JP2012131223A - クロメートフリー着色塗装金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境負荷性の高い6価クロムを含まず、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性等に極めて優れ、しかも従来のプレコート金属板よりも少ない製造工程で安価に製造できるクロメートフリー着色塗装金属板を提供する。
【解決手段】金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板。前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、環境負荷性の高い6価クロムを含まない着色塗膜(α)が、金属板の少なくとも片面に形成された、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性等に極めて優れ、しかも従来のプレコート金属板よりも少ない製造工程で安価に製造できるクロメートフリー着色塗装金属板に関する。
家電用、建材用、自動車用などに、従来の成形加工後に塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した有機皮膜を被覆したプレコート鋼板が使用されるようになってきた。このプレコート鋼板は、防錆処理を施した鋼板やめっき鋼板に着色した有機皮膜を被覆したものであって、一般的に、美麗な外観を有しながら、加工性を有し、耐食性が良好であるという特性を有している。
例えば、特許文献1には、皮膜の構造を規定することによって加工性と耐汚染性、硬度に優れたプレコート鋼板を得る技術が開示されている。一方、特許文献2には、特定のクロメート処理液を用いることで端面耐食性を改善したプレコート鋼板が開示されている。これらのプレコート鋼板は、めっき皮膜、クロメート処理皮膜、クロム系防錆顔料を添加したプライマー(下塗り)皮膜の複合効果によって、耐食性とともに、加工性、塗料密着性を有し、加工後塗装を省略して、生産性や品質改良を目的としている。
しかしながら、クロメート処理皮膜およびクロム系防錆顔料を含む有機皮膜から溶出する可能性のある6価クロムの環境への負荷を考慮し、最近ではノンクロム防錆処理、ノンクロム有機皮膜に対する要望が高まっている。これらのような「ノンクロム」処理に関しては、例えば、特許文献3や特許文献4に、耐食性に優れるノンクロム系プレコート鋼板が開示されており、すでに実用化されている。
これらのプレコート鋼板に用いられる塗装は、塗装膜厚が10μm以上の厚いものである。その上、大量の溶剤系塗料を使用するため、インシネレーターや臭気対策設備等の専用の塗装設備が必要であり、塗装専用ラインで製造されることが一般的である。すなわち、塗装の原板となる鋼板の製造工程の他に「余分な塗装工程」を通るため、塗装に要する材料費の他にも多くの費用がかかる。したがって、得られるプレコート鋼板は高価なものにならざるを得ない。
しかしながら、ユーザーニーズの多様化により、家電や内装建材等の日常使用条件での耐久性を有すれば充分に目的を達する分野での意匠性鋼板の需要もあり、より低価格の製品が求められている。すなわち、従来の高価なプレコート鋼板だけでは、多様化した需要に応えるのに充分ではない。
このような多様化したニーズに対して、安価に製造ができる意匠性金属板として、例えば、特許文献5には、厚さ5μm以下の着色樹脂層を設けた着色鋼板が、特許文献6には特定の粗度を有する鋼板表面に発色皮膜を有する着色鋼板が開示されている。しかしながら、これらの着色鋼板はクロメート処理皮膜を設けることで耐食性を担保する設計となっているため、昨今のノンクロム化ニーズに応えることができない。加えて、取り扱い時やプレス成形加工時に入る傷に対する耐性やプレス成形加工し、着色層が伸ばされた部位の隠蔽性まで考慮した設計にはなっていないため、傷入り部や成形加工部の外観が著しく低下するという課題も有していた。
特開平8−168723号公報 特開平3−100180号公報 特開2000−199075号公報 特開2000−262967号公報 特開平5−16292号公報 特開平2−93093号公報
本発明の目的は、前記現状に鑑み、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性等に極めて優れ、しかも従来のプレコート金属板よりも少ない製造工程で安価に製造できるクロメートフリー着色塗装金属板を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、着色塗膜の造膜成分に特定の樹脂を使用し、且つ、金属板と着色塗膜との間に、特定の下地処理層を配置することが、上記目的の達成に極めて効果的なことを見出した。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は上記知見に基づくものである。より詳しくは、本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって;
前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することを特徴とするものである。
本発明者の知見によれば、本発明において上記効果が達成されるのは、下記の理由によるものと推定されている。
着色塗装金属板の耐湿性、耐食性、加工性(加工部の密着性含む)、耐傷付き性等の諸性能を向上させるためには、上層着色塗膜自身の該性能を向上させることはもちろんのこと、下地の金属板との密着性を担保することが重要である。上層着色塗膜と下地金属板との密着性が悪いと、水、酸素等の腐食因子が塗膜下に侵入し易くなり、腐食を早め、錆の発生や塗膜の膨れ等の意匠性への不具合が発生する場合がある。加えて、プレス成形時、取り扱い時、輸送時等で塗膜に何らかの物理的な負荷がかかった際に、塗膜の剥離や傷入りが発生し易くなり、意匠性への不具合が発生する場合もある。
これらの不具合を解消し、前述したような諸性能を担保するという観点からは、改良すべき「数多くの要素」が列挙可能である。本発明者は、鋭意検討の結果、これらの「数多くの要素」の中でも、特に「上層着色塗膜と下地金属板との密着性」を担保することが重要との結論に達した。
本発明者は、上記知見に基づき更に研究を進めた結果、上層着色塗膜の造膜成分に特定の樹脂を使用し、且つ、上層着色塗膜と下地金属板との間に、特定の構成を有する「下地処理層」を設けることで、上記の上層着色塗膜と下地金属板との「密着性」を大幅に改善でき、それにより、本発明の上記目的を達成可能であることを見出した。
本発明は、例えば、以下の態様を含むことができる。
[1]金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって;
前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
[2]前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることを特徴とする、[1]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[3]前記ポリエステル樹脂(A1)及び前記ポリエステル樹脂(a)に含有するスルホン酸基が、アルカリ金属によって中和されたスルホン酸金属塩基であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[4]前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)の少なくとも一方の樹脂構造中にビスフェノール構造を含有することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[5]前記ポリエステル樹脂(A1)が硬化剤(D)で硬化されていることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[6]前記着色塗膜(α)が、アクリル樹脂(A2)を更に含有することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[7]前記着色塗膜(α)が、ウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を更に含有することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[8]前記着色顔料(B)がカーボンブラック(Bl)を含有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[9]前記カーボンブラック(Bl)の前記着色塗膜(α)中の含有量をX質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをYμmとしたとき、X×Y≧20、且つ、X≦15を満足することを特徴とする、[8]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[10]前記着色塗膜(α)中に、前記カーボンブラック(Bl)が平均粒子径20〜300nmの粒子で分散されていることを特徴とする、[8]または[9]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[11]前記着色塗膜(α)が、更に潤滑剤(E)を含有することを特徴とする、[1]〜[10]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[12]前記下地処理層(β)に更に、ポリフェノール化合物(c)、シリカ粒子(d)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[13]前記下地処理層(β)に更に、リン酸化合物(e)を含有することを特徴とする、[1]〜[12]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[14]前記着色塗膜(α)及び前記下地処理層(β)が、水系媒体を用いて塗布、加熱乾燥することで形成されていることを特徴とする、[1]〜[13]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、且つ、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性等に極めて優れている。