JP2012131899A - 樹脂組成物、樹脂シート、金属ベース回路基板、インバータ装置、及びパワー半導体装置 - Google Patents
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Abstract
金属ベース回路基板と絶縁層との密着性、およびヒートサイクル性に優れ、かつ十分な絶縁抵抗を有する樹脂組成物、樹脂シート、金属ベース回路基板、インバータ装置、及びパワー半導体装置を提供する。
【解決手段】
(A)フェノキシ樹脂、(B)25℃における溶融粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂(C)無機充填剤、及び(D)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(D)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
これらの電力制御装置は、その耐圧や電流容量に応じて各種機器に応用されている。特に、近年の環境問題、省エネルギー化推進の観点から、各種電気機械へのこれら電力制御装置の使用が年々拡大している。
特に車載用電力制御装置について、その小型化、省スペ−ス化と共に電力制御装置をエンジンル−ム内に設置することが要望されている。エンジンル−ム内は温度が高く、温度変化が大きいなど過酷な環境であり、また、放熱面積の大きな基板が必要とされる。このような用途に対して、より一層放熱性に優れる金属ベース回路基板が注目されている。
これまで、アクリルゴムを用いることにより、低弾性率化を図った樹脂組成物を絶縁層に用いることが開示されている(例えば、特許文献1、2)。
しかし、アクリルゴムを用いた場合は、ヒートサイクル試験において十分な性能が得られない問題があった。
しかし、シリコーン樹脂を用いた場合、金属板との密着性に劣るため、金属ベース板との密着力が低下し、金属板と絶縁樹脂間に吸湿等により、絶縁破壊電圧値が低下する問題があった。
[1] (A)フェノキシ樹脂、(B)25℃における溶融粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂(C)無機充填剤、及び(D)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(D)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
[2] 前記(A)フェノキシ樹の含有量は、樹脂組成物全体の10〜40重量%である[1]に記載の樹脂組成物
[3] 前記(B)25℃における溶融粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂が、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂である [1]または[2]に記載の樹脂組成物
[4] 前記(B)25℃での粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂が、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂である[1]または[2]に記載の樹脂組成物
[5] 金属ベース回路基板上に[1]乃至[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層を金属箔に積層してなる樹脂シート。
[6]前記[5]に記載の樹脂シートを金属ベース回路基板上に積層してなる積層板。
[7]金属ベース回路基板上に[1]乃至[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層を介して導体回路が形成されてなる金属ベース回路基板。
[8]前記[7]に記載の金属ベース回路基板上に回路部品が搭載されていることを特徴とするインバータ装置。
[9]前記[7]に記載の金属ベース回路基板上に回路部品が搭載されていることを特徴とするパワー半導体装置。
本発明の樹脂組成物は(A)フェノキシ樹脂、(B)25℃における溶融粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂、(C)無機充填剤、及び(D)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(D)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%である樹脂組成物である。これにより、金属ベース回路基板と絶縁層との密着性、及びヒートサイクル性に優れ、十分な絶縁抵抗を有する。また本発明の樹脂組成物は、良好な絶縁破壊電圧値を示す。
また(A)フェノキシ樹脂としては、これら中の骨格を複数種類有した構造を用いることもできるし、それぞれの骨格の比率が異なるフェノキシ樹脂を用いることができる。さらに異なる骨格のフェノキシ樹脂を複数種類用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を複数種類用いたり、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
なお樹脂組成物全体とは、例えば、溶剤等を用いたワニスの場合は、溶剤を除く固形を意味し、液状エポキシ、カップリング剤等の液状成分は、樹脂組成物に含まれる。
なお、本発明における(B)25℃における粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂とは、E型粘度計を用いて、温度25℃、せん断速度5.0rpmの条件で測定した場合における溶融粘度が、2Pa・s以下のエポキシ樹脂をいう。
また、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いると弾性率を低くすることができる。水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、以下の式(1)で表わされるものが例示される。
樹脂組成物より形成される絶縁層に、結晶性シリカまたは非晶性シリカが含まれる場合、絶縁信頼性に優れる金属ベース回路基板を得ることができる。
特に、結晶性シリカまたは非晶性シリカを用いた金属ベース回路基板は、プレッシャークッカテスト等の水蒸気雰囲気下で絶縁性が高く、金属、アルミ線、アルミ板等の腐食が少ない点で好適である。
さらに、 溶融粘度調整やチクトロピック性の付与の目的においては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグシウム、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。
これは、フェノキシ樹脂、及び無機充填剤との組み合わせによる相乗効果によるものと推察される。
