JP2012131223A - クロメートフリー着色塗装金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板。前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有する。
【選択図】なし
Description
前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することを特徴とするものである。
前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板である。本発明において、前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することが特徴である。
本発明者の知見によれば、上記した塗膜構成成分は、以下のような機能を有すると推定されている。
(α)着色塗膜
・スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1):塗膜の造膜成分であり、諸性能をバランスよく担保する塗膜物性を得る上で好適である。ポリエステル樹脂の構造中に含まれるエステル基は適度の凝集エネルギーを有しているため、塗膜のフィルム物性(伸びと強度のバランス)を高次元に高めることができる。すなわち、ポリエステル樹脂を塗膜の造膜成分として適用することは、加工性と耐傷付き性を高次元で両立する上で非常に有効である。
・着色顔料(B):塗膜に着色し、意匠性を付与し、高める。
・シリカ粒子(C):耐食性、耐傷付き性を改善する。
・スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a):下地処理層の造膜成分であり、着色塗膜と同じ種類の樹脂(すなわち、ポリエステル樹脂)を使用することで、上層着色塗膜との相溶性を改善し、上層塗膜との密着性を向上させる。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の製法は特に制限されないが、着色塗膜(α)および下地処理層(β)が、それぞれの所定の成分を含む水系組成物を使用して、形成されていることが好ましい。より具体的には、着色塗膜(α)および下地処理層(β)は、水系組成物を塗布し、加熱乾燥することにより形成されることが好ましい。
ここに、「水系組成物」とは、水系溶媒を用いて構成された組成物を言う。「水系溶媒」とは、水が主成分(50質量%以上)である溶媒を言う。水系溶媒を用いることによって、有機溶剤系塗料を使用するための塗装専用ラインを余分に通板する必要がなくなるために、製造コストを大幅に削減することが可能である上に、VOCの排出も大幅に抑制できる等の環境面におけるメリットも有している。
本発明において、上層着色塗膜(α)を構成する前記ポリエステル樹脂(A1)と、下地処理層(β)を構成する前記ポリエステル樹脂(a)とは、「エステル結合を含む樹脂」として同一性を有する。本発明においては、このように、上層着色塗膜と下地処理層の造膜成分として、「同一性」を有するポリエステル樹脂を適用することで、上記した特定の構成を有する上層着色塗膜と下地処理層との密着性を大幅に改善できることが判明している。
本発明における前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)には樹脂構造中にスルホン酸基を含有する。ここに、上層着色塗膜(α)の造膜成分たる前記ポリエステル樹脂(A1)のスルホン酸基は、高い親水性を有しているため、ポリエステル樹脂の水系組成物中での安定性を高める(水系組成物の固化、凝集物の発生等を防止する)上でも好適である。特に後述する硬化剤(D)を併用する場合においては、水系組成物のpH変動が大きくなり、水系組成物の安定性が低下する場合があるが、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂を用いる場合は、水系組成物のpH変動の影響を受けにくく、水系組成物の安定性の低下を抑制することができる。加えて、着色顔料(B)が後述するカーボンブラック(B1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系組成物中で均一に分散させ、形成された着色塗膜に優れた意匠性を付与させる上でも樹脂構造中にスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂は好適である。下地処理層(β)の造膜成分たる前記ポリエステル樹脂(a)のスルホン酸基は、下地金属板との密着性を更に高める効果を有している。また、シランカップリング剤(b)を必須成分として含有する水系組成物は、前記シランカップリング剤(b)の縮合反応物の析出等により水系組成物の安定性を保持する(水系組成物中の凝集物の発生等を防止する)ことが一般的に難しいが、水系組成物中でスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)を共存させることによって、前記シランカップリング剤(b)の縮合反応物の析出を抑制することができる(水系組成物の安定性を高める効果を有している)。前記ポリエステル樹脂(A1)および前記ポリエステル樹脂(a)の双方にスルホン酸基を含有することによって、更に双方のポリエステル樹脂の相溶性が高まり密着性が向上する。また、スルホン酸基の上述した効果を得る観点では、スルホン酸基はアルカリ金属で中和されたスルホン酸金属塩基であることが好ましく、スルホン酸Na塩基であることがより好ましい。
本発明においては、前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)の少なくとも一方の樹脂構造中にビスフェノール構造を含有することが好ましい。ここに、上層着色塗膜(α)の造膜成分たるポリエステル樹脂(A1)のビスフェノール構造は、耐食性、耐傷付き性を高める効果を有し、下地処理層(β)の造膜成分たるポリエステル樹脂(a)のビスフェノール構造は、下地金属板との密着性を更に高める効果や耐食性を高める効果を有している。前記ポリエステル樹脂(A1)および前記ポリエステル樹脂(a)の双方がビスフェノール構造を含有すれば、更に双方の相溶性が高まり密着性が向上するので、更に好ましい。
本発明においては、上述したように、上層着色塗膜(α)と下地金属板との間に、前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)を含む下地処理層(β)が配置される。