加えて、従来のプレコート金属板よりも少ない製造工程で安価に製造可能である。このため、安価な高意匠、高付加価値環境対応型素材として非常に有望であり、各産業分野への寄与は非常に大きい。
(クロメートフリー着色塗装金属板)
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板である。本発明において、前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することが特徴である。
<塗膜構成成分の機能>
本発明者の知見によれば、上記した塗膜構成成分は、以下のような機能を有すると推定されている。
(α)着色塗膜
・スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1):塗膜の造膜成分であり、諸性能をバランスよく担保する塗膜物性を得る上で好適である。ポリエステル樹脂の構造中に含まれるエステル基は適度の凝集エネルギーを有しているため、塗膜のフィルム物性(伸びと強度のバランス)を高次元に高めることができる。すなわち、ポリエステル樹脂を塗膜の造膜成分として適用することは、加工性と耐傷付き性を高次元で両立する上で非常に有効である。
・着色顔料(B):塗膜に着色し、意匠性を付与し、高める。
・シリカ粒子(C):耐食性、耐傷付き性を改善する。
(β)下地処理層
・スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a):下地処理層の造膜成分であり、着色塗膜と同じ種類の樹脂(すなわち、ポリエステル樹脂)を使用することで、上層着色塗膜との相溶性を改善し、上層塗膜との密着性を向上させる。
・シランカップリング剤(b):末端にあるアルコキシシリル基の加水分解によりシラノール基が生成し、該官能基が下地金属板と化学結合を形成する。他末端にある有機官能基が下地処理層や着色塗膜中の造膜成分と化学結合を形成する。すなわち、下地金属板と上層塗膜とをカップリングし、密着性を改善する役割を担う。
(クロメートフリー着色塗装金属板の製法)
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の製法は特に制限されないが、着色塗膜(α)および下地処理層(β)が、それぞれの所定の成分を含む水系組成物を使用して、形成されていることが好ましい。より具体的には、着色塗膜(α)および下地処理層(β)は、水系組成物を塗布し、加熱乾燥することにより形成されることが好ましい。
(水系組成物)
ここに、「水系組成物」とは、水系溶媒を用いて構成された組成物を言う。「水系溶媒」とは、水が主成分(50質量%以上)である溶媒を言う。水系溶媒を用いることによって、有機溶剤系塗料を使用するための塗装専用ラインを余分に通板する必要がなくなるために、製造コストを大幅に削減することが可能である上に、VOCの排出も大幅に抑制できる等の環境面におけるメリットも有している。
必要に応じて、上記の「水系溶媒」に有機溶媒を加えることもできる。しかしながら、労働衛生上の観点から、「水系組成物」は労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定義される有機溶剤含有物(労働安全衛生法施行令の別表第六の二に掲げられた有機溶剤を重量の5%を超えて含有するもの)には該当しないものであることが好ましい。
(スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)とスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a))
本発明において、上層着色塗膜(α)を構成する前記ポリエステル樹脂(A1)と、下地処理層(β)を構成する前記ポリエステル樹脂(a)とは、「エステル結合を含む樹脂」として同一性を有する。本発明においては、このように、上層着色塗膜と下地処理層の造膜成分として、「同一性」を有するポリエステル樹脂を適用することで、上記した特定の構成を有する上層着色塗膜と下地処理層との密着性を大幅に改善できることが判明している。
本発明において、着色塗膜(α)を構成する前記ポリエステル樹脂(A1)と、下地処理層(β)を構成する前記ポリエステル樹脂(a)とは、同一の樹脂である必要はなく、エステル結合を含む樹脂であれば、特に制限はない。ここに、「同一の樹脂」とは、ポリエステル樹脂を合成する際に使用するモノマー成分が、50質量%以上一致する樹脂のことを指す。
上層着色塗膜(α)と下地処理層(α)との相溶性を改善し、それらの密着性を向上させる点からは、上層着色塗膜(α)の造膜成分たる前記ポリエステル樹脂(A1)と、下地処理層(β)の造膜成分たる前記ポリエステル樹脂(a)とは、同一の樹脂であることが好ましい。
着色塗膜(α)および下地処理層(β)が、それぞれの所定の成分を含む水系組成物を使用して、形成される場合、着色塗膜(α)を構成する前記ポリエステル樹脂(A1)と、下地処理層(β)を構成する前記ポリエステル樹脂(a)は「水性樹脂」を用いることが好ましい。ここに、「水性樹脂」とは、水溶性あるいは水分散性を有する樹脂を言う。より具体的には、ポリマー(ポリエステル樹脂)を1質量%の濃度で水に溶解させようとしたときに、加熱したり攪拌したりして均一化させる努力をした後に、25℃で24時間放置したときにポリマーが沈殿を生じることなく、相分離もせずに溶液が均一であることをいう。
(スルホン酸基)
本発明における前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)には樹脂構造中にスルホン酸基を含有する。ここに、上層着色塗膜(α)の造膜成分たる前記ポリエステル樹脂(A1)のスルホン酸基は、高い親水性を有しているため、ポリエステル樹脂の水系組成物中での安定性を高める(水系組成物の固化、凝集物の発生等を防止する)上でも好適である。特に後述する硬化剤(D)を併用する場合においては、水系組成物のpH変動が大きくなり、水系組成物の安定性が低下する場合があるが、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂を用いる場合は、水系組成物のpH変動の影響を受けにくく、水系組成物の安定性の低下を抑制することができる。加えて、着色顔料(B)が後述するカーボンブラック(B1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系組成物中で均一に分散させ、形成された着色塗膜に優れた意匠性を付与させる上でも樹脂構造中にスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂は好適である。下地処理層(β)の造膜成分たる前記ポリエステル樹脂(a)のスルホン酸基は、下地金属板との密着性を更に高める効果を有している。また、シランカップリング剤(b)を必須成分として含有する水系組成物は、前記シランカップリング剤(b)の縮合反応物の析出等により水系組成物の安定性を保持する(水系組成物中の凝集物の発生等を防止する)ことが一般的に難しいが、水系組成物中でスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)を共存させることによって、前記シランカップリング剤(b)の縮合反応物の析出を抑制することができる(水系組成物の安定性を高める効果を有している)。前記ポリエステル樹脂(A1)および前記ポリエステル樹脂(a)の双方にスルホン酸基を含有することによって、更に双方のポリエステル樹脂の相溶性が高まり密着性が向上する。また、スルホン酸基の上述した効果を得る観点では、スルホン酸基はアルカリ金属で中和されたスルホン酸金属塩基であることが好ましく、スルホン酸Na塩基であることがより好ましい。
(ビスフェノール構造)
