JP2004303541A - 高分子積層膜、その製造方法およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】[1] (イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜および(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜を有することを特徴とする積層膜。
[2] (ロ)が炭化水素系高分子電解質膜であることを特徴とする上記[1]記載の積層膜。
[3] (ロ)が芳香族炭化水素系高分子電解質膜であることを特徴とする上記[1]〜[2]何れかに記載の積層膜。
[4] (イ)が、少なくとも片面の表層として存在することを特徴とする上記[1]〜[3]いずれかに記載の積層膜。
[5] (ロ)に(イ)を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液を塗布、乾燥することを特徴とする上記[1]〜[4]いずれかに記載の積層膜の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜に関し、詳しくは高分子電解質の積層膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
電解質膜は、一次電池、二次電池、あるいは固体高分子型燃料電池等の電気化学デバイスの隔膜として用いられている。例えば、側鎖に超強酸としてパーフルオロアルキルスルホン酸を有し、主鎖がパーフルオロアルカンであるパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜が、燃料電池としての特性に優れることから従来主に使用されてきている。しかし、このような高分子膜は、燃料電池中でセルの面から受ける圧力で変形してしまうという問題があり、機械的強度の向上が望まれていた。
【0003】
近年、上記電解質膜に替わり得るより安価な電解質膜の開発が活発化してきている。なかでも耐熱性に優れフィルム強度の高い芳香族ポリエーテルにスルホン酸基を導入した高分子電解質膜、すなわちスルホン酸基を有し主鎖が芳香族系である芳香族系高分子電解質膜が有望視されており、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン系(特許文献1)、スルホン化ポリエーテルスルホン系(特許文献2、3)等の高分子電解質膜が提案されている。
しかし、上記のような芳香族系電解質膜をプロトン伝導膜として用いた固体高分子型燃料電池は発電性能等の点でさらなる改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特表平11−502249号公報
【特許文献2】
特開平10−45913号公報
【特許文献3】
特開平10−21943号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の電解質膜の上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とを有する積層膜が、その目的を達成し得、燃料電池のプロトン伝導膜等として優れた特性を示すことを見出すとともに、さらに種々の検討を加えて本発明を完成した。
すなわち本発明は、(イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜および(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜を有することを特徴とする実用的に優れた積層膜、その製造方法、その用途を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層膜は、前記のように(イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜と(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜とを有することを特徴とする。
【0007】
具体的には(イ)と(ロ)の2層からなる積層膜、(イ)と(ロ)が交互に3層以上積層された積層膜、2種類以上の(イ)を積層させた層と(ロ)からなる積層膜、2種類以上の(ロ)を積層させた層と(イ)からなる積層膜、2種類以上の(イ)と2種類以上の(ロ)からなる積層膜、およびこれらを組み合わせた積層膜などが挙げられる。
また、本発明の積層膜を燃料電池用の高分子電解質膜として使用する場合には、(イ)が少なくとも片面において表層となっていることが好ましく、両面において表層となっていることがさらに好ましい。これにより発電性能をいっそう向上し得る。
また(イ)の膜は、全体の複合膜の重量に対して通常0.1wt%〜50wt%程度、好ましくは0.2wt%〜40wt%程度、特に好ましくは0.3wt%〜30wt%程度使用される。
【0008】
本発明における(イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子としては、例えば側鎖にパーフルオロアルキルスルホン酸を有し、主鎖がパーフルオロアルカンである高分子などが挙げられる。このような高分子の代表例としては、Nafion(デュポン社の登録商標、以下同様)などが挙げられる。
本発明における(イ)は上記のような高分子からなるものであるが、例えばNafionはアルドリッチ社から膜や溶液などの形で入手することが可能である。入手した膜をそのまま使用することもできるし、溶液をキャスト製膜して使用することも可能である。
【0009】
キャスト製膜として具体的には、高分子の溶液を基材に流延製膜した後、溶媒を除去することにより、高分子膜を製造する方法が挙げられる。
ここで、基材としては、溶媒への耐性があり、製膜後に膜が剥離できるものであれば特に制限はなく、通常ガラス板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ステンレス板、ステンレスベルト、シリコンウエハ等が用いられる。これらの基材は、必要に応じて、表面が離型処理、エンボス加工、つや消し加工がされているものも使用し得る。
【0010】
キャスト製膜する際の溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、水などが挙げられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。これらの溶媒の中で好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン/アルコール混合溶媒、塩化メチレン/アルコール/水混合溶媒などである。
