこれに限定されるものではない。例えば、高分子電解質膜1の両面に、本実施形態に係る触媒層2を形成させた後、両面に触媒層2が形成された高分子電解質1を、1対のガス拡散層3で挟持し、加熱加圧する方法などによっても膜−電極接合体10を製造することができる。また本実施形態に係る触媒層と、当該触媒層が積層された、支持基材、電解質膜又はガス拡散層とを備える積層体のうちの好適なものを適宜使用することにより、積層順や工程等を変更することもできる。
[固体高分子形燃料電池100の製造方法]
固体高分子形燃料電池100は、例えば、上述のようにして得られた膜−電極接合体10をセパレータ5で挟持し、高分子電解質膜1とセパレータ5の間をガスケット4でシールすることにより製造できる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<物性測定方法>
ここで、実施例における物性測定方法は以下のとおりとした。
[イオン交換容量の測定]
加熱温度105℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて、測定に供する高分子電解質膜の乾燥質量を求めた。次いで、この高分子電解質膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、この高分子電解質膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、高分子電解質膜の乾燥質量と上記の中和に要した塩酸の量から、高分子電解質膜のイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
[分子量の測定]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、GPCの分析条件は下記とした。
(条件)
GPC測定装置:島津製作所社製 Prominence GPCシステム;
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−M(300mm(カラムの長さ)×7.8mm(カラムの径)、5μm(充填剤の径));
カラム温度:40℃;
移動相溶媒:DMF(LiBrを10mmol/dmになるように添加);
溶媒流量 :0.5mL/min;
検出器 :RI
<高分子電解質膜の製造>
[合成例]
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル52.8g(284mmol)、炭酸カリウム43.1g(312mmol)、N−メチルピロリドン500g、トルエン250gを加えた。バス温160℃で3.5時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、120℃まで放冷し、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン114g(397mmol)を加えた。バス温を180℃に昇温し、7時間保温撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール2503gと6mol/L塩酸501gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物148gをN−メチルピロリドン500gに溶解し、不溶物を濾過した後、メタノール2503gと6mol/L塩酸501gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、メタノールで洗浄し、乾燥し下記式(E)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体144gを得た。
なお、当該前駆体の分子量をGPCにより測定したところ、Mnが1400であり、Mwが2800であった。
Figure 2012134138
ここで、式(E)中、nは繰り返し単位数を表す。
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル7.07g(32.4mmol)、N−メチルピロリドン400gを加え、内温65℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に冷却し、2,2’−ビピリジル6.06g(38.8mmol)、イオン交換水0.47gを加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(E)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体13.4g、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)80.0g(153mmol)、亜鉛粉末15.9g(243mmol)、N−メチルピロリドン1200gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、メタンスルホン酸1質量部とN−メチルピロリドン9質量部との混合溶液3.51g、を加え、50℃で30分間撹拌した。これに、上記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、2mol/L塩酸水溶液6720gに投入し、室温で1時間撹拌した。生じた沈殿を濾過した後、2mol/L塩酸水溶液3200gを加え、室温で30分間撹拌し、濾過し、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水1600gと、メタノール1600gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、イオン交換水で洗浄、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(F)81.6gを得た。
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
まず、上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(F)40.3g、イオン交換水99.2g、無水臭化リチウム26.6g(306mmol)及びN−メチルピロリドン826gをフラスコに入れ、バス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸水溶液3970gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過し、メタノール50質量部と6mol/L塩酸水溶液50質量部との混合溶液1985gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまでイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、内温90℃以上に昇温し、約15分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、7回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(i)で示される繰り返し単位と、下記式(ii)で示されるセグメントとを含むポリマー(BCP)を得た。
Figure 2012134138