前記ポリエステル樹脂(a)は、前記下地処理層(β)の造膜成分である。前記ポリエステル樹脂(a)としてはスルホン酸基を含有していれば特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し、得られたものを好適に使用することができる。
ポリエステル樹脂に前記スルホン酸基を導入する方法としては特に制限はないが、例えば、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸類、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキシルジオール等のグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記ビスフェノール構造を導入する場合の方法としては特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物などのグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記下地塗膜層(β)に含まれるシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。前記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、水系組成物中での安定性の保持、密着性の改善の観点からは、グリシジル基を有するγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの単独もしくは、2種以上を使用することが好ましい。
前記下地処理層(β)に含まれる前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)の含有量は特に限定されない。前記ポリエステル樹脂(a)の含有量は、下地処理層100質量%中に10〜90質量%(更には25〜75質量%)であることが好ましい。前記シランカップリング剤(b)の含有量も、下地処理層100質量%中に10〜90質量%以上(更には20〜75質量%)であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂(a)と前記シランカップリング剤(b)のいずれにおいても、10質量%未満の場合、含有量が少なく密着性や耐食性の向上効果が得られない場合がある。
上記「ポリフェノール化合物(c)」は、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物、またはその縮合物のことを指す。前記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物等を挙げることができる。ポリフェノール化合物(c)を下地処理層(β)に更に含有することで、耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性を向上させることができる。
上記「シリカ粒子(d)」を下地処理層(β)に更に含有することで、耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性を向上させることができる。シリカ粒子(d)としては特に制限はないが、例えば、一次粒子径が5〜50nmのコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ微粒子であることが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業)、アエロジル200(日本アエロジル)等を挙げることができる。シリカ粒子(d)は1種で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。前記シリカ粒子(d)は下地処理層(β)の全固形分100質量%中に5〜50質量%含有していることが好ましく、10〜40質量%含有していることがより好ましい。5%未満では耐食性や上層着色塗膜(α)の密着性向上効果が得られない場合があり、50質量%超であると水系組成物の安定性が低下したり、上層着色塗膜(α)の密着性が低下したりする場合がある。
上記「リン酸化合物(e)」を下地処理層(β)に更に含有することで、耐食性を向上させることができる。リン酸化合物(e)としては特に制限はないが、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、Na、Mg、Al、K、Ca、Mn、Ni、Zn、Fe等との金属塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩、フィチン酸等の有機リン酸類及びそれらの塩等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記リン酸化合物(e)は下地処理層(β)の全固形分100質量%中に0.1〜10質量%含有していることが好ましく、0.5〜5質量%含有していることがより好ましい。0.1%未満では耐食性の向上効果が得られない場合があり、10質量%超であると水系組成物の安定性が低下したり、上層着色塗膜(α)の密着性が低下したりする場合がある。
前記下地処理層(β)の付着量は特に限定されるものではないが、10〜1000mg/m2の範囲にあることが好ましい。10mg/m2以下では充分な下地処理層(β)の効果が得られず、1000mg/m2を超えると下地処理層(β)が凝集破壊しやすくなり密着性が低下する場合がある。安定した効果と経済性から、より好ましい付着量範囲は50〜500mg/m2である。
本発明において、下地処理層(β)は、金属板の少なくとも片面に、前記ポリエステル樹脂(a)、前記シランカップリング剤(b)を含む「水系組成物」を塗布、加熱乾燥することにより形成されることが好ましい。前記シランカップリング剤(b)の下地金属板との反応性を高め、密着性を向上させるという観点からは、この下地処理層(β)形成の際に、酸性の水系媒体を用いて形成されることが好ましい。前記シランカップリング剤(b)の水系組成物中での安定性を担保するという観点からは25℃におけるpHは3〜6の範囲に調整されることが好ましく、4〜5の範囲に調整されることがより好ましい。pHの調整方法に特に制限はなく、酢酸、乳酸等の有機酸やアンモニア、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物が使用できる。