流延塗布する方法としては、スプレー法、バーコーター法またはスピンコーター法を用いると均一な層ができるためこれらの方法が好ましく、とりわけスピンコーター法が好ましく、この方法を使用すると均一な薄層を形成できる。
キャスト製膜における膜厚は、溶液濃度、基板上への塗布厚等により制御できる。
【0011】
本発明の積層膜は、前記のような(イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜と(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜とを有する。
ここで、(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜は、前述の(イ)のパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜以外の高分子電解質からなるものであり、該電解質はイオン交換基として、例えば、−SO3H、−COOH、−PO(OH)2、−POH(OH)、−SO2NHSO2−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH2、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’+、−NH3 +等(R:アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基を有する高分子である。イオン交換基は、その一部または全部が対イオンとの塩を形成していても良い。
【0012】
かかる高分子電解質の代表例としては、例えば(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(B)主鎖の一部の水素原子がフッ素で置換された脂肪族炭化水素からなる高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(C)主鎖が主として芳香環からなる高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(D)主鎖に実質的に炭素原子を含まないポリシロキサン、ポリホスファゼンなどの高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(E)(A)〜(D)のスルホン酸基および/またはホスホン酸基導入前の高分子を構成する繰り返し単位から選ばれるいずれか2種以上の繰り返し単位からなる共重合体であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(F)主鎖あるいは側鎖に窒素原子を含み、硫酸やリン酸等の酸性化合物がイオン結合により導入された形の高分子電解質等が挙げられる。
【0013】
上記(A)の高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸、等が挙げられる。また上記(B)の高分子電解質としては、炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって作られた主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成されるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、例えば特開平9−102322号公報)や、炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって作られた膜に、α,β,β−トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質膜とした、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE膜(例えば、米国特許第4,012,303号及び米国特許第4,605,685号)等が挙げられる。
【0014】
上記(C)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されているものであってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホン酸基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 18, 1969 (1974) )等が挙げられる。
【0015】
また上記(D)の高分子電解質としては例えば、ポリホスファゼンにスルホン酸基が導入されたもの、Polymer Prep., 41, No.1, 70 (2000) に記載の、ホスホン酸基を有するポリシロキサン等が挙げられる。
上記(E)の高分子電解質としては、ランダム共重合体にスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入されたものでも、交互共重合体にスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入されたものでも、ブロック共重合体にスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入されたものでもよい。ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン−ジヒドロキシビフェニル共重合体が挙げられる(例えば、特開平11−116679号公報。)ブロック共重合体において、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を持つ電解質の具体例としては、例えば特開2001−250567号公報に記載のスルホン酸基および/またはホスホン酸基を持つブロックが挙げられる。
また上記(F)の高分子電解質としては例えば、特表平11−503262号公報に記載の、リン酸を含有せしめたポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0016】
本発明に使用される高分子電解質のイオン交換基当量は、通常0.01〜5mmol/g程度であり、好ましくは0.1〜4mmol/g程度であり、さらに好ましくは0.5〜3mmol/g程度である。
上記(A)〜(F)の高分子電解質の中でも好ましくは(A)、(B)、(C)、(E)、(F)等の主鎖が炭化水素系高分子からなる炭化水素系高分子電解質であり、さらに好ましくは(C)および主鎖が主として芳香環からなる(E)である。