Figure 2012134138
ここで、式(ii)中、nは繰り返し単位数を表す。
なお、得られたポリマー(BCP)の重合度及びイオン交換容量は以下のとおりであった。
共重合体Mw :837000
イオン交換容量:4.8meq/g
[製膜]
上記合成例で得られた、ポリアリーレン系ブロック共重合体BCPをN−メチルピロリドンに溶解して、濃度が5.5wt%の溶液を調製した。得られた溶液を、支持基材のPET(東洋紡績社製PETフィルム、E5000グレード厚さ100μm)を用いて、後述の製膜条件に記載の方法で膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。
(製膜条件)
キャスト製膜について、連続乾燥炉を用いて行った。すなわち、高分子電解質溶液を、膜厚可変型ドクターブレードを用いて所望の膜厚へと調整し、支持基材上に連続的に流延塗布して、連続的に乾燥炉(設定温度100℃、該乾燥炉の温度誤差は設定温度に対して−2℃以内であり、乾燥炉全体の温度分布(加熱ゾーン)は98〜100℃である)へと入れていき、大部分の溶媒を除去した。なお、乾燥時間(高分子電解質膜が乾燥炉に入炉してから出炉するまでの時間)は、33分とした。乾燥後の高分子電解質膜を2N硫酸水溶液に2時間浸漬後、イオン交換水で洗浄して、更に風乾することで、高分子電解質膜を作製した。
<実施例1、2及び比較例1:燃料電池の製造及びその評価>
[触媒インクの製造]
まず、膜−電極接合体を製造するために必要な触媒インクを作製した。すなわち、市販の5質量%ナフィオン溶液(高分子電解質の溶液、溶媒:水と低級アルコールの混合物)6mLに、50質量%白金が担持された白金担持カーボンを1.00g投入した後、さらにエタノールを13.2mL加えた。これにより得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで5時間攪拌して触媒インクを得た。なお、市販の5質量%ナフィオン溶液中における溶媒の質量含有率を分析したところ、ナフィオン溶液の総質量に対して、2−プロパノール約43質量%、エタノール約31質量%及び水約22質量%であった。
[触媒層の形成]
次に、上述した製造方法で得られた高分子電解質膜の片面の中央部における5.2cm角の領域に、スプレー法により上記の触媒インクAを塗布した。この際、吐出口から膜までの距離は6cmとし、ステージ温度は75℃に設定した。同様の方法で8回の重ね塗りを行った後、塗布物をステージ上に15分間放置し、これにより溶媒を除去してアノード触媒層を形成させた。得られたアノード触媒層は、その組成と塗布質量から算出して0.6mg/cmの白金を含有する。続いて、カソード触媒層として、ガス拡散層側に同様に触媒インクを塗布して、0.6mg/cmの白金を含むカソード触媒層を形成したガス拡散層を得た。
(実施例1)
上述のようにして得られた、カソード触媒層が塗布されたガス拡散層を、有機溶媒(A)としてジエチレングリコールモノエチルエーテル50%の水溶液中に5分間浸漬後取出し、付着水を拭き取った。このカソード触媒層に含まれるジエチレングリコールモノエチルエーテルの含有率は、カソード触媒層の総質量を基準として0.4質量%であった。該カソード触媒層が塗布されたガス拡散層と、アノード触媒層が塗布された電解質膜を130℃、4分間熱プレスし膜−電極接合体を作製した。
(実施例2)
実施例1の有機溶媒(A)としてジエチレングリコールモノエチルエーテルの水溶液濃度を5%とした以外は、実施例1と同様の手法で実施した。このカソード触媒層に含まれるジエチレングリコールモノエチルエーテルの含有率は、カソード触媒層の総質量を基準として0.06質量%であった。
(比較例1)
カソード触媒層が塗布されたガス拡散層に何も処理せず、実施例1と同様の方法で膜−電極接合体を得た。
[燃料電池の特性評価]
得られた膜−電極接合体を用いて燃料電池を作製し、評価した。具体的には、0.2Vでの電流密度(A/cm)を比較した。該評価では高い電流密度が得られるほど、燃料電池としての発電特性が高いことを意味する。評価結果を表4に示す。
Figure 2012134138
実施例1、2は比較例1に比べ電流密度が高いことを確認した。すなわち、実施例1、2の触媒層によれば、燃料電池材料として用いた場合に高い発電特性が発現される。
1…高分子電解質膜、2,6…触媒層、3…ガス拡散層、4…ガスケット、5…セパレータ、10…膜−電極接合体(MEA)、20…第一の積層体、30…第二の積層体、100…固体高分子形燃料電池(燃料電池単セル)。

Claims (6)

  1. 固体高分子型燃料電池に使用される膜−電極接合体の触媒層であって、
    当該触媒層が、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有する有機溶媒(A−1)及びヒドロキシ基を少なくとも2個有する有機溶媒(A−2)から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒(A)を含有し、
    前記触媒層の総質量に対する有機溶媒(A)の含有率X質量%が下記式(α)を満たす、触媒層。
    0.001≦X≦1…(α)
  2. 有機溶媒(A)が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の触媒層。
    Figure 2012134138

    [式(1)中、kは1〜5の整数を表す。Rは2価の脂肪族基を表す。当該2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、ヒドロキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。]
  3. 有機溶媒(A)が、100℃以上300℃未満の沸点を有する、請求項1又は2に記載の触媒層。
  4. 有機溶媒(A)が、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール及びジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項2又は3に記載の触媒層。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒層と、
    当該触媒層が積層された、支持基材、電解質膜又はガス拡散層と、を備える積層体。
  6. 高分子電解質膜上に第一の触媒層を形成し、第一の積層体を得る工程と、
    ガス拡散層上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の第二の触媒層を形成し、第二の積層体を得る工程と、
    前記第一の積層体及び前記第二の積層体を、前記第一の積層体の主面のうち前記第一の触媒層が形成された面とは反対の面と、前記第二の積層体の主面のうち前記第二の触媒層が形成された面と、が接触するように積層し、加熱加圧する工程と、を備える、膜−電極接合体の製造方法。

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