本発明においては、前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)の少なくとも一方の樹脂構造中にビスフェノール構造を含有することが好ましい。ここに、上層着色塗膜(α)の造膜成分たるポリエステル樹脂(A1)のビスフェノール構造は、耐食性、耐傷付き性を高める効果を有し、下地処理層(β)の造膜成分たるポリエステル樹脂(a)のビスフェノール構造は、下地金属板との密着性を更に高める効果や耐食性を高める効果を有している。前記ポリエステル樹脂(A1)および前記ポリエステル樹脂(a)の双方がビスフェノール構造を含有すれば、更に双方の相溶性が高まり密着性が向上するので、更に好ましい。
(下地処理層(β))
本発明においては、上述したように、上層着色塗膜(α)と下地金属板との間に、前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)を含む下地処理層(β)が配置される。
(スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a))
前記ポリエステル樹脂(a)は、前記下地処理層(β)の造膜成分である。前記ポリエステル樹脂(a)としてはスルホン酸基を含有していれば特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し、得られたものを好適に使用することができる。
前記ポリカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸等の1種または複数種を挙げることができる。
前記ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の1種または複数種を挙げることができる。
(スルホン酸基)
ポリエステル樹脂に前記スルホン酸基を導入する方法としては特に制限はないが、例えば、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸類、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキシルジオール等のグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記スルホン酸基は−SO3Hで表される官能基を指し、それがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたスルホン酸基を樹脂中に組み込んでもよいし、スルホン酸基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。特にLi、Na、Kなどのアルカリ金属類で中和されたスルホン酸金属塩基が、基材との密着性を高める上で更に好ましく、スルホン酸Na塩基が特に好ましい。
前記スルホン酸基を含有するジカルボン酸またはグリコールの使用量は、全ポリカルボン酸成分または全ポリオール成分に対し、0.1〜10モル%であることが好ましい。0.1モル%未満であると、密着性の向上効果が得られない場合がある。また、水系溶媒を使用する場合、水に対する溶解性または分散性が十分でない場合や、更に、着色顔料を使用する場合、着色顔料の分散性が低下し、意匠性が低下する場合がある。10モル%超であると、耐食性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、0.5〜7モル%の範囲にあるのがより好ましい。
(ビスフェノール構造)
前記ビスフェノール構造を導入する場合の方法としては特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物などのグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記ビスフェノール構造を含有するグリコールの使用量は、全ポリオール成分に対し、1〜40モル%であることが好ましい。1モル%未満であると、耐傷付き性、耐食性の向上効果が得られない場合がある。40モル%超であると、加工性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、5〜30モル%の範囲にあるのがより好ましい。
(シランカップリング剤)
前記下地塗膜層(β)に含まれるシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。前記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、水系組成物中での安定性の保持、密着性の改善の観点からは、グリシジル基を有するγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの単独もしくは、2種以上を使用することが好ましい。
(含有量)
前記下地処理層(β)に含まれる前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)の含有量は特に限定されない。前記ポリエステル樹脂(a)の含有量は、下地処理層100質量%中に10〜90質量%(更には25〜75質量%)であることが好ましい。前記シランカップリング剤(b)の含有量も、下地処理層100質量%中に10〜90質量%以上(更には20〜75質量%)であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)のいずれにおいても、10質量%未満の場合、含有量が少なく密着性や耐食性の向上効果が得られない場合がある。
本発明において、下地処理層(β)は、前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)を含むが、必要に応じて、その他の成分を更に含有することができる。このような「その他の成分」としては、例えば、ポリフェノール化合物(c)、シリカ粒子(d)、リン酸化合物(e)を挙げることができる。
(ポリフェノール化合物(c))
上記「ポリフェノール化合物(c)」は、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物、またはその縮合物のことを指す。前記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物等を挙げることができる。ポリフェノール化合物(c)を下地処理層(β)に更に含有することで、耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性を向上させることができる。
タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。前記タンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。前記タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。前記タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
前記ポリフェノール化合物は1種で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。前記ポリフェノール化合物(c)は下地処理層(β)の全固形分100質量%中に5〜30質量%含有していることが好ましく、10〜25質量%含有していることがより好ましい。5%未満では耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性向上効果が得られない場合があり、30質量%超であると水系組成物の安定性が低下したり、上層着色塗膜(α)の密着性が低下したりする場合がある。
(シリカ粒子(d))
上記「シリカ粒子(d)」を下地処理層(β)に更に含有することで、耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性を向上させることができる。シリカ粒子(d)としては特に制限はないが、例えば、一次粒子径が5〜50nmのコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ微粒子であることが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業)、アエロジル200(日本アエロジル)等を挙げることができる。シリカ粒子(d)は1種で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。前記シリカ粒子(d)は下地処理層(β)の全固形分100質量%中に5〜50質量%含有していることが好ましく、10〜40質量%含有していることがより好ましい。5%未満では耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性向上効果が得られない場合があり、50質量%超であると水系組成物の安定性が低下したり、上層着色塗膜(α)の密着性が低下したりする場合がある。
(リン酸化合物(e))