【0017】
(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜は、上記のような高分子電解質からなるものであるが、その製法としては、例えば前記した溶媒キャスト法等を使用することができる。使用する基材、溶媒、流延塗布する方法として前記したと同様のものを挙げることができる。
(ロ)の膜の厚みは、特に制限はないが好ましくは10〜300μmであり、さらに好ましくは15〜200μmである。実用に耐える膜の強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには300μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚は溶液濃度、基板上への塗布厚等により制御できる。
【0018】
本発明の積層膜は、上記のような(イ)と(ロ)を有することを特徴とするものであるが、その製造方法としては、(イ)と(ロ)の膜自身を直接接合させる方法の他に、例えば(イ)に(ロ)を構成する非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質の溶液を塗布し乾燥する方法、(ロ)に(イ)を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液を塗布し乾燥する方法、(イ)を(ロ)を構成する非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質の溶液に浸漬し乾燥させる方法、(ロ)を(イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液に浸漬し乾燥させる方法、およびこれらを任意に組み合わせる方法などが挙げられる。
ここで接合させる方法においては、通常、加圧、加温下で実施されるが、(イ)及び/又は(ロ)は製膜途中のものすなわち溶媒を含んだものであることもできる。
【0019】
また接合させる方法においては、表層となる膜に後述のような触媒層があらかじめ塗布されたものを用いることもできる。例えば、(イ)/(ロ)/(イ)の3層からなる積層膜を得ようとするときには、(イ)の片側の面に触媒層を接合、または触媒層の上に(イ)を製膜し、これらを2つ作製し、触媒層が外側になるように(ロ)と接合して、触媒層/(イ)/(ロ)/(イ)/触媒層の構造の接合体を得ることもできる。得られた接合体は後述の燃料電池に好適に使用される。
【0020】
溶液を塗布し乾燥する方法や溶液に浸漬し乾燥する方法においては、溶液を構成する溶媒、塗布する方法としては前述のキャスト製膜の方法として述べたものと同じものを挙げることができる。
【0021】
上記のような積層膜を製造する方法の中では、(ロ)に(イ)を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液を塗布し乾燥する方法が好ましく用いられる。この方法においては(イ)を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液の溶媒として、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒が含まれていると(イ)と(ロ)の接合性が高まるために好ましい。さらに好ましくは塩化メチレン/アルコール/水混合溶媒である。ハロゲン系溶媒の含有量としては溶媒全量に対して1wt%以上であることが好ましい。
【0022】
(イ)を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液や(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質の溶液には、必要に応じ、高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤を、プロトン伝導能を著しく妨げない範囲内で含有しているものも使用し得る。また、(イ)や(ロ)は、機械的強度向上等の目的で多孔膜と複合化したものも用いることもできる。さらに、膜の機械的強度の向上などを目的として、電子線・放射線などを照射して架橋する方法が知られており、(イ)や(ロ)、およびこれらの積層膜に対してこの方法をも使用することも可能である。
【0023】
次に本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、積層膜の両面に、触媒とガス拡散層を接合することにより製造することができる。
ここで、ガス拡散層としては公知の材料を用いることもできる。なかでも多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
【0024】
また触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものも用いることができる。なかでも白金の微粒子を用いることが好ましい。
白金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されたものが好ましく用いられる。
また、カーボンに担持された白金をパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化したものを、ガス拡散層および/または高分子電解質膜に塗布・乾燥することにより触媒層とすることもできる。このものは、ガス拡散層、高分子電解質、および燃料気体の三者が接触する、いわゆる三相界面が効率よく構築されるために好ましく用いられる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988,135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り膜の特性評価は以下の方法で行った。
燃料電池特性評価
カーボンに担持された白金触媒をNafion(デュポン社の登録商標)の低級アルコール溶液(10wt%含水)(Aldrich社製)と混合してペースト状とし、電極材料としての多孔質性のカーボン織布に塗布・乾燥し、触媒が固定された電極材料としての集電体を得た。この集電体を膜の両面に重ね合せ、集電体−膜接合体を得た。該接合体の一面に加湿空気、他面に加湿水素ガスを流し、該接合体を80℃に保ち、その発電特性を測定することによって行った。
【0026】
接合特性評価
燃料電池特性評価後、集電体−膜接合体を取出し、カーボン織布と膜を剥離させて触媒層がカーボン織布に接合しているか、膜に接合しているかを調べた。
引っ張り試験