本発明において、着色塗膜(α)は、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含む。
前記ポリエステル樹脂(A1)は、前記着色塗膜(α)の造膜成分である。前記ポリエステル樹脂(A1)としては特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し、得られたものを好適に使用することができる。その合成原料、製造方法、及び好適な範囲は、前述したスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)に関する記述の通りである。
本発明の着色塗膜(α)には、塗膜造膜成分として前記ポリエステル樹脂(A1)以外にアクリル樹脂(A2)を更に含有することが好ましい。アクリル樹脂(A2)を含有することで、下地処理層(β)との密着性が向上し、耐傷付き性が向上する。加えて、前記着色塗膜(α)を形成するための水系組成物に含まれる着色顔料(B)が後述するカーボンブラック(B1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系溶媒中で均一に分散させ、形成された前記着色塗膜(α)に優れた意匠性を付与させる上でも、アクリル樹脂(A2)を含有することは好適である。
本発明の着色塗膜(α)には、塗膜造膜成分として前記ポリエステル樹脂(A1)以外にウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を更に含有することが好ましい。前記ポリウレタン樹脂(A3)を含有することで、耐食性や耐傷付き性が向上する。加工性と耐傷付き性、耐食性を両立するためには、塗膜の伸びと強度の両者に優れ、且つ下地処理層(β)との密着性を高めることが重要であるが、非常に高い凝集エネルギーを持つウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を、前記ポリエステル樹脂(A1)と混合して使用することで伸びと強度の両者に優れ、且つ基材との密着性にも優れる塗膜設計が可能である。
前記ポリエステル樹脂(A1)は(前記着色塗膜(α)の造膜成分に前記アクリル(A2)や前記ポリウレタン樹脂(A3)を含む場合は、それらの樹脂も)、着色塗装金属板の耐傷付き性や耐食性を改善する上で、硬化剤(D)で硬化された樹脂であることが好ましい。硬化剤(D)は、上述したような樹脂を硬化させるものであれば特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を挙げることができる。メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。これらの硬化剤は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)が含有する着色顔料(B)は、塗膜に所定の着色を施すとともに十分な隠蔽性を付与する成分である。本発明で用いることができる代表的な着色顔料の例として、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄粉、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材などを挙げることができる。着色顔料(B)としては、1種類を使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)が含有するシリカ粒子(C)は、着色塗膜(α)に十分な耐食性、耐傷付き性を付与するのに有効な成分である。シリカ粒子(C)としては、特に制限されないが、一次粒子径(平均粒子径)が5〜50nmのコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ微粒子を使用するのが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業社)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業社)、アエロジル200(日本アエロジル社)等を挙げることができる。シリカ微粒子は、水系着色組成物から形成した着色塗膜中でも一次粒子径5〜50nmのままで分散されていることが、耐食性や加工性の観点で好ましい。シリカ粒子のより好ましい一次粒子径は8〜30nm、更に好ましくは10〜20nmである。シリカ粒子(C)としては、1種類を使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)は、ポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)のほかに、潤滑剤(E)を更に含有してもよい。潤滑剤(E)を含有させることで、着色塗膜(α)の耐傷付き性が向上する。潤滑剤(E)としては特に制限されず、公知の潤滑剤が使用できるが、フッ素樹脂系、ポリオレフィン樹脂系から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。フッ素樹脂系潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが使用可能である。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
前記着色塗膜(α)の塗膜厚みは特に限定されないが、2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは3〜7μmである。2μm未満であると、充分な意匠性(隠蔽性)や耐食性が得られない場合がある。10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、前記塗膜(α)が水系組成物から形成される場合等にワキ等の塗膜欠陥が発生することがあり、工業製品として必要な外観を安定して得る事ができない場合がある。
本発明において、着色塗膜(α)は、上記の下地処理層(β)上に、ポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含む「水系組成物」を塗布、加熱乾燥することにより形成されることが好ましい。着色塗膜(α)を形成するための「水系組成物」の25℃におけるpHは8〜10の範囲にあることが好ましく、8.5〜9.5の範囲にあることがより好ましい。pHが8よりも小さいと前記水系組成物の貯蔵安定性が低下(増粘やゲル化の発生)したり、前記着色顔料(B)の分散安定性が低下したりする場合がある。pHが10よりも大きいと耐湿性、耐食性が低下する場合がある。前記水系組成物のpHの制御方法に特に制限はないが、酢酸等の有機酸やアンモニア等のアミン化合物を適量添加して調整する方法等が挙げられる。