上記「リン酸化合物(e)」を下地処理層(β)に更に含有することで、耐食性を向上させることができる。リン酸化合物(e)としては特に制限はないが、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、Na、Mg、Al、K、Ca、Mn、Ni、Zn、Fe等との金属塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩、フィチン酸等の有機リン酸類及びそれらの塩等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記リン酸化合物(e)は下地処理層(β)の全固形分100質量%中に0.1〜10質量%含有していることが好ましく、0.5〜5質量%含有していることがより好ましい。0.1%未満では耐食性の向上効果が得られない場合があり、10質量%超であると水系組成物の安定性が低下したり、上層着色塗膜(α)の密着性が低下したりする場合がある。
(下地処理層(β)の付着量)
前記下地処理層(β)の付着量は特に限定されるものではないが、10〜1000mg/m2の範囲にあることが好ましい。10mg/m2以下では充分な下地処理層(β)の効果が得られず、1000mg/m2を超えると下地処理層(β)が凝集破壊しやすくなり密着性が低下する場合がある。安定した効果と経済性から、より好ましい付着量範囲は50〜500mg/m2である。
(下地処理層(β)の形成方法)
本発明において、下地処理層(β)は、金属板の少なくとも片面に、前記ポリエステル樹脂(a)、前記シランカップリング剤(b)を含む「水系組成物」を塗布、加熱乾燥することにより形成されることが好ましい。前記シランカップリング剤(b)の下地金属板との反応性を高め、密着性を向上させるという観点からは、この下地処理層(β)形成の際に、酸性の水系媒体を用いて形成されることが好ましい。前記シランカップリング剤(b)の水系組成物中での安定性を担保するという観点からは25℃におけるpHは3〜6の範囲に調整されることが好ましく、4〜5の範囲に調整されることがより好ましい。pHの調整方法に特に制限はなく、酢酸、乳酸等の有機酸やアンモニア、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物が使用できる。
前記下地処理層(β)を形成させるための水系組成物の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。焼付乾燥方法に特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。焼付乾燥温度については、到達温度で60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜130℃であることが更に好ましい。到達温度が60℃未満であると、乾燥が不充分で、基材ある金属板との密着性や耐食性が低下する場合があり、150℃超であると、基材である金属板との密着性が低下する場合がある。
(着色塗膜(α))
本発明において、着色塗膜(α)は、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含む。
(スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1))
前記ポリエステル樹脂(A1)は、前記着色塗膜(α)の造膜成分である。前記ポリエステル樹脂(A1)としては特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し、得られたものを好適に使用することができる。その合成原料、製造方法、及び好適な範囲は、前述したスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)に関する記述の通りである。
(アクリル樹脂(A2))
本発明の着色塗膜(α)には、塗膜造膜成分として前記ポリエステル樹脂(A1)以外にアクリル樹脂(A2)を更に含有することが好ましい。アクリル樹脂(A2)を含有することで、下地処理層(β)との密着性が向上し、耐傷付き性が向上する。加えて、前記着色塗膜(α)を形成するための水系組成物に含まれる着色顔料(B)が後述するカーボンブラック(B1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系溶媒中で均一に分散させ、形成された前記着色塗膜(α)に優れた意匠性を付与させる上でも、アクリル樹脂(A2)を含有することは好適である。
前記アクリル樹脂(A2)としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の単独もしくは2種以上を共重合したものや、それに更に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物等のヒドロキシル基含有エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等を単独もしくは2種以上共重合したものを使用することができる。これらの単量体の重合方法としては特に限定されず、例えば、これらの単量体を水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合する方法を挙げることができる。前記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。ここで、(メタ)アクリルという表現は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
前記アクリル樹脂(A2)の含有量は、塗膜造膜成分となる有機樹脂(前記ポリエステル樹脂(A1)と前記アクリル樹脂(A2)の合計量を指す。後述するウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を含有する場合は、前記ポリエステル樹脂(A1)と前記アクリル樹脂(A2)とポリウレタン樹脂(A3)の合計量を指す。)100質量%に対し、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが最も好ましい。0.5質量%未満であると、形成した着色塗膜の意匠性(着色性、隠蔽性)の向上効果が得られない場合があり、20質量%超であると、着色塗膜の耐食性や加工性が低下することがある。
(ウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3))
本発明の着色塗膜(α)には、塗膜造膜成分として前記ポリエステル樹脂(A1)以外にウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を更に含有することが好ましい。前記ポリウレタン樹脂(A3)を含有することで、耐食性や耐傷付き性が向上する。加工性と耐傷付き性、耐食性を両立するためには、塗膜の伸びと強度の両者に優れ、且つ下地処理層(β)との密着性を高めることが重要であるが、非常に高い凝集エネルギーを持つウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を、前記ポリエステル樹脂(A1)と混合して使用することで伸びと強度の両者に優れ、且つ基材との密着性にも優れる塗膜設計が可能である。
前記ポリエステル樹脂(A1)と前記ポリウレタン樹脂(A3)の固形分質量比(A1)/(A3)は、25/75〜90/10であることが好ましく、50/50〜75/25であることが更に好ましい。25/75未満であると加工性が低下する場合があり、90/10超であると耐食性、耐傷付き性の改善効果が得られない場合がある。
前記ポリウレタン樹脂(A3)としては、構造中にウレア基を含んでいれば特に制限は無いが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更にアミノ基を含有する鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。
前記ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、またはそれらの混合物が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、またはそれらの混合物が挙げられる。
前記鎖伸長剤としては、分子内に1個以上のアミノ基を含有する化合物であれば特に限定されず、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種類以上の混合物で使用することが出来る。
前記ポリウレタン樹脂(A3)の含有量は、塗膜造膜成分となる有機樹脂(前記ポリエステル樹脂(A1)と前記ポリウレタン樹脂(A3)の合計量を指す。前記アクリル樹脂(A2)を含有する場合は、前記ポリエステル樹脂(A1)と前記アクリル樹脂(A2)と前記ポリウレタン樹脂(A3)の合計量を指す。)100質量%に対し、10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、耐傷付き性や耐食性の向上効果が得られない場合があり、50質量%超であると、加工性が低下する場合がある。