日本工業規格(JIS K 7127)に準拠して23℃、相対湿度50%下において試験速度10mm/minで測定した。
【0027】
参考例1
フラスコに窒素下で4,4’−ジヒドロキシビフェニル55.9g(300mmol)、m−ジブロモベンゼン66.1g(280mmol)、ベンゾフェノン200gを入れて100℃に加熱した。系内は均一であった。さらに炭酸カリウム44.2gとトルエン60mlを入れて攪拌し、発生した水をトルエンの共沸脱水下で除去し、さらにトルエンを留去した。ここに臭化銅(I)143mgを添加し、フラスコを200℃に加熱して6時間反応させた。反応後、反応液をメタノールに投入し、析出した重合物(a)を36g得た。収率は48%であった。
次いで、フラスコに、スミカエクセルPES5003P(住友化学工業製、末端水酸基型ポリエーテルスルホン)を72.0g、上記(a)を24.0g入れて、N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略称する)480mlで攪拌溶解させた。さらに炭酸カリウム2.52g、デカフルオロビフェニル4.81gを加えて80℃で4時間、100℃で2時間、110℃で1時間反応させた。その後、反応液を大量の塩酸酸性メタノールに滴下し、メタノールに不溶の沈殿物をろ過回収し、80℃にて減圧乾燥して96gのブロック共重合体(b)を得た。
【0028】
得られたブロック共重合体(b)90gを濃硫酸450mlに溶解させて60℃で3日間反応後、反応液を大量の氷水中に滴下し、得られた沈殿物をろ過回収した。さらに洗液が中性になるまでイオン交換水による洗浄を繰り返した後、40℃にて減圧乾燥してスルホン化した芳香族系高分子(c)を得た。
(c)をDMAcに溶解させ15wt%溶液を調製した。ガラス基板上に流延塗布し、80℃で乾燥させることによってスルホン化した芳香族系高分子の膜(d)を得た。(d)の膜厚は47μmであった。DMAcを展開溶媒としたGPC測定による分子量の測定結果、数平均分子量はポリスチレン換算で56000であった。また、得られた高分子の単位重さあたりのスルホン酸基のモル数(イオン交換容量)は1.62meq/gであった。
【0029】
実施例1
(d)を4cm四方に切り出し、スピンコーターのガラス板上に固定した。ガラス板を1000rpmで回転させながら、Nafionの5wt%アルコール/水溶液(アルドリッチ社製)を2秒間かけて回転の中心に滴下してスピンコートし、60℃で乾燥した。同じ面に同様のスピンコートの操作を3回繰り返した。その後に反対側の面も同様にスピンコートし、目的の積層膜(e)を得た。(e)の膜厚は53μmであった。膜の特性評価結果を表1に示す。
【0030】
実施例2
Nafionの5wt%アルコール/水溶液3gに塩化メチレンを4g添加して調製した溶液を用い、片側に8回スピンコートした以外には実施例1と同様に操作を行って積層膜(f)を得た。(f)の膜厚は55μmであった。膜の特性評価結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
(d)の膜の特性評価結果を表1に示す。
【0032】
比較例2
Aldrich社製Nafion膜(膜厚50μm)の特性評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例3、比較例3
(e)及び上記と同じNafion膜(膜厚50μm)の引っ張り試験を行った。膜の弾性率および膜の破断点応力を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
上記の実施例、比較例から、パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜と非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜とを有する積層膜は、集電体と電解質膜界面の接合性が改善され、燃料電池の発電特性が向上することがわかる。しかも該積層膜はパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜と比較すると、高い弾性率、高い破断点応力を示すなどの優れた機械的特性も有することもわかる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の積層膜は、(イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜および(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜を有することにより、発電特性のみならず機械的強度の点でも優れた電解質膜となり得る。
Claims (10)
- (イ)パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子膜および(ロ)非パーフルオロアルキルスルホン酸系高分子電解質膜を有することを特徴とする積層膜。
- (ロ)が炭化水素系高分子電解質膜であることを特徴とする請求項1記載の積層膜。
- (ロ)が芳香族炭化水素系高分子電解質膜であることを特徴とする請求項1〜2何れかに記載の積層膜。
- (イ)が、少なくとも片面の表層として存在することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の積層膜。
- (イ)が、積層膜の両面において表層として存在することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の積層膜。
- 積層膜中に(イ)が0.1wt%〜50wt%存在することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の積層膜。
- (ロ)に(イ)を構成するパーフルオロアルキルスルホン酸系高分子の溶液を塗布、乾燥することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の積層膜の製造方法。
- 溶媒にハロゲン系溶媒が1wt%以上含まれていることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 請求項1〜6記載の積層膜を用いてなることを特徴とする燃料電池。
- 触媒層が、触媒が担持されたカーボンとパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂との混合物からなることを特徴とする請求項9記載の燃料電池。
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