本発明において適用可能な金属板としては特に限定されるものではなく、例えば、鉄、鉄基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金、銅、銅基合金等を挙げられ、任意に金属板上にめっきしためっき金属板を使用することもできる。中でも本発明の適用において最も好適なものは亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板である。
使用した金属板の種類を表1に示す。めっきを施した金属板の基材には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。SUS板についてはフェライト系ステンレス鋼板(鋼成分:C;0.008質量%、Si;0.07質量%、Mn;0.15質量%、P;0.011質量%、S;0.009質量%、Al;0.067質量%、Cr;17.3質量%、Mo;1.51質量%、N;0.0051質量%、Ti;0.22質量%、残部Fe及び不可避的不純物)を使用した。金属板は表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
下地処理層を形成するためのコーティング剤は、有機樹脂(表2、下記製造例1〜3)、シランカップリング剤(b)(表3)、ポリフェノール化合物(c)(表4)、シリカ粒子(d)(表5)、リン酸化合物(e)(表6)を表7に示す配合量(質量%)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記(1)で準備した金属板の表面に該コーティング剤を100mg/m2の付着量になるようにロールコーターで塗装し、到達板温度70℃の条件で乾燥させることで、下地処理層を形成させた。
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(B1)を得た。
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール250部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物62部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(B2)を得た。
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸126部、イソフタル酸305部、セバシン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、1,4−ブタンジオール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、3−メチルペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(B3)を得た。
着色塗膜を形成するための水系組成物は、有機樹脂(表8、上記製造例1〜3)、硬化剤(D)(表9)、着色顔料(B)(表10)、シリカ粒子(C)(表11)、潤滑剤(E)(表12)を表13〜15に示す配合量(固形分の質量%で記載)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記「(2)」で形成した下地処理層の上層に、水系組成物を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板焼付温度で加熱乾燥し、着色塗膜を形成させた。
上記(3)で説明したように着色塗膜(α)を形成した着色塗装金属板の塗膜構成及び着色塗膜の膜厚、到達板焼付温度を表13〜15に示す。また、着色顔料(B)にカーボンブラックを使用する場合、塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径も表13〜15(「着色顔料(B)」の欄)に示す。着色塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径は、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜の任意の10箇所の幅20μmに入る断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、各々任意に20箇所の粒子径を測定し、その平均値から求めた。カーボンブラック含有量(X質量%)と着色塗膜の膜厚(Yμm)から求められるX×Yの値も表13〜15に示す。
上記(3)で説明したように作製した着色塗装金属板(試験板)について、平板部の意匠性、耐湿性、耐食性、加工性(加工部の意匠性、加工密着性)、耐傷付き性を下記に示す評価方法及び評価基準にて評価した。その評価結果を表16〜18に示す。
試験板の外観を下記の評価基準で評価した。
5:着色、表面艶ともに均一である。下地も全く透けて見えない。
4:着色は均一であるが、表面艶がやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
3:着色、表面艶ともにやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
2:着色、表面艶ともに不均一である(目視で容易に確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
1:着色、表面艶ともに不均一である(目視で容易に確認できるレベル)。下地がやや透けて見える。
試験板を温度40℃、湿度90%の条件下に1000時間静置した後の外観を下記の評価基準で評価した。
5:外観に変化は全く認められない。
4:表面の艶が極僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:表面の艶が僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:表面の艶が低下した(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:表面の艶が著しく低下した(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