(硬化剤(D))
前記ポリエステル樹脂(A1)は(前記着色塗膜(α)の造膜成分に前記アクリル(A2)や前記ポリウレタン樹脂(A3)を含む場合は、それらの樹脂も)、着色塗装金属板の耐傷付き性や耐食性を改善する上で、硬化剤(D)で硬化された樹脂であることが好ましい。硬化剤(D)は、上述したような樹脂を硬化させるものであれば特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を挙げることができる。メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。これらの硬化剤は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤(D)の使用量は、前記ポリエステル樹脂(A1)(前記着色塗膜(α)の造膜成分に前記アクリル樹脂(A2)や前記ポリウレタン樹脂(A3)を含む場合は、それらを含めた全樹脂の合計量)100質量%に対し、5〜35質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、塗膜の焼付硬化が不十分で、着色塗装金属板の耐食性、耐傷付き性が低下することがあり、35質量%超であると、塗膜の焼付硬化が過剰になり、着色塗装金属板の耐食性、加工性が低下することがある。
耐傷付き性の観点から、前記硬化剤(D)にはメラミン樹脂を含有することが好ましい。メラミン樹脂の含有量は、前記硬化剤(D)中に30〜100質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、耐傷付き性の改善効果が得られない場合がある。
(着色顔料(B))
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)が含有する着色顔料(B)は、塗膜に所定の着色を施すとともに十分な隠蔽性を付与する成分である。本発明で用いることができる代表的な着色顔料の例として、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄粉、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材などを挙げることができる。着色顔料(B)としては、1種類を使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
前記着色顔料(B)としてカーボンブラック(B1)を使用する場合は、特に制限はないが、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、公知のカーボンブラックを使用することができる。また、公知のオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックも使用することができる。カーボンブラックは、水系組成物中での分散性や塗装性、塗膜品質を考慮して、一次粒子径で10〜120nmのものを使用するのが好ましい。薄膜、例えば10μm以下程度の薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性を考慮すると、一次粒子径が10〜50nmの微粒子カーボンブラックを使用することが好ましい。一方、カーボンブラックは分散媒(水)中に分散する過程で凝集が起こるため、一次粒子径のまま分散することは一般的に難しい。すなわち、実際には、カーボンブラックは水系組成物中に一次粒子径よりも大きな粒子径を持った二次粒子の形態で存在し、該組成物から形成した塗膜中でも同様の形態で存在する。薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性を担保するためには、塗膜中に分散したカーボンブラックの粒子径が重要であり、その二次粒子の平均粒子径が20〜300nmにあることが好ましい。カーボンブラック二次粒子の平均粒子径は、より好ましくは30〜250nm、更に好ましくは50〜200nmである。
前記カーボンブラック(B1)は隠蔽性に優れた着色顔料である。そのため、本発明においてカーボンブラック(B1)を着色顔料(B)として使用すると、形成した着色塗膜(α)の膜厚を薄くするのに有効である。
前記カーボンブラック(B1)により塗膜の意匠性(着色性、隠蔽性)を担保するためには、着色塗膜(α)中に含まれるカーボンブラック(B1)の絶対量を一定量以上確保することが肝要である。カーボンブラック(B1)の絶対量は、塗膜中に含まれるカーボンブラック(B1)の含有量(X質量%)と塗膜厚み(Yμm)の積(X×Y)によって表すことができる。X×Yが20未満であると、意匠性(着色性、隠蔽性)が低下することがある。Xが15超であると、塗膜の造膜性が低下し、耐食性や加工性が不足することがある。すなわち、カーボンブラック(B1)と塗膜は、X×Y≧20、且つ、X≦15の関係を満足することが好ましい。X×Y≧25、且つ、X≦15であるのがより好ましく、X×Y≧30、且つ、X≦12であるのが更に好ましい。
カーボンブラック以外の着色顔料を使用する場合、塗膜中における着色顔料粒子は、それが一次粒子であるか二次粒子であるかに関わりなく、カーボンブラック二次粒子についての上述の20〜300nmの平均粒子径を有することが好ましい。より好ましい平均粒子径は30〜250nm、更に好ましくは50〜200nmである。
着色顔料にカーボンブラックを含有しない場合も、塗膜の意匠性(着色性、隠蔽性)を担保するため、着色塗膜中の着色顔料の絶対量を一定量以上確保することが必要である。着色塗膜中の着色顔料の絶対量は、やはり塗膜中の着色顔料含有量と塗膜の厚さに左右され、そして必要とされる着色顔料含有量と塗膜の厚さは使用する特定の着色顔料の種類に依存する。但し、着色顔料にカーボンブラックを含有しない場合には、10μm以下程度の薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)を確保することは困難な場合がある。意匠性及びその他必要性能である耐食性、塗料安定性、成膜性、加工性等確保の観点から、一般的には、塗膜中の着色顔料の含有量は、塗膜の全体質量の5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲内あり、必要な塗膜の厚さは、2〜30μm、より好ましくは3〜20μm、更に好ましくは5〜15μmの範囲内である。膜厚が10μmを超える場合、わきなどの塗膜欠陥が発生し易くなることから、溶媒量等の塗料条件や、焼付け昇温速度等の成膜条件に留意する必要がある。
(シリカ粒子(C))
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)が含有するシリカ粒子(C)は、着色塗膜(α)に十分な耐食性、耐傷付き性を付与するのに有効な成分である。シリカ粒子(C)としては、特に制限されないが、一次粒子径(平均粒子径)が5〜50nmのコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ微粒子を使用するのが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業社)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業社)、アエロジル200(日本アエロジル社)等を挙げることができる。シリカ微粒子は、水系着色組成物から形成した着色塗膜中でも一次粒子径5〜50nmのままで分散されていることが、耐食性や加工性の観点で好ましい。シリカ粒子のより好ましい一次粒子径は8〜30nm、更に好ましくは10〜20nmである。シリカ粒子(C)としては、1種類を使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
シリカ粒子(C)は、前記着色塗膜(α)中に3〜30質量%存在することが好ましい。塗膜中のシリカ粒子含有量が3質量%未満であると、塗膜の耐食性、耐傷付き性が不足することがあり、30質量%超であると、塗膜の耐湿性、耐食性、加工性が低下することがある。塗膜中のシリカ粒子のより好ましい含有量は5〜20質量%、更に好ましくは7〜15質量%である。
(潤滑剤(E))
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)は、ポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)のほかに、潤滑剤(E)を更に含有してもよい。潤滑剤(E)を含有させることで、着色塗膜(α)の耐傷付き性が向上する。潤滑剤(E)としては特に制限されず、公知の潤滑剤が使用できるが、フッ素樹脂系、ポリオレフィン樹脂系から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。フッ素樹脂系潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが使用可能である。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