前述した樹脂組成物を用いた樹脂シートは、樹脂組成物からなる絶縁層を金属箔上に形成することにより得られる。
まず、絶縁層を形成するため本発明の樹脂組成物を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンシクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール等の有機溶剤中で、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶解、混合、撹拌して樹脂ワニスを作製する。
前記塗工装置は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターおよびカーテンコーターなどを用いることができる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター、およびコンマコーターを用いる方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂シートを効率よく製造することができる。
その結果、基板に半導体素子、抵抗部品等を表面実装した場合、歪が大きくなり、十分な熱衝撃信頼性を得ることができなくなる場合がある。250μmを超えると、表面実装した部分の歪量が少なく、良好な熱衝撃信頼性を得ることができるが、熱抵抗が増大するため、十分な放熱性を得ることができない。
これらの中でも、金属箔をエッチングにより導体回路として用いることができる点で銅が好ましい。
また、低熱膨張の観点から、鉄−ニッケル合金が好ましい。
また、前記金属箔は、キャリア箔付き極薄金属箔を用いることもできる。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることで前記絶縁層の両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法などで回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。
本発明の金属ベース回路基板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、金属板の片面又は両面に前記樹脂シートの樹脂面が接するように積層し、プレス等を用い加圧・加熱硬化させて樹脂層を形成することにより金属ベース回路基板を得ることができる。
金属ベース回路基板は、金属箔をエッチングすることにより、回路形成し、用いることができる。
多層にする場合は、前記金属ベース回路基板に回路形成後、さらに樹脂シートを積層し、前記同様エッチングすることにより回路形成することにより多層の金属ベース回路基板を得ることができる。
なお、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子、や電子部品が実装できるよう接続用電極部を露出させても良い。
前記同様エッチングにより回路形成して用いることもできる。
ここでインバータ装置とは直流電力から交流電力を電気的に生成する( 逆変換する機能を持つものである。
またパワー半導体装置とは、通常の半導体素子に比べて高耐圧化、大電流化、高速・高周波化されている特徴を有し、一般的にはパワーデバイスと呼ばれ、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーM O S F E T 、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ( IG B T) 、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ( G T O ) 、トライアックなどが挙げられる。
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(I)(三菱化学製、1256、重量平均分子量5.1×104)
(2)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(II)(新日鐵化学製、YP−50S、重量平均分子量5.8×104)
(3)ビスフェノールF/ビスフェノールAフェノキシ樹脂(三菱化学製、4275、重量平均分子量6.0×104、ビスフェノールF骨格とビスフェノールA骨格の比率=75:25)
(4)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、YX−8000,エポキシ当量205、25℃での溶融粘度1.85Pa・s)
(5)ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(DIC製、HP−820,エポキシ当量210、25℃での溶融粘度1.50Pa・s)
(6)ビスフェノールF型エポキシ樹脂の分子蒸留精製品(DIC製、830CRP、エポキシ当量159、25℃での溶融粘度1.30Pa・s)
(7)ジシアンジアミド(デグサ製)
(8)2−フェニルイミダゾール(四国化成製、2PZ)
(9)γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製、KBM−403)
(10)アルミナ(電気化学工業製、AS−50)
(11)窒化ホウ素(電気化学工業製、SPG−3)
(12)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC製、830S、エポキシ当量170、25℃での粘度3.80Pa・s)
(13)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、850S、エポキシ当量190、25℃での粘度13.1Pa・s)
(14)シリコーン樹脂(I)(モメンティブパフォーマンズ製XE14−A0425(A)、ポリアルケニルシロキサン)
(15)シリコーン樹脂(II)(モメンティブパフォーマンズ製XE14−A0425(B)、ポリアルキル水素シロキサン)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(I)(三菱化学製、1256、重量平均分子量5.1×104)16.8重量%、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、YX−8000,エポキシ当量205、25℃での粘度1.85Pa・s)19.7重量%、2−フェニルイミダゾール(四国化成製2PZ)0.5重量部、シランカップリング剤としてγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM−403)3.0重量部、アルミナ(電気化学工業製、AS−50)60.0重量部をシクロヘキサノンに溶解・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。