試験板の端面をテープシールした後、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験(SST)を120時間行い、錆発生状況を観察し、下記の評価基準で評価した。
5:錆発生なし。
4:錆発生面積が1%未満。
3:錆発生面積が1%以上、3%未満。
2:錆発生面積が3%以上、5%未満。
1:錆発生面積が5%以上。
試験板に180°折り曲げ加工を施し、折り曲げ部外側の外観を下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、スペーサーを間に挟まずに実施した(一般に0T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な着色外観である。色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが認められる(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが著しい(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
試験板に180°折り曲げ加工を施した後、折り曲げ加工部外側のテープ剥離試験(テープ剥離方法はJIS K 5600−5−6に準拠)を実施した。テープ剥離部の外観を下記の評価基準で評価した。なお、折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、スペーサーを間に挟まずに実施した(一般に0T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に剥離は認められない。
4:極一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して何とか分かる程度)。
3:一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して分かる程度)。
2:部分的な塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
1:ほとんどの塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
試験板に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、2回以上傷が入らない鉛筆硬度で評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験し、下記の評価基準で評価した。その他の試験条件はJIS K 5600−5−4に準拠した。
5:鉛筆硬度が3H以上
4:鉛筆硬度が2H
3:鉛筆硬度がH
2:鉛筆硬度がF
1:鉛筆硬度がHB以下
Claims (14)
- 金属板の少なくとも片面に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)、着色顔料(B)、シリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって;
前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(a)とシランカップリング剤(b)を含んでなる下地処理層(β)を有することを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。 - 前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記ポリエステル樹脂(A1)及び前記ポリエステル樹脂(a)に含有するスルホン酸基が、アルカリ金属によって中和されたスルホン酸金属塩基であることを特徴とする、請求項1または2に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(a)の少なくとも一方の樹脂構造中にビスフェノール構造を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記ポリエステル樹脂(A1)が硬化剤(D)で硬化されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記着色塗膜(α)が、アクリル樹脂(A2)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記着色塗膜(α)が、ウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A3)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記着色顔料(B)がカーボンブラック(Bl)を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記カーボンブラック(Bl)の前記着色塗膜(α)中の含有量をX質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをYμmとしたとき、X×Y≧20、且つ、X≦15を満足することを特徴とする、請求項8に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記着色塗膜(α)中に、前記カーボンブラック(Bl)が平均粒子径20〜300nmの粒子で分散されていることを特徴とする、請求項8または9に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記着色塗膜(α)が、更に潤滑剤(E)を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記下地処理層(β)に更に、ポリフェノール化合物(c)、シリカ粒子(d)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記下地処理層(β)に更に、リン酸化合物(e)を含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
- 前記着色塗膜(α)及び前記下地処理層(β)が、水系媒体を用いて塗布、加熱乾燥することで形成されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
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