前記ポリオレフィン樹脂系潤滑剤としては特に限定されず、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等の炭化水素系のワックス、及びこれらの誘導体等を挙げることができるが、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。前記誘導体としては特に限定されず、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等を挙げることができる。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。前記ポリエチレン樹脂を使用する場合、前記着色塗膜(α)中に平均粒子径0.5〜2μmの粒子で分散されていることが、耐食性や耐傷付き性の観点から好ましい。
前記潤滑剤(E)の含有量は、前記着色塗膜(α)中に0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。0.5質量%未満であると、耐傷付き性が不足する場合があり、10質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の塗膜(α)中には、着色顔料(B)とシリカ粒子(C)が、粒子状成分として存在する。必要に応じ、それら以外に、やはり粒子状の成分として潤滑剤(E)が存在することもある。
一般に、薄い塗膜中に含まれる粒子の形状や大きさを特定することは極めて困難である。とは言え、塗膜の形成に用いる塗料(塗膜の構成成分を含有している溶液又は分散液(着色組成物))中に含まれている粒子状成分は、塗膜の形成過程で何らかの物理的又は化学的変化(例えば、粒子どうしの結合や凝集、塗料溶媒への有意の溶解、他の構成成分との反応など)を被らない限り、塗膜形成後においても、塗料中に存在していたときの形状や大きさを保持していると見なすことができる。本発明で用いる粒子状成分である着色顔料(B)、シリカ粒子(C)、潤滑剤(E)は、本発明の塗膜の形成に用いる塗料の水系溶媒には有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれる。また、これらの粒子状成分の塗料中での存在形態の保持性を高める目的で、必要に応じて、予め公知の界面活性剤や水溶性樹脂等の分散剤で水系溶媒中に分散したものを塗料の原料として使用することもできる。従って、本発明において規定している塗膜中に含まれるこれらの粒子状成分の粒子径は、塗膜の形成に用いた塗料中でのそれらの粒子径でもって表すことができる。
具体的に言えば、着色顔料(B)のカーボンブラック(B1)、シリカ粒子(C)などの、比較的微細な粒子の径は、動的光散乱法(ナノトラック法)によって測定できる。動的散乱法によれば、温度と粘度と屈折率が既知の分散媒中の微粒子の径を簡単に求めることができる。本発明で用いる粒子状成分は、塗料の水系溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、所定の分散媒中で粒子径を測定して、それを塗料中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。動的光散乱法では、分散媒中に分散しブラウン運動している微粒子にレーザー光を照射して粒子からの散乱光を観測し、光子相関法により自己相関関数を求め、キュムラント法を用いて粒子径を測定する。動的光散乱法による粒径測定装置として、例えば、大塚電子社製のFPAR−1000を使用することができる。本発明では、測定対象の粒子を含有する分散体サンプルを25℃で測定してキュムラント平均粒子径を求め、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。動的光散乱法による平均粒子径の測定については、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)第57巻11号(1972年12月)第4814頁、に記載されている。
一方、潤滑剤(E)などの、比較的大きな粒子の径としては、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)によって測定した粒度分布における積算値50%での粒子径を採用することができる。レーザー回折・散乱法は、粒子に光を照射したときに散乱される散乱光量とパターンが粒子径によって異なることを利用して、サブミクロン領域から数ミリメートル程度の粒子径を測定するのに広く用いられている。この場合も、本発明で用いる粒子状成分は、塗料の水系溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、測定した粒子径を塗料中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。レーザー回折・散乱法による測定には、例えば、日機装社製のマイクロトラック粒度分析計などを使用することができる。本発明では、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。
また、着色塗膜(α)中の粒子状成分(必須成分の着色顔料(B)、シリカ粒子(C)、任意成分である潤滑剤(E))は、着色塗膜(α)を断面から観察し、直接その形状や粒子径を測定することも可能である。粒子が真球状ではない場合は、その粒子の長径、短径を各々測定し、その平均値を粒子径として採用することができる。塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法や、FIB(集束イオンビ−ム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50nm〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
(塗膜厚み)
前記着色塗膜(α)の塗膜厚みは特に限定されないが、2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは3〜7μmである。2μm未満であると、充分な意匠性(隠蔽性)や耐食性が得られない場合がある。10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、前記塗膜(α)が水系組成物から形成される場合等にワキ等の塗膜欠陥が発生することがあり、工業製品として必要な外観を安定して得る事ができない場合がある。
前記着色塗膜(α)の厚みは、塗膜の断面観察や電磁膜厚計等の利用により測定できる。その他に、単位面積当りに付着した塗膜の質量を、塗膜の比重又は組成物の乾燥後比重で除算して算出してもよい。塗膜の付着質量は、塗装前後の質量差、塗装後の塗膜を剥離した前後の質量差、または、塗膜を蛍光X線分析して予め皮膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する等、既存の手法から適切に選択すればよい。塗膜の比重又は組成物の乾燥後比重は、単離した塗膜の容積と質量を測定する、適量の組成物を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定する、または、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算する等、既存の手法から適切に選択すればよい。
上記した各種測定方法の中でも、比重等が異なる塗膜でも簡便に精度よく測定できることから、塗膜の断面観察の利用が好適である。
着色塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法やFIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
(着色塗膜(α)の形成方法)
本発明において、着色塗膜(α)は、上記の下地処理層(β)上に、ポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含む「水系組成物」を塗布、加熱乾燥することにより形成されることが好ましい。着色塗膜(α)を形成するための「水系組成物」の25℃におけるpHは8〜10の範囲にあることが好ましく、8.5〜9.5の範囲にあることがより好ましい。pHが8よりも小さいと前記水系組成物の貯蔵安定性が低下(増粘やゲル化の発生)したり、前記着色顔料(B)の分散安定性が低下したりする場合がある。pHが10よりも大きいと耐湿性、耐食性が低下する場合がある。前記水系組成物のpHの制御方法に特に制限はないが、酢酸等の有機酸やアンモニア等のアミン化合物を適量添加して調整する方法等が挙げられる。
前記着色塗膜(α)を形成するための水系組成物は、特定の方法に限定されず任意の方法で得ることができる。一例として、好ましい水系組成物を例に説明すれば、分散媒である水中に着色塗膜(α)の構成成分を添加し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各構成成分の溶解性もしくは分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールおよびプロピレングリコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類を添加してもよい。