金属箔として、厚さ70μmの銅箔(古河サーキットホイル製、GTSMP)を用い、銅箔の粗化面に樹脂ワニスをコンマコーターにて塗布し、100℃で3分、150℃で3分加熱乾燥し、樹脂厚100μmの樹脂付き銅箔を得た。
前記で得られた樹脂シートと金属板として2mm厚のアルミニウム板を張り合わせ、真空プレスで、プレス圧30kg/cm2で80℃30分、200℃90分の条件下で、プレスし金属ベース回路基板を得た。
(4)インバータ装置の作製
前記金属ベース回路基板に。回路形成するため、回路以外の不要な部分をエッチングにより除去し、回路を形成後、所定の部分に試験用の回路部品を搭載し、半田接合を行うことにより、インバータ装置を得た。
表1、及び表2に記載の配合表に従い樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスを調製し、樹脂シート、金属ベース回路基板、およびインバータ装置を作製した。
また、各実施例および比較例により得られた金属ベース回路基板について、次の各評価を行った。評価結果を表1、及び表2に示す。
上述の各評価について、評価方法を以下に示す。
前記実施例、及び比較例で得られた金属ベース回路基板から100mm×20mmの試験片を作製し、23℃における金属ベース回路基板と樹脂層とのピール強度を測定した。
尚、ピール強度測定は、JIS C 6481に準拠して行った。
得られた金属ベース回路基板を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/4だけ残した試料を作製し、JIS C 6481に準拠して評価した。評価は、前処理をしない場合と、前処理をしない場合と、121℃、100%、(PCT処理)を4時間行った後の場合において、288℃の半田槽に30秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。
評価基準:異常なし
:膨れあり(全体的にフクレの箇所がある)
前記金属ベース回路基板を100mm×100mmにグラインダーソーでカットした後、端縁部から約30mmの位置から外側部分の銅箔をエッチングにより除去し、試料を作成した。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、銅箔と金属板に電極を接触せしめて、両電極に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。金属ベース回路基板の樹脂部が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
得られた金属ベース回路基板の密度を水中置換法により測定し、また、比熱をDSC(示差走査熱量測定)により測定し、さらに、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した。
そして、熱伝導率を以下の式から算出した。
熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m3)×比熱(kJ/kg・K)×熱拡散率(m2/S)×1000
前記で得られたインバータ装置を用い、−40℃7分〜+125℃7分を1サイクルとして5000回のヒートサイクル試験を行った後、顕微鏡で半田部分のクラックの有無を観察した。半田部分のクラックの発生が10%以上あるものは不良とし、半田クラックの発生が10%未満のものを良好と判定した。
評価基準:良好
:不良(クラック発生率10%以上)
比較例1及び比較例2では絶縁破壊電圧値が低下した。
これは、比較例1、2ともに25℃での粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂を用いなかったため、樹脂の流動性が悪化し、絶縁層中に微小なボイドが発生したことによって、絶縁破壊電圧値が低下したものと推察される。
比較例3は、ピール強度が低下し、ヒートサイクル試験において実用可能なレベルに達していなかった。
これは、フェノキシ樹脂を用いなかったためと推察する。
比較例4及び比較例5では、半田耐熱性が悪化した。
これは、比較例4は、γ−グリシドキシプロピルトリトメキシシランの量が少ないため、また比較例5は、γ−グリシドキシプロピルトリトメキシシランの量が多すぎるためと推察される。
比較例6は、無機充填剤を用いなかったため、熱伝導率が十分小さくならなかった。
比較例7は、シリコーン樹脂を用いたものである。金属板と樹脂間に吸湿を起こし、半田耐熱性が低下した。また密着性が悪化した。
一方、実施例1〜9で得られた本発明の樹脂組成物、樹脂シート箔を用いた金属ベース回路基板は、ピール強度が高く、半田耐熱性に優れ、十分な絶縁破壊電圧値、並びに高い熱伝導率を有した。また、インバータ装置を用いた、ヒートサイクル試験においても良好な結果であった。
従って、本発明で特定した樹脂組成物を用いることにより、性能の優れた金属ベース回路基板、インバータ装置、及びパワー半導体装置を得られることが分かった。
Claims (9)
- (A)フェノキシ樹脂、(B)25℃における溶融粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂(C)無機充填剤、及び(D)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(D)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
- 前記(A)フェノキシ樹の含有量は、樹脂組成物全体の10〜40重量%である請求項1に記載の樹脂組成物
- 前記(B)25℃における溶融粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂が、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1または2に記載の樹脂組成物
- 前記(B)25℃での粘度が2Pa・s以下のエポキシ樹脂が、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂である請求項1または2に記載の樹脂組成物
- 金属ベース回路基板上に請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層を金属箔に積層してなる樹脂シート。
- 前記請求項5に記載の樹脂シートを金属ベース回路基板上に積層してなる積層板。
- 金属ベース回路基板上に請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層を介して導体回路が形成されてなる金属ベース回路基板。
- 前記請求項7に記載の金属ベース回路基板上に回路部品が搭載されていることを特徴とするインバータ装置。
- 前記請求項7に記載の金属ベース回路基板上に回路部品が搭載されていることを特徴とするパワー半導体装置。
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