水系組成物の塗布方法は、特に制限されることなく、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、ロールコート、カーテン塗装、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布などを利用可能である。
水系組成物から着色塗膜(α)を形成する加熱乾燥は、特に制限されることなく、任意の方法で行うことができる。例えば、水系着色組成物を塗布する前に予め金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行うことができる。加熱方法にも特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用して、着色組成物を乾燥させて焼付けることができる。乾燥焼付温度は、到達板温で150℃〜250℃であることが好ましく、160℃〜230℃であることが更に好ましく、180℃〜220℃であることが最も好ましい。到達板温が150℃未満であると、焼付硬化が不十分で、塗膜の耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下することがあり、250℃超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下することがある。乾燥焼付時間(加熱時間)は1〜60秒であることが好ましく、3〜20秒であることが更に好ましい。1秒未満であると、焼付硬化が不十分で、塗膜の耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下することがあり、60秒超であると、生産性が低下する。
(金属板)
本発明において適用可能な金属板としては特に限定されるものではなく、例えば、鉄、鉄基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金、銅、銅基合金等を挙げられ、任意に金属板上にめっきしためっき金属板を使用することもできる。中でも本発明の適用において最も好適なものは亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板である。
亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に少量の異種金属元素または不純物としてコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を含有したもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させたものが含まれる。
アルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムまたはアルミニウムとシリコン、亜鉛、マグネシウムの少なくとも1種とからなる合金、例えば、アルミニウム−シリコンめっき鋼板、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−シリコン−マグネシウムめっき鋼板等が挙げられる。
更には以上のめっきと他の種類のめっき、例えば鉄めっき、鉄−りんめっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等と組み合わせた複層めっきにも適用可能である。めっき方法は特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
実施例により本発明を更に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)金属板
使用した金属板の種類を表1に示す。めっきを施した金属板の基材には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。SUS板についてはフェライト系ステンレス鋼板(鋼成分:C;0.008質量%、Si;0.07質量%、Mn;0.15質量%、P;0.011質量%、S;0.009質量%、Al;0.067質量%、Cr;17.3質量%、Mo;1.51質量%、N;0.0051質量%、Ti;0.22質量%、残部Fe及び不可避的不純物)を使用した。金属板は表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
Figure 2012131223
(2)下地処理層
下地処理層を形成するためのコーティング剤は、有機樹脂(表2、下記製造例1〜3)、シランカップリング剤(b)(表3)、ポリフェノール化合物(c)(表4)、シリカ粒子(d)(表5)、リン酸化合物(e)(表6)を表7に示す配合量(質量%)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記(1)で準備した金属板の表面に該コーティング剤を100mg/m2の付着量になるようにロールコーターで塗装し、到達板温度70℃の条件で乾燥させることで、下地処理層を形成させた。
<有機樹脂製造例1>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(B1)を得た。
<水性有機樹脂製造例2>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール250部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物62部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(B2)を得た。
<有機樹脂製造例3>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸126部、イソフタル酸305部、セバシン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、1,4−ブタンジオール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、3−メチルペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(B3)を得た。
Figure 2012131223
Figure 2012131223
Figure 2012131223
Figure 2012131223
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(3)着色塗膜
着色塗膜を形成するための水系組成物は、有機樹脂(表8、上記製造例1〜3)、硬化剤(D)(表9)、着色顔料(B)(表10)、シリカ粒子(C)(表11)、潤滑剤(E)(表12)を表13〜15に示す配合量(固形分の質量%で記載)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記「(2)」で形成した下地処理層の上層に、水系組成物を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板焼付温度で加熱乾燥し、着色塗膜を形成させた。
Figure 2012131223
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(4)着色塗装金属板
上記(3)で説明したように着色塗膜(α)を形成した着色塗装金属板の塗膜構成及び着色塗膜の膜厚、到達板焼付温度を表13〜15に示す。また、着色顔料(B)にカーボンブラックを使用する場合、塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径も表13〜15(「着色顔料(B)」の欄)に示す。着色塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径は、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜の任意の10箇所の幅20μmに入る断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、各々任意に20箇所の粒子径を測定し、その平均値から求めた。カーボンブラック含有量(X質量%)と着色塗膜の膜厚(Yμm)から求められるX×Yの値も表13〜15に示す。
Figure 2012131223
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(5)評価試験
上記(3)で説明したように作製した着色塗装金属板(試験板)について、平板部の意匠性、耐湿性、耐食性、加工性(加工部の意匠性、加工密着性)、耐傷付き性を下記に示す評価方法及び評価基準にて評価した。その評価結果を表16〜18に示す。
(平板部の意匠性)
試験板の外観を下記の評価基準で評価した。
5:着色、表面艶ともに均一である。下地も全く透けて見えない。
4:着色は均一であるが、表面艶がやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
3:着色、表面艶ともにやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
2:着色、表面艶ともに不均一である(目視で容易に確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
1:着色、表面艶ともに不均一である(目視で容易に確認できるレベル)。下地がやや透けて見える。
(耐湿性)
試験板を温度40℃、湿度90%の条件下に1000時間静置した後の外観を下記の評価基準で評価した。
5:外観に変化は全く認められない。
4:表面の艶が極僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:表面の艶が僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:表面の艶が低下した(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:表面の艶が著しく低下した(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
(耐食性)
試験板の端面をテープシールした後、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験(SST)を120時間行い、錆発生状況を観察し、下記の評価基準で評価した。
5:錆発生なし。
4:錆発生面積が1%未満。
3:錆発生面積が1%以上、3%未満。
2:錆発生面積が3%以上、5%未満。
1:錆発生面積が5%以上。
(加工性(加工部の意匠性))
試験板に180°折り曲げ加工を施し、折り曲げ部外側の外観を下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、スペーサーを間に挟まずに実施した(一般に0T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な着色外観である。色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが認められる(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが著しい(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
(加工性(加工密着性))
試験板に180°折り曲げ加工を施した後、折り曲げ加工部外側のテープ剥離試験(テープ剥離方法はJIS K 5600−5−6に準拠)を実施した。テープ剥離部の外観を下記の評価基準で評価した。なお、折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、スペーサーを間に挟まずに実施した(一般に0T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に剥離は認められない。
4:極一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して何とか分かる程度)。
3:一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して分かる程度)。
2:部分的な塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
1:ほとんどの塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
(耐傷付き性)
試験板に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、2回以上傷が入らない鉛筆硬度で評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験し、下記の評価基準で評価した。その他の試験条件はJIS K 5600−5−4に準拠した。
5:鉛筆硬度が3H以上
4:鉛筆硬度が2H
3:鉛筆硬度がH
2:鉛筆硬度がF
1:鉛筆硬度がHB以下
Figure 2012131223
Figure 2012131223
Figure 2012131223
本発明の実施例はいずれの評価試験においても評点3点以上の優れた平面部意匠性、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性を示した。
一方、本発明の範囲を外れた比較例である、下地処理層がない比較例1は耐湿性、耐食性、加工密着性、耐傷付き性が劣っていた。下地処理層がポリエステル樹脂のみ、またはシランカップリング剤のみで構成されている比較例2、3は耐食性、加工密着性が劣っていた。下地処理層にポリエステル樹脂を含有しない比較例4〜6は耐食性、加工密着性の少なくとも一方が劣っていた。上層着色塗膜にポリエステル樹脂を含有しない比較例7〜10は加工密着性を始めとする諸性能が劣っていた。特にカチオン性のポリウレタン樹脂を、上層着色塗膜を形成するための塗料の水系組成物に使用した比較例7では、40℃で1日静置し貯蔵安定性を調査したところ、水系組成物がゲル化していた。すなわち、比較例7で使用した水系組成物は実用レベルの貯蔵安定性を保有していない。上層着色塗膜にシリカ粒子を含有しない比較例11は耐食性、耐傷付き性が劣っていた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想定し得ることは明らかであり、それらについても当然に発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (14)

  1. 金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって;
    前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
  2. 前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  3. 前記ポリエステル樹脂(A1)及び前記ポリエステル樹脂(a)に含有するスルホン酸基が、アルカリ金属によって中和されたスルホン酸金属塩基であることを特徴とする、請求項1または2に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  4. 前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)の少なくとも一方の樹脂構造中にビスフェノール構造を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  5. 前記ポリエステル樹脂(A1)が硬化剤(D)で硬化されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  6. 前記着色塗膜(α)が、アクリル樹脂(A2)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  7. 前記着色塗膜(α)が、ウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  8. 前記着色顔料(B)がカーボンブラック(Bl)を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  9. 前記カーボンブラック(Bl)の前記着色塗膜(α)中の含有量をX質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをYμmとしたとき、X×Y≧20、且つ、X≦15を満足することを特徴とする、請求項8に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  10. 前記着色塗膜(α)中に、前記カーボンブラック(Bl)が平均粒子径20〜300nmの粒子で分散されていることを特徴とする、請求項8または9に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  11. 前記着色塗膜(α)が、更に潤滑剤(E)を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  12. 前記下地処理層(β)に更に、ポリフェノール化合物(c)、シリカ粒子(d)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  13. 前記下地処理層(β)に更に、リン酸化合物(e)を含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  14. 前記着色塗膜(α)及び前記下地処理層(β)が、水系媒体を用いて塗布、加熱乾燥することで形成されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
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